(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多数本の中空糸膜を束ねて、外形を円筒状または円柱状に形成してなる中空糸膜束と、該中空糸膜束の外周部に装着されたシート体とを備える中空糸型血液処理装置を製造する方法であって、
前記中空糸膜束の外周部に前記シート体を装着する装着工程を有し、
前記装着工程を行なう際、前記シート体を予め筒状をなす部材として構成した状態で、前記シート体の装着を行ない、
前記装着工程では、前記シート体の装着に先立って該シート体を表裏反転させた反転状態とし、該反転状態を元の表裏が反転していない状態に戻しつつ、前記シート体の装着を行なうことを特徴とする中空糸型血液処理装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の中空糸型血液処理装置の製造方法および中空糸型血液処理装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、本発明の中空糸型血液処理装置を人工肺に適用した場合の実施形態を示す平面図である。
図2は、
図1に示す人工肺を矢印A方向から見た図である。
図3は、
図2中のB−B線断面図である。
図4は、
図2中の矢印C方向から見た図である。
図5は、
図1中のD−D線断面図である。
図6は、
図5中のE−E線断面図である。
図7〜
図14は、それぞれ、
図1に示す人工肺を製造する過程(本発明の中空糸型血液処理装置の製造方法を含む)を順に示す縦断面図である。なお、
図1、
図3、
図4および
図14中の左側を「左」または「左方(一方)」、右側を「右」または「右方(他方)」という。また、
図7〜
図13中(
図15〜
図18についても同様)の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」という。また、
図1〜
図6中、人工肺の内側を「血液流入側」または「上流側」、外側を「血液流出側」または「下流側」として説明する。
【0023】
図1〜
図5に示す人工肺10は、全体形状がほぼ円柱状をなしている。この人工肺10は、内側に設けられ、血液に対し熱交換を行う熱交換部10Bと、熱交換部10Bの外周側に設けられ、血液に対しガス交換を行うガス交換部としての人工肺部10Aとを備える熱交換器付き人工肺である。人工肺10は、例えば血液体外循環回路中に設置して用いられる。
【0024】
人工肺10は、ハウジング2Aを有しており、このハウジング2A内に人工肺部10Aと熱交換部10Bとが収納されている。
【0025】
ハウジング2Aは、円筒状ハウジング本体21Aと、円筒状ハウジング本体21Aの左端開口を封止する皿状の第1の蓋体22Aと、円筒状ハウジング本体21Aの右端開口を封止する皿状の第2の蓋体23Aとで構成されている。
【0026】
円筒状ハウジング本体21A、第1の蓋体22Aおよび第2の蓋体23Aは、樹脂材料で構成されている。円筒状ハウジング本体21Aに対し、第1の蓋体22Aおよび第2の蓋体23Aは、融着や接着剤による接着等の方法により固着されている。
【0027】
円筒状ハウジング本体21Aの外周部には、管状の血液流出ポート28が形成されている。この血液流出ポート28は、円筒状ハウジング本体21Aの外周面のほぼ接線方向に向かって突出している(
図5参照)。
【0028】
円筒状ハウジング本体21Aの外周部には、管状のパージポート205が突出形成されている。パージポート205は、その中心軸が円筒状ハウジング本体21Aの中心軸と交差するように、円筒状ハウジング本体21Aの外周部に形成されている。
【0029】
第1の蓋体22Aには、管状のガス流出ポート27が突出形成されている。ガス流出ポート27は、その中心軸が第1の蓋体22Aの中心と交差するように、第1の蓋体22Aの外周部に形成されている(
図2参照)。
【0030】
また、血液流入ポート201は、その中心軸が第1の蓋体22Aの中心に対し偏心するように、第1の蓋体22Aの端面から突出している。
【0031】
第2の蓋体23Aには、管状のガス流入ポート26、熱媒体流入ポート202および熱媒体流出ポート203が突出形成されている。ガス流入ポート26は、第2の蓋体23Aの端面の縁部に形成されている。熱媒体流入ポート202および熱媒体流出ポート203は、それぞれ、第2の蓋体23Aの端面のほぼ中央部に形成されている。また、熱媒体流入ポート202および熱媒体流出ポート203の中心線は、それぞれ、第2の蓋体23Aの中心線に対してやや傾斜している。
【0032】
なお、本発明において、ハウジング2Aの全体形状は、必ずしも完全な円柱状をなしている必要はなく、例えば一部が欠損している形状、異形部分が付加された形状などでもよい。
【0033】
図3、
図5に示すように、ハウジング2Aの内部には、その内周面に沿った円筒状をなす人工肺部10Aが収納されている。人工肺部10Aは、円筒状の中空糸膜束(外側中空糸膜束)3Aと、中空糸膜束3Aの外周側に設けられた気泡除去手段4Aとしてのフィルタ部材(外側シート体)41Aとで構成されている。中空糸膜束3Aとフィルタ部材41Aとは、血液流入側から、中空糸膜束3A、フィルタ部材41Aの順に配置されている。
【0034】
また、人工肺部10Aの内側には、その内周面に沿った、すなわち、同心的配置された円筒状をなす熱交換部10Bが設置されている。熱交換部10Bは、円筒状の中空糸膜束(内側中空糸膜束)3Bと、中空糸膜束3Bの外周側に設けられた中間シート部材(内側シート体)11とを有している。中空糸膜束3Bと中間シート部材11とは、血液流入側から、中空糸膜束3B、中空糸膜束3Bの順に配置されている。
【0035】
図6に示すように、中空糸膜束3Aおよび3Bは、それぞれ、多数本の中空糸膜31で構成され、これらの中空糸膜31を束ねて、すなわち、層状に集積して積層させてなるものである。積層数は、特に限定されないが、例えば、3〜40層が好ましい。なお、中空糸膜束3Aの各中空糸膜31は、それぞれ、ガス交換を行なうガス交換機能を有するものである。一方、中空糸膜束3Bの各中空糸膜31は、それぞれ、熱交換を行なう熱交換機能を有するものである。
【0036】
図3に示すように、中空糸膜束3Aおよび3Bは、それぞれ、その両端部が隔壁8および9により円筒状ハウジング本体21Aの内面に対し一括して固定されている。隔壁8、9は、例えば、ポリウレタン、シリコーンゴム等のポッティング材や接着剤等により構成されている。さらに、中空糸膜束3Bは、その内周部が、第1の円筒部材241の外周部に形成された凹凸部244に係合している。この係合と隔壁8および9による固定により、中空糸膜束3Bが円筒状ハウジング本体21Aに確実に固定され、よって、人工肺10の使用中に中空糸膜束3Bの位置ズレが生じるのを確実に防止することができる。また、凹凸部244は、中空糸膜束3B全体に血液Bを巡らせるための流路としても機能する。
【0037】
なお、
図5に示すように、中空糸膜束3Aの最大外径φD1
maxは、20mm〜200mmであるのが好ましく、40mm〜150mmであるのがより好ましい。中空糸膜束3Bの最大外径φD2
maxは、10mm〜150mmであるのが好ましく、20mm〜100mmであるのがより好ましい。また、
図3に示すように、中空糸膜束3Aおよび3Aの中心軸方向に沿った長さLは、30mm〜250mmであるのが好ましく、50mm〜200mmであるのがより好ましい。このような条件を有することにより、中空糸膜束3Aは、ガス交換機能に優れたものとなり、中空糸膜束3Bは、熱交換機能に優れたものとなる。
【0038】
ハウジング2A内の隔壁8と隔壁9との間における各中空糸膜31の外側、すなわち、中空糸膜31同士の隙間には、血液Bが
図6中の上側から下側に向かって流れる血液流路33が形成されている。
【0039】
血液流路33の上流側には、血液流入ポート201から流入した血液Bの血液流入部として、血液流入ポート201に連通する血液流入側空間24Aが形成されている(
図3、
図5参照)。
【0040】
血液流入側空間24Aは、円筒状をなす第1の円筒部材241と、第1の円筒部材241の内側に配置され、その内周部の一部に対向して配置された板片242とで画成された空間である。そして、血液流入側空間24Aに流入した血液Bは、第1の円筒部材241に形成された複数の側孔243を介して、血液流路33全体にわたって流下することができる。
【0041】
また、第1の円筒部材241の内側には、当該第1の円筒部材241と同心的に配置された第2の円筒部材245が配置されている。そして、
図3に示すように、熱媒体流入ポート202から流入した例えば水等の熱媒体Hは、第1の円筒部材241の外周側にある中空糸膜束3Bの各中空糸膜31の流路(中空部)32、第2の円筒部材245の内側を順に通過して、熱媒体流出ポート203から排出される。また、熱媒体Hが各中空糸膜31の流路32を通過する際に、血液流路33内で、当該中空糸膜31に接する血液Bとの間で熱交換(加温または冷却)が行われる。
【0042】
血液流路33の下流側においては、血液流路33を流れる血液B中に存在する気泡を捕捉する機能を有するフィルタ部材41Aが配置されている。
【0043】
フィルタ部材41Aは、シート体で構成され、中空糸膜束3Aの外周部にその全体を覆うように装着されている。フィルタ部材41Aも、両端部がそれぞれ隔壁8、9で固着されており、これにより、ハウジング2Aに対し固定されている(
図3参照)。
【0044】
また、フィルタ部材41Aは、その内側が中空糸膜束3Aの外周部に密着している(
図3、
図5および
図6参照)。これにより、血液流路33を流れる血液中に気泡が存在していたとしても、その気泡をフィルタ部材41Aで確実に捕捉することができる(
図6参照)。そして、フィルタ部材41Aにより捕捉された気泡は、血流によって、フィルタ部材41A近傍の各中空糸膜31内に押し込まれて入り込み、その結果、血液流路33から除去される。
【0045】
また、フィルタ部材41Aの外周部と円筒状ハウジング本体21Aの内周部との間には、円筒状の隙間が形成され、この隙間は、血液流出側空間25Aを形成している。この血液流出側空間25Aと、血液流出側空間25Aに連通する血液流出ポート28とで、血液流出部が構成される。血液流出部は、血液流出側空間25Aを有することにより、フィルタ部材41Aを透過した血液Bが血液流出ポート28に向かって流れる空間が確保され、血液Bを円滑に排出することができる。
【0046】
中空糸膜束3Aと中空糸膜束3Bとの間には、中間シート部材11が配置されている。この中間シート部材11は、シート体で構成され、中空糸膜束3Bの外周部にその全体を覆うように装着されている。中間シート部材11も、フィルタ部材41Aと同様に、両端部がそれぞれ隔壁8、9で固着されており、これにより、ハウジング2Aに対し固定されている(
図3参照)。
【0047】
また、中間シート部材11は、その内側が中空糸膜束3Bの外周部に密着している(
図3、
図5および
図6参照)。中間シート部材11は、後述するように人工肺10の製造過程で、主に中空糸膜束3Bの形状を維持するためのものである。このため、中間シート部材11が中空糸膜束3Bに密着していることにより、中空糸膜束3Bの形状を確実に維持することができる。
【0048】
人工肺10では、フィルタ部材41Aと中間シート部材11とは、それぞれ、縦糸と横糸とを交差させてメッシュ状に形成させたものである。このようなものとしては、縦糸と横糸とを平織りにした織布、縦糸と横糸とを格子状に交差させたもの(スクリーンメッシュを含む)等が挙げられる。
【0049】
そして、中間シート部材11の目開きは、フィルタ部材41Aの目開きよりも大きい。中間シート部材11は、前述したように中空糸膜束3Bの形状を維持するためのものであるため、できる限り、中空糸膜束3Bから中空糸膜束3Aに向かって流下する血液Bの流れの妨げとならないように目開きを大きく設定するのが好ましい。
【0050】
一方、フィルタ部材41Aは、目開きを小さくすることにより、気泡をより確実に捕捉することができるとともに、血液Bが容易に通過することができるよう構成されている。
【0051】
また、フィルタ部材41Aおよび中間シート部材11の厚さは、例えば、0.03〜0.8mmが好ましく、0.05〜0.5mmがより好ましい。これにより、人工肺10の製造過程での各部材の装着を容易にすることができるとともに、人工肺10となった後の各部材の機能が確実に発揮される。
【0052】
フィルタ部材41Aおよび中間シート部材11の構成材料(縦糸と横糸の構成材料)としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、セルロース、ポリウレタン、アラミド繊維等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、縦糸と横糸とを異なる組成とすること等)用いることができる。特に、抗血栓性に優れ、目詰まりを生じ難いという点で、構成材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタンのうちのいずれかを用いる(含む)のが好ましい。
【0053】
また、フィルタ部材41Aおよび中間シート部材11は、親水性を有するのが好ましい。すなわち、フィルタ部材41Aおよび中間シート部材11は、それ自体が親水性を有する材料で構成されているか、または、親水化処理(例えば、プラズマ処理等)が施されていることが好ましい。これにより、各部材における血液Bの通過抵抗が低減する。
【0054】
図3に示すように、第1の蓋体22Aの内側には、円環状をなすリブ291が突出形成されている。そして、第1の蓋体22Aとリブ291と隔壁8により、気密的に封止された第1の部屋221aが画成されている。この第1の部屋221aは、ガスGが流出するガス流出室である。中空糸膜束3Aの各中空糸膜31(流路32)の左端開口は、第1の部屋221aに開放し、連通している。これにより、各中空糸膜31内を流下したガスGが第1の部屋221aに流出する。
【0055】
また、第1の部屋221aには、ガス流出ポート27が連通している。このガス流出ポート(接続ポート)27には、第1の部屋221a内を吸引する吸引機構(図示せず)が接続される。吸引機構としては、特に限定されず、例えば、壁吸引等が挙げられる。壁吸引は、酸素、治療用空気、窒素、吸引等の医療ガス配管設備の一つであり、手術室の壁などに設置されている吸引のための配管のコネクタをガス流出ポート27に接続して使用することができる。この吸引機構の作動によって生じた吸引力により、第1の部屋221a内が減圧され、よって、当該第1の部屋221aに向かってガスGを確実に流下させることができる。
【0056】
一方、第2の蓋体23Aの内側にも、円環状をなすリブ292が突出形成されている。そして、第2の蓋体23Aとリブ292と隔壁9とにより、第2の部屋231aが画成されている。この第2の部屋231aは、ガスGが流入してくるガス流入室である。中空糸膜束3Aの各中空糸膜31の右端開口は、第2の部屋231aに開放し、連通している。これにより、第2の部屋231aから各中空糸膜31内にガスGを分配することができる。
【0057】
人工肺10では、ガス流出ポート27および第1の部屋221aによりガス流出部が構成され、当該ガス流出部は、中空糸膜束3Aの左端側(他端側)に配置されたものとなる。また、ガス流入ポート26および第2の部屋231aによりガス流入部が構成され、当該ガス流入部は、中空糸膜束3Aの右端側(一端側)に配置されたものとなる。このように、人工肺10では、ガス流入部とガス流出部とは、各中空糸膜31の内腔を流路32(ガス流路)として、流路32の上流側および下流側にそれぞれ設けられる。これにより、ガスGの流れが直線的になり、よって、ガスGの迅速な流下を図ることができる。
【0058】
前述したように、中空糸膜束3Aおよび3Bは、いずれも、多数本の中空糸膜31で構成されたものである。中空糸膜束3Aと中空糸膜束3Bとは、中空糸膜束3Aが多孔質であり、用途が異なること以外は、同じ中空糸膜31を有するため、以下、中空糸膜束3Aについて代表的に説明する。
【0059】
中空糸膜31の内径φd
1は、50μm〜700μmであるのが好ましく、70μm〜600μmであるのがより好ましい(
図6参照)。中空糸膜31の外径φd
2は、100μm〜1000μmであるのが好ましく、120μm〜800μmであるのがより好ましい(
図6参照)。さらに、内径φd
1と外径φd
2との比d
1/d
2は、0.5〜0.9あるのが好ましく、0.6〜0.8であるのがより好ましい。このような条件を有する各中空糸膜31では、自身の強度を保ちつつ、当該中空糸膜31の中空部である流路32にガスGを流すときの圧力損失を比較的小さくすることができるとともに、その他、中空糸膜31の巻回状態を維持するのに寄与する。例えば、内径φd
1が前記上限値よりも大きいと、中空糸膜31の厚さが薄くなり、他の条件によっては、強度が低下する。また、内径φd
1が前記下限値よりも小さいと、他の条件によっては、中空糸膜31にガスGを流すときの圧力損失が大きくなる。
【0060】
また、隣り合う中空糸膜31同士の距離は、φd
2の1/10〜1/1であるのがより好ましい。
【0061】
このような中空糸膜31の製造方法は、特に限定されないが、例えば、押出成形を用いた方法、特に延伸法または固液相分離法を用いた方法が挙げられる。この方法により、所定の内径φd
1および外径φd
2を有する中空糸膜31を製造することができる。
【0062】
各中空糸膜31の構成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルペンテン等の疎水性高分子材料が用いられ、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂であり、より好ましくは、ポリプロピレンである。このような樹脂材料を選択することは、中空糸膜31の巻回状態を維持するのに寄与するともに、製造時の低コスト化にも寄与する。
【0063】
ここで、本実施形態の人工肺10における血液Bの流れについて説明する。
この人工肺10では、血液流入ポート201から流入した血液Bは、血液流入側空間24A、側孔243を順に通過して、熱交換部10Bに流れ込む。熱交換部10Bでは、血液Bは、血液流路33を下流方向に向かって流れつつ、熱交換部10Bの各中空糸膜31の表面と接触して熱交換(加温または冷却)がなされる。このようにして熱交換がなされた血液Bは、人工肺部10Aに流入する。
【0064】
そして、人工肺部10Aでは、血液Bは、血液流路33をさらに下流方向に向かって流れる。一方、ガス流入ポート26から供給されたガス(酸素を含む気体)は、第2の部屋231aから人工肺部10Aの各中空糸膜31の流路32に分配され、該流路32を流れた後、第1の部屋221aに集積され、ガス流出ポート27より排出される。血液流路33を流れる血液Bは、人工肺部10Aの各中空糸膜31の表面に接触し、流路32を流れるガスGとの間でガス交換、すなわち、酸素加、脱炭酸ガスがなされる。
【0065】
ガス交換がなされた血液B中に気泡が混入している場合、この気泡は、フィルタ部材41Aにより捕捉され、フィルタ部材41Aの下流側に流出するのが防止される。
【0066】
以上のようにして熱交換、ガス交換が順になされ、さらに気泡が除去された血液Bは、血液流出ポート28より流出する。
【0067】
次に、人工肺10を製造する方法について、
図7〜
図14を参照しつつ説明する。この製造方法は、第1の形成工程と、第1の装着工程、第2の形成工程と、第2の装着工程と、固定工程と、組立工程とを有している。
【0068】
[1] 第1の形成工程
第1の形成工程は、第1の円筒部材241および第2の円筒部材245を有する内側部材206に中空糸膜束3Bを形成する工程である。この工程は、公知のワインド装置を用いて行なうことができ、これにより、第1の円筒部材241の凹凸部244に中空糸膜31を巻き付けていくことができる。
【0069】
[2] 第1の装着工程
第1の装着工程は、中間シート部材11を中空糸膜束3Bに装着する工程である。
【0070】
前述したように、中間シート部材11は、メッシュ状をなすものである。このため、中間シート部材11は、伸縮自在なものとなっている。また、
図7に示すように、中間シート部材11は、予め筒状をなす部材として構成されている。そして、中間シート部材11は、外力を付与しない自然状態、すなわち、中空糸膜束3Bに装着する前の状態で円筒とした場合の内径φD3が、中空糸膜束3Bの最大外径φD2
maxよりも小さくなっている。このφD3としては、例えば、φD2
maxの91〜99.9%であるのが好ましく、91〜95%または96〜99%であるのがより好ましい。また、中間シート部材11の中心軸方向に沿った長さL3は、中空糸膜束3Bの長さLと同じかまたはそれよりも若干小さいのが好ましい。
【0071】
まず、中間シート部材11の中空糸膜束3Bへの装着に先立って、中間シート部材11を表裏反転させた反転状態とする。そして、この反転状態のまま、中間シート部材11の下端部を内側に折り返して、当該折り返し部111を中空糸膜束3Bの上端部に嵌める(
図7参照)。なお、折り返し部111は、元の表裏が反転していない状態に戻されている。
【0072】
続いて、
図8に示すように、中間シート部材11の反転状態にある部分(反転部112)、すなわち、中間シート部材11の折り返し部111よりも外側の部分を、下方に向かって徐々に滑らせていき、元の表裏が反転していない状態に戻していく。
【0073】
そして、この作業(操作)を継続していくと、
図9に示すように、中間シート部材11は、全体として表裏が反転していない状態に戻り、中空糸膜束3Bへの装着が完了する。
【0074】
また、前述したように、中間シート部材11の内径φD3は、中空糸膜束3Bの最大外径φD2
maxよりも小さい。これにより、中間シート部材11の装着過程では、当該中間シート部材11は、中空糸膜束3Bをその外周部側から中心軸側に向かう方向に締め付けることができ、この締め付け状態は、第1の装着工程後もそのまま維持される(
図5の矢印A
11参照)。これにより、中間シート部材11が中空糸膜束3Bと確実に密着することができ、よって、中空糸膜束3Bの形状維持が図れ、次の工程を容易に安定して行なうことができる。
【0075】
また、中間シート部材11で中空糸膜束3Bを締め付けつつ中間シート部材11の装着を行なうため、表裏反転した状態からその状態を戻すように装着する方法は、中間シート部材11の装着作業を容易に行なうのに寄与する。
【0076】
[3] 第2の形成工程
第2の形成工程は、中間シート部材11上に中空糸膜束3Aを形成する工程である。この工程は、第1の形成工程と同様にワインド装置を用いて行なうことができる。これにより、中間シート部材11に中空糸膜31を巻き付けていくことができ、よって、
図10に示すように中空糸膜束3Aが形成される。
【0077】
また、中間シート部材11によって中空糸膜束3Bの形状が維持されているため、中空糸膜31の巻き付けを安定して行なうことができる。
【0078】
[4] 第2の装着工程
第2の装着工程は、フィルタ部材41Aを中空糸膜束3Aに装着する工程である。
【0079】
前述したように、フィルタ部材41Aも、メッシュ状をなすものである。このため、フィルタ部材41Aは、伸縮自在なものとなっている。また、
図11に示すように、フィルタ部材41Aは、予め筒状をなす部材として構成されている。そして、フィルタ部材41Aは、外力を付与しない自然状態で円筒とした場合の内径φD4が、中空糸膜束3Aの最大外径φD1
maxよりも小さくなっている。このφD4としては、例えば、φD1
maxの90〜96%であるのが好ましく、91〜95%であるのがより好ましく、92〜95%であるのがさらに好ましい。また、フィルタ部材41Aの中心軸方向に沿った長さは、中空糸膜束3Aの長さLと同じかまたはそれよりも若干小さいのが好ましい。
【0080】
本工程でのフィルタ部材41Aの中空糸膜束3Aへの装着は、第1の装着工程での中間シート部材11の中空糸膜束3Aへの装着と同様である。すなわち、フィルタ部材41Aの中空糸膜束3Aへの装着に先立って、フィルタ部材41Aを表裏反転させた反転状態とする。そして、この反転状態を元の表裏が反転していない状態に戻すように、フィルタ部材41Aを装着していく(
図11参照)。これにより、
図12に示すように、フィルタ部材41Aは、全体として表裏が反転していない状態に戻り、中空糸膜束3Aへの装着が完了する。
【0081】
また、前述したように、フィルタ部材41Aの内径φD4は、中空糸膜束3Aの最大外径φD1
maxよりも小さい。これにより、フィルタ部材41Aの装着過程では、当該フィルタ部材41Aは、中空糸膜束3Aをその外周部側から中心軸側に向かう方向に締め付けることができ、この締め付け状態は、第2の装着工程後もそのまま維持される(
図5の矢印A
41A参照)。これにより、フィルタ部材41Aが中空糸膜束3Aと確実に密着することができ、よって、フィルタ部材41Aの気泡捕捉機能が確実に発揮される。
【0082】
なお、中間シート部材11の中空糸膜束3Bに対する締め付けの程度は、フィルタ部材41Aの中空糸膜束3Aに対する締め付けの程度よりも低い。これにより、中空糸膜束3Bがフィルタ部材41Aによって過剰に締め付けられるのを防止することができ、よって、中空糸膜束3Bでの中空糸膜31や血液流路33が閉塞するのを確実に防止することができる。
【0083】
[5] 固定工程
固定工程は、中空糸膜束3A、中空糸膜束3B、フィルタ部材41A、中間シート部材11を一括して第1の円筒部材241に対して固定する工程である。
【0084】
まず、隔壁8および隔壁9を構成する材料を液状の状態で所定箇所に付与し、その後、固化させる。これにより、
図13に示すように、隔壁8および隔壁9を介して、中空糸膜束3A、中空糸膜束3B、フィルタ部材41A、中間シート部材11が一括して固定される。
【0085】
[6] 組立工程
組立工程は、中空糸膜束3A、中空糸膜束3B、フィルタ部材41A、中間シート部材11が固定された内側部材206と、円筒状ハウジング本体21Aと、第1の蓋体22Aと、第2の蓋体23Aとを組み立てる工程である。
【0086】
図14に示すように、まず、内側部材206を円筒状ハウジング本体21Aに収納し肯定する。次に、第1の蓋体22Aを右側から装着し、固定するとともに、第2の蓋体23Aを左側から装着し、固定する。これにより、人工肺10が完成する。
【0087】
なお、第1の装着工程および第2の装着工程は、陽電子を発生させる環境下で行なわれるのが好ましい。これにより、フィルタ部材41Aや中間シート部材11の装着時に生じる静電気を防止することができる。
【0088】
<第2実施形態>
図15〜
図18は、それぞれ、本発明の中空糸型血液処理装置を人工肺に適用した場合の当該人工肺を製造する過程(本発明の中空糸型血液処理装置の製造方法を含む)を順に示す縦断面図である。
【0089】
以下、これらの図を参照して本発明の中空糸型血液処理装置の製造方法および中空糸型血液処理装置の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0090】
本実施形態は、人工肺の製造方法の一部が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0091】
図15〜
図18に示すように、本実施形態では、第1の装着工程で剥離用シート12を用いる。剥離用シート12は、帯状をなし、その全長が中空糸膜束3Bの外周部の全周の長さよりも十分に長いものである。また、剥離用シート12の中空糸膜束3Bの中心軸方向に沿った長さL4も、中空糸膜束3Bの長さLよりも十分に長い。また、剥離用シート12の厚さは、0.05〜0.2mmが好ましく、0.1〜0.13mmがより好ましい。
【0092】
この剥離用シート12の両面には、摩擦を低減する摩擦低減処理が施されている。これにより、後述する剥離作業(除去作業)を容易に行なうことができる。なお、摩擦低減処理としては、特に限定されず、例えば、テフロンコート(「テフロン」は登録商標)を施す方法が挙げられる。これにより、剥離作業時の剥離力を例えば500mN/100cm未満とすることができる。
【0093】
まず、
図15に示すように、中間シート部材11の装着に先立って、中空糸膜束3Bの外周部にその全周にわたって剥離用シート12を巻き付けて装着する。また、この装着後、湾曲した板部材で構成された支持部材13を剥離用シート12の両端部のつなぎ目に宛がう。これにより、剥離用シート12が展開して、中空糸膜束3Bから脱落するのを防止することができる。
【0094】
次に、
図16に示すように、剥離用シート12に中間シート部材11を重ねて一旦装着する。このときの装着は、前記第1実施形態のように表裏反転させた状態で行なってもよいし、表裏反転させずに、表裏がそのままの状態で行なってもよい。
【0095】
次に、
図17に示すように、中間シート部材11をその位置で残しつつ、剥離用シート12を上方に引張る。なお、剥離用シート12は、中間シート部材11よりも上方にはみ出した部分121を有している(
図16参照)。これにより、当該部分121を指先で摘まんで、引張り作業を容易かつ確実に行なうことができる。
【0096】
そして、この引張り作業を継続することにより、
図18に示すように、剥離用シート12を剥離する、すなわち、除去することができ、よって、中間シート部材11が中空糸膜束3Bに装着される。
【0097】
なお、第2の装着工程でも剥離用シート12を用いて、同様に、フィルタ部材41Aを中空糸膜束3Aに装着することができる。
【0098】
以上、本発明の中空糸型血液処理装置の製造方法および中空糸型血液処理装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、中空糸型血液処理装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0099】
また、本発明の中空糸型血液処理装置の製造方法および中空糸型血液処理装置は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0100】
また、人工肺部の中空糸膜束を構成する各中空糸膜と、熱交換部の中空糸膜束を構成する各中空糸膜とは、前記実施形態では同じものであったが、これに限定されず、例えば、一方(前者)の中空糸膜が他方(後者)の中空糸膜よりも細くてもよいし、双方の中空糸膜が互いに異なる材料で構成されていてもよい。
【0101】
また、人工肺部と熱交換部とは、前記実施形態では熱交換部が内側に配置され、人工肺部が外側に配置されていたが、これに限定されず、人工肺部が内側に配置され、熱交換部が外側に配置されていてもよい。この場合、血液は、外側から内側に向かって流下する。
【0102】
また、人工肺部と熱交換部とは、前記実施形態では中空糸膜束、すなわち樹脂材料で構成されていたが、これに限定されず、熱交換部の一部またはすべてが金属材料で構成されていても良い。
【0103】
人工肺部の中空糸膜束と熱交換部の中空糸膜束とは、それぞれ、前記実施形態では外形形状を円筒状に形成してなるものであるが、これに限定されず、例えば、人工肺部の中空糸膜束が外形形状を円筒状に形成してなるものであり、熱交換部の中空糸膜束が外形形状を円柱状に形成してなるものであってもよい。
【0104】
また、本発明の中空糸型血液処理装置の製造方法および中空糸型血液処理装置は、人工肺の他にも、例えば、透析用のダイヤライザにも適用することができる。