(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した防振装置では、一つのオリフィス通路の大きさ(長さや断面積)を設定することで、所望のばね定数や共振特性を得るものであるため、幅広い周波数帯域で減衰性能を発揮することができないという課題がある。
【0007】
本発明は、前記した問題を解決し、比較的幅広い周波数帯域で減衰性能を発揮することが可能な防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、防振装置であって、外筒と、前記外筒に挿入される内筒と、前記内筒と前記外筒との間に介設される弾性部材と、を備えている。前記内筒と前記外筒との間には、第一液室、第二液室および第三液室と、前記第一液室および前記第二液室を連通する第一オリフィス通路と、前記第一液室および前記第二液室の一方と前記第三液室とを連通する第二オリフィス通路と、が形成されている。前記第三液室は、前記第一液室および前記第二液室の
他方に弾性膜を介して隣接している。前記内筒と前記外筒との間には、前記第一オリフィス通路および前記第二オリフィス通路が備わるオリフィス形成部材が配置されている。前記第三液室は、前記オリフィス形成部材の外周面に沿って形成され、かつ、前記外筒に沿って延在している。
前記第三液室は、前記オリフィス形成部材の外周面の周方向に間隔を空けて開口する一対の凹部およびこれら一対の凹部同士を連通する連通路、または前記オリフィス形成部材の外周面の軸方向に間隔を空けて開口する一対の凹部およびこれら一対の凹部同士を連通する連通路を備えている。前記一対の凹部に前記弾性膜が備わっている。
【0009】
本発明の防振装置では、二種類のオリフィス通路を有しているため、防振装置のばね定数を低下させ易くなるとともに、共振特性を二段階に分けて設定することができる。したがって、本発明の防振装置では、比較的幅広い周波数帯域で減衰性能を発揮することが可能である。したがって、所望のばね特性を得易くなり、比較的幅広い周波数帯域で減衰性能を発揮することが可能である。
なお、振動部材とは、振動の発生源(例えば、サスペンションやエンジン等)のことである。
【0011】
弾性膜が面している液室内の液圧によって弾性膜が弾性変形すると、第二オリフィス通路を介して第三液室とこれに連通する液室との間で作動液が流通する。したがって、所望のばね特性を得易くなり、比較的幅広い周波数帯域で減衰性能を発揮することが可能である。
【0013】
第三液室をオリフィス形成部材に形成すると、内筒と外筒との間のスペースを有効に利用することができるため、防振装置をコンパクトに構成することができる。また、前記構成では、オリフィス形成部材と弾性膜とを一体成形することができるため、製造コストを低減することができる。
【0014】
また、前記した防振装置において、前記オリフィス形成部材を一対形成し、前記第三液室を各前記オリフィス形成部材に形成してもよい。
【0015】
第三液室を各オリフィス形成部材に形成すると、防振装置のばね定数をより低下させ易くなるとともに、ばね特性の設定が行い易くなる。
【0016】
また、前記した防振装置において、前記
オリフィス形成部材に、前記
内筒の変位を規制するストッパ部を形成し、前記第三液室を前記ストッパ部に形成してもよい。
【0017】
第三液室をストッパ部に形成すると、内筒と外筒との間のスペースを有効に利用することができるため、防振装置をコンパクトに構成することができる。また、前記した構成では、ストッパ部と弾性膜とを一体成形することができるため、製造コストを低減することができる。
また、前記課題を解決するため、本発明は、防振装置であって、外筒と、前記外筒に挿入される内筒と、前記内筒と前記外筒との間に介設される弾性部材と、を備えている。前記内筒と前記外筒との間には、第一液室、第二液室および第三液室と、前記第一液室および前記第二液室を連通する第一オリフィス通路と、前記第一液室および前記第二液室の一方と前記第三液室とを連通する第二オリフィス通路と、が形成されている。前記第三液室は、前記第一液室および前記第二液室の
他方に弾性膜を介して隣接している。前記内筒と前記外筒との間には、前記第一オリフィス通路および前記第二オリフィス通路が備わるオリフィス形成部材が配置されている。前記第三液室は前記オリフィス形成部材に形成されている。前記オリフィス形成部材は一対配置されており、前記第三液室は各前記オリフィス形成部材に形成されている。
本発明の防振装置では、二種類のオリフィス通路を有しているため、防振装置のばね定数を低下させ易くなるとともに、共振特性を二段階に分けて設定することができる。したがって、本発明の防振装置では、比較的幅広い周波数帯域で減衰性能を発揮することが可能である。したがって、所望のばね特性を得易くなり、比較的幅広い周波数帯域で減衰性能を発揮することが可能である。
なお、振動部材とは、振動の発生源(例えば、サスペンションやエンジン等)のことである。
弾性膜が面している液室内の液圧によって弾性膜が弾性変形すると、第二オリフィス通路を介して第三液室とこれに連通する液室との間で作動液が流通する。したがって、所望のばね特性を得易くなり、比較的幅広い周波数帯域で減衰性能を発揮することが可能である。
第三液室をオリフィス形成部材に形成すると、内筒と外筒との間のスペースを有効に利用することができるため、防振装置をコンパクトに構成することができる。また、前記構成では、オリフィス形成部材と弾性膜とを一体成形することができるため、製造コストを低減することができる。
第三液室を各オリフィス形成部材に形成すると、防振装置のばね定数をより低下させ易くなるとともに、ばね特性の設定が行い易くなる。
また、前記した防振装置において、前記
オリフィス形成部材に、前記
内筒の変位を規制するストッパ部を形成し、前記第三液室を前記ストッパに形成してもよい。
第三液室をストッパ部に形成すると、内筒と外筒との間のスペースを有効に利用することができるため、防振装置をコンパクトに構成することができる。また、前記した構成では、ストッパ部と弾性膜とを一体成形することができるため、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、比較的幅広い周波数帯域で減衰性能を発揮することが可能な防振装置が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1(a)(b)に示す第1実施形態の防振装置1は、自動車等の車両のサスペンションを構成する振動部材(図示せず)と、車体側の支持部材3(非振動部材)との間に介設されるものである。
なお、非振動部材とは、振動部材の振動を伝えたくない部材(例えば、車体等)のことである。
【0021】
以下の説明において、前後左右方向とは、防振装置1を説明する上で便宜上設定したものであり、防振装置1の構成を限定するものではない。
【0022】
防振装置1は、
図2に示すように、外筒10と、外筒10に挿入された内筒20と、内筒20と外筒10との間に介設された弾性部材30と、内筒20と外筒10との間に収容された第一オリフィス形成部材40と、第二オリフィス形成部材50と、を備えている。第一オリフィス形成部材40と、第二オリフィス形成部材50とには、第一オリフィス通路R1および第二オリフィス通路R2が形成されている。また、内筒20と外筒10との間には、第一液室40A、第二液室50Aおよび第三液室60Aが形成されている。
【0023】
外筒10は、金属製の円筒状部材である。外筒10は、
図1(a)に示すように、支持部材3(サスペンション)に固定される。なお、外筒10の内周面には、後記する弾性部材30等(
図2参照)がシール層を介することなく圧入されている。
【0024】
内筒20は、
図2に示すように、金属製の円筒状部材である。内筒20は、外筒10の中心部に挿入されている。
内筒20は、非振動部材(図示せず)となる車体に固定される。
【0025】
弾性部材30は、
図2に示すように、内筒20の外周面と外筒10の内周面との間に介設されるゴム製の部材である。
弾性部材30には、
図4に示すように、内筒20に加硫接着された円筒部31と、円筒部31の上下端部の全周から径方向に張り出した側壁部32,32と、が形成されている。また、弾性部材30には、
図2,
図3に示すように、上下の側壁部32,32の間で円筒部31から前後方向に張り出した隔壁部33,33が形成されている。
【0026】
円筒部31の内周面は、
図4に示すように、内筒20の外周面に加硫接着されている。また、両側壁部32,32の外周面および両隔壁部33,33(
図3参照)の外側面は、外筒10の内周面に圧接している。これにより、内筒20と外筒10とは、弾性部材30によって弾性的に連結されている。
【0027】
なお、
図1(a)に示すように、前側の隔壁部33において、高さ方向の中央部には、切り欠き部35aが形成されている。これにより、前側の隔壁部33の高さ方向の中央部と、外筒10の内周面との間に隙間が形成されている(
図3参照)。
また、
図1(b)に示すように、後側の隔壁部33において、高さ方向の中央部には、切り欠き部35bが形成されている。これにより、後側の隔壁部33の高さ方向の中央部と、外筒10の内周面との間に隙間が形成されている(
図3参照)。
【0028】
内筒20と外筒10との間には、
図4に示すように、二つの密閉空間34A,34Bが形成されている。密閉空間34A,34Bは、ともに、外筒10の内面、円筒部31および上下の側壁部32,32に囲まれるとともに、隔壁部33,33(
図3参照)によって左右に仕切られている。密閉空間34A,34Bは、
図3に示すように、平面視で略半円形状の空間である。密閉空間34Aには、第一オリフィス形成部材40が収容されている。密閉空間34Bには、第二オリフィス形成部材50が収容されている。
【0029】
第一オリフィス形成部材40および第二オリフィス形成部材50は、いずれも、平面視で略円弧状に形成された部材である(
図2参照)。このうち、第一オリフィス形成部材40は、
図5(c)に示すように、円弧状の外側面41aに沿って形成される第三液室60Aを備えている。第三液室60Aは、外筒10に沿って周方向に延在している(
図3参照)。
【0030】
第一オリフィス形成部材40は、
図5(c)に示すように、周方向に延びる樹脂製の基部41と、基部41に加硫接着されたゴム弾性体42とを備えている。基部41は、その前後方向の中間部43が、内側(内筒20側、
図2参照)に向けて膨出している。
第一オリフィス形成部材40に備わる第三液室60Aは、外側面41aの前部および後部に開口する一対の凹部44a,44bと、凹部44a,44b同士を連通する連通路44cと、を備えている。凹部44a,44bは、
図5(a)に示すように、側面視で縦長の長方形状であり、周方向の長さよりも高さ方向の長さが大きく形成されている。凹部44a,44bの内部空間は、
図5(c)に示すように、断面視で奥行方向に長い長方形状を呈しており、内筒20側(
図3参照)へ向けて凹んでいる。凹部44a,44bは、前後対称の形状である。
【0031】
凹部44a,44bの内面は、
図5(c)に示すように、ゴム弾性体42の薄肉部42a1,42b1で被覆されている。また、凹部44a,44bの底部は、ゴム弾性体42の薄肉部42a,42bで閉塞されている。つまり、凹部44aは、薄肉部42aを隔てて第一液室40Aに隣接しており、また、凹部44bは、薄肉部42bを隔てて第一液室40Aに隣接している。薄肉部42a,42bは、弾性変形可能であり、メンブラン部(弾性膜)として機能する。これにより、第三液室60Aと第一液室40Aとは、ゴム弾性体42(薄肉部42a,42b)を介して圧力変化が相互に伝達されるように構成されている。
なお、ゴム弾性体42(薄肉部42a,42b)は、特許請求の範囲における弾性膜に相当する。薄肉部42a,42bの肉厚は、所望のばね特性に対応して適宜設定することができる。
【0032】
図6(b)に示すように、凹部44aの上下開口縁部には、基部41のフランジ部41e,41eが配置されている。フランジ部41e,41eの各外側面41aは、ゴム弾性体42の薄肉部42cで被覆されている。つまり、第一オリフィス形成部材40は、薄肉部42cを介して外筒10に圧入されている。なお、凹部44bの上下開口縁部も同様の構成である。
【0033】
中間部43における基部41の内側面41bは、
図5(b)(c)、
図6(a)に示すように、ゴム弾性体42の厚肉部42eによって覆われている。厚肉部42eの内側面42e1は、
図2に示すように、弾性部材30の円筒部31に対向している。これにより、中間部43の内側部分がストッパ部として機能し、防振装置1の径方向に過大な相対変位があった場合に、弾性部材30の円筒部31に中間部43の内側面42e1が当接して衝撃を緩和する。
なお、凹部44a,44bは、第一オリフィス形成部材40のストッパ部(中間部43)の前部側方のスペースおよび後部側方のスペースを利用して形成されている。これによって、凹部44a,44bは、所望の容量を確保している。
【0034】
連通路44cは、
図5(a)に示すように、基部41の外側面41aに沿って形成された凹溝である。連通路44cは、外側面41aの高さ方向の中央部に形成され、凹部44a,44bを連通している。連通路44cは、
図5(c),
図6(a)に示すように、ゴム弾性体42の薄肉部42cで被覆されている。
【0035】
基部41の外側面41aの前部側には、
図5(a)〜(c)に示すように、第一オリフィス通路R1を構成する通路45が形成されている。通路45は、第一オリフィス形成部材40の外側面41aに形成された凹溝である。
【0036】
通路45は、第一オリフィス形成部材40の前端縁部40aの高さ方向の中央部に形成され、前端縁部40aから後方(凹部44a側)に向けて延在するとともに、第一オリフィス形成部材40の端面に向けて略直角に屈曲している。通路45の底部は、ゴム弾性体42の薄肉部42c(
図5(c)参照)で被覆されている。
【0037】
基部41の外側面41aの後部側には、
図5(a)〜(c)に示すように、第二オリフィス通路R2を構成する通路46が形成されている。通路46は、第一オリフィス形成部材40の外側面41aに沿って湾曲状に形成された凹溝である。
【0038】
通路46は、外側面41aの高さ方向の中央部に形成されている。通路46は、凹部44bに連続するとともに、凹部44bから第一オリフィス形成部材40の後端縁部40bに向けて延在している。通路46の底部は、ゴム弾性体42の薄肉部42c(
図5(c)参照)で被覆されている。
【0039】
第二オリフィス形成部材50は、
図7(c)に示すように、周方向に延びる樹脂製の基部51と、基部51に加硫接着されたゴム弾性体52とを備えている。基部51は、その前後方向の中間部53が、内側(内筒20側、
図2参照)に向けて膨出している。
【0040】
図7(d)に示すように、中間部53の上面51c、内側面51dおよび下面51eは、ゴム弾性体42の厚肉部52bによって覆われている。厚肉部52bの内側面52b1は、
図2に示すように、弾性部材30の円筒部31に対向している。これにより、防振装置1の径方向に過大な相対変位があった場合に、弾性部材30の円筒部31に中間部53の内側面52b1が当接して衝撃を緩和する。
【0041】
基部51の外側面51aの前部側には、
図7(a)〜(c)に示すように、第一オリフィス通路R1を構成する通路55が形成されている。通路55は、第二オリフィス形成部材50の外側面51aに形成された凹溝である。
【0042】
通路55は、第二オリフィス形成部材50の前端縁部50aの高さ方向の中央部から後方に向けて延在するとともに、第二オリフィス形成部材50の端面に向けて略直角に屈曲している。通路55の底部は、
図7(c)に示すように、ゴム弾性体52の薄肉部52cで被覆されている。
【0043】
中間部53における基部51の外側面51aおよび外側面51aの後部側には、
図7(a)〜(c)に示すように、第二オリフィス通路R2を構成する通路56が形成されている。通路56は、第二オリフィス形成部材50の外側面51aに形成された凹溝である(
図7(c)参照)。
【0044】
通路56は、
図7(a)に示すように、第二オリフィス形成部材50の上端面から下向きに延在するとともに、高さ方向の中央部で後方に向けて略直角に屈曲し、第二オリフィス形成部材50の後端縁部50bに向けて延在している。通路56の凹部内および上下開口縁部は、ゴム弾性体52の薄肉部52cで被覆されている。
【0045】
第一オリフィス形成部材40および第二オリフィス形成部材50は、
図4に示すように、密閉空間34A,34Bの上下方向の略中央部に配置されている。第一オリフィス形成部材40の外側面41aは、ゴム弾性体42の薄肉部42cを介して外筒10の内周面に圧接している。また、第二オリフィス形成部材50の外側面51aは、ゴム弾性体52の薄肉部52cを介して外筒10の内周面に圧接している。
これにより、
図3に示すように、凹部44a,44b、連通路44c、第一オリフィス通路R1および第二オリフィス通路R2は、外筒10の内周面によってそれぞれ塞がれた状態となる。これによって、第一オリフィス形成部材40には密閉された空間である第三液室60Aが形成される(
図4参照)。第三液室60Aには非圧縮性の作動液が封入されている。第三液室60Aの凹部44a,44bは、
図3に示すように、ゴム弾性体42(薄肉部42a,42b)を介して第一液室40Aに隣接して配置されている。
【0046】
また、内筒20と外筒10との間には、
図4に示すように、第一オリフィス形成部材40の周りに、外筒10、円筒部31、上下の側壁部32,32および第一オリフィス形成部材40によって囲まれる第一液室40Aが形成されている。
【0047】
また、内筒20と外筒10との間には、第二オリフィス形成部材50の周りに、外筒10、円筒部31、上下の側壁部32,32および第二オリフィス形成部材50によって囲まれる第二液室50Aが形成されている。
【0048】
第一液室40Aおよび第二液室50Aには、非圧縮性の作動液が封入されている。第一液室40Aおよび第二液室50Aは、
図1に示すように、第一オリフィス通路R1(通路45、通路55)を通じて相互に連通している。つまり、防振装置1では、外筒10の変位によって弾性部材30が弾性変形し、第一液室40A内または第二液室50A内の液圧が変化すると、第一液室40Aと第二液室50Aとの間で作動液が通流するようになっている。
【0049】
一方、第二液室50Aと第三液室60Aとは、
図1に示すように、第二オリフィス通路R2(通路56、通路46)を通じて相互に連通している。つまり、防振装置1では、外筒10の変位によって弾性部材30が弾性変形し、第二液室50A内または第三液室60A内の液圧が変化すると、第二液室50Aと第三液室60Aとの間で作動液が通流するようになっている。ここで、第三液室60Aは、ゴム弾性体42(薄肉部42a,42b)を介して第一液室40Aに隣接しているので、第一液室40A内または第三液室60A内の液圧が変化すると、ゴム弾性体42(薄肉部42a,42b)が弾性変形することで、第一液室40Aと第三液室60Aとの間で圧力が伝達されるように構成されている。
【0050】
このような防振装置1では、
図1(a)に示すように、振動部材(図示せず)から内筒20に入力された振動を、弾性部材30の弾性変形によって吸収するように構成されている。
また、防振装置1では、
図3に示すように、振動による外筒10の変位により弾性部材30が弾性変形すると、第一液室40A、第二液室50Aおよび第三液室60Aの容積が変化し、第一液室40A内、第二液室50A内および第三液室60A内の液圧が変化する。
これにより、第一オリフィス通路R1を作動液が通流し、第一オリフィス通路R1内に液柱共振が生じることで、振動を減衰するように構成されている。
また、第二オリフィス通路R2を作動液が通流し、第二オリフィス通路R2内に液柱共振が生じることで、振動を減衰するように構成されている。
【0051】
本実施形態の防振装置1では、振動の周波数が小さい領域は、主に第一オリフィス通路R1内の液柱共振によって振動を減衰させるように構成されている。また、本実施形態の防振装置1では、振動の周波数が大きい領域は、主に第二オリフィス通路R2内の液柱共振によって振動を減衰させるように構成されている。
なお、前記した構成に限定されるものではなく、振動の周波数が小さい領域は、第二オリフィス通路R2内の液柱共振によって振動を減衰させ、振動の周波数が大きい領域は、主に第一オリフィス通路R1内の液柱共振によって振動を減衰させてもよい。
【0052】
以上のような防振装置1では、
図3に示すように、前記した二種類の第一オリフィス通路R1および第二オリフィス通路R2の大きさを設定することで、所望のばね特性を得ることができる。
そして、弾性部材30が弾性変形したときの作動液の流通量が大きくなるため、防振装置1のばね定数を低下させることができる。
また、第一オリフィス通路R1および第二オリフィス通路R2が異なる周波数領域の振動を効果的に減衰するように構成することで、共振特性を二段階に分けて設定することができる。
したがって、防振装置1では、比較的幅広い周波数帯域で減衰性能を発揮することが可能であるため、振動部材から入力された振動を効果的に吸収することができる。
【0053】
しかも、第二オリフィス通路R2を介して第二液室50Aと第三液室60Aとが連通しているので、第三液室60Aが隣接する第一液室40A内の液圧の変化によってゴム弾性体42のメンブラン部(薄肉部42a,42b)が弾性変形すると、第三液室60Aに圧力が伝達され、第三液室60Aと第二液室50Aとの間で作動液が流通する。したがって、所望のばね特性を得易くなり、比較的幅広い周波数帯域で減衰性能を発揮することが可能である。
【0054】
また、第一オリフィス形成部材40に第三液室60Aを形成することで、内筒20と外筒10との間のスペースを有効に利用することができるため、防振装置1をコンパクトに構成することができる。また、既存の防振装置に対して第三液室60Aを容易に形成することができ、生産性に優れる。したがって、コストを抑制しつつ機能性の向上を図ることができる防振装置1が得られる。
【0055】
また、第一オリフィス形成部材40の外側面41aに沿って第三液室60Aが形成されるので、第一液室40Aの径方向外側のスペースおよび外筒10の内側の周方向のスペースを有効に利用して、第三液室60Aを好適に形成することができる。したがって、第三液室60Aの容量の設定も容易に行うことができ、防振装置1の設計の自由度が増す。また、外筒10の内側の周方向のスペースを有効に利用して第三液室60A(凹部44a,44b)が形成されるので、第三液室60Aの径方向の寸法を比較的小さくすることができる。したがって、第一オリフィス形成部材40の径方向の寸法、ひいては防振装置1の径方向の寸法を小さくすることができる。
【0056】
(第2実施形態)
図8は第2実施形態に係る防振装置に適用される一方のオリフィス形成部材を示した図であり、(a)は側面図、(b)は(a)に対する平面図、(c)は斜視図である。
図9は同じく一方のオリフィス形成部材を示した図であり、(a)は
図8(a)のJ−J線に沿う断面で示した基部の拡大斜視図、(b)は同じく
図8(a)のJ−J線に沿う断面で示したオリフィス形成部材の拡大斜視図である。
図8各図に示すように、第一オリフィス形成部材70は、外側面71aに沿う第三液室70Aを備えている。
【0057】
第一オリフィス形成部材70は、
図8(b),(c)に示すように、周方向に延びる樹脂製の基部71と、基部71に加硫接着されたゴム弾性体72とを備えている。基部71は、その前後方向の中間部73が内側(内筒20側、
図2参照)に向けて膨出している。
【0058】
第三液室70Aは、上下一対の凹部74a,74bと、凹部74a,74b同士を連通する連通路74cと、を備えている。凹部74a,74bは、
図8(a)(c)に示すように、外側面71aの周方向に沿って形成されており、周方向に延在するスリット状の開口部を備えている(
図8(a)参照)。凹部74a,74bは、
図9(a)(b)に示すように、中間部73を形成するために基部71に一体に設けられた枠部77に対して、ゴム弾性体72が被覆されることによって形成されている。
【0059】
枠部77は、
図9(a)に示すように、断面略T字形状に形成されており、縦壁部77aと、横壁部77bとを備えている。縦壁部77aは、基部71のフランジ部71eに平行に形成されている。縦壁部77aの内側面77cは、
図9(b)に示すように、ゴム弾性体72の厚肉部72eによって覆われている。厚肉部72eの内側面72e1は、弾性部材30の円筒部31(
図2参照)に対向している。
【0060】
横壁部77bは、
図9(a)に示すように、縦壁部77aの外側面77dの高さ方向の中央部から径方向外側(外側面71a側)に向けて突出している。横壁部77bは、
図9(b)に示すように、ゴム弾性体72の薄肉部72cで被覆されている。
【0061】
上側の凹部74aの上部は、ゴム弾性体72の薄肉部72aで閉塞されている。また、下側の凹部74bの下部は、ゴム弾性体72の薄肉部72bで閉塞されている。凹部74aは、薄肉部72aを隔てて第一液室40A(
図2参照)に隣接しており、凹部74bは、薄肉部72bを隔てて第一液室40Aに隣接している。薄肉部72a,72bは、弾性変形可能であり、メンブラン部(弾性膜)として機能する。これにより、第三液室70Aと第一液室40Aとは、ゴム弾性体72を介して圧力変化が相互に伝達されるように構成されている。なお、薄肉部72a,72bの肉厚は、所望のばね特性に対応して適宜設定することができる。
【0062】
連通路74cは、
図8各図に示すように、凹部74a,74bの前端部において横壁部77bを部分的に切り欠くことで形成され、凹部74a,74b同士を連通している。連通路74cは、第二オリフィス通路R2を構成する通路76に連続して設けられている。通路76は、第一オリフィス形成部材70の前端縁部70aに向けて延在している。
なお、第一オリフィス形成部材70の後部には、第一オリフィス通路R1を構成する通路75が形成されている。通路75は、第一オリフィス形成部材70の後端縁部70bに向けて延在している。通路75,76は、薄肉部72cにより被覆されている。通路75,76の位置や形状等は適宜設定することができる。
【0063】
このような第一オリフィス形成部材70を備えた防振装置では、第1実施形態と同様に、振動による外筒10の変位により弾性部材30が弾性変形すると、第一液室40A、第二液室50A(
図3参照)および第三液室70Aの容積が変化し、第一液室40A内、第二液室50A内および第三液室70A内の液圧が変化する。
これにより、第一オリフィス通路R1を作動液が通流し、第一オリフィス通路R1内に液柱共振が生じることで、振動を減衰するように構成されている。
また、第二オリフィス通路R2を作動液が通流し、第二オリフィス通路R2内に液柱共振が生じることで、振動を減衰するように構成されている。
【0064】
しかも、第二オリフィス通路R2を介して第二液室50Aと第三液室70Aとが連通しているので、第三液室70Aが隣接する第一液室40A内の液圧の変化によってゴム弾性体72のメンブラン部(薄肉部72a,72b)が弾性変形すると、第三液室70Aに圧力が伝達され、第三液室70Aと第二液室50Aとの間で作動液が流通する。したがって、所望のばね特性を得易くなり、比較的幅広い周波数帯域で減衰性能を発揮することが可能である。
【0065】
また、第一オリフィス形成部材70に第三液室70Aを形成することで、内筒20と外筒10との間のスペースを有効に利用することができるため、防振装置1をコンパクトに構成することができる。また、既存の防振装置に対して第三液室70Aを容易に形成することができ、生産性に優れる。したがって、コストを抑制しつつ機能性の向上を図ることができる防振装置1が得られる。
【0066】
また、本実施形態では、第一オリフィス形成部材70の外側面71aに沿いつつ中間部73の容積を有効に利用して第三液室70Aが形成されるので、第三液室70Aの容量の設定も容易に行うことができ、防振装置1の設計の自由度が増す。また、外筒10の内側の周方向のスペースを有効に利用して第三液室70A(凹部74a,74b)が形成されるので、第三液室70Aの径方向の寸法を比較的小さくすることができる。したがって、第一オリフィス形成部材40の径方向の寸法、ひいては防振装置1の径方向の寸法を小さくすることができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、第二オリフィス形成部材50に対して、第一オリフィス通路R1を構成する通路58のみを構成してもよい。この場合には、前記実施形態に比べて、第一オリフィス通路R1を長く形成することができる。これによって、第一オリフィス通路R1によるバネ特性を容易に設定することができる。
【0068】
また、第1実施形態において第三液室60Aの凹部44a,44bは、第一オリフィス形成部材40の中間部43の前後に設けたが、これに限られることはなく、第一オリフィス形成部材40の前部側や後部側に寄せて設けてもよい。
【0069】
また、前記第1,第2実施形態では、第一オリフィス形成部材40,70に対して第三液室60A,70Aを形成したが、これに限られることはなく、第二オリフィス形成部材50に対して第三液室60A,70Aを形成してもよい。この場合、第二オリフィス形成部材50の第三液室60A,70Aは、第二オリフィス通路R2を介して第一オリフィス形成部材40,70の第一液室40Aに連通するように構成することで、前記実施形態と同様の作用効果が得られる。なお、第三液室60Aは、第一オリフィス形成部材40および第二オリフィス形成部材50の両方に設けてもよく、また、第三液室70Aは、第一オリフィス形成部材70および第二オリフィス形成部材50の両方に設けてもよい。このように構成することで、少なくとも共振特性を三段階に分けて設定することができる。
【0070】
また、本実施形態の防振装置1は、振動部材3(サスペンション)と、非振動部材(車体)との間に介設されているが、本発明の防振装置を適用可能な振動部材および非振動部材は限定されるものではない。例えば、振動部材であるエンジンと、非振動部材である車体との間に防振装置を介設してもよい。