(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記滑落助長手段は、前記搬送方向とほぼ平行の水平軸を中心に回転し、上端が前記第1の傾斜面の切り欠き部から露出した回転体により構成される請求項2に記載の紙幣回収スタック装置。
前記回転体は、紙幣が紙幣搬送経路の拘束から離脱する直前または直後において、紙幣の先端が前記回転体に到達することが保証される位置に配置される請求項3または4に記載の紙幣回収スタック装置。
前記紙幣収納部は、前記紙幣が積み重なっていく空間を構成する周囲4面の壁面を構成する壁面部材と、底面を構成する底面部材とを有し、前記底面部材は、所定の角度だけ傾斜している請求項1から7のいずれかに記載の紙幣回収スタック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の紙幣回収スタック装置の構成では、紙幣の搬送・受け入れに関して、前後の紙幣の相互の重なりや近接は紙幣のジャムやシステムの誤動作につながるため、許容されない。
【0006】
このため、紙幣搬送システムが、既知の紙幣搬送速度と収納動作時間、および、現在搬送されている紙幣の状態(有無・位置)を把握することにより、各台間機の紙幣排出タイミングを制御し、紙幣間隔(隙間)の制御を行う必要があった。
【0007】
よって、紙幣回収スタック装置および紙幣搬送システム全体の構造が複雑で、機構部品、ハーネスが多いものとなり、特に、台間機を制御するための制御手段や、搬送紙幣の有無・位置を把握するための紙幣検知センサを紙幣搬送路上の随所に設置する必要があった。そのため、設置の工期も長く掛かるものとなっていた。
【0008】
その結果、従来のシステムでは、部品費コスト、設置工事を含めたトータルコストが高いものとなっていた。
【0009】
また、紙幣金庫の寸法については、紙幣収納方向として、島の長手方向に紙幣長手方向が沿う構成であるため、島の端部に設置された紙幣回収スタック装置の奥行寸法(島の長手方向のサイズ)が大きくなるという問題もあった。
【0010】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、その目的は、紙幣の重なりや近接を許容する、比較的低コストの紙幣回収スタック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明による紙幣回収スタック装置は、紙幣搬送経路において紙幣の長手方向を進行方向とし紙幣面を直立させた状態で搬送される紙幣を前記紙幣搬送経路から受け入れる紙幣通路部と、前記紙幣通路部の下部に配置される紙幣収納部とを備え、前記紙幣通路部は、前記受け入れた紙幣の
紙幣面を直立状態から水平状態へ傾斜させつつ紙幣の向きを回転させる一挙動の動作である方向転換にひねりが加えられた動作を紙幣に対して及ぼす方向転換手段を有し、前記紙幣収納部は、前記紙幣通路部において前記向きおよび紙幣面が変化した紙幣を重力にしたがって落下させ堆積・収納する構造を有することを特徴とするものである。
【0012】
前記方向転換手段は、受け入れた紙幣の向きを回転させるとともに、紙幣面を水平に変化させる。すなわち、方向転換と共にひねりを加えるよう機能する。これによって、紙幣を重力にしたがって落下させることにより、逐次搬送されてくる紙幣が整列された状態で、紙幣収納部に堆積・収納される。
【0013】
前記方向転換手段は、例えば、前記紙幣搬送経路から受領した紙幣の進入方向に対して向きを変更して下降するように傾斜した第1の傾斜面と、前記第1の傾斜面における前記紙幣の先端側からの滑落を助長する滑落助長手段とにより構成することができる。前記第1の傾斜面は、紙幣面を直立した状態から水平状態へ向けて紙幣を傾斜させるよう機能する。前記滑落助長手段は、紙幣の先端側が第1の傾斜面の下降方向へ滑落するのを助長することにより、紙幣の向きを変換するよう機能する。
前記滑落助長手段による作用と重力作用との協働によって、紙幣の紙幣面を直立状態から水平状態へ傾斜させつつ紙幣の向きを回転させる一挙動の動作が実現される。
【0014】
前記滑落助長手段は、例えば、前記搬送方向とほぼ平行の水平軸を中心に回転し、上端が前記第1の傾斜面の切り欠き部から露出した回転体により構成することができる。前記回転体は、紙幣の先端側を第1の傾斜面の下降方向へ付勢することにより、紙幣の向きを変換するよう機能する。
【0015】
好ましくは、前記回転体を所定の回転速度で回転させる回転駆動部を有する。この回転体は常時回転駆動されるものであってもよいし、必要時のみ回転駆動されるものであってもよい。
【0016】
前記回転体は、好ましくは、紙幣が紙幣搬送経路の拘束から離脱する直前または直後において、紙幣の先端が前記回転体に到達することが保証される位置に配置される。これにより、前記回転体が紙幣の向きを回転させるよう機能する。
【0017】
前記回転体は、例えば、羽根車を含む構成とすることができる。
【0018】
前記方向転換手段は、さらに、第2の傾斜面を有してもよい。この第2の傾斜面は、前記紙幣搬送経路から受領した紙幣が、前記進入方向に対して向きを変更して前記第1の傾斜面上を滑落する際に、
向きが変更された前記紙幣の
進行方向の後端側に当接し、当該後端側の滑落を遅延させる働きをする。これにより、前記回転体の作用と相俟って、紙幣の確実な回転が助長される。
【0019】
前記紙幣収納部は、例えば、前記紙幣が積み重なっていく空間を構成する周囲4面の壁面を構成する壁面部材と、底面を構成する底面部材とを有し、前記底面部材は、所定の角度だけ傾斜している。この構成は、前記紙幣通路部から落下してくる紙幣を整列して堆積するよう機能する。
【0020】
前記紙幣通路部は、紙幣の通過する位置に紙幣検知センサを有してもよい。この紙幣検知センサにより、紙幣通過部において紙幣のジャム等の障害が発生したことが検知される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の紙幣回収スタック装置によれば、紙幣の重なりや近接を許容する、比較的低コストの紙幣回収スタック装置が得られる。また、紙幣間隔の制御を必要としないことにより、比較的低コストの紙幣搬送システムと併用することができる。
【0022】
さらに、紙幣収納方向を転換することにより、紙幣回収スタック装置の奥行寸法を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
(島構成概略)
図1は、本実施形態による紙幣回収スタック装置を内蔵する紙幣金庫を設置した遊技場の島構成の概略を示す斜視図である。
【0026】
パチンコ等の遊技場において、島は、一定間隔で配置された複数台の遊技機30を有する。
図1の例では、複数台の遊技機30の列を2列、背中合わせに配置している。但し、遊技機30の列は2列に限るものではなく、1列であってもよい。図示の便宜上、各遊技機30は一部切り欠いて示している。各遊技機30の隣には台間機20が並設されている。台間機20は遊技媒体貸機の機能を有する。遊技客が台間機20の紙幣挿入口25に挿入した紙幣は、遊技機30の背後に島の長手方向に沿って配置された紙幣搬送カセット50により、島端部の紙幣金庫10まで搬送され、その中の紙幣回収スタック装置13内に堆積・収納されるようになっている。
図1では、紙幣金庫10はその内部の構造を示すために、扉11が開放された状態を示している。当然ながら、通常時、扉11は閉鎖され施錠されている。
【0027】
紙幣金庫10内には、このシステムを制御するための制御部(コンピュータ等を含みうる制御回路)が内蔵された制御ボックス12が配置されている。制御ボックス12には、扉11の開閉を検知するための機械的な開閉検知スイッチ12a、システムの状態等を表示するための表示部12b、およびシステムの電源を投入するための電源スイッチ(図には表れず)が設けられている。表示部12bはユーザに情報を報知するための報知手段を構成する。報知手段としては、図示しないが、表示部12bの他、音や音声を発生する手段を備えてもよい。
【0028】
各台間機20は紙幣識別機21を内蔵する。その紙幣挿入口25に挿入された紙幣Bは、紙幣識別機21を通過した後、紙幣取込機構22に取り込まれ、紙幣搬送カセット50へ送り込まれる。
【0029】
紙幣搬送カセット50は、台間機20に挿入された紙幣を、後段の紙幣取込機構22経由で、紙幣搬送路内に取り込み、紙幣金庫10まで搬送する紙幣搬送手段の一種である。通常、紙幣搬送カセット50の紙幣搬送経路において、紙幣は、その長手方向を進行方向に合わせて(すなわち横長状態で)、かつ紙幣面を直立した状態で搬送される。紙幣は、紙幣取込機構22に対向する位置で紙幣搬送カセット50に設けられた開口(例えば図示しないスリット)に挿入され、紙幣搬送カセット50内部のベルトとローラにより内部に取り込まれる。
【0030】
なお、本発明において、紙幣搬送手段の具体的な構成を限定するものではなく、台間機20に挿入された紙幣が、裸の状態で、かつ、横長直立状態で金庫へ受け渡される形態であれば足りる。
【0031】
図2は、
図1に示した島構成の平面図である。各台間機20の紙幣取込機構22は、紙幣ガイド23とローラ24とを有する。紙幣ガイド23は、台間機20に挿入された紙幣の進行方向を約45゜程度傾斜させるよう、中間で屈曲または湾曲している。これは、紙幣を、紙幣搬送カセット50に対してその搬送方向に沿う方向に傾けて挿入することにより、紙幣を紙幣搬送カセット50へ円滑かつ確実に受け渡すためである。背中合わせの遊技機30の一方の列と他方の列でベルトの走行方向が逆になるので、紙幣ガイド23の傾斜方向も逆になっている。この例では、紙幣搬送カセット50は、その一部を拡大してしめすように、内部に、回転駆動される無端のベルト(平ベルト)53とこのベルトを支持するローラ54と、ベルトに対向する一連のアイドルローラ55を有する。紙幣搬送カセット50の一端部には、少なくとも1対のローラ52が配置され、このローラ52により、後段の紙幣回収スタック装置13へ紙幣が排出される。
【0032】
(紙幣回収スタック装置の構成)
図3(a)(b)に、それぞれ、紙幣回収スタック装置13の平面図および正面図を示す。
【0033】
この紙幣回収スタック装置13は、
図1に示した金庫10内に配置されるものであり、
図3(b)の正面図によく表れるように、上半分の紙幣通路部Pと、下半分の紙幣収納部Sとからなる。
図3(a)によく表れるように、紙幣通路部Pは、上述した紙幣搬送カセット50の端部に面し、搬送されてきた紙幣Bを受け入れ、紙幣収納部Sへ送る領域である。より具体的には、紙幣通路部Pは、受け入れた紙幣の向きを所定角度(例えばほぼ90゜)回転させるとともに、紙幣面を水平に変化させる方向転換手段を有する。紙幣収納部Sは、紙幣通路部Pにおいて前記向きおよび紙幣面が変化した紙幣を重力にしたがって落下させ堆積・収納する構造を有する。
【0034】
図3(a)の平面図に示すように、紙幣通路部Pには、紙幣検知センサ116が配置される。この例では、紙幣検知センサ116を構成する1対の光センサデバイスとして、それぞれ、紙幣通路側板111に発光素子116aと、紙幣通路側板114に受光素子116bが取り付けられている。紙幣搬送カセット50のローラ52から排出された紙幣Bは発光素子116aと受光素子116bの間を通過する。発光素子116aから発した光が受光素子116bに到達すれば、その間に紙幣は存在せず、発光素子116aから発した光が受光素子116bで検知されなければ、その間に光を遮る物体(この場合には紙幣)が存在することが分かる。この紙幣検知センサ116が紙幣を検知することにより、紙幣通路部Pへの紙幣の到来を検知するとともに、所定時間以上継続して紙幣が検知され続けた場合に紙幣のジャム等の障害が発生したことが推定される。このような障害の発生が検出された場合には、制御ボックス12内の制御部の制御下で、上述した報知手段によりユーザに対する報知が行われる。ここでいう「所定時間」は、紙幣の部分的な重なりの可能性も考慮して、ある程度余裕をもった時間として決定することができる。
【0035】
図4(a)(b)に、本実施形態における紙幣回収スタック装置13の構成例の、視点を変えた2つの斜視図を示す。また、
図5(a)(b)は、それぞれ、
図4に示した紙幣回収スタック装置13の一部を削除した斜視図と、その一部部品の拡大図を示す。
【0036】
紙幣通路部Pは、その具体的な構成として、
図4によく表れるように、直立した側壁(壁面)を構成する紙幣通路側板111と、対向する側壁を構成する紙幣通路側板114、紙幣通路部正面板115、紙幣通路部天板118、および、紙幣通路側板111の下辺から横方向に傾斜して下降するメインスロープ(第1の傾斜面)112を有する。
【0037】
紙幣通路部正面板115は、紙幣通路部Pの正面側全体を被覆する壁面を構成し、内部の保守のために接続具115a,115b(例えばプッシュリベット)で着脱可能に、紙幣通路側板111,114の前端部に取り付けられる。紙幣通路部正面板115は、好ましくは、紙幣通路部Pの内部を外側から透視できるように、透明の板状部材で構成される。
【0038】
メインスロープ112は、板状部材(プレート)で構成され、紙幣搬送経路から受領した紙幣の進入方向に対して向きを変更して(例えばほぼ直角の方向に)下降するように傾斜している。その傾斜角度は図の例では水平面から約30゜であるが、これに限定するものではない。
【0039】
メインスロープ112を構成するプレートの裏側に、本発明における滑落助長手段としての羽根車113e(回転体)を有する羽根車ユニット113が配置されている。メインスロープ112のプレートには、羽根車113eを上側へ露出させるための切り欠き112aが設けられている。羽根車113eは、紙幣搬送方向とほぼ平行の水平軸を中心に回転し、上端(羽の一部)がメインスロープ112の切欠部112aから上側へ露出する。切欠部112aの形状はこの例ではほぼV字状であるが、この形状に限るものではない。羽根車113eの回転を阻害しない最小限の切り欠き面積を有するものであれば足り、また、紙幣の動作に支障とならない。切欠部112aの位置はメインスロープ112において、紙幣収納部扉131に比較的近い側である。これは、受け入れた紙幣がある程度進行した後に、その進行方向先端側に羽根車113eを作用させ、これにより紙幣の向きを転換させるためである。
【0040】
図5(b)に拡大して示すように、羽根車ユニット113の羽根車113eは、ユニット枠113aの支持アーム113b,113cに回転可能に支持された回転軸113dに中心部が固定されている。回転軸113dの一端にはギヤ113fが設けられている。ギヤ113fには、後述する駆動モータの回転が伝達される。その回転方向は、羽根車113eが当接した紙幣をメインスロープ112の傾斜面に沿って滑落するのを助長する方向(
図5の例では支持アーム113b側から見て反時計方向)である。
【0041】
羽根車113eは、この例では、中心部から一定角度間隔で放射状に8本の羽が伸びる構成を有し、好ましくは紙幣に対して比較的摩擦係数の高い、柔軟性のある部材(例えばゴムや合成樹脂等)で構成される。羽根車113eは、遊技場の運用(営業)中、常時、所定速度で回転させるか、または、紙幣通路部Pが紙幣を受け入れたことがセンサ(例えば上記紙幣検知センサ116)で検知された時点から少なくとも所定時間の間、回転を継続させる。この所定時間は、受け入れた紙幣がメインスロープ112から離脱するに十分な時間とする。このような制御は上記制御部により実行される。
【0042】
紙幣通路部Pには、第2の傾斜面としてのサブスロープ136が設けられている。サブスロープ136は、板状部材(プレート)で構成され、紙幣搬送経路から受領した紙幣が、その進入方向に対して向きを変更して(例えば、ほぼ直角の方向に)メインスロープ112(第1の傾斜面)上を滑落する際に、当該紙幣の後端側に当接し、当該後端側の滑落を遅延させるよう機能する。
【0043】
このような紙幣通路部Pの構成により、上述したとおり、紙幣搬送経路において紙幣の長手方向を進行方向とし紙幣面を直立させた状態で搬送されてきた紙幣を受け入れ、その紙幣の向きを所定角度(例えばほぼ90゜)回転させるとともに、紙幣面を水平に変化させることができる。
【0044】
紙幣収納部Sは、紙幣通路部Pにおいて向きおよび紙幣面が変化した紙幣を、重力にしたがって落下させ堆積・収納する領域である。より具体的には、紙幣収納部Sは、直立した4つの壁面を構成する第1の紙幣収納部側板133、第2の紙幣収納部側板134、紙幣収納部背面板135、および紙幣収納部扉131と、これら4つの壁面で囲まれた空間の底部に配置される紙幣収納部底板132とにより構成される。紙幣収納部Sの上部には、紙幣収納部側板133の上辺から紙幣通路側板114の下辺に亘って延びる傾斜天板137が設けられている。
【0045】
この例では、第2の紙幣収納部側板134の上部は紙幣通路部Pにまで伸びている。紙幣収納部背面板135の上部は紙幣通路部Pのサブスロープ136を構成している。
【0046】
紙幣収納部扉131はその底辺において紙幣収納部側板133,134の前方(
図5(a)の手前側)下端に回転可能に支持され、開閉動作可能に構成されている。紙幣収納部扉131には、内部を目視するための窓が設けられている。この例では窓の個数は4個であるが、これに限らない。これらの窓には透明なガラスまたは合成樹脂等の透明板状部材が配置されている。
【0047】
紙幣収納部底板132は、メインスロープ112の下降方向に沿ってその先端側へ傾斜している。この紙幣収納部底板132を傾斜させた意義は主として次の2点である。第1の意義は、進行方向を転換されつつ傾斜面を滑落していく紙幣が紙幣収納部Sに収納される際に、紙幣先端が、既に収納済みの紙幣表面に衝突するが、当該紙幣表面が傾斜していることにより、当該衝突後に傾斜に沿った円滑な滑り(場合によっては飛び跳ねて移動)を発生させ、紙幣の位置および向きが揃うように紙幣を整列させることである。収納1枚目の紙幣については、紙幣収納部底板132に直接接したのち同様に整列が行われる。また、紙幣の長手方向先端部が、紙幣収納部の滑落方向の前方の壁面に衝突した場合には、紙幣は落下し、同様に整列が行われる。第2の意義は、管理者等が紙幣束を外部へ取り出す際に、紙幣束の下側へ指が進入する空間を形成することである。
【0048】
図6(a)(b)に、それぞれ、紙幣収納部扉131を前方に開放した状態の紙幣回収スタック装置13の斜視図、および、これを背後から見た斜視図を示す。
【0049】
図6(a)によく表れるように、上記の第2の意義に関連して、紙幣収納部底板132の少なくとも右手前側に切欠部132aが設けられている。これにより、蓄積した紙幣束Wを取り出す際に、紙幣収納部底板132に邪魔されることなく、紙幣束Wの底面に直接アクセスすることができる(後述の
図7(b)参照)。
【0050】
羽根車ユニット113の羽根車113eは、ギヤ113fを介して、駆動モータ119(
図6(b)参照)により駆動される。駆動モータ119はこの例ではブラシレスACモータを想定しているが、特にこれに限定するものではない。羽根車113eの回転速度は、紙幣搬送カセット50による紙幣の搬送速度(概ね200mm/s)も考慮して、試験的または経験的に適正な範囲内の値に設定する。出願人による試験では、概して、羽根車113eの回転が遅すぎる場合には、紙幣搬送カセット50からの紙幣が、羽根の間(8本の羽の隣接同士の隙間)に入り込み、未旋回あるいは極少旋回状態で紙幣通路部正面板115に衝突し、このため、その後の十分な旋回ができない状態になり収納不良となることが確認された。逆に、羽根車の回転が速すぎる場合には、紙幣が旋回の効果を得るよりも、跳ね飛ばされる状況になり収納不良となることが確認された。よって、このような観点から、羽根車113eの適正な回転速度を定めることができる。
【0051】
(紙幣回収スタック装置の動作)
以下、
図7、
図8、
図9、
図10、
図11、
図12により、本実施形態の紙幣回収スタック装置13の動作について説明する。これらの図において、便宜上、目視上支障となる部品は図示省略している。
【0052】
図7(a)(b)(c)は、それぞれ、紙幣Bを受け入れた時点の紙幣回収スタック装置13の平面図、その斜視図、および正面図を示している。これらの図に示すように、紙幣回収スタック装置13は、紙幣搬送経路のローラ52から、紙幣Bの長手方向を進行方向とし紙幣面を直立させた状態で搬送されてきた紙幣Bを受け入れる。この図の状態では、紙幣Bの進行方向の先端はまだ羽根車113eに達していない。
【0053】
図8(a)(b)は、
図7の状態に続く、紙幣Bの向きの転換動作の過渡状態を示した正面図および斜視図である。紙幣Bが紙幣搬送カセット50の拘束から離脱する(すなわち、
図7に示した状態から、紙幣Bの後端がローラ52から解放される)直前または直後において、紙幣Bの先端に、回転する羽根車113eが当接する。羽根車113eの位置はこのような条件を満たす位置に設定される。これにより、重力の作用と相俟って、紙幣Bの紙幣面が直立状態から水平状態へ傾斜するとともに、紙幣Bの先端部がメインスロープ112の下降方向へ付勢される。
【0054】
そこで、紙幣Bは、メインスロープ112から滑落しようとするが、この時点では、
図9(a)(b)および
図10(a)(b)に示すように、紙幣Bの中央または後端側にサブスロープ136が位置する。そのため、メインスロープ112から滑落しようとする紙幣Bの中央部から後端側にサブスロープ136が当接する。また、紙幣Bの先端角部(進行方向左前側)が紙幣通路部正面板115の内壁に当接することも想定される。これにより、紙幣金庫扉11側への紙幣Bの限度範囲を超えた移動が抑止される。
【0055】
その結果、紙幣Bには、紙幣Bの向きを所定角度(例えばほぼ90゜)回転させるとともに、紙幣面を水平に変化させる力が働く。なお、万一、紙幣Bの回転動作に伴ってその先端が浮き上がったような場合には、その先端が傾斜天板137に当接する。これは、紙幣Bを下方へ落下させ、紙幣Bの動作を所期の動作へ復帰させるよう作用する。
【0056】
図11(a)(b)は、それぞれ、紙幣Bの向きの転換が完了した状態の紙幣回収スタック装置13の平面図および斜視図である。この状態から紙幣Bは、紙幣束Wの上に落下して、紙幣束Wに重なる。この際、上述したように、紙幣Bの長手方向先端部が、収納済みの傾斜した紙幣表面に衝突したり、紙幣収納部Sの滑落方向の前方の壁面(紙幣通路側板133の内壁)に衝突したりすることにより、紙幣収納部扉131と紙幣収納部背面板135の存在と相俟って、紙幣収納部S内に蓄積されようとしている紙幣Bの位置および向きが揃うように、紙幣Bが整列される。蓄積した紙幣束Wは、所定のタイミングで、回収する者が紙幣束Wを金庫内から外部へ取り出すことができる。「所定のタイミング」とは、紙幣束Wが紙幣収納部S内にほぼ満杯になった時点、またはそれまでの任意所望の時点である。ほぼ満杯になったことは、紙幣収納部扉131の窓からの目視により、または、満杯検知センサ(図示せず)の検知出力に基づいて検知することができる。満杯検知センサとしては、上記紙幣検知センサ116による紙幣の計数手段、光学的なセンサ、機械的センサ、重量センサ、等でありうる。計数手段による場合には、紙幣の重送(重なり)が生じたときに計数値に誤差が生じうるが、実測値や経験値で所定の目標計数値を設定することが可能である。
【0057】
図12に、模式的に、紙幣Bの向きが変化していく様子(過程)を示している。この図は、紙幣Bの面が直立した状態からほぼ水平状態に移行した後の、紙幣Bの回転の過渡状態の変化を示している。
【0058】
(実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、紙幣回収スタック装置内に設けた傾斜面と羽根車とを組み合わせた簡単な構造で、比較的信頼性の高いかつ安価な紙幣回収スタック装置を実現することができる。
【0059】
また、その構造上、搬送されてくる複数の紙幣が重なったり、近接したりした状態であっても、紙幣収納部への収納が許容される。(基本的には、紙幣の重なりは、部分的であっても全面的であっても構わない。)このため、従来必要であった紙幣間隔制御が不要となり、紙幣搬送システムの制御系に関するソフトウェア、電装部品、機構部品の大幅な削除、削減、簡素化を図ることができる。
【0060】
その結果、部品の低コスト化、および信頼性向上によるランニングコスト低減と併せて、設置工事の大幅簡素化によるトータルコストダウンを図ることができる。
【0061】
紙幣金庫10の寸法については、紙幣収納の原理上、収納方向が、島幅方向に紙幣長手方向となる(すなわち島長方向に紙幣短手方向となる)ため、紙幣金庫10の奥行寸法(
図1の例では紙幣金庫扉11から金庫背面板(図示せず)までの長さ)を必要最小限に抑えることが可能となる。
【0062】
紙幣収納部Sには柔軟性のある羽根車113eが僅かに突出しているのみであり、人が紙幣金庫扉11を開けて紙幣収納部Sからの紙幣(束)を外部へ取り出す際に、万―、羽根車113eの羽根に手が触れても特別な危険性はない。このため運用中(営業中)の紙幣回収が安全かつ容易に行える。(従来の紙幣回収スタック装置は、プッシャーが動く可能性があり、安全性の観点から運用中(営業中)の紙幣取り出しは好ましくない。)
【0063】
羽根車の駆動には例えばブラシレスACモータのようなモータを用いることにより信頼性が高い羽根車の動作が得られる。
【0064】
なお、本発明の紙幣回収スタック装置では、基本的には、重力による紙幣の落下を利用して紙幣の堆積・収納する構造を有するので、取り扱う紙幣のしわや折れ等の状態が懸念される。しかし、実際上、激しい“しわ紙幣”、“折れ紙幣”は、まず、台間機20の紙幣識別機21の識別段階で受付が拒否される。紙幣識別機21を通過できる紙幣においては、紙幣搬送中に紙幣搬送カセット50内でならされることで、そのしわや折れの程度が改善される。したがって誤動作(収納障害)は十分に低減されるものと考える。またもし、紙幣搬送中に何らかの原因によって、紙幣が極度に折れたり、破けたり(損傷)した場合は、収納障害となる可能性が残るが、この場合には上述の紙幣検知センサ116が機能する。なお、上記極度な折れ、破損紙幣が収納障害の原因となることは、従来のプッシャー式の装置においても同様である。
【0065】
(変形例)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。
【0066】
例えば、回転体は羽根車に限らない。一例として、弾性部材を外周に設けたローラのようなものであってもよい。
【0067】
回転体の個数は1個の場合を示したが、複数個用いる構成もありうる。その場合、各回転体の回転速度を異ならせるようにしてもよい(例えば、紙幣の進行方向前端側の回転速度を後端側のそれより速くする)。あるいは、回転体の直径の大きさを異ならせるようにしてもよい(例えば、紙幣の進行方向前端側の回転体の直径を後端側のそれより大きくする)。
【0068】
第1および第2の傾斜面としてのメインスロープおよびサブスロープは、別の部材としたが、単体の部材で構成してもよい。また、各傾斜面は平面状としたが、一部または全体が湾曲した形状であってもよい。
【0069】
滑落助長手段として、回転体の代わりに、回転体の上部の回転方向に沿う方向に空気流を吹き出すエアブロー手段(図示せず)を設けてもよい。
【0070】
滑落助長手段がなくても紙幣の向きの転換を適正に実現できる場合には、回転体が存在しない構成もありうる。
【0071】
紙幣の種類については、単一の種類のみを取り扱うもの、または、複数の種類を混在して取り扱うものを想定したが、取り扱う紙幣の種類毎に別個に上記実施形態の紙幣回収スタック装置を複数個設け、紙幣の種類を識別して分別する手段を前段に配置する等の構成とすることも可能である。