(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756972
(24)【登録日】2020年9月1日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】熱交換器およびこれを備えた給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 9/00 20060101AFI20200907BHJP
F24H 9/16 20060101ALI20200907BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20200907BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20200907BHJP
F28F 17/00 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
F24H9/00 A
F24H9/16 A
F28F9/02 Z
F28D7/16 D
F28F17/00 501D
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-162529(P2016-162529)
(22)【出願日】2016年8月23日
(65)【公開番号】特開2018-31495(P2018-31495A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】木村 左希子
(72)【発明者】
【氏名】廣津 誠
(72)【発明者】
【氏名】西村 和裕
(72)【発明者】
【氏名】一山 浩介
(72)【発明者】
【氏名】竹田 信宏
【審査官】
岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−31532(JP,A)
【文献】
特開2015−114003(JP,A)
【文献】
特開2011−252661(JP,A)
【文献】
特開2010−175103(JP,A)
【文献】
特開2010−48424(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1267134(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F24H 9/16
F28D 7/16
F28F 9/02
F28F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用気体から熱回収を行なうための複数の伝熱管と、
これら各伝熱管の端部開口部に連通するチャンバを内部に形成しており、かつこのチャンバに対する外部からの入水用または出湯用の開口部を有するヘッダと、
を備えている、熱交換器であって、
前記ヘッダの前記チャンバ内に配された排水用部材を、さらに備えており、
この排水用部材は、前記各伝熱管の端部開口部の外側に位置する第1の部分と、この第1の部分に繋がって設けられ、かつ前記端部開口部内に存在する水を前記第1の部分に伝わせることが可能に少なくとも一部分が前記端部開口部に進入している第2の部分と、を備えていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記第2の部分は、長さおよび幅よりも厚みが小さいプレート片状であり、かつ前記第1の部分は、前記第2の部分の基部に交差する角度で繋がった面を有している、熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱交換器であって、
前記ヘッダは、前記各伝熱管の端部に接合されたヘッダ本体部と、このヘッダ本体部に接合されることにより前記ヘッダ本体部との相互間に前記チャンバを形成するヘッダ蓋部材とを備えており、
前記排水用部材は、前記第1の部分が、前記ヘッダ本体部と前記ヘッダ蓋部材との両者間に挟まれていることにより前記ヘッダに固定されている、熱交換器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の熱交換器であって、
前記排水用部材は、前記各伝熱管の端部に接触または接近して配置されるベースプレート部と、このベースプレート部から前記各伝熱管の端部開口部内に向けて突出する複数の凸状部とを有しており、
前記ベースプレート部が、前記第1の部分であり、前記各凸状部が、前記第2の部分である、熱交換器。
【請求項5】
請求項4に記載の熱交換器であって、
前記ベースプレート部には、前記各伝熱管の端部開口部に対向する貫通孔が設けられている、熱交換器。
【請求項6】
請求項5に記載の熱交換器であって、
前記各凸状部は、前記貫通孔の周縁部から屈曲して起立するように前記ベースプレート部に一体形成された切り起こし状である、熱交換器。
【請求項7】
加熱用気体から熱回収を行なうことにより湯水を加熱するための熱交換器を備えている、給湯装置であって、
前記熱交換器として、請求項1ないし6のいずれかに記載の熱交換器が用いられていることを特徴とする、給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナによって発生させた燃焼ガスなどの加熱用気体から熱回収を行なうための熱交換器、およびこれを備えた給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置用の熱交換器の具体例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の熱交換器においては、バーナによって発生させた燃焼ガスから熱回収を行なうための複数の伝熱管の両端部に、入水用および出湯用のヘッダがそれぞれ取り付けられている。複数の伝熱管のうち、入水用のヘッダの近傍部分は、下向きに曲げられた曲げ部として形成されている。
このような構成によれば、冬季に各伝熱管内に凍結が生じることを防止することを目的として、各伝熱管から外部に水抜きを行なう場合に、各伝熱管内の水を入水用のヘッダ内に円滑に流れ込ませることが可能である。熱交換器の熱交換効率を高めるべく各伝熱管を小径にすると、水抜き作業を行なう際に、各伝熱管の端部開口部に表面張力に起因して水膜が発生し、これが原因となって水抜きが困難となる虞がある。これに対し、前記した構成によれば、伝熱管の曲げ部に存在する水の水頭圧を利用して前記水膜が発生しないようにし、水抜き作業を適切に行なうことが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術によれば、次に述べるような不具合を生じる場合がある。
すなわち、各伝熱管には前記した水頭圧を生じさせるための曲げ部を形成する必要があるが、スペース的な制約、あるいはその他の仕様条件などの制約に起因し、前記曲げ部を各伝熱管に形成することができない場合がある。このような場合には、水抜き作業時に各伝熱管の端部開口部に水膜が発生することを適切に解消することができず、水抜きが困難となる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−333343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、伝熱管の端部開口部に発生する水膜に起因して伝熱管からの水抜き作業が困難になることを、簡易な手段によって適切に解消することが可能な熱交換器、およびこれを備えた給湯装置を提供することを、その課題している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明の第1の側面により提供される熱交換器は、加熱用気体から熱回収を行なうための複数の伝熱管と、これら各伝熱管の端部開口部に連通するチャンバを内部に形成しており、かつこのチャンバに対する外部からの入水用または出湯用の開口部を有するヘッダと、を備えている、熱交換器であって、前記ヘッダの前記チャンバ内に配された排水用部材を、さらに備えており、この排水用部材は、前記各伝熱管の端部開口部の外側に位置する第1の部分と、この第1の部分に繋がって設けられ、かつ前記端部開口部内に存在する水を前記第1の部分に伝わせることが可能に少なくとも一部分が前記端部開口部に進入している第2の部分と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、各伝熱管から水抜き作業を行なう場合において、各伝熱管の端部開口部内に存在する水を、排水用部材の第2の部分から第1の部分へと伝わらせ、各伝熱管の外部に流出させることが可能である。このため、各伝熱管の端部開口部に水膜を生じないようにし、各伝熱管からの水抜きを適切に行なうことが可能となり、冬季において、各伝熱管に残存する水が凍結するといった不具合を解消することができる。
特許文献1とは異なり、伝熱管の端部に大きな水頭圧を生じさせるための曲げ部を設ける必要はない。また、排水用部材は、ヘッダ内に収容させるため、熱交換器の大型化を招くといった不具合もない。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記第2の部分は、長さおよび幅よりも厚みが小さいプレート片状であり、かつ前記第1の部分は、前記第2の部分の基部に交差する角度で繋がった面を有している。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、第2の部分が前記したプレート片状であれば、第2の部分の体積を小さくしつつ、その表面積を大きくすることができる。第2の部分の体積が小さければ、伝熱管の端部開口部の開口面積が第2の部分によって余り狭められないようにすることができる。また、第2の部分の表面積を大きくすれば、伝熱管の端部開口部内の水を第2の部分に伝わせ易くなる。一方、第1の部分が、第2の部分の基部に交差する角度で繋がった面を有していれば、第2の部分の基部から第1の部分に水を伝わり易くすることができる。したがって、水抜き作業時の排水性をより良好なものとすることが可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記ヘッダは、前記各伝熱管の端部に接合されたヘッダ本体部と、このヘッダ本体部に接合されることにより前記ヘッダ本体部との相互間に前記チャンバを形成するヘッダ蓋部材とを備えており、前記排水用部材は、前記第1の部分が、前記ヘッダ本体部と前記ヘッダ蓋部材との両者間に挟まれていることにより前記ヘッダに固定されている。
【0012】
このような構成によれば、ヘッダ内における排水用部材の位置決め固定を簡易な構成によって合理的に行なうことができる。排水用部材を固定させるための専用部品を不要とすることが可能である。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記排水用部材は、前記各伝熱管の端部に接触または接近して配置されるベースプレート部と、このベースプレート部から前記各伝熱管の端部開口部内に向けて突出する複数の凸状部とを有しており、前記ベースプレート部が、前記第1の部分であり、前記各凸状部が、前記第2の部分である。
【0014】
このような構成によれば、排水用部材の構成を簡易にしつつ、本発明が意図する作用を適切に得ることかできる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記ベースプレート部には、前記各伝熱管の端部開口部に対向する貫通孔が設けられている。
【0016】
このような構成によれば、排水用部材のベースプレート部を伝熱管の端部に接触させ、またはかなり接近させた場合であっても、この端部開口部がベースプレート部によって不当に塞がれた状態、またはこれに近い状態にならないようにし、伝熱管の端部開口部の通水性を適切に確保することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記各凸状部は、前記貫通孔の周縁部から屈曲して起立するように前記ベースプレート部に一体形成された切り起こし状である。
【0018】
このような構成によれば、排水用部材の製造が容易化され、その製造コストを廉価にすることも可能である。
【0019】
本発明の第2の側面により提供される給湯装置は、加熱用気体から熱回収を行なうことにより湯水を加熱するための熱交換器を備えている、給湯装置であって、前記熱交換器として、本発明の第1の側面により提供される熱交換器が用いられていることを特徴としている。
【0020】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される熱交換器について述べたのと同様な効果が得られる。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る熱交換器の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す熱交換器の要部分解斜視図である。
【
図5】(a)は、
図1のVa−Va断面図であり、(b)は、(a)のVb−Vb断面図であり、(c)は、(a)のVc−Vc断面図である。
【
図8】(a)は、
図6に示された排水用部材の矢視VIIIaの正面図であり、(b)は、矢視VIIIbの背面図であり、(c)は、(b)のVIIIc−VIIIc断面図である。
【
図9】
図1に示す熱交換器を備えた給湯装置の一例を示す斜視図である。
【
図11】(a)〜(c)は、本発明の他の例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1および
図2に示す熱交換器HEは、ケース1、このケース1内に収容された複数の伝熱管2、ならびに入水用および出湯用の一対のヘッダH,Haを備えている。入水用のヘッダHの内部には、伝熱管2からの水抜き時に伝熱管2の端部開口部20に水膜が生じないようにするための排水用部材3が組み込まれている。
【0025】
図3および
図4に示すように、ケース1は、全体が略直方体状であり、加熱用気体としての燃焼ガスをケース1内に流入させるための給気口11が後壁部10aに設けられている。また、伝熱管2による熱回収後の燃焼ガス(排ガス)をケース1の外部に排出するための排気口12が前壁部10bに設けられている。各伝熱管2は、たとえば平面視蛇行状であり、ケース1の横幅方向に延びる複数の直状管体部22と、これら複数の直状管体部22どうしを繋ぐ略半円弧状の複数の曲状管体部23とを有している。複数の伝熱管2は、上下高さ方向において隣接するものどうしがケース1の前後方向に適当な寸法だけ位置ずれするようにして上下高さ方向に積層されている。
【0026】
各伝熱管2の両端部2aは、ケース1の側壁部10cを貫通し、かつ入水用および出湯
用のヘッダH,Haが取り付けられた構成とされている。なお、各伝熱管2は、前下り状に傾斜した状態に設定されている。この傾斜は、各伝熱管2から凍結防止用などの水抜きを行なう場合に、各伝熱管2内の湯水を重力によって入水用のヘッダH内に流れさせるのに役立つ。本実施形態の熱交換器HEにおいては、各伝熱管2からの水抜きは、低位置にある入水用のヘッダH側から行なわせることとなる。
【0027】
図2において、入水用および出湯用のヘッダH,Haのそれぞれは、ヘッダ本体部4、およびヘッダ蓋部材5を備えている。排水用部材3は、各伝熱管2からの水抜きを適切に行なわせるためのものであるため、既述したように、入水用のヘッダHには組み込まれているが、出湯用のヘッダHaには組み込まれていない。出湯用のヘッダHaのヘッダ本体部4およびヘッダ蓋部材5は、入水用のヘッダHのそれらと基本的な構成が共通する。
【0028】
図6および
図7によく表われているように、ヘッダ本体部4は、複数の伝熱管2のそれぞれの端部2aが挿通する複数の孔部42が設けられた背板部40と、この背板部40の外周縁に突設された略長円状または略矩形状の周壁部41とを有する略カップ状である。ヘッダ蓋部材5は、外部配管接続用の継手管53が接合され、かつ入水用の開口部52が設けられた背板部50と、この背板部50の外周縁に突設された略長円状または略矩形状の周壁部51とを有している。ヘッダ本体部4とヘッダ蓋部材5とは、互いに嵌合してロウ付けなどの手段により接合されており、これらの両者間には、各伝熱管2の端部開口部20に連通するチャンバ48が形成されている(
図5を参照)。ヘッダ本体部4および各伝熱管2の端部2aも、たとえばロウ付けなどの手段により互いに接合されている。
【0029】
排水用部材3は、ステンレス製などの薄手の金属板にプレス加工を施して形成されており、ベースプレート部31、このベースプレート部31からその片側に突出する複数の凸状部32、ベースプレート部31に設けられた複数の貫通孔30、およびベースプレート部31の外周縁に突設された複数の位置決め片33を備えている。複数の凸状部32および複数の位置決め片33は、ベースプレート部31に一体形成されている。ベースプレート部31は、本発明でいう「第1の部分」の一例に相当し、各凸状部32は、本発明でいう「第2の部分」の一例に相当する。
【0030】
ベースプレート部31は、
図5に示すように、ヘッダ本体部4の周壁部41の内側に嵌入可能な形状およびサイズのプレート状の部分であり、本実施形態においては、伝熱管2の端部2a(厳密には、端面2a’)に接触するように配される。複数の凸状部32および貫通孔30は、複数の伝熱管2の端部2aに対応した配列で設けられており、各凸状部32は各伝熱管2の端部開口部20内に進入し、かつ各貫通孔30は、各伝熱管2の端部開口部20に対向するように設定される。各凸状部32は、各貫通孔30の周縁部から屈曲して起立しており、ベースプレート部31にいわゆる切り起こし加工を施すことにより形成されている(
図8も参照)。
【0031】
好ましくは、
図5(a),(c)に示すように、各凸状部32は、その長さLおよび幅Wよりも厚みtが小さいプレート片状とされており、各凸状部32の体積を小さくしつつ、表面積(水との接触面積)がやや大きめとなるように構成されている。ベースプレート部31の表裏両面は、各凸状部32の基部に交差して繋がった面となっている。このような面は、後述するように、伝熱管2内の水抜き時において、伝熱管2の端部開口部20内の水が各凸状部32の基部からベースプレート部31に伝わり易くする効果をもたらせる。
【0032】
排水用部材3の位置決め固定は、複数の位置決め片33をヘッダ本体部4およびヘッダ蓋部材5のそれぞれの周壁部41,51によって挟み付けることにより図られている。より詳しくは、
図5(a),(c)に示すように、ヘッダ本体部4の周壁部41の内周面に
は、各位置決め片33の屈曲状先端部分を係止させるための段部43が形成されており、この段部43とヘッダ蓋部材5の周壁部51の先端部との両者によって、各位置決め片33の屈曲状先端部分がクランプされている。
【0033】
好ましくは、
図6および
図7に示すように、ヘッダ蓋部材5の周壁部51の先端部には、複数の位置決め片33に対向接触させるための小サイズの複数の凸部54が設けられている。このような複数の凸部54を設ければ、複数の位置決め片33のそれぞれをヘッダ蓋部材5によって確実かつ強固に押圧することが可能である。
図5(a),(c)において、複数の位置決め片33の基部の外面側は、ヘッダ本体部4の周壁部41の内周面に当接するように形成されている。このことにより、伝熱管2の軸長方向に対して交差する方向(矢印N1,N2の方向)における排水用部材3の位置決めも図られている。排水用部材3は、好ましくは、点対称の形状に形成されている。これは、ヘッダH内に排水用部材3を組み込む際に、排水用部材3の上下の向きを間違えて組み込んでしまう虞を無くすのに役立つ。
【0034】
図9は、前記した熱交換器HEを備えた給湯装置WHの一例を示している。
この給湯装置WHは、燃焼ガスを発生させるバーナ60、燃焼用空気供給用のファン61、およびバーナケース62上に載設され、かつ前記燃焼ガスから顕熱を回収するための1次熱交換器7を備えており、熱交換器HEは、潜熱回収用の2次熱交換器として用いられている。顕熱回収後の燃焼ガスは、補助缶体79内を経由して熱交換器HEの給気口11に供給される。加熱対象の湯水は、熱交換器HEの入水用のヘッダHに供給され、複数の伝熱管2を通過して加熱された後に、出湯用のヘッダHaから1次熱交換器7の伝熱管71に供給されてさらに加熱され、その後所定の給湯先に供給される。
【0035】
1次熱交換器7は、缶体70内に伝熱管71が収容された構成であるが、この伝熱管71は複数のフィン72に貫通して接合されたフィン付きチューブであり、かつ顕熱回収用であるため、伝熱管71としては口径が比較的大きいものが用いられている。したがって、1次熱交換器7については、伝熱管71からの水抜き時に水膜が発生する虞はなく、水抜きが困難になることはない。このため、排水用部材3に相当する部材は、1次熱交換器7には設けられていない。
【0036】
次に、前記した熱交換器HEおよびこれを備えた給湯装置WHの作用について説明する。
【0037】
まず、冬季に給湯装置WHを長期間にわたって運転停止するような場合には、熱交換器HE内の凍結を防止すべく各伝熱管2からの水抜きを行なう(1次熱交換器7の伝熱管71の水抜きも同時に行なうが、その説明は省略する)。各伝熱管2の水抜きは、入水用のヘッダHへの給水を停止した状態で、各伝熱管2内の水を入水用のヘッダH内に流れ込ませることにより行なう。
【0038】
伝熱管2の水抜き時において、伝熱管2の端部開口部20内に存在する水がその表面張力によって水膜になろうとしても、この水は排水用部材3の凸状部32からベースプレート部31に伝わり、伝熱管2の外部に流出する。本実施形態では、ベースプレート部31が伝熱管2の端面2a’に接触しているため、凸状部32の基部からベースプレート部31に到達した水は、最終的には、貫通孔30を通過して伝熱管2の外部に排出される。
【0039】
なお、水に凸状部32が触れた状態においては、凸状部32の表面張力(凸状部32と空気との界面に働く界面張力)は、前記の水を凸状部32の表面に沿わせて移動させる方向の力として働く。このため、仮に、端部開口部20内に水膜が発生しようとしても、前記した力がある程度以上に大きければ、この力を利用して水膜の発生を防止する作用を得
ることも可能である(凸状部32の表面積が大きいほど、および凸状部32の親水性が高いほど、前記した力を大きくすることが可能である)。さらに、端部開口部20の水が排水用部材3を連続して伝って流れている状態において、排水用部材3が水膜(水滴サイズ)以上のボリュームの水に濡れた状態にあれば、この水がその表面張力によって端部開口部20内の水を排水用部材3側に引き込む作用も生じ、このような作用も水膜防止作用を生じさせる。
【0040】
本実施形態によれば、前記したような作用により、端部開口部20に水膜が生じないようにし、伝熱管2内に残水が発生することを適切に防止または抑制することができる。その結果、前記残水が凍結し、伝熱管2が破損するといった不具合を解消することが可能である。伝熱管2は、既述したように、水抜きを行なうことを考慮して前下がり状に傾斜した状態に設定されるが、その傾斜角は比較的小さく、水抜き時において伝熱管2の端部2a内に作用する水頭圧は低い。このため、伝熱管2の口径を小さくした場合には、本来的に水膜を生じ易いが、本実施形態によれば、そのようなことを適切に解消することが可能である。
【0041】
凸状部32は、既述したように、長さLおよび幅Wよりも厚みtが小さいプレート片状であるため、その体積は小さく、伝熱管2の端部開口部20を大きく塞ぐ不具合は適切に回避される。その一方、凸状部32の表面積については、大きくとることができるため、凸状部32を伝ってベースプレート部31側に流れようとする水量を多くすることが可能である。このことは、水膜防止効果を高める。また、ベースプレート部31は、凸状部32の基部に交差した角度で繋がった面(表裏両面)をもつが、このような構成によれば、凸状部32の基部に到達した水が前記面に進行し易い。したがって、水抜き性をより良くすることが可能である。
【0042】
本実施形態においては、水抜き作業を適切に行なうための手段として、排水用部材3をヘッダH内に組み込んでいるが、この排水用部材3は、金属板をプレス加工することにより、比較的廉価に製造することが可能である。また、排水用部材3のヘッダH内への位置決め固定は、ヘッダ本体部4およびヘッダ蓋部材5によって排水用部材3の位置決め片33を挟み付けるなどして行なわれているため、その構成は簡易であり、組み立て作業なども容易である。したがって、熱交換器HEの製造コストが大幅に上昇するといった不具合も適切に回避することが可能である。
【0043】
図10および
図11は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付すこととし、重複説明は省略する。
【0044】
図10に示す実施形態においては、排水用部材3のベースプレート部31が、伝熱管2の端部2aから離間した状態に設けられている。この離間寸法Laは、好ましくは、端部開口部20内に水膜が発生したと仮定した場合に、この水膜にベースプレート部31が接触するように、端部2aからその外側に水膜が膨出する寸法以下とされる。ただし、端部開口部20内の水は、凸状部32の表面張力(凸状部32と空気との界面に働く界面張力)によってベースプレート部31側に引き寄せられるため、前記した寸法La以上とすることも可能である。
【0045】
図11は、伝熱管2と凸状部32との位置関係の例を示している。同図(a),(b)は、凸状部32が、伝熱管2の端部開口部20内の下寄りの位置、または上寄りの位置に偏って進入している。同図(c)は、凸状部32の上下両端が端部開口部20の内周面に接触している。これらの例から理解されるように、凸状部32は、端部開口部20内に様々な態様で進入させることができる。伝熱管2に対して接触、非接触のいずれであるかも
問わない。
図示説明は省略するが、本発明においては、1つの伝熱管2の端部開口部20内に、凸状部32またはこれに類する部分を、複数進入させた構成とすることもできる。
【0046】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器、および給湯装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0047】
排水用部材は、必ずしも全体がプレート状、またはこれに近い形態に形成されていなくてもよく、たとえば帯状部材(第1の部分)の片側に、櫛歯状の複数の凸状部(第2の部分)が突設されたような形態とすることもできる。複数の伝熱管の端部開口部が、たとえば2列で並んでいる場合に、2つの排水用部材を用いることにより、これら2つの排水用部材を2列の端部開口部にそれぞれ個別に対応させて設けるといったことも可能である。本発明でいう排水用部材の第2の部分は、プレート片状とすることが好ましいものの、やはりこれに限定されない。排水用部材に親水処理を施すといった手段を採用することも可能である。
【0048】
ヘッダは、ケースとは分離したかたちで構成されたものに限らない。たとえば、ケースの側壁部を利用して構成することも可能である。具体例を挙げると、ケースの側壁部に伝熱管の端部を貫通させることにより、この部分をヘッダ本体部とし、かつこのヘッダ本体部にヘッダ蓋部材を接合することにより、ヘッダを構成することが可能である。
【0049】
伝熱管は、蛇行状の形態のものに限らず、これ以外のたとえば螺旋状、直管状などの形態のものを用いることが可能である。
本発明は、潜熱回収用の熱交換器に限らず、顕熱回収用および潜熱回収用の種別を問うことなく適用することが可能である。また、1つのケース内に1系統の水路を構成する伝熱管を収容させたもの(1缶1水路タイプ)に限らず、1つのケース内に複数系統の水路を構成する複数の伝熱管を収容させたもの(1缶2水路などの1缶複数水路タイプ)として構成することもできる。
加熱用気体は、バーナによって発生させた燃焼ガスに限らず、たとえばコージェネレーションシステムなどから排出される高温の排ガスとすることも可能である。
【符号の説明】
【0050】
HE 熱交換器
WH 給湯装置
H ヘッダ
1 ケース
2 伝熱管
2a 端部(伝熱管の)
20 端部開口部(伝熱管の)
3 排水用部材
30 貫通孔
31 ベースプレート部(第1の部分)
32 凸状部(第2の部分)
33 位置決め片
4 ヘッダ本体部
48 チャンバ
5 ヘッダ蓋部材