特許第6757181号(P6757181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757181
(24)【登録日】2020年9月1日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】抗菌剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/10 20060101AFI20200907BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20200907BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20200907BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20200907BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20200907BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20200907BHJP
   C08F 220/60 20060101ALI20200907BHJP
   C08F 226/02 20060101ALI20200907BHJP
   C08F 216/14 20060101ALI20200907BHJP
   C08F 220/02 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   A01N25/10
   A01P3/00
   A01N59/16 Z
   A01N59/16 A
   A01N59/20 A
   A01N37/02
   C08F220/34
   C08F220/60
   C08F226/02
   C08F216/14
   C08F220/02
【請求項の数】12
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-109530(P2016-109530)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-214325(P2017-214325A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張替 尊子
【審査官】 池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−169694(JP,A)
【文献】 特開2010−013623(JP,A)
【文献】 特開平06−024912(JP,A)
【文献】 特開平08−165211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/10
A01N 55/02
A01N 59/16
A01N 59/20
C02F 1/50
A61L 2/16
A61L 12/08
C09D 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の方法により算出される溶解性パラメータが14以下であり、かつ、水溶性、又は、水分散性を有する物質(A)と金属化合物とを含み、
該物質(A)は、カチオン性基含有単量体由来の構造単位と疎水性単量体由来の構造単位とを有し、全構造単位100質量%に対して、カチオン性基含有単量体由来の構造単位の割合が50〜90質量%である共重合体(但し、アクリルアミド由来の構造単位を有するものを除く。)であることを特徴とする抗菌剤。
<溶解性パラメータの算出方法>
溶解性パラメータ(δ)(cal/cm1/2は、下記の計算法により算出される。
δ=(△ei/△vi)1/2 (cal/cm1/2
△ei:該重合体を形成している構成単位の蒸発エネルギー
△vi:モル体積
【請求項2】
前記金属化合物の金属は、亜鉛、銅、銀からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌剤。
【請求項3】
前記物質(A)は、少なくとも10個の炭素原子が連続して結合した構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌剤。
【請求項4】
前記物質(A)は、分子量が5000以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌剤。
【請求項5】
前記疎水性単量体は、(メタ)アクリル酸と置換基を有していてもよいアルコールとのエステル((メタ)アクリレート)類を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抗菌剤。
【請求項6】
下記の方法により算出される溶解性パラメータが15以下であり、かつ、水溶性、又は、水分散性を有する物質(B)と金属イオンとの塩を含み、
該物質(B)は、アニオン性基含有単量体由来の構造単位とカチオン性基含有単量体由来の構造単位とを有し、全構造単位100質量%に対して、カチオン性基含有単量体由来の構造単位の割合が50〜90質量%である共重合体(但し、アクリルアミド由来の構造単位を有するものを除く。)であることを特徴とする抗菌剤。
<溶解性パラメータの算出方法>
溶解性パラメータ(δ)(cal/cm1/2は、下記の計算法により算出される。
δ=(△ei/△vi)1/2 (cal/cm1/2
△ei:該重合体を形成している構成単位の蒸発エネルギー
△vi:モル体積
【請求項7】
前記金属イオンの金属は、亜鉛、銅、銀からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項に記載の抗菌剤。
【請求項8】
前記物質(B)は、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位を有する重合体(β)であることを特徴とする請求項又はに記載の抗菌剤。
【請求項9】
前記重合体(β)は、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位と、更にカチオン性基含有単量体由来の構造単位と疎水性単量体由来の構造単位とを有することを特徴とする請求項に記載の抗菌剤。
【請求項10】
前記疎水性単量体は、(メタ)アクリル酸と置換基を有していてもよいアルコールとのエステル((メタ)アクリレート)類を含むことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の抗菌剤。
【請求項11】
下記の方法により算出される溶解性パラメータが14以下であり、かつ、水溶性、又は、水分散性を有する物質(A)と金属化合物とを含み、
該物質(A)は、炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそれらの末端疎水変性物並びにオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体由来の構造単位を有する重合体であることを特徴とする抗菌剤。
<溶解性パラメータの算出方法>
溶解性パラメータ(δ)(cal/cm1/2は、下記の計算法により算出される。
δ=(△ei/△vi)1/2 (cal/cm1/2
△ei:該重合体を形成している構成単位の蒸発エネルギー
△vi:モル体積
【請求項12】
前記物質(A)は、更に不飽和モノカルボン酸類由来の構造単位を有することを特徴とする請求項11に記載の抗菌剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌剤に関する。より詳しくは、洗浄剤、化粧料、塗料、樹脂、木材防腐剤、セメント混和剤、水処理剤、工業用水、紙パルプ、プラスチック、繊維、食品添加物、医療機器、光学機器、モジュール、電子製品等に有用な抗菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の清潔志向及び衛生上の観点から、抗菌加工が施された種々のものが市販されている。抗菌加工品に使用される抗菌剤についても種々のものが開発され、無機系及び有機系の抗菌剤が開発されている。無機系抗菌剤とは抗菌性を有する金属を含むものであり、抗菌性を有する金属としては銀や銅、亜鉛等が挙げられる。また、有機系抗菌剤としては、塩素、ヨードの化合物、フェノール、アルコール、ホルマリン及び4級アンモニウム等の有機化合物が挙げられる。
【0003】
更に、無機化合物と有機化合物とを含む抗菌剤についても開発されており、例えば、特許文献1には、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル50〜95重量部及びアクリル酸ないしメタクリル酸5〜50重量部からなる混合モノマーを70重量部以上含むモノマー溶液を共重合するに際し、モノマー溶液100重量部当り有機酸銅もしくは有機酸銀3〜50重量部をモノマー溶液に溶解させ、これをそのまま重合することを特徴とする金属イオンが均一に混合された抗菌剤が開示されている。
また、特許文献2には、カルボン酸銀成分を有する重合体が架橋されてなることを特徴とする抗菌性樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−97616号公報
【特許文献2】特開平9−136808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、無機化合物と有機化合物とを含む抗菌剤が開示されているが、従来の抗菌剤は、抗菌性能と使用しやすさとの両立の点で充分でなく、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、抗菌性能と使用しやすさとをともに充分に発揮させることができる抗菌剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、抗菌剤について種々検討したところ、特定の溶解性パラメータを有し、かつ、水溶性、又は、水分散性を有する物質と金属化合物とを含む組成物、又は、特定の溶解性パラメータを有し、かつ、水溶性、又は、水分散性を有する物質と金属イオンとの塩が、抗菌性能と使用しやすさとの両方に優れることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち第1の本発明は、溶解性パラメータが14以下であり、かつ、水溶性、又は、水分散性を有する物質(A)と金属化合物とを含む抗菌剤である。
また第2の本発明は、溶解性パラメータが15以下であり、かつ、水溶性、又は、水分散性を有する物質(B)と金属イオンとの塩を含む抗菌剤である。
以下、本明細書中において、単に「本発明」という場合には第1及び第2の本発明に共通する事項を意味するものとする。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0009】
本発明における抗菌剤とは抗菌性能を有する剤のことをいう。抗菌性能とは、殺菌(微生物を殺す)、静菌(微生物の繁殖を抑える)滅菌、消毒、制菌、除菌、防腐、防カビ等の性能を有することをいい、対象となる微生物は、細菌、真菌である。
【0010】
上記細菌としては、大腸菌、緑膿菌、サルモネラ菌、モラクセラ菌、レジオネラ菌等のグラム陰性菌;黄色ブドウ球菌、クロストリジウム属細菌等のグラム陽性菌が挙げられる。上記真菌としてはカンジダ、ロドトルラ、パン酵母等の酵母類;赤カビ、黒カビ等のカビ類が挙げられる。
【0011】
本発明の抗菌剤は、溶解性パラメータが14以下であり、かつ、水溶性又は水分散性を有する物質(A)と金属化合物とを含むもの、又は、溶解性パラメータが15以下であり、かつ、水溶性又は水分散性を有する物質(B)と金属イオンとの塩を含むものである。
本発明の抗菌剤に含まれる物質(A)又は物質(B)は、水溶性又は水分散性を有することから、洗浄剤、化粧料等に溶解又は乳化剤等の分散剤を用いることなく分散することができるため、使用しやすく、水系の用途に特に好適に用いることができる。
ここで、物質(A)又は物質(B)が水溶性であるとは、25℃において、物質(A)又は物質(B)0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が0.01g未満であることをいう。
また、物質(A)又は物質(B)が水分散性を有するとは、サイズが1nmから1000nm(1μm)程度の粒子が、液体に沈降せずに浮遊あるいは懸濁している状態のことをいい、物質(A)又は物質(B)はその他の界面活性剤などの助剤を添加することなく、単独で水に均一に分散できるものである。
【0012】
本発明の抗菌剤に含まれる物質(A)又は物質(B)は、溶解性パラメータがそれぞれ14以下又は15以下であり、疎水性の構造を有する。本発明の抗菌剤は、疎水性の構造と金属成分とを有するものである。
このような抗菌剤が抗菌性を発揮する理由は以下のように推定される。本発明の抗菌剤を、微生物に作用させると、金属イオンが微生物表面又は細胞内においてタンパク質の変性を起こすことと、本発明の抗菌剤が有する疎水性の構造が細胞膜部分と親和性を示すため、細胞膜と相互作用し、細胞膜を構成する脂質等の間の相互作用を破壊、及び/又は、膜に結合しているタンパク質等の機能を阻害することとにより、細胞が破壊され、及び/又は、細胞の生理活性が阻害され、微生物が死滅することが推定される。このように、本発明の抗菌剤は、作用機構の異なる抗菌成分又は抗菌性部位を備えることによって、従来の抗菌剤に対して、抗菌性を向上させたものである。
また、本発明の抗菌剤は疎水性の構造を有する有機化合物と金属成分とを有することにより、アニオン界面活性剤等の添加剤と併用する際に、抗菌剤として有機化合物を単独で、もしくは金属イオン又は金属化合物を単独で用いた場合よりも、アニオン界面活性剤等の影響により抗菌性能が低下することを抑制することができる。
【0013】
<第1の本発明>
第1の本発明の抗菌剤は、溶解性パラメータが14以下の物質(A)と金属化合物とを含むものである。上記溶解性パラメータ(以下、SP値ともいう)は、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE」(1974年、Vol.14、No.2)の147〜154ページに記載の方法によって計算される値である。
物質(A)が単独重合体である場合、溶解性パラメータ(δ)(cal/cm1/2は、該重合体を形成している構成単位の蒸発エネルギー(△ei)及びモル体積(△vi)に基づいて、下記の計算法により算出される。
δ=(△ei/△vi)1/2 (cal/cm1/2
また、物質(A)が共重合体である場合、該重合体を形成している構成単位のそれぞれの溶解性パラメータと構成単位のモル比(モル比の総和=1.0)との積の和として算出する。
物質(A)の溶解性パラメータは、13以下であることが好ましく、より好ましくは12以下であり、更に好ましくは11以下である。上記溶解性パラメータは通常5以上である。
【0014】
上記物質(A)としては、水溶性又は水分散性を有し、溶解性パラメータが14以下であれば特に制限されないが、重合体、重合体以外の化合物であって炭素数10〜30の炭化水素基を有する化合物、等が挙げられる。
上記物質(A)は、少なくとも10個の炭素原子が連続して結合した構造を有する化合物であることが好ましい。物質(A)が重合体である場合、少なくとも10個の炭素原子が連続して結合した構造は、重合体の主鎖であっても側鎖であってもよい。
【0015】
上記物質(A)が、重合体である場合、該重合体が水溶性、又は水分散性を有し、かつ、重合体の溶解性パラメータが14以下であればよく、重合体を構成する個々の単量体の溶解性パラメータは特に制限されないが、該重合体は、溶解性パラメータが15以下の疎水性単量体由来の構造単位を有することが好ましい。より好ましくは、溶解性パラメータが14以下の疎水性単量体由来の構造単位を有することである。
物質(A)が、疎水性単量体由来の構造単位を有する重合体(α)であることは本発明の好適な実施形態の1つである。
溶解性パラメータが15以下の疎水性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸と置換基を有していてもよいアルコールとのエステル((メタ)アクリレート)類;炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそれらの末端疎水変性物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α―アリルオキシアクリル酸及びこれらの塩等の不飽和モノカルボン酸類;スチレン等の芳香族ビニル系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;酢酸ビニル等の不飽和アルコールと(メタ)アクリル酸以外のカルボン酸とのエステル;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オール等の炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜20のアルコールとの付加反応物;N−ビニルピロリドン等の環状ビニル系単量体が挙げられる。
上記不飽和モノカルボン酸の塩としては、金属塩が挙げられる。上記金属塩の金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が挙げられる。
上記物質(A)が、不飽和モノカルボン酸の金属塩由来の構造単位を有する重合体である場合、本発明の抗菌剤は、物質(A)と金属イオンとの塩と金属化合物とを含むことになるが、このような抗菌剤も、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0016】
上記(メタ)アクリレートにおける置換基としては、水酸基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜18のアルコキシ基;オキシアルキレン基、スルホン酸基、リン酸基等のオキソ基含有基;フルオロ基等のハロゲノ基;グリシジル基等のエポキシ基;アルデヒド基等のカルボニル基等が挙げられる。
【0017】
上記のような置換基を有していてもよい(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、下記一般式(1);
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
置換基を有していてもよい炭化水素基とは、炭化水素基の水素原子の1つ又は2つ以上が、炭化水素基以外の基で置換された基をいう。置換基を有する炭化水素基であって、置換基が(ポリ)オキシアルキレン基を有する場合、該炭化水素基の炭素数は、3〜200であることが好ましい。少なくとも置換基が(ポリ)オキシアルキレン基を有しない場合、置換基を有していてもよい炭化水素基の炭素数は1〜30であることが好ましい。上記置換基を有していてもよい炭化水素基の炭素数は、置換基を有している場合には、置換基に含まれる炭素の数も上記炭素数に入れるものとする。
【0020】
上記炭化水素基としては、特に制限されず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の環状炭化水素基が挙げられる。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、2,3,5−トリメチルヘキシル基、デシル基、ウンデシル基、4−エチル−5−メチルオクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。
上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
上記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ドデシニル基、オクタデシニル基、イコシニル基等が挙げられる。
【0021】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、o−キシリル基等が挙げられる。
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
上記シクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0022】
上記のような置換基を有しないアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート等が挙げられる。
【0023】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
オキソ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート等の(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレート;アルコキシポリエチレングリコールメタクリレート(アントックスLMA−10)等のアルキレングリコールの繰り返し数が1〜100のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;スルホプロピル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
【0026】
フルオロ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2〜6のフルオロ基含有アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
カルボニル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシアルキルプロペナール等が挙げられる。
【0029】
上記炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物における、炭素数2〜20の不飽和アルコールとしては、ビニルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、イソプレノール等が挙げられる。上記不飽和アルコールの炭素数は、2〜16が好ましく、より好ましくは2〜12である。
上記不飽和アルコールとしては、アリルアルコール、イソプレノールが好ましい。
【0030】
上記アルキレンオキシドは、アルキレン基の炭素数が2〜15であることが好ましく、より好ましくは2〜10であり、更に好ましくは2〜5であり、特に好ましくは2〜3であり、最も好ましくは2である。
このようなアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド、スチレンオキシド、1,1−ジフェニルエチレンオキシド等が挙げられる。このようなアルキレンオキシドの中でも好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
【0031】
炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物におけるアルキレンオキシドの平均付加モル数は1〜100であることが好ましく、より好ましくは1〜80であり、更に好ましくは1〜70であり、特に好ましくは、1〜50である。
上記炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物としては、アリルアルコールのエチレンオキシド付加物、イソプレノールのエチレンオキシド付加物が好ましい。
【0032】
上記炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物の末端疎水変性物としては、上記付加物の(ポリ)アルキレングリコール末端の水素原子が、炭素数1〜30の炭化水素基に置換されたものが好ましい。
上記炭素数1〜30の炭化水素基としては、上記式(1)における炭化水素基と同様のものが挙げられる。炭化水素基の炭素数として好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜16であり、更に好ましくは1〜12である。炭化水素基としてはアルキル基が好ましい。
【0033】
上記疎水性単量体は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル及び/又は炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物若しくはその末端疎水変性物を含むことが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、上記式(1)で表される化合物であって、式(1)のRの炭化水素基の炭素数が、1〜20である化合物であることが好ましい。
上記式(1)のRの炭化水素基の炭素数は、より好ましくは1〜16であり、更に好ましくは1〜12であり、特に好ましくは1〜8である。
上記炭化水素基の炭素数が1〜20であれば、重合体の水溶性、粘度を好適な範囲とすることができ、取扱いに優れるものとなる。上記炭化水素基の炭素数が1〜12であれば、重合体の製造が容易となり、さらに、抗菌性に加えて安全性にも優れるものとなる。
上記炭化水素基として、好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、より好ましくはアルキル基である。
すなわち上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル(メタ)アクリレート)が好ましい。
【0034】
アルキル(メタ)アクリレートとして好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートであり、より好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0035】
上記重合体(α)はまた、疎水性単量体として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位と、更に溶解性パラメータが15以下であって、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマー由来の構造単位とを有するものであることが好ましい。このような構造単位を有する共重合体を含むものもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーは、溶解性パラメータが15以下であって、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基のいずれかの官能基を有しているものであればよく、(メタ)アクリル酸エステル構造を有しているものであっても、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーに分類するものとする。
本発明において、疎水性単量体として、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーとを共重合することにより、得られる共重合体の水溶性又は水分散性が向上し、また、塩やpHによる共重合体の析出、抗菌性の低下等の影響をより充分に緩和することができるため、幅広いpH領域において共重合体を使用することができ、弱酸性のものが多い化粧品や、中性から弱アルカリ領域のものが多い洗剤等の種々の用途に好適に用いることができる。
上記カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーとしては、上述の不飽和モノカルボン酸類;水酸基含有(メタ)アクリレート;アルキルビニルエーテル類;炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物;炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜20のアルコールとの付加反応物等が挙げられる。
【0036】
カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーとしては、不飽和モノカルボン酸類;水酸基含有(メタ)アクリレート;炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物;炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜20のアルコールとの付加反応物が好ましい。
上記不飽和モノカルボン酸類としては、(メタ)アクリル酸及びこれらの塩が好ましい。
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
上記炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物としては、イソプレノールのエチレンオキシド付加物が好ましい。
【0037】
上記炭素数1〜20のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等のアルキルアルコールが挙げられる。好ましくはエタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数2〜16のアルキルアルコールである。
上記炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜20のアルコールとの付加反応物としては1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オールが好ましい。
【0038】
物質(A)は、カチオン性基を有することが好ましい。上記物質(A)がカチオン性基を有することにより、カチオン性基がマイナスの電荷を有する微生物の表面への吸着性がより強くなり、抗菌性能がより向上する。また、物質(A)が、カチオン性基のような極性基を有することにより、物質(A)の水溶性又は水分散性がより充分なものとなる。
物質(A)が重合体(α)である場合、重合体(α)は、更にカチオン性基含有単量体由来の構造単位を有していることが好ましい。
物質(A)が、カチオン性基含有単量体由来の構造単位と疎水性単量体由来の構造単位とを有する共重合体であることは本発明の好適な実施形態の1つである。
上記カチオン性基含有単量体は、エチレン性不飽和基とカチオン性基とを少なくとも1つずつ有していれば、特に制限されない。ここでカチオン性基とは、カチオンを有する基又はカチオンを発生させる基であり、例えば、第1〜3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基等が挙げられる。第1〜3級アミノ基としては、下記式(2);
【0039】
【化2】
【0040】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)で表される構造であることが好ましい。
上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、更に好ましくはアルキル基である。
また、上記炭化水素基の炭素数としては、1〜10が好ましく、より好ましくは1〜8であり、特に好ましくは1〜5であり、最も好ましくは1〜2である。
上記R及びRのうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜12の炭化水素基であることが好ましく、R及びRの両方が炭素数1〜12の炭化水素基であることがより好ましい。すなわち、第1〜3級アミノ基の中でも、第3級アミノ基が好ましい。
【0041】
上記第4級アンモニウム塩基としては、下記式(3);
【0042】
【化3】
【0043】
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)で表される構造であることが好ましい。炭素数1〜12の炭化水素基の具体例及び好ましい形態は、上述のとおりである。
上記炭素数1〜12の炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基であることが好ましい。
〜Rの炭素数としては、より好ましくは1〜10であり、更に好ましくは1〜7であり、特に好ましくは1〜5である。
〜Rの炭化水素基としては、メチル基又はエチル基が最も好ましい。
【0044】
上記カチオン性基としては、第1〜3級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基の中でも、第3級アミノ基又は第4級アンモニウム塩基が好ましい。第3級アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が好ましい。
【0045】
上記カチオン性基含有単量体としては、下記式(4−1)又は(4−2);
【0046】
【化4】
【0047】
(式(4−1)及び(4−2)中、R〜R10は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。Xは、直接結合又は2価の連結基を表す。式(4−1)中、R、Rは、上記式(2)におけるR、Rと同様である。式(4−2)中、R〜Rは、上記式(3)におけるR〜Rと同様である。)で表される構造であることが好ましい。
【0048】
上記R10における炭素数1〜5のアルキル基は、メチル基であることが好ましい。上記R10としては、水素原子又はメチル基が好ましい。抗菌性及び耐加水分解性の観点からR10としてはメチル基がより好ましい。
上記R、Rは、水素原子であることが好ましい。
【0049】
上記式(4−1)における2価の連結基としては、特に制限されないが、例えば、下記式(5);
【0050】
【化5】
【0051】
(式中、mは、0〜12の整数を表す。)、下記式(6);
【0052】
【化6】
【0053】
(式中、lは、0〜4の整数を表す。)及び下記式(7);
【0054】
【化7】
【0055】
(式中、kは、1〜10の整数を表す。)で表される構造が挙げられる。
【0056】
上記式(4−2)における2価の連結基としては、炭素数1〜12のアルキレン基であることが好ましい。
【0057】
上記カチオン性基含有単量体として、具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及び上記モノマーに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれらの塩酸等の酸による中和物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及び上記モノマーに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれらの塩酸等の酸による中和物;モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(tert−ブチルアミノ)エチル等のモノアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及びこれらの塩酸等の酸による中和物;モノメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のモノアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及びこれらの塩酸等の酸による中和物;(メタ)アクリル酸−2−アミノエチル等の(メタ)アクリル酸とアルカノールアミンとのエステル類及びこれらの塩酸等の酸による中和物;N,N−ジアリルメチルアミン及びこれに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸等の酸による中和物;アリルアミン及びこれの塩酸等の酸による中和物;1−アリルオキシ−3−ジブチルアミノ−2−オール、1−アリルオキシ−3−ジエタノールアミノ−2−オール等の炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜24のアミン化合物との付加反応物及びこれに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸等の酸による中和物等が挙げられる。
【0058】
上記炭素数1〜24のアミン化合物は、アミノ基を有し、炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体の環状エーテル構造と反応することができる限り特に制限されない。炭素数1〜24のアミン化合物の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜16がより好ましい。炭素数1〜24のアミン化合物としては、第1級アミン、第2級アミンが挙げられ、例えば、炭素数1〜24の(ジ)アルキルアミン、炭素数1〜24の(ジ)アルカノールアミン、炭素数1〜24のアルキルアルカノールアミン等が挙げられる。
炭素数1〜24の(ジ)アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン等が好ましい。
炭素数1〜24の(ジ)アルカノールアミンとしては、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン、ヘキサノールアミン等が好ましい。
炭素数1〜24のアルキルアルカノールアミンとしては、メチルエタノールアミン等が好ましい。
上記カチオン性基含有単量体として、好ましくは、N,N−ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及びこれらの塩酸等の酸による中和物やこれらに4級化剤を付加させたモノマー、N,N−ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及びこれらの塩酸等の酸による中和物やこれらに4級化剤を付加させたモノマー、中でもN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びこれらの塩酸等の酸による中和物やこれらに4級化剤を付加させたモノマーがより好ましい。
上記4級化剤としては、特に制限されるものではないが、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル等のアルキル硫酸等の一般的なアルキル化剤が挙げられる。
【0059】
上記重合体(α)は、上記疎水性単量体、カチオン性基含有単量体以外のその他の単量体由来の構造単位を有していてもよい。その他の単量体としては、重合体が水溶性又は水分散性を有するものとなり、かつ、重合体全体として溶解性パラメータが14以下となる限り特に制限されない。その他の単量体の単独重合体での溶解性パラメータは、14以下であっても、14を超えるものであってもよい。その他の単量体の溶解性パラメータが14以下であっても、14を超えるものであっても、上記疎水性単量体を好ましい割合で重合している限り、重合体としての疎水性は充分に維持されることとなる。
また、粘度を調整する観点から溶解性パラメータの値にかかわらずエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体が含まれていてもよい。エチレン性不飽和基を2個以上有する単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、サッカロース、ソルビトール、1,4−ブタンジオール等のポリオールの2置換以上の水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステル類;上記ポリオールの2置換以上のメタクリル酸エステル類;上記ポリオールの2置換以上の水酸基とアリルアルコール、ビニルアルコール等の不飽和アルコールとのエーテル類;フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、メタクリル酸アリル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらのその他の単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記重合体(α)は、全構造単位100質量%に対して、疎水性単量体由来の構造単位を1〜80質量%の割合で有することが好ましい。より好ましくは3〜70質量%、更に好ましくは5〜60質量%であり、一層好ましくは5〜50質量%であり、更に一層好ましくは5〜40質量%である。
上記重合体(α)が疎水性単量体由来の構造単位として(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位を有する場合、全構造単位100質量%に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位の割合が、0.01〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは3〜40質量%である。
【0061】
上記重合体(α)は、上述のとおり、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマー由来の構造単位を有することが好ましく、全構造単位100質量%に対する、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマー由来の構造単位の割合は、0〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜20質量%である。
上記カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーは、溶解性パラメータが15以下であって、上記官能基を有しているものであればよく、このようなモノマー由来の構造単位を上記好ましい割合で有することにより、重合体(α)の水溶性、又は、水分散性がより充分なものとなる。
【0062】
上記重合体(α)が炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物由来の構造単位を有する共重合体の場合、該共重合体は、全構造単位100質量%に対して、炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物由来の構造単位の割合が、0.1〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは0.5〜40質量%、更に好ましくは1〜40質量%である。
【0063】
上記重合体(α)がカチオン性基含有単量体由来の構造単位を有する共重合体の場合、該共重合体は、全構造単位100質量%に対して、カチオン性基含有単量体由来の構造単位の割合が、10〜90質量%であることが好ましい。より好ましくは20〜85質量%、更に好ましくは30〜80質量%であり、一層好ましくは40〜80質量%であり、更に一層好ましくは50〜80質量%であり、特に好ましくは55〜80質量%である。
【0064】
上記重合体(α)は、上述のとおり、その他の単量体由来の構造単位を有していてもよく、全構造単位100質量%に対するその他の単量体由来の構造単位の含有割合は、0〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0〜8質量%、更に好ましくは0〜5質量%である。その他の単量体の中でもエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体由来の構造単位の含有割合は、全構造単位100質量%に対して0〜1%であることが好ましく、より好ましくは、0〜0.5質量%、更に好ましくは0〜0.1質量%である。
【0065】
物質(A)が、上述の重合体以外の炭素数10〜30の炭化水素基を有する化合物である場合、炭素数10〜30の炭化水素基の炭素数は、10〜25が好ましく、より好ましくは10〜20であある。
上記炭化水素基としては、式(1)における炭化水素基と同様のものが挙げられる。
炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の鎖状炭化水素基が好ましく、より好ましくはアルキル基である。
上記アルキル基としては、デシル基、ウンデシル基、4−エチル−5−メチルオクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基が好ましい。
【0066】
上記重合体以外の化合物であって炭素数10〜30の炭化水素基を有する化合物は、炭素数10〜30の炭化水素基以外の他の構造を有していてもよい。他の構造としては、(ポリ)アルキレングリコール構造等が挙げられる。
上記炭素数10〜30の炭化水素基を有する化合物は、(ポリ)アルキレングリコール構造を有するものであることが好ましい。
上記炭素数10〜30の炭化水素基を有する化合物が(ポリ)アルキレングリコール構造を有するものであれば、炭素数10〜30の炭化水素基を有する化合物は適度な水溶性を有することとなる。
(ポリ)アルキレングリコール構造は、アルキレングリコール(オキシアルキレン基)の繰り返し数が1〜100であることが好ましい。より好ましくは1〜80であり、更に好ましくは1〜60である。
上記アルキレングリコールは、アルキレンオキシド付加物であり、このようなアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド、スチレンオキシド、1,1−ジフェニルエチレンオキシド等が挙げられる。このようなアルキレンオキシドの中でも好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
【0067】
上記炭素数10〜30の炭化水素基を有する化合物としては、(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられる。(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等が挙げられ、好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテルである。
【0068】
上記物質(A)は、分子量が5000以上であることが好ましい。
物質(A)の分子量が5000以上であれば、物質(A)の疎水性がより強くなり、細胞との相互作用がより向上する。物質(A)の分子量としてより好ましくは5000〜1000000であり、更に好ましくは6000〜800000であり、特に好ましくは8000〜700000であり、最も好ましくは10000〜80000である。物質(A)が重合体である場合、上記分子量は、重量平均分子量を意味し、重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0069】
第1の本発明の抗菌剤に含まれる金属化合物の金属は、比重が4以上の重金属であることが好ましい。より好ましくは亜鉛、銅、銀からなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
上記金属化合物としては、酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩等の水溶性金属塩等が挙げられる。
上記金属化合物として具体的には、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫化亜鉛、塩化亜鉛、酢亜鉛、シアン化亜鉛、塩化アンモニウム亜鉛、グルコン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、過塩素酸亜鉛等の亜鉛化合物;酸化銅、水酸化銅、硫酸銅、硝酸銅、硫化銅、塩化銅、酢酸銅、シアン化銅、塩化アンモニウム銅、グルコン酸銅、酒石酸銅、過塩素酸銅等の銅化合物;酸化銀、水酸化銀、硫酸銀、硝酸銀、酢酸銀、フッ化銀、過塩素酸銀等の銀化合物等が好ましい。
上記抗菌剤に含まれる金属化合物の形態としては、金属イオンと金属化合物を構成するアニオンとが結合した状態であっても、電離した状態であってもよい。
【0070】
第1の本発明の抗菌剤中の金属化合物は、金属化合物の形態に関わらず、金属化合物を構成する金属原子の個数に換算して、物質(A)100gに対して、0.001〜10モル含まれることが好ましい。より好ましくは0.005〜8モルであり、更に好ましくは0.01〜5モルである。上記金属化合物の含有割合が上記好ましい範囲であれば、抗菌剤として金属化合物を単独で用いた場合よりも、使用量が抑えられ、コストをより削減することができる。
第1の本発明の抗菌剤中の金属化合物の割合は、物質(A)100質量%に対して、1〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは2〜40質量%であり、更に好ましくは2〜30質量%である。
【0071】
<第2の本発明>
第2の本発明の抗菌剤は、溶解性パラメータが15以下であり、かつ、水溶性、又は、水分散性を有する物質(B)と金属イオンとの塩を含むものである。上記溶解性パラメータについては、第1の本発明において述べたとおりである。
物質(B)の溶解性パラメータは、14以下であることが好ましく、13以下であることがより好ましく、更に好ましくは12以下であり、特に好ましくは11以下である。上記溶解性パラメータは通常5以上である。
【0072】
上記物質(B)としては、溶解性パラメータが15以下であり、かつ、水溶性、又は、水分散性を有するものであれば特に制限されないが、重合体であることが好ましい。
上記重合体としては、アニオン性基含有単量体由来の構造単位を有するものであることが好ましい。
物質(B)が、アニオン性基含有単量体由来の構造単位を有する場合、第2の本発明の抗菌剤は、上記アニオンと金属イオンとがイオン結合した塩を含むものとなる。
上記アニオン性基含有単量体としては、アニオン性基を有するものであれば特に制限されない。
上記アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
上記アニオン性基としては、カルボキシル基が好ましい。
すなわち、物質(B)は、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位を有する重合体(β)であることが好ましい。
【0073】
カルボキシル基含有単量体(以下、不飽和カルボン酸系単量体ともいう。)としては、不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基とカルボアニオンを形成しうる基とを1つずつ有する単量体であればよく、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、3−メチルクロトン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、イタコン酸等;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が好ましい。上記不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基を1つとカルボアニオンを形成しうる基を2つとを有する単量体であればよく、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、それらの無水物、又は、ハーフエステルが好ましい。
上記不飽和カルボン酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸及びこれらの塩が好ましい。
【0074】
上記重合体(β)は、更に、疎水性単量体及び/又はカチオン性基含有単量体由来の構造単位を有することが好ましい。
疎水性単量体及びカチオン性基含有単量体の具体例及び好ましい例は、第1の本発明における疎水性単量体及びカチオン性基含有単量体と同様である。
上記疎水性単量体がアニオン性基を有する場合、アニオン性基含有単量体に分類するものとする。
また、上記疎水性単量体がカチオン性基を有する場合、カチオン性基含有単量体に分類するものとする。
上記重合体(β)は、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位と、更にカチオン性基含有単量体由来の構造単位と疎水性単量体由来の構造単位とを有するものであることがより好ましい。
【0075】
上記重合体(β)は、不飽和カルボン酸系単量体、カチオン性基含有単量体及び疎水性単量体以外のその他の単量体由来の構造単位を有していてもよい。その他の単量体の具体例及び好ましい例は、第1の本発明におけるその他の単量体と同様である。
【0076】
上記重合体(β)は、全構造単位100質量%に対して、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位を0.05〜20質量%の割合で有することが好ましい。より好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.5〜10質量%であり、一層好ましくは0.5〜8質量%であり、更に一層好ましくは1〜8質量%である。
【0077】
上記重合体(β)が疎水性単量体由来の構造単位を有する場合、重合体(β)は、全構造単位100質量%に対して、疎水性単量体由来の構造単位の割合が、0.01〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは0.5〜70質量%、更に好ましくは1〜60質量%であり、一層好ましくは2〜60質量%であり、更に一層好ましくは3〜55質量%であり、特に好ましくは3〜50質量%である。
上記重合体(β)が疎水性単量体由来の構造単位として(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位を有する場合、全構造単位100質量%に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位の割合が、0.01〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは3〜40質量%である。
【0078】
上記重合体(β)は、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマー由来の構造単位を有することが好ましく、全構造単位100質量%に対する、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマー由来の構造単位の割合は、0〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは0.1〜20質量%である。
上記カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーは、溶解性パラメータが15以下であって、上記官能基を有しているものであればよく、このようなモノマー由来の構造単位を上記好ましい割合で有することにより、重合体(β)の水溶性、又は、水分散性がより充分なものとなる。
【0079】
上記重合体(β)が炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物由来の構造単位を有する場合、重合体(β)は、全構造単位100質量%に対して、炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物由来の構造単位の割合が、0.01〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜15質量%である。
【0080】
上記重合体(β)がカチオン性基含有単量体由来の構造単位を有する場合、重合体(β)は、全構造単位100質量%に対して、カチオン性基含有単量体由来の構造単位の割合が、20〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは30〜100質量%、更に好ましくは40〜100質量%であり、一層好ましくは40〜95質量%であり、更に一層好ましくは45〜90質量%であり、特に好ましくは50〜90質量%であり、最も好ましくは50〜85質量%である。
【0081】
上記重合体(β)は、上述のとおり、その他の単量体由来の構造単位を有していてもよく、全構造単位100質量%に対するその他の単量体由来の構造単位の含有割合は、0〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0〜8質量%、更に好ましくは0〜5質量%である。その他の単量体の中でもエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体由来の構造単位の含有割合は、全構造単位100質量%に対して0〜1%であることが好ましく、より好ましくは、0〜0.5質量%、更に好ましくは0〜0.1質量%である。
【0082】
上記物質(B)は、分子量が5000以上であることが好ましい。
物質(B)の分子量が5000以上であれば、物質(B)の疎水性がより強くなり、細胞との相互作用がより向上する。物質(B)の分子量としてより好ましくは5000〜1000000であり、更に好ましくは6000〜800000であり、特に好ましくは8000〜700000であり、最も好ましくは10000〜100000である。物質(B)が重合体である場合、上記分子量は、重量平均分子量を意味し、重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0083】
第2の本発明の抗菌剤に含まれる塩を構成する金属イオンの金属は、比重が4以上の重金属であることが好ましい。より好ましくは亜鉛、銅、銀からなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
また、第2の本発明の抗菌剤に含まれる塩の形態は、物質(B)と金属イオンとがイオン結合した状態であっても、物質(B)と金属イオンとに電離した状態であってもよい。
【0084】
第2の本発明の抗菌剤中の金属イオンの割合は、物質(B)100gに対して0.001〜10モル含まれることが好ましい。より好ましくは0.005〜8モルであり、更に好ましくは0.01〜5モルである。上記金属イオンの割合が上記好ましい範囲であれば、抗菌剤として金属イオンを単独で用いた場合よりも、使用量が抑えられ、コストをより削減することができる。
第2の本発明の抗菌剤中の金属イオンの割合は、物質(B)100質量%に対して、1〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは2〜40質量%であり、更に好ましくは3〜30質量%である。
【0085】
本発明の抗菌剤における物質(A)及び(B)が重合体である場合、重合体の製造は特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例は、上述のとおりである。
また、第2の本発明の抗菌剤に含まれる塩が重合体の塩である場合、単量体成分におけるアニオン性基含有単量体は、酸の形態であっても、金属塩の形態であってもよい。酸型のアニオン性基含有単量体を用いる場合には、重合後に、金属イオンを捕捉することにより、重合体の塩を形成することができる。アニオン性基含有単量体の形態としては金属塩の形態であることが好ましい。
単量体成分における各単量体の好ましい含有割合は、上述の重合体における各構造単位の好ましい割合と同様である。
【0086】
上記重合体は、上記単量体成分を重合開始剤の存在下で重合する方法により製造することが好ましい。単量体成分を重合させる際には、重合方法に応じて重合開始剤を適宜用いることができる。上記重合開始剤としては、通常用いられるものを使用することができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、アゾ系化合物が好ましい。上記重合開始剤としては、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0087】
上記重合開始剤の使用量は、上記単量体成分の重合を開始できる量であれば特に制限されないが、全単量体成分100質量部に対して、通常0.01〜50質量部であり、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.05〜20質量部であることが好ましい。
【0088】
単量体としてカチオン性基含有単量体を用いる場合、カチオン性基含有単量体の使用方法としては、それらを酸により中和した酸中和物、又は、4級化剤により4級化した4級アンモニウム塩として用いてもよい。
カチオン性基含有単量体の中和に用いる酸としては、特に制限されるものではないが、塩酸、硫酸等の無機酸;酢酸、クエン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸等の有機酸が挙げられる。
カチオン性基含有単量体の4級化剤としては、上述のとおりである。
【0089】
上記酸、又は、4級化剤を用いる場合、これらの使用量としては、上記カチオン性基含有単量体の一部又は全部が中和又は4級化される限り特に制限されないが、重合反応に用いるカチオン性基含有単量体1モルに対して、酸、又は、4級化剤は0.1〜1モルであることが好ましい。
【0090】
上記重合方法において、単量体成分や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって重合を行う方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を添加する方法;単量体のうちの一(例えば、疎水性単量体)の一部を反応容器に仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に(好ましくは連続して)添加することによって重合を行う方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができうることから、重合開始剤と単量体成分を反応容器に逐次滴下する方法で重合を行うことが好ましい。
【0091】
上記重合方法としては、例えば、溶液重合やバルク重合、懸濁重合、乳化重合、リビング重合やグラフト重合等の方法で行うことができ、特に限定されるものではないが、溶液重合が好ましい。この際使用できる溶媒は、水であることが好ましい。水のみを使用する場合には、脱溶剤工程を省略できる点で好適である。
【0092】
上記重合方法は、回分式でも連続式でも行うことができる。また、重合の際、必要に応じて使用される溶媒としては、公知のものを使用でき、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、THF(テトラヒドロフラン)等の1価のアルコール類;グリセリン、(ポリ)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の芳香族又は脂肪族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、単量体成分及び得られる重合体の溶解性の点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることが好ましい。上記溶媒は、比較的安価なものであり、本発明の製造方法は、経済的にも優れる。また、上記重合方法においては、水にプロピレングリコールやエチレングリコール等の多価アルコール溶媒を加えて重合してもよい。上記多価アルコール溶媒は水と併用することによって、ポリマーの溶解性を高めることができ、ソープフリー重合をより充分に抑制することができる。これにより、水溶性に乏しいポリマーの生成をより充分に抑制し、溶液の透明性をより向上させることができる。
上記多価アルコール溶媒と水とを併用する場合、水100質量%に対する多価アルコール溶媒の割合は、0〜200質量%であることが好ましい。
本発明の重合体の製造方法は、必要に応じて、任意の連鎖移動剤、pH調節剤、緩衝剤などを用いることができる。
【0093】
重合の際の温度は特に限定されないが、通常50〜120℃であり、好ましくは60〜110℃である。重合時の温度が上記範囲であれば、残存単量体成分が少なくなる傾向にある。なお、重合時の温度は、重合反応の進行中において、常に一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応の進行中に経時的に重合温度を変動(昇温又は降温)させてもよい。また、単量体成分を重合させる際には、単量体成分が均一に重合するようにするために、適宜、撹拌することが好ましい。
【0094】
重合時間は特に制限されず、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜9時間程度である。なお、本発明において、「重合時間」とは単量体を添加している時間を表す。
【0095】
反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でも不活性雰囲気でもどちらでもよい。
【0096】
上記重合反応系における重合反応が終了した時点での水溶液中の固形分濃度(すなわち単量体の重合固形分濃度)は、20質量%以上が好ましく、25〜80質量%であることがより好ましい。このように重合反応終了時の固形分濃度が20質量%以上と高ければ、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。そのため、従来の製造方法では場合によっては必要であった濃縮工程を省略することができるなど、効率よく重合体を含む抗菌剤を得ることができる。それゆえ、その製造効率を大幅に上昇させたものとすることができ、その結果、本発明の抗菌剤の生産性を大幅に向上し、製造コストの上昇も抑制することが可能となる。
【0097】
上記重合体の製造方法は、全ての使用原料の添加が終了した以後に、単量体の重合率を上げること等を目的として熟成工程を設けても良い。熟成時間は、通常1〜240分間、好ましくは1〜180分間、より好ましくは1〜120分間である。熟成時間が1分間未満の場合には、熟成不十分につき単量体成分が残ることがあり、残存単量体に起因する毒性や臭気などが問題となる。
【0098】
また、熟成工程における好ましい重合体溶液の温度は、上記重合温度と同様の範囲である。したがって、ここでの温度も一定温度(好ましくは上記滴下が終了した時点での温度)で保持してもよいし、熟成中に経時的に温度を変化させてもよい。
【0099】
本発明の抗菌剤は、本発明の物質(A)と金属化合物、又は、物質(B)と金属イオンとの塩以外のその他の成分を含んでいてもよい。
上記その他の成分としては、抗菌剤の抗菌性能を阻害するものでない限り特に制限されないが、例えば、アルカリ調整剤、アニオン界面活性剤、相溶化剤や安定化剤等の添加剤等が挙げられる。
上記その他の成分の含有量は、抗菌剤の抗菌性能を阻害しなければ、特に制限されないが、上記本発明の物質(A)と金属化合物、又は、物質(B)と金属イオンとの塩の総量100質量%に対して、0〜20質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0100】
本発明の抗菌剤は、上述の構成よりなり、抗菌性能と使用しやすさとをともに充分に発揮させることができるため、洗濯洗浄剤、柔軟剤、住居用洗剤、食器洗浄剤、硬質表面用洗浄剤等の洗浄剤用途;シャンプー、リンス、化粧水、乳液、クリーム、日焼け止め、ファンデーション、アイメイク製品等の化粧品、制汗剤等の化粧料用途;塗料、木材防腐剤、セメント混和剤、工業用水(製紙工程における抄紙工程水、各種工業用の冷却水や洗浄水)等の工業用途;医療器具、食品添加物、太陽電池モジュールや有機素子デバイス、熱線遮蔽フィルムなどの電子機器用途等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0101】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0102】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)により測定した。
測定条件、装置などは以下の通りである。
装置:東ソー社製 EcoSEC HLC−8320GPC
検出器:示差屈折率計(RI)検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel α−M、α−2500
カラム温度:40℃
流速:0.4mL/min
注入量:20μL(試料濃度0.4wt%の溶離液調製溶液)
検量線:ジーエルサイエンス社製 ポリエチレングリコール
GPCソフト:東ソー社製 EcoSEC−WS
溶離液:0.5M酢酸+0.2M硝酸Na/アセトニトリル=50/50(v/v)
【0103】
<最小発育阻止濃度(MIC)>
抗菌剤を含む水溶液をミューラーヒントン培地中で2倍ずつ順次希釈していき、抗菌剤含有培地の希釈系列を調製した。その後、各濃度の抗菌剤を含有する培地をポリスチレン製96穴プレートに50μLずつ添加した。次に、18時間ミューラーヒントン寒天培地上で生育させた大腸菌(Escherichia coli、NBRC−3972)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC−12732)及び/又は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、NBRC−13275)のコロニーをバターフィールド緩衝液に懸濁し、10×10個/mL程度の菌液を調製した。調製した菌液をミューラーヒントン培地中で10×10個/mL程度まで希釈し、上記で調製した希釈系列に対して50μLずつ添加した。35℃にて20時間静置後、菌が生育していない培地中の最小の抗菌剤濃度(ppm)を最小発育阻止濃度(MIC)として決定した。菌の生育の有無は、目視にて濁度が上昇しているかによって判断した。
【0104】
<最小殺菌濃度(MBC)(アニオン界面活性剤非存在下)>
抗菌剤を含む水溶液をミューラーヒントン培地中で2倍ずつ順次希釈していき、抗菌剤含有培地の希釈系列を調製した。
その後、各濃度の抗菌剤を含有する培地をポリスチレン製96穴(ウェル)プレートに50μLずつ添加した。
次に、18時間〜24時間、ミューラーヒントン寒天培地上で生育させた大腸菌(Escherichia coli、NBRC−3972)及び/又は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、NBRC−13275)のコロニーを35℃に保温したミューラーヒントン培地に懸濁し、35℃で2〜6時間振盪し濁りが目視できるまで培養した。こうして調製した培養液をミューラーヒントン培地中で10×10個/ml程度まで希釈し、バターフィールド緩衝液でさらに100倍に希釈した。得られた菌液の菌濃度をプレート希釈法で決定し、次いで、菌液を上記で調製した抗菌剤希釈系列に対して50μlずつ添加し、35℃にて24時間静置した。それぞれのウェルのうち生育の見られないものから10μl取り、バターフィールド緩衝液で10倍に希釈して2枚ずつプレーティングし、生菌数を測定した。こうして初期の菌液の生菌数と抗菌剤中で24時間処理後の生菌数を測定し、初期の生菌数と比較して処理後の菌数が99.9%以上減少していた抗菌剤の最小添加濃度(ppm)を最小殺菌濃度(MBC)として決定した。
【0105】
<アニオン界面活性剤存在下での最少殺菌濃度(MBC)>
抗菌剤を含む水溶液をミューラーヒントン培地中で2倍ずつ順次希釈していき、抗菌剤含有培地の希釈系列を調製した。その後、各濃度の抗菌剤を含有する培地をポリスチレン製96穴(ウェル)プレートに50μlずつ添加した。次に、18時間〜24時間、ミューラーヒントン寒天培地上で生育させた大腸菌(Escherichia coli、NBRC−3972)及び/又は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、NBRC−13275)のコロニーを35℃に保温したミューラーヒントン培地に懸濁し、35℃で2〜6時間振盪し濁りが目視できるまで培養した。こうして調製した培養液をミューラーヒントン培地中で10×10個/ml程度まで希釈し、得られた菌液の菌濃度をプレート希釈法で決定した。この10×10個/ml程度の菌液をポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王(株)製)と直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)をそれぞれ200ppmずつ含有するミューラーヒントン培地でさらに100倍に希釈した。次いで、この希釈菌液を上記で調製した抗菌剤希釈系列に対して50μlずつ添加し、35℃にて24時間静置した。このとき、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムと直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムはそれぞれ終濃度100ppmとなった。培養後のそれぞれのウェルのうち生育の見られないものから10μl取り、バターフィールド緩衝液で10倍に希釈して2枚ずつプレーティングし、生菌数を測定した。こうして初期の菌液の生菌数と抗菌剤中で24時間処理後の生菌数を測定し、初期の生菌数と比較して処理後の菌数が99.9%以上減少していた抗菌剤の最小添加濃度(ppm)を最小殺菌濃度(MBC)として決定した。
【0106】
<合成例1>AA/PEA
水溶性のアクアリックEL−141(日本触媒製、アクリル酸/PEA(アリルアルコールのEO5モル付加体)=60/40)20g、25%アンモニア水0.2g、水29.8gを混合し、次にホモミキサーで撹拌下に活性亜鉛華50gを適量ずつ分割混合した。全成分混合した後、800rpmで60分間撹拌継続した。ホモミキサーで60分間分散後、セントリ―ミルにて75分間粉砕し、酸化亜鉛水分散体(共重合体1)を得た。
【0107】
<合成例2>DAM/BA/AA
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水70g、プロピレングリコール22gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)(和光純薬工業(株)製、以下DAMと称す)63g、酢酸24.1g及びアクリル酸ブチル(以下BAと称す。)22.5gからなるモノマー溶液1;2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(和光純薬工業(株)製、以下V−50と称す)5%水溶液30.8gからなる開始剤水溶液;18%アクリル酸水溶液15.3gからなるモノマー溶液2をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。
滴下開始時間に関して、モノマー溶液1は180分間、開始剤水溶液およびモノマー溶液2は210分間滴下した。
全滴下終了後、さらに30分間反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を完結させ、共重合体2を得た。
得られた共重合体は水溶性であり、固形分は35%、pHは6.51、重量平均分子量は34000、溶解性パラメータは、9.69であった。
【0108】
<合成例3>DAM/BA/Zn−DA
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、プロピレングリコール62gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に、DAM64.8g、酢酸24.8g、BA22.5gからなるモノマー溶液1;5%V−50開始剤水溶液30g;6.3%アクリル酸亜鉛(以下、Zn−DAと称す)水溶液42.7gからなるモノマー溶液2をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。
滴下開始時間に関して、モノマー溶液1は180分間、開始剤水溶液及びモノマー溶液2は210分間滴下した。
全滴下終了後、さらに30分間反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を完結させ、共重合体3を得た。
得られた共重合体は水溶性であり、固形分は33%、pHは6.68、重量平均分子量は21700であった。また、上記共重合体の、亜鉛イオンを除いた状態での溶解性パラメータは、9.61であった。
【0109】
<実施例1>
合成例1で得られた共重合体1を用いて抗菌性評価用溶液を作成し、MIC及びアニオン界面活性剤存在又は非存在下でのMBCを評価し、評価結果を表1に示した。なお、表1中、Ecは大腸菌、Saは黄色ブドウ球菌、Paは緑膿菌を表す。
【0110】
<実施例2>
合成例2で得られた共重合体2(5g)と1%酢酸銀水溶液(12.1g)とを混合して抗菌性評価用溶液を作成し、実施例1と同様の抗菌性を評価し、評価結果を表2に示した。
【0111】
<実施例3>
合成例2で得られた共重合体2(5g)と1%酢酸銀水溶液(24.2g)とを混合して抗菌性評価用溶液を作成し、実施例1と同様の抗菌性を評価し、評価結果を表2に示した。
<実施例4>
合成例3で得られた共重合体3を用いて抗菌性評価用溶液を作成し、実施例1と同様の抗菌性を評価し、評価結果を表3に示した。
【0112】
<実施例5>
合成例2で得られた共重合体2(5g)と10%硫酸銅水溶液(0.446g)とを混合して抗菌性評価用溶液を作成し、実施例1と同様の抗菌性を評価し、評価結果を表3に示した。
【0113】
<比較例1>
合成例2で得られた共重合体2のみについて、実施例1と同様の抗菌性を評価し、評価結果を表3に示した。
【0114】
<比較例2>
酢酸銀水溶液について、実施例1と同様の抗菌性を評価し、評価結果を表2に示した。
【0115】
<比較例3>
住友大阪セメント社製酸化亜鉛ZnO−200について、実施例1と同様の抗菌性を評価し、評価結果を表1に示した。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】