(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
(車両1の構成)
まず、本発明の実施の形態における乗員保護装置を備えた車両の構成について、説明する。なお、
図1は、本発明の実施の形態における乗員保護装置を備えた車両の断面図である。また、
図2は、本実施の形態における乗員保護装置が作動した際の断面図である。
【0015】
図1に示すように、車両1の床面2には、座席シート10が取り付けられている。また、車両1の左右両側には、車両1の側部の骨格の一部を構成するボディサイド3がそれぞれほぼ鉛直に設けられている。また、ボディサイド3には、ピラー4が上方に延設されて、ピラー4により、天井部5がほぼ水平に支持されている。
【0016】
また、各座席シート10の上部、車両1の天井部5には、乗員保護装置101が設けられている。
なお、座席シート10は、例えば、車両1の幅方向に並んで、運転席、助手席等が設けられ、各座席シート10の上部に乗員保護装置101が設けられているが、各座席シート10の上部に設けられた乗員保護装置101のそれぞれは、同様のものである。したがって、本実施の形態においては、運転席を座席シート10の代表として、右ハンドルの車両1における運転席(座席シート10)の上部に設けられる乗員保護装置101について、説明する。
【0017】
座席シート10は、乗員P1の臀部から大腿部を支える座部10aと、リクライニング可能に設けられた背もたれ部10bと、乗員P1の頭部を支えるヘッド部10cと、を備えている。
【0018】
(乗員保護装置101の構成)
次に、本発明の実施の形態における乗員保護装置の構成について、説明する。なお、本実施の形態の乗員保護装置は、エアバッグ展開制御ユニット(ACU)や、車両制御装置(ECU)等によって制御されるものである。
乗員保護装置101は、インフレータ111と、エアバッグ121と、を備えている。
【0019】
(インフレータ111)
インフレータ111は、車両1が衝突等(衝突予測を含む)により異常が発生すると異常検知部から送られた信号に基づいて、火薬に点火し、燃焼による化学反応でガスを発生させ、エアバッグ121にガスを圧入させる。すなわち、インフレータ111は、エアバッグ121にガスを供給するものである。
【0020】
(エアバッグ121)
エアバッグ121は、インフレータ111によってガスが圧入される袋体であって、非作動時は小さく折りたたまれている。また、エアバッグ121は、一端が、車両1の天井部5に固定された乗員保護装置101に支持されている。すなわち、エアバッグ121は、一端が車両1の上方に支持されている。
【0021】
さらに、エアバッグ121は、メインエアバッグ211と、サブエアバッグ221と、係止用バッグ231と、を有している。
メインエアバッグ211は、一端が車両1の上方に支持され、乗員P1の全体を覆う、内部が中空の略円錐状をした袋体である。また、メインエアバッグ211は、展開し拡がると、座席シート10の座部10aも覆い、座部10aの下部よりも下まで広がる大きさを有している。
【0022】
また、メインエアバッグ211は、インフレータ111によってガスが供給され、供給されたガスによって展開するようになっている。
なお、本実施の形態においては、メインエアバッグ211の形状を略円錐状としたが、これに限らず、略円柱形状や略角錐形状、あるいは、略角柱形状等であってもよい。
【0023】
サブエアバッグ221は、メインエアバッグ211の中空内に設けられ、メインエアバッグ211の内側の壁面に沿って複数設けられている。
また、サブエアバッグ221は、インフレータ111によって出力されたガスが、後述するガス供給切り替え部141によって分配および切り替えられ、それぞれのサブエアバッグ221に対して供給され、供給されたガスによって、それぞれのサブエアバッグ221が独立して、展開できるようになっている。
なお、本実施の形態においては、サブエアバッグ221の形状を略四角柱の角が丸まった形状として示したが、これに限らず、略円形や略三角形、あるいは、略六角形等の形状であってもよい。
【0024】
係止用バッグ231は、メインエアバッグ211の下部の内周側に設けられている。また、係止用バッグ231は、メインエアバッグ211の展開後、メインエアバッグ211の下部の内周側で展開することにより、座席シート10の座部10aに当接して、エアバッグ121の動きを制限し、座席シート10に固定することができる。なお、本実施の形態において、係止用バッグ231は、メインエアバッグ211の下部の左右にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0025】
また、メインエアバッグ211は、下部に係止用バッグ231との連通路を有しており、この連通路を介して、メインエアバッグ211と、係止用バッグ231とが、内部で連通している。そして、インフレータ111から供給されるガスは、まず、メインエアバッグ211に流入し、メインエアバッグ211から連通路を介して係止用バッグ231に流入するようになっている。したがって、エアバッグ121は、メインエアバッグ211が先に膨張し、その後から係止用バッグ231が膨張するようになっている。
【0026】
なお、本実施の形態においては、係止用バッグ231は、メインエアバッグ211を介してインフレータ111のガスが流入されるようにしているが、これに限らず、メインエアバッグ211と、係止用バッグ231との、インフレータ111をそれぞれ別々に持つようにしてもよい。この場合、係止用バッグ231に対するインフレータのガスを、メインエアバッグ211に対するインフレータのガスよりも遅れて入流させるようにすることにより、メインエアバッグ211よりも係止用バッグ231の膨張を遅らせることができる。
【0027】
また、本実施の形態においては、係止用バッグ231を、メインエアバッグ211の下部の左右に1つずつ設けるようにしているが、これに限らず、どちらか一方だけであってもよい。また、係止用バッグ231を、前後方向、前方のみ、後方のみ、斜めに1つまたは複数設けるなど、他の形態で設けるようにしてもよい。例えば、係止用バッグ231を、メインエアバッグ211の下部の内周側に、円環状に設けてもよい。
【0028】
さらに、本実施の形態においては、係止用バッグ231を、メインエアバッグ211の下部において単純に展開するようにしているが、これに限らず、係止用バッグ231を上方に引き上げるようにしてもよい。例えば、係止用バッグ231に車両1の天井部5と繋がったテザー等を設け、係止用バッグ231の展開とともに、上方に引き上げる構成としてもよい。また、このようなテザーを巻き取る巻き取り部を備え、係止用バッグ231の展開時に上方に引き上げるようにしてもよい。このようにすることにより、エアバッグ121を、座席シート10に確実に係止させることができる。
【0029】
さらに、本実施の形態においては、係止用バッグ231を、メインエアバッグ211の下部に設けるようにしているが、これに限らず、メインエアバッグ211の途中の位置に設けるようにしてもよい。例えば、係止用バッグ231を、ヘッド部10cの高さに設け、ヘッド部10cに対して当接して、エアバッグ121の動きを制限するようにしてもよい。
【0030】
さらに、本実施の形態においては、係止用バッグ231が、座席シート10の一部に対して当接して固定させるようにしているが、これに限らず、他の車載部材や、乗員P1の一部に対して当接して、固定されるようにしてもよい。
【0031】
さらに、本実施の形態においては、係止用バッグ231を独立して設けるようにしているが、これに限らず、サブエアバッグ221として設けるようにしてもよい。例えば、係止用バッグ231のそれぞれを、サブエアバッグ221の一つ一つとして設け、個々のサブエアバッグ221として制御するようにしてもよい。
【0032】
(乗員保護装置の機能)
次に、乗員保護装置の各部の機能について、説明する。
なお、
図3は、本実施の形態における乗員保護装置の機能ブロック図である。
【0033】
図3に示すように、本実施の形態における乗員保護装置101は、インフレータ111と、エアバッグ121と、乗員検知部131と、ガス供給切り替え部141と、衝突検知部151と、を備えている。
また、インフレータ111は、メインインフレータ111aと、サブインフレータ111bと、を有している。また、エアバッグ121は、メインエアバッグ211と、複数のサブエアバッグ221a〜221nと、係止用バッグ231と、を有している。
【0034】
メインインフレータ111aは、衝突検知部151から送られた衝突検知信号に基づいて、メインエアバッグ211にガスを供給させるものである。なお、本実施の形態においては、係止用バッグ231は、メインエアバッグ211を介してガスが供給されるものとしたが、これに限らず、メインインフレータ111aから直接、係止用バッグ231にガスを供給させるようにしてもよい。
【0035】
サブインフレータ111bは、衝突検知部151から送られた衝突検知信号に基づいて、ガス供給切り替え部141を介して、サブエアバッグ221a〜221nにガスを供給させるものである。なお、係止用バッグ231に対して、サブインフレータ111bからガスを供給させるようにしてもよい。
【0036】
乗員検知部131は、乗員P1の位置を検知するものである。具体的には、乗員検知部131は、座席シート10に乗員P1が着席しているか、どの座席シート10に着席しているか、着席している場合の乗員P1の着座姿勢等を検知するものである。特に、乗員検知部131は、乗員P1の着座方向、肩の位置、頭部の位置等を検知する。
【0037】
また、乗員検知部131は、衝突検知部151から衝突検知信号が送られると、検知した乗員P1の検知位置情報に基づいて、ガス供給切り替え部141に対して、展開させるサブエアバッグ221a〜221nの指定信号を送る。
なお、乗員検知部131は、衝突検知部151から衝突検知信号が送られてくる前に、検知した乗員P1の検知位置情報に基づいて、ガス供給切り替え部141に対して、展開の可能性があるサブエアバッグ221a〜221nや、展開の必要のないサブエアバッグ221a〜221nの情報を送っておいてもよい。
【0038】
ガス供給切り替え部141は、乗員検知部131による検知情報に基づいて、サブインフレータ111bから出力されたガスを供給するサブエアバッグ221a〜221nを切り替えるものである。具体的には、ガス供給切り替え部141は、衝突検知部151による衝突検知信号によりサブインフレータ111bからガスが出力されると、乗員検知部131から送られた展開させるべきサブエアバッグ221a〜221nの指定信号に基づいて、出力先を切り替えて、所定のサブエアバッグ221a〜221nに対してガスを供給させるものである。なお、ガス供給切り替え部141は、サブエアバッグ221a〜221nの一つに対してガスを供給させてもよいし、複数に対してガスを供給させてもよい。
【0039】
衝突検知部151は、車両1に対する対象物の衝突の予測や、衝突物の検出を行い、衝突の予測や検出が行われた場合に、メインインフレータ111a、サブインフレータ111b、および、乗員検知部131に、衝突検知信号を送るものである。
例えば、衝突検知部151は、車両1に対して接近してくる対象物の方向や、対象物との相対加速度等に応じて、対象物が車両1に接触するか否かを判定することにより、衝突の予測を行う。また、衝突検知部151は、加速度センサの検出信号等により、車両1に対する衝突を検出する。
【0040】
なお、本実施の形態においては、衝突検知部151が、車両1に対する衝突の予測と、衝突の検出と、の双方を行うようにしているが、これに限らず、衝突検知部151が、車両1に対する衝突の予測のみを行うものであっても、車両1に対する衝突の検出のみを行うものであってもよい。
【0041】
メインエアバッグ211は、メインインフレータ111aに供給されたガスによって展開されるものである。また、メインエアバッグ211は、メインインフレータ111aによって展開されると、上記のように、座席シート10、および、座席シート10に着座している乗員P1の全体を覆うようになっている。
また、メインエアバッグ211は、内側の壁面に、サブエアバッグ221a〜221nが設けられている。また、メインエアバッグ211は、下部の内周側に係止用バッグ231が設けられ、係止用バッグ231との間に連通路が設けられ、メインエアバッグ211から係止用バッグ231にガスが流通するようになっている。
【0042】
サブエアバッグ221a〜221nは、サブインフレータ111bによって供給され、ガス供給切り替え部141によって分配および切り替えられたガスが、供給され、それぞれ独立して展開されるものである。また、サブエアバッグ221a〜221nは、メインエアバッグ211の内側の壁面の予め決められた位置に、それぞれ設けられている。
このため、乗員検知部131は、検知した乗員P1の位置に基づいて、展開させるサブエアバッグ221a〜221nを指定する。したがって、サブエアバッグ221a〜221nは、乗員検知部131によって指定された場合にのみ、ガス供給切り替え部141によって選択され、サブインフレータ111bによるガスが供給されて、展開されることとなる。なお、指定されるサブエアバッグ221a〜221nは、1つであっても、複数であってもよい。
【0043】
係止用バッグ231は、メインエアバッグ211との間に設けられた連通路により、メインエアバッグ211からガスが供給されて、展開するようになっている。したがって、係止用バッグ231は、メインエアバッグ211の展開から遅れて、展開するようになっている。
なお、係止用バッグ231は、上記のように、メインインフレータ111aと直接接続されて、メインインフレータ111aに直接展開されるようにしてもよい。また、係止用バッグ231は、ガス切り替え部141を介して、サブインフレータ111bと接続されて、サブインフレータ111bに供給されるガスによって、展開されるようにしてもよい。さらに、係止用バッグ231は、サブインフレータ111bと直接接続されて、サブインフレータ111bに直接展開されるようにしてもよい。
【0044】
(乗員保護装置101の動作)
次に、車両1が衝突物と衝突する際の乗員保護装置101の動作について、説明する。
なお、
図4は、乗員保護装置101が作動した際の乗員P1を含む断面図である。
【0045】
例えば、ガソリン車においては、エンジンが始動されると、乗員保護装置101の乗員検知部131は、乗員P1の検知を開始する。乗員検知部131は、検知した乗員P1の検知位置情報に基づいて、ガス供給切り替え部141に対して、展開の可能性があるサブエアバッグ221a〜221nや、展開の必要のないサブエアバッグ221a〜221nの情報を送る。
【0046】
ガス供給切り替え部141では、乗員検知部131から送られた情報に基づいて、サブインフレータ111bから供給されるガスの出力先となるサブエアバッグ221a〜221nを、予め指定しておく。なお、上記動作は、乗員検知部131に衝突検知部151から衝突検知信号が送られてくる前の事前準備動作であるので、必ずしも行わなくてもよい。
【0047】
次に、衝突検知部151は、車両1に対する対象物の衝突の予測や、衝突の検出を行う。ここで、衝突検知部151は、車両1に対する衝突の予測、または、衝突を検出した場合、メインインフレータ111a、サブインフレータ111b、および、乗員検知部131に、衝突検知信号を送る。
【0048】
なお、本実施の形態において、衝突検知部151による、衝突の予測、および、衝突の検出は、車両1の走行時および停車時に行うようにしているが、これに限らず、車両1の走行時のみでもよい。また、車両1の停車時において、衝突の予測、および、衝突の検出を、行うか否かを選択等ができるようにしてもよい。
【0049】
メインインフレータ111aは、衝突検知部151から衝突検知信号が送られると、メインエアバッグ211に対してガスを供給させる。
メインエアバッグ211は、メインインフレータ111aからガスが供給されると、座席シート10、および、座席シート10に着座している乗員P1の全体を覆うように展開される。
【0050】
また、メインエアバッグ211が座席シート10の座部10aの下部まで展開すると、メインエアバッグ211と係止用バッグ231との間に設けられた連通路を介して、メインエアバッグ211内のガスが、係止用バッグ231に流入する。
係止用バッグ231は、メインエアバッグ211からガスが流入すると、メインエアバッグ211の展開に遅れて座部10aの下部で展開する。これにより、係止用バッグ231が座部10aに当接し、エアバッグ121が座席シート10に固定されることとなる。
【0051】
一方、サブインフレータ111bは、衝突検知部151から衝突検知信号が送られると、ガス供給切り替え部141を介してサブエアバッグ221a〜221nに対してガスを供給させる。
【0052】
また、乗員検知部131は、衝突検知部151から衝突検知信号が送られると、現在の乗員P1の位置を検知し、検知した乗員P1の検知位置情報に基づいて、ガス供給切り替え部141に対して、展開させるサブエアバッグ221a〜221nの指定信号を送る。
【0053】
ここでは、乗員P1の肩の位置を検知するとともに、乗員P1の肩の位置に対応するサブエアバッグ221aおよびサブエアバッグ221bを展開対象とする。すなわち、乗員検知部131は、ガスを供給させる対象として、サブエアバッグ221aおよびサブエアバッグ221bを指定する信号を、ガス供給切り替え部141に送る。
【0054】
なお、本実施の形態では、乗員検知部131が乗員P1の位置を検知し、検知した乗員P1の検知位置情報から展開対象のサブエアバッグ221a〜221nの指定まで行うようにしているが、これに限らず、乗員検知部131は、乗員P1の位置検知までを行い、この位置検知情報をECU等に送って、ECU等で位置検知情報から展開対象のサブエアバッグ221a〜221nの指定を行って、この指定情報をガス供給切り替え部141に送るようにしてもよい。また、乗員検知部131から位置検知情報をガス供給切り替え部141に送り、ガス供給切り替え部141において、位置検知情報から展開対象のサブエアバッグ221a〜221nの指定を行うようにしてもよい。
【0055】
次いで、ガス供給切り替え部141は、乗員検知部131によるサブエアバッグ221aおよびサブエアバッグ221bの指定情報により出力先を切り替えて、サブインフレータ111bから出力されたガスを、サブエアバッグ221aおよびサブエアバッグ221bに供給させる。
なお、ガス供給切り替え部141は、指定されていないサブエアバッグ221c〜221nに対しては、ガスを供給させないようにする。すなわち、ガス供給切り替え部141は、サブインフレータ111bから出力されたガスの全てを、サブエアバッグ221aおよびサブエアバッグ221bに対して供給させるようにする。
【0056】
サブエアバッグ221aおよびサブエアバッグ221bは、サブインフレータ111bからガス供給切り替え部141を介してガスが供給されることにより、膨張し、展開させられる。一方、サブエアバッグ221c〜221nは、ガス供給切り替え部141の切り替えによりガスが供給されないため、展開されない。
【0057】
これにより、
図4に示すように、車両1に対する衝突の予測や検出が行われると、乗員P1の周りには、メインエアバッグ211が展開されるとともに、乗員P1の肩とメインエアバッグ211との間に、サブエアバッグ221aおよびサブエアバッグ221bが展開される。また、メインエアバッグ211の下部では、係止用バッグ231が展開され、座席シート10の座部10aの下部に当接している。
【0058】
したがって、メインエアバッグ211の中で乗員P1がしっかりと固定され、車両1に対する衝突の衝撃から守り、乗員P1の保護機能を高めることができる。また、乗員P1の周囲をメインエアバッグ211が覆っているので、全方位からの衝突の衝撃を緩和することができ、多くの衝突形態に対応することができる。
【0059】
また、サブインフレータ111bから供給されるガスを、ガス切り替え部141による選択によって、たくさんのサブエアバッグ221a〜221nから指定のサブエアバッグ221aおよびサブエアバッグ221bのみを展開させるので、サブインフレータ111bから供給するガスの量を限定的に縮小することができ、サブインフレータ111bの容量を小さく抑えることができる。
【0060】
(ベンチシートを対象とした乗員保護装置)
次に、乗員保護装置の他の実施の形態について、説明する。
本実施の形態における乗員保護装置102は、座席シートが複数人掛け用である、いわゆるベンチシート12を対象としたものである。なお、
図5は、本実施の形態における乗員保護装置を備えた車両の断面図であり、また、
図6は、本実施の形態における乗員保護装置が作動した際の断面図である。
【0061】
図5、
図6に示すように、本実施の形態における乗員保護装置102は、上記実施の形態の乗員保護装置101と同様に、インフレータ112と、エアバッグ122と、を備えている。また、乗員保護装置102は、図示しない乗員検知部と、ガス供給切り替え部と、衝突検知部と、を備えている。この乗員検知部、ガス供給切り替え部、衝突検知部は、上記実施の形態の乗員検知部131、ガス供給切り替え部141、衝突検知部151と同様のものであり、さらに、後述するサブエアバッグ222に対応したものとなっている。
【0062】
(インフレータ112)
インフレータ112は、車両1に対して衝突などにより異常が発生すると衝突検知部から送られた信号に基づいて、火薬に点火し、燃焼による化学反応でガスを発生させ、エアバッグ122にガスを圧入させるものであり、主な機能は、上記実施の形態のインフレータ111と同様のものである。一方、ガスを圧入させるエアバッグ122は、上記実施の形態のエアバッグ121よりも大型のものであるので、インフレータ112が圧入させることができるガスの量も対応して大きくなっている。
また、インフレータ112は、後述するメインエアバッグ212用のメインインフレータと、後述するサブエアバッグ222用のサブインフレータと、を有している。
【0063】
(エアバッグ122)
エアバッグ122は、インフレータ112によってガスが圧入される袋体であって、上記実施の形態のエアバッグ121よりも大型のものである。具体的には、エアバッグ122は、乗員P2〜P4の3人分を覆うよりも大きなものとなっている。また、エアバッグ122は、非作動時には小さく折りたたまれており、さらに、エアバッグ122の上部は、ベンチシート12の右側の乗員P2の座席位置の上部と、ベンチシート12の左側の乗員P4の座席位置の上部と、において、乗員保護装置102に支持されている。
【0064】
また、エアバッグ122は、メインエアバッグ212と、サブエアバッグ222と、係止用バッグ232と、を有している。
メインエアバッグ212は、展開し拡がると、ベンチシート12に腰掛けている乗員P2〜P4の3人を覆うほどの大きさを有する袋体である。
【0065】
サブエアバッグ222は、メインエアバッグ211の中空内に設けられ、メインエアバッグ211の内側の壁面に沿って複数設けられている。
また、サブエアバッグ222は、上記実施の形態のサブエアバッグ221と同様に、サブインフレータによって出力されたガスが、ガス供給切り替え部によって分配および切り替えられ、それぞれのサブエアバッグ222に対して供給され、供給されたガスによって、それぞれのサブエアバッグ222が独立して、展開できるようになっている。
【0066】
なお、サブエアバッグ222は、サブエアバッグ222a〜222dと、図示しない複数のサブエアバッグと、を有している。
サブエアバッグ222aは、乗員P2の右肩と、車両1の後部座席右側のドアとの間に展開するように設けられている。サブエアバッグ222bは、乗員P4の左肩と、車両1の後部座席左側のドアとの間に展開するように設けられている。サブエアバッグ222cは、乗員P2の左肩と、乗員P3の右肩と、の間で展開するように設けられ、サブエアバッグ222dは、乗員P3の左肩と、乗員P4の右肩と、の間で展開するように設けられている。
【0067】
係止用バッグ232は、メインエアバッグ212の下部から内側に突出する袋体であり、メインエアバッグ212の下部の左右にそれぞれ1つずつ設けられている。
なお、係止用バッグ232は、メインエアバッグ212の下部の左右に1つずつではなく、どちらか一方だけであってもよい。また、係止用バッグ232は、乗員P2〜P4の間に設けるものであってもよい。さらに、係止用バッグ232を、前後方向、前方のみ、後方のみ、斜めに1つまたは複数設けるなど、他の形態で設けるようにしてもよい。また、係止用バッグ232を、ベンチシート12のヘッド部12cの高さに設け、ヘッド部12cに対して当接して、エアバッグ122が固定されるようにしてもよい。
【0068】
また、メインエアバッグ212と、係止用バッグ232とは、連通路で連通しており、インフレータ112から圧入されるガスは、メインエアバッグ212に流入し、メインエアバッグ212から連通路を介して係止用バッグ232に流入するようになっている。
【0069】
(乗員保護装置102の動作)
次に、車両1が衝突物と衝突する際の乗員保護装置102の動作について、説明する。
【0070】
まず、乗員保護装置102は、乗員検知部が乗員P2〜P4の検知を行い、ガス供給切り替え部に対して、展開の可能性があるサブエアバッグ222a〜221dの情報や、展開の必要のない他のサブエアバッグの情報を送る。ガス供給切り替え部では、乗員検知部から送られた情報に基づいて、事前準備を行う。
【0071】
次に、衝突検知部により、車両1に対する衝突が予測されると、メインインフレータ、サブインフレータ、および、乗員検知部に、衝突検知信号を送る。
【0072】
メインインフレータは、衝突検知部から衝突検知信号が送られると、メインエアバッグ212に対してガスを供給させる。
メインエアバッグ212は、メインインフレータからガスが供給されると、ベンチシート12、および、ベンチシート12に着座している乗員P2〜P4を内部に包み込みながら、展開する。
【0073】
また、メインエアバッグ212がベンチシート12の座部12aの下部まで展開すると、メインエアバッグ212と係止用バッグ232との間に設けられた連通路を介して、メインエアバッグ212内のガスが、係止用バッグ232に流入し、メインエアバッグ212の展開に遅れて座部12aの下部で係止用バッグ232が展開する。これにより、係止用バッグ232が座部12aに当接し、エアバッグ122がベンチシート12に固定されることとなる。
【0074】
一方、サブインフレータは、衝突検知部から衝突検知信号が送られると、ガス供給切り替え部を介してサブエアバッグ222に対してガスを供給させる。
【0075】
また、乗員検知部は、衝突検知部から衝突検知信号が送られると、現在の乗員P2〜P4の位置を検知し、検知した乗員P2〜P4の検知位置情報に基づいて、ガス供給切り替え部に対して、展開させるサブエアバッグ222a〜222dの指定信号を送る。
【0076】
次いで、ガス供給切り替え部は、乗員検知部によるサブエアバッグ222a〜222dの指定情報により出力先を切り替えて、サブインフレータから出力されたガスを、サブエアバッグ222a〜222dに供給させる。
【0077】
これにより、
図6に示すように、乗員P2〜P4の全員を包み込むようにメインエアバッグ212が展開される。また、乗員P2とメインエアバッグ212との間には、サブエアバッグ222aが展開され、乗員P4とメインエアバッグ212との間には、サブエアバッグ221bが展開される。さらに、乗員P2と乗員P3との間には、サブエアバッグ222cが展開され、乗員P3と乗員P4との間には、サブエアバッグ222dが展開される。また、メインエアバッグ212の下部では、係止用バッグ232が展開され、ベンチシート12の座部12aの下部に当接している。
【0078】
したがって、メインエアバッグ212の中で乗員P2〜P4がぶつかり合うことなく、しっかりと固定され、車両1に対する衝突の衝撃から守り、乗員P2〜P4の保護機能を高めることができる。また、乗員P2〜P4の周囲をメインエアバッグ212が覆っているので、全方位からの衝突の衝撃を緩和することができ、多くの衝突形態に対応することができる。
【0079】
また、サブインフレータから供給されるガスを、ガス切り替え部による選択によって、たくさんのサブエアバッグ222a〜222dおよび図示しないサブエアバッグから指定のサブエアバッグ222a〜222dのみを展開させるので、サブインフレータから供給するガスの量を限定的に縮小することができ、サブインフレータの容量を小さく抑えることができる。
【0080】
以上のように、本実施の形態における乗員保護装置101、102は、乗員P1〜P4の着座位置の周辺で展開するメインエアバッグ211、212と、メインエアバッグ211、212の内側壁面で展開するサブエアバッグ221、222と、を備えたので、乗員P1〜P4が、メインエアバッグ211、212によって周囲が守られつつ、メインエアバッグ211、212の中で、サブエアバッグ221、222に支えられるので、車両1に対するあらゆる方向からの衝撃を緩和することができ、多くの衝突形態に対応し、乗員の保護機能を高めることができる。
【0081】
また、本実施の形態における乗員保護装置101、102は、サブエアバッグ221、222を複数設け、乗員P1〜P4の着座位置に応じて、展開するサブエアバッグ221、222を切り替えるので、乗員P1〜P4を特定の位置で確実に固定させることができるとともに、少ないガス容量でサブエアバッグ221、222を展開できるので、インフレータの容量を抑えることができる。
【0082】
さらに、本実施の形態における乗員保護装置101、102は、メインエアバッグ211、212の展開後、メインエアバッグ211、212の下端部で内周側に展開する係止用バッグ231、232を備えたので、係止用バッグ231、232が座席シート10、ベンチシート12に当接し、メインエアバッグ211、212の動きを制限するので、乗員P1〜P4を覆い、固定されたメインエアバッグ211、212によって、車両1に対するあらゆる方向からの衝撃を緩和することができ、多くの衝突形態に対応し、乗員の保護機能を高めることができる。
【0083】
なお、本実施の形態においては、座席シート10が車両1の進行方向を向いたもので説明したが、これに限らず、座席シート10は、後や横等を向いたものであってもよい。この場合でも、乗員保護装置101は、座席シート10の全体を覆うので、乗員P1を確実に保護することができる。