特許第6757102号(P6757102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757102
(24)【登録日】2020年9月1日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】ジェットファンの支持構造
(51)【国際特許分類】
   E21F 1/00 20060101AFI20200907BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   E21F1/00 Z
   F24F7/06 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-109975(P2018-109975)
(22)【出願日】2018年6月8日
(65)【公開番号】特開2019-210767(P2019-210767A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2019年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151058
【氏名又は名称】株式会社電業社機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】野村 育生
(72)【発明者】
【氏名】野口 寛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇史
(72)【発明者】
【氏名】池澤 勝志
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−364300(JP,A)
【文献】 特開2018−053619(JP,A)
【文献】 特開平04−175500(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00606108(EP,A1)
【文献】 特開平10−030629(JP,A)
【文献】 特開2009−052977(JP,A)
【文献】 特開2005−036977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 1/00−17/18
F24F 7/04−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内を換気するジェットファンを、前記トンネルの天井壁に固定した吊持部材に吊り下げ固定するジェットファンの支持構造であって、
前記吊持部材に一端部が連結された中間連結部材と、
前記ジェットファンの筒状ケーシングに固定され前記中間連結部材の他端部に連結されたケーシング側連結部材とを備え、
前記ケーシング側連結部材が、環状部又は逆U字状部を有し、
前記中間連結部材が、前記他端部に設けられ前記環状部又は前記逆U字状部に挿通されたピンを先端部に備えたシャックル部と、
前記ピンが挿通される貫通孔を有していると共に前記ピンと前記環状部又は前記逆U字状部との間に嵌め込まれたスリーブ部材とを備え、
前記スリーブ部材が、前記環状部又は前記逆U字状部の内周面側が嵌め込まれる溝部を有していることを特徴とするジェットファンの支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載のジェットファンの支持構造において、
前記スリーブ部材が、軸方向中央で互いに着脱可能に分割された一対の分割部材であることを特徴とするジェットファンの支持構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のジェットファンの支持構造において、
前記溝部が、前記環状部又は前記逆U字状部の内周面に沿った断面形状を有していることを特徴とするジェットファンの支持構造。
【請求項4】
請求項3に記載のジェットファンの支持構造において、
前記環状部又は前記逆U字状部の少なくとも先端部が、断面円形状であり、
前記溝部が、断面円弧状であることを特徴とするジェットファンの支持構造。
【請求項5】
請求項3に記載のジェットファンの支持構造において、
前記環状部又は前記逆U字状部の少なくとも先端部が、断面矩形状であり、
前記溝部が、断面矩形状であることを特徴とするジェットファンの支持構造。
【請求項6】
請求項4に記載のジェットファンの支持構造において、
前記溝部の断面形状が、半円よりも長い円弧状であることを特徴とするジェットファンの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路トンネル等のトンネルの天井壁に吊り下げて設置されるジェットファンの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路トンネル内の換気を行うために、トンネルの天井壁にジェットファンが吊り下げて設置されている。通常、ジェットファンの支持構造は、図13に示すように、ジェットファン10の円筒状ケーシング12に複数の連結部材が接続されて構成されている。例えば、円筒状ケーシング12の中央部分の側部外壁には、4つのケーシング側連結部材13が配設されると共に、これらの上方位置のトンネル天井壁14に4つの天井壁側部吊持部材15が設けられ、4つのケーシング側連結部材13と4つの天井壁側部吊持部材15とが、ターンバックルである4本の中央部連結部材16によってそれぞれ連結される。
【0003】
また、円筒状ケーシング12の軸方向両端部の頂部には、それぞれケーシング側頂部支持部材17が配設されると共に、これらの上方位置のトンネル天井壁14に2つの天井壁頂部吊持部材18が配設され、2つのケーシング側頂部支持部材17と2つの天井壁頂部吊持部材18とがそれぞれターンバックルである2つの端部連結部材20によって連結される。
【0004】
このように複数のケーシング側連結部材13と、これらに連結される複数の中央部連結部材16とによりジェットファン10の質量が支持される。
また、複数の端部連結部材20により、ジェットファン10の軸方向への揺動が規制される。
【0005】
上記ケーシング側連結部材13は、図14及び図15に示すように、いわゆるアイボルト又はUボルト等が採用される。また、中央連結部材16は、端部にシャックル部19が設けられており、ケーシング側連結部材13をシャックル部19の両端部間に配した状態でピン19aをシャックル部19及びケーシング側連結部材13とに挿通させて中央連結部材16と円筒状ケーシング12との連結が行われている。
【0006】
通常、図15に示すように、ケーシング側連結部材13の径方向断面形状は円形であり、またピン19aの径方向断面形状も円形であるため、ケーシング側連結部材13とピン19aとの接触部は1点で接触した点接触の状態で連結されている。
なお、中央連結部材16のシャックル部19は、二股部19cと、ピン19aと、ピン19aを固定するナット19bとで構成されている。また、二股部19cの一対の先端部には、ピン19aを挿通するピン挿通用孔19dが形成されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、上述したような端部にシャックル部を有した連結部材でジェットファンを支持した構造が記載されている。
また、この特許文献1では、方向安定用ターンバックルと吊金具との間に介在物として当てボルトを設け、ジェットファンの大きな揺動を抑える技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016−79689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の技術において、以下の課題が残されている。
近年、地球温暖化対策の一環として省エネルギー化の推進が必須となっており、ジェットファンの運転方法が運転台数を制御する運転方法から、インバータで回転数を制御する運転方法に移行しつつある。回転数を制御する運転方法にあっては、回転数の変化によってジェットファンに振動が発生することがあるため、ジェットファンには広範囲の回転速度において振動の小さい安定した運転性能が求められている。なお、ジェットファンの振動の発生原因として、回転体である羽根車の回転による推力の発生やアンバランスによる遠心力の作用がある。また、経年変化により振動が増加することもある。このような原因によって振動が発生すると、回転体の軸受が発熱し、それが継続することによって短期間に軸受が損傷するなどの重大な事故につながる恐れがあった。
従来のジェットファンの支持構造では、ジェットファン本体の質量を支える連結部材(一例としてターンバックル)のシャックル部のピンと円筒状ケーシングに配設された連結部材(一例としてアイボルト)とが直接的かつ一点接触の状態で連結されているため、ジェットファンの振動に伴うシャックル部のピンとケーシング側連結部材との軸方向の摺動摩擦が小さかった。そのため、この連結部において振動が吸収されず、ジェットファンの振動が減衰し難いという問題があった。
また、特許文献1に記載のジェットファンの支持構造では、ジェットファンがトンネル内の気流に対して逆方向の運転を行う場合に生じる大きな揺動を抑えているが、発生する振動を抑制するまでには至っていない。
【0010】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、回転数の変化等による振動を抑制することが可能なジェットファンの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るジェットファンの支持構造は、トンネル内を換気するジェットファンを、前記トンネルの天井壁に固定した吊持部材に吊り下げ固定するジェットファンの支持構造であって、前記吊持部材に一端部が連結された中間連結部材と、前記ジェットファンの筒状ケーシングに固定され前記中間連結部材の他端部に連結されたケーシング側連結部材とを備え、前記ケーシング側連結部材が、環状部又は逆U字状部を有し、前記中間連結部材が、前記他端部に設けられ前記環状部又は前記逆U字状部に挿通されたピンを先端部に備えたシャックル部と、前記ピンが挿通される貫通孔を有していると共に前記ピンと前記環状部又は前記逆U字状部との間に嵌め込まれたスリーブ部材とを備え、前記スリーブ部材が、前記環状部又は前記逆U字状部の内周面側が嵌め込まれる溝部を有していることを特徴とする。
【0012】
このジェットファンの支持構造では、中間連結部材が、シャックル部と、ピンが挿通される貫通孔を有していると共にピンと環状部又は逆U字状部との間に嵌め込まれたスリーブ部材とを備え、スリーブ部材が、環状部又は逆U字状部の内周面側が嵌め込まれる溝部を有しているので、ピンと環状部又は逆U字状部との間にスリーブ部材が介在すると共に、スリーブ部材の軸方向における相対移動が規制されることで、振動を抑制することができる。また、溝部によりスリーブ部材と環状部又は逆U字状部との接触面積が大きくなり、従来のアイボルトやUボルト等とピンとが点接触する場合に比べて摺動摩擦が大きくなって振動を抑制することができる。また、溝部により、環状部又は逆U字状部とスリーブ部材との接触状態が安定する。さらに、貫通孔とピンとが軸方向に線接触又は面接触することで、この部分でも摺動摩擦が大きくなり、振動を抑制することができる。
【0013】
第2の発明に係るジェットファンの支持構造は、第1の発明において、前記スリーブ部材が、軸方向中央で互いに着脱可能に分割された一対の分割部材であることを特徴とする。
すなわち、このジェットファンの支持構造では、スリーブ部材が、軸方向中央で互いに着脱可能に分割された一対の分割部材であるので、環状部又は逆U字状部を両側から挟むようにして一対の分割部材を互いに接合することで、容易に環状部又は逆U字状部に着脱することが可能になる。また、一対の分割部材を環状部又は逆U字状部を両側から挟んでスリーブ部材とするので、一体物の場合に比べてより深い溝部を構成することができ、軸方向だけでなく、軸方向に垂直な方向においても摺動摩擦が大きくなり振動を抑制することが可能になる。
【0014】
第3の発明に係るジェットファンの支持構造は、第1又は第2の発明において、前記溝部が、前記環状部又は前記逆U字状部の内周面に沿った断面形状を有していることを特徴とする。
すなわち、このジェットファンの支持構造では、溝部が、環状部又は逆U字状部の内周面に沿った断面形状を有しているので、環状部又は逆U字状部と溝部とが面接触しており、従来のアイボルトやUボルト等とピンとの点接触の場合に比べて、接触面積の増大によって摺動摩擦が大きくなって摩擦力によって振動が吸収され、振動のより大きな減衰効果を得ることができる。
【0015】
第4の発明に係るジェットファンの支持構造は、第3の発明において、前記環状部又は前記逆U字状部の少なくとも先端部が、断面円形状であり、前記溝部が、断面円弧状であることを特徴とする。
すなわち、このジェットファンの支持構造では、環状部又は逆U字状部の少なくとも先端部が、断面円形状であり、溝部が、断面円弧状であるので、アイボルトやUボルト等の形状に沿った溝部形状とされることで、溝部全体で面接触することができ、より安定した接触状態を得ることができる。
【0016】
第5の発明に係るジェットファンの支持構造は、第3の発明において、前記環状部又は前記逆U字状部の少なくとも先端部が、断面矩形状であり、前記溝部が、断面矩形状であることを特徴とする。
すなわち、このジェットファンの支持構造では、環状部又は逆U字状部の少なくとも先端部が、断面矩形状であり、前記溝部が、断面矩形状であるので、Uバンド等の形状に沿った溝部形状とされることで、溝部全体で面接触することができ、より安定した接触状態を得ることができる。
【0017】
第6の発明に係るジェットファンの支持構造は、第4の発明において、前記溝部の断面形状が、半円よりも長い円弧状であることを特徴とする。
すなわち、このジェットファンの支持構造では、溝部の断面形状が、半円よりも長い円弧状であるので、環状部又は逆U字状部と溝部との接触面積がより増大すると共に、スリーブ部材の軸方向だけでなく、軸方向に垂直な方向についても環状部又は逆U字状部とスリーブ部材との相対移動を規制することができる。したがって、環状部又は逆U字状部とスリーブ部材との接触状態がより安定し、振動の大きな減衰効果が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明のジェットファンの支持構造によれば、中間連結部材が、ピンが挿通される貫通孔を有していると共にピンと環状部又は逆U字状部との間に嵌め込まれたスリーブ部材を備え、スリーブ部材が、環状部又は逆U字状部の内周面側が嵌め込まれる溝部を有しているので、ピンと環状部又は逆U字状部との間にスリーブ部材が介在すると共に、スリーブ部材の軸方向における相対移動が規制されることで、振動を抑制することができる。
したがって、本発明では、インバータでジェットファンの回転体の回転数を変化させた際に生じる振動を吸収・抑制することができ、振動による回転体の軸受の発熱や損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るジェットファンの支持構造の第1実施形態において、一部を破断して示す側面図である。
図2】第1実施形態において、トンネルに吊り下げたジェットファンを示す正面図である。
図3】第1実施形態において、トンネルに吊り下げたジェットファンを示す側面図である。
図4】第1実施形態において、一部を破断した中間連結部材を示す正面図である。
図5】第1実施形態において、スリーブ部材を示す斜視図である。
図6】第1実施形態において、スリーブ部材を示す正面図である。
図7】第1実施形態において、スリーブ部材を示す平面図である。
図8】第1実施形態において、スリーブ部材を示す側面図である。
図9】本発明に係るジェットファンの支持構造の第2実施形態において、一部を破断して示す側面図である。
図10】本発明に係るジェットファンの支持構造の第3実施形態において、一部を破断して示す側面図である。
図11】本発明に係るジェットファンの支持構造の従来例及び実施例において、ジェットファンの振動の減衰状態を示すグラフである。
図12】本発明に係るジェットファンの支持構造の他の例において、一部を破断して示す側面図である。
図13】本発明に係るジェットファンの支持構造の従来例において、トンネルに吊り下げたジェットファンを示す正面図である。
図14】本発明の従来例において、ジェットファンの支持構造を示す斜視図である。
図15】本発明の従来例において、ジェットファンの支持構造を示す一部を破断して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明におけるジェットファンの支持構造の第1実施形態を、図1から図8に基づいて説明する。
【0021】
本実施形態におけるジェットファンの支持構造1は、図1から図3に示すように、トンネル内を換気するジェットファン10を、トンネル天井壁14に固定した吊持部材15に吊り下げ固定するジェットファンの支持構造であって、吊持部材15に一端部が連結された中間連結部材16と、ジェットファン10の筒状ケーシング12に固定され中間連結部材16の他端部に連結されたケーシング側連結部材3とを備えている。
【0022】
上記ケーシング側連結部材3は、環状部3aを有したいわゆるアイボルトである。
このケーシング側連結部材3は、筒状ケーシング12にナット3bで基端部が固定されている。
上記中間連結部材16は、他端部に設けられ環状部3aに挿通されたピン19aを先端部に備えたシャックル部19と、ピン19aが挿通される貫通孔4aを有していると共にピン19aと環状部3aとの間に嵌め込まれたスリーブ部材4とを備えている。
【0023】
上記スリーブ部材4は、環状部3aの内周面側が嵌め込まれる溝部4bを有している。
スリーブ部材4は、図5から図8に示すように、軸方向中央で互いに着脱可能に分割された一対の分割部材5A,5Bを結合させて構成されている。
一対の分割部材5A,5Bの一方には、雌ねじ孔5aが形成されていると共に、他方にはボルト用貫通孔5bが形成されている。一対の分割部材5A,5Bは、連結用ボルト6をボルト用貫通孔6に挿通すると共に先端側の雄ねじ部を雌ねじ孔5aに螺着させることで、結合、固定されている。
【0024】
上記溝部4bは、環状部3aの内周面に沿った断面形状を有している。
本実施形態では、環状部3aの少なくとも先端部が、断面円形状であり、溝部4bが、断面円弧状である。
また、溝部4bの断面形状は、半円よりも長い円弧状である。
なお、スリーブ部材4は、環状部3aの底部形状に対応して下部が切り欠かれている。
【0025】
上記ケーシング側連結部材3は、例えばアイボルトであって、円筒状ケーシング12の側面中央部に配設されている。これらの上方位置のトンネル天井壁14には、天井壁側部吊持部材15が設けられている。ケーシング側連結部材3と天井壁側部吊持部材15とが、ターンバックルである中間連結部材16によってそれぞれ連結されている。
また、円筒状ケーシング12の軸方向両端部の外壁の頂部には、ケーシング側頂部支持部材17が配設され、これらの上方位置のトンネル天井壁14に天井壁頂部吊持部材18が配設されている。ケーシング側頂部支持部材17と天井壁頂部吊持部材18とは、それぞれターンバックルである中間連結部材16で連結されている。
【0026】
ターンバックルである中間連結部材16は、図4に示すように、胴部16aの両端部に左右逆方向のねじ溝(図示せず)が刻設され、このねじ溝にねじ棒16bが螺入されて構成されている。
上記ねじ棒16bは、ねじ溝に螺入可能な雄ねじが一端側に形成され、他端側にシャックル部19が設けられている。すなわち、中間連結部材16は、胴部16aを左右に回転させることによって全長が任意に調整可能である。
【0027】
中間連結部材16は、一方のシャックル部19と筒状ケーシング12に配設されたケーシング側連結部材3とが連結されると共に、他方のシャックル部19と天井壁側部吊持部材15とが連結される。
上記シャックル部19は、二股部19cとピン19aとナット19eとで構成されている。
【0028】
スリーブ部材4にはピン19aが挿通され、ピン19aの一端にナット19eがねじ込まれてピン19aが二股部19cの先端側に固定されている。
スリーブ部材4の軸方向長さは、図1に示すように、二股部19cの内側間隔Lより短く(一例として2〜4mm短い)設定されている。
ピン19aが挿通されるスリーブ部材4の貫通孔4aとピン19aとは、軸方向に線接触又は面接触の状態で接触しており、スリーブ部材4は二股部19cの内側間隔L内において軸方向にピン19aと摺動自在である。
【0029】
また、上記溝部4bは、スリーブ部材4の外周部において軸方向中央部分に周方向に延在して形成されている。
アイボルトであるケーシング側連結部材3は、スリーブ部材4の溝部4bにその一部が面接触した状態で嵌めこまれており、スリーブ部材4に対して軸方向の相対移動が規制されて連結されている。
【0030】
このように本実施形態のジェットファンの支持構造1では、中間連結部材16が、シャックル部19と、ピン19aが挿通される貫通孔4aを有していると共にピン19aと環状部3aとの間に嵌め込まれたスリーブ部材4とを備え、スリーブ部材4が、環状部3aの内周面側が嵌め込まれる溝部4bを有しているので、ピン19aと環状部3aとの間にスリーブ部材4が介在すると共に、スリーブ部材4の軸方向における相対移動が規制されることで、振動を抑制することができる。
【0031】
また、溝部4bによりスリーブ部材4と環状部3aとの接触面積が大きくなり、従来のアイボルトやUボルト等とピン19aとが点接触する場合に比べて摺動摩擦が大きくなって振動を抑制することができる。また、溝部4bにより、環状部3aとスリーブ部材4との接触状態が安定する。さらに、貫通孔4aとピン19aとが軸方向に線接触又は面接触することで、この部分でも摺動摩擦が大きくなり、振動を抑制することができる。
【0032】
また、スリーブ部材4が、軸方向中央で互いに着脱可能に分割された一対の分割部材5A,5Bであるので、環状部3aを両側から挟むようにして一対の分割部材5A,5Bを互いに接合することで、容易に環状部3aに着脱することが可能になる。また、一対の分割部材5A,5Bを環状部3aを両側から挟んでスリーブ部材4とするので、一体物の場合に比べてより深い溝部4bを構成することができ、軸方向だけでなく、軸方向に垂直な方向においても摺動摩擦が大きくなり振動を抑制することが可能になる。
【0033】
さらに、溝部4bが、環状部3aの内周面に沿った断面形状を有しているので、環状部3aと溝部4bとが面接触しており、従来のアイボルトやUボルト等とピン19aとの点接触の場合に比べて、接触面積の増大によって摺動摩擦が大きくなって摩擦力によって振動が吸収され、振動のより大きな減衰効果を得ることができる。
本実施形態では、環状部3aの少なくとも先端部が、断面円形状であり、溝部4bが、断面円弧状であるので、アイボルトやUボルト等の形状に沿った溝部形状とされることで、溝部4b全体で面接触することができ、より安定した接触状態を得ることができる。
【0034】
特に、溝部4bの断面形状が、半円よりも長い円弧状であるので、環状部3aと溝部4bとの接触面積がより増大すると共に、スリーブ部材4の軸方向だけでなく、軸方向に垂直な方向についても環状部3aとスリーブ部材4との相対移動を規制することができる。したがって、環状部3aとスリーブ部材4との接触状態がより安定し、振動の大きな減衰効果が得られる。
【0035】
次に、本発明に係るジェットファンの支持構造の第2及び第3実施形態について、図9及び図10を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0036】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、溝部4bが断面円弧状であるのに対し、第2実施形態のジェットファンの支持構造21は、図9に示すように、スリーブ部材24の溝部24bが軸方向断面矩形状に形成されている点である。
また、第2実施形態では、スリーブ部材24が一対の分割部材で構成されておらず、一体物で構成されている点でも第1実施形態と異なっている。
さらに、第1実施形態のケーシング側連結部材3がアイボルトであるのに対し、第2実施形態のケーシング側連結部材23は、逆U字状部23aを備えたいわゆるUボルトである。
【0037】
すなわち、第2実施形態では、スリーブ部材24の溝部24bの軸方向断面形状がコ字状に形成され、この溝部24bにUボルトであるケーシング側連結部材23が嵌めこまれている。
したがって、ケーシング側連結部材23は、逆U字状部23aを備え、逆U字状部23aの内周面の先端側が溝部24bに嵌め込まれることで、溝部24bによってスリーブ部材24との軸方向の相対移動が規制されている。
【0038】
この連結状態において、ケーシング側連結部材23と溝部24bとは、接触部の一部がスリーブ部材24の周方向に線接触している。
このように第2実施形態のジェットファンの支持構造21では、従来の支持構造より大きな減衰効果が得られると共に、溝部24bの断面を円弧状に加工する必要がないため、スリーブ部材24の製作が容易である。
【0039】
次に、第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、ケーシング側連結部材3がUボルトであるのに対し、第3実施形態のジェットファンの支持構造31では、図10に示すように、ケーシング側連結部材33が逆U字状部33aを備えたいわゆるUバンドである点である。
すなわち、第3実施形態のケーシング側連結部材33は、逆U字状部33aが、断面矩形状であり、溝部34bが、断面矩形状とされている。
【0040】
すなわち、第3実施形態では、スリーブ部材34の溝部34bの軸方向断面形状がコ字状に形成され、この溝部34bにUバンドであるケーシング側連結部材33の逆U字状部33aが嵌めこまれている。
したがって、ケーシング側連結部材33は、逆U字状部33aが溝部34bに嵌め込まれることで、溝部24bによってスリーブ部材34との軸方向の相対移動が規制されている。
【0041】
このように第3実施形態のジェットファンの支持構造では、逆U字状部33aの少なくとも先端部が、断面矩形状であり、溝部34bが、断面矩形状であるので、Uバンドの形状に沿った溝部形状とされることで、溝部34b全体で面接触することができ、より安定した接触状態を得ることができる。
【実施例】
【0042】
上記第1実施形態のジェットファンの支持構造において、ジェットファンの振動の減衰状態を調べた結果を、図11に示す。なお、図11に示すグラフでは、縦軸が振幅であり、横軸が経過時間である。また、比較のため、従来の支持構造においても、同様に振動の減衰状態を調べた結果も合わせて示す。
これらの結果から分かるように、本発明(第1実施形態)の支持構造では、垂直方向及び水平方向のいずれも従来の支持構造に比べて大きな減衰効果が得られている。特に、水平方向の振動に対する減衰効果は顕著である。
【0043】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0044】
例えば、上述したように、第1実施形態では一対の分割部材を結合させてスリーブ部材が構成することが好ましいが、他の例として図12に示すように、一体物のスリーブ部材44を採用した支持構造41としても構わない。
なお、この場合、スリーブ部材44の断面円弧状の溝部44bは、第1実施形態よりも浅い溝深さとし、アイボルトであるケーシング側連結部材3に嵌め込み易くしておくことが好ましい。すなわち、溝部44bは、軸方向断面形状が半円よりも短い円弧状とされている。
【符号の説明】
【0045】
1,21,31,41…ジェットファンの支持構造、3,23,33…ケーシング側連結部材、3a…環状部、23a…逆U字状部、4…スリーブ部材、4b…溝部、4a…貫通孔、5A,5B…分割部材、10…ジェットファン、12…筒状ケーシング、14…トンネル天井壁、15,18…吊持部材、16…中間連結部材、19…シャックル部、19a…ピン、19c…二股部
図1
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