【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、平成27年度、独立行政法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム「世界の豊かな生活環境と地球規模の持続可能性に貢献するアクア・イノベーション拠点」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリイミド系樹脂を主成分とし、フィンガーライク孔を有する層と、該層を挟む、フィンガーライク孔を有さない2つの層とを有する多孔層からなり、前記2つの層のうちの一方の層の表面が酸化されている多孔質膜。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、多孔質膜、それを備えた水処理膜及びその製造方法について、図面を用いてその構成を説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0029】
(多孔質膜)
第1実施形態に係る多孔質膜は、ポリイミド系樹脂を主成分とし、フィンガーライク孔を有する層(後述する「第2層」に相当)と、該層を挟む、フィンガーライク孔を有さない2つの層(後述する「第1層」、「第3層」に相当)とを有する多孔層からなるものである。一実施形態に係る多孔質膜は、後述方法により作製したスキン層と多孔層とからなる多孔質構造体のうち、スキン層を除去することにより製造することができる。
本実施形態におけるポリイミド系樹脂とは、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子化合物であるポリイミド以外に、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド等のイミド結合を含む高分子化合物を広く含む。
【0030】
多孔質膜は、高分子成分の主成分としてポリイミド系樹脂を含む。ここで、「主成分としてポリイミド系樹脂を含む」とは、高分子成分中に、60質量%以上がポリイミド系樹脂を含むことを意味する。ポリイミド系樹脂を100質量%含む場合も含む。多孔質膜は、特に限定されるものではないが、高分子成分の主成分として、ポリイミド系樹脂を60質量%以上、100質量%以下含むことが好ましく、80質量%以上、100質量%以下含むことがより好ましい。多孔質膜は、他の高分子成分を含むものであってもよい。他の高分子成分としては、特に限定されるものではないが、ポリイミド系樹脂と相溶するものが好ましい。
【0031】
図1に、スキン層と多孔層とからなる、ポリアミドイミド製の多孔質構造の断面の電子顕微鏡(SEM)像を示す。
図1において、最も左側のSEM像は多孔質構造のほぼ全体の断面SEM像であり、矢印の先のSEM像はその矢印の根元の丸で囲んだ部分を拡大したSEM像である。
図1に示す多孔質構造の例では、スキン層は約2μmの厚さを有する。
図1のSEM像を見れば、スキン層の存在は明確であり、スキン層はそれに続く多孔層とは明らかにSEM像の見え方が異なる。
【0032】
図1に示す多孔質構造は、非溶媒誘起相分離法(NIPS:Nonsolvent Induced Phase Separation)を用いて作製されたものである。この方法を用いると、表面側から、孔のないスキン層とそれに連続した多孔層とを有する多孔質構造が形成できることが知られている(例えば、特許文献3参照)。ここで、孔のないスキン層とは、水処理膜を構成する多孔質膜として用いることができるほどの透水性を示す孔構造を有さないスキン層を意味する。スキン層は、水が透過できるサイズ(径)の孔がほとんどなく、ほぼ緻密になっている。
【0033】
図1に示す通り、非溶媒誘起相分離法で作製された多孔質構造はSEM像においてスキン層の存在は明確である。一般には、多孔質構造は、スキン層から多孔層内部に向かうにつれて細孔の孔径が除々に粗大化する、傾斜構造を有するものとなり易い(例えば、特許文献4)。すなわち、孔径はスキン層から多孔層内部へ連続的に変化していくものであり、スキン層と多孔層は単に、孔の有無で区別できるものではない。ここで、多孔質構造内の孔は互いに連通している。
スキン層と多孔層の区別は例えば、透水性の観点で行うことができる。水処理膜例えば、RO膜において、分離機能はRO機能膜が担うものである。これに対し、多孔質膜はRO機能膜で分離された水を速やかに通過させること、すなわち、透水性が高いことが求められる。この観点から、スキン層は、水処理膜において所定の透水性の確保を妨げる層であり、多孔質構造のうち、所定の透水性の確保するためには除去されるべき部分である。
本発明の一実施形態に係る多孔質膜は、所定の透水性を確保するために、多孔質構造のうち、表面から一定の深さの部分(スキン層)を除去することにより得られる。
後述する
図2に示す模式図でいうと、多孔質膜は、多孔質構造の表面から、孔径が100nmオーダー程度の孔が多い部分までにおいて一定の深さの部分を除去することにより製造することができる。孔径が100nmオーダー程度の孔が多い部分(後述する「第1層」に相当)の下には、フィンガーライクな形状(指のような形状)でその短軸方向の最大径が5〜30μm程度で長さが40〜100μm程度の大きな孔を含む部分(後述する「第2層」に相当)がある。この大きな孔を含む部分まで除去してしまうと、削り取った表面の凹凸が大き過ぎて、その上に載せる機能膜が破損しやすくなる。
【0034】
透水性を決定づける要素としては、孔の径だけでなく、孔同士を連通する通路の曲がり程度(曲路率、屈曲度係数)、親水性・疎水性などがある。これらの要素は互いに関連しており、各要素の値あるいは程度だけで透水性の大小を決めることはできない。しかしながら、孔径の大小は透水性の大小を決める主要な要因であり、孔径は透水性の大小の目安になる。
【0035】
図2(a)に、非溶媒誘起相分離法で作製された多孔質構造の断面模式図を示す。また、
図2(b)に、多孔質構造からスキン層が除去された多孔質膜の断面模式図を示す。
図2(a)に示す通り、機能膜が載せられる面側から順に、スキン層、多孔層が形成されている。
図2(a)に示す例では、多孔層は、典型的な孔径が0.05〜0.2μm程度の孔が多い部分(第1層)と、スキン層から多孔層に向かう方向に長軸を有するフィンガーライクな形状(指のような形状)でその短軸方向の典型的な最大径が5〜30μm程度で典型的な長さが40〜100μm程度の大きな孔を含む部分(第2層)と、孔径が0.1〜1μm程度の孔が多い部分(第3層)とからなる。
図1において、中央の列に縦に並ぶ3つのSEM像は上から順に第1層、第2層、第3層のSEM像である。
すなわち、多孔層は、第1層、第2層、第3層の三層構造を有する。
図1の2列目の3つのSEM像は上から順に、第1層、第2層、第3層の典型的な構造を示す。第1層が有する孔の平均サイズは通常、第3層が有する孔の平均サイズよりも小さい。
また、第1層の表面(多孔質膜を水処理膜に用いる場合、機能膜を載せる面)側に露出する孔の平均孔径を例示すると、0.05μm以上、0.2μm以下である。
なお、本明細書中に記載する「フィンガーライク孔」は、上記のフィンガーライクな形状の孔のことである。
【0036】
ここで、本明細書における孔径とは例えば、SEM像を用いて計測することができる表面の孔の孔径のことである。
例えば、必要に応じてPtスパッタ蒸着等の帯電防止処理を施した多孔質膜表面をSEMにて、2μm角程度の視野で10nm〜1000nm程度の孔径が判別できるように観察、像撮影し、観察位置を変えて10枚SEM像を撮影して、画像解析により平均の孔径を得ることができる。画像解析は、粒子径解析の規格(JIS Z 8827-1 粒子径解析-画像解析法-第1部: 静的画像解析法)に記載の手法に準拠して行うことができる。
【0037】
図3に、非溶媒誘起相分離法で作製された多孔質構造から、酸素プラズマエッチングによってスキン層を除去する前後のSEM像を示す。(a)は、スキン層を除去する前のSEM像であり、(b)は、スキン層を除去した後のSEM像である。(a)及び(b)のいずれも、左から順に、断面のSEM像、スキン層近傍を拡大したSEM像、表面側から撮ったSEM像である。断面のSEM像は目盛り1つが10μmであり、スキン層近傍を拡大したSEM像及び表面側から撮ったSEM像は目盛り1つが0.1μmである。この例では、スキン層は、0.1μmであった。
【0038】
スキン層を除去する前の表面(スキン層表面)はSEM像で平坦に見えるが、スキン層を除去した後は多孔層がむき出しとなり、最大径500nm程度の孔が多数見えている。
【0039】
スキン層の厚さは、多孔質構造を作製した非溶媒誘起相分離法の条件にもよるが、目安として一例を挙げれば、0.1〜3μm程度である。
【0040】
多孔層の厚さも、多孔質構造を作製した非溶媒誘起相分離法の条件にもよるが、目安として一例を挙げれば、30〜150μm程度である。その内訳は、孔径が0.05〜0.5μm程度の孔が多い部分が厚さ1〜5μm程度であり、より大きな孔を含む部分が厚さ40〜130μm程度であり、孔径が0.1〜1μm程度の孔が多い部分が厚さ2〜20μm程度である。
【0041】
多孔質構造からスキン層を除去した後に表面に露出した孔の孔径の最大径は500nm以下であることが好ましい。孔径が小さいと表面の凹凸も小さくなるため、多孔質膜上に載せる機能膜が破損するのを防止できる。孔径の最大径は300nm以下であることがより好ましく、孔径の最大径は200nm以下であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明の一実施形態に係る多孔質膜は、透水性が0.5[m
3/(m
2・day・MPa)]以上であることが好ましい。機能膜で分離された水を実用的なレベルで速やかに通過させるためである。この観点から、透水性は、1[m
3/(m
2・day・MPa)]以上であることがより好ましく、1.5[m
3/(m
2・day・MPa)]以上であることがさらに好ましい。
【0043】
また、本発明の一実施形態に係る多孔質膜は、透水性が200[m
3/(m
2・day・MPa)]以下であることが好ましい。これ以上大きな透水性を有する場合には、孔径が大きすぎる。これは表面の凹凸が大きいということでもあり、その結果として、その上に載せた機能膜が破損しやすくなる。この観点から、透水性は、100[m
3/(m
2・day・MPa)]以下であることがより好ましく、70[m
3/(m
2・day・MPa)] 以下であることがさらに好ましい。
【0044】
ここで、透水性とは、以下に示すハーゲン・ポアズイユの式の比例定数(Lp)のことである。
【数1】
この式において、Jvは透水量(フラックス)[m
3/(m
2・day)]、Aは単位換算のための係数[無次元]、εは表面多孔性[無次元]、ηは動粘性係数[Pa・s]、τは屈曲度係数[無次元]、Δxは膜厚[m]、ΔPは膜間差圧[MPa]、Lpは透水性[m
3/(m
2・day・MPa)]、を示す。
【0045】
透水性は例えば、以下のように評価する。まず多孔質膜の上に純水を満たし、その上からガスで加圧する。そして、加圧ろ過したときの水の透過速度を測定することにより、透水性を評価する。
【0046】
また、本発明の一実施形態に係る多孔質膜は、溶質除去テストにおいて、ブルーデキストラン2000(商品名)(分子量200万以上、GEヘルスケア・ジャパン株式会社))を分離できる(言い換えると、多孔質膜を通り抜けることができない)ことが好ましい。この溶質が分離できない(言い換えると、多孔質膜を通り抜ける)ほど孔径が大きい場合には、表面の凹凸が大きすぎる。表面の凹凸が大きいと、その上に載せた機能膜が破損しやすくなる。
【0047】
ここで、「溶質除去テストにおいて、ブルーデキストラン2000(商品名)を分離できる」とは、多孔質膜の上にブルーデキストラン2000の100質量ppm水溶液を満たして加圧ろ過した場合に、排除率95%以上であることをいう。より具体的には、以下のように算出する。まず、膜サンプルを直径25mmの円形に切り抜き、ろ過装置(撹拌型ウルトラホルダー UHP−25K、アドバンテック製)に装着する。そして装着した膜上に100質量ppmブルーデキストラン2000水溶液(原液)を約5ml入れ、その上から窒素ガスで0.3MPaに加圧し、ろ過を行い濾液を回収する。原液とろ液の吸光度(波長620nm)を測定し、ろ液中のブルーデキストラン2000の濃度を算出する。排除率R[%]は、原液中の濃度Cb[ppm]とろ液中の濃度Cp[ppm]から下記の式で算出する。
【数2】
【0048】
スキン層を除去する方法は特に制限はない。プラズマによるドライプロセスのエッチング、アルカリ溶液やクロム酸溶液によるウェットプロセスのエッチングがある。酸素プラズマを用いたエッチングによってスキン層を除去することが好ましい。この場合には、多孔質膜の表面は酸化されている。言い換えると、多孔質膜の表面は、酸素プラズマによるエッチング以外の方法でスキン層を除去した場合に比べて、酸素濃度が高くなっている。酸化の程度は目安ではあるが、酸素プラズマエッチングによるスキン層の除去により、表面のO/C比率(酸素と炭素の比率)は、30%程度増大する。このため、酸素プラズマエッチングによるスキン層の除去により、表面を親水化できるという効果がある。
【0049】
上述の通り、SEM像においてスキン層はそれに続く多孔層とは見え方は異なるものの、スキン層と多孔層とは一体に形成されたものである。孔のサイズはスキン層から多孔層内部へ連続的に変化していくものであり、スキン層と多孔層の間に明確な線引きができるものではない。従って、「スキン層を除去してなる多孔質膜」とは、従来、スキン層を有するために水処理膜の多孔質膜(機能膜の支持体)として用いることができなかった材料を、水処理膜の多孔質膜として用いることができる程度に表面層を削り取ってなる多孔質膜を意味するものである。
【0050】
実際、多孔質構造からスキン層を除去する際は、エッチング処理の条件を変えて表面層の削り深さを変え、削り深さの異なる多孔質膜ごとに多孔質膜の透水性を計測することにより、水処理膜の多孔質膜として用いることができる所定の透水性が得られる削り深さ(あるいは、エッチング処理条件)を決定する。この削り取った表面層がスキン層に相当する。こうして得られたエッチング処理条件に基づいて多孔質構造からスキン層を除去することにより、実用的に同程度の透水性を有する多孔質膜を得ることができる。
【0051】
第2実施形態に係る多孔質膜は、ポリイミド系樹脂を主成分とし、フィンガーライク孔を有する層と、該層を挟む、フィンガーライク孔を有さない2つの層とを有する多孔層からなり、2つの層のうちの一方の層(第1層)の表面が酸化されている。第2実施形態に係る多孔質膜は、第1実施形態に係る多孔質膜に比べて、フィンガーライク孔を有さない2つの層のうち一方の層(第1層の表面が酸化されている点が異なる。第2実施形態に係る多孔質膜は、スキン層と多孔層とからなる多孔質構造体の前記スキン層を酸素プラズマエッチングによって除去することにより製造できる。
第2実施形態に係る多孔質膜は、第1実施形態に係る多孔質膜と、多孔質構造体のスキン層を除去してなる点は同じであるから、第1実施形態に係る多孔質膜について述べた内容を適用できる。
【0052】
(水処理膜)
本発明の一実施形態に係る水処理膜は、上述の多孔質膜を備えたものである。具体的には例えば、UF膜においては、機能膜として上述の多孔質膜を用いたものであり、NF膜、RO膜、及び、FO膜においては、機能膜を載せる支持材として上述の多孔質膜を用いたものである。これらの水処理膜に限定されず、上述の多孔質膜の機能を適用できる水処理膜において用いることができる。
【0053】
(多孔質膜の製造方法)
本発明の一実施形態に係る多孔質膜の製造方法は、ポリイミド系樹脂又はその前駆体を溶媒に溶解して、ポリイミド系樹脂又はその前駆体を含むキャスト液を得る工程と、前記キャスト液を基材上に塗布する工程と、前記キャスト液を、非溶媒に接触させることにより、前記基材の反対側の表面にスキン層を有する多孔質構造体を形成する工程と、前記多孔質構造体を乾燥後、エッチング処理によって前記スキン層を除去する工程と、を有する。
【0054】
図4に、多孔質膜の製造方法の工程の一例を模式図で示したフロー図を示す。
図4に示したフロー図に沿って多孔質膜の製造方法を説明する。
【0055】
まず、ポリイミド系樹脂又はその前駆体を溶媒に溶解して、ポリイミド系樹脂又はその前駆体を含む多孔質膜用溶液(キャスト液)を作製する(
図4の(a))。多孔質膜用溶液には、後述の添加物も溶解させることが好ましい。
【0056】
次に、得られた多孔質膜用溶液を基材上に塗布する(
図4の(b))。
図4に示す模式図は、ドクターブレードによって塗布する様子を示すものである。
【0057】
次に、多孔質膜用溶液が塗布された基材を、非溶媒を含む凝固浴に浸漬して、非溶媒誘起相分離法によって基材と接触していない面にスキン層を有する多孔質構造体を形成する(
図4の(c))。多孔質膜用溶液が塗布された基材から凝固浴に浸漬するまでの時間を10秒以下とすることが好ましい。10秒以下であれば、塗布された多孔質膜用溶液の溶媒の蒸発量が少なく、膜構造を制御しやすいためである。
【0058】
次に、得られた多孔質構造体を50〜90℃の温度で乾燥して溶媒を除去する(
図4の(d))。次に必須ではないが、この例では、乾燥した多孔質構造体を200〜300℃の温度で硬化する(
図4の(e))。次に、硬化した多孔質構造体からプラズマエッチングによってスキン層を除去する(
図4(f))。
図4の(e)の硬化工程は、
図4の(f)のスキン層除去工程を行った後に行うこともできる。
【0059】
(d)乾燥工程、(e)硬化工程、(f)スキン層除去後の各工程ごとに、SEM観察などにより、多孔質構造体、あるいは、多孔質構造体からスキン層を除去した多孔質膜の孔構造を調べ、所望の多孔質構造体及び多孔質膜が得られるように各工程の条件を最適化することができる。
【0060】
<ポリイミド系樹脂、前駆体>
多孔質膜を構成する材料である樹脂としては、耐熱性があり、機械的強度、耐薬品性に優れているポリイミド系樹脂が用いられる。上述の通り、ポリイミド系樹脂としては、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子化合物であるポリイミド以外に、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド等のイミド結合を含む高分子化合物を広く含む。ポリアミドイミド樹脂は、通常、無水トリメリット酸とジイソシアネートとの反応、または無水トリメリット酸クロライドとジアミンとの反応により重合した後、イミド化することによって製造できる。また、ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との反応によりポリアミック酸(ポリイミド系樹脂前駆体)を得て、それをさらにイミド化することにより製造できる。多孔質層をポリイミド樹脂で構成する場合には、イミド化すると溶解性が悪くなるため、まずポリアミック酸の段階で多孔質構造を形成してからイミド化(熱イミド化、化学イミド化等)することが好ましい。
【0061】
<溶媒>
多孔質膜用溶液(キャスト液)の溶媒としては、溶解する樹脂成分の化学骨格に応じて溶解性を有するもの(樹脂成分の良溶媒)であれば特に制限はない。例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、及びこれらの混合物などを使用することができる。
【0062】
<添加物>
多孔質膜用溶液への水溶性添加物(水溶性有機化合物や水溶性ポリマー)や水の添加は、多孔質構造体をスポンジ状に多孔化するために効果的である。
水溶性添加物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリN−ビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、多糖類等やその誘導体、及びこれらの混合物などが挙げられる。なかでもジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリN−ビニルピロリドンは、多孔質構造体内部における粗大孔の形成を抑制し、多孔質膜の機械的強度を向上しうる点で好ましい。これらの水溶性添加物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、多孔質膜用溶液への水の添加により孔径を調整できる。
【0063】
水溶性添加物は、多孔質構造体を均質なスポンジ状多孔構造にするのに非常に有効であり、水溶性添加物の種類と量を変更することにより多様な構造を得ることが可能である。
このため、水溶性添加物は、所望の空孔特性を付与する目的で、多孔質膜を形成する際の添加剤として極めて好適に用いられる。
【0064】
一方、水溶性添加物は、最終的には多孔質膜を構成しない、除去すべき不要な成分である。これら不要な成分は凝固液に浸漬して相転換する工程において洗浄除去される。さらに、後述する硬化のための熱処理工程において、不要な成分は加熱により除去される。
【0065】
ただし、水溶性添加物の量を増やしていくと、孔の連通性が高くなる傾向がある。よって、連通性が低い方が好ましい場合、水溶性添加物の量は最小量とすることが好ましい。
連通性が高くなると強度が低下する傾向が見られる。そのため、水溶性添加物を溶解する樹脂の10倍以上過剰に添加することは好ましくない。また、溶解する樹脂の10倍以上の過剰の添加は洗浄時間を長くする必要が生じるので好ましくない。水溶性添加物は必須ではなく、使用しなくてもよい。
【0066】
<多孔質膜用溶液(キャスト液)>
多孔質膜用溶液における各成分の配合量を例示すると、樹脂成分100質量部に対し、水溶性添加物は0質量部以上、500質量部以下、水は0質量部以上、50質量部以下、及び、樹脂成分の溶媒は200質量部以上、900質量部以下である。
水溶性添加物は、樹脂成分100質量部に対し、0質量部以上、400質量部以下であることが好ましく、50質量部以上、300質量部以下であることがより好ましい。上述の通り、水溶性添加物の量を増やしていくと孔の連通性が高くなる。一方、水溶性添加物の量をかかる値以下にすると、樹脂成分が溶媒から析出してしまう可能性が小さくなる。
水は、樹脂成分100質量部に対し、0質量部以上、10質量部以下であることが好ましく、0質量部以上、5質量部以下であることがより好ましい。水の量をかかる値以下にすることで樹脂成分が溶媒から析出してしまう可能性が小さくなる。
樹脂成分の溶媒は、樹脂成分100質量部に対し、250質量部以上、700質量部以下であることが好ましく、300質量部以上、500質量部以下であるより好ましい。樹脂成分の溶媒の量を250質量部以上、あるいは、300質量部以上とし、樹脂成分の溶媒の量を700質量部以下、あるいは、500質量部以下とすることにより、キャスト液の粘度が低くなって塗布しづらくなる(具体的には、無孔基材の場合ははじかれることで塗布しづらくなる、多孔基材の場合は浸透し過ぎてしまうことで塗布しづらくなる)のを抑制できると共に、形成した多孔質構造の空孔率が高すぎて、もろくなることを抑制できる。
【0067】
樹脂成分の濃度が低すぎると多孔質構造体の厚みが不十分となったり、所望の空孔(孔)特性が得られにくくなったりする。一方、樹脂成分の濃度が高すぎると空孔率が小さくなる傾向にある。水溶性添加物の濃度が高すぎると多孔質膜用溶液中への樹脂成分の溶解性が悪くなる、多孔質膜の強度が低下するなどの不具合が生じやすい。これらのことから、多孔質膜溶液中の樹脂成分の濃度は、10〜30質量%が好ましい。水の添加量は孔径の調整に用いることができる。
【0068】
<基材>
多孔質膜用溶液(キャスト液)を塗布する基材としては例えば、無孔基材、多孔性基材等の基材を使用できる。
基材の表面素材の種類や粗度は、多孔質膜のはがれやすさや、多孔質膜の孔径、開孔率、平滑性に影響を与えるので、目的に応じて適宜選択するのが好ましい。
【0069】
無孔基材を使用する場合、例えば、無孔基材上に多孔質膜用溶液をフィルム状に塗布する。その後、これを凝固液(非溶媒を含む液)中に浸潰し、フィルム状多孔質構造体を基材から剥離する。そして得られたフィルム状多孔質構造体を乾燥に付す。無孔基材としては、例えば、ガラス板;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフイン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ピニリデン(PVDF)等のフッ素系樹脂、塩化ビニル樹脂、その他の樹脂からなるプラスチックシート;ステンレス、アルミニウム等の金属板などが挙げられる。表面素材と内部素材とを違うもので組合せた複合板を用いてもよい。
【0070】
多孔性基材を使用する場合、この多孔性基材をそのまま水処理膜の構成部材として用いるので、多孔性基材も耐熱性が高いことが好ましい。例えば、天然繊維、合成繊維、無機質繊維等耐熱性物質からなる織布および不織布がある。
耐熱性を有する多孔性基材としては、芳香族ポリアミド系樹脂(アラミド系樹脂)、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂(PEEK系樹脂)、ポリベンゾオキサゾール樹脂(PBO樹脂)、セルロース系繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、およびステンレス繊維を含む金属繊維等からなるものが挙げられる。
【0071】
<塗布>
多孔質膜用溶液(キャスト液)を基材上に塗布する手段としては例えば、ドクタープレード、アプリケーター等を利用することができる。目的に応じて、スピンコーティング、ディップコーティング等の手法を用いることもできる。
【0072】
<凝固液(非溶媒を含む)>
非溶媒誘起相分離法に用いる凝固裕の液としては、溶解したポリイミド系樹脂またはその前駆体成分を凝固させる溶剤(樹脂成分の非溶媒)を含むものであり、かつ、ポリイミド系樹脂成分の溶媒と混和する溶剤であれば、特に制限はない。例えば、ポリアミドイミド系樹脂又はポリアミック酸等を凝固させる溶剤であればよく、例えば、水−メタノール、エタノール等の1価アルコール、グリセリン等の多価アルコールなど、のアルコール;ポリエチレングリコール等の水溶性高分子;これらの混合物などの水溶性凝固液などが使用できる。
【0073】
<乾燥>
多孔質構造体を形成する工程後、その多孔質構造体からスキン層を除去する前に、加熱して多孔質構造体を乾燥する。
加熱温度及び加熱時間は溶媒を除去することができればよい。例えば、50〜90℃で、2〜10時間とすることができる。乾燥は例えば、大気中で行うことができる。減圧、または、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気で行ってもよい。
【0074】
<硬化>
多孔質構造体を乾燥する工程とスキン層を除去する工程との間に硬化処理を行ってもよい。
乾燥した多孔質構造体は自立できるが、スキン層除去のためのエッチング処理の前に硬化処理を行うと、ハンドリングが安定するという利点がある。
【0075】
硬化処理は、熱処理によって行ってもよい。
硬化のための加熱温度及び加熱時間は。例えば、200〜300℃で、1〜24時間とすることができる。
硬化のための熱処理は例えば、アルゴン雰囲気で行うことができる。減圧または、窒素ガス、大気雰囲気で行ってもよい。
【0076】
<エッチング>
多孔質構造体からスキン層を除去することができれば、エッチング方法は特に制限はない。例えば、プラズマエッチング、アルカリ溶液等の薬剤によるエッチングを用いることができる。プラズマエッチングは、多孔質構造体から削り取る量を制御しやすい。
上述の通り、非溶媒誘起相分離法で作製された多孔質構造において、孔径はスキン層から多孔層内部(第1層)へ連続的に変化していく。そのため、削り取る量を制御することにより、削り取られた表面に露出する平均孔径を制御できる。例えば、削り取る量を制御することにより、所望の透水量の多孔質膜を得ることができる。
【0077】
プラズマエッチングは、平行平板電極を用いて行うことができる。平行平板電極を用いたプラズマエッチングによれば、多孔質構造体の表面に対して平行なスキン層の除去を行うことができる。
【0078】
プラズマエッチングとしては、酸素プラズマエッチング、アルゴン、窒素でのプラズマエッチングを用いることができる。
酸素プラズマエッチングを用いた場合には、多孔質膜の表面を親水化することができ、透水性をより向上させることが可能となる。
【0079】
上述の多孔質膜の製造方法によれば、多孔質構造体表面から削り取る量を制御することにより、表面における孔の孔径が制御された多孔質膜を製造することができる。すなわち、多孔質構造体はその表面から多孔膜内部に向かって徐々に平均孔径の大きな孔を含むから、削り取る量を大きくしていくことで表面における孔の孔径を大きなものとすることができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
ポリアミドイミド樹脂(ソルベイアドバンストポリマーズ社製、トーロン4000T−LV(商品名))を、170℃の減圧乾燥器で12時間、乾燥を行った。乾燥後のポリアミドイミド樹脂100質量部を、NMP(和光純薬工業株式会社製、和光特級)350質量部に入れ、ガラスボトル中で、50℃のロータリーミキサーで5日間混合し、溶解させ、ポリアミドイミド樹脂溶液を調製した。
【0082】
次に、PP(ポリプロピレン)容器に、ポリアミドイミド樹脂溶液およびPEG200((ポリエチレングリコール200)(和光純薬工業株式会社製、和光一級))100質量部について所定量を量りとり、遊星撹拌装置(株式会社シンキー製、商品名「あわとり練太郎(登録商標)シンキーARE−310」)を用いて、混合、脱泡し、多孔質膜用溶液(キャスト液)を調製した。
【0083】
次に、ガラス板(基材)にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)テープ(厚み180μm、幅5mm)をギャップスペーサとして、調製した多孔質膜用溶液を70mm×100mmの範囲にドクターブレードを用いて塗布した。塗布後、直ちに純水を張った槽にガラス板を投入し、非溶媒誘起相分離法(NIPS)により、塗布膜をゲル化させた。塗布膜はゲル化により、ガラス板から自然に剥離した。
【0084】
次に、剥離した塗布膜をセルロース5Cろ紙にはさみ、その上下からガラス板ではさんだ状態で乾燥器内に投入し、大気雰囲気で80℃で4時間乾燥した。この後、ろ紙から取り出して、グラフォイルGTA(商品名)ではさみ、ガスパージ炉内に移し、アルゴン流通雰囲気下、280℃、1時間保持して硬化させた。
【0085】
以上の工程によって、スキン層を有するポリアミドイミド多孔質構造体(孔は連通している)を得た。
このスキン層を有するポリアミドイミド多孔質構造体を、平行平板高周波プラズマ処理装置(サムコ株式会社製、RFプラズマエッチングシステムFA−1(製品名))を用いて、酸素雰囲気下、高周波プラズマ処理を50Wで60秒を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(比較例1)
作製条件としては、酸素プラズマエッチングを行わなかった点以外は、実施例1の作製条件と同じであった。
【0087】
表1に示す通り、酸素プラズマエッチングを行わなかった多孔質膜(多孔質構造そのまま)では、透水できず、また、溶質も通らなかった。
【0088】
【表1】
【0089】
表1において、略称で記載したものは以下の通りである。
(A)溶媒
A−1:NMP(N−メチル−2−ピロリドン)
(B)ポリイミド系樹脂
B−1:LVは、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のポリアミドイミドである(トーロン4000T−LV(商品名))。
B−2:AI−002は、日立化成工業株式会社製のポリアミドイミドである。
(C)添加物
C−1:DEGは、和光純薬工業株式会社製、和光特級のジエチレングリコールである。
C−2:PEG200(商品名)は、和光純薬工業株式会社製、和光一級の平均分子量180〜220のポリエチレングリコールである。
C−3:PVPK30は、株式会社日本触媒製のポリN−ビニルピロリドンである。
C−4:PVPK85は、株式会社日本触媒製のポリN−ビニルピロリドンである。
[基材]
SUSは、日本精線株式会社製のステンレス繊維フィルターである(ナスロンフィルター(商品名))。
[溶質]
BDは、GEヘルスケア・ジャパン社製の分子量2,000,000のBlue Dextran 2000(商品名)である。流体力学直径(hydrodynamic diameter)は、50〜60nmである。
チトクロームCは、和光純薬工業株式会社製、生化学用のCytochrome cである。ウマ心臓由来のものであり、TCA処理がなされている。流体力学直径は、3〜5nmである。
DR80は、東京化成工業株式会社製のDirect Red 80である。流体力学直径は1〜2nmである。
【0090】
図5(a)に、実施例1で製造された多孔質膜の表面側(基材と接触していない側)から撮ったSEM像を示す。
図5(b)は、酸素プラズマエッチング処理なしで、単にアルゴン雰囲気中で実施例1と同じ時間加熱処理を行った多孔質膜の表面側から撮った比較例1のSEM像である。
図5(a)及び(b)のいずれも、下のSEM像は、上のSEM像の10倍に拡大したものである。上のSEM像は目盛り1つが1μmであり、下のSEM像は目盛り1つが0.1μmである。
図5(a)のSEM像から、実施例1で製造された多孔質膜の表面の孔は、その孔径の最大径は200nm程度で、平均の孔径は50nm程度のものが露出していることがわかる。
これに対して、
図5(b)の比較例1のSEM像から、酸素プラズマエッチング処理なしで、単にアルゴン雰囲気中で実施例1と同じ時間加熱処理を行っただけでは、水処理膜用の多孔質膜に必要な孔径の表面が得られないことが分かった。
【0091】
実施例1で製造された多孔質膜では、透水性は40[m
3/(m
2・day・MPa)]であった。また、BDは分離できたが、チトクロームC及びDR80は分離できなかった。
【0092】
図6(a)に、酸素プラズマエッチング処理前の表面(比較例1)についてXPS測定を行った結果、
図6(b)に酸素プラズマエッチング処理後(スキン層除去後;実施例1)の表面についてXPS測定を行った結果を示す。
図6(a)及び図(b)のグラフにおいて、横軸は結合エネルギー(eV)であり、縦軸は強度(cps:counts per second)である。XPSの測定結果に基づき、表面のC、N、及びOの濃度を算出した結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
酸素プラズマエッチング処理前後で、表面のO/Cは、0.17から0.30と70%以上大きくなっていた。
スキン層の除去のために行った酸素プラズマエッチングによって、表面が酸化されたことがわかった。
【0095】
(実施例2)
作製条件としては、添加物がDEGであった点、酸素プラズマエッチング時間が30秒であった点以外は、実施例1の作製条件と同じであった。
【0096】
実施例2で製造された多孔質膜では、透水性は2.5[m
3/(m
2・day・MPa)]であった。
また、BD、チトクロームC及びDR80のいずれも分離できた。
このように、添加物及びプラズマエッチング時間を変えても、本発明の多孔質膜を製造することができた。
【0097】
図7(a)に、実施例2で製造された多孔質膜の表面側から撮ったSEM像を示す。
図7(b)は、酸素プラズマエッチング時間が60秒であった点以外は、実施例2と同じ条件で製造された多孔質膜の表面側から撮ったSEM像である。
図7(a)及び(b)のいずれも、下のSEM像は、上のSEM像の10倍に拡大したものである。上のSEM像は目盛り1つが1μmであり、下のSEM像は目盛り1つが0.1μmである。
図7(a)のSEM像から、実施例2で製造された多孔質膜の表面の孔は、その孔径の最大径は70nm程度で、平均の孔径は20nm程度のものが露出していることがわかる。
これに対して、
図7(b)のSEM像から、酸素プラズマエッチング時間を実施例2の2倍にすることによって、露出された表面の孔の径は実施例2の場合には比べてかなり大きくなっていることがわかる。このように、プラズマエッチング時間によって、削り取る深さを変えて、表面の孔の径、表面の凹凸を制御できることがわかる。
【0098】
(実施例3)
作製条件としては、ポリイミド系樹脂がAI002であった点以外は、実施例1の作製条件と同じであった。
【0099】
実施例3で製造された多孔質膜では、透水性は5[m
3/(m
2・day・MPa)]であった。また、BD及びチトクロームCは分離できたが、DR80は分離できなかった。
このように、ポリイミド系樹脂を変えても、所定の多孔質膜を製造することができた。
【0100】
(実施例4)
作製条件としては、添加物がPEG200の他にPVPK85であった点、酸素プラズマエッチング時間が180秒であった点以外は、実施例1の作製条件と同じであった。
【0101】
実施例4で製造された多孔質膜では、透水性は10[m
3/(m
2・day・MPa)]であった。また、BD及びチトクロームCは分離できたが、DR80は分離できなかった。
このように、添加物及びプラズマエッチング時間を変えても、所定の多孔質膜を製造することができた。
【0102】
(実施例5)
作製条件としては、添加物がPEG200の他にPVPK30であった点、酸素プラズマエッチング時間が120秒であった点以外は、実施例1の作製条件と同じであった。
【0103】
実施例5で製造された多孔質膜では、透水性は1.5[m
3/(m
2・day・MPa)]であった。また、BD及びチトクロームCは分離できたが、DR80は分離できなかった。
このように、添加物及びプラズマエッチング時間を変えても、所定の多孔質膜を製造することができた。
【0104】
(実施例6)
作製条件としては、塗布基材が多孔質のSUS(ステンレス繊維)であった点以外は、実施例1の作製条件と同じであった。多孔質のSUSの基材はガラス板の基材と異なり、NIPSによって自然に塗布膜が剥離することはない。そのため、乾燥、硬化、エッチング処理は塗布膜が多孔質のSUSの基材についている状態で行った。
【0105】
実施例6で製造された多孔質膜では、透水性は30[m
3/(m
2・day・MPa)]であった。また、BDは分離できたが、チトクロームC及びDR80は分離できなかった。
このように、基材の種類を変えても、所定の多孔質膜を製造することができた。