【文献】
Wong, T.T. et al,Production of reporductively sterile fish: A mini-review of germ cell elimination technologies,General and comparative endocrinology,2015年 1月 9日,221,pp3-8
【文献】
財団法人水産物市場改善協会[online],おさかな普及センター資料館 Q&Aシート 食用の魚卵, INTERNET ARCHIVE: WAYBACK MACHINE,公開日:2011年12月14日, [検索日:2020年3月23日],< https://web.archive.org/web/20111214101653/http://www.osakana-center.com/q&a/037/shokuyou.htm>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アンチセンスモルホリノオリゴマーが、前記魚におけるデッドエンド、nanos、vasa、gnrh、又はfsh受容体遺伝子の発現を抑制する、請求項5に記載の方法。
前記卵が、サケ、大西洋サケ、ギンザケ、チヌークサケ、シロザケ、ベニザケ、カラフトマス、サクラマス、マス、ニジマス、カワマス、ブラウントラウト、コモングレイリング、キタカワヒメマス、ホッキョクイワナ、バス、交配種バス、ストライプドバス、ホワイトバス、ストライプド−ホワイトバス交配種、イエローバス、パーチ、ホワイトパーチ、イエローパーチ、ヨーロピアンパーチ、バス−パーチ交配種、ナイルティラピア、ブルーティラピア、ブルー−ナイルティラピア交配種、モザンビークティラピア、ゼブラフィッシュ、コイ種、ブリーム、シーブリーム、タイ、ナマズ種、及びタラからなる群から選択される魚の受精又は未受精卵である、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一態様では、本開示は、卵生水生動物の卵(複数可)の絨毛膜の透過性を強化する方法であって、卵生水生動物の受精または未受精卵(複数可)を、卵(複数可)の絨毛膜の透過性を強化し得るグアニジン含有化合物と接触させることを含む、方法に関する。かかる方法は、薬剤が卵の内部に近づくことを可能にするように絨毛膜の透過性を十分に強化することによって、関心の薬剤の胚への送達を可能にする。
【0019】
魚または他の卵生水生動物への薬剤の送達は、伝統的に、餌、注射、または関心の薬剤中での胚もしくは個体の浸漬によって達成されてきた。しかしながら、株の注射は、大規模な商業用の水産養殖作業において実践的ではない。それに加えて、受精及び水活性化させた卵の浸漬処置の使用は、卵の絨毛膜、主にタンパク質及び糖タンパク質からなる、卵外被としても知られる厚い無細胞多層外被の低い透過性により制限されている。典型的には、魚または他の卵生水生動物の胚の浸漬処置では、例えば、大型分子化合物などの関心の薬剤は、絨毛膜を超えて胚に到達することができない。
【0020】
排卵/抱卵の後かつ受精及び水活性化の前、卵は、透過性で穴の開いた絨毛膜(または最外被)を有し、これは、孔、または精子が受精のために卵を貫通することを可能にする卵の絨毛膜内の小さい管である卵門を通して、未受精卵内への水及び物質の侵入を可能にする。しかしながら、受精及び水活性化の後、絨毛膜は封止され、卵は実質的に不透過性となり、環境からの物質または水のさらなる摂取を防止する。
【0021】
本開示の方法は、卵生水生動物の卵(複数可)内への少なくとも1つの薬剤の送達が達成され得るような、受精卵または未受精卵のいずれかの卵生水生動物の卵(複数可)の絨毛膜の透過性の強化を提供する。かかる方法は、卵(複数可)の絨毛膜の透過性を強化し得るグアニジン含有化合物(GCC)の存在下で、卵生水生動物の受精または未受精卵(複数可)を少なくとも1つの薬剤と接触させることを含む。
【0022】
受精または未受精卵(複数可)の接触は、卵(複数可)の絨毛膜形質移入を含む。
【0023】
本開示の態様におけるグアニジン含有化合物は、グアニジン、グアニジン誘導体、グアニジン二量体、三量体、もしくは重合体、例えば、デンドリマー等、またはそれらの塩、あるいはアルギニン、アルギニン誘導体、アルギニン二量体、三量体、もしくは重合体、例えば、デンドリマー等、またはグアニジ部分を含有するそれらの塩、及びそれらの混合物から選択されてもよい。
【0024】
開示される方法における使用に好適なグアニジン含有化合物は、水生動物の卵(複数可)の絨毛膜の透過性を強化するのに有効なグアニジン含有化合物である。本明細書で使用されるとき、「絨毛膜の透過性を強化するのに有効」は、水生動物の卵がグアニジン含有化合物と接触された後、かかる卵の絨毛膜が、グアニジン含有化合物と接触されていないかかる水生動物の卵の絨毛膜よりも透過性であることを意味する。例として、時間T1においてグアニジン含有化合物と接触させた後の水生動物の卵の絨毛膜の透過性は、T1においてグアニジン含有化合物と接触されていない同じ水生動物の卵の絨毛膜よりも透過性である。透過性は、当業者に既知の方法によって決定されてもよく、例えば、Hagedorn,M.,et al.(1997)”Water distribution and permeability of zebrafish embryos,Brachydanio rerio”J Exp Zool 278,356−371;及びKais,B.,et al.,(2013)”DMSO modifies the permeability of the zebrafish(Danio rerio)chorion−implications for the fish embryo test(FET),”Aquat Toxicol,140−141:p.229−38を参照されたい。
【0025】
本明細書に使用されるとき、「誘導体」という用語は、それらが言及している化合物と同じ機能構造を含み、類似の特性を有する、例えば、水生動物の卵(複数可)の絨毛膜の透過性を強化するのに有効である誘導体を意味することが意図される。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「グアニジン」は、窒素原子に二重結合され、かつ2つの他の窒素原子に単結合された少なくとも1つの炭素原子をその化学式中に含む任意の化合物を意味し、またかかる化合物の塩を含む。
【0027】
グアニジン含有化合物は、一態様では、以下の一般式(A):
【化1】
の化合物から選択されてもよく、式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5は、独立して、
水素原子、ニトロ、アミノ、シアノ、フェニル、シクロヘキシル、ベンジル、あるいはヒドロキシル、アミノ、ジメチルアミノ、メトキシ、エトキシ、カルボキシル、カルボキサミド、N−メチルカルボキサミド、またはSO
3Hから選択される1つまたは2つのラジカルで任意に置換された直鎖または分岐C
1〜C
4低級アルキルもしくはC
1〜C
4アルケニルラジカル、あるいはそれらの塩を表す。
【0028】
グアニジン含有化合物の例としては、アルギニン、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、酢酸グアニジン、炭酸グアニジン、硝酸グアニジン、硫酸グアニジン、重炭酸グアニジン、及び臭化水素酸グアニジンが挙げられる。
【0029】
他の態様では、グアニジン含有化合物は、グアニジンを含有する二量体、三量体、または重合体である。一態様では、グアニジン含有化合物は、下記の一般式(I)〜(IV)の化合物から選択されてもよい:
【化2】
【0030】
可変基「R」は、水素原子、ニトロ、アミノ、シアノ、フェニル、シクロヘキシル、ベンジル、あるいはヒドロキシル、アミノ、ジメチルアミノ、メトキシ、エトキシ、カルボキシル、カルボキサミド、N−メチルカルボキサミド、またはSO
3Hから選択される1つまたは2つのラジカルで任意に置換された直鎖もしくは分岐C
1〜C
4低級アルキルもしくはC
1〜C
4アルケニルラジカル、あるいはそれらの塩から選択されてもよい。可変バックボーンリンカーは、アミノ酸、ヌクレオチド、ホスホルアミデート、グリコール、ポリエチレングリコール、ニトロ、アミノ、シアノ、フェニル、シクロヘキシル、ベンジル、または直鎖もしくは分岐C
1〜C
4低級アルキルから選択されてもよい。例として、ポリアルギニン/9−アルギニンは、n=9である式Iの化合物である。
【0031】
グアニジン含有化合物は、少なくとも1つの薬剤を卵生水生動物の受精または未受精卵(複数可)内に送達する方法において使用されてもよく、該方法は、卵(複数可)の絨毛膜の透過性を強化させるのに有効であるグアニジン含有化合物の存在下で、受精または未受精卵(複数可)を少なくとも1つの薬剤と接触させることを含む。
【0032】
薬剤は、任意の化合物、薬物もしくは薬物候補、生物活性剤もしくは潜在的生物活性剤、調剤、化学活性物質、治療用物質、または他の試験物質であってもよい。これらとしては、限定されるものではないが、非荷電性分子、分子錯体、塩、エーテル、エステル、アミド等の形態が挙げられる。
【0033】
例として、薬剤(複数可)は、薬剤(複数可)がグアニジン含有化合物の存在下にあるように、受精または未受精卵(複数可)とグアニジン含有化合物(複数可)とを含有する浸漬媒体中に定置されてもよい。
【0034】
グアニジン含有化合物は、本開示の方法において、薬剤(複数可)に共有結合しているか、または共有結合していないかのいずれかである。グアニジン含有化合物は、卵生水生動物の卵(複数可)の絨毛膜の透過性を強化し、グアニジン含有化合物が薬剤に共有結合していないか、またはそれと共役されていない場合でさえも、胚への薬剤の送達を可能にし得ることが発見された。
【0035】
本開示のいくつかの態様によるグアニジン含有化合物は、例えば、当該技術分野において「Vivo」としても知られる、米国特許第7,935,816号に説明される種類のもの等の、例えば、トリアジン核部分を含むオクタグアニジン(octaguanidine)デンドリマー等のデンドリマーであり得る。米国特許第7,935,816号の開示は、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。グアニジン含有化合物がトリアジン核部分を含むオクタグアニジンデンドリマーである本開示の特定の実施形態では、グアニジン含有化合物は、関心の薬剤(複数可)に共有結合していない、またはそれと共役されない。
【0036】
実施形態における浸漬媒体は、水性媒体である。浸漬媒体は、水生動物の卵と共に使用するために当業者に既知である、任意のかかる媒体であってもよい。浸漬媒体は、例えば、真水、半塩水、海水、塩を含有する魚の卵巣液もしくは受精希釈液(fertilization diluent)、Tris(pH7〜9)、グリシン、ならびに/または0〜30%の血清、及びアプロチニンもしくはロイペプチン等のプロテアーゼ阻害剤をさらに含み得る水性媒体であってもよい。
【0037】
浸漬媒体中のグアニジン含有化合物の濃度は、浸漬媒体中で卵の絨毛膜の透過性を強化するために十分な量である。例として、グアニジン含有化合物の濃度は、約1〜約80,000μMの範囲、好ましくは約20〜約40,000μMの範囲、より好ましくは約40〜約20,000μMの範囲であってもよい。
【0038】
本開示によるグアニジン含有化合物が、水生動物の卵の絨毛膜の透過性を有効に強化し得るという発見は、水生動物の卵及び胚に薬剤を効率的に送達する能力を提供する。薬剤の送達はさらに、薬物もしくは生物活性剤スクリーニングに関するモデルにおける、または試験薬剤の毒性を評価するためのアッセイにおける水生動物の使用を可能にする。例として、ゼブラフィッシュは、薬物または生物活性剤スクリーニングに関する表現型モデルにおいて使用されている。したがって、本明細書に開示される方法は、例えば、薬物または生物活性剤スクリーニング方法、薬物または生物活性剤の安全性または毒性を評定するためのアッセイ、及び生物応答に関して試験薬剤を評価するための方法において使用されてもよい。
【0039】
図1は、薬物スクリーニングまたは薬剤毒性アッセイにおけるグアニジン含有化合物の適用の一例を例証する。示される通り、受精卵は、薬剤槽中に定置される。1つの卵群を、薬剤槽中に、その中にグアニジン含有化合物を伴わない状態で浸漬させ、1つの卵群を、グアニジン含有化合物の存在下で薬剤槽中に浸漬させる。GCCと共に化合物中に浸漬された卵の治療または毒性応答が、観察及び/または評価され得る。
【0040】
したがって、本開示の態様は、例えば、抗体、タンパク質、ペプチド、RNA、またはDNA等の薬物または生物活性剤等の試験薬剤をスクリーニングする方法であって、卵(複数可)の絨毛膜の透過性を強化するのに有効であるグアニジン含有化合物の存在下で、卵生水生動物の卵(複数可)を少なくとも1つの薬剤と接触させることと、応答、例えば、生理学的応答等の応答を特定することとを含む、方法を包含する。例として、スクリーニング方法は、試験薬剤を評価するため、魚胚に対する試験薬剤の効果を評価するため、試験薬剤の毒性を評価するため等に使用されてもよい。
【0041】
本開示の方法は、化合物の安全性及び毒性アッセイにおけるグアニジン含有化合物の使用を追加的に包含し、ここで、試験薬剤は、卵(複数可)/胚(複数可)の絨毛膜の透過性を強化するのに有効であるグアニジン含有化合物の存在下で、卵生水生動物の卵(複数可)/胚(複数可)と接触され、例えば、疾患救済または生理学的応答(異常及び死亡)等の応答を特定し、試験薬剤に対する応答が、観察及び評価される。
【0042】
本開示は、繁殖的に不妊の卵生水生動物を産生する方法であって、卵を、繁殖的に不妊の個体をもたらす選択された薬剤を有する浸漬媒体中で接触させることを含む、方法をさらに企図する。不妊化方法は、胚における生殖腺の発育の妨害を含む。本開示はまた、家畜化された非天然の遺伝的に修飾された養殖された魚/他の卵生水生動物と、それらの野生株との間の異種交配を防止する方法、ならびにかかる水産養殖された魚及び他の卵生水生動物の野生での確立にも関する。それに加えて、開示される方法は、養殖された魚及び他の卵生水生動物による野生集団の遺伝子汚染の防止を可能にするために用いられてもよい。
【0043】
本明細書に定義される通り、卵生水生動物を「不妊化すること」は、個体を性的に繁殖不可能にすることを意味するように理解される。繁殖的に不妊の卵生水生動物は、成熟期に達すること、または成熟期の年齢に達したときに繁殖することができない個体として定義される。
【0044】
したがって、本開示は、繁殖的に不妊の卵生水生動物を産生する方法であって、卵(複数可)を、卵(複数可)を形質移入し、そこから産生される個体(複数可)を繁殖的に不妊にするのに有効である薬剤と接触させることを含む、方法を提供する。いくつかの態様では、薬剤は、グアニジン含有化合物の存在下で卵と接触される。いくつかの態様では、薬剤は、アンチセンスモルホリノオリゴマーである。
【0045】
繁殖的不妊の魚及び他の卵生水生動物を産生する方法は、薬剤をそれらの卵に投与して、始原生殖細胞(PGC)の発育、遊走、及び胚の生殖腺におけるコロニー形成を妨害することを含み、これは、生殖腺の発育の不良、ならびに/または細胞もしくは組織レベルでの完全及び適切な生殖腺の機能の不良、ならびに最終的には不妊の魚及び他の卵生水生動物の生成をもたらす。
【0046】
PGCは、成体の魚及び他の卵生水生動物の配偶子の前駆体である、魚胚内の細胞の集団である。PGCは、胚発生の非常に初期の段階に産生される。胚発生のより後期の段階では、PGCは、それらの元の場所から生殖腺前駆体の領域に胚を通って遊走する。それらの遊走の最後に、PGCは、発育中の生殖腺に入り、組織をコロニー形成し、配偶子形成のプロセスを開始し、成体の魚及び他の卵生水生動物において成熟した生殖腺を導く
【0047】
本開示の方法は、繁殖的に不妊の(生殖不能な)卵生水生動物の生成を可能にする。不妊化戦略は、個体において任意の他の特性に悪影響を及ぼすことなく生殖腺の発育を明確に妨害し、完全に正常であるが繁殖的に不妊である卵生水生動物の産生をもたらす。
【0048】
したがって、種々の実施形態では、本開示は、多数の胚においてPGCの発育、遊走、及び/または生存を妨害するのに好適な薬剤と卵を接触させることによって、薬剤を胚内に効率的に投与し、繁殖的に不妊である成体の魚及び他の卵生水生動物の大規模産生をもたらすための方法を提供する。本開示の方法はまた、繁殖的に不妊である成体の魚及び他の卵生水生動物の小規模産生において、単一の胚にも適用可能である。
【0049】
いくつかの態様では、そこから産生される個体(複数可)を繁殖的に不妊にするために投与される薬剤は、本開示によるグアニジン含有化合物の存在下で卵内に送達される。
図2は、生殖不能魚の産生におけるグアニジン含有化合物の適用の例を例証する。
図2に示される通り、受精卵は、グアニジン含有化合物(複数可)を含有するか、またはいずれのGCCも含有しないかのいずれかである薬剤槽中に浸漬される。卵は、槽中に24時間浸漬され、次に洗浄される。GCC(複数可)と共に槽中に浸漬された卵は、PGCの誤遊走によって生殖不能な魚をもたらし、一方GCCを伴わずに層中に浸漬された卵は、生殖可能な魚をもたらした。
【0050】
本開示の方法における使用のための薬剤としては、受精もしくは未受精卵の絨毛膜に入ることが可能であるか、または卵の侵入を助ける化合物の存在下で提供される、PGCの発育、遊走、及び/または生存を妨害することが知られている薬剤が挙げられ得る。一態様では、かかる薬剤は、PGC発育の妨害が可能であり、卵の絨毛膜を超えることが可能であるアンチセンスモルホリノオリゴマーであってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の方法に有用なアンチセンスモルホリノオリゴマーは、卵(複数可)を形質移入し、そこから産生される個体(複数可)を繁殖的に不妊にするのに有効であるアンチセンスモルホリノオリゴマーである。
【0051】
アンチセンスモルホリノオリゴマーは、mRNAの生成に対する本質的なステップである翻訳またはRNAスプライシングのいずれかを遮断することによって、遺伝子発現を過渡的に静めるために使用される。特定のアンチセンスモルホリノオリゴマーは、デッドエンド(dnd)、nanos、vasa、gnrh、またはfsh受容体を含むがそれらに限定されない、胚性生殖細胞の発育に不可欠な遺伝子の発現を過渡的に遮断または抑制するように特定することができ、それらは、生殖腺発育の不良をもたらし、最終的には不妊の魚及び他の卵生水生動物を生成する。
【0052】
したがって、本開示の一態様では、繁殖的に不妊の卵生水生動物を産生する方法であって、受精または未受精卵(複数可)を、卵(複数可)を形質移入し、そこから産生される個体(複数可)を繁殖的に不妊にするのに有効であるアンチセンスモルホリノオリゴマーと接触させることを含む、方法が提供される。いくつかの態様では、接触させることは、本明細書の開示によるグアニジン含有化合物の存在を含む。接触させることは、卵(複数可)の絨毛膜形質移入を含む。接触させることは、水活性化の時点であってもよい。
【0053】
かかる態様では、本開示は、有効なモルホリノオリゴマーを卵に投与して、始原生殖細胞(PGC)の発育、胚の生殖腺への遊走、及び胚の生殖腺内でのコロニー形成を妨害することによって、繁殖的に不妊の卵生水生動物を産生する方法に関し、これは、生殖腺の発育ならびに/または細胞もしくは組織レベルでの完全及び適切な生殖腺の機能の不良、ならびに最終的には不妊魚の生成をもたらす。
【0054】
デッドエンド(dnd)は、生殖細胞の発育に不可欠な生殖質及び生殖細胞顆粒の脊椎動物に特異的な成分である。dnd遺伝子は、生殖質及び始原生殖細胞内で特異的に発現される。dndはPGCの正常な遊走及び生存に不可欠であると考えられるため、このタンパク質を欠く胚は、不妊の成体になるように発育する。
【0055】
開示される方法は、水産養殖、水族館産業、及び侵入生物種の制御のための繁殖的不妊の魚及び他の卵生水生動物の産生に有用である。一態様では、本方法は、nanos、vasa、gnrh、またはfsh受容体を含むがそれらに限定されない、生殖腺の発育に不可欠なデッドエンドmRNA(dnd−MO)または他の遺伝子に対するアンチセンスモルホリノオリゴマーの受精卵(複数可)への投与を通じた、生殖腺の発育の妨害を含む。生殖腺の発育に不可欠な遺伝子に対するdnd−MOまたは他のアンチセンスモルホリノオリゴマーの作用は、生殖可能な生殖腺の発育の不良及び不妊の成魚を導く。
【0056】
実施形態では、dnd−MOは、胚性生殖細胞の発育に不可欠なデッドエンドタンパク質の発現を過渡的に抑制し得る。
【0057】
本開示はまた、魚におけるデッドエンド遺伝子の発現の抑制のための方法において使用するための特定のモルホリノオリゴマー配列にも関する。
【0058】
図3は、生殖腺の発育の不良、及び最終的には不妊魚の生成をもたらす、魚のデッドエンドmRNAに対する特定のモルホリノオリゴマーを投与して、始原生殖細胞(PGC)の発育を妨害することによる繁殖的不妊魚の産生に関するフローチャートである。卵がモルホリノオリゴマーで処置されない場合、それらは、生殖可能な種親となり得る。
【0059】
図3に示される通り、魚の卵(例えば、サケ科、モロネ科、またはシクリッド科に由来)は、関連する魚種のデッドエンド遺伝子に対するモルホリノオリゴマーと接触される。
図3は、水活性化及び水硬化中のデッドエンド遺伝子に対するモルホリノオリゴマーの投与を例証する。別法として、卵は、処置を施されなくてもよい。示される通り、卵がモルホリノオリゴマーと接触される場合、オリゴマーは、デッドエンドタンパク質翻訳の抑制または遮断を生じさせ、PCGの発育の妨害をもたらす。それ故、成魚は、生殖可能な生殖腺の発育がないため、生殖不能である。正常なPGC発育が認められる場合、魚は、正常な生殖可能な生殖腺の発育を有し、魚は、種親として使用され得る。
【0060】
したがって、実施形態では、アンチセンスモルホリノオリゴマーは、少なくとも1つのデッドエンド遺伝子、例えば、サケ科デッドエンド遺伝子、モロネ科デッドエンド遺伝子、またはシクリッド科デッドエンド遺伝子のうちの少なくとも1つのデッドエンド遺伝子の発現を、有効に抑制し得る。
【0061】
別の態様では、本開示は、デッドエンド、生殖細胞の生存に不可欠な本質的な遺伝子の翻訳を過渡的及び有効に抑制することができ、生殖腺の発育を特異的に妨害し、生殖不能な魚、例えば、サケ科(サケ及びマス)、モロネ科(バス)、及びシクリッド科(ティラピア及び観賞用シクリッド)等の産生をもたらす、特定のアンチセンスモルホリノオリゴマーに関する。
【0062】
別の態様では、本開示は、卵によってより容易に摂取されて、標的細胞に到達することができるモルホリノオリゴマーの短配列の同定に関する。かかる短配列は、好ましくは、参照により本明細書に組み込まれるWO2015/073819号に開示される通り、25塩基の代わりに12塩基または18塩基である。かかるモルホリノオリゴマー配列は、大西洋サケ等の冷水種における生殖細胞の発育に不可欠な特定の遺伝子の発現を、より効率的に過渡的に遮断することが見出されている。低い卵孵化温度は、特定の遺伝子の発現を過渡的に遮断するような、その標的mRNAに対してより安定である短モルホリノオリゴマーを作製すると考えられる。
【0063】
本開示は、サケ科のデッドエンド遺伝子の発現を過渡的及び有効に抑制することができる特定のモルホリノオリゴマー、5’−ACGCTCCTCCAT−3’(配列番号1)及びその変異体、例えば、5’−ACTTGAACGCTCCTCCAT−3’(配列番号2)にさらに関し、これは、生殖腺の発育の不良ならびに/または完全及び適切な生殖腺の機能の不良、ならびに最終的には不妊のサケ科の生成をもたらす。したがって、本開示の方法は、限定されるものではないが、とりわけ大西洋サケ、ギンザケ、チヌークサケ、シロザケ、ベニザケ、カラフトマス及びサクラマス、ニジマス、カワマス、及びブラウントラウト、コモングレイリング及びキタカワヒメマス、ならびにホッキョクイワナを含む、全てのサケ科に適用可能である。
【0064】
モルホリノオリゴマーは、列挙される配列の変異体であってもよい。これらの変形としては、限定されるものではないが、上記に列挙される全体的または部分的な配列を網羅する、他の修飾された核酸及び他のモルホリノオリゴマーが挙げられ得る。具体的には、配列番号1及び配列番号2のうちの1つ以上を含む、それから本質的になる、またはそれからなるアンチセンスオリゴマーが挙げられる。また、配列番号1及び配列番号2のうちのいずれか1つに対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%(間の全ての整数を含む)の配列同一性もしくは配列一致を有する変異体オリゴマー、ならびに/またはこれらの配列と約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチドだけ異なる変異体、好ましくは、魚卵(複数可)と接触したときに魚を繁殖的に不妊にするのに有効である変異体を含む、これらのアンチセンスオリゴマーの変異体も挙げられ得る。
【0065】
本発明の別の態様は、配列番号1及びその変異体からなるアンチセンスモルホリノオリゴマーを含む。本発明のまた別の態様は、配列番号1のヌクレオチド配列またはその変異体からなるアンチセンスモルホリノオリゴマーを含む、卵生水生動物の形質移入された卵を含む。
【0066】
本明細書に開示される方法における変異体の使用を意味するかかる文脈において使用されるように魚卵(複数可)と接触させたときに、魚を繁殖的に不妊化するのに有効である変異体は、繁殖的に不妊の魚をもたらす。実施形態では、変異体は、関心のデッドエンド遺伝子の発現を有効に抑制する。
【0067】
本開示の方法の実施形態によると、受精または未受精魚卵(複数可)(1つ以上の卵)は、関心の魚におけるデッドエンド遺伝子の発現を抑制するのに有効なアンチセンスモルホリノオリゴマーを含む浸漬媒体中に浸漬される。かかる浸漬は、好ましくは、卵(複数可)の水活性化の開始における。浸漬媒体中のアンチセンスモルホリノオリゴマーの濃度は、アンチセンスモルホリノオリゴマーが、魚卵(複数可)の絨毛膜を超えて、卵(複数可)を有効に形質移入することを可能にするのに十分であるべきである。実施形態では、かかる濃度は、典型的には、約1〜約200μM、より好ましくは約10〜約100μM、及びまたより好ましくは約20〜約60μMであろう。
【0068】
例として、浸漬媒体は典型的には、真水、半塩水、海水、塩を含有する魚の卵巣液もしくは受精希釈液、Tris(pH7〜9)、グリシン、ならびに/または0〜30%の血清、及びアプロチニンもしくはロイペプチン等のプロテアーゼ阻害剤をさらに含み得る水性媒体である。
【0069】
本開示によると、浸漬媒体は、卵(複数可)の絨毛膜の透過性を強化し得る、上記に詳述される通りのグアニジン含有化合物をさらに含んでもよい。
【0070】
魚または他の卵生水生動物の十分な不妊化をもたらすために受精卵の浸漬に必要とされる時間は、魚及び他の卵生水生動物の種に依存するが、典型的には、魚または他の卵は、モルホリノオリゴマーと任意にグアニジン含有化合物とを含有する浸漬媒体中に、約2〜約96時間、より好ましくは約4〜約72時間、及びまたより好ましくは約5〜約48時間浸漬される。
【0071】
一態様では、本開示は、魚の卵または胚のいずれかにグアニジンデンドリマーを投与して、始原生殖細胞(PGC)の発育、及び胚の生殖腺への遊走、及び胚の生殖腺内でのコロニー形成を妨害することによって、繁殖的不妊の魚及び他の卵生水生動物を産生する方法に関し、これは、生殖腺の発育の不良ならびに/または細胞もしくは組織レベルでの完全及び適切な生殖腺の機能の不良、ならびに最終的には不妊の魚及び他の卵生水生動物の生成をもたらす。
【0072】
一態様では、本開示は、例えば、当該技術分野において「Vivo」としても知られるトリアジン核を有するオクタグアニジンデンドリマー等の、トリアジン核を含むグアニジンデンドリマーに関する。かかる化合物は、米国特許第7,935,816号に説明されている。米国特許第7,935,816号の開示は、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
代表的な薬剤としてモルホリノを有する例証的なオクタグアニジンデンドリマー輸送化合物は、以下の共役体に示される:
【化3】
【0074】
本開示のモルホリノオリゴマーと共に有用である特定のグアニジンデンドリマーは、2−[(4−ニトロフェニル)オキシカルボニルヘキサメチレンカルボニルピペラジニル]−4,6−ビス{ジ−[ジ(トリフルオロアセトアミドヘキシル)アミノカルボニルオキシエチル]アミノ}トリアジンである。
【0075】
本開示は、トリアジン核を有するオクタグアニジンデンドリマーの使用にさらに関する。かかるグアニジンデンドリマーは、モルホリノオリゴマーに共有結合しているか、またはモルホリノオリゴマーに共有結合していないかのいずれであっても、モルホリノオリゴマーの絨毛膜輸送に有効である。
【0076】
別の態様では、本開示は、繁殖的に不妊の卵生水生動物を産生する方法であって、受精卵(複数可)(または胚)を、卵(複数可)を形質移入し、そこから産生される個体(複数可)を繁殖的に不妊にするのに有効であるアンチセンスモルホリノオリゴマー及びグアニジンデンドリマーと接触させることを含む、方法を企図する。
【0077】
選択されるモルホリノオリゴマーは、多数の胚においてPGCの発育、遊走、及び/または生存を妨害し、繁殖的に不妊である成体の魚及び他の卵生水生動物の大規模な産生をもたらし得る。本開示の方法はまた、繁殖的に不妊である成体の魚及び他の卵生水生動物の小規模産生において、単一の胚にも適用可能である。
【0078】
一実施形態では、繁殖的に不妊の卵生水生動物を産生する方法であって、受精または未受精魚卵(複数可)を、例えば、Vivo等のグアニジンデンドリマーと、魚及び他の卵生水生動物における生殖腺の発育に不可欠なデッドエンド遺伝子またはnanos、vasa、gnrh、もしくはfsh受容体等の他の遺伝子の発現を有効に抑制し得るアンチセンスモルホリノオリゴマーとを含む浸漬媒体中に浸漬することを含む、方法が提供される。好ましくは、グアニジンデンドリマーは、例えば、Vivo等のトリアジン核を有するオクタグアニジンデンドリマーである。アンチセンスモルホリノオリゴマーは、例えば、配列番号1または配列番号2であってもよい。
【0079】
本開示の方法の特定の態様によると、受精または未受精卵(複数可)(1つ以上)は、魚及び他の卵生水生動物における生殖腺の発育に不可欠なデッドエンド遺伝子または他の遺伝子の発現を有効に抑制し得るグアニジンデンドリマーとアンチセンスモルホリノオリゴマーとを含む浸漬媒体中に浸漬される。浸漬媒体中のアンチセンスモルホリノオリゴマーの濃度は、アンチセンスモルホリノオリゴマーが卵(複数可)の絨毛膜を超えることを可能にするのに十分であるべきである。実施形態では、かかる濃度は、典型的には約1〜約200μM、より好ましくは約10〜約100μM、さらにより好ましくは約20〜約60μMである。
【0080】
本開示の全ての態様は、水生動物の卵の絨毛膜の透過性を強化するのに有効なグアニジン含有化合物の投与または使用を含んでもよい。かかる態様では、グアニジン含有化合物は、卵の絨毛膜を形質移入するように意図される任意の薬剤に共有結合しているか、または共有結合していないかのいずれかである。
【0081】
浸漬接触は、繁殖的に不妊の魚及び水生動物の産生のための大規模な作業に適した効率的で有効な接触技術を提供することが認識されるべきではあるが、卵及び/または胚を本開示の薬剤及び化合物と接触させることは、例えば、浸漬接触を含む任意の好適な様式で、または代替的に浸漬を含まない接触によって実行され得ることが認識されるであろう。本開示の広範な実践に利用され得る非浸漬接触技術としては、限定されるものではないが、接触させるための噴霧またはドリップ方法、卵が、繁殖的不妊魚の産生に有効である本開示の薬剤もしくは化合物のうちのいずれかでコーティングされるか、または別の方法でそれを支持する担体もしくは表面と接触される乾燥移動技術、あるいは、それによって卵及び/もしくは胚が本開示の薬剤または化合物と接触される他の技術が挙げられる。接触させることは、好ましくは、非注射接触を含む。
【0082】
本開示は、一態様では、受精卵の水活性化及び水硬化中に卵を薬剤と接触させることによって、魚または他の卵生水生動物の卵に薬剤を送達することに関する(
図3)。この期間中、卵は、水を活動的に摂取する(例えば、大西洋サケの卵1個当たり最大14.83±2.05マイクロリットル)。この活動的な水摂取力は、例えば、モルホリノオリゴマー等の薬剤を卵内に投与するために使用され得る。
【0083】
本開示は、いくつかの態様では、水活性化及び水硬化から開始する時間窓の間に卵を関心の薬剤と接触させることによって、卵生水生動物の卵内に薬剤を効率的に送達する方法を説明する。種々の実施形態では、接触させることは、1つ以上の関心の薬剤(複数可)を含有する浸漬媒体中での卵の浸漬を含む。本明細書に使用されるとき、受精卵の水活性化及び水硬化は、新たに受精した卵が水と最初に接触するときに開始し、水硬化の終了までである。
【0084】
したがって、種々の態様において、本開示は、受精卵を、水活性化時に即座に開始して浸漬媒体中で薬剤と接触させることに関する。浸漬媒体中に使用される薬剤は、卵生水生動物の不妊化に寄与し得、特定の実施形態における浸漬媒体は、例えば、DNA/RNA、ホルモン、成長促進剤、防御抗原、栄養素等の材料等の、浸漬媒体と接触された卵から孵化した卵生水生動物にとって有益な追加的な薬剤または他の材料を含んでもよい。
【0085】
本開示の方法の特定の態様によると、受精卵(複数可)(1つ以上)は、アンチセンスモルホリノオリゴマーまたはグアニジン含有化合物と、魚または他の卵生水生動物における生殖腺の発育に不可欠なデッドエンド遺伝子または他の遺伝子の発現を有効に抑制し得るアンチセンスモルホリノオリゴマーとを含む水性浸漬媒体中に浸漬され、したがって水活性化を開始する。浸漬は、絨毛膜が硬化プロセスを完了するまで継続する。槽内のアンチセンスモルホリノオリゴマーの濃度は、アンチセンスモルホリノオリゴマーが卵(複数可)の絨毛膜を超えることを可能にするのに十分であるべきである。実施形態では、かかる濃度は、典型的には約1〜約200μM、より好ましくは約10〜約100μM、さらにより好ましくは約20〜約60μMである。
【0086】
本開示の方法は、卵生水生動物に適用可能である。本明細書に使用されるとき、卵生水生動物は、全ての魚種ならびに甲殻類及び/または軟体動物等の他の卵生水生動物を含む、水系動物の卵を有する種を含む。
【0087】
したがって、卵生水生動物としては、限定されるものではないが、サケ、大西洋サケ、ギンザケ、チヌークサケ、シロザケ、ベニザケ、カラフトマス、サクラマス、マス、ニジマス、カワマス、ブラウントラウト、コモングレイリング、キタカワヒメマス、ホッキョクイワナ、バス、交配種バス、ストライプドバス、ホワイトバス、ストライプド−ホワイトバス交配種、イエローバス、パーチ、ホワイトパーチ、イエローパーチ、ヨーロピアンパーチ、バス−パーチ交配種、ナイルティラピア、ブルーティラピア、ブルー−ナイルティラピア交配種、モザンビークティラピア、ゼブラフィッシュ、コイ種、ブリーム、シーブリーム、タイ、ナマズ種、及びタラを含む全ての魚種が挙げられる。
【0088】
本開示の方法は、甲殻類及び/または軟体動物等の卵生水生動物に追加的に適用可能である。かかる卵生水生動物としては、限定されるものではないが、エビ、クルマエビ、ロブスター、ザリガニ、カニ、カキ、イカ、タコ等が挙げられ得る。
【0089】
本開示の利点及び特徴は、以下の例を参照してさらに例証され、これらは、本開示の範囲をいかようにも限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ、その特定の用途における本開示の具体的な実施形態を例証するものとして解釈されるべきである。
【0091】
短い発生時間、及び毎日または毎週容易に取得される交尾当たりに産生される多数の胚のため、ゼブラフィッシュを本開示の方法の最初の例示に選択した。それに加えて、ゼブラフィッシュの胚は、透明であり、目視観察の容易さを提供し、丈夫である。胚内のPGC及び生殖腺の正常な発育は、全ての魚において見出される進化的に保存されたメカニズムである。したがって、本開示の方法は、限定されるものではないが、ブラフィッシュ、コイ種、マス種、サーモン種、ブリーム(シーブリーム及びタイを含む)、バス(海水及び淡水シーバスならびに交配種バス等を含む)、パーチ(イエローパーチ、ホワイトパーチ等)、ナマズ種、タラ、及び捕獲文化の候補である他の主要な種類を含む、全ての魚種に適用可能である。
【0092】
本明細書に説明される通り、本方法は概して、養殖された魚及び水性卵生動物に適用可能であり、これは不妊の養殖された種の産生が望ましいためである。したがって、本発明の方法は、任意の養殖された魚及び水性卵生動物の種、特に、商業的に重要な養殖種に適用可能である。
【0094】
本開示は、絨毛膜の透過性を強化することができ、大型分子等の薬剤が絨毛膜を超え、卵及び胚に到達することを可能にする特定の化学物質、例えば、グアニジン含有化合物に関する。
【0095】
ゼブラフィッシュの卵を、1μMの10、20、または40KDフルオレセインデキストランを0または40mMのいずれかのアルギニン、塩酸グアニジン、またはチオシアン酸グアニジンと共に含有する溶液中で、24時間培養した。
【0096】
蛍光写真結果は、アルギニン、塩酸グアニジン、及びチオシアン酸グアニジンが、40mMのアルギニン、塩酸グアニジン、またはチオシアン酸グアニジンで処置された卵(処置された卵)におけるフルオレセインデキストランの摂取を、フルオレセインデキストランを含有するがグアニジン含有化合物を含有しない溶液中で培養された卵(未処置の卵)における摂取よりも強化することを示唆した。
図4に示される通り、処置された卵は、処置された卵において見出されたより高い緑色蛍光によって示唆される通り、未処置の卵よりも多くのフルオレセインデキストランを摂取した。したがって、アルギニン、塩酸グアニジン、及びチオシアン酸グアニジンは、絨毛膜の透過性を強化した。
【0097】
それに加えて、3つの異なるサイズ(分子量10、20、及び40KD)のフルオレセインデキストランは全て、処置された卵によって摂取された。したがって、本発明の方法は、全ての卵生水生動物に適用可能であり、より小さい分子及びより大きい分子の両方を含む種々のサイズの分子を用いて卵を形質移入するように適用可能である。
【0099】
40個のゼブラフィッシュの卵を、300μlの新鮮なタンクシステム水を含有する48ウェルプレートの各ウェルに移動させた。卵を割り当てた後、各ウェル内のシステム水を、10または100μMのポリアルギニン(9−アルギニン重合体)を含有する300μlの水で置換した。18時間の培養後、Axioplan 2蛍光顕微鏡(ZEISS、Thornwood、NY、米国)を使用して卵を検査した。顕微鏡は、DP70デジタルカメラ(Olympus、Center Valley、PA、米国)を装備する。
【0100】
図5は、本研究で取得されたマイクロ写真を示す。明視野写真結果に示される通り、高濃度のポリアルギニン/9mer(100μM)は、1時間の培養により特性化されていない凝集体を生成し、これは、10μMのポリアルギニン/9merで処置された群では見られなかった。18時間の培養後、高濃度のポリアルギニン/9mer(100μM)は、絨毛膜溶解を引き起こし、これは、10μMのポリアルギニン/9merで処置された群では見られなかった。
【0102】
40個のゼブラフィッシュの卵を、300μlの新鮮なタンクシステム水を含有する48ウェルプレートの各ウェルに移動させた。卵を割り当てた後、各ウェル内のシステム水を、0または40μMのポリアルギニン(9−アルギニン重合体)と1μMの10KDフルオレセインデキストランとを含有する300μlの水で置換した。4時間の培養後、MZ12実体顕微鏡(Leica、Buffalo Grove、米国)またはAxioplan 2蛍光顕微鏡(ZEISS、Thornwood、NY、米国)を使用して、卵を検査した。どちらの顕微鏡とも、DP70デジタルカメラ(Olympus、Center Valley、PA、米国)を装備した。
【0103】
図6A〜6Dは、本研究で取得されたマイクロ写真を示す。示される通り、ポリアルギニンは、絨毛膜の透過性を強化した。1μMの10KDフルオレセインデキストランを0または40μMのいずれかのポリアルギニンと共に含有する溶液中で培養したゼブラフィッシュの卵が、
図6A及び6Bに示される。明視野写真結果は、ポリアルギニン(
図6A)が特性化されていない凝集体を生成したことを示唆しており、これは、対照(
図6B)では見られなかった。
図6C及び
図6Dは、ポリアルギニンが、ポリアルギニンで処置された卵(
図6C)において見出された対照卵(
図6D)のものよりも高い緑色蛍光によって示唆される通り、フルオレセインデキストランの摂取を強化したことを示唆した光写真結果を示す。
【0105】
Vivoとしても知られるトリアジン核を有するデンドリマー型オクタグアニジンを、ゼブラフィッシュdnd−MOに共役させ、水中にゼブラフィッシュ胚を含有する浸漬において使用した。ゼブラフィッシュにおいて不妊性を誘発する本明細書に開示される方法の能力を、以下の投与によって試験した:
A:dnd−MO−Vivo60μMを0.5時間、40μMを2時間、20μMを3時間、10μMを4.5時間、及び5μMを14時間、投与は、水活性化及び水硬化の開始時(受精の直後)に開始した、
B:対照として水のみの溶液、
C:dnd−MO−Vivo60μMを0.5時間、40μMを2時間、20μMを3時間、10μMを4.5時間、及び5μMを14時間、投与は、受精の1時間後に開始した。
【0106】
ゼブラフィッシュにおいて、100%の不妊性の誘発は、dnd−MO−Vivoを水活性化及び水硬化時に即座に開始して投与したときにのみ達成され得る。dnd−MO−Vivoを水活性化の1時間後に投与した場合、処置された魚の44〜59%のみが、生殖不能であった(表1)。
【0109】
Vivoとしても知られるトリアジン核を有するデンドリマー型オクタグアニジンを、サケ科のdnd−MO、5’−CTGACTTGAACGCTCCTCCATTATC−3’(配列番号3)に共役させ、水中にニジマス胚を、または卵巣液もしくは受精希釈液中に未受精卵を含有する浸漬において使用した。ニジマスにおいて不妊性を誘発する本明細書に開示される方法の能力を、以下の投与によって試験した:
I:サケ科のdnd−MO−Vivo10μMを48時間、水活性化の開始時(1分間以内)に受精卵に投与
II:サケ科のdnd−MO−Vivo10μMを48時間、卵巣液の浸漬媒体を用いて未受精卵に投与。受精は、培養の48時間後に行った。
III:サケ科のdnd−MO−Vivo10μMを48時間、塩、Tris(pH8.0)、グリシン、及び5%の魚血清を含有する受精希釈液を用いて未受精卵に投与。受精は、培養の48時間後に行った。
IV:対照として、サケ科のdnd−MO−Vivoを伴わない水または浸漬媒体のみ。
【0110】
図7A〜7Gは、ニジマスにおけるサケ科のdnd−MO−Vivo処置によって誘発された生殖不能性を示す。(
図7A)処置IVからの未処置の対照雄魚の良好に発達した睾丸、(
図7B)処置IVからの未処置の対照雌魚の良好に発達した卵巣、(
図7C)薄フィラメント様組織に発育した、処置I、II、及びIIIにおけるサケ科の10μMdnd−MO−Vivo処置された魚の生殖腺、(
図7D)切除された生殖腺の顕微鏡写真、(
図7E)未処置の対照(処置IV)雄魚の睾丸の活動的精子形成、(
図7F)異なる発育段階の卵母細胞を有する未処置の対照雌(処置IV)の良好に発達した卵巣、(
図7G)生殖腺組織の組織学的検査は、高度の生殖腺構造または生殖細胞を伴わずに発育途中であるように見えるサケ科のdnd−MO−Vivo処置された魚(処置I、II、及びIII)の生殖腺を示す。
【0112】
サケ科のdnd−MO(実施例5を参照)、またはサケ科のdnd−MOに共役させ、サケ科のdnd−MO−VivoをもたらしたVivoとしても知られるトリアジン核を有するデンドリマー型オクタグアニジンを使用して、大西洋サケにおいて不妊性を誘発し、以下の投与によって試験した:
I:サケ科のdnd−MO−Vivo10μMを48時間、水活性化の開始時(1分間以内)に受精卵に投与。
II:サケ科のdnd−MO−Vivo10μMを48時間、卵巣液の浸漬媒体を用いて未受精卵に投与。卵は、培養の48時間後に受精させた。
III:サケ科のdnd−MO−Vivo10μMを48時間、塩、Tris(pH8.0)、グリシン、及び5%の魚血清を含有する浸漬媒体を用いて未受精卵に投与。受精は、培養の48時間後に行った。
IV:サケ科のdnd−MO20μMを48時間、卵巣液の浸漬媒体を用いて未受精卵に投与。卵は、培養の48時間後に受精させた。
V:サケ科のdnd−MO20μMを48時間、塩Tris(pH8.0)、グリシン、及び5%の魚血清を含有する浸漬媒体を用いて未受精卵に投与。卵は、培養の48時間後に受精させた。
VI:対照として、サケ科のdnd−MO−Vivoまたはdnd−MOのどちらも伴わない水または浸漬媒体のみ。
【0113】
図8A〜8Dは、サケ科のdnd−MOまたはdnd−MO−Vivo処置が、大西洋サケにおける生殖腺発育を遮断したことを示している。10カ月齢の大西洋サケにおける、(
図8A)未処置の(処置VI)雄の発育中の睾丸、(
図8B)未処置の(処置VI)雌の発育中の卵巣、(
図8C)薄フィラメント様組織に発育した、dnd−MO−Vivo処置(処置I、II、III)またはdnd−MO処置(処置IV、V)された魚の生殖腺、(
図8D)(
図8A)、(
図8B)、及び(
図8C)からの切除された生殖腺の顕微鏡写真。
【0114】
本開示を、特定の態様、特徴、及び例証的実施形態を参照して本明細書に記載してきたが、本開示の実用性は、そのように限定されるものではなく、むしろ多数の他の変形、修正、及び代替的実施形態に及び、本明細書の説明に基づいて本開示の分野の当業者に想起される通り、それらを包含することが理解されるであろう。それに応じて、本発明は、以下に特許請求される通り、その趣旨及び範囲内に全てのかかる変形、修正、及び代替的実施形態を含むものとして広義にみなされ、解釈されるように意図される。