特許第6757287号(P6757287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757287
(24)【登録日】2020年9月1日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】速度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/489 20060101AFI20200907BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   G01P3/489 D
   G01D5/244 B
【請求項の数】1
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-78028(P2017-78028)
(22)【出願日】2017年4月11日
(65)【公開番号】特開2018-179697(P2018-179697A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小谷 郁雄
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−230187(JP,A)
【文献】 特開2010−145085(JP,A)
【文献】 特開2009−236872(JP,A)
【文献】 特開2002−34274(JP,A)
【文献】 特開平6−118090(JP,A)
【文献】 米国特許第5402229(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 3/00− 3/80
G01D 5/00− 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリメンタルエンコーダと速度検出装置で構成され、
該インクリメンタルエンコーダは、回転に応じて90度位相差のA相信号とB相信号の連続した矩形波信号を出力し、
前記速度検出装置は入力インターフェイス、信号変換器、回転位置カウンタとタイムラッチ、および速度検出部を内蔵し、
該入力インターフェイスは、前記インクリメンタルエンコーダが出力するA相信号とB相信号を入力してフィルタ処理、絶縁処理、または波形整形処理を行ったA5信号とB5信号を前記信号変換器に出力し、
前記回転位置カウンタとタイムラッチはそれぞれ、前記信号変換器が出力する信号により回転位置と該回転位置を得た時刻(キャプチャ時刻)を出力し、
前記速度検出部は該回転位置とキャプチャ時刻により速度を検出する速度検出装置であって、

該速度検出装置が内蔵する
前記信号変換器は、入力した前記A5信号について前記インクリメンタルエンコーダの回転方向が正転のときは立ち上がりエッジにて、逆転のときは立ち下がりエッジにてパルスA+信号を生成するとともに、該パルスA+信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRA+信号を生成し、
同じく前記信号変換器は、入力した前記A5信号が前記インクリメンタルエンコーダの回転方向が正転のときは立ち下がりエッジにて、逆転のときは立ち上がりエッジにてパルスA−信号を生成するとともに、該パルスA−信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRA−信号を生成し、
同じく前記信号変換器は、入力した前記B5信号が前記インクリメンタルエンコーダの回転方向が正転のときは立ち上がりエッジにて、逆転のときは立ち下がりエッジにてパルスB+信号を生成するとともに、該パルスB+信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRB+信号を生成し、
同じく前記信号変換器は、入力した前記B5信号が前記インクリメンタルエンコーダの回転方向が正転のときは立ち下がりエッジにて、逆転のときは立ち上がりエッジにてパルスB−信号を生成するとともに、該パルスB−信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRB−信号を生成し、

前記速度検出装置は、4組の回転位置カウンタとタイムラッチを内蔵し、
該4組の回転位置カウンタは、アップダウンカウンタの機能を有して、それぞれ前記パルスA+信号と回転方向FRA+信号、前記パルスA―信号と回転方向FRA−信号、前記パルスB+信号と回転方向FRB+信号、および前記パルスB―信号と回転方向FRB−信号を入力して、回転位置PA+、回転位置PA−、回転位置PB+、および回転位置PB−を検出して出力し、
前記4組のタイムラッチは、それぞれ前記パルスA+信号、前記パルスA―信号、前記パルスB+信号、および前記パルスB―信号を入力して、前記回転位置PA+、回転位置PA−、回転位置PB+、および回転位置PB−が更新された時刻をキャプチャ(捕獲)してキャプチャ時刻TA+、キャプチャ時刻TA−、キャプチャ時刻TB+、およびキャプチャ時刻TB−を出力する。

前記速度検出装置が内蔵する前記速度検出部は、さらに4組のメモリを内蔵し、
1組目のメモリPA+(0)、TA+(0)、PA+(−1)、およびTA+(−1)について前記速度検出装置が内蔵するMPUは、速度検出タイミングごとに前記キャプチャ時刻TA+をチェックして更新されているときは、前記メモリPA+(0)とメモリTA+(0)をそれぞれ前記メモリPA+(−1)とメモリTA+(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PA+と前記キャプチャ時刻TA+をそれぞれ前記メモリPA+(0)とメモリTA+(0)にセーブする。
2組目のメモリPA−(0)、TA−(0)、PA−(−1)、およびTA−(−1)について前記MPUは、速度検出タイミングごとに前記キャプチャ時刻TA−をチェックし更新されているときは、前記メモリPA−(0)とメモリTA−(0)をそれぞれ前記メモリPA−(−1)とメモリTA−(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PA−と前記キャプチャ時刻TA−をそれぞれ前記メモリPA−(0)とメモリTA−(0)にセーブする。
3組目のメモリPB+(0)、TB+(0)、PB+(−1)、およびTB+(−1)について前記MPUは、速度検出タイミングごとに前記キャプチャ時刻TB+をチェックし更新されているときは、前記メモリPB+(0)とメモリTB+(0)をそれぞれ前記メモリPB+(−1)とメモリTB+(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PB+と前記キャプチャ時刻TB+をそれぞれ前記メモリPB+(0)とメモリTB+(0)にセーブする。
4組目のメモリPB−(0)、TB−(0)、PB−(−1)、およびTB−(−1)について前記MPUは、速度検出タイミングごとに前記キャプチャ時刻TB−をチェックし更新されているときは、前記メモリPB−(0)とメモリTB−(0)をそれぞれ前記メモリPB−(−1)とメモリTB−(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PB−と前記キャプチャ時刻TB−をそれぞれ前記メモリPB−(0)とメモリTB−(0)にセーブする。

次に前記速度検出装置が内蔵するMPUは速度検出タイミングごとに、前記インクリメンタルエンコーダの回転速度とあらかじめ定めた速度確立レベルを比較し、該回転速度が該速度確立レベル未満のときは、前記メモリTA+(0)、TA−(0)、TB+(0)、およびTB−(0)のうち、直近の時刻の組にて速度VA+(n)、VA−(n)、VB+(n)、またはVB−(n)のうち1つを演算して速度を出力し、
また、前記インクリメンタルエンコーダの回転速度が前記速度確立レベル以上のときは、前の速度検出タイミングにて速度を演算した組と同じ組にて連続して速度VA+(n)、VA−(n)、VB+(n)、またはVB−(n)のうち1つの速度を演算して、または複数の速度を演算し平均して、速度を出力することを特徴とする速度検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータや回転体に取り付けたインクリメンタル式ロータリエンコーダから、高精度に回転速度(本特許では回転速度を速度とも表記する)を検出する速度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータや回転体に取り付けたロータリエンコーダから回転位置や回転速度を検出しモータを制御することは従来から広く実施されている。そして、これらに関して多くの発明がなされ、たとえば特許文献1、および特許文献2の発明が開示されている。
【0003】
ここでロータリエンコーダには、回転に応じて矩形波を出力するインクリメンタル式、あるいは回転位置を絶対値で出力するアブソリュート式などの方式がある。そして、本発明はインクリメンタル式ロータリエンコーダに関するもので、これを以下においてインクリメンタルエンコーダと表記する。
【0004】
特許文献1ではインクリメンタルエンコーダが出力するA相信号、B相信号を入力とする速度検出装置の発明が開示されこれの実施例を図9に引用する。該速度検出装置はラッチ信号作成部21、1つの角度計測カウンタ22、および時刻計測カウンタ23を内蔵している。そして、前記ラッチ信号作成部21は一周期のA相信号、B相信号から4種類のエッジを検出し各エッジが検出されるごとに、前記角度計測カウンタ22と時刻計測カウンタ23が生成する位相角とサンプル時刻を4種類のエッジに分けてそれぞれラッチするとしている。
【0005】
そして、速度演算周期毎に任意の前記エッジ種類の位相角の変位(回転位相偏差)Δθとサンプル時刻の差(キャプチャ時刻偏差)Δtを検出し、回転速度ωを次の(1)式にて演算するとしている。
(数1)

かように、該特許文献1ではインクリメンタルエンコーダが出力するA相信号、B相信号から検出した任意の1つエッジ種類にて検出と演算をするので、速度検出周期が早い、精度向上を図るなどの特徴があるとしている。
【0006】
前記特許文献1は角度計測カウンタ22を有していたが、特許文献2は該角度計測カウンタを用いない速度検出装置の発明を開示している。
該特許文献2の速度検出装置では、インクリメンタルエンコーダが出力するA相信号、B相信号の一周期から4種類のエッジを検出するとともに、これの検出時刻を記録して速度演算を実施している。さらに前記エッジと速度演算周期が同時に発生したとき、該速度演算周期を所定時間だけずらす発明が開示されている。
かように、前記特許文献1および特許文献2は速度検出について種々工夫されたものである。
【0007】
ここで、従来のベーシックな速度検出方法について図10にて説明する。
図10において1、2、および3はそれぞれインクリメンタルエンコーダ、信号線路、および従来の速度検出装置である。該インクリメンタルエンコーダ1は回転に応じて連続した矩形波(パルス)を出力し、ここでは該出力が90度位相差のA相信号とB相信号とする例を示している。そして、該A相信号とB相信号は前記信号線路2を介して前記速度検出装置3に入力される。
【0008】
次に、前記速度検出装置3が内蔵する機器について説明を行う。前記図10において4、5、10はそれぞれ入力インターフェイス、信号変換器、および回転位置カウンタである。該入力インターフェイス4は前記A相信号とB相信号を入力し、それぞれフィルタ処理、波形整形処理や絶縁処理を行ってA5信号とB5信号を生成し出力する。
そして、前記信号変換器5は該A5信号とB5信号を入力し、この2つの信号から前記A相信号、またはB相信号の4倍の周波数である4F信号(または、2倍の周波数である2F信号)と回転方向を示すFR信号を出力する。そして、前記回転位置カウンタ10はアップダウンカウンタであり、該4F信号とFR信号を入力して、前記ロータリエンコーダ1の回転位置Pを出力する。
【0009】
同じく図10において、11、12、13はそれぞれ発振器、タイマ、およびタイムラッチである。該発振器11は20MHzや40MHzなど一定周期の基準周波数信号を発生し、前記タイマ12は該基準周波数信号を入力とするカウンタであって、リアルタイムRTを生成し出力する。該タイマ12はダウンカウンタ、またはアップカウンタにて構成される。
そして、前記タイムラッチ13は前記4F信号とリアルタイムRTを入力し、前記回転位置Pが更新された時刻であるキャプチャ時刻Tを出力する。
【0010】
同じく図10において15はマイクロプロセッサやデジタルシグナルプロセッサなどから構成される速度検出器であり、前記回転位置Pとキャプチャ時刻Tを一定の制御周期ごとに入力する。そして、該速度検出器15は前回制御周期と今回制御周期のキャプチャ時刻偏差ΔTと回転位置偏差ΔPを検出し、前記(1)式と同様に演算し回転速度Vを生成するものである。
(数2)

なお、マイクロプロセッサやデジタルシグナルプロセッサなどを総称して以下にMPUと表記する。
【0011】
次に図11は、上記で説明した図10の各信号の時間的推移を図示により補足して説明するものである。該図11の(1)と(2)は、それぞれ前記A相信号とB相信号の位相の変化を示し、この図の左側、中央、および右側は、それぞれ逆転、停止、および正転の場合を表し、A相信号に対してB相信号は逆転のときは90度進み、正転のときは90度遅れとしている。そして前記A5信号とB5信号は、該A相信号とB相信号と同様な位相の変化となる。
続いて該図11の(3)と(4)は、前記信号変換機5が出力する4F信号とFR信号であり、該4F信号は前記(1)A相信号と(2)B相信号の立ち上がりと立ち下りをパルス化したもので、これの周波数は前記A相信号の4倍となる。また、該FR信号は回転方向を検出した信号で、ここでは正転と逆転をそれぞれ0と1としている。
【0012】
次に図11の(5)と(6)は、それぞれ前記回転位相カウンタ10が出力する回転位相Pと、前記タイマ12が出力するリアルタイムRTの時間的推移を示している。そして、図11の(7)は前記速度検出器15の制御周期を表したものである。
ここで、以降の説明を容易とするためにひとつの数値例を示せば次のとおりがある。
前記インクリメンタルエンコーダ1の1回転のパルス数:600ppr
前記インクリメンタルエンコーダ1の回転速度:1800min−1
(数3)

このとき、前記図11の(1)A相信号と(3)4F信号のそれぞれの周波数は次のとおりとなる。
(数4)

(数5)

また前記(2)式において、ΔTは前記(2)式の制御周期160μsとすれば、ΔPは4F信号のとき、次のとおり11パルスとなる。
(数6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−118090号公報
【特許文献2】特開2010−8235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来実施されている速度の検出方法について、前記特許文献1、特許文献2、および前記図10にて示した。ここで本発明による速度検出装置は、前記インクリメンタルエンコーダ1の特性や前記速度検出装置3の回路構成、ならびにこれらの機器の設置状況や周囲温度がさまざまに異なる場合であっても、精度の良い速度の検出を安定して実現することにある。
そして、この実現のために本発明が解決しようとする課題を、従来例を説明した前記図10を元に図12から図17にて説明する。
【0015】
第1の課題について該図10を参照し図12にて説明する。該図10のインクリメンタルエンコーダ1は光学式のものが多く使用され、これについて図12にて説明を行う。該図12の(1)は該インクリメンタルエンコーダ1の構成を簡略して示すもので、回転する被検出体のスリット円板上に放射状に光学的なスリットを設け、これを発光素子、A相受光素子、およびB相受光素子により回転に応じて連続したパルスを発生する。そして、該A相受光素子とB相受光素子は、後述するA相信号とB相信号が90度位相差となるよう物理的に位置を調整して設置されている。
【0016】
前記インクリメンタルエンコーダ1は、該A相受光素子とB相受光素子の出力を波形整形して矩形波とし、前記図12の(2)と(3)に示すA相信号とB相信号を出力する。この図では、前記インクリメンタルエンコーダ1が正転にて回転するとき、前記A相信号がB相信号より位相が90度進みとしている。次に前記図12の(4)と(5)は、前記図12の(2)と(3)の点線で示す区間を拡大して示している。この図において、T1、T2、T3はそれぞれ前記A相信号やB相信号の1周期、ハイ区間、およびロー区間を示し、T4、T5、T6、およびT7は前記A相信号とB相信号により分割される4つの区間を示している。
次に前記図12の(6)は、前記A相信号とB相信号の立ち上がりと立ち下りをパルス化した4F信号であり、これの周波数は前記A相信号の4倍となる。そして従来、該4F信号にて前記インクリメンタルエンコーダ1の回転速度が検出されている。
【0017】
ここで精度の良い回転速度の検出のためには、前記T2とT3が等しいこと、前記T4、T5、T6、およびT4は相互に等しいことが重要であるが、実用において次に示す課題がある。
【0018】
前記図12の(1)において、スリット円板のスリットピッチは光学的に極めて精度よく製作され、前記A相受光素子より得られる前記図12の(4)A相信号も精度よく生成されることになり、前記T2とT3のデューティの変動もわずかなものとなり、前記図12の(5)B相信号についても同様である。しかしながら、前記A相受光素子とB相受光素子は物理的に設置されるため、相互の位相差の精度は劣るものとなる。次に、これを図13にて具体的に説明する。
【0019】
図13の(1)、(2)、(3)はそれぞれA相信号、B相信号、および4F信号の時間的推移を表し、前記図12の(4)、(5)、および(6)にそれぞれ対応している。該図13の(1)A相信号は先に示したとおり、T2とT3のデューティの変動はわずかである。一方、前記A相受光素子とB相受光素子を取り付ける精度は、前記スリット円板のスリットピッチの精度より劣るため、前記図13の(2)B相信号は(1)A相信号に対し点線で示すとおり誤差(ゆらぎ)が発生する。これにより、前記インクリメンタルエンコーダ1が一定速度で回転するとき、図13の(3)に示す4F信号の周期が乱れて正しい回転速度が得られなくなる。そして、前記インクリメンタルエンコーダ1が早く回転するほど回転速度の検出において、前記A相信号とB相信号間のゆらぎの影響は大きくなって正しい回転速度が得られなくなる課題がある。
【0020】
そしてこの課題の説明を容易とするために数値例で示せば、このゆらぎが前記区間T4からT7においてそれぞれ20%であって前記(3)式の条件のとき、前記(6)式より速度検出の誤差は1.8%(20%を11で除した値)となって製品の生産において品質に支障をきたすものである。そして、これの解決が本発明にて解決しようとする第1の課題である。
【0021】
次の課題を示すにあたり図14の説明を行う。該図14は前記図10の入力インターフェイス4の構成例を示すもので、図中のインクリメンタルエンコーダ1および信号線路2は、前記図10で同じ符号を付すものと同じ機能を有しその説明は割愛する。
【0022】
図14は、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力するA相信号とB相信号が、前記速度検出装置3に入力されるとき、通常実施されているノイズの除去や信号の歪みの整形回路などの一例を示すものである。該図14において、4-1、4-2、4-3、および4-4はそれぞれフィルタ、コンパレータ、フォトカプラ、およびコンバータであり、該フィルタ4-1の機能はノイズ除去であり、該コンパレータ4-2の機能は波形整形である。
次に前記フォトカプラ4-3は、前記インクリメンタルエンコーダ1側と該入力インターフェイス4の後続電子回路側を電気的に絶縁し、前記コンバータ4-4は該フォトカプラ4-3の出力を波形整形するものである。
そして、図中のA1からA5はA相信号について前記フィルタ4-1からコンバータ4-4のそれぞれの図示する入出力ポイントを示し、B1からB5はB相信号について同様の入出力ポイントを示している
【0023】
次に本発明が解決しようとする第2の課題について、前記図14を参照しつつ図15にて説明する。前記図14において前記入力インターフェイス4が前記フィルタ4-1とコンパレータ4-2にて構成されているとき、該図15はA相信号について各ポイントの波形を時間の推移とともに表しており、該図15の(1)A1信号、(2)A2信号、(3)A3信号はそれぞれ前記図14のポイントA1、A2、およびA3における信号の波形を示している。
【0024】
始めに、該図15の(1)A1信号は前記フィルタ4-1の入力波形で、波高値V1、周期T1としている。またあとの説明を容易とするため、ハイ区間T2-1とロー区間T2-2の時間が等しい矩形波と想定し説明する。
次に該図15の(2)A2信号は、前記コンパレータ4-2の入力波形で、この波形は前記フィルタ4-1により図示するがごとく緩やかな立ち上がりと立ち下りを有したものとなる。また前記コンパレータ4-2は通常ヒステリシス特性を有しており、図中のVh1とVl1はそれぞれ前記コンパレータ4-2のヒステリシスハイ電圧とヒステリシスロー電圧である。
【0025】
次に該図15の(3)A3信号について説明を行う。該A3信号は前記コンパレータ4-2の出力波形であり該コンパレータ4-2のヒステリシス特性のため、立ち上がりと立ち下りが前記A2信号からそれぞれ遅延時間T3-1、T3-2で示す遅れとなる。
そして、該A3信号のハイ区間とロー区間はそれぞれT4-1とT4-2となる。ここで、前記A2信号の立ち上がりと立ち下り時間が異なること、およびヒステリシスハイ電圧Vh1とヒステリシスロー電圧Vl1の存在により、前記遅延時間T3-1とT3-2は値が異なる時間となって、前記区間T4-1とT4-2も値が異なる時間となる。
【0026】
次に図15の(4)は、速度を検出するために前記A3信号の立ち上がりと立ち下りをパルス化した2FA信号(図14には図示せず)を用いる場合で、これの周波数は前記A相信号の2倍となる。しかし、該2FA信号の周期は図示するとおり前記T4-1とT4-2となってばらつきが発生する。かように前記図15の(1)から(4)にて示したとおり、前記入力インターフェイス4のハードウェアに起因して、前記A相信号から抽出した前記2FA信号から速度検出を行うとき正しい回転速度が得られなくなる課題がある。
【0027】
そしてこの課題を具体的に数値例で示せば、前記(3)式の条件で前記2FA信号のとき、ΔPは前記(6)式に換えて次のとおり5パルスとなる
(数7)

ここで、前記区間T4-1のばらつきが15%のとき、該(7)式より速度検出の誤差は3%(15%を5で除した値)となって製品の生産において品質に支障をきたすものであり、これの解消が本発明にて解決しようとする第2の課題である。
なお、前記図15はA相信号について説明したが、B相信号についても同様である。
【0028】
本発明が解決しようとする次の課題について、前記図14を参照しつつ図16にて説明する。ここで、前記図15は前記図14のフィルタ4-1とコンパレータ4-2による動作を表したが、該図16はこれに加えて前記フォトカプラ4-3とコンバータ4-4が付加されるときの動作を表している。そして、該図16の(1)、(2)、(3)は前記図15の(1)、(2)、および(3)と同じでこれの説明は割愛し、該図16の(4)A4信号、(5)A5信号は、それぞれ前記図14のポイントA4、A5における信号の時間的推移を表している。
【0029】
そして、前記フォトカプラ4-3は該図16の(3)A3信号を入力し(4)A4信号を出力するが、これは図示するがごとく緩やかな立ち上がりと立ち下りを有したものとなる。該A4信号は前記コンバータ4-4の入力となるが、図中のV2は波高値、Vh2とVl2はそれぞれ前記コンバータ4-4のヒステリシスハイ電圧とヒステリシスロー電圧である。
次に該図16の(5)A5信号について説明を行う。該A5信号は前記コンバータ4-4の出力波形であり該コンバータ4-4のヒステリシス特性のため、立ち上がりと立ち下りが前記A3信号からそれぞれ遅延時間T5-1、T5-2で示す遅れとなる。
【0030】
そして、該A5信号のハイ区間とロー区間はそれぞれT6-1とT6-2となる。ここで、前記A4信号の立ち上がりと立ち下り時間が異なること、およびヒステリシスハイ電圧Vh2とヒステリシスロー電圧Vl2の存在により、前記遅延時間T5-1とT5-2は値が異なる時間となって、前記区間T6-1とT6-2も値が異なる時間となる。
【0031】
次に図16の(6)は、速度を検出するために前記A5信号の立ち上がりと立ち下りをパルス化した2FA信号(図14には図示せず)を示すもので、これの周波数は前記A相信号の2倍となる。しかし、該2FA信号の周期は図示するとおり前記T6-1とT6-2となってばらつきが発生する。
かように該図16の(3)から(6)にて示したとおり、前記入力インターフェイス4のハードウェアに起因して、前記A相信号だけから抽出した前記2FA信号から速度検出を行うときも正しい回転速度が得られなくなり、これは、前記図15で示した第2の課題と同様であり、前記コンパレータ4-2や前記フォトカプラ4-3をともに設置するなどの回路構成により誤差が累積することとなる。なお、該図16はA相信号について説明したが、B相信号についても同様である。
【0032】
すなわち、前記図14の入力インターフェイス4において、必要とされる機能の例として挙げた前記フィルタ4-1およびフォトカプラ4-3など、波形を変形する複数の回路構成があっても、正確な速度を検出することが第2の課題である。
【0033】
次に本発明が解決しようとする第3の課題について、前記図14を参照しつつ図17にて説明する。該図17は、前記図14において前記信号線路2の配線距離が長いとき、前記入力インターフェイス4の動作を示すものである。
【0034】
始めに、該図17の(1)A相信号は前記インクリメンタルエンコーダ1の出力波形で、波高値V1、周期T1としている。またあとの説明を容易とするため、ハイ区間T2-1とロー区間T2-2の時間が等しい矩形波と想定し説明する。
そして該図17の(2)A1信号は、前記入力インターフェイス4が内蔵するフィルタ4-1の入力波形で、前記信号線路2の配線距離が長いため該信号線路2の特性インピーダンスによって、図示するがごとく緩やかな立ち上がりと立ち下りを有するとともに、波高値も前記のV1からV3にドロップしたものとなる。
【0035】
次に図17の(3)A2信号において、実線は前記フィルタ4-1の出力を表し、点線は比較のため該フィルタ4-1の入力となる前記(2)A1信号を重ねて表している。またこの図でV1とV3は前記(2)A1信号にて説明のものであり、V4は該フィルタ4-1の出力の波高値である。該(3)A2信号は前記信号線路2の配線距離が長いため、先に説明した前記図15の(2)A1信号よりさらに変形されたものとなる。
該(3)A2信号は前記コンパレータ4-2の入力でもあり、ヒステリシスハイ電圧Vh1とヒステリシスロー電圧Vl1も示している。
【0036】
次に該図17の(4)A3信号について、該A3信号は前記コンパレータ4-2の出力波形であり該コンパレータ4-2のヒステリシス特性のため、立ち上がりと立ち下りが前記A2信号からそれぞれ遅延時間T7-1、T7-2で示す遅れとなる。
そして、該A3信号のハイ区間とロー区間はそれぞれT8-1とT8-2となる。ここで、前記A2信号の立ち上がりと立ち下り時間が異なること、およびヒステリシスハイ電圧Vh1とヒステリシスロー電圧Vl1の存在により、前記遅延時間T7-1とT7-2は値が異なる時間となって、前記区間T8-1とT8-2も値が異なる時間となる。
【0037】
次に図17の(5)は前記図15の(4)と同様に、速度を検出するために前記A3信号の立ち上がりと立ち下りをパルス化した2FA信号(前記図14には図示せず)を示すもので、これの周波数は前記A相信号の2倍となる。しかし、該2FA信号の周期は図示するとおり前記T8-1とT8-2となってばらつきが発生する。かように前記図17の(2)にて示したとおり、前記信号線路2の配線距離が長いため前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する波形が変形され、前記A相信号から抽出した前記2FA信号から速度検出を行うとき正しい回転速度が得られなくなり、これの解決が第3の課題である。
なお、前記図17はA相信号について説明したが、B相信号についても同様である。
【0038】
ここで、前記図17の(2)A1信号と(3)A3信号に示すとおり、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号とB相信号が変形して伝達されることを示した。しかしこれは、前記信号線路2の配線距離が長いときのみならず、各装置が設置された環境、室温、および装置の稼働による温度変化により、前記A相信号とB相信号の波形がさらに変形されて、前記図17の(5)2FA信号において前記区間T8-1とT8-2の時間が時々刻々と変動するに至り、該2FA信号から速度検出を行うとき正しい回転速度が得られなくなり、これの解決が第4の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0039】
インクリメンタルエンコーダと速度検出装置で構成され、該インクリメンタルエンコーダは、回転に応じて90度位相差のA相信号とB相信号の連続した矩形波信号を出力し、該速度検出装置は入力インターフェイス、信号変換器、回転位置カウンタとタイムラッチ、および速度検出部を内蔵している。
【0040】
前記入力インターフェイスは、前記インクリメンタルエンコーダが出力するA相信号とB相信号を入力してフィルタ処理、絶縁処理、または波形整形処理を行ったA5信号とB5信号を前記信号変換器に出力し、前記回転位置カウンタとタイムラッチはそれぞれ、前記信号変換器が出力する信号により回転位置と該回転位置を得た時刻(キャプチャ時刻)を出力する。そして本発明は、前記速度検出部は該回転位置とキャプチャ時刻により速度を検出する速度検出装置に関するものである。
【0041】
さらに説明を加えると、該速度検出装置が内蔵する前記信号変換器は、入力した前記A5信号について前記インクリメンタルエンコーダの回転方向が正転のときは立ち上がりエッジにて、逆転のときは立ち下がりエッジにてパルスA+信号を生成するとともに、該パルスA+信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRA+信号を生成する。
同じく前記信号変換器は、入力した前記A5信号が前記インクリメンタルエンコーダの回転方向が正転のときは立ち下がりエッジにて、逆転のときは立ち上がりエッジにてパルスA−信号を生成するとともに、該パルスA−信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRA−信号を生成しする。
【0042】
同じく前記信号変換器は、入力した前記B5信号が前記インクリメンタルエンコーダの回転方向が正転のときは立ち上がりエッジにて、逆転のときは立ち下がりエッジにてパルスB+信号を生成するとともに、該パルスB+信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRB+信号を生成する。
同じく前記信号変換器は、入力した前記B5信号が前記インクリメンタルエンコーダの回転方向が正転のときは立ち下がりエッジにて、逆転のときは立ち上がりエッジにてパルスB−信号を生成するとともに、該パルスB−信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRB−信号を生成する。
【0043】
さらに前記速度検出装置は、4組の回転位置カウンタとタイムラッチを内蔵し、該4組の回転位置カウンタは、アップダウンカウンタの機能を有して、それぞれ前記パルスA+信号と回転方向FRA+信号、前記パルスA―信号と回転方向FRA−信号、前記パルスB+信号と回転方向FRB+信号、および前記パルスB―信号と回転方向FRB−信号を入力して、回転位置PA+、回転位置PA−、回転位置PB+、および回転位置PB−を検出して出力する。
また前記4組のタイムラッチは、それぞれ前記パルスA+信号、前記パルスA―信号、前記パルスB+信号、および前記パルスB―信号を入力して、前記回転位置PA+、回転位置PA−、回転位置PB+、および回転位置PB−が更新された時刻をキャプチャ(捕獲)してキャプチャ時刻TA+、キャプチャ時刻TA−、キャプチャ時刻TB+、およびキャプチャ時刻TB−を出力する。
【0044】
そして、前記速度検出装置が内蔵する前記速度検出部は、さらに4組のメモリを内蔵し、1組目のメモリPA+(0)、TA+(0)、PA+(−1)、およびTA+(−1)について前記速度検出装置が内蔵するMPUは、速度検出タイミングごとに前記キャプチャ時刻TA+をチェックして更新されているときは、前記メモリPA+(0)とメモリTA+(0)をそれぞれ前記メモリPA+(−1)とメモリTA+(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PA+と前記キャプチャ時刻TA+をそれぞれ前記メモリPA+(0)とメモリTA+(0)にセーブする。
次に、2組目のメモリPA−(0)、TA−(0)、PA−(−1)、およびTA−(−1)について前記MPUは、速度検出タイミングごとに前記キャプチャ時刻TA−をチェックし更新されているときは、前記メモリPA−(0)とメモリTA−(0)をそれぞれ前記メモリPA−(−1)とメモリTA−(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PA−と前記キャプチャ時刻TA−をそれぞれ前記メモリPA−(0)とメモリTA−(0)にセーブする。
【0045】
また、3組目のメモリPB+(0)、TB+(0)、PB+(−1)、およびTB+(−1)について前記MPUは、速度検出タイミングごとに前記キャプチャ時刻TB+をチェックし更新されているときは、前記メモリPB+(0)とメモリTB+(0)をそれぞれ前記メモリPB+(−1)とメモリTB+(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PB+と前記キャプチャ時刻TB+をそれぞれ前記メモリPB+(0)とメモリTB+(0)にセーブする。
そして、4組目のメモリPB−(0)、TB−(0)、PB−(−1)、およびTB−(−1)について前記MPUは、速度検出タイミングごとに前記キャプチャ時刻TB−をチェックし更新されているときは、前記メモリPB−(0)とメモリTB−(0)をそれぞれ前記メモリPB−(−1)とメモリTB−(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PB−と前記キャプチャ時刻TB−をそれぞれ前記メモリPB−(0)とメモリTB−(0)にセーブする。
【0046】
次に、前記速度検出装置が内蔵するMPUは速度検出タイミングごとに、前記インクリメンタルエンコーダの回転速度とあらかじめ定めた速度確立レベルを比較する。そして、該回転速度が該速度確立レベル未満のとき、前記速度検出装置は前記メモリTA+(0)、TA−(0)、TB+(0)、およびTB−(0)のうち、直近の時刻の組にて速度VA+(n)、VA−(n)、VB+(n)、またはVB−(n)のうち1つを演算して速度を出力する。
【0047】
また、前記インクリメンタルエンコーダの回転速度が前記速度確立レベル以上のときは、前の速度検出タイミングにて速度を演算した組と同じ組にて連続して速度VA+(n)、VA−(n)、VB+(n)、またはVB−(n)のうち1つの速度を演算して、または複数の速度を演算し平均して、速度を出力することを特徴とする速度検出装置である。
【発明の効果】
【0048】
以上で説明したとおり、インクリメンタルエンコーダから速度を検出するとき、インクリメンタルエンコーダと速度検出装置間の信号線路が長い場合であっても、速度検出装置の入力インターフェイスがどの様な回路構成であっても、また周囲温度が高い低いにかかわらず、常にインクリメンタルエンコーダの精度を損なうことなく精度良く安定した速度を検出する速度検出装置を実現する。これにより本発明による速度検出装置を用いて、電動機の回転速度や搬送装置の速度を精度よく検出して、高品質な製品の生産を実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の実施例の構成を説明する図である。
図2】インクリメンタルエンコーダの出力を説明する図である。
図3】本発明の入力インターフェイスの動作を説明する図である。
図4】本発明の入力インターフェイスの動作を説明する図(その2)である。
図5】本発明の入力インターフェイスの動作を説明する図(その3)である。
図6】回転位相カウンタの動作を説明する図である。
図7】インクリメンタルエンコーダの出力を説明する図(その2)である。
図8】速度検出を説明する図である。
図9】特許文献1の実施例である。
図10】速度検出の従来例を説明する図である。
図11】速度検出装置の動作を説明する図である。
図12】インクリメンタルエンコーダを説明する図である。
図13】インクリメンタルエンコーダの出力を説明する図(その3)である。
図14】入力インターフェイスの構成例である。
図15】入力インターフェイスの動作を説明する図である。
図16】入力インターフェイスの動作を説明する図(その2)である。
図17】入力インターフェイスの動作を説明する図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に本発明の実施例の図を示して説明を行う。図1は本発明の実施例を示し、図2図3図4図5図6図7、および図8は該図1の動作を補足して説明するものである。
【実施例1】
【0051】
図1は本発明による速度制御装置3-1の実施例の構成を説明する図である。該図1において、インクリメンタルエンコーダ1、信号線路2、入力インターフェイス4、回転位置カウンタ10、発振器11、タイマ12、およびタイムラッチ13は、前記図10で同じ符号を付すものと同じ機能を有しておりこれの説明は割愛する。そして、速度検出装置3-1、信号変換器5-1、および速度検出部15-1が本発明によるものである。
【0052】
始めに前記速度検出装置3-1が内蔵する信号変換器5-1について説明を行う。該信号変換器5-1は前記入力インターフェイス4が出力する前記A5信号とB5信号を入力し、この2つの信号から4組のパルス列と回転方向信号を検出し出力する。
そして、該パルス列と回転方向信号の1組目を説明すると、該信号変換器5-1は入力した前記A5信号について、前記インクリメンタルエンコーダ1の回転方向が正転のときは立ち上がりエッジにて、逆転のときは立ち下がりエッジにてパルスA+信号を生成して出力するとともに、該パルスA+信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRA+信号を生成し出力する。
【0053】
次に、前記パルス列と回転方向信号の2組目を説明すると、前記信号変換器5-1は入力した前記A5信号について、前記インクリメンタルエンコーダ1の回転方向が正転のときは立ち下がりエッジにて、逆転のときは立ち上がりエッジにてパルスA-信号を生成して出力するとともに、該パルスA-信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRA-信号を生成し出力する。
【0054】
次に、前記パルス列と回転方向信号の3組目を説明すると、前記信号変換器5-1は入力した前記B5信号について、前記インクリメンタルエンコーダ1の回転方向が正転のときは立ち上がりエッジにて、逆転のときは立ち下がりエッジにてパルスB+信号を生成して出力するとともに、該パルスB+信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRB+信号を生成し出力する。
【0055】
そして、前記パルス列と回転方向信号の4組目を説明すると、前記信号変換器5-1は入力した前記B5信号について、前記インクリメンタルエンコーダ1の回転方向が正転のときは立ち下がりエッジにて、逆転のときは立ち上がりエッジにてパルスB-信号を生成して出力するとともに、該パルスB-信号が生成されたときの回転方向を示す回転方向FRB-信号を生成し出力する。
かようにして、前記信号変換器5-1は4組のパルス列と回転方向信号を検出し出力する。
【0056】
次に前記図1において、点線で示す6は1組目の前記パルスA+信号と回転方向FRA+信号の処理を行うA+の処理ブロックである。同様に点線で示す7,8、および9は、それぞれ2組目の前記パルスA−信号と回転方向FRA−信号のA−の処理ブロック、3組目の前記パルスB+信号と回転方向FRB+信号のB+の処理ブロック、および4組目の前記パルスB−信号と回転方向FRB−信号のB−の処理ブロックであり、次にこれらについて順次説明する。
【0057】
始めに前記A+の処理ブロック6は、このブロック専用の前記回転位相カウンタ10とタイムラッチ13を有している。そして、該回転位相カウンタ10は前記パルスA+信号と回転方向FRA+信号を入力してカウントアップまたはカウントダウンを行って、回転位置PA+を検出し出力する。また、前記タイムラッチ13は前記パルスA+信号と前記リアルタイムRTを入力し、前記回転位置PA+が更新された時刻であるキャプチャ時刻TA+を検出し出力する。
【0058】
ここで前記速度検出装置3-1は図示しないMPUを内蔵し、前記速度検出部15-1は回転位置とキャプチャ用の4組のメモリを内蔵している。そして、該1組目は前記A+の処理ブロック6内のメモリPA+(0)、TA+(0)、PA+(−1)、およびTA+(−1)であり、2組目は前記A−の処理ブロック7内のメモリPA−(0)、TA−(0)、PA−(−1)、およびTA−(−1)であり、3組目は前記B+の処理ブロック8内のメモリPB+(0)、TB+(0)、PB+(−1)、およびTB+(−1)であり、4組目は前記B−の処理ブロック9内のメモリPB−(0)、TB−(0)、PB−(−1)、およびTB−(−1)である。
【0059】
そして、前記A+の処理ブロック6において前記速度検出装置3-1のMPUは、制御周期ごとに前記キャプチャ時刻TA+をチェックして更新されているときは、前記メモリPA+(0)とメモリTA+(0)をそれぞれ前記メモリPA+(−1)とメモリTA+(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PA+と前記キャプチャ時刻TA+をそれぞれ前記メモリPA+(0)とメモリTA+(0)にセーブする。
【0060】
次に、前記速度検出部15-1は速度演算器16を内蔵し、該速度演算器16は16-1、16-2、16-3、および16-4に示す4つの速度演算を実行するもので、それぞれは前記A+の処理ブロック6、A−の処理ブロック7、B+の処理ブロック8、およびB−の処理ブロック9に属している。
そして、前記A+の処理ブロック6内の前記速度演算16-1は後述する規則性にて、ΔPとΔTを次の(8)式と(9)式により算出し前記(2)式の演算を行って速度VA+(n)を得ることとなる。
(数8)

(数9)
【0061】
以上で前記A+の処理ブロック6の処理について説明したが、これと同様に前記A−の処理ブロック7は前記パルスA−信号と回転方向FRA−信号の処理を行う。
すなわち前記図1のA−の処理ブロック7は、このブロック専用の前記回転位相カウンタ10とタイムラッチ13を有している。そして、該回転位相カウンタ10は前記パルスA−信号と回転方向FRA−信号を入力してカウントアップまたはカウントダウンを行って、回転位置PA−を検出し出力する。また、前記タイムラッチ13は前記パルスA−信号と前記リアルタイムRTを入力し、前記回転位置PA−が更新された時刻であるキャプチャ時刻TA−を検出し出力する。
【0062】
同じく、前記A−の処理ブロック7において前記速度検出装置3-1のMPUは、制御周期ごとに前記キャプチャ時刻TA−をチェックして更新されているときは、前記メモリPA−(0)とメモリTA−(0)をそれぞれ前記メモリPA−(−1)とメモリTA−(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PA−と前記キャプチャ時刻TA−をそれぞれ前記メモリPA−(0)とメモリTA−(0)にセーブする。
【0063】
そして、前記A−の処理ブロック7内の前記速度演算16-2は後述する規則性にて、ΔPとΔTを前記(8)式と(9)式に準じて算出し、前記(2)式の演算を行って速度VA−(n)を得ることとなる。
【0064】
次に、前記図1のB+の処理ブロック8は前記パルスB+信号と回転方向FRB+信号の処理を行うもので、該B+の処理ブロック8は、このブロック専用の前記回転位相カウンタ10とタイムラッチ13を有している。そして、該回転位相カウンタ10は前記パルスB+信号と回転方向FRB+信号を入力してカウントアップまたはカウントダウンを行って、回転位置PB+を検出し出力する。また、前記タイムラッチ13は前記パルスB+信号と前記リアルタイムRTを入力し、前記回転位置PB+が更新された時刻であるキャプチャ時刻TB+を検出し出力する。
【0065】
同じく、前記B+の処理ブロック8において前記速度検出装置3-1のMPUは、制御周期ごとに前記キャプチャ時刻TB+をチェックして更新されているときは、前記メモリPB+(0)とメモリTB+(0)をそれぞれ前記メモリPB+(−1)とメモリTB+(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PB+と前記キャプチャ時刻TB+をそれぞれ前記メモリPB+(0)とメモリTB+(0)にセーブする。
【0066】
そして、前記B+の処理ブロック8内の前記速度演算16-3は後述する規則性にて、ΔPとΔTを前記(8)式と(9)式に準じて算出し、前記(2)式の演算を行って速度VB+(n)を得ることとなる。
【0067】
次に、前記図1のB−の処理ブロック9は前記パルスB−信号と回転方向FRB−信号の処理を行うもので、該B−の処理ブロック9は、このブロック専用の前記回転位相カウンタ10とタイムラッチ13を有している。そして、該回転位相カウンタ10は前記パルスB−信号と回転方向FRB−信号を入力してカウントアップまたはカウントダウンを行って、回転位置PB−を検出し出力する。また、前記タイムラッチ13は前記パルスB−信号と前記リアルタイムRTを入力し、前記回転位置PB−が更新された時刻であるキャプチャ時刻TB−を検出し出力する。
【0068】
同じく、前記B−の処理ブロック9において前記速度検出装置3-1のMPUは、制御周期ごとに前記キャプチャ時刻TB−をチェックして更新されているときは、前記メモリPB−(0)とメモリTB−(0)をそれぞれ前記メモリPB−(−1)とメモリTB−(−1)にセーブしたあと、前記回転位置PB−と前記キャプチャ時刻TB−をそれぞれ前記メモリPB−(0)とメモリTB−(0)にセーブする。
【0069】
そして、前記B−の処理ブロック9内の前記速度演算16-4は後述する規則性にて、ΔPとΔTを前記(8)式と(9)式に準じて算出し、前記(2)式の演算を行って速度VB−(n)を得ることとなる。
【0070】
次に図1において、17には本発明により検出した速度がセーブされる。該速度17には前記速度VA+(n)、速度VA−(n)、速度VB+(n)、または速度VB−(n)を本発明による規則性にて算出し処理を行った速度がセーブされる。ここでこの規則性を説明する前に、先に示した4つの課題について前記図1にて実現する解決策を図2から図6にて説明する。
【0071】
始めに、図2は前記図13にて示した第1の課題の解決を説明する図である。該図2の(1)、(2)、および(3)は、それぞれ前記図13の(1)、(2)、および(3)と同じでこれの説明は割愛する。そして該図2の(4)は前記図1で示したパルスA+信号に相当し、前記A相信号について前記インクリメンタルエンコーダ1が正転のときは立ち上がりエッジにて、逆転のときは立ち下がりエッジにてパルス化したものである。ここで。該図2は正転の場合を表している。そして前記4F信号と相違して、該パルスA+信号は前記A相信号のみから生成されるので、周期は元の前記A相信号と同じくT1となる。
【0072】
次に該図2の(5)は前記図1で示したパルスB+信号に相当し、前記B相信号について、正転のときは立ち上がりエッジにて、逆転のときは立ち下がりエッジにてパルス化したものである。そして前記4F信号と相違して、該パルスB+信号は前記B相信号のみから生成されるので、周期は元の前記B相信号と同じくT1となる。
【0073】
そして該図2について要約すれば、前記インクリメンタルエンコーダ1の回転速度を検出するとき、A相信号とB相信号の両方から抽出した前記4F信号はゆらぎが避けられず、該4F信号から速度を検出すると精度が悪くなる。したがって、本発明の速度検出装置3-1による第1の課題の解決は、ゆらぎの少ない前記パルスA+信号から前記図1のA+の処理ブロック6、またはパルスB+信号から前記図1のB+の処理ブロック8により速度を検出することである。
【0074】
次に、図3は前記図15にて示した第2の課題の解決を説明する図である。該図3の(1)、(2)、(3)、および(4)は、それぞれ前記図15の(1)、(2)、(3)、および(4)と同じでこれの説明は割愛する。そして、該図3の(5)は前記図1で示したパルスA+信号であり、前記A1信号について前記インクリメンタルエンコーダ1が正転の場合を表している。
【0075】
ここで、前記インクリメンタルエンコーダ1が一定速度にて回転しているときはもちろん、加速中または減速中であっても、前記A相信号の周波数は前記(4)式の例のとおり高いので、該図3の(2)A2信号において隣接する波形はほとんど等しいと言える。そして、該A2信号が前記ヒステリシスハイ電圧Vh1にクロスすることにより生成される該図3の(5)パルスA+信号の周期は、元の波形である該図3の(1)A1信号の周期T1と等しくなる。
また、該図3の(6)は前記図1で示したパルスA−信号であり、これの周期も同様に該図3の(1)A1信号の周期T1と等しくなる。
【0076】
そして該図3について要約すれば、前記入力インターフェイス4が内蔵するフィルタ4-1に起因して、前記A相信号から抽出した前記2FA信号から速度検出を行うとき正しく回転速度が得られなくなる。したがって、本発明の速度検出装置3-1による第2の課題の解決は、前記パルスA+信号から前記図1のA+の処理ブロック6、またはパルスA−信号から前記図1のA−の処理ブロック7により速度を検出することである。同様に前記B相信号について、前記パルスB+信号から前記図1のB+の処理ブロック8、またはパルスB−信号から前記図1のB−の処理ブロック9により速度を検出することである。
【0077】
次に、前記図15に加えて前記図16による第2の課題を説明したが、図4は該図16にて示した課題の解決を説明する図である。該図4の(1)から(6)は、それぞれ前記図16の(1)から(6)と同じでこれの説明は割愛する。そして、該図4の(7)は前記図1で示したパルスA+信号であり、前記A1信号について前記インクリメンタルエンコーダ1が正転の場合を表している。
【0078】
ここで、前記インクリメンタルエンコーダ1が一定速度にて回転しているときはもちろん、加速中または減速中であっても、前記A相信号の周波数は前記(4)式の例のとおり高いので、該図4の(2)A2信号と(4)A4信号おいて隣接する波形はそれぞれほとんど等しいと言える。そして、該A2信号とA4信号がそれぞれヒステリシスハイ電圧Vh1、Vh2にクロスすることにより生成される該図4の(7)パルスA+信号の周期は、元の波形である該図4の(1)A1信号の周期T1と等しくなる。
また、該図4の(8)は前記図1で示したパルスA−信号であり、これの周期も同様に該図4の(1)A1信号の周期T1と等しくなる。
【0079】
そして該図4について要約すれば、前記入力インターフェイス4が内蔵するフィルタ4-1やフォトカプラ4-3に起因して、前記A相信号から抽出した前記2FA信号から速度検出を行うとき正しく回転速度が得られなくなる。したがって、本発明の速度検出装置3-1による第2の課題の解決は、前記パルスA+信号から前記図1のA+の処理ブロック6、またはパルスA−信号から前記図1のA−の処理ブロック7により速度を検出することである。同様に前記B相信号について、前記パルスB+信号から前記図1のB+の処理ブロック8、またはパルスB−信号から前記図1のB−の処理ブロック9により速度を検出することである。
【0080】
次に、前記信号線路2の配線距離が長いことに起因する第3の課題と、温度変化に起因する第4の課題を前記図17にて示したが、図5はこの第3と第4の課題の解決を説明する図である。該図5の(1)から(5)は、それぞれ前記図17の(1)から(5)と同じでこれの説明は割愛する。そして、該図5の(6)は前記図1で示したパルスA+信号であり、前記A相信号について前記インクリメンタルエンコーダ1が正転の場合を表している。
【0081】
ここでも、前記インクリメンタルエンコーダ1が一定速度にて回転しているときはもちろん、加速中または減速中であっても、前記A相信号の周波数は前記(4)式の例のとおり高いので、該図5の(3)A2信号において隣接する波形はほとんど等しいと言える。そして、該A2信号が前記ヒステリシスハイ電圧Vh1にクロスすることにより生成される該図5の(6)パルスA+信号の周期は、元の波形である該図5の(1)A相信号の周期T1と等しくなる。
また、該図5の(7)は前記図1で示したパルスA−信号であり、これの周期も同様に該図5の(1)A相信号の周期T1と等しくなる。
【0082】
そして該図5について要約すれば、前記A相信号から抽出した前記2FA信号から速度検出を行うとき、前記信号線路2の配線距離が長い場合や温度変化に起因して、正しく回転速度が得られなくなる。したがって、本発明の速度検出装置3-1による第3と第4の課題の解決も、前記パルスA+信号から前記図1のA+の処理ブロック6、またはパルスA−信号から前記図1のA−の処理ブロック7により速度を検出することである。同様に前記B相信号について、前記パルスB+信号から前記図1のB+の処理ブロック8、またはパルスB−信号から前記図1のB−の処理ブロック9により速度を検出することである。
【0083】
次の実施例を説明する前に、図6は前記図1の動作をまとめて表したものでこれについて説明を行う。該図6の(1)A5信号と(2)B5信号は前記入力インターフェイス4の出力を表し、該図6の(3)は前記回転位相カウンタ10が出力する前記回転位相PA+を表している。そして前記インクリメンタルエンコーダ1は、時刻Taまでは逆転、時刻TaからTbまでは停止、時刻Tb以降は正転としている。
【0084】
そして、該時刻TaからTb間を拡大して該図6の(4)から(14)に示し、該図6の(4)と(5)はそれぞれ前記(1)A5信号と(2)B5信号を表しており、逆転と正転における位相関係は図示のとおりとしている。また、該図6の(6)、(7)、および(8)はそれぞれパルスA+信号、回転方向FRA+信号、回転位相PA+を表し、該(8)回転位相PA+は図示するとおり1ずつカウントダウン、またはカウントアップする。
【0085】
次に、該図6の(9)、(10)はパルスA−信号、回転方向FRA−信号を表し、該図6の(11)、(12)はパルスB+信号、回転方向FRB+信号を表し、該図6の(13)、(14)はパルスB−信号、回転方向FRB―信号を表わすものである。
【実施例2】
【0086】
前記図1において前記速度17には、前記速度VA+(n)、速度VA−(n)、速度VB+(n)、または速度VB−(n)を本発明による規則性にて演算し処理を行った速度がセーブされる。この規則性について、前記図1を参照し図7および図8にて説明を行う。
始めに該図7において、(1)と(2)はそれぞれ前記A相信号とパルスA+信号の時間的推移を表している。そして該図7の(1)A相信号においてT1は、前記インクリメンタルエンコーダ1が一定の速度で回転しているとき、該(1)A相信号の理論的な周期を示している。ここで該(1)A相信号の周期は、前記図12の(1)で説明したとおり光学技術や精密技術により精度よく生成されるとは言え、該理論周期T1に対して例えば最大で15%程度の周期誤差がある。そして、該周期誤差により前記(1)A相信号から抽出した前記(2)パルスA+信号から速度を得ようとするとき、検出誤差が発生することが避けられない。
なお該(2)パルスA+信号は、前記図4の(2)で示したとおり、前記図7の(1)A相信号から一様にT3-1の遅れがあるとしている。
【0087】
ここで該図7の(1)A相信号についてさらに説明すると、図中のT10、T11、およびT12は実際の周期を模擬的に表したもので、該周期T10は理論周期T1より短いとしている。しかし前記(3)式で例を示したとおり、前記インクリメンタルエンコーダ1の1回転のパルス数は固定値であり、前記周期T10が理論周期T1より短いとき、他に長い周期も存在することになる。該図7において周期T11とT12はこれを表すもので、該周期T11は理論周期T1より長く、該周期T12は理論周期T1より短いことを表している。この例で示すように、理論周期T1より短い周期があるとき近接する周期で長い周期の波形が発生するものである。
【0088】
次に、前記図7の状態で速度検出を行うときの様相を図8にて説明する。該図8の(1)、(2)、(3)、および(4)はそれぞれA相信号、パルスA+信号、前記速度検出装置3-1が内蔵するMPUの処理タイミング、および速度VA+(n)の時間的推移を表している。
始めに(1)A相信号と(2)パルスA+信号は、前記図7の(1)および(2)と同じ信号で時間を縮小して表し、説明を容易とするため該(2)パルスA+信号は(1)A相信号から遅れなしとしている。そして、前記インクリメンタルエンコーダ1は一定の速度で回転し、前記A相信号の理論周期はT1としている。
【0089】
続いて該図8の(3)MPUの処理は、前記速度検出装置3-1が内蔵するMPUによる速度検出タイミングを表しており、図中の時刻t1、t2、t3、t4、およびt5にて速度を検出する。また、ΔP2、ΔP3、ΔP4、およびΔP5はそれぞれの速度検出タイミングにおける回転位置偏差を表し、ΔT2、ΔT3、ΔT4、およびΔT5はそれぞれの速度検出タイミングにおけるキャプチャ時刻偏差を表している。
これをさらに速度検出タイミングt3について説明すると、速度検出タイミングt3における回転位置偏差とキャプチャ時刻偏差はそれぞれΔP3とΔT3である。そして、前記MPUは前記回転位置偏差ΔP3を前記(8)式にて演算して3とし、ΔT3も前記(9)式にて求める。そして、速度検出タイミングt3における速度VA+(3)は、前記(2)式にて、速度VA+(3)=3/ΔT3となる。
【0090】
次に前記図8の(4)は、MPUが演算した速度VA+(n)を示し、速度検出タイミングt1、t2、t3、t4、およびt5における速度はそれぞれVA+(1)、VA+(2)、VA+(3)、VA+(4)、およびVA+(5)である。また図中のV1は、前記ロータリエンコーダ1の理論速度で固定値としている。そして速度検出タイミングt3において、キャプチャ時刻偏差ΔT3は(理論周期T1×3)であるべきところ、前記理論周期T1より短い波形が含まれた場合を想定すると、VA+(3)は前記理論速度V1より早くなるものである。
そして、次の速度検出タイミングt4において、キャプチャ時刻偏差ΔT4は(理論周期T1×3)であるべきところ、前記理論周期T1より長い波形が含まれる可能性が高くなり、これによってVA+(4)は前記理論速度V1より遅くなるものである。
【0091】
図8の(4)について要約すれば、前記MPUが検出する速度VA+(n)は理論速度V1に対して速い速度と遅い速度が交互に現れるものである。そして前記MPUは全ての速度検出タイミングで、漏れなく速度を検出してフィードバック制御などを実施することが重要である。そして、該速度VA+(n)について平均処理を行うか、慣性がある負荷であれば、前記インクリメンタルエンコーダ1が取り付けられたモータ等の速度制御を行うとき、極めて精度良く理論速度V1となるよう制御できるものである。
【0092】
ここでこれまで4つの速度のうち、前記A相信号に関わる速度VA+(n)を用いて説明を行ったが、これに換えて前記A相信号に関わる速度VA−(n)、前記B相信号に関わる速度VB+(n)、または前記B相信号に関わる速度VB−(n)を用いてもかまわない。しかし、速度検出タイミングごとに速度の種類を変えるのは不可であり、必ず同じ速度を連続して使用して前記速度17とする必要がある。
また、使用する速度は1つに限らず複数の速度を使用してもよい。例えば速度検出タイミングごとに常に2つの速度、例えば速度VA+(n)と速度VB+(n)を検出しこれの平均を前記速度17としてもよい。また、速度の変化により早く追従するため速度検出タイミングごとに4つの速度、速度VA+(n)、速度VA−(n)、速度VB+(n)、および速度VB−(n)の全てを検出し、これの平均を前記速度17としてもよい。
【0093】
ここで、前記図8にて説明した上記の内容を前記図1にて再び説明を行う。前記検出装置3-1が内蔵するMPUは速度検出タイミングごとに、前記インクリメンタルエンコーダ1の前記速度17とあらかじめ定めた速度確立レベルを比較する。そして、前記速度17が該速度確立レベル未満のとき、前記MPUは前記メモリTA+(0)、TA−(0)、TB+(0)、およびTB−(0)のうち、直近の時刻の組にて前記速度VA+(n)、速度VA−(n)、速度VB+(n)、または速度VB−(n)のうち1つを演算して前記速度17にセーブする。
【0094】
これを例により説明すると、前記メモリTA+(0)、TA−(0)、TB+(0)、およびTB−(0)のうち直近の時刻がTB+(0)とすれば、前記MPUは前記B+の処理ブロック8内のメモリPB+(0)、TB+(0)、PB+(−1)、およびTB+(−1)について、前記(8)式と(9)式に準じて次のとおりΔPとΔTを求める。
(数10)

(数11)

そして、該ΔPとΔTを前記速度演算16-3にて前記(2)式の演算を行って速度VB+(n)を求め、前記速度17にセーブするものである。
【0095】
また、前記MPUは速度検出タイミングごとに、前記インクリメンタルエンコーダ1の前記速度17と前記速度確立レベルを比較し、前記速度17が該速度確立レベル以上のとき、前記MPUは前記速度17に前回の速度検出タイミングにてセーブした組と同じ組にて前記(2)式の演算を行って、前記速度17にセーブする。
これを例により説明すると、前記速度17が該速度確立レベル以上のとき、前回の速度検出タイミングにて速度VB+(n−1)を前記速度17にセーブしているとき、前記MPUは今回の速度検出タイミングにおいても速度VB+(n)を求め前記速度17にセーブするものである。
【0096】
ここで前記速度17が該速度確立レベル以上のとき、上記では1つの組にて新しく速度を求め前記速度17にセーブしたが、複数の組の速度を求めこれの平均値を前記速度17にセーブしてもよい。これにより、前記速度検出装置3-1は、前記インクリメンタルエンコーダ1が一定速度で回転しているときは極めて正確に前記速度17を検出し、加速または減速しているときは追従性に優れた前記速度17を検出するものである。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明による速度検出装置はインクリメンタルエンコーダから速度を検出するとき、該速度検出装置の入力インターフェイスがどの様な回路構成であっても、周囲温度が高い低いにかかわらず、また信号線路の長い短いにかかわらず、安定した精度のよい速度を検出することができる。
これにより、液晶表示器や電子部品に必要とされる高品質のフィルムや輪転機によるカラー印刷などに利用できるものである。
【符号の説明】
【0098】
1 インクリメンタルエンコーダ
2 信号線路
3 速度検出装置(従来の速度検出装置)
3-1 速度検出装置(本発明による速度検出装置)
4 入力インターフェイス
5 信号変換器(従来の信号変換器)
5-1 信号変換器(本発明による信号変換器)
6 A+の処理ブロック
7 A−の処理ブロック
8 B+の処理ブロック
9 B−の処理ブロック
10 回転位置カウンタ
11 発振器
12 タイマ
13 タイムラッチ
15 速度検出器(従来の速度検出器)
15-1 速度検出器(本発明による速度検出器)
16-1 速度演算(A+の処理ブロック用)
16-2 速度演算(A−の処理ブロック用)
16-3 速度演算(B+の処理ブロック用)
16-4 速度演算(B−の処理ブロック用)
17 速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17