特許第6756954号(P6756954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756954
(24)【登録日】2020年9月1日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】玉ねぎ類処理機
(51)【国際特許分類】
   A23N 15/08 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
   A23N15/08 B
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-209599(P2015-209599)
(22)【出願日】2015年10月26日
(65)【公開番号】特開2017-79617(P2017-79617A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391052127
【氏名又は名称】株式会社ニシザワ
(73)【特許権者】
【識別番号】590002389
【氏名又は名称】静岡県
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】山根 俊
(72)【発明者】
【氏名】西澤 准一
(72)【発明者】
【氏名】西澤 英伸
(72)【発明者】
【氏名】三代 満
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−175672(JP,A)
【文献】 実開平01−068719(JP,U)
【文献】 特開2001−231530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 1/00−17/02
A01D 13/00−33/14
B65G 33/00−33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫した葉・根付き玉ねぎ類(T)の葉(Tb)と根(Tc)を自動で切除し得る玉ねぎ類処理機であって、
上記葉・根付き玉ねぎ類(T)の葉(Tb)を両ロール間の下方に引き込み得るとともに、該葉(Tb)が下向きに垂下する姿勢で上記葉・根付き玉ねぎ類(T)を後送させ得る左右一対の移送ロール(22,22)を有し、
上記各移送ロール(22,22)の少なくとも一方の移送ロールは、その回転胴(22a)の外周面に螺旋状に巻付けられていて上記両移送ロール(22,22)が回転することにより上記葉・根付き玉ねぎ類(T)の玉ねぎ類本体(Ta)部分を押圧して順次後方に移送させ得る移送用螺旋凸条(22b)と、上記回転胴(22a)の外周面における上記移送用螺旋凸条(22b)の玉ねぎ類移送方向の前方側近傍位置において該移送用螺旋凸条(22b)の摩擦係数より小さい摩擦係数を有したブラシ材を螺旋状に植毛してなる螺旋ブラシ部(22c)とを設けているとともに、
上記葉・根付き玉ねぎ類(T)を上記両移送ロール(22,22)で後送させる際に、上記螺旋ブラシ部(22c)が上記玉ねぎ類本体(Ta)の外面と上記移送用螺旋凸条(22b)との間に介在されるようにしており、
さらに、上記葉・根付き玉ねぎ類(T)の移送時に上記各移送ロール(22,22)の回転胴(22a,22a)における上記玉ねぎ類本体(Ta)が接触し得る位置の外周面に、上記回転胴(22a)の外周面の摩擦係数より小さい摩擦係数の外面を有した低摩擦シート(22e)を螺旋状に巻付けている、
ことを特徴とする玉ねぎ類処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、収穫した葉・根付き玉ねぎ類の葉と根を連続して切除し得るようにした玉ねぎ類処理機に関するものである。尚、本願発明において処理の対象となる玉ねぎ類とは、玉ねぎ自体のほかにラッキョウ、ニンニク、ユリ根、球根等を含むものであるが、以下の説明では、玉ねぎ類として玉ねぎ自体で説明する。
【背景技術】
【0002】
収穫した玉ねぎ類(以下の説明では、単に玉ねぎと表現する)には、玉ねぎ本体部分の上部側に長い葉が連続している一方、玉ねぎ本体部分の下部側に根が付いている。そして、収穫した玉ねぎを出荷するには、玉ねぎ本体部分から葉及び根を切除する必要がある。
【0003】
ところで、玉ねぎの葉及び根を切除する作業は、大半の農家では、1個ずつハサミによる手作業で行っているのが現状であるが、このように手作業による玉ねぎの葉・根切除作業は作業能率が非常に悪いとともにその切除作業を長時間継続することは非常に疲れる作業となる。
【0004】
そこで、本件出願人は、玉ねぎの葉及び根を自動的(機械的)に切除するためのものとして、特開2015−116176号公報(特許文献1)に示されるものを既に特許出願している。尚、この特許文献1(特開2015−116176号公報)の発明の名称は、「玉ねぎ類の葉・根連続切除機」であるが、この「玉ねぎ類の葉・根連続切除機」も本願の発明の名称である「玉ねぎ類処理機」と称する。
【0005】
上記特許文献1の玉ねぎ類処理機は、図8図10に示すように、収穫したままの葉・根付き玉ねぎTの葉Tbと根Tcを順次連続して切除し得るものであって、前段部分の葉切除工程と後段部分の根切除工程を連続して行って葉と根を除去した玉ねぎ(葉・根除去玉ねぎ)T2に加工し得るようにしたものである。
【0006】
ところで、本願発明が対象とする部分は、図8図10(特許文献1で公知)の玉ねぎ類処理機における前段の葉切除工程(葉切除ユニット2)の移送ロール22部分であるが、後述する本願実施例(図1図7)でも、玉ねぎ類処理機として上記図8図10(公知)の玉ねぎ類処理機の基本構成部分をそのまま採用しており、且つこの公知(図8図10)の玉ねぎ類処理機における改良すべき点を理解する上でもこの公知の玉ねぎ類処理機の基本構成の概略を説明しておく。
【0007】
図8図10に示す公知の玉ねぎ類処理機は、前後にかなりの長さを有した本体ケース1内に、それぞれ後述する葉切除ユニット2と上下反転装置4と根切除ユニット3とを一列状態で配置して構成されている。
【0008】
本体ケース1の前部には、葉・根付き玉ねぎTを投入するための投入部(投入シュート)11を設けている一方、本体ケース1の後部には、葉Tbと根Tcを切除した葉・根除去玉ねぎT2を排出するための排出部(排出シュート)12を設けている。
【0009】
本体ケース1内には、投入部11から投入された葉・根付き玉ねぎTの葉Tbを玉ねぎ本体Ta部分から切除するための葉切除ユニット2と、該葉切除ユニット2で葉Tbを切除した葉除去・根付き玉ねぎT1の根Tcを切除するための根切除ユニット3とを、葉切除ユニット2が前側で根切除ユニット3が後側に位置する状態で設けているとともに、該葉切除ユニット2と該根切除ユニット3との間に葉Tbを切除した葉除去・根付き玉ねぎT1を上下反転させるための上下反転装置4を設けている。
【0010】
上記葉切除ユニット2は、2本の移送ロール22,22を1組として葉・根付き玉ねぎTの葉Tbを下向きに垂下させた姿勢で後送させ得るようにした葉・根付き玉ねぎ移送装置21と、該葉・根付き玉ねぎ移送装置21の終端部の近傍位置において葉・根付き玉ねぎTの葉Tbの付け根部分を切断する葉切断装置25とを備えている。
【0011】
葉・根付き玉ねぎ移送装置21の両移送ロール22,22は、その回転胴22aの外周面に移送用螺旋凸条22bを螺旋状に巻付けたものである。そして、該両移送ロール22,22は、動力装置で各ロール上面側が相互に内側(図10の各矢印方向)に向けて回転するように駆動される。
【0012】
葉切断装置25は、左右一対の円盤刃物26,26を葉・根付き玉ねぎ移送装置21の終端部の近傍位置にセットしたものである。そして、この葉切断装置25は、両円盤刃物26,26を動力装置によって回転させることによって、該両円盤刃物26,26の設置部分を通過する玉ねぎTの葉Tbをその付け根部分で切断するように機能する。尚、この葉切断装置25で葉Tbが切断された葉除去・根付き玉ねぎT1は、根Tcが上向きのままである。
【0013】
葉切断装置25で葉Tbを切除した葉除去・根付き玉ねぎT1は、根Tcが上向きのままであるので、該葉除去・根付き玉ねぎT1を次の根切除ユニット3の始端部上に受け渡す際には、上下反転装置4で根Tcが下向きになるように上下反転させる。尚、この上下反転装置4については、本願の要旨との関連性がないので詳しい説明は省略する。
【0014】
根切除ユニット3は、上記葉切断装置25(両円盤刃物26,26)の後側近傍位置に連続して設置されていて、2本の移送ロール32,32を1組として葉除去・根付き玉ねぎT1を後送させるための葉除去・根付き玉ねぎ移送装置31と、該葉除去・根付き玉ねぎ移送装置31の終端部近傍位置において葉除去・根付き玉ねぎT1の根Tcの付け根部分を切断する根切断装置35とを備えている。尚、この根切除ユニット3についても、本願の要旨との関連性がないので詳しい説明は省略する。
【0015】
そして、図8図10に示す公知の玉ねぎ類処理機は、次のように機能する。
【0016】
本体ケース1の投入部11から収穫したままの葉・根付き玉ねぎTを投入すると、該玉ねぎTが葉切除ユニット2(両移送ロール22,22)の始端部上に落下した後、両移送ロール22,22間の上面側谷部において前後に向く横倒し姿勢で転動し、続いて玉ねぎTの葉Tbが両移送ロール22,22により下方に引き込まれて、該葉・根付き玉ねぎTが葉Tbを下向きに垂下させた姿勢で後送されるようになる。
【0017】
次に、葉切除ユニット2の終端部において、下向きに垂下している玉ねぎの葉Tbの付け根部分を葉切断装置25で切断し、その葉除去・根付き玉ねぎT1を上下反転装置4で上下反転(根Tcが下向き)させ、該葉除去・根付き玉ねぎT1を根Tcが下向き状態で根切除ユニット3の両移送ロール32,32間の始端部上に落下させる。
【0018】
次に、根切除ユニット3の始端部上に落下した葉除去・根付き玉ねぎT1は、両移送ロール32,32で根Tcを下方に引き下ろしなから後送され、該両移送ロール32,32の終端部から放出されるときに根切断装置35で根Tcを切断することで、葉・根除去玉ねぎT2(処理完了品)に加工できる。尚、葉と根を除去した葉・根除去玉ねぎT2は、排出部12から機外に排出される。
【0019】
このように、図8図10に示す公知の玉ねぎ類処理機では、本体ケース1の投入部11から収穫したままの葉・根付き玉ねぎTを順次投入するだけで、後は自動で排出部12から葉・根除去玉ねぎT2を取り出すことができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2015−116176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、図8図10に示す公知の玉ねぎ類処理機では、以下の背景に関連して次のような改良すべき点が発見された。
【0022】
即ち、収穫時期が早い玉ねぎ(特に極早生玉ねぎ)は、果肉が柔らかく消費者に好まれるものであるが、反面、収穫した時点では玉ねぎ本体の外表も非常に柔らかいものとなっている。そして、このように玉ねぎ本体の外表が非常に柔らかいものでは、硬質材(摩擦係数が大きい面)との擦れにより、玉ねぎ本体部分の表皮に擦過傷(破れや捲れ)が発生し易いという特性(難点)がある。
【0023】
他方、上記した図8図10に示す公知の玉ねぎ類処理機において、葉切除ユニット2の各移送ロール22,22は、その回転胴22aの外周面B(図10)に移送用螺旋凸条22bを螺旋状に巻付けたものであるが、該移送用螺旋凸条22bには摩擦係数の大きい材料(例えば硬質ゴムや半硬質合成樹脂)が使用されている一方、各移送ロール22の回転胴22aは合成樹脂(例えば塩化ビニール樹脂)製の円筒体であって、該回転胴22aの外周面Bは平滑面であるものの摩擦係数がかなり大きいものである。
【0024】
そして、葉切除ユニット2の両移送ロール22,22上に葉・根付き玉ねぎTが投入されると、該玉ねぎTの葉Tbが両移送ロール22,22により下方に引き込まれて、該葉・根付き玉ねぎTが葉Tbを下向きに垂下させた姿勢で後送されるが、このとき、玉ねぎTに対する移動作用は移送用螺旋凸条22bのみで行われるので、玉ねぎ本体Ta部分の外表面Aには摩擦係数の大きい移送用螺旋凸条22bが強く擦られるようになる。尚、この移送用螺旋凸条22bによる玉ねぎ本体Taの外表面Aに対する擦れ位置は、移送ロール22の全長移動範囲に亘ってほぼ同じ位置となる。
【0025】
従って、図8図10に示す公知の玉ねぎ類処理機では、極早生玉ねぎのように玉ねぎ本体Taの表皮が非常に柔らかいと、該玉ねぎ本体Taの外表面Aに摩擦係数の大きい移送用螺旋凸条22bが強く擦られることにより、玉ねぎ本体Taの外表面Aに擦過傷(表皮の破れや捲れ)が発生し易くなり、品質及び歩留まりが低下するという問題があった。
【0026】
又、玉ねぎTが両移送ロール22,22間を後送される際に、葉・根付き玉ねぎTの葉Tb部分が両移送ロール22,22の外周面で下方に引き込まれるが、この葉Tb部分の下方引き込み作用により、図10に示すように玉ねぎ本体Taの外表面(A,A部分)が回転胴22aの外周面Bに強く押付けられるので、両移送ロール22,22間を後送される葉・根付き玉ねぎTは、玉ねぎ本体Taの外表面(A,A部分)が回転胴22aの外周面Bで強く擦られながら移動するようになる。そして、この場合も、極早生玉ねぎのように玉ねぎ本体Taの表皮が非常に柔らかいと、該玉ねぎ本体Taの外表面Aに擦過傷(表皮の破れや捲れ)が発生し易くなる(品質及び歩留まりが低下する)。
【0027】
尚、このような玉ねぎ本体Taの外表面Aに対する擦過傷は、玉ねぎ自体のほかに表皮が非常に柔らかい塊状作物(例えばラッキョウ、ニンニク、ユリ根、球根等)の外表面にも発生する。
【0028】
そこで、本願発明は、上記図8図10に示す公知の玉ねぎ類処理機における前段部分(葉切除工程部分)において、上記した公知の欠点(特に極早生玉ねぎにおける外表面の擦過傷発生)を改善することができる玉ねぎ類処理機を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0030】
本願発明は、添付の図1図7に例示するように、収穫した葉・根付き玉ねぎ類Tの葉Tbと根Tcを順次連続して自動で切除し得るようにした玉ねぎ類処理機を対象にしている。尚、本願の説明においても、玉ねぎ類Tを単に玉ねぎTと表現することがある。
【0031】
本願発明の玉ねぎ類処理機は、
葉・根付き玉ねぎTの葉Tbを両ロール間の下方に引き込み得るとともに該葉Tbが下向きに垂下する姿勢で葉・根付き玉ねぎTを後送させ得る左右一対の移送ロール22,22を有し、
該各移送ロール22,22の少なくとも一方の移送ロールは、その回転胴22aの外周面に螺旋状に巻付けられていて両移送ロール22,22が回転することにより葉・根付き玉ねぎTの玉ねぎ本体Ta部分を押圧して順次後方に移送させ得る移送用螺旋凸条22bと、回転胴22aの外周面における移送用螺旋凸条22bの玉ねぎ類移送方向の前方側近傍位置において該移送用螺旋凸条22bの摩擦係数より小さい摩擦係数を有したブラシ材を螺旋状に植毛してなる螺旋ブラシ部22cとを設けているとともに、
葉・根付き玉ねぎTを両移送ロール22,22で後送させる際に螺旋ブラシ部22cが玉ねぎ本体Taの外面と移送用螺旋凸条22bとの間に介在されるようにしており、
さらに、葉・根付き玉ねぎTの移送時に各移送ロール22,22の回転胴22a,22aにおける玉ねぎ類本体Taが接触し得る位置の外周面に、回転胴22aの外周面の摩擦係数より小さい摩擦係数の外面を有した低摩擦シート22eを螺旋状に巻付けている、
ことを特徴としている。
【0032】
尚、本願発明の説明において、上記玉ねぎ類移送方向とは、上記両移送ロール22,22による玉ねぎTの移送方向のことである(図1における「前」側から「後」側に向く方向である)。
【0033】
本願発明の玉ねぎ類処理機において、上記各移送ロール22,22は、2本ともそれぞれ移送用螺旋凸条22b及び螺旋ブラシ部22cを設けたものが玉ねぎ移送効率の点で好ましいが、左右一対のうちのいずれか一方の移送ロールのみに移送用螺旋凸条22b及び螺旋ブラシ部22cを設けたものでもよい。
【0034】
本願における上記移送用螺旋凸条22bは、玉ねぎ本体Ta部分を確実に後送させるために移送に適した材質製(例えば硬質ゴムや半硬質合成樹脂製)のものが用いられているが、該移送用螺旋凸条22bは、かなり摩擦係数が大きいものとなっている。
【0035】
他方、本願における上記螺旋ブラシ部22cは、柔軟なブラシ材(小束状のもの)を回転胴22aの外周面Bに一列状態で螺旋状に植毛したものであるが、ブラシ材の摩擦係数は移送用螺旋凸条22bの摩擦係数よりかなり小さいものである。そして、この螺旋ブラシ部22cは、移送用螺旋凸条22bの前方側(玉ねぎ類移送方向下手側)のごく僅かな間隔をもった近傍位置(あるいは移送用螺旋凸条22bの押し出し面となる面に接触する位置でもよい)に配置している。
【0036】
又、上記低摩擦シート22eとしては、フッソ樹脂テープやテフロン(登録商標)テープが使用可能であり、さらにシート外面に微細な短繊維Dをロール回転方向とは逆方向に傾斜した状態で多数植毛したものも採用できる。
【0037】
本願発明の玉ねぎ類処理機では、図1図3に例示するように、本体ケース1の投入部11から収穫したままの葉・根付き玉ねぎTを投入すると、該玉ねぎTが葉切除ユニット2の両移送ロール22,22の始端部上に落下した後、該両移送ロール22,22間の上面側谷部において前後に向く横倒し姿勢で転動し、続いて玉ねぎTの葉Tbが両移送ロール22,22間の下方に引き込まれるとともに、左右ロールの移送用螺旋凸条22b,22bにより葉・根付き玉ねぎTが葉Tbを下向きに垂下させた姿勢で後送されるようになる。
【0038】
ところで、両移送ロール22,22間を玉ねぎTが後送されるのは、主として移送用螺旋凸条22bの押し出し機能によるものであるが、該移送用螺旋凸条22bのみによる玉ねぎ押し出しでは、移送用螺旋凸条22bの摩擦係数が大きいので、玉ねぎ本体Taの外表面Aに対する摩擦力が大きくなる。特に、移送ロール22,22による玉ねぎ移送時には、玉ねぎ本体Taの外表面Aのほぼ同じ位置が移送用螺旋凸条22bで押される。従って、処理すべき玉ねぎTが極早生玉ねぎのように、玉ねぎ本体Taの表皮が非常に柔らかいものでは、上記公知の問題点のように玉ねぎ本体Taの外表面Aに擦過傷(表皮の破れや捲れ)が発生し易くなる。
【0039】
そこで、本願発明の玉ねぎ類処理機では、両移送ロール22,22における玉ねぎTを後送させる機能を持つ移送用螺旋凸条22bの玉ねぎ類移送方向の前方側近傍位置に該移送用螺旋凸条22bの摩擦係数より小さい摩擦係数の螺旋ブラシ部22cを設けており、玉ねぎTを両移送ロール22,22で後送させる際には、螺旋ブラシ部22cが玉ねぎ本体Taの外表面Aと移送用螺旋凸条22bとの間に介在されるようになる。従って、玉ねぎ移送時には、玉ねぎ本体Taが螺旋ブラシ部22cを介して移送用螺旋凸条22bで間接的に押圧されるので、玉ねぎ本体Taの外表面Aに移送用螺旋凸条22bが直接接触しない。
【0040】
そして、玉ねぎ移送時には、玉ねぎ本体Taの外表面Aに対して螺旋ブラシ部22cが擦れるが、この螺旋ブラシ部22cの摩擦係数は移送用螺旋凸条22bの摩擦係数より小さいので、玉ねぎ本体Taの外表面Aに対する摩擦力が小さくなる。
【0041】
又、本願発明の玉ねぎ類処理機では、両移送ロール22,22間を葉・根付き玉ねぎTが後送される際に、玉ねぎ本体Taの外表面A(特に下面部分)が回転胴22aの外周面Bに対応する部分に接触することがある。そのとき、回転胴22a部分に摩擦係数の小さい外面を有した低摩擦シート22eを巻付けておくと、玉ねぎ本体Taの外表面Aが回転胴外周面の対応部分に接触しても、該玉ねぎ本体Taの外表面Aが低摩擦シート22eの外面に接触するようになる(摩擦係数の大きい回転胴22aの外周面Bに直接接触することがない)。
【発明の効果】
【0042】
本願発明の玉ねぎ類処理機は、葉・根付き玉ねぎ後送用の移送ロール22,22のうちの少なくとも一方の移送ロールとして、回転胴22aの外周面に巻付けている移送用螺旋凸条22bの玉ねぎ類移送方向の前方側近傍位置に摩擦係数が小さい螺旋ブラシ部22cを設けたものを採用しているので、両移送ロール22,22間において移送用螺旋凸条22bで押される玉ねぎ本体Ta部分が、該移送用螺旋凸条22bに接触することなく摩擦係数が小さい螺旋ブラシ部22cで擦られながら後送される。
【0043】
従って、この発明の玉ねぎ類処理機を使用すると、葉・根付き玉ねぎTの後送中には、玉ねぎ本体Taの外表面Aに対して摩擦係数が小さい螺旋ブラシ部22cが擦れるだけである(摩擦係数が大きい移送用螺旋凸条22bには接触しない)ので、処理すべき玉ねぎの表皮が極早生玉ねぎのような非常に柔らかいものであっても、送り機能部分での擦れによる玉ねぎ本体Taの外表面Aへの損傷が発生しにくくなる(品質及び歩留まりが良好となる)という効果がある。
【0044】
又、本願発明の玉ねぎ類処理機では、ロールの回転胴22a,22aの外周面に、該回転胴22aの外周面の摩擦係数より小さい摩擦係数の外面を有した低摩擦シート22eを螺旋状に巻付けているので、玉ねぎ本体Taの外表面Aが回転胴22aの外周面Bに対応する部分に接触しても、玉ねぎ本体Taの外表面Aが低摩擦シート22eの外面に接触する(回転胴22aには直接接触しない)。
【0045】
従って、この発明の玉ねぎ類処理機では、玉ねぎ本体Taの外表面Aに対する回転胴22aの外周面B(摩擦係数が大きい)との直接接触による損傷(擦過傷の発生)を防止できるので、玉ねぎ本体Taの表皮が非常に柔らかいものでも、玉ねぎ移送中における回転胴22aとの擦れによる損傷(擦過傷の発生)も防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本願実施例の玉ねぎ類処理機の平面図である。
図2図1のII−II矢視図である。
図3図1のIII−III部分の拡大矢視図である。
図4図1の両移送ロール部分の一部拡大平面図である。
図5図4のV−V拡大矢視図で、玉ねぎ本体の外表面が低摩擦シートの外面に接触した状態の説明図である。
図6図5のVI−VI矢視図で、移送用螺旋凸条による玉ねぎ移送状態の説明図である。
図7図6の一部拡大図である。
図8】特許文献1(公知)の玉ねぎ類処理機の平面図(図1相当図)である。
図9図8のIX−IX矢視図(図2相当図)である。
図10図8のX−X部分の拡大矢視図(図3相当図)である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
[実施例]
以下、図1図7を参照して本願実施例の玉ねぎ類処理機を説明すると、この実施例の玉ねぎ類処理機も、図8図10に示す公知の玉ねぎ類処理機と同様に、収穫した葉・根付き玉ねぎTの葉Tbと根Tcを順次連続して自動で切除し得るようにしたものである。尚、この実施例の玉ねぎ類処理機で処理される玉ねぎ類も、玉ねぎ自体のほかにラッキョウ、ニンニク、ユリ根、球根等を含むものであるが、この実施例の説明でも、玉ねぎ類として玉ねぎ自体で説明する。
【0048】
ところで、図1図3に示す本願実施例の玉ねぎ類処理機は、上記した公知(図8図10)の玉ねぎ類処理機の基本構成を備えたものであって、本願実施例の玉ねぎ類処理機における基本構成部分(本体ケース1、葉切除ユニット2、上下反転装置4、根切除ユニット3等)の説明は、図8図10についての上記説明を援用する。又、本願実施例の玉ねぎ類処理機についての基本的な機能(葉・根付き玉ねぎTから葉Tbと根Tcを順次連続して切除する機能)は、上記公知(図8図10)の玉ねぎ類処理機と同様であるので、そこでの説明を援用する。尚、本願実施例(図1図7)の玉ねぎ類処理機と公知(図8図10)の玉ねぎ類処理機について、同じ符号を付しているものは、相互に同じものである。
【0049】
この実施例の玉ねぎ類処理機を使用すると、図1及び図2に示すように、本体ケース1の投入部11から葉・根付き玉ねぎTを投入するだけで、葉・根付き玉ねぎ移送装置21部分(両移送ロール22,22部分)において該玉ねぎTをその葉Tb部分が下向きとなる姿勢で後送でき(図2図3図5図6)、葉切断装置25部分において下向きに垂下している葉Tbを付け根部分で切除し、上下反転装置4により葉除去・根付き玉ねぎT1を上下反転させて(根が下向きになる)葉除去・根付き玉ねぎ移送装置31の始端部上に着座させ、該葉除去・根付き玉ねぎ移送装置31部分を該玉ねぎT1の根Tcが下向き姿勢のままで後送し、根切断装置35部分において下向きに垂下している根Tcの付け根部分を切除する、という全工程を順次連続して自動で行うことができる。
【0050】
本願発明の背景として、上記「発明が解決しようとする課題」の項でも記載したように、次のことがある。即ち、収穫時期が早い玉ねぎ(特に極早生玉ねぎ)は、果肉が柔らかく消費者に好まれるものであるが、反面、収穫した時点では玉ねぎ本体の表皮も非常に柔らかいものとなっている。そして、このように玉ねぎ本体の表皮が非常に柔らかいものでは、摩擦係数が大きい面(移送ロール22の移送用螺旋凸条22bや回転胴22aの外周面B)との擦れにより、玉ねぎ本体部分の表皮に擦過傷(破れや捲れ)が発生し易くなるという特性(難点)がある。
【0051】
ところで、本願実施例(図1図7)で使用している葉切除ユニット2の各移送ロール22,22も、その回転胴22aの外周面Bに移送用螺旋凸条22bを螺旋状に巻付けているが、該移送用螺旋凸条22bには摩擦係数の大きい材料(例えば硬質ゴムや半硬質合成樹脂)が使用されている一方、各移送ロール22の回転胴22aは合成樹脂(例えば塩化ビニール樹脂)製の円筒体であって、該回転胴22aの外周面Bは平滑面であるものの摩擦係数がかなり大きいものである。
【0052】
そして、葉切除ユニット2の両移送ロール22,22間を葉・根付き玉ねぎTが葉Tbを下向きに垂下させた姿勢で後送されるときに、玉ねぎ本体Taの外表面Aが摩擦係数の大きい移送用螺旋凸条22bで押される(該外表面Aの同じ場所が連続して押される)と、表皮が柔らかい玉ねぎ本体Taではその外表面Aに擦過傷(表皮の破れや捲れ)が発生し易くなる。又、両移送ロール22,22による葉・根付き玉ねぎTの後送時に、図10(公知)のように玉ねぎ本体Taの外表面Aが回転胴22aの外周面Bに直接接触すると、該回転胴外周面Bの摩擦係数が大きいので、柔らかい玉ねぎ本体Taではその外表面Aに擦過傷(表皮の破れや捲れ)が発生し易くなる。
【0053】
そこで、本願実施例の玉ねぎ類処理機では、玉ねぎTを後送させる機能を持つ移送用螺旋凸条22bによる擦過傷の発生を防止するための手段として、該移送用螺旋凸条22bの玉ねぎ類移送方向の前方側近傍位置に該移送用螺旋凸条22bの摩擦係数より小さい摩擦係数の螺旋ブラシ部22cを設けている一方、各移送ロール22,22の回転胴22aの外周面Bによる擦過傷の発生を防止するための手段として、該回転胴22aの外周面における玉ねぎ本体Taが接触し得る位置に該回転胴22aの外周面Bの摩擦係数より小さい摩擦係数の外面を有した低摩擦シート22eを螺旋状に巻付けている。
【0054】
尚、この実施例の玉ねぎ類処理機では、各移送ロール22,22の回転胴22aにおける移送用螺旋凸条22bの玉ねぎ類移送方向の後方側(玉ねぎ類移送方向の上手側となる)の近傍位置に、複数条(図示例では図4図6に示す3条)のブラシを1組とする葉垂下用螺旋ブラシ22dが植毛されている。この葉垂下用螺旋ブラシ22dは、左右両移送ロール22,22間の上面側谷部に投入された葉・根付き玉ねぎTの葉Tbを両移送ロール22,22間の下方に引き込んで、速やかに葉・根付き玉ねぎTを葉Tbが下向きに垂下する姿勢にするものである。
【0055】
上記螺旋ブラシ部22cについて説明すると、この螺旋ブラシ部22cは、柔軟なブラシ材(小束状のもの)を回転胴22aの外周面Bに一列状態で螺旋状に植毛したものである。螺旋ブラシ部22cに使用されているブラシ材の摩擦係数は、移送用螺旋凸条22bの摩擦係数よりかなり小さいものである。そして、この螺旋ブラシ部22cは、移送用螺旋凸条22bの玉ねぎ類移送方向前方側(玉ねぎ類移送方向の下手側となる)のごく僅かな間隔をもった近傍位置(あるいは移送用螺旋凸条22bの押し出し面となる面に接触する位置でもよい)に配置している。
【0056】
又、この螺旋ブラシ部22cのブラシ材は、柔軟な多数本の極細繊維状のものを小束状に束ねたものを使用しているが、この螺旋ブラシ部22c(ブラシ材)は、図7に拡大図示するように、玉ねぎの移送中に該玉ねぎ本体Ta部分の抵抗により玉ねぎ類移送方向の
後方側(移送用螺旋凸条22b側)に撓み且つ玉ねぎ本体Ta部分の抵抗がなくなると元の直立姿勢に弾性復帰するものである。尚、この螺旋ブラシ部22c(小束状の各ブラシ材)の回転胴外周面Bからの突出長さは、図示例では移送用螺旋凸条22bの外周端とほぼ同程度に設定されているが、該移送用螺旋凸条22bの外周端より僅かに(例えば数ミリ程度)低くてもよい。
【0057】
そして、玉ねぎTを両移送ロール22,22で後送させる際には、図6及び図7に示すように、螺旋ブラシ部22cが玉ねぎ本体Taの外表面Aと移送用螺旋凸条22bとの間に介在されるので、玉ねぎ本体Taが螺旋ブラシ部22cを介して移送用螺旋凸条22bで間接的に押圧される。
【0058】
このように、玉ねぎ移送時における送り機能部分では、玉ねぎ本体Taの外表面Aに対して螺旋ブラシ部22cのみが接触する(移送用螺旋凸条22bが直接接触しない)が、この螺旋ブラシ部22cの摩擦係数は移送用螺旋凸条22bの摩擦係数より小さいので、玉ねぎ本体Taの外表面Aに対する摩擦力は小さいものとなる。
【0059】
従って、玉ねぎTを後送する機能部分では、玉ねぎ本体Taの外表面Aに対して摩擦係数が小さい螺旋ブラシ部22cが擦れるだけである(摩擦係数が大きい移送用螺旋凸条22bには接触しない)ので、処理すべき玉ねぎの表皮が極早生玉ねぎのような非常に柔らかいものであっても、玉ねぎ本体Taの外表面Aへの擦れによる損傷が発生しにくくなる(品質及び歩留まりが良好となる)という効果がある。
【0060】
次に、上記低摩擦シート22eについて説明すると、この低摩擦シート22eは、各移送ロール22,22の回転胴22aの外周面Bにおける、上記螺旋ブラシ部22cと上記葉垂下用螺旋ブラシ22dとの間に螺旋状に巻付けている。
【0061】
この低摩擦シート22eは、この実施例では、シート外面に微細な短繊維D,D・・(図5図6参照)をロール回転方向とは逆方向に傾斜した状態で多数植毛したものも採用している。このように、シート外面に微細な短繊維D,D・・をロール回転方向とは逆方向に傾斜した状態で多数植毛してなる低摩擦シート22eでは、玉ねぎ本体Taの外表面Aに対する摩擦係数が極めて小さいものとなる。
【0062】
尚、他の実施例では、上記低摩擦シート22eとして、フッソ樹脂テープやテフロン(登録商標)テープが使用可能であるが、これらのテープでも回転胴22aの外周面Bの摩擦係数よりかなり小さいものである。
【0063】
そして、玉ねぎ移送時には、玉ねぎ本体Taと回転胴22aとの関係において、図6及び図7に示すように、玉ねぎ本体Taの外表面Aが摩擦係数の小さい低摩擦シート22eの外面に接触する(回転胴22aには直接接触しない)ので、玉ねぎ本体Taの表皮が非常に柔らかいものでも、玉ねぎ移送中における回転胴22aとの擦れによる損傷(擦過傷)が発生しにくくなるという効果がある。
【0064】
尚、この実施例の玉ねぎ類処理機は、上記したように極早生玉ねぎのような表皮が非常に柔らかい玉ねぎに対して特に有効であるが、普通に収穫した(表皮が硬くなった)玉ねぎでも支障なく処理できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0065】
1は本体ケース、2は葉切除ユニット、3は根切除ユニット、4は上下反転装置、21は葉・根付き玉ねぎ移送装置、22は移送ロール、22aは回転胴、22bは移送用螺旋凸条、22cは螺旋ブラシ部、22dは葉垂下用螺旋ブラシ、22eは低摩擦シート、Tは葉・根付き玉ねぎ、Taは玉ねぎ本体、Tbは葉、Tcは根である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10