特許第6756968号(P6756968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756968
(24)【登録日】2020年9月1日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】車両内装部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20200907BHJP
【FI】
   B60R7/04 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-253025(P2015-253025)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-114371(P2017-114371A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 貞行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕之
(72)【発明者】
【氏名】仲村 真人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 伸明
(72)【発明者】
【氏名】寺中 浩司
【審査官】 浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−067935(JP,U)
【文献】 特開平10−217856(JP,A)
【文献】 特開2008−189015(JP,A)
【文献】 特開2010−228561(JP,A)
【文献】 特開2001−018853(JP,A)
【文献】 特開2007−290579(JP,A)
【文献】 特開2008−189242(JP,A)
【文献】 特開2011−225151(JP,A)
【文献】 実開昭58−181652(JP,U)
【文献】 特開2010−030555(JP,A)
【文献】 特開2014−205375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
22/26
B62D 25/00−25/24
B60N 2/00−2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右の座席のシートの間に配設されるコンソールボックスと、前記コンソールボックスをフロア部材に固定する板体からなる取付ブラケットと、
前記座席のシートに設けられたシート剛性部品および同シート剛性部品にシートベルトのバックルを取り付けるバックル取付部と
を備える車両内装部材において、
前記コンソールボックスが、当該コンソールボックスの下面と当該コンソールボックスの前面との境界に沿って形成された薄肉部と、前記下面の車両前方側に車両前後方向に沿って形成された薄肉部とを有し、
前記取付ブラケットが、前記シート剛性部品の車幅方向側方に配設されるとともに、前記下面の車両前方側に車両前後方向に沿って形成された薄肉部に対向して形成された凹部を有し、
前記凹部は前記取付ブラケットの車幅方向中央に設けられ、
前記コンソールボックスの下面が前記取付ブラケットの上面のうち前記凹部を挟む車幅方向両側に固定される
ことを特徴とする車両内装部材。
【請求項2】
前記コンソールボックスが、前記下面と当該コンソールボックスの側面との境界に沿って形成された薄肉部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の車両内装部材。
【請求項3】
前記コンソールボックスが、前記前面と前記側面との境界に沿って形成された薄肉部を有する
ことを特徴とする請求項2記載の車両内装部材。
【請求項4】
前記コンソールボックスが、前記前面に上下方向に沿って延設された屈曲部を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両内装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内部に配設されるコンソールボックスを含む車両内装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1,2には、小物類を収納するボックスの底壁部の車体後方側を破断しやすくすると共に破片が飛び散らないようにしたことにより、リヤコンソール後方端部に上方から作用する衝撃荷重を効率よく吸収緩和するようにしたものが記載されている。
【0003】
また、下記特許文献3には、シート下部に車幅方向にシート補強部材を延設すると共にコンソールボックス内の下部に補強部材を設け、車両が側突を受けると側突荷重がシート補強部材から補強部材を介してセンタートンネル部に伝達される一方、補強部材の非衝突側の側壁部周辺の剛性が低くなるようにして、側壁部の乗員への干渉を緩和することにより、車両が車幅方向の荷重入力を受けたときに荷重入力と反対側のシートに着座している乗員に対する内装部材からの入力荷重を軽減するようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−030555号公報
【特許文献2】特開2014−205375号公報
【特許文献3】特開2010−280329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の車両内装部材にあっては、車両側突時に、シートや乗員が車両の幅方向中央側に移動した場合、シートや乗員とコンソールボックスとの間にシートベルトのバックルが挟まれ、バックルが変形してシートベルトを解除することが困難になる、若しくはシートベルトを解除することができない位置へバックルが移動する等の可能性があり、さらなる改善の余地があった。
【0006】
このようなことから本発明は、車両側突時にシートベルトのバックルの挟まれや変形を抑制し、乗員の救出性の更なる向上を可能とする車両内装部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る車両内装部材は、
車両の左右の座席のシートの間に配設されるコンソールボックスと、前記コンソールボックスをフロア部材に固定する板体からなる取付ブラケットと、前記座席のシートに設けられたシート剛性部品および同シート剛性部品にシートベルトのバックルを取り付けるバックル取付部とを備える車両内装部材において、
前記コンソールボックスが、当該コンソールボックスの下面と当該コンソールボックスの前面との境界に沿って形成された薄肉部と、前記下面の車両前方側に前後方向に沿って形成された薄肉部とを有し、
前記取付ブラケットが、前記シート剛性部品の車幅方向側方に配設されるとともに、前記下面の車両前方側に車両前後方向に沿って形成された薄肉部に対向して形成された凹部を有し、
前記凹部は前記取付ブラケットの車幅方向中央に設けられ、
前記コンソールボックスの下面が前記取付ブラケットの上面のうち前記凹部を挟む車幅方向両側に固定される
ことを特徴とする。
【0008】
上記の課題を解決するための第2の発明に係る車両内装部材は、
前記コンソールボックスが、前記下面と当該コンソールボックスの側面との境界に沿って形成された薄肉部を有することを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決するための第3の発明に係る車両内装部材は、
前記コンソールボックスが、前記前面と前記側面との境界に沿って形成された薄肉部を有する
ことを特徴とする。
【0010】
上記の課題を解決するための第4の発明に係る車両内装部材は、
前記コンソールボックスが、前記前面に上下方向に沿って延設された屈曲部を有する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両内装部材によれば、車両側突時にシートベルトのバックルの挟まれや変形が生じることを抑制し、乗員の救出性の更なる向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る車両内装部材を設置した車両内部の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両内装部材の衝突前の状態を側面視で示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る車両内装部材の衝突前の状態を示す下面図である。
図4】本発明の一実施形態におけるコンソールボックスの斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る車両内装部材の衝突後の状態を側面視で示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る車両内装部材の衝突後の状態を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1から図6を用いて本発明の一実施形態に係る車両内装部材の詳細を説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態において車両の左右の座席のシート1,1間には、樹脂を箱型に成形してなるコンソールボックス2が、板金からなるブラケット3を介してフロア部材7に支持されている。
【0015】
図2から図4に示すように、コンソールボックス2は、下面(以下、コンソールボックス下面と称する)21に薄肉部としての切欠部21aを備えるとともに、車両前方側の側面(以下、コンソールボックス前面と称する)22に薄肉部としての切欠部22a及び屈曲部22bを備えている。
【0016】
コンソールボックス下面21に設けられた切欠部21aは、コンソールボックス下面21の車幅方向側方及び車両前方側の外周縁に沿って略コ字状に設けられた第一の切欠部21aaと、コンソールボックス下面21の前方で第一の切欠部21aaの車幅方向中央から車両後方側へ向かって直線状に延びる第二の切欠部21abと、第二の切欠部21abを囲むように略コ字状に設けられた第三の切欠部21acとから構成されている。
【0017】
なお、本実施形態においては、コンソールボックス下面21の車両前方側に、切欠部21aa,21ab及び21acによって囲まれた二つの矩形状の領域が設けられている。また、第一の切欠部21aaは、コンソールボックス下面21とコンソールボックス前面22との境界及びコンソールボックス下面21とコンソールボックス2の車両側方側の面(以下、コンソールボックス側面と称する)23,24との境界に沿って形成された状態となっている。
【0018】
コンソールボックス前面22に設けられた切欠部22aは、コンソールボックス側面23,24との境界に沿って設けられた上下方向に延びる第四の切欠部22aa及び第五の切欠部22abと、コンソールボックス前面22の下部に設けられコンソールボックス下面21に設けられた第三の切欠部21acから連続して上下方向に延びる第六の切欠部22acとから構成されている。
【0019】
また、コンソールボックス前面22に設けられた屈曲部22bは、コンソールボックス前面22の車幅方向中央部に設けられた上下方向に延びる第一の屈曲部22baとその両側に設けられた上下方向に延びる第二の屈曲部22bb及び第三の屈曲部22bcとから構成されている。
【0020】
なお、第一の屈曲部22baの下部は第六の切欠部22acに接続されており、第二の屈曲部22bb及び第三の屈曲部22bcはそれぞれ第三の切欠部21acよりも車幅方向外側に設けられている。また、切欠部21a,22aは、コンソールボックス2の外側にノッチが開いた形状となっている。
【0021】
また、取付ブラケット3はフロア部材7に固定されており、当該取付ブラケット3のコンソールボックス下面21に対向する面(以下、取付ブラケット上面と称する)は、凹形状に曲げ加工されている。すなわち、取り付けブラケット3は、図2に示すように車幅方向中央部に設けられた取付ブラケット凹部31と、取付ブラケット凹部31の車幅方向両側にある取付ブラケット凸面32,33とを備えている。
【0022】
取付ブラケット凹部31はコンソールボックス2の第三の切欠部21acに対向して配設され、取付ブラケット凸面32,33はコンソールボックス下面21に締結され固定されている。
【0023】
ここで、図1に示すように、取付ブラケット3は、シート1を車両前後方向にスライドさせるためのシートレール等のシート剛性部品5の車幅方向側方に配設されている。そして、シートベルト(図示せず)のバックル4は、このようなシート剛性部品5に、例えばボルト等のバックル取付部材6により揺動可能に取り付けられている。バックル4はシート1に乗員が着座しシートベルトを装着している場合、取付ブラケット3よりも上方であってコンソールボックス2の下部に対応する位置に位置付けられた状態となる。
【0024】
以下、図5及び図6を用いて本実施形態において車両の側突が生じた場合のコンソールボックス2及び取付ブラケット3の変形過程について説明する。
【0025】
本実施形態では、上述したように取付ブラケット3がシート剛性部品5やシートベルトのバックル取付部材6の車幅方向側方に配設されているため、車両の側突が生じ、シート1や図示しない乗員が車幅方向中央側へ移動した場合、シート剛性部品5やシートベルトのバックル取付部6が取付ブラケット3に当接することとなり、取付ブラケット3に衝撃荷重が加わる。
【0026】
ここで、取付ブラケット3は前述したように取付ブラケット上面に取付ブラケット凹部31を有する板体であり、車幅方向の入力荷重に対して変形しやすくなっている。そのため、取付ブラケット3の車幅方向に位置するシート剛性部品5やシートベルトのバックル取付部6が当接して衝撃荷重が加わると、取付ブラケット3は、図5に示すように車幅方向に変形することとなる。
【0027】
そして、取付ブラケット3が変形すると、この取付ブラケット3の変形に伴って取付ブラケット凸面32,33に固定されたコンソールボックス下面21に荷重が伝達される。このように、コンソールボックス下面21に荷重が伝達されると、図5及び図6に示すように、第一の切欠部21aaが一部または全部破断してコンソールボックス下面21とコンソールボックス前面22及びコンソールボックス側面23,24とが一部または全部切り離され、第二,第三,第四,第五の切欠部21ab,21ac,22aa,22abが破断又は屈曲するとともに、第一,第二,第三の屈曲部22ba,22bb,22bcが屈曲して、コンソールボックス2の前方側の下部が車幅方向に変形する。
【0028】
すなわち、車両の側突が発生すると、シートベルトのバックル4の車幅方向中央側に位置する取付ブラケット3の上部及びコンソールボックス2の前方下部が車幅方向に変形することとなる。これにより、シートベルトのバックル4のコンソールボックス2側に空間が形成されるため、シートベルトのバックル4がシート1又は乗員とコンソールボックス2との間に挟まれてバックル4が変形しシートベルトを解除することが困難になったり、シートベルトの解除が不可能な位置にバックル4が移動したりすることを防止することができ、従来に比較して車両の側突時の乗員の救出性を向上させることができるのである。
【0029】
このように、本実施形態に係る車両内装部材によれば、車両の側突時に取付ブラケット3の上部とコンソールボックス2の下部の前方側とを車幅方向に変形しやすい構造としたことにより、シートベルトのバックル4の挟まれや変形を防止することができ、これにより、車両側突時の乗員救出性を従来に比較して向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、フロア部材に固定されたコンソールボックスを含む車両内装部材に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 シート
2 コンソールボックス
3 取付ブラケット
4 バックル
5 シート剛性部品
6 バックル取付部
7 フロア部材
21 コンソールボックス下面
21a,21aa,21ab,21ac 切欠部
22 コンソールボックス前面
22a,22aa,22ab,22ac 切欠部
22b,22ba,22bb,22bc 屈曲部
23,24 コンソールボックス側面
31 取付ブラケット凹部
32,33 取付ブラケット凸面
図1
図2
図3
図4
図5
図6