特許第6756945号(P6756945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6756945脆性アクリルフィルムおよびそれらを含む改ざん防止用ラベル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6756945
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】脆性アクリルフィルムおよびそれらを含む改ざん防止用ラベル
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/03 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
   G09F3/03 D
【請求項の数】14
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2020-512517(P2020-512517)
(86)(22)【出願日】2018年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2018072616
(87)【国際公開番号】WO2019042831
(87)【国際公開日】20190307
【審査請求日】2020年6月23日
(31)【優先権主張番号】17188466.1
(32)【優先日】2017年8月30日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】319013746
【氏名又は名称】レーム・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジルメイ セイオム
(72)【発明者】
【氏名】マルクス パルーゼル
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ ビアト
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン パッハマン
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ディックハウト
(72)【発明者】
【氏名】ジローラモ ムシ
(72)【発明者】
【氏名】クロード グエナンタン
(72)【発明者】
【氏名】ハロルド ロドリゲス
【審査官】 中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/156137(WO,A1)
【文献】 特開平10−182917(JP,A)
【文献】 特表2017−511422(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0018098(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0008613(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/00−3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムを含む改ざん防止用ラベルであって、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムは、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの重量に対し、
30.0重量%〜92.5重量%のポリアルキル(メタ)アクリレート;
2.5重量%〜40.0重量%の1種または数種の耐衝撃性改良剤;
5.0重量%〜40.0重量%の1種または数種の無機充填剤;
0.0重量%〜5.0重量%の1種または数種のUV吸収剤;および
0.0重量%〜5.0重量%の1種または数種のUV安定剤
を含み、
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートと前記耐衝撃性改良剤との累計含量が、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの重量に対し60.0重量%〜95.0重量%であり、
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimは、
0.5≦nim≦n
の関係により記述され、ここでnは、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の無機充填剤の含量(重量%)である、
改ざん防止用ラベル。
【請求項2】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートが、50000g/mol〜300000g/molの平均モル重量Mwを有し、かつ、重合性構成成分として以下;
(a)50.0重量%〜99.9重量%のメチルメタクリレート、
(b)0.1重量%〜50.0重量%の炭素数1〜4のアルコールのアクリル酸エステル、
(c)前記モノマー(a)および(b)と共重合可能な0.0重量%〜10.0重量%の少なくとも1種のさらなるモノマー、
を含む組成物の重合により得ることができ、ここで、前記重量%は、前記重合性組成物の重量に対する、請求項1記載の改ざん防止用ラベル。
【請求項3】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムが、
15μm〜120μmの厚さ、
ASTM D1004−13にしたがい測定された、0.5%〜15%の破断点伸び、および
ASTM D1004−13にしたがい測定された、0.1N〜30.0Nの初期引裂抵抗
を有する、請求項1または2記載の改ざん防止用ラベル。
【請求項4】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムが、ASTM D1938−14にしたがい測定された、0.01N〜1.00Nの引裂伝播抵抗を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の改ざん防止用ラベル。
【請求項5】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimが、
0.6≦nim≦0.8
の関係により記述され、ここでnが、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の無機充填剤の含量(重量%)である、請求項1から4までのいずれか1項記載の改ざん防止用ラベル。
【請求項6】
前記1種または数種の無機充填剤が、二酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、三水酸化アルミニウム、または炭酸カルシウムから選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の改ざん防止用ラベル。
【請求項7】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートが、80000g/mol〜200000g/molの平均モル重量Mwを有し、かつ、重合性構成成分として以下;
(a)80.0重量%〜99.0重量%のメチルメタクリレート、および
(b)1.0重量%〜20.0重量%の炭素数1〜4のアルコールのアクリル酸エステルを含む組成物の重合により得ることができ、ここで、前記重量%は、前記重合性組成物の重量に対する、請求項1から6までのいずれか1項記載の改ざん防止用ラベル。
【請求項8】
少なくとも
a)請求項1から7までのいずれか1項記載のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムからなる層であって、好ましくは40μm〜60μmの厚さを有する層;
b)接着剤層であって、好ましくは20μm〜30μmの厚さを有する接着剤層;
c)剥離剤塗布層であって、好ましくは0.6μm〜0.8μmの厚さを有する剥離剤塗布層;および
d)支持層であって、好ましくは30μm〜50μmの厚さを有する支持層、
をa)〜d)に示された順に含むこと、および/または
前記改ざん防止用ラベルが80μm〜300μmの厚さを有すること、
を特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の改ざん防止用ラベル。
【請求項9】
少なくとも
a)ライナー層であって、好ましくはASTM D1004−13にしたがい測定された、50N〜500Nの初期引裂抵抗を有するライナー層;
b)請求項1から7までの少なくとも1項記載のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムからなる層、を含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の改ざん防止用ラベルを製造するためのラミネート。
【請求項10】
前記ライナー層が、実質的に、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリエチレンテレフタレートからなる群より選択されるポリマー材料、好ましくは二軸延伸ポリプロピレン、または二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる、請求項9記載のラミネート。
【請求項11】
少なくとも
i)押出機を用いて、請求項1から7までのいずれか1項記載のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムを調製するステップであって、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムが得られる、ステップ;および
ii)前記押出機の下流で、ステップi)のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムにライナー層を結合するステップ
を含む、請求項9または10記載のラミネートを製造する方法。
【請求項12】
前記ステップii)で得られたラミネートが、複数のロール間に通され、ここで前記ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム側に対向する少なくとも1本のロールが冷却されたロールである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
少なくとも
i)押出機を用いて、請求項1から7までのいずれか1項記載のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムを調製するステップ;および
ii)前記押出機の下流で、ステップi)のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムにライナー層を結合するステップであって、ラミネートが得られる、ステップ;
iii)ステップii)のラミネートに、接着剤層、任意選択により剥離剤塗布層、および支持層を結合するステップであって、ラベル基材が得られる、ステップ;
iv)ステップiii)で得られたラベル基材をキスカットし、そして得られた廃棄マトリックスを除去するステップであって、支持層上の複数の個々の自己接着性改ざん防止用ラベルが得られる、ステップ
を含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の改ざん防止用ラベルを製造する方法。
【請求項14】
チップカード、文書、改ざん防止用ラベル、他のラベル、または値札を製造するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の改ざん防止用ラベルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートでできた脆性アクリルフィルム、およびこれらのフィルムを含む改ざん防止用ラベルに関する。これらのフィルムは、有利にも押出しにより調製することができ、また所望の目的に応じて、半透明または完全に不透明、たとえば白色になるよう設計することができる。理想的には、脆性アクリルフィルムおよびこれらのフィルムを含む改ざん防止用ラベルは、スリットやミシン目などの意図的な破断点をもたない。したがって、本発明の改ざん防止用ラベルは、チップカードまたはパスポートなどの文書、たとえば改ざん防止用ラベルや道路通行税バッジに、盗品防止用に、または値札として用いることができる。また、こうした目的で一般に用いられる他の材料と違って、本発明の改ざん防止用ラベルは優れた耐侯安定性、および特に卓越したUV安定性をもつ。
【0002】
従来技術
安全ラベルまたは偽造防止用ラベルとしても知られる改ざん防止用ラベルは、従来技術で公知である。一般に、それらが被着基体に付着する強さは、ラベル自体の強さ(曲げ強さまたは引裂強さ)よりも高い。したがって理想的には、そのようなラベルを破壊せずに被着物品から剥がすことは不可能である。
【0003】
破壊しなくては除去できない改ざん防止用ラベルは、チップカード、パスポート、道路通行税バッジ、盗品防止用ラベル、または値札などの文書の保護をはじめ、多様な用途分野で用いられている。ある典型的な従来技術のチップカードは、最大で12の別個の部品からなり、これらが最大で30の別々のプロセスステップで組み合わされたり、プログラムされたりする。そのような作業において、支持層、磁気帯を有する層、および別個のラミネートが、それぞれの機能のため用いられる。一般に、適切な耐候性、擦り傷防止、およびUV防御を実現するためには、1つまたは複数の層が必要である。さらなる層では、偽造防止の安全性を確保するために、破壊しなくては除去できないセキュリティ層を塗工する。最後に、印刷は別個の外側層に実施されることが多いが、それは上述したその他の層に印刷することは困難だからである。
【0004】
ガラススクリーンに付着させる道路通行税バッジとして使われる従来技術のラベルは、一般に、PET、PVC、PE、またはBOPPでできた、任意選択により印刷可能な支持層を含む。耐候的な安定性のため、この層に、片側表面の感圧接着剤によって第2の層を積層する必要がある。この第2の層は、一般に、ポリカーボネート、PET、またはPVCで構成される。この種の層は、加工適性の向上を期して脆性を抑える必要があるので、これらのラベルに刻み目またはミシン目といった追加構造をもたせて、破壊しなくては除去できないようにする必要がある。
【0005】
純粋なPVCフィルムでできた、特に白色フィルムの形態の改ざん防止用ラベルも知られている。これらのフィルムは、好ましい低い初期引裂強さを有する。ところが、PVCフィルムは引裂伝播抵抗が比較的高い。このことは、PVCフィルムが、特定の状況では、ほとんど気づかないような小さな引裂だけで、部外者によって被着基体から剥がされる可能性があることを意味する。
【0006】
改ざん防止用ラベルは脆性が高いので、それらの産業スケールでの製造および取扱いは、一般的な自己接着性ラベルの製造および取扱いよりもかなり難しい。たとえば改ざん防止用ラベルに用いられるフィルム、たとえばポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムを押出しにより製造する場合、そのようなフィルムは容易に破れたり裂けたりし得るので、その取扱いおよび使用が厄介になる。
【0007】
この問題を克服するために、米国特許第6,280,835号明細書は、支持体としてのポリエチレンテレフタレートフィルムに、熱可塑性アクリル樹脂を好適な溶媒に溶解させてから無機充填剤と混合して得られた液体混合物を塗布することにより、脆性アクリルフィルムを調製することを提示している。したがって押出しステップが回避され、また、該ポリエチレンテレフタレートフィルムは、得られた多層材に適切な機械的安定性を与える。また、得られたフィルム中の残留溶媒が可塑剤の働きをし、したがってフィルムの可撓性がより高くなる。
【0008】
さらなる技術的問題の原因は、ラベルが一般に、表面層(表面基材)、表面層に貼り付いた接着剤たとえば感圧接着剤(PSA)層、任意選択により剥離剤塗布層、および接着剤層または剥離剤塗布層に剥離可能に貼り付いた支持層を含むラベル基材から製造されることにある。ラベル基材は、一般に、ロールの形態で提供される。個々のラベルは、普通は、表面層およびPSA層を打ち抜く(キスカットする)ことで製造され、次いで周囲の廃棄マトリックスが除去され、個々のラベルが剥離ライナーに貼り付いた状態で残される。表面層の材料は脆性が高いので、廃棄マトリックスは破れたり裂けたりしやすく、その除去が非常に厄介になる。
【0009】
一般的なラベル製造プロセスの運転速度は、少なくとも25m/分、またはそれよりも高い。速度が増すにつれて、プロセスの安定性が低下し、廃棄マトリックスを除去する際の破断または引裂のリスクが増す。しかし、プロセスの速度を落とすか、または廃棄マトリックスを除去しやすいように廃棄マトリックスのウェブ幅を増やすと、コスト的にかなり不利になり、効率が下がり、多くの場合は効果がない。
【0010】
国際公開第2016/156137号では、透明度の高い、ポリ(メタ)アクリレートフィルムを含む、改ざん防止用ラベルを記述している。これらのラベルは耐侯安定性が良好であり、パスポート、改ざん防止用ラベル、道路通行税バッジ、値札などの文書における使用に適している。発明者らの報告によると、ポリ(メタ)アクリレートフィルムの性能は、耐衝撃性改良剤の含有量が10重量%以下の場合に最高である。ところが、本発明者らのその後の試験で、場合によっては、特に無機充填剤の量がかなり多い場合は、耐衝撃性改良剤の含量がそのように少ないことは、そのようなラベルの製造プロセスにキスカット(打ち抜き)ステップが含まれる場合、ラベル製造中に問題になり得ることがわかった。そうした状況でプロセスを高速運転すると、時に廃棄マトリックスが除去時に破れたり裂けたりすることがある。
【0011】
基本的には、このような廃棄マトリックスの破断または引裂に関する問題は、個々のラベル間の距離、すなわち廃棄マトリックスのウェブ幅を広げることにより、少なくとも部分的には緩和されるはずである。しかし、それによってラベル製造中に生じる廃棄物の量が増え、プロセス効率が低下することは避けられない。したがって、経済的および環境的な観点から、そのような取り組みは実現可能ではない。
【0012】
課題
従来技術に鑑み、本発明が取り組む課題は、改ざん防止用ラベルの産業スケールでの製造に有利に用いることができる脆性フィルムを提供することであった。特に、そのようなフィルムは、表面層およびPSA層をキスカットすることで個々のラベルが製造され、次いで周囲の廃棄マトリックスが除去され、個々のラベルが支持層に貼り付いた状態で残される、費用効果のよいプロセスに適したものである。
【0013】
より具体的には、本発明が取り組む課題は、改ざん防止用ラベルの製造用に、初期引裂強さが低く、引裂伝播抵抗が低く、かつ引裂パスが短いため、不正に剥がそうとした場合はフィルムが容易に完全破断するが、製造および加工は引裂なく行える、脆性フィルムを提供することであった。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、高効率で製造できる、印刷可能な、そして長期の屋外使用に適した自己接着性改ざん防止用ラベルを提供するという課題に取り組んだ。
【0015】
最後に、本発明は、上述の脆性フィルム、およびそれを含む自己接着性改ざん防止用ラベルを製造するための安全で費用効率のよいプロセスを開発するという課題に取り組んだ。
【0016】
課題を解決する方法
本発明は、打ち抜き(キスカット)プロセスおよびその後の廃棄マトリックスの除去における脆性アクリルフィルムの挙動は、フィルム中の耐衝撃性改良剤の量と無機充填剤の量との割合に大きく左右される、という驚くべき知見に基づく。特に、驚くべきことに本発明者らは、フィルムの総重量に対する重量%で表される1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量nimが、
0.5≦nim≦n
の関係により記述され、nは、フィルムの総重量に対する重量%で表される1種または数種の無機充填剤の含量である、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムが、キスカットプロセスによる加工に特に適していることを見出した。したがって、本発明のフィルムを含む改ざん防止用ラベルは、有利には、個々のラベルがキスカットにより製造され、次いで周囲の廃棄マトリックスが除去され、個々のラベルが剥離ライナーに貼り付いた状態で残されるステップを用いて製造することができる。運転速度が少なくとも25m/分またはそれよりも高くても、廃棄マトリックスの望ましくない破断は生じない。
【0017】
本願では、1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量nimは、正味の耐衝撃性改良剤の含量である。粒子状の数種の耐衝撃性改良剤の場合、nimは、正味の耐衝撃性改良剤粒子の含量である。したがって、対応する耐衝撃性改良剤がゴム様粒子である場合、nimは、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中のゴム様粒子の含量である。対応する耐衝撃性改良剤がコア−シェルまたはコア−シェル−シェル粒子である場合、nimは、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の全粒子の含量である。
【0018】
したがって、本発明の一態様は、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムを含む改ざん防止用ラベルに関し、該ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムはその重量に対し、
30.0重量%〜92.5重量%のポリアルキル(メタ)アクリレート;
2.5重量%〜40.0重量%の1種または数種の耐衝撃性改良剤;
5.0重量%〜40.0重量%の1種または数種の無機充填剤;
0.0重量%〜5.0重量%の1種または数種のUV吸収剤;および
0.0重量%〜5.0重量%の1種または数種のUV安定剤
を含み、ここで
ポリアルキル(メタ)アクリレートと耐衝撃性改良剤との累計含量が、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの重量に対し60.0重量%〜95.0重量%であり、
ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimは、
0.5≦nim≦n
の関係により記述され、nは、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の無機充填剤の含量(重量%)である。
【0019】
さらなる態様では、本発明は、上記で特定したポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの改ざん防止用ラベルにおける使用に関する。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、上記で特定したポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムを用いて改ざん防止用ラベルを製造する方法に関する。
【0021】
また、さらなる態様では、本発明は、上記で特定したポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムを含む改ざん防止用ラベルに関する。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、改ざん防止用ラベルを製造するためのラミネート4に関し、該ラミネートは、少なくとも以下の層を含む:
・上記で特定した押出ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムからなる層6、および
・ASTM D1004−13にしたがい測定すると、50N〜500Nの初期引裂抵抗を好ましくは有する、ライナー層5。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、改ざん防止用ラベルを製造するための上記ラミネートの使用に関する。
【0024】
また、さらなる態様では、本発明は、改ざん防止用ラベルに関し、該改ざん防止用ラベルは、少なくとも
a)押出ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムからなる層6;
b)接着剤層7;
c)任意選択により、剥離剤塗布層8、および
d)支持層9
を登場順に含むことを特徴とし、該改ざん防止用ラベルは、50μm〜300μmの厚さを有する。
【0025】
さらなる態様では、本発明は、上記で特定した改ざん防止用ラベルを製造する方法であって、少なくとも
i)上記定義したポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムを押出機で押し出すステップであって、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムが得られる、ステップ;および
ii)押出機の下流で、ステップi)のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムにライナー層を結合するステップであって、ラミネートが得られる、ステップ;
iii)ステップii)のラミネートに、接着剤層、任意選択により剥離剤塗布層、および支持層を結合するステップであって、ラベル基材が得られる、ステップ;
iv)ステップiii)で得られたラベル基材をキスカットし、そして得られた廃棄マトリックスを除去するステップであって、支持層上の複数の個々の自己接着性改ざん防止用ラベルが得られる、ステップ
を含む方法に関する。
【0026】
最後に、本発明は、チップカード、文書、改ざん防止用ラベル、他のラベル、または値札を製造するための改ざん防止用ラベルの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】キスカットプロセス後の、端のないラベル基材1の概略図である。次のプロセスステップで支持層から廃棄マトリックス3が除去され、それによって支持層に貼り付いた複数の個々の改ざん防止用ラベル2が残される。
図2】ライナー層5およびポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムからなる層6を含む、改ざん防止用ラベルを製造するためのラミネート4の側面図である。
図3】以下: a)ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムからなる層6; b)接着剤層7; c)任意選択により、剥離剤塗布層8、および d)支持層9を少なくとも含む、改ざん防止用ラベル2の側面図である。
【0028】
詳細な説明
本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムは、該ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの重量に対し、
30.0重量%〜92.5重量%のポリアルキル(メタ)アクリレート;
2.5重量%〜40.0重量%の1種または数種の耐衝撃性改良剤;
5.0重量%〜40.0重量%の1種または数種の無機充填剤;
0.0重量%〜5.0重量%の1種または数種のUV吸収剤;および
0.0重量%〜5.0重量%の1種または数種のUV安定剤
の組成を有し、ここで
ポリアルキル(メタ)アクリレートと耐衝撃性改良剤との累計含量が、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの重量に対し60.0重量%〜95.0重量%であり、
ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimは、
0.5≦nim≦n
好ましくは0.55≦nim≦0.9
より好ましくは0.6≦nim≦0.8
の関係により記述され、nは、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の無機充填剤の含量(重量%)である。
【0029】
当業者であれば容易に理解しようが、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの重量に対する
・ポリアルキル(メタ)アクリレート;
・1種または数種の耐衝撃性改良剤;
・1種または数種の無機充填剤;
・1種または数種のUV吸収剤;および
・1種または数種のUV安定剤
の量は、合計で100重量%になる。
【0030】
さらに、本発明者らは、キスカットステップおよびその後の廃棄マトリックスの除去を用いる製造プロセスにとっての適切さと、改ざん防止用ラベルを目当ての基体から不正に剥がそうとする試みを阻止する能力とのバランスは、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムがその重量に対し
30.0重量%〜85.0重量%のポリアルキル(メタ)アクリレート;
5.0重量%〜35.0重量%の1種または数種の耐衝撃性改良剤;
10.0重量%〜35.0重量%の1種または数種の無機充填剤;
0.0重量%〜5.0重量%の1種または数種のUV吸収剤;および
0.0重量%〜5.0重量%の1種または数種のUV安定剤
を有する場合に特に有利であることを見出し、ここで
ポリアルキル(メタ)アクリレートと耐衝撃性改良剤との累計含量が、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの重量に対し65.0重量%〜90.0重量%であり、
ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimは、
0.5≦nim≦n
好ましくは0.55≦nim≦0.9
より好ましくは0.6≦nim≦0.8
の関係により記述され、nは、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の無機充填剤の含量(重量%)である。
【0031】
さらに、本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの特性は、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムがその重量に対し
30.0重量%〜77.5重量%のポリアルキル(メタ)アクリレート;
7.5重量%〜30.0重量%の1種または数種の耐衝撃性改良剤;
15.0重量%〜30.0重量%の1種または数種の無機充填剤;
0.0重量%〜5.0重量%の1種または数種のUV吸収剤;および
0.0重量%〜5.0重量%の1種または数種のUV安定剤
を含む場合にさらに向上し得、ここで
ポリアルキル(メタ)アクリレートと耐衝撃性改良剤との累計含量が、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの重量に対し70.0重量%〜85.0重量%であり、
ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimは、
0.5≦nim≦n
好ましくは0.55≦nim≦0.9
より好ましくは0.6≦nim≦0.8
の関係により記述され、nは、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の無機充填剤の含量(重量%)である。
【0032】
さらにより好ましい実施形態では、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムはその重量に対し
30.0重量%〜70.0重量%のポリアルキル(メタ)アクリレート;
10.0重量%〜25.0重量%の1種または数種の耐衝撃性改良剤;
20.0重量%〜25.0重量%の1種または数種の無機充填剤;
0.0重量%〜5.0重量%の1種または数種のUV吸収剤;および
0.0重量%〜5.0重量%の1種または数種のUV安定剤
を含む場合があり、ここで
ポリアルキル(メタ)アクリレートと耐衝撃性改良剤との累計含量が、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの重量に対し75.0重量%〜80.0重量%であり、
ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nimは、
0.5≦nim≦n
好ましくは0.55≦nim≦0.9
より好ましくは0.6≦nim≦0.8
の関係により記述され、nは、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の無機充填剤の含量(重量%)である。
【0033】
ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム
典型的には、本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムは、単一の層からなる、すなわち単層フィルムである。このようなフィルムは、溶液塗布、鋳造、または押出しなどの当業者には公知の方法により製造することができるが、製造性の高さ、および得られたフィルムの有利な特性という点で、押出しが特に好ましい。驚くべきことに、本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムは脆性が高いにもかかわらず、好都合にも押出しによって製造することができ、たとえばその後顧客に発送するまで保管されるか、そのまま改ざん防止用ラベルの製造に使用される。
【0034】
所望の目的を最適に果たすために、本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムは、0.1N〜30.0N、好ましくは1.0N〜15.0Nの初期引裂抵抗を好ましくは有する。本発明の使用では、0.1N未満の初期引裂抵抗を有するフィルムがさらに好適ではあるが、そのようなフィルムは裂けやすいので、その製造および取扱いには細心の注意を要する。
【0035】
他方で、改ざん防止用ラベルの製造プロセスにとっては、30.0Nよりも高い初期引裂抵抗をもつ本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムが非常に適しているが、そのように脆性の低い改ざん防止用ラベルの使用は、該ラベルが薄い鋭利な刃(たとえば安全かみそりの刃)を用いてもとの被着基体から剥がされ、次いで別の基体に再び貼り付けられるリスクを高めることにもなる。したがって、取扱いおよび脆性の特性の良好なバランスをとるという観点から、初期引裂抵抗は、好ましくは1.0N〜15.0Nの範囲である。ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの初期引裂抵抗は、当業者には公知の一般的な方法により、たとえば規格ASTM D1004−13に記載の方法により測定することができ、一般には押出しの方向に測定される。
【0036】
さらに、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの加工適性と、最終的な改ざん防止用ラベルが不正な剥離の試みに抵抗する能力とのバランスを最適なものにするために、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムが0.5%〜15%の範囲の破断点伸びを有することが好ましく、1.0%〜5.0%の範囲の破断点伸びが特に好ましい。破断点伸びが0.5%未満だと、可撓性が小さすぎてフィルムの取扱いが難しくなり、製造中にフィルムを破損しないよう細心の注意を要する。こうした状況では、製造プロセスを低速で運転する必要もあり得る。他方で、破断点伸びが15.0%を超えると、フィルムの脆性が減少する傾向がある。したがって、薄い鋭利な刃を使って改ざん防止用ラベルを剥がそうとした際に、フィルムの微小な機械的変形(すなわち15%未満)が必ずしも完全破断をもたらさない可能性がある。そのため、手慣れた人であれば、十分に薄い鋭利なツールを用いてもとの基体(たとえばパスポート)から改ざん防止用ラベルを剥がし、それを別の物体に再び貼り付けることに成功するリスクが高くなる。ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの破断点伸びは、当業者には公知の一般的な方法により、たとえば規格ASTM D1004−13に記載の方法により測定することができる。
【0037】
一つの好ましい実施形態では、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの初期引裂抵抗は、引裂伝播抵抗の10倍以上高く、好ましくは50倍以上高く、さらに好ましくは100倍以上高い。それは特に有利であり、改ざん防止用ラベルを基体から不正に剥がそうとしてできたごく小さなフィルムの破断がラベル全体にたちまち伝播し、最終的にラベルが完全に破壊することが保証される。こうして、不正なラベル剥離のリスクがさらに低下する。理想的には、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムは、0.01N〜1.0N、より好ましくは0.02N〜0.2Nの引裂伝播抵抗を有する。引裂伝播抵抗は、規格ASTM D1938−14にしたがい測定することができ、一般には押出しの方向に測定される。
【0038】
一般には、耐侯性フィルムとして用いられる市販のPMMAフィルムは、典型的には50%〜100%の破断点伸びを有する。当業者にとっては、それよりもはるかに低い破断点伸びを有するフィルムが、ミシン目も切れ目もなく改ざん防止用ラベルとして使用できることは、驚きである。当業者であれば、さしたる手間も複雑さもなく、破断点伸びを本発明の範囲内に設定することができる。他にもさまざまな影響要因があり、それらを変更することで、当業者は所望の方向の破断点伸びに影響を及ぼすことができる。
【0039】
大きな影響要因は、耐衝撃性改良剤および充填剤の量である。より具体的には、耐衝撃性改良剤の濃度が増加すると、破断点伸びも増加するので、耐衝撃性改良剤をごく少量または皆無とすれば、本発明の破断点伸びが得られる。
【0040】
本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの厚さは、好ましくは15μm〜120μmの範囲である。厚さが15μm未満だと、製造および取扱いに際しフィルムが破断しないよう細心の注意を要する。他方で、フィルムの厚さが120μmを超えると、機械的安定性が非常に高くなり、やはり、ラベルを不正に剥離しようとしたときにフィルムが破断しないリスクが高まる。また、フィルムの厚さが増すと、それを含む改ざん防止用ラベルの厚さも増すことになり、美観またはその他の理由で不利になり得る。取扱いと平坦度との良好なバランスを保つという観点から、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの厚さは、好ましくは、30μm〜90μmの範囲であり、40μm〜75μmの範囲がさらに好ましい。
【0041】
ポリアルキル(メタ)アクリレート
上述したように、本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムはその重量に対し、30.0重量%〜92.5重量%のポリアルキル(メタ)アクリレートを含む。
【0042】
ポリアルキル(メタ)アクリレートは、普通、典型的にはアルキル(メタ)アクリレート、典型的にはメチルメタクリレート(a)と、少なくとも1種のさらなる(メタ)アクリレート(b)とを含む混合物のフリーラジカル重合により得られる。これらの混合物は、一般に、モノマーの重量に対し、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%のメチルメタクリレート(a)を含む。一般に用いられるメチルメタクリレート(a)の量は、モノマーの重量に対し、50.0重量%〜99.9重量%、好ましくは80.0重量%〜99.0重量%、特に好ましくは90.0重量%〜99.0重量%である。
【0043】
ポリアルキル(メタ)アクリレートを製造するためのこれらの混合物は、メチルメタクリレート(a)と共重合可能な、他の(メタ)アクリレート(b)を含む場合もある。本明細書では、「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート、アクリレート、およびそれらの混合物を包含するものとする。(メタ)アクリレートは、飽和アルコールから誘導され得、たとえばメチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、および2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート;または不飽和アルコールから誘導され得、たとえばオレイル(メタ)アクリレート、2−プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート;およびアリール(メタ)アクリレート、たとえばベンジル(メタ)アクリレートまたはフェニル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、たとえば3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、たとえば3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;グリコールジ(メタ)アクリレート、たとえば1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、エーテルアルコールの(メタ)アクリレート、たとえばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸のアミドおよびニトリル、たとえばN−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(ジエチルホスホノ)−(メタ)アクリルアミド、1−メタクリロイルアミド−2−メチル−2−プロパノール;硫黄含有メタクリレート、たとえばエチルスルフィニルエチル(メタ)アクリレート、4−チオシアナトブチル(メタ)アクリレート、エチルスルホニルエチル(メタ)アクリレート、チオシアナトメチル(メタ)アクリレート、メチルスルフィニルメチル(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)スルフィド;多官能性(メタ)アクリレート、たとえばトリメチロイルプロパントリ(メタ)アクリレートであり得る。
【0044】
一般に用いられる(メタ)アクリルコモノマー(b)の量は、モノマーの重量に対し、0.1重量%〜50.0重量%、好ましくは1.0重量%〜20.0重量%、特に好ましくは1.0重量%〜10.0重量%であり、これらの化合物は単独でまたは混合物の形態で用いることができる。
【0045】
重合反応は、一般に、公知のフリーラジカル重合開始剤により開始させる。好ましい重合開始剤としては特に、当業者には周知のアゾ重合開始剤、たとえばAIBNおよび1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびペルオキシ化合物、たとえばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、tert−ブチル2−エチルペレキサノアート、ケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾアート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、tert−ブチル2−エチルペルオキシヘキサノアート、tert−ブチル3,5,5−トリメチルペルオキシヘキサノアート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボナート、上記の化合物の2種以上と別の1種との混合物、および上記の化合物と記載していないが同じくフリーラジカルを形成できる化合物との混合物が挙げられる。
【0046】
重合させる組成物は、上述のメチルメタクリレート(a)および(メタ)アクリレート(b)だけでなく、メチルメタクリレートおよび上記の(メタ)アクリレートと共重合可能な他の不飽和モノマーを含むこともできる。そのような不飽和モノマーとしては、特に1−アルケン、たとえば1−ヘキセン、1−ヘプテン;分枝状アルケン、たとえばビニルシクロヘキサン、3,3−ジメチル−1−プロペン、3−メチル−1−ジイソブチレン、4−メチル−1−ペンテン;アクリロニトリル;ビニルエステル、たとえば酢酸ビニル;スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、たとえばα−メチルスチレンおよびα−エチルスチレン、環にアルキル置換基を有する置換スチレン、たとえばビニルトルエンおよびp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、たとえばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレンおよびテトラブロモスチレン;ヘテロ環式ビニル化合物、たとえば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾールおよび水素添加ビニルチアゾール、ビニルオキサゾールおよび水素添加ビニルオキサゾール;ビニルエーテルおよびイソプレニルエーテル;マレイン酸誘導体、たとえば無水マレイン酸、無水メチルマレイン酸、マレイミド、メチルマレイミド;ならびにジエン、たとえばジビニルベンゼンが挙げられる。
【0047】
一般に用いられるこれらのコモノマー(c)の量は、モノマーの重量に対し、0.0重量%〜10.0重量%、好ましくは0.0重量%〜5.0重量%、特に好ましくは0.0重量%〜2.0重量%であり、これらの化合物は単独でまたは混合物の形態で用いることができる。
【0048】
重合性構成成分として
(a)50.0重量%〜99.9重量%のメチルメタクリレート、
(b)0.1重量%〜50.0重量%の炭素数1〜4のアルコールのアクリル酸エステル、
(c)モノマー(a)および(b)と共重合可能な0.0重量%〜10.0重量%のモノマー
を有する組成物の重合により得ることができるポリアルキル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0049】
さらなる実施形態では、85.0重量%〜99.5重量%のメチルメタクリレートおよび0.5重量%〜15.0重量%のメチルアクリレートで構成されるポリアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、これらの量は100重量%の重合性構成成分に対する。特に有利なコポリマーは、90.0重量%〜99.5重量%のメチルメタクリレートと0.5重量%〜10.0重量%のメチルアクリレートとの共重合により得ることができるものであり、これらの量は100重量%の重合性構成成分に対する。たとえば、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、91.0重量%のメチルメタクリレートおよび9.0重量%のメチルアクリレート、96.0重量%のメチルメタクリレートおよび4.0重量%のメチルアクリレート、または99.0重量%のメチルメタクリレートおよび1.0重量%のメチルアクリレートを含むことができる。これらのポリアルキル(メタ)アクリレートのVicat軟化点VSP(ISO 306:2013、方法B50)は、一般には少なくとも90℃、好ましくは95℃〜112℃である。
【0050】
用いられるポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均モル質量Mwは、ゲルろ過クロマトグラフィー(マトリックスPMMA上での全Mw決定に関しPMMAをキャリブレーション標準として参照し、THFを溶離液とする、GPC)により決定すると、普通は80000g/molよりも高く、より好ましくは120000g/mol以上である。本発明の目的では、ポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均モル質量Mwが140000g/molよりも高いと、より良好なバランスの機械的特性を有するフィルムが実現可能である。
【0051】
ポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均モル質量Mwは、一般に、80000g/mol〜300000g/molの範囲である。特に有利な機械的特性は、80000g/mol〜200000g/molの範囲の、好ましくは100000g/mol〜180000g/molの範囲の、より好ましくは120000g/mol〜180000g/molの範囲の平均モル質量Mwを有するポリアルキル(メタ)アクリレートを有するホイルから得られ、これらはいずれもPMMAキャリブレーション標準に対する、THFを溶離液とするGPCにより決定される。
【0052】
特に好ましい実施形態では、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、80000g/mol〜200000g/molの平均モル重量Mwを有し、かつ組成物の重合により得ることができ、該重合性組成物の重合性構成成分は、該重合性組成物の重量に対し
(a)80.0重量%〜99.0重量%のメチルメタクリレート、および
(b)1.0重量%〜20.0重量%の炭素数1〜4のアルコールのアクリル酸エステル
を含む。
【0053】
耐衝撃性改良剤
本発明で用いられる耐衝撃性改良剤は自体周知であるが、異なる化学組成および異なるポリマー構造を有していてもよい。耐衝撃性改良剤は、架橋されていても、熱可塑性であってもよい。また、耐衝撃性改良剤は、コア−シェルまたはコア−シェル−シェル粒子など、粒子の形態であってもよい。典型的には、粒子状耐衝撃性改良剤は、20nm〜500nm、好ましくは50nm〜450nm、より好ましくは100nm〜400nm、最も好ましくは150nm〜350nmの平均粒径を有する。この文脈では、「粒子状」は、一般にはコア−シェルまたはコア−シェル−シェル構造を有する、架橋された耐衝撃性改良剤を意味する。平均粒径は、当業者には公知の方法により決定することができ、たとえば規格DIN ISO 13321:1996にしたがい光子相関分光法より決定することができる。
【0054】
最もシンプルなケースでは、粒子状耐衝撃性改良剤は、エマルジョン重合により得られる、平均粒径が10nm〜150nm、好ましくは20nm〜100nm、特に30nm〜90nmの範囲の架橋粒子である。これらは一般に、少なくとも20.0重量%、好ましくは20.0重量%〜99.0重量%、特に好ましくは30.0重量%〜98.0重量%の範囲のブチルアクリレート、および0.1重量%〜2.0重量%、好ましくは0.5重量%〜1.0重量%の架橋性モノマー、たとえば多官能性(メタ)アクリレート、たとえばアリルメタクリレート、および適宜、他のモノマー、たとえば0.0重量%〜10.0重量%、好ましくは0.5重量%〜5.0重量%の炭素数1〜4のアルキルメタクリレート、たとえばエチルアクリレートまたはブチルメタクリレート、好ましくはメチルアクリレート、または他のビニル重合性モノマー、たとえばスチレンで構成される。
【0055】
好ましい耐衝撃性改良剤は、2層または3層コア−シェル構造を有し得る、かつエマルジョン重合により得られる、ポリマー粒子である(たとえば欧州特許出願公開第0113924号明細書、欧州特許出願公開第0522351号明細書、欧州特許出願公開第0465049号明細書および欧州特許出願公開第0683028号明細書を参照されたい)。本発明は、典型的には、これらのエマルジョンポリマーの20nm〜500nm、好ましくは50nm〜450nm、より好ましくは150nm〜400nm、最も好ましくは200nm〜350nmの範囲の好適な平均粒径を要する。
【0056】
1つのコアと2つのシェルの3層または3相構造は、以下のようにして調製することができる。最内(硬性)シェルは、たとえば、基本的にはメチルメタクリレート、少量のコモノマー、たとえばエチルアクリレート、およびいくらかの架橋剤、たとえばアリルメタクリレートで構成され得る。真ん中の(軟性)シェルは、たとえばブチルアクリレートおよび適宜スチレンを含むコポリマーで構成され得、最外(硬性)シェルは基本的にマトリックスポリマーと同じであり、したがって相溶性があり、マトリックスとの結合性も良い。
【0057】
2層または3層コア−シェル構造の耐衝撃性改良剤のコア中またはシェル中のポリブチルアクリレートの比率は、耐衝撃性改良作用の決め手となり、耐衝撃性改良剤の全重量に対し、好ましくは20.0重量%〜99.0重量%の範囲であり、特に好ましくは30.0重量%〜98.0重量%の範囲であり、さらに好ましくは40.0重量%〜97.0重量%の範囲である。
【0058】
ポリブチルアクリレートのコポリマーを含む粒子状耐衝撃性改良剤に加えて、シロキサンを含む耐衝撃性改良剤の使用も可能である。しかし、そのような改良剤の使用はあまり有利ではない。それは、それらがポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中に存在することで、フィルムの印刷適性が不利になる傾向があるためである。
【0059】
熱可塑性の耐衝撃性改良剤は、粒子状の耐衝撃性改良剤とは違った作用機構を有する。それらは一般に、マトリックス材料と混合される。たとえばブロックコポリマーを使用する場合のように、ドメインが形成される場合は、たとえば電子顕微鏡法により決定され得るこれらのドメインの好ましいサイズは、コア−シェル粒子の好ましいサイズに対応する。
【0060】
さまざまなクラスの熱可塑性耐衝撃性改良剤がある。その一例が、脂肪族TPU(熱可塑性ポリウレタン)、たとえばCovestro AGから市販されている製品Desmopan(登録商標)である。たとえば、Desmopan(登録商標)WDP 85784A、WDP 85092A、WDP 89085A、およびWDP 89051DといったTPUは、いずれも1.490〜1.500の屈折率を有し、耐衝撃性改良剤として特に好適である。
【0061】
本発明のホイルで耐衝撃性改良剤として使用される熱可塑性ポリマーのさらなるクラスは、メタクリレート−アクリレートブロックコポリマー、特にPMMA−ポリ−n−ブチルアクリレート−PMMAトリブロックコポリマーを含むアクリルTPEであり、これらはKurarity(登録商標)という製品名でKuraray社から市販されている。ポリ−n−ブチルアクリレートブロックは、ポリマーマトリックスにおいて10nm〜20nmのサイズのナノドメインを形成する。
【0062】
上述の熱可塑性耐衝撃性改良剤に加えて、PVDFを含む熱可塑性耐衝撃性改良剤の使用も可能である。しかし、そのような改良剤の使用はあまり有利ではない。それは、それらがポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中に存在することで、フィルムの印刷適性が悪化する傾向があるためである。
【0063】
典型的には、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中のポリアルキル(メタ)アクリレートと耐衝撃性改良剤(以後、「耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレート」と呼ぶ)の累計含量は、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの重量に対し、60重量%〜95重量%、より好ましくは65.0重量%〜90.0重量%、さらに好ましくは70.0重量%〜85.0重量%、さらに好ましくは75.0重量%〜80.0重量%である。
【0064】
無機充填剤
本発明のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムにおける無機充填剤の存在は、いくつかの目的に役立つ。特定量の無機充填剤が存在するおかげで、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムが外見的に光沢のない粗面を有し、容易に印刷ができる。印刷は、レーザー印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、デジタル印刷、またはスクリーン印刷など、実質的に、従来技術で公知のあらゆる方法で実施してよい。
【0065】
さらに、無機充填剤が存在することで、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムに所望の色および透明度を与えることができる。たとえば、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムに二酸化チタンが存在することで、フィルムは白色かつ実質的に不透明になる。
【0066】
最後に、すでに説明したが驚いたことには、無機充填剤の量は、フィルムを取り扱う際のフィルムの挙動、特に改ざん防止用ラベルの製造中のキスカットステップ後の廃棄マトリックスの挙動に、強い影響を及ぼすことが見出されている。
【0067】
ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムを、それを調製する際に、そして改ざん防止用ラベルの製造でそれを使用する際に良好に取り扱えるように、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nim
0.5≦nim≦n
の関係であることが極めて重要であり、nは、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の無機充填剤の含量(重量%)である。
【0068】
ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量nimが0.5より少なくても、原則的には、フィルムは改ざん防止用ラベルへの使用に適している。しかし、表面層およびPSA層のキスカットを含むプロセスにより、並んで支持層に貼り付いた複数の個々の改ざん防止用ラベルを製造し、次いで周囲の廃棄マトリックスを除去して、複数の個々のラベルが支持層(剥離ライナー)に貼り付いた状態にすることは、もはや可能ではなくなる。そうしようと試みても、おそらく廃棄マトリックスが破断することになる。
【0069】
他方で、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量nimが、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の無機充填剤の含量nよりも大きいと、フィルムの脆性がかなり低くなる。したがって、もとの基体から改ざん防止用ラベルが不正に剥がされるリスクが大幅に増加することになる。
【0070】
さらに、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの加工適性と、得られた改ざん防止用ラベルの敏感度とのさらに良好なバランスを得るためには、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nim
0.55≦nim≦0.9
の関係であることが特に有利であり、nは、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の無機充填剤の含量(重量%)である。
【0071】
さらに、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの加工適性と、得られた改ざん防止用ラベルの敏感度とのさらに良好なバランスを得るためには、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の耐衝撃性改良剤の含量(重量%)nim
0.6≦nim≦0.8
の関係であることが特に有利であり、nは、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の1種または数種の無機充填剤の含量(重量%)である。
【0072】
本発明で使用する無機充填剤は特に限定されず、たとえば、二酸化チタン、硫化亜鉛、シリカ、硫酸バリウム、三水酸化アルミニウム、もしくは炭酸カルシウム、またはそれらの混合物から選択することができる。
【0073】
理想的には、無機充填剤は、45μmの網上が0.1重量%以下であり、すなわち粒径が45μmよりも大きい凝集体は実質的に存在せず、そのことは本発明の使用にとって極めて有利である。それによって、無機充填剤は、サイズの大きい充填剤凝集体が存在することなく、ポリ(メタ)アクリレートフィルムのマトリックス中に特に均質に分布することが可能になり、したがって、得られたフィルムは、実質的に均一な外見を有し、かつ適切な機械的特性を有する。一般には、サイズがより大きい充填剤凝集体がフィルム中に大量に存在すると、そうした凝集体からフィルムの亀裂が生じる傾向があり、それによってフィルムのランダムな位置で初期引裂強さが低下するため、不利である。
【0074】
好ましい実施形態では、無機充填剤は、0.05μm〜10.0μm、より好ましくは0.1μm〜5.0μm、特に好ましくは0.1μm〜1.0μm、さらに好ましくは0.1μm〜0.5μmの範囲の重量平均粒径d50を有する。重量平均粒径d50は、当業者には公知の方法により決定することができ、たとえば規格DIN ISO 13321:1996の光子相関分光法により、市販の機器、たとえばBeckman Coulter Inc製N5 Submicron Particle Size Analyzer、またはHoriba Scientific Ltd製SZ−10 Nanoparticle Analyzerを用いて決定することができる。
【0075】
無機充填剤粒子のポリ(メタ)アクリレート中の良好な分散性を確保するためには、無機充填剤の吸油量が、充填剤100gにつき5g以上、好ましくは充填剤100gにつき10g以上、特に好ましくは充填剤100gにつき15g以上であることがさらに有利である。無機充填剤の吸油量が、充填剤100gにつき100g以下、好ましくは充填剤100gにつき70g以下、特に好ましくは充填剤100gにつき50g以下であることがさらに有利である。吸油量は、規格DIN EN ISO 787−5:1980にしたがい決定することができる。
【0076】
たとえば、フィルムを白色にすることが望ましい場合、充填剤として、有利には二酸化チタンを使用することができる。ルチルまたはアナターゼの形態の二酸化チタンを使用することができるが、ルチルの形態の二酸化チタンがその低い光触媒活性のため特に好ましい。そのような材料は、塩化物プロセスにより製造することができ、さまざまな業者から、たとえばKRONOS TITAN GmbH(レーバークーゼン、ドイツ)などから市販されている。
【0077】
好適な二酸化チタン充填剤は、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、または他の剤の非水溶性酸化物で変性されていてもいなくてもよい。これらの試薬材料は特に、顔料を使用する特性を改良するために導入される。二酸化チタン充填剤は、硫酸バリウム、クレイ、ケイ酸マグネシウム、白亜他などの体質顔料を含まないのが理想である。特に好ましいのは、ASTM D476−15の分類タイプII、III、およびIVの二酸化チタン充填剤である。
【0078】
UV吸収剤およびUV安定剤
UV吸収剤およびUV安定剤は周知であり、例として、Hans Zweifel, Plastics Additives Handbook, Hanser Verlag, 5th Edition, 2001, p. 141 ffで詳細に説明されている。光安定剤には、UV吸収剤、UV安定剤、およびフリーラジカルスカベンジャーが含まれるものと理解される。
【0079】
UV吸収剤は、例として、置換ベンゾフェノン、サリチル酸エステル、ケイ皮酸エステル、オキサニリド、ベンゾオキサジノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、トリアジン、またはベンジリデンマロナートの群に由来し得る。最もよく知られている代表的なUV安定剤/フリーラジカルスカベンジャーは、立体障害アミン(ヒンダードアミン光安定剤、HALS)の群により提供される。
【0080】
有利には、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中に使用されるUV吸収剤とUV安定剤の組み合わせは、以下の構成要素で構成される:
・構成要素A:ベンゾトリアゾールタイプのUV吸収剤、
・構成要素B:トリアジンタイプのUV吸収剤、
・構成要素C:UV安定剤(HALS化合物)。
【0081】
個々の構成要素は、単独の物質または混合物の形態で使用され得る。
【0082】
使用することができるベンゾトリアゾールタイプのUV吸収剤(構成要素A)の例は、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ジ(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−sec−ブチル−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、および2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、フェノール、2,2´−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)]である。
【0083】
ベンゾトリアゾールタイプのUV吸収剤の使用量は、ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの重量に対し、0.1重量%〜5.0重量%、好ましくは0.2重量%〜3.0重量%、特に好ましくは0.5重量%〜2.0重量%である。ベンゾトリアゾールタイプの異なるUV吸収剤の混合物を使用することも可能である。
【0084】
2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなどのトリアジンタイプのUV吸収剤(構成要素B)は、好ましくは構成要素Aと組み合わせて使用される。
【0085】
本発明で用いられるポリ(メタ)アクリレートフィルムの製造に好ましくは用いられるラインの詳細な構成
本発明で用いられるポリ(メタ)アクリレートフィルムは、好ましくは押出しプロセスにより製造される。溶液塗布プロセスにより製造されるフィルムと違って、押出ポリ(メタ)アクリレートフィルムは、溶媒などの揮発性有機化合物を実質的に含まず、そのことは毒性および環境的な理由で極めて有利である。
【0086】
上述のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの構成要素は、押出しステップの前に、またはその途中でも、ブレンドすることができる。
【0087】
ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの押出しには、少なくとも以下の構成要素を有するラインを使用することができる:
押出機、
メルトポンプ、
任意選択のメルトろ過設備、
任意選択の静的撹拌要素、
フラットフィルム押出ダイ、
艶出スタックまたは冷却ロール、および
巻取機。
【0088】
ポリマーを押し出してフィルムにすることは周知であり、たとえばKunststoffextrusionstechnik II, Hanser Verlag, 1986, p. 125 ffに記載されている。
【0089】
本発明の方法では、押出機のダイからホットメルトを2つの艶出ロールの間のニップへ、または冷却ロール上に押し出す。最適なメルト温度は、たとえば混合物の組成に左右されるので、広範囲にわたりさまざまであり得る。ダイに入るポイントまでのPMMA成形組成物の好ましい温度は、150〜300℃の範囲、より好ましくは180℃〜270℃の範囲、非常に好ましくは200℃〜260℃の範囲である。艶出ロールの温度は、好ましくは150℃以下、より好ましくは60℃〜140℃である。
【0090】
一実施形態では、混合物がダイに入る前、ダイの温度は混合物の温度よりも高い。混合物がダイに入る前、ダイの温度は、混合物の温度よりも、好ましくは10℃、より好ましくは20℃、非常に好ましくは30℃高く設定されている。したがって、ダイの好ましい温度は、160℃〜330℃、より好ましくは190℃〜300℃の範囲である。
【0091】
艶出スタックは、2つまたは3つの艶出ロールからなる場合がある。艶出ロールは、当技術分野では周知であり、強光沢を得るのに用いられる。しかし、艶出ロール以外のロール、たとえばマットロールも本発明の方法で用いることができる。最初の2つの艶出ロール間のニップでシートが形成され、これが同時冷却によりフィルムになる。
【0092】
代わりに使用される冷却ロールも、当業者には公知である。その場合、メルトのシートを1本の冷却ロールに載せることができ、該ロールが該シートをさらに搬送する。冷却ロールは、好ましくは艶出スタックの上方に位置する。
【0093】
ポリ(メタ)アクリレートフィルムの特に良好な表面品質は、ダイおよびロールがクロム表面を有することで、特にこれらのクロム表面が0.10μm未満、好ましくは0.08μm未満の粗さRa(DIN 4768:1990に準じる)を有することで、保証され得る。
【0094】
ポリ(メタ)アクリレートフィルムが実質的に不純物を含むことがないように、任意選択により、メルトがダイに入る前の位置にフィルターを配置することができる。フィルターのメッシュサイズは、一般には使用される出発材料によって決まるので、広い範囲でさまざまであり得る。メッシュサイズは、一般に、300μm〜20μmの範囲である。メッシュサイズが異なる2つ以上のスクリーンを有するフィルターを、ダイに入るポイント前に配置してもよい。これらのフィルターは市販されている。高品質のフィルムを得るためには、さらに、特に純粋な原材料を使用することが有利である。
【0095】
任意選択により、さらに、フラットフィルム押出ダイの上流に静的撹拌要素を設置してもよい。この混合要素は、顔料、安定剤、または添加剤などの構成要素をポリマーメルトに混ぜ込むのに用いることができ、または最大5重量%のたとえばメルトの形態の第2のポリマーを、第2の押出機からポリ(メタ)アクリレートに混ぜ込んでもよい。
【0096】
溶融混合物をダイに押し込む圧力は、たとえばスクリューの速度により制御することができる。圧力は、典型的には40バール〜150バールの範囲内であるが、本発明の方法はそれに限定されない。したがって、本発明でフィルムを得ることができる速度は、一般に、5m/分よりも速く、より具体的には10m/分よりも速い。
【0097】
メルトを特に均一に搬送できるように、フラットフィルム押出ダイの上流に、メルトポンプを追加設置してもよい。
【0098】
本発明の押出ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムの取扱いをさらに改善するためには、押出機の下流で、ステップi)のポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム6に、ポリアルキル(メタ)アクリレートのガラス転移温度よりも低い温度で、ライナー層5を結合して、ラミネート4を得ることが、有利である。
【0099】
得られたラミネート4は、典型的には以下の2つの層からなる(図2参照):
・ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムにより形成される層6;および
・ライナー層5。
【0100】
一実施形態では、ライナー層は自己接着性である。そのような自己接着性ライナーは、典型的には、マット表面を有するポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム6にライナーを結合するのに有利に用いることができる接着剤層を有する。
【0101】
さらなる実施形態では、ライナー層は、接着剤層の代わりにポリエチレン−コポリマー層を有する。そのようなライナーは、光沢表面をもつポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム6で有利に用いられる。
【0102】
ラミネート4の良好な機械的安定性および特に高い引裂強さを保証するために、ライナー層が、ASTM D1004−13にしたがい測定される50N〜500Nの初期引裂抵抗を好ましくは有することが有利である。ライナー層の材料は、ライナー層が十分な引裂抵抗を有する限り、特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートまたはそれらの混合物のいずれかから選択することができ、二軸延伸ポリプロピレンまたは二軸延伸ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0103】
後続のプロセスステップでは、ラミネートは、接着剤層、任意選択により剥離剤塗布層、および支持層と結合されるステップを経て、ラベル基材を与える。これらのプロセスステップは当業者には周知であり、たとえば米国特許出願公開第2004/0091657号明細書および同第2011/0132522号明細書で詳しく説明されている。
【0104】
典型的には、接着剤層は、実質的に感圧接着剤(PSA)からなる。支持層は、典型的には、紙またはプラスチックのフィルム材料を含み、剥離剤塗布層がコーティングされている場合がある。米国特許第6,406,787号明細書に記載されているものなど、さまざまな剥離剤コーティング組成物が公知である。非PSA接着剤組成物も、特にフォーム支持層が多孔性(たとえば紙)である実施形態で用いることができ、該フォーム基体はラベルの視面ではないほうの表面に露出している。
【0105】
本発明の好適なPSAは、アルキルアクリレートのポリマーおよびコポリマー;アルキルアクリレートとアクリル酸とのコポリマー;アルキルアクリレート、アクリル酸、およびビニル−ラクテートのターポリマー;アルキルビニルエーテルのポリマーおよびコポリマー;ポリイソアルキレン;ポリアルキルジエン;アルキルジエン−スチレンコポリマー;スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー;ポリジアルキルシロキサン;ポリアルキルフェニルシロキサン;天然ゴム;合成ゴム;塩素化ゴム;ラテックスクレープ;ロジン;クマロン樹脂;アルキドポリマー;およびポリアクリレートエステル、ならびにそれらの混合物からなる群より好ましくは選択される。例として、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、またはブタジエン−スチレンコポリマー、およびそれらの混合物(好ましくは反応性部分をもたない、すなわち空気の存在下で酸化されないポリマーおよびコポリマー);シリコーン系化合物、たとえばポリジメチルシロキサンならびに他の樹脂および/または油と組み合わされたポリメチルフェニルシロキサンが挙げられる。
【0106】
他の好適なPSAとしては、粘着性熱可塑性樹脂および粘着性熱可塑性エラストマーも挙げられ、ここで組成物の粘着性を増加させる粘着付与剤は1種または複数種の化合物を含む。強力なPSAとして有用な粘着性熱可塑性樹脂の一例は、商品名VYNATHENE EY 902−30(オハイオ州シンシナティのQuantum Chemicals社から入手可能)として知られる酢酸ビニル/エチレンコポリマー、商品名PICCOTEX LC(ビニルトルエンとアルファ−メチルスチレンモノマーの共重合により製造される無色透明の熱可塑性樹脂、環球式軟化点約87℃〜95℃、デラウェア州ウィルミントンのHercules Incorporatedから入手可能)およびWINGTACK 10(液体の脂肪族炭素数5の石油系炭化水素樹脂、Goodyear Chemical社から入手可能)として知られる粘着付与剤をほぼ等量ずつ、ならびにトルエンなどの有機溶媒の組み合わせである。強力なPSAとして有用な粘着性熱可塑性エラストマーの一例は、商品名KRATON G1657(Shell Chemicals社から入手可能)として知られるスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−スチレンブロックコポリマー、商品名REGALREZ(Hercules社製)として知られる1種または複数種の低分子量炭化水素樹脂、およびトルエンなどの有機溶媒の組み合わせである。これらの配合物はどちらも、ナイフコーターおよび風乾、または風乾後のオーブン乾燥により、塗布することができる。当然ながら、本発明は、これらの特定の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、および粘着付与剤の組み合わせの使用に限定されない。
【0107】
現在のいくつかの好ましいPSAは、大気条件下で長期の棚持および減粘性抵抗を示し、米国再発行特許発明第24,906号明細書で開示されているようなアクリルベースのコポリマー接着剤が挙げられる。そのようなアクリルベースのコポリマーの一例は、イソオクチルアクリレート/アクリル酸の95.5:4.5(それぞれ重量部で測定)のコポリマーである。別の好ましい接着剤は、これら2つのモノマーの90:10重量比の組み合わせのコポリマーである。さらに別の好ましい接着剤は、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、およびアクリル酸のターポリマー;イソオクチルアクリレートとアクリルアミドとのコポリマー;およびイソオクチルアクリレート、ビニル−アセテート、およびアクリル酸のターポリマーである。
【0108】
アクリルベースのPSAは、ヘプタン:イソプロパノール溶媒混合物などの有機溶媒を含む、塗布可能な組成物から塗布することができ、その後溶媒を蒸発させて、感圧接着剤のコーティングを残す。基体が逆反射シート材である場合、この層は、好ましくは厚さ約0.038センチメートル(cm)〜約0.11cm(5〜15ミル)である。
【0109】
本発明で有用なPSAはまた、約10〜約1000g/cmの範囲の、より好ましくは少なくとも約50g/cmの「180度剥離接着」を有する特徴をもち得る。強力PSAでは、180度剥離接着は、典型的には、標準的な試験手順で測定して約200g/cm〜約600g/cmの範囲である。この手順では、PSA塗布基体を試験基体から剥がすときに、PSA塗布基体を試験基体から除去(すなわち剥離)するのに必要な力を、「剥離接着」値と呼ぶ。標準的なガラスプレートを溶媒で掃除する(たとえばジアセトンアルコールで1回洗ってから、n−ヘプタンで3回洗う)。そして、PSA裏糊付け塗布を有するサンプルを、ごく弱い張力で、PSA側を下にして標準ガラスプレートの中央に置く。次に、サンプルに2.04kgハンドローラーを1回かける。次に、標準ガラスプレートを商標名「IMASS」として知られるものなどの標準的な剥離接着テスターの水平試験台に固定する。そしてサンプルの一端を剥離接着テスターの一部であるフックに取り付ける。試験台を速度228.6cm/分で水平方向に動かして、サンプルを標準ガラスプレートから180度の角度で剥がし(すなわちサンプルの一端を他端に向けて引く)、要した力を、さまざまなドエル時間について、g/cmのサンプル幅として記録する。
【0110】
典型的にはシロキサンコーティングである剥離剤塗布層8は、接着剤層7と支持層9との間の接着力を減じる目的を果たす。典型的には、剥離剤塗布層8は、規格ASTM D1894−14にしたがい決定される運動摩擦係数0.35未満、好ましくは0.25未満を実現することを可能にする。
【0111】
最後に、ラベル基材をキスカットして、支持層9に貼り付いた複数の個々の自己接着性改ざん防止用ラベルを形成する。キスカットは、米国特許出願公開第2011/0132522号明細書に記載されているような機械的打ち抜きにより、またはレーザーを用いて実施することができる。次のステップで、個々の自己接着性改ざん防止用ラベルを取り巻く廃棄マトリックスを、破断のリスクは一切なく支持層から剥がす。
【0112】
廃棄物の生成を最小限化するために、個々のラベル間の距離(すなわち廃棄マトリックスの細片の幅)を、1.0mm〜10.0mm、より好ましくは2.0mm〜8.0mm、さらに好ましくは3.0mm〜5.0mmの範囲とする。上記で説明したように、廃棄マトリックスの望ましくない破断は生じない。典型的には、この作業中の剥離力は、TESA社製7475テープを用いたT−peel試験により測定すると、30g/インチ未満、好ましくは20g/インチ未満、さらに好ましくは1g/インチ〜10g/インチである。
【0113】
改ざん防止用ラベル
本発明の改ざん防止用ラベル2は、少なくとも以下の層を登場順に含む(図3参照):
a)上述の押出ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムからなる層6;
b)接着剤層7;
c)剥離剤塗布層8、および
d)支持層9。
【0114】
典型的には、本発明の改ざん防止用ラベルは、50μm〜300μm、より好ましくは100μm〜200μmの厚さを有する。
【0115】
典型的な実施形態では、
・PMMA層6は、20μm〜100μm、より好ましくは30μm〜75μm、さらに好ましくは40μm〜60μmの厚さを有する場合があり;
・接着剤層7は、10μm〜40μm、より好ましくは20μm〜30μmの厚さを有する場合があり;
・剥離剤塗布層8は、0.01μm〜1.5μm、好ましくは0.5μm〜1.2μm、より好ましくは0.6μm〜0.8μmの厚さを有する場合があり;
・支持層9は、20μm〜70μm、好ましくは30μm〜50μmの厚さを有する場合がある。
【0116】
改ざん防止用ラベルのサイズは、原則的に自由に選択でき、唯一の制限はその製造に使用される押出しダイおよび/または艶出スタックの寸法だけである。つまり、フォーマットは実質的に自由に選択できる。
【0117】
ポリ(メタ)アクリレートフィルムのトリミングおよびキスカットは、好ましくは打ち抜き、裁断、レーザー加工、またはレーザー打ち抜きにより達成される。特にレーザー加工またはレーザー打ち抜きが好ましい。
【0118】
必ずしも必要ではないが、任意選択により、本発明により製造したポリ(メタ)アクリレートフィルムに、稜、切れ目、スリット、またはミシン目、またはノッチを追加で設けて、不正に剥がそうとした際にラベルが破断しやすいようにしてもよい。しかし、そうした追加手段は必須ではない。
【0119】
これらの改ざん防止用ラベルは、チップカード、文書、改ざん防止用ラベル、他のラベル、または値札の製造に非常に適している。その使用の一例は、たとえば自動車の窓の内側に貼り付ける料金ステッカーでの使用である。さらなる例として、個人の写真が掲載された本発明の改ざん防止用ラベルを、身分証明カードまたはパスポートなどの文書で使用することができる。写真が掲載されたラベルは、パスポートから不正に剥がして別のパスポートに移し替えようとすると、破断することになる。
【0120】

例1(比較例)
以下の組成で配合された混合物を用いて、全体の厚さ50μmのポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムを調製した:
a)47重量%のブチルアクリレート(butylacrylat)系アクリルコア−シェル−シェル耐衝撃性改良剤を含む、20.0重量%の材料、
b)Evonik Performance Materials GmbHから入手可能な、58.94重量%のPLEXIGLAS(登録商標)7N、および
c)KRONOS TITAN GmbHから入手可能な、21.06重量%の二酸化チタン。
【0121】
押出しは、押出し速度7.3m/分で、Dr. Collin GmbH(エバースベルク、ドイツ)製の35mm径一軸押出機および25mm径一軸共押出機MX 10で、以下の条件で実施した:
押出機のスクリュー温度:240℃〜270℃
ダイ温度:240℃〜260℃
ダイにおけるメルト温度:240℃〜260℃
ロール温度:50℃〜120℃
押出ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムは、5%未満の破断点伸びを有した。
【0122】
次に、この押出ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムを用いて、MPS Systems B.V.(アーネム、オランダ)製のラベル製造機、MPS EF Flexoで、自己接着性改ざん防止用ラベルを調製した。
【0123】
ラベル基材のキスカットステップの後、廃棄マトリックスを支持層から剥がそうとしたが、失敗した。廃棄マトリックスは破断した。個々のラベル間の距離は、3mm〜5mmであった。
【0124】
ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の耐衝撃性改良剤の量は、約9.4重量%、すなわち二酸化チタンの量の半分よりも少なかった。この例から、耐衝撃性改良剤がそのように低量だと、廃棄マトリックス除去ステップの際に廃棄マトリックスの特性に悪影響があることがわかる。
【0125】
こうして、複数の個々の自己接着性改ざん防止用ラベルを調製する試みは失敗した。
【0126】
実施例2(本発明)
以下の組成で配合された混合物を用いて、全体の厚さ50μmのポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムを調製した:
a)47重量%のブチルアクリレート(butylacrylat)系アクリルコア−シェル−シェル耐衝撃性改良剤を含む、30.0重量%の材料、
b)Evonik Performance Materials GmbHから入手可能な、48.67重量%のPLEXIGLAS(登録商標)7N、および
c)KRONOS TITAN GmbHから入手可能な、21.33重量%の二酸化チタン。
【0127】
押出しは、実施例1と同条件で実施した。
【0128】
押出ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムは、4〜6%の破断点伸びを有した。
【0129】
次に、この押出ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムを用いて、MPS Systems B.V.(アーネム、オランダ)製のラベル製造機、MPS EF Flexoで、自己接着性改ざん防止用ラベルを調製した。
【0130】
実施例1の押出ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムとは違って、実施例2の押出ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルムは、自己接着性改ざん防止用ラベルの製造に成功裏に使用することができた。廃棄マトリックスの望ましくない破断は生じなかった。
【0131】
引裂抵抗試験は、Zwick GmbH & Co.KG(ウルム、ドイツ)から入手可能な試験装置、Zwick Roell Z005を使用し、4つの同一サンプルで、各サンプルにつき5試験を実施した。
【0132】
初期引裂抵抗は、幅10mm〜20mmのサンプルについて、規格ASTM D1004−13にしたがいフィルムの押出しの方向に測定した結果、5.8N〜7.0Nであった。
【0133】
引裂伝播抵抗は、幅25mmのサンプルについて、規格ASTM D1938−14にしたがいフィルムの押出しの方向に測定した結果、0.03Nであった。
【0134】
ポリアルキル(メタ)アクリレートフィルム中の耐衝撃性改良剤の量は約14.1重量%、すなわち本発明のとおりであった。
【要約】
本発明は、耐衝撃性改良ポリアルキル(メタ)アクリレートでできた脆性アクリルフィルム、およびそれらを含む改ざん防止用ラベルに関する。これらのフィルムは、有利にも押出しにより調製することができ、また所望の目的に応じて、半透明または完全に不透明、たとえば白色になるよう設計することができる。理想的には、脆性アクリルフィルムおよびそれらを含む改ざん防止用ラベルは、スリットやミシン目などの意図的な破断点をもたない。
図1
図2
図3