【実施例1】
【0051】
図1は本発明による速度制御装置3-1の実施例の構成を説明する図である。該
図1において、インクリメンタルエンコーダ1、信号線路2、入力インターフェイス4、回転位置カウンタ10、発振器11、タイマ12、およびタイムラッチ13は、前記
図10で同じ符号を付すものと同じ機能を有しておりこれの説明は割愛する。そして、速度検出装置3-1、信号変換器5-1、および速度検出部15-1が本発明によるものである。
【0052】
始めに前記速度検出装置3-1が内蔵する信号変換器5-1について説明を行う。該信号変換器5-1は前記入力インターフェイス4が出力する前記A5信号とB5信号を入力し、この2つの信号から4組のパルス列と回転方向信号を検出し出力する。
そして、該パルス列と回転方向信号の1組目を説明すると、該信号変換器5-1は入力した前記A5信号について、前記インクリメンタルエンコーダ1の回転方向が正転のときは立ち上がりエッジにて、逆転のときは立ち下がりエッジにてパルスA+信号を生成して出力するとともに、該パルスA+信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRA+信号を生成し出力する。
【0053】
次に、前記パルス列と回転方向信号の2組目を説明すると、前記信号変換器5-1は入力した前記A5信号について、前記インクリメンタルエンコーダ1の回転方向が正転のときは立ち下がりエッジにて、逆転のときは立ち上がりエッジにてパルスA-信号を生成して出力するとともに、該パルスA-信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRA-信号を生成し出力する。
【0054】
次に、前記パルス列と回転方向信号の3組目を説明すると、前記信号変換器5-1は入力した前記B5信号について、前記インクリメンタルエンコーダ1の回転方向が正転のときは立ち上がりエッジにて、逆転のときは立ち下がりエッジにてパルスB+信号を生成して出力するとともに、該パルスB+信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRB+信号を生成し出力する。
【0055】
そして、前記パルス列と回転方向信号の4組目を説明すると、前記信号変換器5-1は入力した前記B5信号について、前記インクリメンタルエンコーダ1の回転方向が正転のときは立ち下がりエッジにて、逆転のときは立ち上がりエッジにてパルスB-信号を生成して出力するとともに、該パルスB-信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRB-信号を生成し出力する。
かようにして、前記信号変換器5-1は4組のパルス列と回転方向信号を検出し出力する。
【0056】
次に前記
図1において、点線で示す6は1組目の前記パルスA+信号と回転方向FRA+信号の処理を行うA+の処理ブロックである。同様に点線で示す7,8、および9は、それぞれ2組目の前記パルスA−信号と回転方向FRA−信号のA−の処理ブロック、3組目の前記パルスB+信号と回転方向FRB+信号のB+の処理ブロック、および4組目の前記パルスB−信号と回転方向FRB−信号のB−の処理ブロックであり、次にこれらについて順次説明する。
【0057】
始めに前記A+の処理ブロック6は、このブロック専用の前記回転位相カウンタ10とタイムラッチ13を有している。そして、該回転位相カウンタ10は前記パルスA+信号と回転方向FRA+信号を入力してカウントアップまたはカウントダウンを行って、回転位置PA+を検出し出力する。また、前記タイムラッチ13は前記パルスA+信号と前記リアルタイムRTを入力し、前記回転位置PA+が更新された時刻であるキャプチャ時刻TA+を検出し出力する。
【0058】
ここで前記速度検出装置3-1は図示しないMPUを内蔵し、前記速度検出部15-1は回転位置とキャプチャ用の4組のメモリを内蔵している。そして、該1組目は前記A+の処理ブロック6内のメモリPA+(0)、TA+(0)、PA+(−1)、およびTA+(−1)であり、2組目は前記A−の処理ブロック7内のメモリPA−(0)、TA−(0)、PA−(−1)、およびTA−(−1)であり、3組目は前記B+の処理ブロック8内のメモリPB+(0)、TB+(0)、PB+(−1)、およびTB+(−1)であり、4組目は前記B−の処理ブロック9内のメモリPB−(0)、TB−(0)、PB−(−1)、およびTB−(−1)である。
【0059】
そして、前記A+の処理ブロック6において前記速度検出装置3-1のMPUは、制御周期ごとに前記キャプチャ時刻TA+をチェックして更新されているときは、前記メモリPA+(0)とメモリTA+(0)をそれぞれ前記メモリPA+(−1)とメモリTA+(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PA+と前記キャプチャ時刻TA+をそれぞれ前記メモリPA+(0)とメモリTA+(0)にセーブする。
【0060】
次に、前記速度検出部15-1は速度演算器16を内蔵し、該速度演算器16は16-1、16-2、16-3、および16-4に示す4つの速度演算を実行するもので、それぞれは前記A+の処理ブロック6、A−の処理ブロック7、B+の処理ブロック8、およびB−の処理ブロック9に属している。
そして、前記A+の処理ブロック6内の前記速度演算16-1は後述する規則性にて、ΔPとΔTを次の(8)式と(9)式により算出し前記(2)式の演算を行って速度VA+(n)を得ることとなる。
(数8)
(数9)
【0061】
以上で前記A+の処理ブロック6の処理について説明したが、これと同様に前記A−の処理ブロック7は前記パルスA−信号と回転方向FRA−信号の処理を行う。
すなわち前記
図1のA−の処理ブロック7は、このブロック専用の前記回転位相カウンタ10とタイムラッチ13を有している。そして、該回転位相カウンタ10は前記パルスA−信号と回転方向FRA−信号を入力してカウントアップまたはカウントダウンを行って、回転位置PA−を検出し出力する。また、前記タイムラッチ13は前記パルスA−信号と前記リアルタイムRTを入力し、前記回転位置PA−が更新された時刻であるキャプチャ時刻TA−を検出し出力する。
【0062】
同じく、前記A−の処理ブロック7において前記速度検出装置3-1のMPUは、制御周期ごとに前記キャプチャ時刻TA−をチェックして更新されているときは、前記メモリPA−(0)とメモリTA−(0)をそれぞれ前記メモリPA−(−1)とメモリTA−(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PA−と前記キャプチャ時刻TA−をそれぞれ前記メモリPA−(0)とメモリTA−(0)にセーブする。
【0063】
そして、前記A−の処理ブロック7内の前記速度演算16-2は後述する規則性にて、ΔPとΔTを前記(8)式と(9)式に準じて算出し、前記(2)式の演算を行って速度VA−(n)を得ることとなる。
【0064】
次に、前記
図1のB+の処理ブロック8は前記パルスB+信号と回転方向FRB+信号の処理を行うもので、該B+の処理ブロック8は、このブロック専用の前記回転位相カウンタ10とタイムラッチ13を有している。そして、該回転位相カウンタ10は前記パルスB+信号と回転方向FRB+信号を入力してカウントアップまたはカウントダウンを行って、回転位置PB+を検出し出力する。また、前記タイムラッチ13は前記パルスB+信号と前記リアルタイムRTを入力し、前記回転位置PB+が更新された時刻であるキャプチャ時刻TB+を検出し出力する。
【0065】
同じく、前記B+の処理ブロック8において前記速度検出装置3-1のMPUは、制御周期ごとに前記キャプチャ時刻TB+をチェックして更新されているときは、前記メモリPB+(0)とメモリTB+(0)をそれぞれ前記メモリPB+(−1)とメモリTB+(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PB+と前記キャプチャ時刻TB+をそれぞれ前記メモリPB+(0)とメモリTB+(0)にセーブする。
【0066】
そして、前記B+の処理ブロック8内の前記速度演算16-3は後述する規則性にて、ΔPとΔTを前記(8)式と(9)式に準じて算出し、前記(2)式の演算を行って速度VB+(n)を得ることとなる。
【0067】
次に、前記
図1のB−の処理ブロック9は前記パルスB−信号と回転方向FRB−信号の処理を行うもので、該B−の処理ブロック9は、このブロック専用の前記回転位相カウンタ10とタイムラッチ13を有している。そして、該回転位相カウンタ10は前記パルスB−信号と回転方向FRB−信号を入力してカウントアップまたはカウントダウンを行って、回転位置PB−を検出し出力する。また、前記タイムラッチ13は前記パルスB−信号と前記リアルタイムRTを入力し、前記回転位置PB−が更新された時刻であるキャプチャ時刻TB−を検出し出力する。
【0068】
同じく、前記B−の処理ブロック9において前記速度検出装置3-1のMPUは、制御周期ごとに前記キャプチャ時刻TB−をチェックして更新されているときは、前記メモリPB−(0)とメモリTB−(0)をそれぞれ前記メモリPB−(−1)とメモリTB−(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PB−と前記キャプチャ時刻TB−をそれぞれ前記メモリPB−(0)とメモリTB−(0)にセーブする。
【0069】
そして、前記B−の処理ブロック9内の前記速度演算16-4は後述する規則性にて、ΔPとΔTを前記(8)式と(9)式に準じて算出し、前記(2)式の演算を行って速度VB−(n)を得ることとなる。
【0070】
次に
図1において、17には本発明により検出した速度がセーブされる。該速度17には前記速度VA+(n)、速度VA−(n)、速度VB+(n)、または速度VB−(n)を本発明による規則性にて算出し処理を行った速度がセーブされる。ここでこの規則性を説明する前に、先に示した4つの課題について前記
図1にて実現する解決策を
図2から
図6にて説明する。
【0071】
始めに、
図2は前記
図13にて示した第1の課題の解決を説明する図である。該
図2の(1)、(2)、および(3)は、それぞれ前記
図13の(1)、(2)、および(3)と同じでこれの説明は割愛する。そして該
図2の(4)は前記
図1で示したパルスA+信号に相当し、前記A相信号について前記インクリメンタルエンコーダ1が正転のときは立ち上がりエッジにて、逆転のときは立ち下がりエッジにてパルス化したものである。ここで。該
図2は正転の場合を表している。そして前記4F信号と相違して、該パルスA+信号は前記A相信号のみから生成されるので、周期は元の前記A相信号と同じくT1となる。
【0072】
次に該
図2の(5)は前記
図1で示したパルスB+信号に相当し、前記B相信号について、正転のときは立ち上がりエッジにて、逆転のときは立ち下がりエッジにてパルス化したものである。そして前記4F信号と相違して、該パルスB+信号は前記B相信号のみから生成されるので、周期は元の前記B相信号と同じくT1となる。
【0073】
そして該
図2について要約すれば、前記インクリメンタルエンコーダ1の回転速度を検出するとき、A相信号とB相信号の両方から抽出した前記4F信号はゆらぎが避けられず、該4F信号から速度を検出すると精度が悪くなる。したがって、本発明の速度検出装置3-1による第1の課題の解決は、ゆらぎの少ない前記パルスA+信号から前記
図1のA+の処理ブロック6、またはパルスB+信号から前記
図1のB+の処理ブロック8により速度を検出することである。
【0074】
次に、
図3は前記
図15にて示した第2の課題の解決を説明する図である。該
図3の(1)、(2)、(3)、および(4)は、それぞれ前記
図15の(1)、(2)、(3)、および(4)と同じでこれの説明は割愛する。そして、該
図3の(5)は前記
図1で示したパルスA+信号であり、前記A1信号について前記インクリメンタルエンコーダ1が正転の場合を表している。
【0075】
ここで、前記インクリメンタルエンコーダ1が一定速度にて回転しているときはもちろん、加速中または減速中であっても、前記A相信号の周波数は前記(4)式の例のとおり高いので、該
図3の(2)A2信号において隣接する波形はほとんど等しいと言える。そして、該A2信号が前記ヒステリシスハイ電圧Vh1にクロスすることにより生成される該
図3の(5)パルスA+信号の周期は、元の波形である該
図3の(1)A1信号の周期T1と等しくなる。
また、該
図3の(6)は前記
図1で示したパルスA−信号であり、これの周期も同様に該
図3の(1)A1信号の周期T1と等しくなる。
【0076】
そして該
図3について要約すれば、前記入力インターフェイス4が内蔵するフィルタ4-1に起因して、前記A相信号から抽出した前記2FA信号から速度検出を行うとき正しく回転速度が得られなくなる。したがって、本発明の速度検出装置3-1による第2の課題の解決は、前記パルスA+信号から前記
図1のA+の処理ブロック6、またはパルスA−信号から前記
図1のA−の処理ブロック7により速度を検出することである。同様に前記B相信号について、前記パルスB+信号から前記
図1のB+の処理ブロック8、またはパルスB−信号から前記
図1のB−の処理ブロック9により速度を検出することである。
【0077】
次に、前記
図15に加えて前記
図16による第2の課題を説明したが、
図4は該
図16にて示した課題の解決を説明する図である。該
図4の(1)から(6)は、それぞれ前記
図16の(1)から(6)と同じでこれの説明は割愛する。そして、該
図4の(7)は前記
図1で示したパルスA+信号であり、前記A1信号について前記インクリメンタルエンコーダ1が正転の場合を表している。
【0078】
ここで、前記インクリメンタルエンコーダ1が一定速度にて回転しているときはもちろん、加速中または減速中であっても、前記A相信号の周波数は前記(4)式の例のとおり高いので、該
図4の(2)A2信号と(4)A4信号おいて隣接する波形はそれぞれほとんど等しいと言える。そして、該A2信号とA4信号がそれぞれヒステリシスハイ電圧Vh1、Vh2にクロスすることにより生成される該
図4の(7)パルスA+信号の周期は、元の波形である該
図4の(1)A1信号の周期T1と等しくなる。
また、該
図4の(8)は前記
図1で示したパルスA−信号であり、これの周期も同様に該
図4の(1)A1信号の周期T1と等しくなる。
【0079】
そして該
図4について要約すれば、前記入力インターフェイス4が内蔵するフィルタ4-1やフォトカプラ4-3に起因して、前記A相信号から抽出した前記2FA信号から速度検出を行うとき正しく回転速度が得られなくなる。したがって、本発明の速度検出装置3-1による第2の課題の解決は、前記パルスA+信号から前記
図1のA+の処理ブロック6、またはパルスA−信号から前記
図1のA−の処理ブロック7により速度を検出することである。同様に前記B相信号について、前記パルスB+信号から前記
図1のB+の処理ブロック8、またはパルスB−信号から前記
図1のB−の処理ブロック9により速度を検出することである。
【0080】
次に、前記信号線路2の配線距離が長いことに起因する第3の課題と、温度変化に起因する第4の課題を前記
図17にて示したが、
図5はこの第3と第4の課題の解決を説明する図である。該
図5の(1)から(5)は、それぞれ前記
図17の(1)から(5)と同じでこれの説明は割愛する。そして、該
図5の(6)は前記
図1で示したパルスA+信号であり、前記A相信号について前記インクリメンタルエンコーダ1が正転の場合を表している。
【0081】
ここでも、前記インクリメンタルエンコーダ1が一定速度にて回転しているときはもちろん、加速中または減速中であっても、前記A相信号の周波数は前記(4)式の例のとおり高いので、該
図5の(3)A2信号において隣接する波形はほとんど等しいと言える。そして、該A2信号が前記ヒステリシスハイ電圧Vh1にクロスすることにより生成される該
図5の(6)パルスA+信号の周期は、元の波形である該
図5の(1)A相信号の周期T1と等しくなる。
また、該
図5の(7)は前記
図1で示したパルスA−信号であり、これの周期も同様に該
図5の(1)A相信号の周期T1と等しくなる。
【0082】
そして該
図5について要約すれば、前記A相信号から抽出した前記2FA信号から速度検出を行うとき、前記信号線路2の配線距離が長い場合や温度変化に起因して、正しく回転速度が得られなくなる。したがって、本発明の速度検出装置3-1による第3と第4の課題の解決も、前記パルスA+信号から前記
図1のA+の処理ブロック6、またはパルスA−信号から前記
図1のA−の処理ブロック7により速度を検出することである。同様に前記B相信号について、前記パルスB+信号から前記
図1のB+の処理ブロック8、またはパルスB−信号から前記
図1のB−の処理ブロック9により速度を検出することである。
【0083】
次の実施例を説明する前に、
図6は前記
図1の動作をまとめて表したものでこれについて説明を行う。該
図6の(1)A5信号と(2)B5信号は前記入力インターフェイス4の出力を表し、該
図6の(3)は前記回転位相カウンタ10が出力する前記回転位相PA+を表している。そして前記インクリメンタルエンコーダ1は、時刻Taまでは逆転、時刻TaからTbまでは停止、時刻Tb以降は正転としている。
【0084】
そして、該時刻TaからTb間を拡大して該
図6の(4)から(14)に示し、該
図6の(4)と(5)はそれぞれ前記(1)A5信号と(2)B5信号を表しており、逆転と正転における位相関係は図示のとおりとしている。また、該
図6の(6)、(7)、および(8)はそれぞれパルスA+信号、回転方向FRA+信号、回転位相PA+を表し、該(8)回転位相PA+は図示するとおり1ずつカウントダウン、またはカウントアップする。
【0085】
次に、該
図6の(9)、(10)はパルスA−信号、回転方向FRA−信号を表し、該
図6の(11)、(12)はパルスB+信号、回転方向FRB+信号を表し、該
図6の(13)、(14)はパルスB−信号、回転方向FRB―信号を表わすものである。
【実施例2】
【0086】
前記
図1において前記速度17には、前記速度VA+(n)、速度VA−(n)、速度VB+(n)、または速度VB−(n)を本発明による規則性にて演算し処理を行った速度がセーブされる。この規則性について、前記
図1を参照し
図7および
図8にて説明を行う。
始めに該
図7において、(1)と(2)はそれぞれ前記A相信号とパルスA+信号の時間的推移を表している。そして該
図7の(1)A相信号においてT1は、前記インクリメンタルエンコーダ1が一定の速度で回転しているとき、該(1)A相信号の理論的な周期を示している。ここで該(1)A相信号の周期は、前記
図12の(1)で説明したとおり光学技術や精密技術により精度よく生成されるとは言え、該理論周期T1に対して例えば最大で15%程度の周期誤差がある。そして、該周期誤差により前記(1)A相信号から抽出した前記(2)パルスA+信号から速度を得ようとするとき、検出誤差が発生することが避けられない。
なお該(2)パルスA+信号は、前記
図4の(2)で示したとおり、前記
図7の(1)A相信号から一様にT3-1の遅れがあるとしている。
【0087】
ここで該
図7の(1)A相信号についてさらに説明すると、図中のT10、T11、およびT12は実際の周期を模擬的に表したもので、該周期T10は理論周期T1より短いとしている。しかし前記(3)式で例を示したとおり、前記インクリメンタルエンコーダ1の1回転のパルス数は固定値であり、前記周期T10が理論周期T1より短いとき、他に長い周期も存在することになる。該
図7において周期T11とT12はこれを表すもので、該周期T11は理論周期T1より長く、該周期T12は理論周期T1より短いことを表している。この例で示すように、理論周期T1より短い周期があるとき近接する周期で長い周期の波形が発生するものである。
【0088】
次に、前記
図7の状態で速度検出を行うときの様相を
図8にて説明する。該
図8の(1)、(2)、(3)、および(4)はそれぞれA相信号、パルスA+信号、前記速度検出装置3-1が内蔵するMPUの処理タイミング、および速度VA+(n)の時間的推移を表している。
始めに(1)A相信号と(2)パルスA+信号は、前記
図7の(1)および(2)と同じ信号で時間を縮小して表し、説明を容易とするため該(2)パルスA+信号は(1)A相信号から遅れなしとしている。そして、前記インクリメンタルエンコーダ1は一定の速度で回転し、前記A相信号の理論周期はT1としている。
【0089】
続いて該
図8の(3)MPUの処理は、前記速度検出装置3-1が内蔵するMPUによる速度検出タイミングを表しており、図中の時刻t1、t2、t3、t4、およびt5にて速度を検出する。また、ΔP2、ΔP3、ΔP4、およびΔP5はそれぞれの速度検出タイミングにおける回転位置偏差を表し、ΔT2、ΔT3、ΔT4、およびΔT5はそれぞれの速度検出タイミングにおけるキャプチャ時刻偏差を表している。
これをさらに速度検出タイミングt3について説明すると、速度検出タイミングt3における回転位置偏差とキャプチャ時刻偏差はそれぞれΔP3とΔT3である。そして、前記MPUは前記回転位置偏差ΔP3を前記(8)式にて演算して3とし、ΔT3も前記(9)式にて求める。そして、速度検出タイミングt3における速度VA+(3)は、前記(2)式にて、速度VA+(3)=3/ΔT3となる。
【0090】
次に前記
図8の(4)は、MPUが演算した速度VA+(n)を示し、速度検出タイミングt1、t2、t3、t4、およびt5における速度はそれぞれVA+(1)、VA+(2)、VA+(3)、VA+(4)、およびVA+(5)である。また図中のV1は、前記ロータリエンコーダ1の理論速度で固定値としている。そして速度検出タイミングt3において、キャプチャ時刻偏差ΔT3は(理論周期T1×3)であるべきところ、前記理論周期T1より短い波形が含まれた場合を想定すると、VA+(3)は前記理論速度V1より早くなるものである。
そして、次の速度検出タイミングt4において、キャプチャ時刻偏差ΔT4は(理論周期T1×3)であるべきところ、前記理論周期T1より長い波形が含まれる可能性が高くなり、これによってVA+(4)は前記理論速度V1より遅くなるものである。
【0091】
該
図8の(4)について要約すれば、前記MPUが検出する速度VA+(n)は理論速度V1に対して速い速度と遅い速度が交互に現れるものである。そして前記MPUは全ての速度検出タイミングで、漏れなく速度を検出してフィードバック制御などを実施することが重要である。そして、該速度VA+(n)について平均処理を行うか、慣性がある負荷であれば、前記インクリメンタルエンコーダ1が取り付けられたモータ等の速度制御を行うとき、極めて精度良く理論速度V1となるよう制御できるものである。
【0092】
ここでこれまで4つの速度のうち、前記A相信号に関わる速度VA+(n)を用いて説明を行ったが、これに換えて前記A相信号に関わる速度VA−(n)、前記B相信号に関わる速度VB+(n)、または前記B相信号に関わる速度VB−(n)を用いてもかまわない。しかし、速度検出タイミングごとに速度の種類を変えるのは不可であり、必ず同じ速度を連続して使用して前記速度17とする必要がある。
また、使用する速度は1つに限らず複数の速度を使用してもよい。例えば速度検出タイミングごとに常に2つの速度、例えば速度VA+(n)と速度VB+(n)を検出しこれの平均を前記速度17としてもよい。また、速度の変化により早く追従するため速度検出タイミングごとに4つの速度、速度VA+(n)、速度VA−(n)、速度VB+(n)、および速度VB−(n)の全てを検出し、これの平均を前記速度17としてもよい。
【0093】
ここで、前記
図8にて説明した上記の内容を前記
図1にて再び説明を行う。前記検出装置3-1が内蔵するMPUは速度検出タイミングごとに、前記インクリメンタルエンコーダ1の前記速度17とあらかじめ定めた速度確立レベルを比較する。そして、前記速度17が該速度確立レベル未満のとき、前記MPUは前記メモリTA+(0)、TA−(0)、TB+(0)、およびTB−(0)のうち、直近の時刻の組にて前記速度VA+(n)、速度VA−(n)、速度VB+(n)、または速度VB−(n)のうち1つを演算して前記速度17にセーブする。
【0094】
これを例により説明すると、前記メモリTA+(0)、TA−(0)、TB+(0)、およびTB−(0)のうち直近の時刻がTB+(0)とすれば、前記MPUは前記B+の処理ブロック8内のメモリPB+(0)、TB+(0)、PB+(−1)、およびTB+(−1)について、前記(8)式と(9)式に準じて次のとおりΔPとΔTを求める。
(数10)
(数11)
そして、該ΔPとΔTを前記速度演算16-3にて前記(2)式の演算を行って速度VB+(n)を求め、前記速度17にセーブするものである。
【0095】
また、前記MPUは速度検出タイミングごとに、前記インクリメンタルエンコーダ1の前記速度17と前記速度確立レベルを比較し、前記速度17が該速度確立レベル以上のとき、前記MPUは前記速度17に前回の速度検出タイミングにてセーブした組と同じ組にて前記(2)式の演算を行って、前記速度17にセーブする。
これを例により説明すると、前記速度17が該速度確立レベル以上のとき、前回の速度検出タイミングにて速度VB+(n−1)を前記速度17にセーブしているとき、前記MPUは今回の速度検出タイミングにおいても速度VB+(n)を求め前記速度17にセーブするものである。
【0096】
ここで前記速度17が該速度確立レベル以上のとき、上記では1つの組にて新しく速度を求め前記速度17にセーブしたが、複数の組の速度を求めこれの平均値を前記速度17にセーブしてもよい。これにより、前記速度検出装置3-1は、前記インクリメンタルエンコーダ1が一定速度で回転しているときは極めて正確に前記速度17を検出し、加速または減速しているときは追従性に優れた前記速度17を検出するものである。