特許第6757210号(P6757210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000002
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000003
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000004
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000005
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000006
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000007
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000008
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000009
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000010
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000011
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000012
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000013
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000014
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000015
  • 特許6757210-ベーンポンプ 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757210
(24)【登録日】2020年9月1日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】ベーンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/344 20060101AFI20200907BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   F04C2/344 331C
   F04C2/344 331E
   F04C15/00 E
   F04C15/00 K
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-171077(P2016-171077)
(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公開番号】特開2018-35775(P2018-35775A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100181733
【弁理士】
【氏名又は名称】淺田 信二
(72)【発明者】
【氏名】中村 善也
(72)【発明者】
【氏名】中村 和久
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−001289(JP,U)
【文献】 特開2007−120436(JP,A)
【文献】 特開平06−323192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/344
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるロータと、
前記ロータの径方向に往復動自在に前記ロータに設けられる複数のベーンと、
前記ロータの回転に伴って前記複数のベーンの先端部が摺接する内周カム面を有するカムリングと、
前記ロータと、前記カムリングと、隣り合う前記ベーンとによって画定されるポンプ室と、
前記カムリングの外周面と前記内周カム面との間を貫通し、前記ポンプ室に作動流体を導く吸込ポートと、を備え、
前記カムリングは、端面どうしが対向するように互いに組み付けられる環状の第1及び第2カムリング部を備え、
前記第1及び第2カムリング部の前記端面の少なくとも一方に切り欠きが形成され、
前記吸込ポートは、前記切り欠きによって形成され
前記第1カムリング部の前記端面と前記第2カムリング部の前記端面との間には閉塞部材が設けられ、
前記第1及び第2カムリング部の前記端面は、前記第1又は前記第2カムリング部の内周面から連続し互いに接触する内側部と、前記内側部よりも径方向外側に位置し前記閉塞部材を挟む外側部と、を有することを特徴とするベーンポンプ。
【請求項2】
前記第1カムリング部と前記第2カムリング部とを連結する連結部材を有することを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項3】
前記カムリングの端面に配置されるサイド部材を更に備え、
前記連結部材は、前記カムリングと前記サイド部材とを連結することを特徴とする請求項に記載のベーンポンプ。
【請求項4】
前記吸込ポートは、前記第1カムリング部及び前記第2カムリング部を組み合わせた状態において、回転軸方向における前記カムリングの中央に形成されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のベーンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーンポンプ及びベーンポンプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転駆動されるロータと、ロータに対して径方向に往復動可能に設けられる複数のベーンと、ロータを収容するカムリングと、を備えるベーンポンプが開示される。ロータの回転に伴ってベーンが押圧され、ベーンの先端部がカムリングの内周面(内周カム面)に摺動する。ロータ、カムリング、及び隣り合うベーンによって、ポンプ室が形成される。
【0003】
特許文献1に開示されるベーンポンプは、タンクからの作動流体をポンプ室に導く吸込貫通ポートを備える。吸込貫通ポートは、カムリングの外周面及び内周カム面に開口する貫通孔として形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−52525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベーンポンプのカムリングは、従来、型成形によって製造される。具体的には、内周カム面を成形するカム面成形ブロックを備える金型が用いられ、カムリングは、金型に素材を流し込むことによって成形される。成形後のカムリングからその軸方向にカム面成形ブロックを引き抜くことによって、カムリングからカム面成形ブロックが取り外される。
【0006】
特許文献1に開示されるカムリングを型成形によって製造する場合、金型は、カム面成形ブロックに加え、吸込貫通ポートとしての貫通孔を成形する孔成形ブロックを必要とする。孔成形ブロックを成形後のカムリングから取り外すためには、成形後のカムリングからその径方向に孔成形ブロックを引き抜かなければならない。つまり、孔成形ブロックを、カム面成形ブロックを引き抜く方向とは異なる方向に引き抜かなければならない。そのため、カム面成形ブロック及び孔成形ブロックを成形後のカムリングから取り外す作業が煩雑になり、ベーンポンプの製造コストが増加する。
【0007】
特許文献1に開示されるカムリングにおいて、吸込貫通ポートとしての貫通孔を切削加工によって成形することも考えられる。この場合、貫通孔を成形する切削加工工程を、内周カム面を成形する型成形工程とは別に行う必要があり、カムリングの製造に時間がかかる。また、切削加工のための工具及び装置が必要であり、ベーンポンプの製造コストが増加する。
【0008】
本発明は、より安価に製造が可能なベーンポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、ロータと、複数のベーンと、カムリングと、ポンプ室と、カムリングの外周面と内周カム面との間を貫通する吸込ポートと、を備える。カムリングは、端面どうしが対向するように互いに組み付けられる環状の第1及び第2カムリング部を備える。第1及び第2カムリング部の端面の少なくとも一方に切り欠きが設けられる。吸込ポートは、切り欠きによって形成され、第1カムリング部の端面と第2カムリング部の端面との間には閉塞部材が設けられ、第1及び第2カムリング部の端面が、第1又は第2カムリング部の内周面から連続し互いに接触する内側部と、内側部よりも径方向外側に位置し閉塞部材を挟む外側部と、を有することを特徴とする。
【0010】
第1の発明では、吸込ポートが第1及び第2カムリング部の端面の少なくとも一方に設けられた切り欠きによって形成される。そのため、吸込ポートとして用いるための貫通孔を切削加工によって成形する必要がなく、また、型成形によって貫通孔を成形する必要がない。また、閉塞部材が第1カムリング部の端面と第2カムリング部の端面との間に設けられるので、第1カムリング部の端面と第2カムリング部の端面との間の隙間が塞がれる。したがって、ポンプ室内の作動流体が当該隙間を通じて漏出するのを防止することができ、ベーンポンプの吸込特性を向上させることができる。更に、端面の内側部どうしが接触するので、第1カムリング部の内周面と第2カムリング部の内周面とによって、カムリングの内周カム面が連続的に形成される。そのため、ポンプ室内の作動流体が、第1カムリング部と第2カムリング部との間を通って別のポンプ室に流通するのを防ぐことができる。加えて、閉塞部材が端面の外側部どうしによって挟まれるので、ポンプ室内の作動流体がカムリングの外側に漏出するのをより確実に防ぐことができる。したがって、ベーンポンプの吸込特性を向上させることができる。
【0015】
の発明は、第1カムリング部と第2カムリング部とを連結する連結部材を更に有することを特徴とする。
【0016】
の発明では、第1カムリング部と第2カムリング部とが連結部材によって連結されるので、第1カムリング部と第2カムリング部とを一体化した状態で内周カム面に仕上げ加工を施すことができる。したがって、第1カムリング部の内周面のプロフィールと第2カムリング部の内周面のプロフィールとがずれるのを防止することができ、内周カム面の形状精度を向上させることができる。プロフィールのずれに起因するベーンポンプの振動、及びベーンポンプの焼き付きを防止することができる。
【0017】
の発明は、カムリングの端面に配置されるサイド部材を更に備え、連結部材が、カムリングとサイド部材とを連結することを特徴とする。
【0018】
の発明では、サイド部材が、第1カムリング部と第2カムリング部とを連結する連結部材を用いてカムリングと連結される。そのため、サイド部材とカムリングとを連結するための部材を、第1カムリング部と第2カムリング部とを連結する連結部材とは別にベーンポンプに設ける必要がない。したがって、ベーンポンプの部品数を削減することができ、ベーンポンプがより安価になる。
【0019】
の発明は、第1カムリング部及び第2カムリング部を組み合わせた状態において、吸込ポートが回転軸方向におけるカムリングの中央に形成されることを特徴とする。
【0020】
の発明では、吸込ポートが、軸方向におけるカムリングの中央に形成される。そのため、第1カムリング部と第2カムリング部は同一の形状でよく、1つの成形型を用いて第1カムリング部と第2カムリング部を成形することができる。第1カムリング部を成形するための成形型と第2カムリング部を成形するための成形型とをそれぞれ用意する必要がなく、ベーンポンプをより安価になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、より安価に製造が可能なベーンポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るベーンポンプの断面図である。
図2】ロータ、ベーン及びカムリングの正面図であり、ロータ、ベーン及びカムリングを組み立てた状態を示す。
図3】第1サイドプレートの正面図である。
図4】第2サイドプレートの正面図である。
図5】カムリング、第1サイドプレート及び第2サイドプレートの側面図であり、第1サイドプレート及び第2サイドプレートをカムリングに組み付けた状態を示す。
図6】カムリングの背面図である。
図7】第1カムリング部の正面図である。
図8】第2カムリング部の背面図である。
図9図2のIX−IX線に沿う断面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係るベーンポンプにおけるカムリングの側面図であり、第1及び第2サイドプレートをカムリングに組み付けた状態を示す。
図11図10に示すカムリングの断面図であり、図9に対応させて示す。
図12】第2実施形態の変形例に係るベーンポンプにおけるカムリングの側面図である。
図13】本発明の第3実施形態に係るベーンポンプにおけるカムリングの側面図であり、第1及び第2サイドプレートをカムリングに組み付けた状態を示す。
図14】本発明の第4実施形態に係るベーンポンプにおけるカムリングの側面図であり、第1及び第2サイドプレートをカムリングに組み付けた状態を示す。
図15】第4実施形態の変形例に係るベーンポンプにおけるカムリングの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るベーンポンプ100,200,201,300,400,401について説明する。ベーンポンプ100,200,201,300,400,401は、車両に搭載される油圧機器1(例えば、パワーステアリング装置や変速機等)の油圧供給源として用いられる。ここでは、作動流体として作動油が用いられるベーンポンプ100,200,201,300,400,401について説明するが、作動水等の他の流体を作動流体として用いてもよい。
【0026】
<第1実施形態>
まず、図1から図9を参照して、本発明の第1実施形態に係るベーンポンプ100について説明する。ベーンポンプ100は、駆動シャフト10と、駆動シャフト10に連結されるロータ20と、ロータ20に設けられる複数のベーン30と、ロータ20及びベーン30を収容するカムリング40と、を備える。
【0027】
駆動シャフト10は、ポンプボディ50及びポンプカバー60に回転自在に支持される。駆動シャフト10にエンジンまたは電動モータ(図示省略)の動力が伝わると、駆動シャフト10の回転駆動に伴ってロータ20が回転する。
【0028】
以下において、ロータ20の回転軸に沿う方向を「軸方向(回転軸方向)」と称し、ロータ20の回転軸を中心とする放射方向を「径方向」と称し、ベーンポンプ100の通常作動時にロータ20が回転する方向を「回転方向」と称する。
【0029】
ベーンポンプ100は、ロータ20及びカムリング40を軸方向に挟んで配置される第1サイド部材及び第2サイド部材としての第1サイドプレート70及び第2サイドプレート80を更に備える。第1サイドプレート70及び第2サイドプレート80は、それぞれ、ロータ20及びカムリング40に当接する側面70a及び側面80aを有する。ロータ20、カムリング40、隣り合うベーン30、第1サイドプレート70及び第2サイドプレート80によって、ポンプ室41が画定される。
【0030】
図2は、ロータ20、ベーン30及びカムリング40を組み立てポンプカバー60の側から見た正面図である。図2に示すように、ロータ20には、外周面に開口部21を有するスリット22が所定間隔をおいて放射状に複数形成される。スリット22の開口部21は、ロータ20の外周から径方向外側に隆起した隆起部23に形成される。つまり、ロータ20の外周にはスリット22の数だけ隆起部23が形成される。
【0031】
ベーン30は、各スリット22に摺動自在に挿入される。ベーン30の先端部31はカムリング40の内周面40aに対向する。ベーン30の基端部32はスリット22内に位置し、スリット22とベーン30とによって背圧室24が形成される。
【0032】
ロータ20が回転すると、ベーン30に遠心力が生じる。この遠心力によって、ベーン30はスリット22から突出する方向に押圧される。ベーン30は、押圧された状態では、スリット22から突出し、ベーン30の先端部31がカムリング40の内周面40aに接する。
【0033】
カムリング40の内周面40aは、略長円形状に形成される。以下において、内周面40aを、「内周カム面40a」とも称する。
【0034】
内周カム面40aが略長円形状に形成されるので、ロータ20の回転に伴ってベーン30はロータ20に対して径方向に往復動する。ベーン30の往復動に伴って、ポンプ室41は拡張と収縮とを繰り返す。
【0035】
ベーンポンプ100では、ロータ20が1回転する間に、ベーン30は2往復しポンプ室41は拡張と収縮とを2回繰り返す。つまり、ベーンポンプ100は、ポンプ室41が拡張する2つの拡張領域42a,42cと、ポンプ室41が収縮する2つの収縮領域42b,42dと、を回転方向に交互に有する。
【0036】
再び図1を参照する。ポンプボディ50には、ロータ20、カムリング40及び第1サイドプレート70を収容する収容窪み部51が形成される。第1サイドプレート70が収容窪み部51の底面51aに配置される。
【0037】
収容窪み部51の底面51aには環状溝52が形成される。環状溝52と第1サイドプレート70とにより、ポンプ室41から吐出された作動油が流入する高圧室53が形成される。高圧室53は油圧機器1に接続され、ポンプ室41から吐出された作動油は高圧室53を通じて油圧機器1に供給される。
【0038】
図3は、第1サイドプレート70をカムリング40の側から見た正面図である。図1及び図3に示すように、第1サイドプレート70は、孔71を有する環状に形成される。孔71には駆動シャフト10が挿通する。
【0039】
第1サイドプレート70には、ポンプ室41から吐出される作動油を高圧室53に導く2つの吐出ポート72が設けられる。吐出ポート72は、各収縮領域42b,42dに位置する。
【0040】
ポンプ室41(図2参照)が収縮領域42b,42dを通過する間、ポンプ室41は収縮する。ポンプ室41の収縮に伴ってポンプ室41内の圧力が上昇し、ポンプ室41内の作動油が吐出ポート72から吐出される。つまり、ポンプ室41内の作動油は、ポンプ室41が収縮領域42b,42dを通過する間に吐出ポート72から吐出される。このように、収縮領域42b,42dでは作動油が吐出されるので、収縮領域42b,42dは「吐出領域」とも呼ばれる。
【0041】
第1サイドプレート70には、高圧室53から背圧室24(図1及び図2参照)へ作動油を導く2つの背圧通路73が形成される。背圧通路73は、孔71を中心とする円弧形状を有し、拡張領域42a,42cに位置する。そのため、拡張領域42a,42cを通過する背圧室24には高圧室53から作動油が導かれる。拡張領域42a,42cを通過するベーン30は、背圧室24内の圧力によりスリット22(図3参照)から突出する方向に押圧される。
【0042】
このように、ベーンポンプ100では、ベーン30は、ロータ20の回転によって生じる遠心力だけでなく、背圧室24内の圧力によっても、スリット22から突出する方向に押圧される。
【0043】
再び図1を参照する。ポンプボディ50の収容窪み部51はカムリング40と比較して大きい。カムリング40とポンプボディ50との間には、第2サイドプレート80の外周から第1サイドプレート70の外周まで延在する流体室54が形成される。
【0044】
収容窪み部51の開口部はポンプカバー60により封止される。ポンプカバー60は、ボルト(図示省略)によってポンプボディ50に締結される。ポンプカバー60とカムリング40との間に第2サイドプレート80が配置される。
【0045】
図4は、第2サイドプレート80をポンプカバー60の側から見た正面図である。図1及び図4に示すように、第2サイドプレート80は、孔81を有する環状に形成される。孔81には駆動シャフト10が挿通する。
【0046】
図1に示すように、ポンプカバー60には低圧室61が形成される。低圧室61は、タンク2に接続される。ベーンポンプ100の作動時には、タンク2内の作動油が低圧室61に供給される。低圧室61は流体室54と連通しており、タンク2内の作動油は低圧室61を通じて流体室54に供給される。
【0047】
カムリング40及び第2サイドプレート80には、低圧室61内の作動油をポンプ室41に導く吸込ポートとしての第2サイドポート82が設けられる。また、カムリング40及び第1サイドプレート70には、流体室54内の作動油をポンプ室41に導く吸込ポートとしての第1サイドポート74が設けられる。第1サイドポート74及び第2サイドポート82は、各拡張領域42a,42cに位置する。
【0048】
ポンプ室41が拡張領域42a,42c(図2参照)を通過する間、ポンプ室41は拡張する。ポンプ室41の拡張に伴ってポンプ室41内の圧力が低下し、第1サイドポート74及び第2サイドポート82からポンプ室41に作動油が吸い込まれる。つまり、作動油は、ポンプ室41が拡張領域42a,42cを通過する間に第1サイドポート74及び第2サイドポート82からポンプ室41に吸い込まれる。このように、拡張領域42a,42cでは作動油がポンプ室41に吸い込まれるので、拡張領域42a,42cは「吸込領域」とも呼ばれる。
【0049】
図5は、第1サイドプレート70及び第2サイドプレート80をカムリング40に組み付け径方向外側から見た側面図である。図3及び図5に示すように、第1サイドプレート70の側面70aには、2つの窪み部75が形成される。窪み部75は、第1サイドプレート70の外周面70bに開口する。
【0050】
図6は、カムリング40を第1サイドプレート70の側から見た背面図である。図5及び図6に示すように、第1サイドプレート70に接するカムリング40の端面40bには2つの切り欠き43が設けられる。切り欠き43は拡張領域42a,42cに位置し、カムリング40の外周面40dから内周カム面40aまで形成される。
【0051】
第1サイドプレート70をカムリング40に組み付けた状態では、第1サイドプレート70の窪み部75がカムリング40の切り欠き43に臨む。流体室54(図1参照)内の作動油は、窪み部75と切り欠き43とによって形成されるポートを通じてポンプ室41に導かれる。つまり、本実施形態では、第1サイドプレート70の窪み部75とカムリング40の切り欠き43とによって第1サイドポート74が形成される。
【0052】
図4及び図5に示すように、第2サイドプレート80の外周面80bには、2つの窪み部83が設けられる。窪み部83は、第2サイドプレート80の側面80aから、側面80aとは反対側の第2サイドプレート80の側面80cまで形成される。
【0053】
図2及び図5に示すように、第2サイドプレート80に接するカムリング40の端面40cには2つの切り欠き44が設けられる。切り欠き44は拡張領域42a,42cに位置し、カムリング40の外周面40dから内周カム面40aまで形成される。
【0054】
第2サイドプレート80をカムリング40に組み付けた状態では、第2サイドプレート80の窪み部83がカムリング40の切り欠き44に臨む。低圧室61(図1参照)内の作動油は、窪み部83と切り欠き44とによって形成されるポートを通じてポンプ室41に導かれる。このように、ベーンポンプ100では、第2サイドプレート80の窪み部83とカムリング40の切り欠き44とによって第2サイドポート82が形成される。
【0055】
図1及び図5に示すように、カムリング40には、流体室54内の作動油をポンプ室41に導く吸込ポートとしてのセンターポート45が設けられる。センターポート45は、カムリング40の外周面40dと内周カム面40aとの間を貫通する。
【0056】
センターポート45の内側開口45aは、軸方向におけるカムリング40の中央に配置される。センターポート45を通じて吸い込まれる作動油は、軸方向におけるポンプ室41の中央部に流入する。そのため、ポンプ室41の中央部に作動油を行き渡らせることができ、ベーンポンプ100の吐出性能を向上させることができる。
【0057】
カムリング40は、環状の第1カムリング部46及び環状の第2カムリング部47を備える。第1カムリング部46の端面46bは、カムリング40の端面40bを形成する。第2カムリング部47の端面47cは、カムリング40の端面40cを形成する。
【0058】
第1カムリング部46及び第2カムリング部47は、端面46bとは反対側の第1カムリング部46の端面46cが、端面47cとは反対側の第2カムリング部47の端面47bと対向するように、互いに組み付けられる。第1カムリング部46及び第2カムリング部47を互いに組み付けた状態では、第1カムリング部46の内周面46aと第2カムリング部47の内周面47aとによってカムリング40の内周カム面40aが形成される。また、第1カムリング部46の外周面46dと第2カムリング部47の外周面47dとによってカムリング40の外周面40dが形成される。
【0059】
図7は、第1カムリング部46を第2サイドプレート80の側から見た正面図である。図5及び図7に示すように、第1カムリング部46の端面46cには2つの切り欠き46eが設けられる。切り欠き46eは、第1カムリング部46の外周面46dから内周面46aまで形成される。切り欠き46eの内側端部46fは、拡張領域42a,42cに位置する。
【0060】
図8は、第2カムリング部47を第1サイドプレート70の側から見た正面図である。図5及び図8に示すように、第2カムリング部47の端面47bには2つの切り欠き47eが設けられる。切り欠き47eは、第2カムリング部47の外周面47dから内周面47aまで形成される。切り欠き47eの内側端部47fは、拡張領域42a,42cに位置する。
【0061】
図1及び図5に示すように、第1カムリング部46及び第2カムリング部47を互いに組み付けた状態では、第1カムリング部46の切り欠き46eと第2カムリング部47の切り欠き47eとが互いに臨み、センターポート45が形成される。
【0062】
センターポート45が第1カムリング部46の切り欠き46eと第2カムリング部47の切り欠き47eとによって形成されるので、センターポート45として用いるための貫通孔を切削加工によって成形する必要がない。したがって、切削加工のための工具及び装置を必要とせず、ベーンポンプ100の製造コストの増加を防ぐことができる。
【0063】
切り欠き46eは、第1カムリング部46の端面46cに設けられる。そのため、第1カムリング部46を型成形によって成形する際、切り欠き46eを成形するための切り欠き成形ブロックを成形後の第1カムリング部46からその軸方向に引き抜けばよい。
【0064】
第1カムリング部46の内周面46aを成形するための内周面成形ブロックは、成形後の第1カムリング部46からその軸方向に引き抜かれる。つまり、前述の切り欠き成形ブロックは、内周面成形ブロックが引き抜かれる方向と同じ方向に引き抜かれる。そのため、内周面成形ブロック及び切り欠き成形ブロックを成形後の第1カムリング部46から取り外す作業が煩雑にならない。また、第1カムリング部46の切り欠き46eを成形すると同時に第1カムリング部46の内周面46aを成形することができ、第1カムリング部46の成形に時間がかからない。したがって、ベーンポンプ100の製造コストが増加するのを防ぐことができる。
【0065】
第2カムリング部47についても同様に、切り欠き47eが第2カムリング部47の端面47bに設けられるので、第2カムリング部47の型成形が簡易であり、かつ第2カムリング部47の成形に時間がかからない。したがって、ベーンポンプ100の製造コストが増加するのを防ぐことができる。
【0066】
図9は、図2のIX−IXに沿う断面図であり、カムリング40に第1及び第2サイドプレートを組み付けた状態を示す。なお、図9では、ロータ20及びベーン30の図示は省略されている。
【0067】
図5及び図9に示すように、第1カムリング部46の端面46cと第2カムリング部47の端面47bとの間には、閉塞部材としてのガスケット48が設けられる。ガスケット48によって、第1カムリング部46の端面46bと第2カムリング部47の端面47bとの間の隙間が塞がれる。したがって、ポンプ室41(図1及び図2参照)内の作動油が当該隙間を通じて漏出するのを防止することができ、ベーンポンプ100の吸込特性を向上させることができる。
【0068】
閉塞部材はガスケット48に限られない。例えば、ガスケット48に代えて、Oリングが第1カムリング部46の端面46cと第2カムリング部47の端面47bとの間に設けられていてもよい。
【0069】
図7及び図9に示すように、第1カムリング部46の端面46cは、第1カムリング部46の内周面46aから連続する内側部46gと、内側部46gよりも径方向外側に位置する外側部46hと、を有する。内側部46gと外側部46hとの間には段部46iが形成される。
【0070】
同様に、図8及び図9に示すように、第2カムリング部47の端面47bは、第2カムリング部47の内周面47aから連続する内側部47gと、内側部47gよりも径方向外側に位置する外側部47hと、を有する。内側部47gと外側部47hとの間には段部47iが形成される。
【0071】
図9に示すように、端面46cの外側部46hと端面47bの外側部47hとによってガスケット48が挟まれている。つまり、ガスケット48は、端面46cの外側部46hと端面47bの外側部47hとの間の隙間を塞ぎ、ポンプ室41(図1及び図2参照)内の作動油がカムリング40の外側に漏出するのを防ぐ。
【0072】
端面46cの内側部46gと端面47bの内側部47gとは、互いに接触する。第1カムリング部46の内周面46aと第2カムリング部47の内周面47aとによって、カムリング40の内周カム面40aが連続的に形成される。したがって、ポンプ室41内の作動油が、第1カムリング部46と第2カムリング部47との間を通って別のポンプ室41に流通するのを防ぐことができる。
【0073】
このように、ポンプ室41内の作動油が別のポンプ室41に流通するのを防ぐことができるとともに、ポンプ室41内の作動油がカムリング40の外側に漏出するのをより確実に防ぐことができる。したがって、ベーンポンプ100の吸込特性をより向上させることができる。
【0074】
なお、ベーンポンプ100の作動時には、高圧室53(図1参照)内の圧力が第1サイドプレート70を介して第1カムリング部46に作用し、第1カムリング部46は第2カムリング部47に押圧される。そのため、ガスケット48等の閉塞部材が第1カムリング部46の端面46cと第2カムリング部47の端面47bとの間に設けられていなくても、シール性は確保される。
【0075】
第1カムリング部46には、軸方向に貫通する2つの孔46jが設けられる。第2カムリング部47には、軸方向に貫通する2つの孔47jが設けられる。第1及び第2カムリング部46,47が互いに組み付けられた状態では、孔46j,47jによって、カムリング40を軸方向に貫通する孔が形成される。
【0076】
第1カムリング部46と第2カムリング部47とは、孔46j及び孔47jに圧入される連結部材としてのダウエルピン90によって連結される。そのため、第1カムリング部46と第2カムリング部47とを一体化し第1カムリング部46と第2カムリング部47との相対回転を規制した状態で内周カム面40aに仕上げ加工を施すことができる。したがって、第1カムリング部46の内周面46aのプロフィールと第2カムリング部47の内周面47aのプロフィールとがずれるのを防止することができ、内周カム面40aの形状精度を向上させることができる。
【0077】
ダウエルピン90、孔46j,及び孔47jの数は2つに限られず、1つでもよく、3つ以上であってもよい。また、第1カムリング部46と第2カムリング部47とは、ダウエルピン90以外の部材、例えば、カムリング40の外周面40dを覆うカバー部材によって連結されていてもよい。
【0078】
第1サイドプレート70及び第2サイドプレート80には、それぞれ、軸方向に貫通する2つの孔70j及び孔80jが設けられる。孔70j及び孔80jには、ダウエルピン90が挿通される。ダウエルピン90によって、第1サイドプレート70及び第2サイドプレート80がカムリング40に連結される。
【0079】
ダウエルピン90が軸方向に延在するので、カムリング40と第1サイドプレート70との回転方向の位置を容易に合わせることができるとともに、カムリング40と第1サイドプレート70との相対回転を規制することができる。同様に、カムリング40と第2サイドプレート80との回転方向の位置を容易に合わせることができるとともに、カムリング40と第2サイドプレート80との相対回転を規制することができる。
【0080】
ダウエルピン90は、第1カムリング部46,第2カムリング部47,第1サイドプレート70、及び第2サイドプレート80を連結する。ベーンポンプ100は、第1サイドプレート70及び第2サイドプレート80とカムリング40とを連結するための部材を、ダウエルピン90とは別に備える必要がない。したがって、ベーンポンプ100の部品数を削減することができ、ベーンポンプ100がより安価になる。
【0081】
センターポート45は、軸方向におけるカムリング40の中央に形成される。そのため、第1カムリング部46と第2カムリング部47は同一の形状でよく、1つの成形型を用いて第1カムリング部46と第2カムリング部47を成形することができる。第1カムリング部46を成形するための成形型と第2カムリング部47を成形するための成形型とをそれぞれ用意する必要がないので、ベーンポンプ100がより安価になる。
【0082】
なお、ここでの「同一の形状」とは、形状が完全に一致する場合に限られず、製造上の誤差等により完全に一致しない場合を含む。
【0083】
次に、ベーンポンプ100の製造方法について、図1から図9を参照して説明する。ここでは、カムリング40を製造する工程を主に説明する。
【0084】
まず、第1カムリング部46を型成形により成形する。型成形に用いられる金型(図示省略)は、第1カムリング部46の内周面46aを成形するための内周面成形ブロックと、第1カムリング部46の切り欠き46eを成形するための切り欠き成形ブロックと、を備える。金型に溶融材料を流し込むことによって、第1カムリング部46が成形される。成形後の第1カムリング部46からその軸方向にカム面成形ブロック及び切り欠き成形ブロックを引き抜くことによって、第1カムリング部46からカム面成形ブロック及び切り欠き成形ブロックが取り外される。
【0085】
次に、第2カムリング部47を、第1カムリング部46の成形に使用した金型を用いて、第1カムリング部46とは別体に成形する。第2カムリング部47を成形する工程については、第1カムリング部46を成形する工程と同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0086】
次に、第1カムリング部46の端面46cと第2カムリング部47の端面47bとが対向するように、第1カムリング部46と第2カムリング部47とを配置する。ダウエルピン90を第1カムリング部46の孔46j及び第2カムリング部47の孔47jに圧入し、第1カムリング部46と第2カムリング部47とを連結する。その結果、第1カムリング部46の内周面46aと第2カムリング部47の内周面47aとによって、カムリング40の内周カム面40aが形成される。
【0087】
次に、内周カム面40aに仕上げ加工を施す。第1カムリング部46と第2カムリング部47とが連結された状態で内周カム面40aに仕上げ加工が施されるので、第1カムリング部46の内周面46aのプロフィールと第2カムリング部47の内周面47aのプロフィールとがずれるのを防止することができる。したがって、内周カム面40aの形状精度を向上させることができる。
【0088】
ダウエルピン90を用いて第1カムリング部46と第2カムリング部47とが連結されるので、内周カム面40aの仕上げ加工時に、第1カムリング部46と第2カムリング部47とが相対的に移動し難い。したがって、内周カム面40aの形状精度を更に高めることができる。
【0089】
以上のベーンポンプ100では、第1サイドポート74が、第1サイドプレート70の窪み部75とカムリング40の切り欠き43とによって形成されているが、第1サイドポート74はこの形態に限られない。例えば、カムリング40に切り欠き43が形成されておらず、第1サイドポート74が、第1サイドプレート70の窪み部75と、カムリング40の平面状の端面40bと、によって形成されていてもよい。第1サイドプレート70に窪み部75が形成されておらず、第1サイドポート74が第1サイドプレート70の平面状の側面70aと、カムリング40の切り欠き43とによって形成されていてもよい。さらに、第1サイドポート74は、第1サイドプレート70を貫通する孔により形成されていてもよい。
【0090】
同様に、ベーンポンプ100では、第2サイドポート82が、第2サイドプレート80の窪み部83とカムリング40の切り欠き44とによって形成されているが、第2サイドポート82はこの形態に限られない。例えば、カムリング40に切り欠き44が形成されておらず、第2サイドポート82が、第2サイドプレート80の窪み部83と、カムリング40の平面状の端面40cと、によって形成されていてもよい。第2サイドプレート80に切り欠き44が形成されておらず、第2サイドポート82が第2サイドプレート80の平面状の側面80aと、カムリング40の切り欠き44とによって形成されていてもよい。さらに、第2サイドポート82は、第2サイドプレート80を貫通する孔により形成されていてもよい。
【0091】
<第2実施形態>
次に、図10から図11を参照して、本発明の第2実施形態に係るベーンポンプ200について説明し、図12を参照して、ベーンポンプ200の変形例に係るベーンポンプ201について説明する。第1実施形態における構成と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0092】
図10は、ベーンポンプ200におけるカムリング240の側面図であり、第1サイドプレート70及び第2サイドプレート80をカムリング240に組み付けた状態を示す。
【0093】
図10に示すように、ベーンポンプ200のカムリング240は、第1カムリング部46と第2カムリング部247とを備える。第2カムリング部247の端面247bは平面状に形成される。つまり、ベーンポンプ100の切り欠き47e(図5参照)に相当する切り欠きは端面247bには形成されておらず、第2カムリング部247は第1カムリング部46とは異なる形状を有する。センターポート245は、第1カムリング部46の切り欠き46eと、第2カムリング部247の端面247bとによって形成される。
【0094】
ベーンポンプ200では、センターポート245が第1カムリング部46の切り欠き46eと第2カムリング部247の端面247bとによって形成されるので、センターポート245として用いるための貫通孔を切削加工によって成形する必要がない。切り欠き46eが第1カムリング部46の端面46cに設けられるので、第1カムリング部46の成形に時間がかからない。したがって、ベーンポンプ200の製造コストが増加するのを防ぐことができる。
【0095】
図11は、カムリング240の断面図であり、図9に対応させて示す。図11に示すように、第2カムリング部247の端面247bには、ベーンポンプ100の段部47i(図9参照)に対応する段部が形成されていない。
【0096】
第2カムリング部247の端面247bの一部(内側部247g)は、第1カムリング部46の端面46cの内側部46gと接触する。第1カムリング部46の内周面46aと第2カムリング部247の内周面247aとによって、カムリング240の内周カム面240aが連続的に形成される。したがって、ポンプ室41内の作動油が、第1カムリング部46と第2カムリング部247との間を通って別のポンプ室41に流通するのを防ぐことができる。
【0097】
第2カムリング部247の端面247bの他の部分(外側部247h)は、第1カムリング部46の端面46cの外側部46hと間隔を空けて対向する。ガスケット48は、端面46cの外側部46hと端面247bの外側部247hとによって挟まれ、ポンプ室41(図1及び図2参照)内の作動油がカムリング240の外側に漏出するのを防ぐ。
【0098】
このように、ベーンポンプ200においても、ポンプ室41内の作動油が別のポンプ室41に流通するのを防ぐことができるとともに、ポンプ室41内の作動油がカムリング240の外側に漏出するのをより確実に防ぐことができる。したがって、ベーンポンプ200の吸込特性を向上させることができる。
【0099】
図12は、ベーンポンプ201におけるカムリング241の側面図であり、第1サイドプレート70及び第2サイドプレート80をカムリング241に組み付けた状態を示す。
【0100】
図12に示すように、ベーンポンプ201では、第1カムリング部246の端面246cは平面状に形成される。つまり、ベーンポンプ100の切り欠き46e(図5参照)に相当する切り欠きは端面246cには形成されておらず、第1カムリング部246は第2カムリング部47とは異なる形状を有する。センターポート245は、第1カムリング部246の端面246bと、第2カムリング部47の切り欠き47eとによって形成される。
【0101】
ベーンポンプ201では、センターポート245が第2カムリング部47の切り欠き47eと第1カムリング部246の端面246bとによって形成されるので、センターポート245として用いるための貫通孔を切削加工によって成形する必要がない。切り欠き47eが第2カムリング部47の端面47cに設けられるので、第2カムリング部47の成形に時間がかからない。したがって、ベーンポンプ201の製造コストが増加するのを防ぐことができる。
【0102】
ベーンポンプ200及びベーンポンプ201の製造方法については、ベーンポンプ100の製造方法と略同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0103】
<第3実施形態>
次に、図13を参照して、本発明の第3実施形態に係るベーンポンプ300について説明する。第1実施形態における構成と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0104】
図13は、ベーンポンプ300におけるカムリング340の側面図であり、第1サイドプレート70及び第2サイドプレート80をカムリング340に組み付けた状態を示す。
【0105】
第1カムリング部346は、径方向に対して対称に形成される。具体的には、第1カムリング部346の端面346cには、端面46bの切り欠き43と同一の形状を有する切り欠き346eが形成されている。第1カムリング部346の端面346cは、端面46bと同様に、径方向に平面状に形成されている。つまり、第1カムリング部346の端面346cには、ベーンポンプ100の段部46i(図9参照)に対応する段部が形成されていない。
【0106】
第1カムリング部346が対称に形成されるので、カムリング340を組み立てる際に、第1カムリング部346の向きを気にする必要がない。したがって、ベーンポンプ300を容易に製造することができる。
【0107】
第2カムリング部347は、第1カムリング部346と同様に、径方向に対して対称に形成される。具体的には、第2カムリング部347の端面347bには、端面47cの切り欠き44と同一の形状を有する切り欠き347eが形成されている。切り欠き346e及び切り欠き347eによって、センターポート345が形成される。
【0108】
第2カムリング部347の端面347bは、端面47cと同様に、径方向に平面状に形成されている。つまり、第2カムリング部347の端面347bには、ベーンポンプ100の段部47i(図9参照)に対応する段部が形成されていない。
【0109】
第1カムリング部346と第2カムリング部347とは同一の形状を有する。そのため、1つの成形型を用いて第1カムリング部346と第2カムリング部347を成形することができる。第1カムリング部346を成形するための成形型と第2カムリング部347を成形するための成形型とをそれぞれ用意する必要がないので、ベーンポンプ300が安価になる。
【0110】
ベーンポンプ300の製造方法については、ベーンポンプ100の製造方法と略同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0111】
<第4実施形態>
次に、図14を参照して、本発明の第4実施形態に係るベーンポンプ400について説明し、図15を参照して、ベーンポンプ400の変形例に係るベーンポンプ401について説明する。第1実施形態における構成と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0112】
図14は、ベーンポンプ400におけるカムリング440の側面図であり、第1サイドプレート70及び第2サイドプレート80をカムリング440に組み付けた状態を示す。
【0113】
第1カムリング部446の端面446cには、第2カムリング部447の端面47cの切り欠き44と同一の形状を有する切り欠き446eが形成されている。第1カムリング部446の端面446cは、径方向に平面状に形成されている。つまり、第1カムリング部446の端面446cには、ベーンポンプ100の段部46i(図9参照)に対応する段部が形成されていない。
【0114】
第2カムリング部447の端面447bは平面状に形成される。つまり、ベーンポンプ100の切り欠き47e(図5参照)に相当する切り欠きは端面447bには形成されておらず、第2カムリング部447は第1カムリング部446とは異なる形状を有する。センターポート445は、第1カムリング部446の切り欠き446eと、第2カムリング部447の端面447bとによって形成される。
【0115】
ベーンポンプ400では、センターポート445が第1カムリング部446の切り欠き446eと第2カムリング部447の端面447bとによって形成されるので、センターポート445として用いるための貫通孔を切削加工によって成形する必要がない。切り欠き446eが第1カムリング部446の端面446cに設けられるので、第1カムリング部446の成形に時間がかからない。したがって、ベーンポンプ400の製造コストが増加するのを防ぐことができる。
【0116】
第1カムリング部446の端面446bは、第2カムリング部447の端面447bと同様に、平面状に形成される。つまり、ベーンポンプ100の切り欠き43(図5参照)に相当する切り欠きは端面446bには形成されていない。第1サイドポート474は、第1サイドプレート70の窪み部75と、第1カムリング部446の端面246bとによって形成される。
【0117】
第1カムリング部446と第2カムリング部447は同一の形状を有する。そのため、1つの成形型を用いて第1カムリング部446と第2カムリング部447を成形することができる。第1カムリング部446を成形するための成形型と第2カムリング部447を成形するための成形型とをそれぞれ用意する必要がないので、ベーンポンプ400がより安価になる。
【0118】
図15は、ベーンポンプ401におけるカムリング441の側面図であり、第1サイドプレート70及び第2サイドプレート80をカムリング441に組み付けた状態を示す。
【0119】
ベーンポンプ401では、第1カムリング部446及び第2カムリング部447は、第1カムリング部446の端面446bが第2カムリング部447の端面47cと対向するように、互いに組み付けられる。つまり、センターポート445は、第1カムリング部446の端面446bと、第2カムリング部447の切り欠き44とによって形成される。第1サイドポート74は、第1サイドプレート70の窪み部75と、第1カムリング部446の切り欠き446eとによって形成される。第2サイドポート482は、第2サイドプレート80の窪み部83と、第2カムリング部447の切り欠き44とによって形成される。
【0120】
ベーンポンプ401では、センターポート445が第1カムリング部446の端面446bと第2カムリング部447の切り欠き44とによって形成されるので、センターポート445として用いるための貫通孔を切削加工によって成形する必要がない。また、第1カムリング部446と第2カムリング部447は同一の形状を有する。したがって、ベーンポンプ401の製造コストが増加するのを防ぐことができる。
【0121】
なお、「同一の形状」とは、形状が完全に一致する場合に限られず、製造上の誤差等により完全に一致しない場合を含む。
【0122】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0123】
本実施形態では、ベーンポンプ100,200,201,300,400,401は、回転駆動されるロータ20と、ロータ20の径方向に往復動自在にロータ20に設けられる複数のベーン30と、ロータ20の回転に伴って複数のベーン30の先端部31が摺接する内周カム面40a,140aを有するカムリング40,240,241,340,440,441と、ロータ20と、カムリング40,240,241,340,440,441と、隣り合うベーン30とによって画定されるポンプ室41と、カムリング40,240,241,340,440,441の外周面40dと内周カム面40a,140aとの間を貫通し、ポンプ室41に作動油を導くセンターポート45,245,345,445と、を備え、カムリング40,240,241,340,440,441は、端面46c,47b,246c,247b,346c,347b,446b,446c,447bが対向するように互いに組み付けられる環状の第1及び第2カムリング部46,47,247,346,347,446,447を備え、第1及び第2カムリング部46,47,247,346,347,446,447の端面46c,47b,47c,346c,347b,446cに切り欠き46e,47e,44,346e,347e,446eが形成され、センターポート45,245,345,445は、切り欠き46e,47e,44,346e,347e,446eによって形成される。
【0124】
この構成では、センターポート45,245,345,445が第1及び第2カムリング部46,47,247,346,347,446,447の端面46c,47b,47c,346c,347b,446cに設けられた切り欠き46e,47e,44,346e,347e,446eによって形成される。そのため、センターポート45,245,345,445として用いるための貫通孔を切削加工によって成形する必要がなく、また、型成形によって貫通孔を成形する必要がない。したがって、ベーンポンプ100,200,201,300,400,401をより安価に製造することができる。
【0125】
本実施形態では、ベーンポンプ100,200,201は、第1カムリング部46,246の端面46c,246cと第2カムリング部47,247の端面47b,247bとの間に設けられるガスケット48を更に備える。
【0126】
この構成では、ガスケット48が第1カムリング部46,246の端面46c,246cと第2カムリング部47,247の端面47b,247bとの間に設けられるので、第1カムリング部46,246の端面46c,246cと第2カムリング部47,247の端面47b,247bとの間の隙間が塞がれる。したがって、ポンプ室41内の作動油が当該隙間を通じて漏出するのを防止することができ、ベーンポンプ100,200,201の吸込特性を向上させることができる。
【0127】
本実施形態では、ベーンポンプ100,200は、第1及び第2カムリング部46,47,247の端面46c,47b,247bが、第1又は第2カムリング部46,47,247の内周面46a,47a,247aから連続し互いに接触する内側部46g,47g,247gと、内側部46g,47g,247gよりも径方向外側に位置しガスケット48を挟む外側部46h,47h,247hと、を有する。
【0128】
この構成では、端面46c,47b,247bの内側部46g,47g,247gが接触するので、第1カムリング部46の内周面46aと第2カムリング部47,247の内周面47a,247aとによって、カムリング40,240の内周カム面40a,240aが連続的に形成される。そのため、ポンプ室41内の作動油が、第1カムリング部46と第2カムリング部47,247との間を通って別のポンプ室41に流通するのを防ぐことができる。また、ガスケット48が端面46c,47b,247bの外側部46h,47h,247hによって挟まれるので、ポンプ室41内の作動油がカムリング40,240の外側に漏出するのをより確実に防ぐことができる。したがって、ベーンポンプ100,200の吸込特性を向上させることができる。
【0129】
本実施形態では、ベーンポンプ100,200,201,300,400,401は、第1カムリング部46,246,346,446と第2カムリング部47,247,347,447とを連結するダウエルピン90を有する。
【0130】
この構成では、第1カムリング部46,246,346,446と第2カムリング部47,247,347,447とがダウエルピン90によって連結されるので、第1カムリング部46,246,346,446と第2カムリング部47,247,347,447とを一体化した状態で内周カム面40a,240aに仕上げ加工を施すことができる。したがって、第1カムリング部46,246,346,446の内周面46aのプロフィールと第2カムリング部47,247,347,447の内周面47a,247aのプロフィールとがずれるのを防止することができ、内周カム面40a,240aの形状精度を向上させることができる。
【0131】
本実施形態では、ベーンポンプ100,200,201,300,400,401は、カムリング40,240,241,340,440,441の端面40b,40cに配置される第1及び第2サイドプレート70,80を更に備え、ダウエルピン90は、カムリング40,240,241,340,440,441と第1及び第2サイドプレート70,80とを連結する。
【0132】
この構成では、第1及び第2サイドプレート70,80が、第1カムリング部46,246,346,446と第2カムリング部47,247,347,447とを連結するダウエルピン90を用いてカムリング40,240,241,340,440,441と連結される。そのため、第1及び第2サイドプレート70,80とカムリング40,240,241,340,440,441とを連結するための部材を、ダウエルピン90とは別にベーンポンプ100,200,201,300,400,401に設ける必要がない。したがって、ベーンポンプ100,200,201,300,400,401の部品数を削減することができ、ベーンポンプ100,200,201,300,400,401がより安価になる。
【0133】
本実施形態では、ベーンポンプ100,300は、第1及び第2カムリング部46,47,346,347を組み合わせた状態において、センターポート45,345が回転軸方向におけるカムリング40,340の中央に形成される。
【0134】
この構成では、センターポート45,345は、軸方向におけるカムリング40,340の中央に形成される。そのため、第1カムリング部46,346と第2カムリング部47,347は同一の形状でよく、1つの成形型を用いて第1カムリング部46,346と第2カムリング部47,347を成形することができる。第1カムリング部46,346を成形するための成形型と第2カムリング部47,347を成形するための成形型とをそれぞれ用意する必要がないので、ベーンポンプ100,300がより安価になる。
【0135】
本実施形態では、環状の第1カムリング部46,246,346,446の内周面46aと環状の第2カムリング部47,247,347,447の内周面47a,247aとによって形成される内周カム面40a,240aを有するカムリング40,240,241,340,440,441を備えるベーンポンプ100,200,201,300,400,401の製造方法であって、第1カムリング部46,246,346,446を成形するとともに、第2カムリング部47,247,347,447を第1カムリング部46,246,346,446とは別体に成形する工程と、端面46c,47b,246c,247b,346c,347b,446b,446c,447bが対向するように第1カムリング部46,246,346,446と第2カムリング部47,247,347,447とを連結し内周カム面40a,240aを形成する工程と、内周カム面40a,240aに仕上げ加工を施す工程と、を備える。
【0136】
この構成では、カムリング40,240,241,340,440,441の内周カム面40a,240aが、第1カムリング部46,246,346,446と第2カムリング部47,247,347,447とが連結された状態で加工されるので、第1カムリング部46,246,346,446の内周面46aのプロフィールと第2カムリング部47,247,347,447の内周面47a,247aのプロフィールとがずれるのを防止することができる。したがって、内周カム面40a,240aの形状精度を向上させることができる。
【0137】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0138】
上記実施形態では、平衡型のベーンポンプ100,200,201,300,400,401について説明した。しかし、本発明は、非平衡型のベーンポンプにも適用可能である。
【符号の説明】
【0139】
20・・・ロータ、30・・・ベーン、31・・・先端部、40・・・カムリング、40a・・・内周カム面、40b・・・端面、40c・・・端面、40d・・・外周面、41・・・ポンプ室、45・・・センターポート(吸込ポート)、46・・・第1カムリング部、46c・・・端面、46e・・・切り欠き、46g・・・内側部、46h・・・外側部、47・・・第2カムリング部、47b・・・端面、47e・・・切り欠き、47g・・・内側部、47h・・・外側部、48・・・ガスケット(閉塞部材)、70・・・第1サイドプレート(サイド部材)、80・・・第2サイドプレート(サイド部材)、90・・・ダウエルピン(連結部材)、100・・・ベーンポンプ、200,201・・・ベーンポンプ、240,201・・・カムリング、240a・・・内周カム面、245・・・センターポート(吸込ポート)、246・・・第1カムリング部、247・・・第2カムリング部、247b・・・端面、247g・・・内側部、247h・・・外側部、300・・・ベーンポンプ、340・・・カムリング、345・・・センターポート(吸込ポート)、346・・・第1カムリング部、346c・・・端面、346e・・・切り欠き、347・・・第2カムリング部、347b・・・端面、347e・・・切り欠き、400,401・・・ベーンポンプ、440,441・・・カムリング、445・・・センターポート(吸込ポート)、446・・・第1カムリング部、446c・・・端面、446e・・・切り欠き、447・・・第2カムリング部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15