【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)少なくとも一実施形態に係る防爆ロボットは、
防爆ロボットを収容するためのチャンバと、
前記チャンバの内部に非引火性ガスを導入可能なガス導入部と、
を備える。
なお、ここで、「防爆ロボット」とは、防爆構造を有するロボットであり、「防爆構造」とは、前述の国際整合防爆指針2008Exに規定された構造である。例えば、特許文献1に開示されているように、ケーシング内の圧力を周囲の爆発性雰囲気より高く保持することで、電気部品のあるケーシング内に爆発性気体が流入することを防止する防爆構造であり、又は、耐圧容器に電気要素を収容し、耐圧容器の内部で引火性ガス爆発があっても、耐圧容器の周囲に影響を及ぼさない防爆構造等である。
【0010】
上記(1)の構成によれば、チャンバ内に防爆ロボットを収容した後、チャンバの内部に非引火性ガスを導入し、チャンバ内雰囲気を非引火性ガスで置換することで、引火性ガス爆発のおそれなく、分解、点検、給電等のメンテナンスが可能になる。
また、チャンバを防爆区域又はその近くに設置することで、防爆区域又はその近傍で防爆ロボットのメンテナンスが可能になる。
【0011】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記防爆ロボットが前記チャンバに収容されたことを検出可能なセンサと、
前記チャンバに前記防爆ロボットが出入りする際に開閉可能な開閉部を駆動する開閉駆動部と、
前記センサの検出結果に基づいて前記開閉駆動部を制御する開閉制御部と、
を備える。
上記(2)の構成によれば、上記センサで防爆ロボットがチャンバ内に収容されたことを検出し、上記開閉制御部によって上記開閉部を閉じることで、防爆ロボットのチャンバへの収容を自動化できる。従って、作業員が防爆区域に立ち入る必要がなくなり、作業員の安全を確保できる。
【0012】
(3)一実施形態では、前記(2)の構成において、
前記開閉駆動部は、
前記チャンバの前記開閉部を駆動するためのエアシリンダと、
圧縮気体を内蔵するガスボンベと、
前記エアシリンダと前記ガスボンベとの間に設けられた気体給排路と、
前記チャンバの防爆構造を有する室内に設けられ、前記気体給排路に介装された流路切替弁と、
を含む。
上記(3)の構成において、ガスボンベ内の圧縮気体は上記気体給排路を介してエアシリンダに給排され、上記開閉部を開閉する。上記流路切替弁によってエアシリンダのシリンダ室への圧縮気体の給排が切り替えられ、上記開閉部の開閉動作が切り替えられる。
【0013】
上記(3)の構成によれば、ガスボンベ内の圧縮気体を用いた機械的な駆動手段でチャンバの開閉部を駆動するので、電気部品によるスパークの発生を避けることができる。従って、引火性ガス爆発のおそれなく防爆ロボットのメンテナンスが可能になる。
なお、上記流路切替弁は防爆構造を有する室内に設けられるので、流路切替弁の動作に起因して引火性ガス爆発が起こっても室外への影響はない。
【0014】
(4)一実施形態では、前記(3)の構成において、
前記圧縮気体は非引火性ガスであり、
前記ガス導入部は、前記気体給排路から分岐し、前記チャンバに導設されたガス導入路を含み、
前記開閉部の閉鎖動作と共に、前記ガス導入路を介して前記チャンバに前記非引火性ガスが導入されるように構成する。
上記(4)の構成によれば、上記開閉駆動部で用いられる非引火性ガスを上記ガス導入路からチャンバへ導入するようにしたので、ガス導入部の構成を簡易かつ低コスト化できる。
【0015】
(5)一実施形態では、前記(2)〜(4)の何れかの構成において、
前記防爆ロボットが前記チャンバに収容された際に、前記防爆ロボットの防爆ケーシングの外表面に設けられ、前記防爆ケーシング内に収容された充電器にコンタクタを介して接続された第1給電端子に対面するように、前記チャンバ内に設けられた第2給電端子と、
前記第2給電端子と電力供給源とに接続された第2給電路と、
前記チャンバの防爆構造を有する室内に設けられ、前記第2給電路に介装されたスイッチと、
前記センサの検出結果に基づいて前記スイッチを開閉する給電制御部と、
を備え、
前記コンタクタは、前記第1給電路に設けられ、前記第1給電端子と前記第2給電端子とが接触し、前記第1給電路に電圧が付加されたときのみ前記第1給電路を閉じるものである。
【0016】
上記(5)の構成において、防爆ロボットがチャンバ内に進入することで、上記第1給電端子と上記第2給電端子とが自動的に接触する。第1給電端子と第2給電端子とが接触すると、上記給電制御部は上記スイッチを閉じる。これによって、第2給電路から第1給電路を介して充電器に給電される。
このように、防爆ロボットがチャンバ内に収容された後、充電器に自動的に給電されるため、作業員がチャンバに立ち入らなくても給電が可能になり、そのため、作業員の安全を確保できる。
なお、上記コンタクタは、第1給電端子と第2給電端子とが接触し、第1給電路に電圧が付加されたときのみ第1給電路を閉じるように作動するので、防爆ロボットの給電時以外は、第1給電端子と充電器とは電気的に遮断される。従って、給電時以外に、第1給電端子からスパークなどが発生するのを防止できる。
【0017】
(6)一実施形態では、前記(5)の構成において、
前記給電制御部は、
前記センサが前記防爆ロボットの前記チャンバ内への収容を検出した時から所定時間遅れて前記スイッチを閉じるように制御する。
上記(6)の構成によれば、上記センサが防爆ロボットの収容を検出した時から給電開始までの間に所定時間遅れを持たせることで、防爆ロボットの収容後から給電までの間、周囲の安全確認を行う時間を確保できる。
【0018】
(7)一実施形態では、前記(1)〜(6)の何れかの構成において、
前記チャンバは少なくとも一側壁が透明な側壁で構成され、
前記側壁にグローブボックスを備える。
上記(8)の構成によれば、透明な側壁にグローブボックスを備えることで、チャンバに収納された防爆ロボットの分解、点検等のメンテナンスをチャンバの外側から行うことができる。
【0019】
(8)少なくとも一実施形態に係る防爆ロボットのメンテナンス方法は、
非引火性ガスを内部に導入可能なチャンバを用いて防爆ロボットのメンテナンス作業を実施する防爆ロボットのメンテナンス方法であって、
前記チャンバに設けられた開閉部を開いて、前記チャンバ内に前記防爆ロボットを収容する収容ステップと、
前記収容ステップの後で、前記開閉部を閉じることにより前記チャンバ内外を隔離する隔離ステップと、
前記チャンバ内に前記非引火性ガスを導入するガス導入ステップと、
前記非引火性ガスの導入が完了した後、前記チャンバ内で前記メンテナンス作業を実施する作業実施ステップと、
を含む。
【0020】
上記(8)の方法によれば、防爆ロボットをチャンバ内に収容した後、チャンバ内外を隔離した状態で、チャンバの内部に非引火性ガスを導入し、チャンバ内の引火性ガスを非引火性ガスで置換することで、引火性ガス爆発のおそれなく、分解、点検、給電等のメンテナンスが可能になる。
また、チャンバを防爆区域又はその近くに設置することで、防爆区域又はその近傍で防爆ロボットのメンテナンスが可能になる。
【0021】
(9)一実施形態では、前記(8)の方法において、
前記収容ステップでは、前記防爆ロボットが有する第1給電端子が前記チャンバが有する第2給電端子に接触するように、前記防爆ロボットが収容され、
前記作業実施ステップでは、互いに接触する前記第1給電端子及び前記第2給電端子を介して前記チャンバ側から前記防爆ロボットに給電する給電作業が実施される。
上記(9)の方法によれば、防爆ロボットがチャンバに収容されると、第1給電端子が第2給電端子に接触するようにしたので、チャンバ内で防爆ロボットへの給電を自動的に行うことができる。
【0022】
(10)一実施形態では、前記(8)又は(9)の方法において、
前記作業実施ステップは、前記ガス導入ステップの完了後、所定時間遅れて実行される。
上記(10)の方法によれば、チャンバ内雰囲気を非引火性ガスで置換した後、作業実施ステップの開始を所定時間だけ遅らせることで、防爆ロボットの収容後から作業開始までの間、周囲の安全確認を行う時間を確保できる。
【0023】
(11)一実施形態では、前記(8)〜(10)の何れかの方法において、
前記ガス導入ステップでは、
前記チャンバの内部が前記チャンバの外圧に比べて高くなるように前記非引火性ガスの導入が行われる。
上記(11)の方法によれば、チャンバの内部を前記チャンバの外部より加圧された状態とすることで、チャンバ外の引火性ガスを含む雰囲気がチャンバ内に侵入するのを防止でき、チャンバ内を防爆状態に維持できる。