(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る医療用コネクタ及び輸液セットの実施形態について、
図1〜
図16を参照して説明する。なお、各図において共通する部材・部位には、同一の符号を付している。
【0019】
まず、本発明に係る医療用コネクタの1つの実施形態について説明する。
図1は、本実施形態としての医療用コネクタ1(以下、単に「コネクタ1」と記載する。)を示す斜視図である。
図1に示すように、コネクタ1は、ハウジング2と、このハウジング2の取り付けられる弾性弁体3と、を備えている。
【0020】
図2は、コネクタ1を弾性弁体3の天面3a側から見た図である。
図3は、
図2のI−I断面図である。
図3に示すように、ハウジング2は、中空部4を区画している。そして、弾性弁体3は、中空部4に位置している。中空部4は、オスコネクタ100(
図14参照)が外方から挿入可能な挿入開口5及びこの挿入開口5と連通する流路6を有し、弾性弁体3は、挿入開口5を閉塞する。換言すれば、ハウジング2は、オスコネクタ100を挿入可能な挿入開口5と、この挿入開口5に連通する流路6と、を区画している。なお、「挿入開口と連通する流路」とは、挿入開口と直接繋がる流路のみならず、挿入開口と別の空間を介して繋がる流路をも含む意味である。本実施形態の流路6は、挿入開口5と直接繋がる流路である。
【0021】
ハウジング2は、オスコネクタ100(
図14参照)が外方から挿入される挿入開口5を区画するキャップ7と、流路6を区画すると共に、キャップ7を支持するホルダ8とを備える。
【0022】
キャップ7は天面キャップ9と底面キャップ10とを有しており、弾性弁体3は、天面キャップ9及び底面キャップ10により圧縮、挟持されて中空部4内、具体的には挿入開口5内での位置が固定されている。
【0023】
ホルダ8は、流路6を区画すると共に、天面キャップ9及び底面キャップ10を支持する部材である。なお、本実施形態では天面キャップ9及び底面キャップ10の両方がホルダ8に接触して支持される構成であるが、底面キャップ10を天面キャップ9に保持させて、天面キャップ9のみをホルダ8に接触させてホルダ8に支持させる構成としてもよい。また逆に天面キャップ9を底面キャップ10に保持させて、底面キャップ10のみをホルダ8に接触させてホルダ8に支持させる構成としてもよい。
【0024】
なお、本実施形態では、天面キャップ9及び底面キャップ10は、挿入開口5を区画している。また、ホルダ8は、挿入開口5の一部と、流路6と、を区画している。
【0025】
ハウジング2のホルダ8、天面キャップ9及び底面キャップ10の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA);ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリスチレン;ポリアミド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリ−(4−メチルペンテン−1);アイオノマー;アクリル樹脂;ポリメチルメタクリレート;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂);ブタジエン−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル;ポリエーテル;ポリエーテルケトン(PEK);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルイミド;ポリアセタール(POM);ポリフェニレンオキシド;変性ポリフェニレンオキシド;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリフェニレンサルファイド;ポリアリレート;芳香族ポリエステル(液晶ポリマー);ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂;などの各種樹脂材料が挙げられる。また、これらのうちの1種以上を含むブレンド体やポリマーアロイなどでもよい。その他に、各種ガラス材、セラミックス材料、金属材料であってもよい。
【0026】
弾性弁体3は、オスコネクタ100(
図14参照)がコネクタ1に着脱される際に弾性変形して開閉することができるようにスリット11を有し、キャップ7としての天面キャップ9及び底面キャップ10により区画された挿入開口5を閉塞するように配置されている。具体的に、弾性弁体3は、天面キャップ9と底面キャップ10とで構成される挟持部48により挟持されて、コネクタ1内での位置が固定される。
【0027】
弾性弁体3は、金型成形され、弾性変形可能に形成される。この弾性弁体3の材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合したものであってもよい。
【0028】
また、弾性弁体3の硬度は、20〜60°(A硬度)であることが好ましい。これにより、弾性弁体3に適度な弾性力を確保することができるため、弾性弁体3に後述する弾性変形を生じさせることができる。
【0029】
以下に本実施形態における各部材及び各部材により構成される特徴部の詳細について説明する。
【0030】
[弾性弁体3]
図4は、弾性弁体3単体の斜視図である。
図5(a)は、弾性弁体3単体を天面3a側から見た図であり、
図5(b)は、弾性弁体3単体を底面3b側から見た図である。
図6(a)は、
図5(b)における弾性弁体3を矢印II方向に見た側面図であり、
図6(b)は、
図5(b)における弾性弁体3を矢印III方向に見た側面図である。
図7(a)は、
図5(b)におけるIV−IV断面図であり、
図7(b)は、
図5(b)におけるV−V断面図である。なお、弾性弁体3の天面3aとは、弾性弁体3がハウジング2に取り付けられた状態で少なくとも一部が外方に露出される面を意味する。また、弾性弁体3の底面3bとは、天面3aの反対側の面である。
【0031】
図4〜
図7に示すように、弾性弁体3は、天面3a側から見た場合に略円形の外形を有する扁平なディスク状弁体である。また、
図4に示すように、弾性弁体3は、後述するハウジング2の挟持部48(
図3参照)により挟持される括れ部12と、径方向Aにおいて挟持部48により挟持される位置よりも内側に位置する中央部13と、径方向Aにおいて挟持部48により挟持される位置よりも外側に位置する周縁部14と、を備えている。
【0032】
弾性弁体3の天面3aは、中央部13の中央部天面領域15と、この中央部天面領域15よりも径方向Aにおいて外側に位置する括れ部12の括れ部天面領域16と、この括れ部天面領域16よりも径方向Aにおいて更に外側に位置する周縁部14の周縁部天面領域17と、で構成されている。
【0033】
図4〜
図7に示すように、中央部天面領域15は、括れ部天面領域16及び周縁部天面領域17よりも、弾性弁体3の厚さ方向Bの外方(
図6、
図7の上方)の位置で、厚さ方向Bと直交する平面で構成される中央平面部18を有している。
【0034】
中央平面部18の中央には一文字状の上述したスリット11が形成されている。このスリット11は金型成形されるものであり、成形時には底面3bまで貫通しておらず、金型成形後の例えば最初のオスコネクタ100(
図14参照)の挿入時において、底面3bまで貫通する構成としている。なお、スリット11を貫通させる工程を金型成形が完了した後に製造工程の一部として実行することも可能である。
【0035】
また、
図5(a)に示すように、中央部天面領域15は、弾性弁体3が挿入開口5(
図3参照)に収容されていない状態で、スリット11の長手方向(
図5(a)において上下方向)側に短軸を有し、スリット11の長手方向と直交する方向(
図5(a)において左右方向)に長軸を有する楕円形状に形成されている。弾性弁体3が挿入開口5に収容されると、中央部天面領域15の楕円の長軸方向(
図5(a)においてスリット11の長手方向と直交する方向)において、後述する括れ部天面領域16の側壁部19が、天面キャップ9の挿入開口5を区画する内壁42(
図3参照)により押圧される。これにより、中央部天面領域15の外形は、弾性弁体3が挿入開口5に収容されることで、楕円形から円形へと変形する。また、この変形に伴い、スリット11の内面同士が密着して閉じられる。なお、
図1〜
図3等においては、スリット11を、構成の理解を容易にするため、密着して閉じられた状態として描いていないが、実際は内面同士が密着して閉じた状態となっている。
【0036】
ここで、
図4〜
図7に示すように、中央部天面領域15は、上述の中央平面部18以外に、中央平面部18の外縁と後述する側壁部19とを接続する曲面部20を有する。具体的に、曲面部20は、スリット11の長手方向と直交する断面(例えば
図7(a)に示す断面)の断面視で円弧形状を有しており、この曲面部20を介して中央平面部18と側壁部19とが接続されている。このように曲面部20を設けることにより、弾性弁体3がハウジング2に取り付けられた状態で、挿入されていたオスコネクタ100(
図14参照)が抜去され、ハウジング2(
図1等参照)内に押し込まれていた弾性弁体3が復元力により所定の位置に戻る際に、弾性弁体3の天面3aが、挿入開口5の入口近傍に位置するハウジング2の内壁42(
図3参照)に引っかかりにくくなる。更に、本実施形態では、
図5(a)に示すように、楕円形の中央部天面領域15の長軸方向において、スリット11から遠い位置まで延在する曲面部20ほど、同方向における長さLが長い構成となっている。中央部天面領域15の中央平面部18の外縁のうち、楕円形の中央部天面領域15の長軸方向においてスリット11からの距離が遠い位置にある外縁ほど、弾性弁体3が復元力により所定の位置に戻る際に、ハウジング2の内壁42と引っかかり易い。しかしながら、長さLの関係を上述のようにすれば、スリット11からの距離が遠い位置にある外縁であっても引っかかり難くすることができる。
【0037】
なお、
図7(b)に示すように、本実施形態では、スリット11を含む、スリット11の長手方向に平行な断面で弾性弁体3を見た場合、中央平面部18の両端には円弧形状の曲面部20が設けられておらず、中央平面部18と後述する側壁部19とが、略直角の角度で直接接続されている。しかしながら、曲面部20を、中央平面部18の外縁全域に亘って設ける、すなわち弾性弁体3を天面3a側から見た場合に中央平面部18の周囲を取り囲むように設けるようにしてもよい。
【0038】
周縁部14の周縁部天面領域17は、
図5及び
図7に示すように、厚さ方向Bと直交する環状平面で構成される周縁平面部21を備える。
【0039】
括れ部12の括れ部天面領域16は、上述した中央部天面領域15と連続する環状の側壁部19と、上述した周縁部天面領域17と連続する環状の側壁部22と、径方向Aにおいて側壁部19及び側壁部22の間に位置する環状底部24と、を備える。換言すれば、括れ部天面領域16は、側壁部19及び側壁部22を対向する環状の溝壁とし、環状底部24を溝底とする天面環状溝23である。後述する天面キャップ9の係止突起41(
図8参照)は、この天面環状溝23に入り込んで環状底部24と接触し、後述する底面キャップ10の係止突起45(
図8参照)と共に、弾性弁体3を圧縮して挟持部48を形成する。
【0040】
側壁部19は、厚さ方向Bに沿う弾性弁体3の断面視(
図7参照)において、中央部天面領域15と連続し、厚さ方向Bに延在する円筒状の側壁本体部19aと、この側壁本体部19aと連続し、厚さ方向Bで底面3b側に向かうにつれて径方向Aの外側に広がるように延在する円弧状のテーパー部19bと、を備えている。テーパー部19bは、換言すれば、厚さ方向Bで底面3b側に向かうにつれて径方向Aの径が漸増する傾斜環状面である。側壁部19にテーパー部19bを設けることにより、側壁部19が側壁本体部19aのみで構成される場合と比較して、オスコネクタ100(
図14参照)を抜去した際の弾性弁体3の復元性能を向上させることができる。
【0041】
また、側壁部22は、周縁部天面領域17の周縁平面部21の内縁と連続し、厚さ方向Bにおいて底面3b側に向かうにつれて、径方向Aにおける径が漸減するテーパー形状を有している。なお、側壁部22は、
図7に示す断面視において、曲線状に延在しているが、同断面視において直線状に延在する構成としてもよい。また、本実施形態の側壁部22は、厚さ方向Bにおいて底面3b側に向かうにつれて、径方向Aにおける径が漸減する構成であるが、厚さ方向Bに平行な円筒状としてもよい。但し、本実施形態のように、側壁部22を、周縁平面部21と直交する厚さ方向Bにおいて底面3b側に向かうにつれて、径方向Aにおける径が漸減するテーパー形状とすれば、弾性弁体3を組み付ける際に、天面キャップ9の後述する係止突起41(
図8参照)が、側壁部22によって、側壁部19に接触するように、更に、側壁部19を挿入開口5(
図8参照)側に押圧するようにガイドされるため、弾性弁体3のうち挟持部48(
図3参照)によって挟持される径方向Aにおける位置がばらつくことが抑制される。更に、天面キャップ9の係止突起41は、側壁部22によって、側壁部19と接触するように、更には、側壁部19を径方向Aの内側に押圧するようにガイドされるので、弾性弁体3を挟持部48により挟持する際に、挟持部48により圧縮された部分が挿入開口5側に押し出されて弾性弁体3の中央部13の底面側で弛みが生じることを抑制することができる。
【0042】
弾性弁体3の底面3bは、中央部13の中央部底面領域25と、この中央部底面領域25よりも径方向Aにおいて外側に位置する括れ部12の括れ部底面領域26と、この括れ部底面領域26よりも径方向Aにおいて更に外側に位置する周縁部14の周縁部底面領域27と、で構成されている。
【0043】
中央部底面領域25は、天面3a側の中央平面部18と平行な面である底面3b側の中央平面部28と、この中央平面部28よりも径方向Aの外側に位置すると共に、中央平面部28よりも厚さ方向Bの外方(
図6及び
図7において下方)に突出する中央突出部29と、を備えている。
【0044】
底面3b側の中央平面部28には、スリット11は形成されていないが、上述したとおり、例えば最初のオスコネクタ100(
図14参照)の挿入時において、弾性弁体3の天面3a側の中央平面部18に形成されているスリット11の先端部と底面3b側の中央平面部28との間の部分が裂けることによって、スリット11は天面3a側の中央平面部18から底面3b側の中央平面部28まで連通する。なお、
図5(b)には、説明の便宜上、天面3a側にあるスリット11の位置を破線で示している。
【0045】
中央突出部29は、中央平面部28よりも外方に突出しているため、天面3a側の中央平面部18と底面3b側の中央平面部28との厚さ方向Bにおける肉厚よりも、天面3a側の中央平面部18と中央突出部29の頂部との厚さ方向Bにおける肉厚の方が厚い。中央突出部29を設けない構成の場合には、オスコネクタ100の挿入時や抜去時などに弾性弁体3に過剰な負荷がかかってしまう時や、オスコネクタ100が繰り返し挿入及び抜去される場合に、連通したスリット11の底面3b側の長手方向端部が裂けてしまうという問題があるが、中央突出部29を設けることによりスリット11の長手方向端部が補強されて上述の問題の発生を抑制することができる。なお、本実施形態では、弾性弁体3を底面3b側から見た場合に、中央平面部28を取り囲むように環状の中央突出部29が形成され、その中でも天面3aに形成されたスリット11の長手方向の両側に対応する部分の肉厚が最も厚く形成されている。このような構成とすることにより、貫通したスリット11の長手方向における端部が裂けることを抑制すると共に、弾性弁体3のオスコネクタ挿入性の良さと弾性復元力の維持とを両立することが可能となる。
【0046】
また、中央突出部29の径方向A外側の側壁部30には、厚さ方向Bに沿う断面視で厚さ方向Bに略平行な面と、厚さ方向Bに沿う断面視で厚さ方向Bに対して傾斜した面と、が周方向Cにおいて交互に形成されている。具体的に、
図7(a)に示すように、中央突出部29の側壁部30のうちスリット11に対してスリット11の長手方向に直交する方向(
図5(b)において短軸方向)に位置する部分は、厚さ方向Bに略平行な面で構成されている。また、
図7(b)に示すように、中央突出部29の側壁部30のうちスリット11に対してスリット11の長手方向(
図5(b)において長軸方向)に位置する部分は、厚さ方向Bで天面3a側に向かうにつれて、径方向Aにおける径が漸増する面で構成されている。
【0047】
周縁部底面領域27は、
図7に示すように、厚さ方向Bと略直交する平面状の周縁平面部31を備える。
【0048】
括れ部12の括れ部底面領域26は、上述した中央突出部29の側壁部30と、上述した周縁部底面領域27と連続する環状の側壁部32と、径方向Aにおいて側壁部30及び側壁部32の間に位置する環状底部34と、を備える。換言すれば、括れ部底面領域26は、側壁部30及び側壁部32を対向する環状の溝壁とし、環状底部34を溝底とする底面環状溝33である。底面キャップ10の後述する係止突起45(
図8参照)は、この底面環状溝33に入り込んで環状底部34と接触し、天面キャップ9の後述する係止突起41(
図8参照)と共に、弾性弁体3を圧縮して挟持部48を形成する。
【0049】
本実施形態の側壁部30は、上述したように、中央突出部29の径方向A外側の外周面により構成されているが、この構成に限られるものではなく、中央突出部29の径方向A外側の外周面とは別に形成された側壁部としてもよい。
【0050】
側壁部32は、
図7の断面視において厚さ方向Bに延在する構成であるが、厚さ方向Bにおいて天面3a側に向かうにつれて、径方向Aにおける径が漸減する構成としてもよい。このような構成とすれば、後述するように、弾性弁体3を組み付ける際に、底面キャップ10の係止突起45(
図8参照)が、側壁部32によって、側壁部30に接触するように、更には、側壁部30を押圧するようにガイドされ、弾性弁体3のうち挟持部48(
図3参照)によって挟持される径方向Aにおける位置がばらつくことが抑制される。更に、底面キャップ10の係止突起45は、側壁部32によって、側壁部30と接触するように、更には側壁部30を径方向A内側に押圧するようにガイドされるので、弾性弁体3を挟持部48(
図3参照)により挟持する際に、挟持部48により圧縮された部分が挿入開口5側に流れて、弾性弁体3の中央部13の底面3b側で弛みが生じることを一層抑制することができる。
【0051】
なお、
図4〜
図7に示すように、弾性弁体3の天面3aにおける周縁部天面領域17の径方向Aにおける外縁と、底面3bにおける周縁部底面領域27の径方向Aにおける外縁とは、天面3a及び底面3bと共に弾性弁体3の外壁を構成する環状の側壁部35により接続されている。なお、本実施形態の側壁部35は、
図6、
図7に示すように、厚さ方向Bに平行する外周面で構成されている。
【0052】
[天面キャップ9]
図8は、上述した弾性弁体3が、天面キャップ9と底面キャップ10とに挟持されている状態を示す拡大断面図である。以下、
図3及び
図8を参照しながら天面キャップ9、底面キャップ10、及びホルダ8の構成を以下に説明する。
【0053】
図3に示すように、天面キャップ9は、略円筒状の中空筒部36と、この中空筒部36の一端側に設けられたフランジ部37と、を備える。また、
図8に示すように、中空筒部36の他端側は、オスコネクタ100の挿入方向D及びこの挿入方向Dの逆方向である抜去方向Eと直交する方向(弾性弁体3の厚さ方向Bと直交する方向と同じ方向)に延在する平面状の上端面38となっている。この上端面38には、オスコネクタ100が外方より挿入される挿入開口5の一端を区画する略円形の縁39が含まれる。中空筒部36の外周面にはISO594で規定されたロックコネクタと螺合することができるようにねじ山40が形成されている。フランジ部37は、中空筒部36と一体で型成形された部位であり、フランジ部37が後述するホルダ8と係合することにより天面キャップ9がホルダ8に保持される。
【0054】
図8に示すように、中空筒部36の内壁のうち縁39の近傍には、オスコネクタ100の挿入方向Dに向かって突出し、上述した弾性弁体3の天面環状溝23(
図7参照)に入り込んで、底面キャップ10の係止突起45と共に弾性弁体3を圧縮する係止突起41が設けられている。縁39と係止突起41の間に形成される、天面キャップ9の環状の内壁42(
図3参照)は、オスコネクタ100が挿入されていない状態では上述した弾性弁体3の側壁部19(
図7等参照)と接触し、オスコネクタ100が挿入されている状態(
図14参照)ではオスコネクタ100と接触するように構成されている。つまり、オスコネクタ100が挿入されていない状態では、弾性弁体3の括れ部12の側壁部19(
図7等参照)及び中央部13の中央平面部18(
図7等参照)が内壁42により囲まれる略円柱状の空間に嵌り込み、オスコネクタ100が挿入されている状態ではオスコネクタ100が円筒状の内壁42により天面キャップ9と嵌合する。なお、本実施形態における内壁42は、挿入方向Dに対して平行な円筒状であるが、オスコネクタ100の外形に応じて、挿入方向Dに向かって漸減的に内径が小さくなるテーパー状としてもよい。
【0055】
[底面キャップ10]
図3に示すように、底面キャップ10は、天面キャップ9と同様、略円筒状の中空筒部43と、中空筒部43の一端側に設けられたフランジ部44と、を備える。中空筒部43の他端側には、オスコネクタ100の抜去方向Eに向かって突出し、上述した弾性弁体3の底面環状溝33(
図7等参照)に入り込んで、天面キャップ9の係止突起41と共に弾性弁体3を圧縮し、挟持する係止突起45が設けられている(
図8参照)。
【0056】
底面キャップ10は、天面キャップ9の中空筒部36の内面及び/又はフランジ部37の下面(
図3における下面)に超音波接着等されることにより天面キャップ9により保持され、更に底面キャップ10のフランジ部44を後述するホルダ8により支持することにより位置が固定されている。
【0057】
[ホルダ8]
図3に示すように、ホルダ8は、天面キャップ9及び底面キャップ10を支持し、その内部に流路6を区画している。本実施形態のホルダ8は、天面キャップ9及び底面キャップ10と直接接触することにより両者を支持しているが、例えばホルダ8が天面キャップ9とは接触せずに底面キャップ10のみと直接接触し、天面キャップ9は底面キャップ10に接触、支持させる構成としてもよい。すなわちホルダ8が天面キャップ9と底面キャップ10とのいずれか一方と直接接触して支持し、他方とは直接接触しない構成としてもよい。なお、直接接触する部材同士は、例えば超音波接着などにより接着するようにすることが好ましい。
【0058】
また、詳細は後述するが、コネクタ1にオスコネクタ100が挿入されるときは、オスコネクタ100の先端部101(
図14参照)が挿入開口5を通って流路6内又はその近傍まで入り込み、オスコネクタ100内の液体流路とホルダ8の流路6とが連通する。
【0059】
更に
図3に示すように、本実施形態におけるホルダ8は、内周面にロックコネクタ用のねじ山が設けられた略円筒状の外筒部46と、この外筒部46が区画する中空部に設けられたオスルアー部47と、を備えるものであるが、このホルダ8の形状に限定されるものではなく各種ホルダが使用可能であり、ユーザーの使用用途等に応じて適宜変更可能である。例えば、
図9に示すような、ホルダ80を備えるコネクタ110が挙げられる。ホルダ80は、中空部を内部に有する略円筒状の筐体からなるホルダ本体61と、ホルダ本体61の外周面から突出した円筒状の上流ポート部62及び下流ポート部63とを備える。ホルダ本体61内部の中空は、上流ポート部62から下流ポート部63に達する液体流路64の一部を担っている。またホルダ80の外壁上に天面キャップ9及び底面キャップ10が支持されている。
図9に示すホルダ80は、内部の液体流路の形状や、液体流路の形状に伴う外形が、ホルダ8とは異なるが、弾性弁体3、天面キャップ9、底面キャップ10は上述したものと同一のものが使用可能である。
【0060】
また更に、上述のホルダ80の他に、
図10に示すような、ホルダ800を、ホルダ8に代えて用いることも可能である。
図10は、コネクタ120としての三方活栓を示す。この三方活栓におけるホルダ800は、コック601を内部に収容する略円筒状のホルダ本体602と、ホルダ本体602の外壁に設けられた、略円筒状の上流ポート部603と、ホルダ本体602を挟み、上流ポート部603とは反対側の位置でホルダ本体602の外壁に設けられた、略円筒状の下流ポート部604と、上流ポート部603及び下流ポート部604の位置とは異なる位置で、ホルダ本体602の外壁に設けられた分岐ポート部605と、を備える。ホルダ800の内部には、
図10において矢印で示すような液体流路606を形成することができる。弾性弁体3、天面キャップ9、及び底面キャップ10は、
図10に示すホルダ800の分岐ポート部605の端部に設けられ、ホルダ800により支持される。
【0061】
ここで、本実施形態では、弾性弁体3を、キャップ7の天面キャップ9と底面キャップ10とにより挟持する構成としているが、このような構成に限られるものではない。例えば、底面キャップ10とホルダ8とを単一の部材で構成し、ホルダ8自体に底面キャップ10の機能を持たせ、キャップ7を構成する天面キャップ9と、ホルダ8と、で弾性弁体3を挟持するようにしてもよい。また、ホルダ8の形状の代わりにホルダ80の形状を用いて、底面キャップ10とホルダ80とを単一の部材で構成するようにしてもよいし、ホルダ8の形状の代わりにホルダ800の形状を用いて、底面キャップ10とホルダ800とを単一の部材で構成するようにしてもよい。
【0062】
[弾性弁体3を挟持する挟持部48]
ハウジング2(
図3参照)は、弾性弁体3の天面3a及び底面3bに接触して弾性弁体3を挟持する挟持部48を備えている。以下、挟持部48について詳しく説明する。
【0063】
図8に示すように、弾性弁体3は、天面キャップ9の中空筒部36及び底面キャップ10の中空筒部43により区画される挿入開口5を閉塞するように取り付けられている。具体的に、係止突起41及び係止突起45で構成される挟持部48が、弾性弁体3の天面3a及び底面3bに接触して、弾性弁体3を圧縮及び挟持することにより、弾性弁体3の挿入開口5内での位置が固定される。より具体的には、天面キャップ9の係止突起41が弾性弁体3の天面環状溝23(
図7等参照)に入り込むと共に、底面キャップ10の係止突起45が弾性弁体3の底面環状溝33(
図7等参照)に入り込む。そして、弾性弁体3を天面3aの環状底部24(
図7等参照)及び底面3bの環状底部34の位置で、両方の係止突起41及び45により、厚さ方向Bに圧縮することで、弾性弁体3を挟持する挟持部48を形成する。これにより、弾性弁体3の挿入開口5内の位置が固定される。なお、本実施形態における弾性弁体3の括れ部12は、挟持部48により挟持される前の状態で厚さ方向Bにおいて1.0mm程度の厚みを有するものであるが、挟持部48の圧縮によって、厚さ方向Bにおいて弾性変形できなくなる薄さ(例えば0.2〜0.3mm)になるまで圧縮される。但し、この圧縮量は一例であって、弾性弁体の形状や大きさ等に応じて適宜変更することが可能である。なお、以下、括れ部12のうち挟持部48により挟持される部分を「被挟持部12a」と記載する。
【0064】
図8に示すように、ハウジング2は、弾性弁体3が挟持部48に挟持されている状態において周縁部14を収容する収容空間Sを区画している。具体的に、ハウジング2の天面キャップ9の内壁の一部及び底面キャップ10の外壁の一部が、収容空間Sを区画している。
【0065】
また、本実施形態における挟持部48は、弾性弁体3を天面3a側から見た場合に、弾性弁体3の周方向C(
図5参照)全域に亘って設けられているが、例えば、櫛歯状の突起により周方向Cにおいて所定間隔ごと離して配置するなど、周方向Cの一部のみに設けられる構成としてもよい。但し、挟持部48を、本実施形態のように周方向C全域に設け、周方向C全域において弾性弁体3の天面3a及び底面3bと接触するよう構成すれば、挟持部が周方向Cの一部のみに設けられている構成と比較して、オスコネクタ100の挿入及び抜去の繰り返しに対して弾性弁体3の括れ部12及び周縁部14が、挿入開口5側へと移動することを抑制することができる。
【0066】
ここで、挟持部48は、弾性弁体3の天面3aに接触する天面側挟持部49と、弾性弁体3の底面3bに接触して、天面側挟持部49と共に弾性弁体3を挟持する底面側挟持部50とで構成されている。また、挟持部48は、弾性弁体3を天面3a側から見た場合に、スリット11を取り囲むように略円形に設けられている。なお、本実施形態における天面側挟持部49とは、天面3aと接触する天面キャップ9の係止突起41の先端部のうち、最も挿入方向D側に位置する先端を意味している。また、本実施形態における底面側挟持部50とは、底面3bと接触する底面キャップ10の係止突起45の先端部のうち、最も抜去方向E側に位置する先端を意味している。更に、弾性弁体3を「天面3a側から見た場合」とは、弾性弁体3を天面3a側から見た仮想平面上に天面側挟持部49と底面側挟持部50とを投影した場合を意味しており、実際に目視できるか否かを意味するものではない。
【0067】
図8に示すように、底面側挟持部50は、天面側挟持部49よりも径方向Aの外側に位置している。換言すれば、底面側挟持部50の直径W2は、天面側挟持部49の直径W1よりも長く構成されている。天面3a側から見た場合に、天面側挟持部49及び底面側挟持部50は共に中心点が略一致する同心円状に配置されているため、W1とW2とが上記関係を充足している場合には、天面側挟持部49の直径W1を構成する円周上の点は、径方向Aにおいて、天面側挟持部49の直径W2を構成する円周上の点よりも、中心に近い構成となっている。
【0068】
上述したように、本実施形態の天面側挟持部49とは、天面3aと接触する天面キャップ9の係止突起41の先端部のうち、最も挿入方向D側に位置する先端である。しかしながら、本実施形態の係止突起41では、最も挿入方向D側に位置する先端がフラットな面、すなわち、先端面により構成されている。換言すれば、本実施形態の係止突起41は、最も挿入方向D側に位置する点が2点以上存在している。なお、底面側挟持部を構成する係止突起においても、最も抜去方向E側に位置する点が2点以上存在する構成となり得る。かかる場合には、天面側挟持部49と底面側挟持部50との径方向Aにおける位置関係を、天面側挟持部49のうち径方向Aにおいて最も中心側に位置する点と、底面側挟持部50のうち径方向Aにおいて最も中心側に位置する点と、の位置関係により行う。すなわち、本実施形態において、「底面側挟持部50が天面側挟持部49よりも径方向Aの外側に位置している」とは、係止突起45の最も抜去方向E側に位置する先端のうち径方向Aにおいて最も中心側に位置する点Qが、係止突起41の最も挿入方向D側に位置する先端のうち径方向Aにおいて最も中心側に位置する点Pよりも、径方向Aの外側に位置していることを意味している。なお、本実施形態の係止突起45の最も抜去方向E側に位置する先端は頂点の一点のみであるため、この頂点が点Qとなる。
【0069】
また、本実施形態において、上述した「天面側挟持部49の直径W1」は、点Pで構成される円の直径を意味するものとし、上述した「底面側挟持部50の直径W2」は、点Qで構成される円の直径を意味するものとする。後述するように、本実施形態の点Pの径方向Aにおける位置は、天面キャップ9の中空筒部36の周方向(
図8では弾性弁体3の周方向Cと同じ方向であり、底面キャップ10の中空筒部43の周方向とも同じ方向)の位置に応じて変動するが、上述した「天面側挟持部49の直径W1」は、最も径方向Aの内側に位置する点Pで形成される円の直径を意味するものとする。
【0070】
底面側挟持部50を天面側挟持部49よりも径方向Aの外側に配置することにより、底面側挟持部を天面側挟持部よりも径方向Aの内側に配置する構成と比較して、底面側挟持部50が、オスコネクタ100(
図14参照)の挿入開口5への挿入を阻害し難くすることができる。そのため、オスコネクタ100の挿入時の操作性を向上させることができる。
【0071】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、底面側挟持部50を天面側挟持部49よりも径方向Aの外側に配置することにより、以下の問題が生じ易いという知見を得るに至った。問題とは、底面側挟持部50を天面側挟持部49よりも径方向Aの外側に配置すると、底面側挟持部を天面側挟持部よりも径方向Aの内側に配置する構成と比較して、オスコネクタ100の挿入時に、弾性弁体3の周縁部14が挟持部48の間を通じて挿入開口5側に抜け落ち易いということである。以下、
図16を参照して、この問題について説明する。
【0072】
図16は、比較例としての医療用コネクタ200を示す断面図である。
図16では、比較例としての医療用コネクタ200の挿入開口205に、オスコネクタ100を挿入する際の様子を示している。
図16に示すように、オスコネクタ100の挿入時には、弾性弁体203の中央部213が挿入方向Dに押し込まれる。この弾性弁体203の中央部213の変形により、弾性弁体203の括れ部212及び周縁部214は、挟持部248間を通じて、挿入開口205側に引っ張られことになる。この際に、
図16に示すように、オスコネクタ100が、挿入開口205を区画するハウジング202の中心軸線Oに対して傾斜して挿入されることがある。かかる場合に、底面側挟持部250が天面側挟持部249よりも径方向Aの外側に配置されていると、底面側挟持部を天面側挟持部よりも径方向Aの内側に配置する構成と比較して、弾性弁体203の挟持状態が、天面側挟持部249及び底面側挟持部250の間での挟持から、挿入中のオスコネクタ100の先端部101と底面側挟持部250との間での挟持へと、切り替わり易い。弾性弁体203がオスコネクタ100の先端部101と底面側挟持部250との間で挟持された状態で、オスコネクタ100の挿入開口205への挿入動作が行われると、弾性弁体203の括れ部212及び周縁部214が、挟持部248間を通じて、挿入開口205側に抜け落ち易くなる。つまり、弾性弁体203のハウジング202からの脱落が生じ易い。
【0073】
これに対して、
図8に示すコネクタ1では、天面側挟持部49と底面側挟持部50との間の挿入方向Dにおける距離H1よりも、天面側挟持部49と底面側挟持部50との間の径方向Aにおける距離H2を大きくしている。これにより、オスコネクタ100の挿入時における弾性弁体3のハウジング2からの脱落を抑制することができる。具体的に、距離H1<距離H2の距離関係とすることにより、
図16を参照して説明した挟持状態の切り替わりが発生することを抑制し、その結果、弾性弁体3のハウジング2からの脱落を抑制することができる。
【0074】
なお、本実施形態における「天面側挟持部49と底面側挟持部50との間の挿入方向Dにおける距離H1」とは、上述した点Pと点Qとの間の挿入方向Dにおける距離を意味している。また、本実施形態における「天面側挟持部49と底面側挟持部50との間の径方向Aにおける距離H2」とは、上述した点Pと点Qとの間の径方向Aにおける距離を意味している。
【0075】
また、本実施形態の天面側挟持部49は、上述したように、天面3aと接触する天面キャップ9の係止突起41の先端部のうち、最も挿入方向D側に位置する先端面である。つまり、本実施形態の天面側挟持部49は、環状突起としての係止突起41の先端面である。ここで、
図11は、天面キャップ9単体を示す斜視図である。また、
図12は、天面キャップ9単体をフランジ部37の下面側(
図11の下側)から見た図である。
図11及び
図12に示すように、環状突起としての係止突起41の先端面の内縁は、その周方向F(
図3等では弾性弁体3の周方向Cと同じ方向)の位置によって、径方向G(
図3等では弾性弁体3の径方向Aと同じ方向)における位置が異なっている。換言すれば、本実施形態の係止突起41の先端面の内縁を示す点P(
図8参照)は、周方向Fの位置に応じて、径方向Gにおける位置が異なっている。
【0076】
図8に示すように、点Pの位置が径方向A(径方向Gと同じ方向)において内側になればなるほど、点Pと点Qとの間の径方向Aにおける距離は大きくなる。すなわち、天面側挟持部49と底面側挟持部50との間の径方向Aにおける距離H2が大きくなる。そのため、上述したH1<H2の長さ関係を実現し易くなる。つまり、弾性弁体3のハウジング2からの脱落を抑制する構成が実現し易くなる。しかしながら、点Pの位置が径方向Aにおいて内側になればなるほど、オスコネクタ100(
図14参照)の抜去時に、弾性弁体3が復元力により所定の位置に戻る際に、弾性弁体3の天面3aが係止突起41の先端面の内縁に引っかかり易く、所定の位置まで復元しないおそれがある。そのため、本実施形態では、
図11及び
図12に示すように、環状突起としての係止突起41の先端面の内縁の径方向G(
図3等では弾性弁体3の径方向Aと同じ方向)における位置を、その周方向F(
図3等では弾性弁体3の周方向Cと同じ方向)の位置によって異ならせることで、弾性弁体3のハウジング2からの脱落を抑制すると共に、弾性弁体3が所定位置へ復元し易い構成を実現している。
【0077】
より具体的には、
図11及び
図12に示すように、環状突起としての係止突起41の先端面は、第1端面部41aと、この第1端面部41aよりも内縁の位置が径方向Gの内側に位置する第2端面部41bと、を備えている。そして、第1端面部41a及び第2端面部41bは、周方向Fに交互に配置されている。第1端面部41a及び第2端面部41bをこのように配置することで、弾性弁体3(
図3等参照)のハウジング2(
図3等参照)からの脱落を、周方向Fの位置によらず抑制できると共に、オスコネクタ100(
図14参照)の抜去後の弾性弁体3の所定位置への復元が、周方向Fの位置によらず実現し易い。つまり、上述の弾性弁体3の脱落抑制及び復元性能が、周方向Fの位置によってばらつくことを軽減することができる。
【0078】
なお、第1端面部41a及び第2端面部41bは、いずれも挿入方向Dに直交する平面で構成されており、挿入方向Dにおいて略等しい位置に位置している。換言すれば、第1端面部41aの挿入方向Dにおける位置は、第2端面部41bの挿入方向Dにおける位置と等しく、両者は段差なく連続する一平面により構成されている。
【0079】
図3及び
図8が、第2端面部41bの位置での断面図であるのに対して、
図13は、第1端面部41aの位置での断面図である。
図11〜
図13に示すように、環状突起としての係止突起41の内周面には、先端面まで貫通する溝部71が形成されている。そして、第1端面部41aは、先端面のうち溝部71の溝底71aが連続する部分により構成されている。
【0080】
また、溝部71は、周方向Fに複数形成されており、第2端面部41bは、周方向Fにおいて隣り合う溝部71の間の部分により構成されている。
【0081】
このように、本実施形態では、第1端面部41a及び第2端面部41bを、環状突起としての係止突起41の内周面に、先端面まで貫通する溝部71を設けることにより実現している。このようにすることで、径方向Gにおける位置が周方向Fの位置によって異なる先端面の内縁を、容易に実現することができる。
【0082】
なお、
図11及び
図13に示すように、本実施形態の溝底71aは、環状突起としての係止突起41の先端面に向かうにつれて、係止突起41の中心軸線(本実施形態では挿入開口5を区画するハウジング2の中心軸線Oと同じであり、より具体的にはハウジング2の内壁42の中心軸線と同じ)から遠ざかるように傾斜する傾斜底部を備えている。より具体的に、本実施形態の溝底71aは、傾斜底部のみで構成されている。そして、傾斜底部の抜去方向E側の一端を、環状突起としての係止突起41の内周面、又は、内壁42に連続させている。つまり、
図13の断面視において、挿入方向Dに対して傾斜する溝底71aは、挿入方向Dに延在する係止突起41の内周面、又はその抜去方向E側に位置する内壁42と連続する。このように、同断面視(
図13参照)において挿入方向Dに延在する係止突起41の内周面、又は、係止突起41の内周面の抜去方向E側に位置し、同断面視(
図13参照)において挿入方向Dに延在する内壁42、に対して、挿入方向Dと直交する面ではなく、挿入方向Dに対して傾斜する傾斜底部を連続させる。これにより、オスコネクタ100(
図14参照)の抜去後に弾性弁体3が復元する際に弾性弁体3が引っ掛かり易い、同断面視(
図13参照)において挿入方向Dに延在する面と挿入方向Dと直交する面とで構成される角部が形成されない。そのため、このような角部を有する構成と比較して、弾性弁体3が所定位置まで復元し易くなる。
【0083】
なお、本実施形態における溝底71aは、上述したように、傾斜底部のみで構成されている。そのため、
図13に示すように、挿入方向Dに対して傾斜する溝底71aは、挿入方向Dと直交する面である第1端面部41aと連続している。つまり、溝底71aの挿入方向D側の一端についても、同断面視(
図13参照)において挿入方向Dに延在する面と挿入方向Dと直交する面とで構成される角部が形成されないようになっている。そのため、復元する際に弾性弁体3が引っ掛かかることをより一層抑制することができる。
【0084】
これに対して、環状突起としての係止突起41の中心軸線を含み、第2端面部41bを通り、係止突起41の中心軸線に沿う断面(
図3及び
図8参照)において、第2端面部41bは、係止突起41の内周面と略直交している。すなわち、同断面視(
図3及び
図8参照)において、挿入方向Dに延在する係止突起41の内周面は、挿入方向Dと直交する第2端面部41bと連続している。換言すれば、溝部71がないため、第2端面部41bの内縁が、直接、係止突起41の内周面と連続する。このようにすれば、第2端面部と係止突起の内周面との間に上述した溝底71aのような傾斜面を介在させる構成と比較して、第2端面部41bの内縁を、より径方向Aの内側に位置させることができる。そのため、上述したH1<H2の長さ関係を実現し易くなる。
【0085】
なお、本実施形態では、天面側挟持部49と底面側挟持部50との間の挿入方向Dにおける距離H1を、上述したように0.2〜0.3mmとしている。これに対して、本実施形態では、天面側挟持部49と底面側挟持部50との間の径方向Aにおける距離H2を、0.3mmより大きくなるようにしている。
【0086】
以上のように、本実施形態のコネクタ1は、環状突起としての係止突起41の先端面に、径方向Aにおける内縁の位置が異なる第1端面部41a及び第2端面部41bを備えている。そのため、弾性弁体3のハウジング2からの脱落を抑制すると共に、弾性弁体3が所定位置へ復元し易い構成を実現することができる。
【0087】
[オスコネクタ100が挿入されている状態でのコネクタ110]
ここまでは、主にオスコネクタ100が挿入されていない状態でのコネクタ1について説明してきた。以下に、オスコネクタ100が挿入されている状態でのコネクタ1の各部材について説明する。なお、
図14は、オスコネクタ100が挿入されている状態のコネクタ110を示す図である。
図14は、ホルダ8の代わりに上述したホルダ80を備えるコネクタ110(
図9参照)を示しているが、ホルダ8を備えるコネクタ1としてもよく、
図10に示すホルダ800を備えるコネクタ120としてもよい。また、コネクタ1、110及び120はいずれも、弾性弁体3、天面キャップ9、底面キャップ10の構成については共通している。また、
図14では、オスコネクタ100のうち、コネクタ110の挿入開口5(
図9参照)に挿入される筒部のみを示しているが、オスコネクタ100は、ISO594で規定されたロック式のオスコネクタであっても、スリップ式のオスコネクタであってもよい。
【0088】
オスコネクタ100がコネクタ110に挿入されると、オスコネクタ100の先端部101が弾性弁体3をコネクタ110内へと押し込むように弾性変形させ、貫通したスリット11を通じてホルダ本体61内の液体流路64内又はその近傍に到達する。
【0089】
弾性弁体3は、オスコネクタ100の挿入により弾性変形し、底面キャップ10の内壁とオスコネクタ100の外壁との間に入り込み、オスコネクタ100の外面に密着した状態となる。これにより、コネクタ110とオスコネクタ100とが液密に接続され、コネクタ110から外部へ薬液等の液体が漏れることが抑制される。
【0090】
オスコネクタ100の先端部101は、ホルダ本体61の上面に形成された位置決め部65に対して弾性弁体3を挟んだ状態で突き当たり、オスコネクタ100の挿入方向Dでの位置決めがされる。なお、オスコネクタ100の外面と底面キャップ10の内壁との間に弾性弁体3を挟んだ状態ではあるが、弾性弁体3には貫通したスリット11が設けられているため、オスコネクタ100内の液体流路はスリット11を通じて液体流路64と連通した状態となる。
【0091】
[コネクタ110を備える輸液セット130]
最後に、
図15を用いて、本発明の1つの実施形態である、コネクタ110を備える輸液セット130について説明する。ここでは上述したホルダ80を用いたコネクタ110を備える輸液セット130について説明するが、ホルダの形状は輸液セットの使用用途等に応じて適宜変更可能であり、上述したホルダ8を有するコネクタ1や、ホルダ800を有するコネクタ120を備える輸液セットとすることも可能である。
【0092】
図15に示すように、輸液セット130は、液体を収容する輸液バッグに挿入するびん針131と、びん針131の基部に連結され、液体流路を形成する第1のチューブ132と、第1のチューブ132の液体流路下流側に連結された点滴筒133と、点滴筒133に連結され、点滴筒133から排出される液体の液体流路を形成する第2のチューブ134と、第2のチューブ134の外周面に取り付けられ、第2のチューブ134を通過する液体の流量を調整可能なクランプ135と、クランプ135の設置位置よりも液体流路下流側に位置する第2のチューブ134の端部と連結される上流ポート部62を有するホルダ80を備えたコネクタ110と、コネクタ110の下流ポート部63と連結し、液体流路を形成する第3のチューブ136と、第3のチューブ136の液体流路の下流側端部に連結されたISO594で規定されたロック式のオスコネクタ137と、を備えている。
【0093】
この輸液セット130では、第3のチューブ136が、コネクタ110とオスコネクタ137とを連結する構成となっているが、コネクタ110とオスコネクタ137との間に、別のコネクタ110を追加して、連結するチューブも追加するような構成としてもよい。またクランプ135についても個数を追加することや、別の位置に配置することも可能であり、輸液セット130の構成要素やその構成要素の位置は、ユーザーの使用用途に応じて当業者が適宜変更して組み合わせることが可能なものであって、上記輸液セット130の構成に限定されるものではない。
【0094】
また、第1〜第3のチューブ132、134、136と、これらチューブに接続される各構成要素とは、ロックコネクタにより連結されることが好ましい。
【0095】
輸液セット130はコネクタ110を備えるため、びん針131が接続される輸液バッグからの液体とは別の液体を、コネクタ110を通じて輸液ラインに供給することが可能となり、体内に供給したい液体ごとにそれぞれ異なる輸液ラインを設ける必要がなくなる。
【0096】
本発明に係る医療用コネクタ及び輸液セットは、上述した実施形態で特定された構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。上述したコネクタ1では、第2端面部41bの内縁である点P(
図8参照)で、上述したH1<H2の長さ関係を充足しており、第1端面部41aの内縁では上述した長さ関係を充足していないが(
図13参照)、この構成に限られるものではない。つまり、第2端面部41bの内縁のみならず、第1端面部41aの内縁でも、上述したH1<H2の長さ関係と同様の長さ関係を充足する構成としてもよい。但し、第1端面部41aの位置での弾性弁体3の復元時の引っ掛かりをより抑制するため、上述したコネクタ1の第1端面部41aの内縁のように、第1端面部41aの内縁の位置(
図13の点「R」参照)では、挿入方向Dにおける距離H3が、径方向Aにおける距離H4以上であることが好ましい。
【0097】
なお、ここで用いられる「天面キャップ」とは、弾性弁体3の天面3aに接触するキャップを意味している。同様に、「底面キャップ」とは、弾性弁体3の底面3bに接触するキャップを意味するものである。