(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
[車両構成]
図1は本発明の一実施の形態である車両用電源装置10が搭載された車両11の構成例を示す概略図である。
図1に示すように、車両11には、エンジン12を動力源に用いたパワーユニット13が搭載されている。エンジン12のクランク軸14には、ベルト機構15を介してスタータジェネレータ(発電電動機)16が連結されている。また、エンジン12にはトルクコンバータ17を介して変速機構18が連結されており、変速機構18にはデファレンシャル機構19等を介して車輪20が連結されている。
【0013】
エンジン12に連結されるスタータジェネレータ16は、発電機および電動機として機能する所謂ISG(Integrated Starter Generator)である。スタータジェネレータ16は、クランク軸14に駆動される発電機として機能するだけでなく、クランク軸14を駆動する電動機として機能する。例えば、アイドリングストップ制御においてエンジン12を再始動させる場合や、発進時や加速時においてエンジン12を補助する場合に、スタータジェネレータ16は力行状態に制御され、スタータジェネレータ16は電動機として機能する。
【0014】
スタータジェネレータ16は、ステータコイルを備えたステータ30と、フィールドコイルを備えたロータ31と、を有している。また、スタータジェネレータ16には、ステータコイルやフィールドコイルの通電状態を制御するため、インバータ、レギュレータ、マイコンおよび各種センサ等からなるISGコントローラ32が設けられている。ISGコントローラ32によってフィールドコイルやステータコイルの通電状態を制御することにより、スタータジェネレータ16の発電電圧、発電トルク、力行トルク等が制御される。なお、ISGコントローラ32は、スタータジェネレータ16の端子電圧(発電電圧,印加電圧)を検出する機能を有している。
【0015】
また、パワーユニット13には、エンジン12を始動回転させるスタータモータ33が設けられている。スタータモータ33のピニオン34は、トルクコンバータ17のリングギヤ35に噛み合う突出位置と、リングギヤ35との噛み合いが外れる退避位置と、に移動自在である。後述するように、乗員によってスタータボタン36が押されると、スタータモータ33の通電を制御するスタータリレー37がオン状態に切り替えられる。これにより、スタータリレー37を介してスタータモータ33に通電が為され、スタータモータ33のピニオン34は突出位置に移動して回転する。また、スタータリレー37を介してスタータモータ33を制御するため、車両11にはマイコン等からなるエンジンコントローラ38が設けられている。また、エンジンコントローラ38は、スタータリレー37を制御するだけでなく、スロットルバルブ、インジェクタおよび点火装置等のエンジン補機39を制御する。
【0016】
前述したように、図示する車両11には、エンジン12を始動回転させる電動機として、スタータジェネレータ16およびスタータモータ33が設けられている。アイドリングストップ制御によってエンジン12を再始動させる場合、つまりエンジン運転中に停止条件が成立することでエンジン12を停止させ、エンジン停止中に始動条件が成立することでエンジン12を再始動させる場合には、スタータジェネレータ16を用いてエンジン12の始動回転が行われる。一方、車両11の制御システムを起動させて最初にエンジン12を始動させる場合、つまり乗員のスタータボタン操作によってエンジン12を始動させる場合には、スタータモータ33を用いてエンジン12の始動回転が行われる。
【0017】
また、トルクコンバータ17には、ロックアップクラッチ40が組み込まれている。ロックアップクラッチ40を締結状態に制御することにより、エンジン12と変速機構18とはロックアップクラッチ40を介して連結される。一方、ロックアップクラッチ40を解放状態に制御することにより、エンジン12と変速機構18とはトルクコンバータ17を介して連結される。また、ロックアップクラッチ40は、締結状態と解放状態とに制御されるだけでなく、滑り状態であるスリップ状態にも制御することが可能である。ロックアップクラッチ40の作動状態を切り替えるため、トルクコンバータ17には電磁バルブや油路等からなるバルブユニット41が接続されており、バルブユニット41にはマイコン等からなるミッションコントローラ42が接続されている。
【0018】
[電源回路]
車両用電源装置10が備える電源回路50について説明する。
図2は電源回路50の一例を簡単に示した回路図である。
図2に示すように、電源回路50は、スタータジェネレータ16に電気的に接続される鉛バッテリ(第1蓄電体)51と、これと並列にスタータジェネレータ16に電気的に接続されるリチウムイオンバッテリ(第2蓄電体)52と、を備えている。なお、リチウムイオンバッテリ52を積極的に放電させるため、リチウムイオンバッテリ52の端子電圧は、鉛バッテリ51の端子電圧よりも高く設計されている。また、リチウムイオンバッテリ52を積極的に充放電させるため、リチウムイオンバッテリ52の内部抵抗は、鉛バッテリ51の内部抵抗よりも小さく設計されている。
【0019】
スタータジェネレータ16の正極端子16aには正極ライン53が接続され、リチウムイオンバッテリ52の正極端子52aには正極ライン54が接続され、鉛バッテリ51の正極端子51aには正極ライン55を介して正極ライン56が接続される。これらの正極ライン53,54,56は、接続点57を介して互いに接続されている。また、スタータジェネレータ16の負極端子16bには負極ライン58が接続され、リチウムイオンバッテリ52の負極端子52bには負極ライン59が接続され、鉛バッテリ51の負極端子51bには負極ライン60が接続される。これらの負極ライン58,59,60は、基準電位点61を介して互いに接続されている。
【0020】
図1に示すように、鉛バッテリ51の正極ライン55には、正極ライン62が接続されている。この正極ライン62には、各種アクチュエータや各種コントローラ等の電気機器(電気負荷)63からなる電気機器群64が接続されている。また、鉛バッテリ51の負極ライン60には、バッテリセンサ65が設けられている。バッテリセンサ65は、鉛バッテリ51の充放電状況を検出する機能を有している。鉛バッテリ51の充放電状況としては、例えば、鉛バッテリ51の充電電流、放電電流、端子電圧、充電状態SOC等が挙げられる。
【0021】
また、電源回路50には、鉛バッテリ51および電気機器63からなる第1電源系71が設けられており、リチウムイオンバッテリ52およびスタータジェネレータ16からなる第2電源系72が設けられている。そして、第1電源系71と第2電源系72とは、正極ライン56を介して互いに接続されている。この正極ライン56には、過大電流によって溶断する電力ヒューズ73が設けられるとともに、オン状態とオフ状態とに制御される第1スイッチSW1が設けられている。また、リチウムイオンバッテリ52の正極ライン54には、オン状態とオフ状態とに制御される第2スイッチSW2が設けられている。
【0022】
スイッチSW1をオン状態に制御することにより、第1電源系71と第2電源系72とを互いに接続することができる一方、スイッチSW1をオフ状態に制御することにより、第1電源系71と第2電源系72とを互いに切り離すことができる。また、スイッチSW2をオン状態に制御することにより、スタータジェネレータ16とリチウムイオンバッテリ52とを互いに接続することができる一方、スイッチSW2をオフ状態に制御することにより、スタータジェネレータ16とリチウムイオンバッテリ52とを互いに切り離すことができる。
【0023】
これらのスイッチSW1,SW2は、MOSFET等の半導体素子によって構成されるスイッチであっても良く、電磁力等を用いて接点を機械的に開閉させるスイッチであっても良い。また、スイッチSW1,SW2のオン状態とは、電気的に接続される通電状態や導通状態を意味しており、スイッチSW1,SW2のオフ状態とは、電気的に切断される非通電状態や遮断状態を意味している。なお、スイッチSW1,SW2は、リレーやコンタクタ等とも呼ばれている。
【0024】
図1に示すように、電源回路50には、バッテリモジュール74が設けられている。このバッテリモジュール74は、リチウムイオンバッテリ52を有するとともに、スイッチSW1,SW2を有している。また、バッテリモジュール74は、マイコンや各種センサ等からなるバッテリコントローラ75を有している。バッテリコントローラ75は、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOC、充電電流、放電電流、端子電圧、セル温度、内部抵抗等を監視する機能や、スイッチSW1,SW2を制御する機能を有している。なお、充電状態SOC(State Of Charge)とは、バッテリの設計容量に対する蓄電量の比率である。
【0025】
[制御系]
図1に示すように、車両用電源装置10は、パワーユニット13や電源回路50等を互いに協調させて制御するため、マイコン等からなるメインコントローラ80を有している。このメインコントローラ80は、エンジン12を制御するエンジン制御部81、スタータジェネレータ16を制御するISG制御部(発電電動機制御部)82、スイッチSW1を制御する第1スイッチ制御部83、スイッチSW2を制御する第2スイッチ制御部84、およびスイッチSW2の故障状態を判定する故障判定部85を有している。また、メインコントローラ80は、スタータモータ33を制御するスタータ制御部86、およびロックアップクラッチ40を制御するクラッチ制御部87を有している。また、メインコントローラ80は、後述するアイドリングストップ制御を実行するアイドリング制御部88、後述するモータアシスト制御を実行するアシスト制御部89、後述するコーストスリップロックアップ制御(スリップロックアップ制御)を実行するスリップロックアップ制御部90を有している。さらに、メインコントローラ80は、後述するフェイルセーフ制御を実行するフェイルセーフ制御部91等を有している。
【0026】
メインコントローラ80や前述した各コントローラ32,38,42,75は、CANやLIN等の車載ネットワーク92を介して互いに通信自在に接続されている。メインコントローラ80は、各種コントローラや各種センサからの情報に基づいて、パワーユニット13や電源回路50等を制御する。なお、メインコントローラ80は、ISGコントローラ32を介してスタータジェネレータ16を制御し、バッテリコントローラ75を介してスイッチSW1,SW2を制御する。また、メインコントローラ80は、エンジンコントローラ38を介してエンジン12やスタータモータ33を制御し、ミッションコントローラ42を介してロックアップクラッチ40を制御する。
【0027】
[スタータジェネレータ発電制御]
続いて、メインコントローラ80によるスタータジェネレータ16の発電制御について説明する。メインコントローラ80のISG制御部82は、ISGコントローラ32に制御信号を出力し、スタータジェネレータ16を発電状態や力行状態に制御する。例えば、ISG制御部82は、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが低下すると、スタータジェネレータ16の発電電圧を上げて燃焼発電状態に制御する一方、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが上昇すると、スタータジェネレータ16の発電電圧を下げて発電休止状態に制御する。なお、後述する
図3以降の各図面において、「ISG」とはスタータジェネレータ16を意味している。
【0028】
図3はスタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。例えば、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが所定の下限値を下回る場合には、リチウムイオンバッテリ52を充電して充電状態SOCを高めるため、エンジン動力によってスタータジェネレータ16が発電駆動される。このように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の発電電圧が、鉛バッテリ51およびリチウムイオンバッテリ52の端子電圧よりも上げられる。これにより、
図3に黒塗りの矢印で示すように、スタータジェネレータ16から、リチウムイオンバッテリ52、電気機器群64および鉛バッテリ51等に対して電流が供給され、リチウムイオンバッテリ52や鉛バッテリ51が緩やかに充電される。なお、スタータジェネレータ16の燃焼発電状態とは、エンジン動力によってスタータジェネレータ16を発電させる状態、つまりエンジン内で燃料を燃焼させてスタータジェネレータ16を発電させる状態である。
【0029】
図4はスタータジェネレータ16を発電休止状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。例えば、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが所定の上限値を上回る場合には、リチウムイオンバッテリ52を積極的に放電させるため、エンジン動力を用いたスタータジェネレータ16の発電駆動が休止される。このように、スタータジェネレータ16を発電休止状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の発電電圧が、鉛バッテリ51およびリチウムイオンバッテリ52の端子電圧よりも下げられる。これにより、
図4に黒塗りの矢印で示すように、リチウムイオンバッテリ52から電気機器群64に電流が供給されるため、スタータジェネレータ16の発電駆動を抑制または停止させることができ、エンジン負荷を軽減することができる。なお、発電休止状態におけるスタータジェネレータ16の発電電圧としては、リチウムイオンバッテリ52を放電させる発電電圧であれば良い。例えば、スタータジェネレータ16の発電電圧を0Vに制御しても良く、スタータジェネレータ16の発電電圧を0Vよりも高く制御しても良い。
【0030】
前述したように、メインコントローラ80のISG制御部82は、充電状態SOCに基づきスタータジェネレータ16を燃焼発電状態や発電休止状態に制御しているが、車両減速時には多くの運動エネルギーを回収して燃費性能を高めることが求められる。そこで、車両減速時には、スタータジェネレータ16の発電電圧が大きく引き上げられ、スタータジェネレータ16は回生発電状態に制御される。これにより、スタータジェネレータ16の発電電力を増加させることができるため、運動エネルギーを積極的に電気エネルギーに変換して回収することができ、車両11のエネルギー効率を高めて燃費性能を向上させることができる。このような回生発電を実行するか否かについては、アクセルペダルやブレーキペダルの操作状況等に基づき決定される。つまり、アクセルペダルの踏み込みが解除される減速走行時や、ブレーキペダルが踏み込まれる減速走行時には、スタータジェネレータ16が回生発電状態に制御される。
【0031】
ここで、
図5はスタータジェネレータ16を回生発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。スタータジェネレータ16を回生発電状態に制御する際には、前述した燃焼発電状態よりもスタータジェネレータ16の発電電圧が引き上げられ、リチウムイオンバッテリ52に対する印加電圧が端子電圧よりも大きく引き上げられる。これにより、
図5に黒塗りの矢印で示すように、スタータジェネレータ16から、リチウムイオンバッテリ52や鉛バッテリ51に対して大きな電流が供給されるため、リチウムイオンバッテリ52や鉛バッテリ51は急速に充電される。また、リチウムイオンバッテリ52の内部抵抗は、鉛バッテリ51の内部抵抗よりも小さいことから、発電電流の大部分はリチウムイオンバッテリ52に供給される。
【0032】
なお、
図3〜
図5に示すように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態、回生発電状態および発電休止状態に制御する際に、スイッチSW1,SW2はオン状態に保持されている。つまり、車両用電源装置10においては、スイッチSW1,SW2の切替制御を行うことなく、スタータジェネレータ16の発電電圧を制御するだけで、リチウムイオンバッテリ52の充放電を制御することが可能である。これにより、簡単にリチウムイオンバッテリ52の充放電を制御することができるだけでなく、スイッチSW1,SW2の耐久性を向上させることができる。
【0033】
[アイドリングストップ制御におけるエンジン再始動]
メインコントローラ80のアイドリング制御部88は、自動的にエンジン12を停止させて再始動するアイドリングストップ制御を実行する。アイドリング制御部88は、エンジン運転中に所定の停止条件が成立した場合に、燃料カット等を実施してエンジン12を停止させる一方、エンジン停止中に所定の始動条件が成立した場合に、スタータジェネレータ16を回転させてエンジン12を再始動させる。エンジン12の停止条件としては、例えば、車速が所定値を下回り、かつブレーキペダルが踏み込まれることが挙げられる。また、エンジン12の始動条件としては、例えば、ブレーキペダルの踏み込みが解除されることや、アクセルペダルの踏み込みが開始されることが挙げられる。なお、アイドリング制御部88は、アイドリングストップ制御を実行する際に、エンジン制御部81やISG制御部82に制御信号を出力し、エンジン12やスタータジェネレータ16を制御する。
【0034】
また、アイドリング制御部88は、アイドリングストップ制御でのエンジン停止中に始動条件が成立すると、スタータジェネレータ16を力行状態に制御してエンジン12を始動回転させる。ここで、
図6はスタータジェネレータ16を力行状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。
図6に示すように、アイドリングストップ制御におけるエンジン再始動時に、スタータジェネレータ16を力行状態に制御する際には、スイッチSW1がオン状態からオフ状態に切り替えられる。つまり、スタータジェネレータ16によってエンジン12を始動回転させる場合には、スイッチSW1がオフ状態に切り替えられ、第1電源系71と第2電源系72とが互いに切り離される。これにより、リチウムイオンバッテリ52からスタータジェネレータ16に大電流が供給される場合であっても、第1電源系71の電気機器群64に対する瞬間的な電圧低下を防止することができ、電気機器群64等を正常に機能させることができる。
【0035】
[モータアシスト制御]
メインコントローラ80のアシスト制御部89は、発進時や加速時等にスタータジェネレータ16を力行状態に制御し、スタータジェネレータ16によってエンジン12を補助するモータアシスト制御を実行する。なお、アシスト制御部89は、モータアシスト制御を実行する際に、ISG制御部82に制御信号を出力し、スタータジェネレータ16を制御する。
【0036】
ここで、
図7はスタータジェネレータ16を力行状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。
図7に示すように、モータアシスト制御に伴ってスタータジェネレータ16を力行状態に制御する際には、スイッチSW1,SW2は共にオン状態に保持される。このように、スタータジェネレータ16によってエンジン12を補助する場合には、スイッチSW1,SW2をオン状態に制御することにより、電気機器群64に鉛バッテリ51とリチウムイオンバッテリ52との双方を接続している。これにより、電気機器群64の電源電圧を安定させることができ、車両用電源装置10の信頼性を向上させることができる。
【0037】
前述したように、スタータジェネレータ16によるエンジン再始動時には、スイッチSW1がオフ状態に切り替えられる一方、スタータジェネレータ16によるモータアシスト時には、スイッチSW1がオン状態に保持される。つまり、エンジン再始動とは、停止中のエンジン12をスタータジェネレータ16によって回転させ始める状況であり、スタータジェネレータ16の消費電力が増加し易い状況である。これに対し、モータアシスト時とは、回転中のエンジン12をスタータジェネレータ16によって補助的に駆動する状況であり、スタータジェネレータ16の消費電力が抑制される状況である。このように、モータアシスト制御においては、スタータジェネレータ16の消費電力が抑制されることから、スイッチSW1をオン状態に保持したとしても、鉛バッテリ51からスタータジェネレータ16に大電流が流れることはなく、電気機器群64の電源電圧を安定させることができる。
【0038】
[エンジン初始動制御,鉛バッテリ補充電制御]
続いて、スタータモータ33を用いてエンジン12を始動するエンジン初始動制御について説明した後に、エンジン初始動後のスタータジェネレータ16による鉛バッテリ補充電制御について説明する。ここで、
図8はエンジン初始動制御における電流供給状況の一例を示す図である。また、
図9は鉛バッテリ補充電制御における電流供給状況の一例を示す図である。
【0039】
車両11の制御システムを起動させて最初にエンジン12を始動する場合、つまりスタータボタン操作によってエンジン12を始動する場合には、スタータモータ33によってエンジン12の始動回転が行われる。このエンジン初始動制御においては、
図8に示すように、スイッチSW1がオフ状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータリレー37がオン状態に制御される。これにより、鉛バッテリ51からスタータモータ33に電流が供給され、スタータモータ33を回転させることでエンジン12を始動させる。
【0040】
このように、スタータモータ33によってエンジン12が始動されると、
図9に示すように、スタータリレー37がオフ状態に切り替えられ、スイッチSW1がオン状態に切り替えられ、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御される。すなわち、エンジン12が始動されると、スイッチSW2をオフ状態に保持したまま、スイッチSW1がオン状態に切り替えられ、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御される。これにより、スタータジェネレータ16によって鉛バッテリ51を積極的に充電することができ、停車中やエンジン初始動時に低下する鉛バッテリ51の充電状態SOCを回復させることができる。
【0041】
つまり、停車中には鉛バッテリ51から電気機器群64に暗電流が流れ、エンジン初始動時には鉛バッテリ51からスタータモータ33に大電流が流れるため、停車中からエンジン初始動時にかけて鉛バッテリ51の充電状態SOCは徐々に低下する。このため、エンジン初始動後に鉛バッテリ補充電制御を実行することにより、低下した鉛バッテリ51の充電状態SOCを回復させている。なお、鉛バッテリ補充電制御は、所定時間に渡って継続しても良く、鉛バッテリ51の充電状態SOCが所定値に回復するまで継続しても良い。
【0042】
[スイッチSW2の故障判定制御]
以下、車両用電源装置10によって実行されるスイッチSW2の故障判定制御について説明する。前述したように、スイッチSW2は、車両用電源装置10の作動状況に応じてオン状態やオフ状態に制御される。しかしながら、スイッチSW2がオン状態で動作不能になる故障状態(以下、ON固着と記載する。)が発生した場合には、車両用電源装置10を適切に作動させることが困難である。そこで、本発明の一実施形態である車両用電源装置10は、後述する各種故障判定制御1〜8の少なくとも何れかを実行することにより、スイッチSW2にON固着が発生しているか否かを判定する。
【0043】
後述するように、各種故障判定制御1〜8において、メインコントローラ80の故障判定部85は、スタータジェネレータ16に送信される制御信号、スイッチSW1に送信される制御信号、スイッチSW2に送信される制御信号を認識した状態のもとで、鉛バッテリ51の電流、リチウムイオンバッテリ52の電流、およびスタータジェネレータ16の電圧の少なくとも何れか1つに基づいて、スイッチSW2がON固着であるか否かを判定する。
【0044】
なお、メインコントローラ80のISG制御部82は、ISGコントローラ32を介してスタータジェネレータ16に制御信号を送信する。スタータジェネレータ16に送信される制御信号として、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態や回生発電状態に制御する発電信号、スタータジェネレータ16を発電休止状態に制御する発電休止信号、およびスタータジェネレータ16を力行状態に制御する力行信号がある。
【0045】
また、メインコントローラ80の第1スイッチ制御部83は、バッテリコントローラ75を介してスイッチSW1に制御信号を送信する。スイッチSW1に送信される制御信号として、スイッチSW1をオン状態に制御するオン信号があり、スイッチSW1をオフ状態に制御するオフ信号がある。さらに、メインコントローラ80の第2スイッチ制御部84は、バッテリコントローラ75を介してスイッチSW2に制御信号を送信する。スイッチSW2に送信される制御信号として、スイッチSW2をオン状態に制御するオン信号があり、スイッチSW2をオフ状態に制御するオフ信号がある。
【0046】
(故障判定制御1)
図10は故障判定制御1の実行手順の一例を示すフローチャートである。また、
図11(A)および(B)は、故障判定制御1を実行したときの電流供給状況の一例を示す図である。
図11(A)にはスイッチSW2が正常である場合の状況が示され、
図11(B)にはスイッチSW2がON固着である場合の状況が示されている。なお、
図11(A)および(B)に示す黒塗りの矢印は、電流の供給状況を示す矢印である。
【0047】
図10に示すように、ステップS10では、スイッチSW1に向けてオン信号が送信され、ステップS11では、スイッチSW2に向けてオフ信号が送信され、ステップS12では、スタータジェネレータ16に向けて発電休止信号が送信される。続いて、ステップS13では、リチウムイオンバッテリ52から放電される放電電流(電流)iLi_dが検出される。なお、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dは、バッテリコントローラ75によって検出することが可能である。
【0048】
続いて、ステップS14では、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが、所定の閾値id1を上回るか否かが判定される。ステップS14において、放電電流iLi_dが閾値id1を上回ると判定された場合には、ステップS15に進み、スイッチSW2にON固着が発生していると判定される。一方、ステップS14において、放電電流iLi_dが閾値id1以下であると判定された場合には、ステップS16に進み、スイッチSW2が正常状態であると判定される。
【0049】
ここで、
図11(A)に示すように、スイッチSW2が正常であった場合には、スイッチSW1がオン状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータジェネレータ16が発電休止状態に制御される。この場合には、リチウムイオンバッテリ52から電気機器群64が切り離されるため、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dは「0A」である。
【0050】
これに対し、
図11(B)に示すように、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW1がオン状態に制御され、スイッチSW2がオン状態に保持され、スタータジェネレータ16が発電休止状態に制御される。この場合には、リチウムイオンバッテリ52に電気機器群64が接続されるため、電気機器群64の作動状況に応じてリチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが増加する。
【0051】
すなわち、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW2が正常である場合に比べて、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが増加する。このため、放電電流iLi_dと閾値id1とを比較判定し、放電電流iLi_dの増加状況を捉えることにより、スイッチSW2のON固着を検出することができる。なお、閾値id1については、放電電流iLi_dの増加状況を捉えるように、実験やシミュレーション等に基づき設定される。
【0052】
(故障判定制御2)
図12は故障判定制御2の実行手順の一例を示すフローチャートである。また、
図13(A)および(B)は、故障判定制御2を実行したときの電圧印加状況の一例を示す図である。
図13(A)にはスイッチSW2が正常である場合の状況が示され、
図13(B)にはスイッチSW2がON固着である場合の状況が示されている。なお、
図13(A)および(B)に示す白抜きの矢印は、リチウムイオンバッテリ52による電圧の印加状況を示す矢印である。
【0053】
図12に示すように、ステップS20では、スイッチSW1に向けてオフ信号が送信され、ステップS21では、スイッチSW2に向けてオフ信号が送信され、ステップS22では、スタータジェネレータ16に向けて発電休止信号が送信される。続いて、ステップS23では、スタータジェネレータ16に印加される端子電圧(印加電圧,電圧)Visgが検出される。なお、スタータジェネレータ16に印加される端子電圧Visg、つまりスタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgは、ISGコントローラ32によって検出することが可能である。
【0054】
続いて、ステップS24では、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgが、所定の閾値V1を上回るか否かが判定される。ステップS24において、印加電圧Visgが閾値V1を上回ると判定された場合には、ステップS25に進み、スイッチSW2にON固着が発生していると判定される。一方、ステップS24において、印加電圧Visgが閾値V1以下であると判定された場合には、ステップS26に進み、スイッチSW2が正常状態であると判定される。
【0055】
ここで、
図13(A)に示すように、スイッチSW2が正常であった場合には、スイッチSW1がオフ状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータジェネレータ16が発電休止状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16から鉛バッテリ51およびリチウムイオンバッテリ52の双方が切り離されるため、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgは「0V」である。
【0056】
これに対し、
図13(B)に示すように、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW1がオフ状態に制御され、スイッチSW2がオン状態に保持され、スタータジェネレータ16が発電休止状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16にリチウムイオンバッテリ52が接続されるため、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgはリチウムイオンバッテリ52の端子電圧に相当する電圧値である。
【0057】
すなわち、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW2が正常である場合に比べて、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgが上昇する。このため、印加電圧Visgと閾値V1とを比較判定し、印加電圧Visgの上昇状況を捉えることにより、スイッチSW2のON固着を検出することができる。なお、閾値V1については、印加電圧Visgの上昇状況を捉えるように、実験やシミュレーション等に基づき設定される。
【0058】
また、スイッチSW1がオフ状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータジェネレータ16が発電休止状態に制御される状況として、
図8に示すように、エンジン初始動制御を実行する状況がある。つまり、エンジン初始動制御の実行時に、故障判定制御2を併せて実行することにより、簡単にスイッチSW2のON固着を検出することが可能である。
【0059】
(故障判定制御3)
図14は故障判定制御3の実行手順の一例を示すフローチャートである。また、
図15(A)および(B)は、故障判定制御3を実行したときの電流供給状況の一例を示す図である。
図15(A)にはスイッチSW2が正常である場合の状況が示され、
図15(B)にはスイッチSW2がON固着である場合の状況が示されている。なお、
図15(A)および(B)に示す黒塗りの矢印は、電流の供給状況を示す矢印である。
【0060】
図14に示すように、ステップS30では、スイッチSW1に向けてオン信号が送信され、ステップS31では、スイッチSW2に向けてオフ信号が送信され、ステップS32では、スタータジェネレータ16に向けて発電信号が送信される。続いて、ステップS33では、リチウムイオンバッテリ52に充電される充電電流(電流)iLi_cが検出される。なお、リチウムイオンバッテリ52の充電電流iLi_cは、バッテリコントローラ75によって検出することが可能である。
【0061】
続いて、ステップS34では、リチウムイオンバッテリ52の充電電流iLi_cが、所定の閾値ic1を上回るか否かが判定される。ステップS34において、充電電流iLi_cが閾値ic1を上回ると判定された場合には、ステップS35に進み、スイッチSW2にON固着が発生していると判定される。一方、ステップS34において、充電電流iLi_cが閾値ic1以下であると判定された場合には、ステップS36に進み、スイッチSW2が正常状態であると判定される。
【0062】
ここで、
図15(A)に示すように、スイッチSW2が正常であった場合には、スイッチSW1がオン状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータジェネレータ16が発電状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16からリチウムイオンバッテリ52が切り離されるため、リチウムイオンバッテリ52に対する充電電流iLi_cは「0A」である。
【0063】
これに対し、
図15(B)に示すように、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW1がオン状態に制御され、スイッチSW2がオン状態に保持され、スタータジェネレータ16が発電状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16に対してリチウムイオンバッテリ52が接続されるため、発電するスタータジェネレータ16からリチウムイオンバッテリ52に向けて充電電流iLi_cが流される。
【0064】
すなわち、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW2が正常である場合に比べて、リチウムイオンバッテリ52の充電電流iLi_cが増加する。このため、充電電流iLi_cと閾値ic1とを比較判定し、充電電流iLi_cの増加状況を捉えることにより、スイッチSW2のON固着を検出することができる。なお、閾値ic1については、充電電流iLi_cの増加状況を捉えるように、実験やシミュレーション等に基づき設定される。
【0065】
また、スイッチSW1がオン状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータジェネレータ16が発電状態に制御される状況として、
図9に示すように、鉛バッテリ補充電制御を実行する状況がある。つまり、鉛バッテリ補充電制御の実行時に、故障判定制御3を併せて実行することにより、簡単にスイッチSW2のON固着を検出することが可能である。
【0066】
(故障判定制御4)
図16は故障判定制御4の実行手順の一例を示すフローチャートである。また、
図17(A)および(B)は、故障判定制御4を実行したときの電流供給状況の一例を示す図である。
図17(A)にはスイッチSW2が正常である場合の状況が示され、
図17(B)にはスイッチSW2がON固着である場合の状況が示されている。なお、
図17(A)および(B)に示す黒塗りの矢印は、電流の供給状況を示す矢印である。
【0067】
図16に示すように、ステップS40では、スイッチSW1に向けてオフ信号が送信され、ステップS41では、スイッチSW2に向けてオフ信号が送信され、ステップS42では、スタータジェネレータ16に向けて発電信号が送信される。続いて、ステップS43では、リチウムイオンバッテリ52に充電される充電電流(電流)iLi_cが検出される。なお、リチウムイオンバッテリ52の充電電流iLi_cは、バッテリコントローラ75によって検出することが可能である。
【0068】
続いて、ステップS44では、リチウムイオンバッテリ52の充電電流iLi_cが、所定の閾値ic2を上回るか否かが判定される。ステップS44において、充電電流iLi_cが閾値ic2を上回ると判定された場合には、ステップS45に進み、スイッチSW2にON固着が発生していると判定される。一方、ステップS44において、充電電流iLi_cが閾値ic2以下であると判定された場合には、ステップS46に進み、スイッチSW2が正常状態であると判定される。
【0069】
ここで、
図17(A)に示すように、スイッチSW2が正常であった場合には、スイッチSW1がオフ状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータジェネレータ16が発電状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16からリチウムイオンバッテリ52が切り離されるため、リチウムイオンバッテリ52に対する充電電流iLi_cは「0A」である。
【0070】
これに対し、
図17(B)に示すように、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW1がオフ状態に制御され、スイッチSW2がオン状態に保持され、スタータジェネレータ16が発電状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16に対してリチウムイオンバッテリ52が接続されるため、発電するスタータジェネレータ16からリチウムイオンバッテリ52に向けて充電電流iLi_cが流される。
【0071】
すなわち、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW2が正常である場合に比べて、リチウムイオンバッテリ52の充電電流iLi_cが増加する。このため、充電電流iLi_cと閾値ic2とを比較判定し、充電電流iLi_cの増加状況を捉えることにより、スイッチSW2のON固着を検出することができる。なお、閾値ic2については、充電電流iLi_cの増加状況を捉えるように、実験やシミュレーション等に基づき設定される。
【0072】
(故障判定制御5)
図18は故障判定制御5の実行手順の一例を示すフローチャートである。また、
図19(A)および(B)は、故障判定制御5または後述する故障判定制御6を実行したときの電流供給状況の一例を示す図である。
図19(A)にはスイッチSW2が正常である場合の状況が示され、
図19(B)にはスイッチSW2がON固着である場合の状況が示されている。なお、
図19(A)および(B)に示す黒塗りの矢印は、電流の供給状況を示す矢印である。
【0073】
図18に示すように、ステップS50では、スイッチSW1に向けてオン信号が送信され、ステップS51では、スイッチSW2に向けてオフ信号が送信され、ステップS52では、スタータジェネレータ16に向けて力行信号が送信される。続くステップS53では、リチウムイオンバッテリ52から放電される放電電流(電流)iLi_dが検出される。なお、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dは、バッテリコントローラ75によって検出することが可能である。続くステップS54では、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが、所定の閾値id2を上回るか否かが判定される。ステップS54において、放電電流iLi_dが閾値id2を上回ると判定された場合には、ステップS55に進み、スイッチSW2にON固着が発生していると判定される。
【0074】
一方、ステップS54において、放電電流iLi_dが閾値id2以下であると判定された場合には、ステップS56に進み、鉛バッテリ51から放電される放電電流(電流)iPb_dが検出される。なお、鉛バッテリ51の放電電流iPb_dは、バッテリセンサ65によって検出することが可能である。続くステップS57では、鉛バッテリ51の放電電流iPb_dが、所定の閾値id3を下回るか否かが判定される。ステップS57において、放電電流iPb_dが閾値id3を下回ると判定された場合には、ステップS55に進み、スイッチSW2にON固着が発生していると判定される。
【0075】
このように、ステップS54において、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが閾値id2を上回ると判定された場合や、ステップS57において、鉛バッテリ51の放電電流iPb_dが閾値id3を下回ると判定された場合には、ステップS55に進み、スイッチSW2がON固着であると判定される。一方、ステップS54において、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが閾値id2以下であると判定され、かつステップS57において、鉛バッテリ51の放電電流iPb_dが閾値id3以上であると判定された場合には、ステップS58に進み、スイッチSW2が正常状態であると判定される。
【0076】
ここで、
図19(A)に示すように、スイッチSW2が正常であった場合には、スイッチSW1がオン状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータジェネレータ16が力行状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16からリチウムイオンバッテリ52が切り離されるため、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dは「0A」である。
【0077】
これに対し、
図19(B)に示すように、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW1がオン状態に制御され、スイッチSW2がオン状態に保持され、スタータジェネレータ16が力行状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16にリチウムイオンバッテリ52が接続されるため、スタータジェネレータ16に向けてリチウムイオンバッテリ52から放電電流iLi_dが流される。
【0078】
すなわち、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW2が正常である場合に比べて、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが増加する。このため、放電電流iLi_dと閾値id2とを比較判定し、放電電流iLi_dの増加状況を捉えることにより、スイッチSW2のON固着を検出することができる。なお、閾値id2については、放電電流iLi_dの増加状況を捉えるように、実験やシミュレーション等に基づき設定される。
【0079】
また、
図19(A)に示すように、スイッチSW2が正常であった場合には、スイッチSW1がオン状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータジェネレータ16が力行状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16からリチウムイオンバッテリ52が切り離され、スタータジェネレータ16に対して鉛バッテリ51が接続される。このため、スタータジェネレータ16に向けて鉛バッテリ51だけから放電電流iPb_dが流される。
【0080】
これに対し、
図19(B)に示すように、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW1がオン状態に制御され、スイッチSW2がオン状態に保持され、スタータジェネレータ16が力行状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16に対して鉛バッテリ51およびリチウムイオンバッテリ52が接続される。このため、スタータジェネレータ16に向けて鉛バッテリ51とリチウムイオンバッテリ52との双方から放電電流iPb_d,iLi_dが流される。
【0081】
このように、スイッチSW2が正常であった場合には、鉛バッテリ51だけからスタータジェネレータ16に電流が供給されるため、鉛バッテリ51の放電電流iPb_dが増加する傾向にある。一方、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、鉛バッテリ51とリチウムイオンバッテリ52との双方からスタータジェネレータ16に電流が供給されるため、鉛バッテリ51の放電電流iPb_dが減少する傾向にある。
【0082】
すなわち、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW2が正常である場合に比べて、鉛バッテリ51の放電電流iPb_dが減少する。このため、放電電流iPb_dと閾値id3とを比較判定し、放電電流iPb_dの減少状況を捉えることにより、スイッチSW2のON固着を検出することができる。なお、閾値id3については、放電電流iPb_dの減少状況を捉えるように、実験やシミュレーション等に基づき設定される。
【0083】
(故障判定制御6)
図18に示した故障判定制御5では、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが閾値id2を上回る場合、または鉛バッテリ51の放電電流iPb_dが閾値id3を下回る場合に、スイッチSW2がON固着であると判定しているが、これに限られることはない。以下、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが閾値id2を上回り、かつ鉛バッテリ51の放電電流iPb_dが閾値id3を下回る場合に、スイッチSW2がON固着であると判定する故障判定制御6について説明する。
【0084】
図20は故障判定制御6の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図20に示すように、ステップS60では、スイッチSW1に向けてオン信号が送信され、ステップS61では、スイッチSW2に向けてオフ信号が送信され、ステップS62では、スタータジェネレータ16に向けて力行信号が送信される。
【0085】
続くステップS63では、リチウムイオンバッテリ52から放電される放電電流(電流)iLi_dが検出され、ステップS64では、鉛バッテリ51から放電される放電電流(電流)iPb_dが検出される。なお、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dは、バッテリコントローラ75によって検出することが可能である。また、鉛バッテリ51の放電電流iPb_dは、バッテリセンサ65によって検出することが可能である。
【0086】
続いて、ステップS65では、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが、所定の閾値id2を上回るか否かが判定される。ステップS65において、放電電流iLi_dが閾値id2を上回ると判定された場合には、ステップS66に進み、鉛バッテリ51の放電電流iPb_dが、所定の閾値id3を下回るか否かが判定される。そして、ステップS66において、放電電流iPb_dが閾値id3を下回ると判定された場合には、ステップS67に進み、スイッチSW2にON固着が発生していると判定される。
【0087】
このように、ステップS65において、放電電流iLi_dが閾値id2を上回ると判定され、かつステップS66において、放電電流iPb_dが閾値id3を下回ると判定された場合には、ステップS67に進み、スイッチSW2がON固着であると判定される。一方、ステップS65において、放電電流iLi_dが閾値id2以下であると判定された場合、またはステップS66において、放電電流iPb_dが閾値id3以上であると判定された場合には、ステップS68に進み、スイッチSW2が正常状態であると判定される。
【0088】
前述した
図19(A)に示すように、スイッチSW2が正常であった場合には、スイッチSW1がオン状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータジェネレータ16が力行状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16からリチウムイオンバッテリ52が切り離され、スタータジェネレータ16には鉛バッテリ51が接続される。このため、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dは「0A」であり、スタータジェネレータ16に向けて鉛バッテリ51から放電電流iPb_dが流される。
【0089】
これに対し、
図19(B)に示すように、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW1がオン状態に制御され、スイッチSW2がオン状態に保持され、スタータジェネレータ16が力行状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16に対して鉛バッテリ51およびリチウムイオンバッテリ52が接続される。このため、スタータジェネレータ16に向けて鉛バッテリ51から放電電流iPb_dが流されるとともに、スタータジェネレータ16に向けてリチウムイオンバッテリ52から放電電流iLi_dが流される。
【0090】
すなわち、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW2が正常である場合に比べて、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが増加し、かつ鉛バッテリ51の放電電流iPb_dが減少する。このため、放電電流iLi_dと閾値id2とを比較判定し、放電電流iLi_dの増加状況を捉えるとともに、放電電流iPb_dと閾値id3とを比較判定し、放電電流iPb_dの減少状況を捉えることにより、スイッチSW2のON固着を検出することができる。なお、閾値id2については、放電電流iLi_dの増加状況を捉えるように、実験やシミュレーション等に基づき設定される。また、閾値id3については、放電電流iPb_dの減少状況を捉えるように、実験やシミュレーション等に基づき設定される。
【0091】
(故障判定制御7)
図21は故障判定制御7の実行手順の一例を示すフローチャートである。また、
図22(A)および(B)は、故障判定制御7または後述する故障判定制御8を実行したときの電流供給状況の一例を示す図である。
図22(A)にはスイッチSW2が正常である場合の状況が示され、
図22(B)にはスイッチSW2がON固着である場合の状況が示されている。なお、
図22(A)および(B)に示す黒塗りの矢印は、電流の供給状況を示す矢印である。
【0092】
図21に示すように、ステップS70では、スイッチSW1に向けてオフ信号が送信され、ステップS71では、スイッチSW2に向けてオフ信号が送信され、ステップS72では、スタータジェネレータ16に向けて力行信号が送信される。続くステップS73では、リチウムイオンバッテリ52から放電される放電電流(電流)iLi_dが検出される。なお、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dは、バッテリコントローラ75によって検出することが可能である。続くステップS74では、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが、所定の閾値id4を上回るか否かが判定される。ステップS74において、放電電流iLi_dが閾値id4を上回ると判定された場合には、ステップS75に進み、スイッチSW2にON固着が発生していると判定される。
【0093】
一方、ステップS74において、放電電流iPb_dが閾値id4以下であると判定された場合には、ステップS76に進み、スタータジェネレータ16に印加される端子電圧(印加電圧,電圧)Visgが検出される。なお、スタータジェネレータ16に印加される端子電圧Visg、つまりスタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgは、ISGコントローラ32によって検出することが可能である。続くステップS77では、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgが、所定の閾値V2を上回るか否かが判定される。ステップS77において、印加電圧Visgが閾値V2を上回ると判定された場合には、ステップS75に進み、スイッチSW2にON固着が発生していると判定される。
【0094】
このように、ステップS74において、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが閾値id4を上回ると判定された場合や、ステップS77において、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgが閾値V2を上回ると判定された場合には、ステップS75に進み、スイッチSW2がON固着であると判定される。一方、ステップS74において、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが閾値id4以下であると判定され、かつステップS77において、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgが閾値V2以下であると判定された場合には、ステップS78に進み、スイッチSW2が正常状態であると判定される。
【0095】
ここで、
図22(A)に示すように、スイッチSW2が正常であった場合には、スイッチSW1がオフ状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータジェネレータ16が力行状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16からリチウムイオンバッテリ52が切り離されるため、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dは「0A」である。
【0096】
これに対し、
図22(B)に示すように、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW1がオフ状態に制御され、スイッチSW2がオン状態に保持され、スタータジェネレータ16が力行状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16にリチウムイオンバッテリ52が接続されるため、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dはスタータジェネレータ16の消費電流に相当する電流値である。
【0097】
すなわち、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW2が正常である場合に比べて、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが増加する。このため、放電電流iLi_dと閾値id4とを比較判定し、放電電流iLi_dの増加状況を捉えることにより、スイッチSW2のON固着を検出することができる。なお、閾値id4については、放電電流iLi_dの増加状況を捉えるように、実験やシミュレーション等に基づき設定される。
【0098】
また、
図22(A)に示すように、スイッチSW2が正常であった場合には、スイッチSW1がオフ状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータジェネレータ16が力行状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16から鉛バッテリ51およびリチウムイオンバッテリ52の双方が切り離されるため、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgは「0V」である。
【0099】
これに対し、
図22(B)に示すように、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW1がオフ状態に制御され、スイッチSW2がオン状態に保持され、スタータジェネレータ16が力行状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16にリチウムイオンバッテリ52が接続されるため、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgはリチウムイオンバッテリ52の端子電圧に相当する電圧値である。
【0100】
すなわち、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW2が正常である場合に比べて、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgが上昇する。このため、印加電圧Visgと閾値V2とを比較判定し、印加電圧Visgの上昇状況を捉えることにより、スイッチSW2のON固着を検出することができる。なお、閾値V2については、印加電圧Visgの上昇状況を捉えるように、実験やシミュレーション等に基づき設定される。
【0101】
(故障判定制御8)
図21に示した故障判定制御7では、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが閾値id4を上回る場合、またはスタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgが閾値V2を上回る場合に、スイッチSW2がON固着であると判定しているが、これに限られることはない。以下、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが閾値id4を上回り、かつスタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgが閾値V2を上回る場合に、スイッチSW2がON固着であると判定する故障判定制御8について説明する。
【0102】
図23は故障判定制御8の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図23に示すように、ステップS80では、スイッチSW1に向けてオフ信号が送信され、ステップS81では、スイッチSW2に向けてオフ信号が送信され、ステップS82では、スタータジェネレータ16に向けて力行信号が送信される。
【0103】
続くステップS83では、リチウムイオンバッテリ52から放電される放電電流(電流)iLi_dが検出され、ステップS84では、スタータジェネレータ16に印加される端子電圧(印加電圧,電圧)Visgが検出される。なお、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dは、バッテリコントローラ75によって検出することが可能である。また、スタータジェネレータ16に印加される端子電圧Visg、つまりスタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgは、ISGコントローラ32によって検出することが可能である。
【0104】
続いて、ステップS85では、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが、所定の閾値id4を上回るか否かが判定される。ステップS85において、放電電流iLi_dが閾値id4を上回ると判定された場合には、ステップS86に進み、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgが、所定の閾値V2を上回るか否かが判定される。そして、ステップS86において、印加電圧Visgが閾値V2を上回ると判定された場合には、ステップS87に進み、スイッチSW2にON固着が発生していると判定される。
【0105】
このように、ステップS85において、放電電流iLi_dが閾値id4を上回ると判定され、かつステップS86において、印加電圧Visgが閾値V2を上回ると判定された場合には、ステップS87に進み、スイッチSW2がON固着であると判定される。一方、ステップS85において、放電電流iLi_dが閾値id4以下であると判定された場合、またはステップS86において、印加電圧Visgが閾値V2以下であると判定された場合には、ステップS88に進み、スイッチSW2が正常状態であると判定される。
【0106】
前述した
図22(A)に示すように、スイッチSW2が正常であった場合には、スイッチSW1がオフ状態に制御され、スイッチSW2がオフ状態に制御され、スタータジェネレータ16が力行状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16から鉛バッテリ51とリチウムイオンバッテリ52との双方が切り離されるため、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dは「0A」であり、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgは「0V」である。
【0107】
これに対し、
図22(B)に示すように、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW1がオン状態に制御され、スイッチSW2がオン状態に保持され、スタータジェネレータ16が力行状態に制御される。この場合には、スタータジェネレータ16にリチウムイオンバッテリ52が接続されるため、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dはスタータジェネレータ16の消費電流に相当する電流値である。また、スタータジェネレータ16にリチウムイオンバッテリ52が接続されるため、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgはリチウムイオンバッテリ52の端子電圧に相当する電圧値である。
【0108】
すなわち、スイッチSW2にON固着が発生していた場合には、スイッチSW2が正常である場合に比べて、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが増加し、かつスタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgが上昇する。このため、放電電流iLi_dと閾値id4とを比較判定し、放電電流iLi_dの増加状況を捉えるとともに、印加電圧Visgと閾値V2とを比較判定し、印加電圧Visgの上昇状況を捉えることにより、スイッチSW2のON固着を検出することができる。なお、閾値id4については、放電電流iLi_dの増加状況を捉えるように、実験やシミュレーション等に基づき設定される。また、閾値V2については、印加電圧Visgの上昇状況を捉えるように、実験やシミュレーション等に基づき設定される。
【0109】
[フェイルセーフ制御]
(アイドリングストップ制御の禁止)
(モータアシスト制御の禁止)
以下、車両用電源装置10によって実行されるフェイルセーフ制御について説明する。前述した故障判定制御1〜8等を実行することにより、スイッチSW2がON固着であると判定された場合には、メインコントローラ80のフェイルセーフ制御部91によってフェイルセーフ制御が実行される。なお、スイッチSW2のON固着を判定する方法としては、前述した各種故障判定制御1〜8に限られることはなく、他の方法によってスイッチSW2のON固着を判定しても良い。
【0110】
図24はフェイルセーフ制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図24に示すように、ステップS90では、スイッチSW2にON固着が発生しているか否かが判定される。ステップS90において、スイッチSW2がON固着であると判定された場合には、ステップS91に進み、アイドリングストップ制御が禁止され、ステップS92に進み、モータアシスト制御が禁止される。
【0111】
ここで、スイッチSW2にON固着が発生した状況とは、電源回路50からリチウムイオンバッテリ52を切り離すことができない状況である。この状況のもとで、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが過度に低下すると、鉛バッテリ51からリチウムイオンバッテリ52に多くの電力が供給され、電気機器群64の電源電圧を維持することが困難になる。このため、スイッチSW2にON固着が発生した場合には、フェイルセーフとしてアイドリングストップ制御やモータアシスト制御を禁止することで、スタータジェネレータ16の力行状態を禁止することにより、リチウムイオンバッテリ52の放電を抑制している。
【0112】
つまり、アイドリングストップ制御においては、エンジン再始動時にスタータジェネレータ16が力行状態に制御されるため、スタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ52の電力を多く消費してしまう虞がある。このため、スイッチSW2にON固着が発生した場合には、アイドリングストップ制御を禁止することにより、リチウムイオンバッテリ52の放電を抑制している。これにより、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCの低下を抑制することができ、電源電圧を安定させて電気機器群64を適切に機能させることができる。
【0113】
同様に、モータアシスト制御においては、発進時や加速時等にスタータジェネレータ16が力行状態に制御されるため、スタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ52の電力を多く消費してしまう虞がある。このため、スイッチSW2にON固着が発生した場合には、モータアシスト制御を禁止することにより、リチウムイオンバッテリ52の放電を抑制している。これにより、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCの低下を抑制することができ、電源電圧を安定させて電気機器群64を適切に機能させることができる。
【0114】
(コーストスリップロックアップ制御の禁止)
図24に示すように、ステップS90において、スイッチSW2がON固着であると判定されると、ステップS91,S92を経てステップS93に進み、コーストスリップロックアップ制御(スリップロックアップ制御)が禁止される。なお、コーストスリップロックアップ制御とは、燃料消費量を抑制する観点から低車速領域での減速走行時に実施される制御である。
【0115】
以下、コーストスリップロックアップ制御について説明した後に、このコーストスリップロックアップ制御を禁止する理由について説明する。ここで、
図25はコーストスリップロックアップ制御におけるパワーユニット13の作動状況の一例を示すタイミングチャートである。なお、
図25において、「L/U」はロックアップクラッチ40を意味しており、「ISG」はスタータジェネレータ16を意味している。
【0116】
図25に示すように、アクセルペダルの踏み込み解除によって緩やかに減速するコースト走行時には、ロックアップクラッチ40が締結状態に制御され(符号a1)、エンジン補機39のインジェクタが燃料カット状態に制御され(符号b1)、スタータジェネレータ16が回生発電状態に制御される(符号c1)。このように、コースト走行時には、インジェクタを燃料カット状態に制御することにより、燃料噴射を停止させて燃料消費量を削減している。
【0117】
そして、コースト走行によって車速が低下し、車速が所定の第1車速Ve1を下回ると(符号d1)、インジェクタの燃料カット状態が継続され(符号b2)、スタータジェネレータ16の回生発電状態が継続されたまま(符号c2)、ロックアップクラッチ40が締結状態からスリップ状態に制御される(符号a2)。また、コースト走行によって車速が低下し、車速が第1車速Ve1よりも低い第2車速Ve2を下回ると(符号d2)、インジェクタの燃料カット状態が継続されたまま(符号b3)、ロックアップクラッチ40がスリップ状態から解放状態に制御され(符号a3)、スタータジェネレータ16が回生発電状態から力行状態に制御される(符号c3)。その後、スタータジェネレータ16が所定時間に渡って力行状態に制御されると、スタータジェネレータ16が力行状態から発電休止状態に制御され(符号c4)、インジェクタが燃料カット状態から燃料噴射状態に制御される(符号b4)。
【0118】
このように、コーストスリップロックアップ制御においては、スタータジェネレータ16を力行状態に制御している。これにより、符号e1で示すように、エンジン回転数の低下を抑制することができるため、燃料噴射再開を遅らせた場合であってもエンジンストールを回避することができる。すなわち、スタータジェネレータ16によってエンジン回転数の低下を抑制することにより、単に燃料噴射を再開しただけではエンジンストールが発生してしまう車速領域まで、燃料カット状態を継続して燃料消費量を削減することができる。
【0119】
前述したように、コーストスリップロックアップ制御においては、スタータジェネレータ16が力行状態に制御されるため、スタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ52の電力を多く消費してしまう虞がある。このため、
図24に示すように、スイッチSW2にON固着が発生した場合には、コーストスリップロックアップ制御を禁止することにより、リチウムイオンバッテリ52の放電を抑制している。これにより、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCの低下を抑制することができ、電源電圧を安定させて電気機器群64を適切に機能させることができる。
【0120】
なお、コーストスリップロックアップ制御において、ロックアップクラッチ40を解放する際には、締結状態から解放状態に切り替えるのではなく、スリップ状態から解放状態に切り替えている。これにより、ロックアップクラッチ40を素早く解放することができるため、エンジンストールを防止しながら燃料噴射の再開タイミングを遅らせることができる。また、図示する例では、コーストスリップロックアップ制御において、スタータジェネレータ16を発電状態から力行状態に切り替え(符号c3)、スタータジェネレータ16を力行状態から発電休止状態に切り替えているが(符号c4)、これに限られることはない。例えば、スタータジェネレータ16を発電休止状態から力行状態に切り替えても良く、スタータジェネレータ16を力行状態から発電状態に切り替えても良い。
【0121】
(発電閾値の変更)
図24に示すように、ステップS90において、スイッチSW2がON固着であると判定されると、ステップS91〜S93を経てステップS94に進み、発電閾値が第1閾値S1aから第2閾値S2aに変更される。なお、発電閾値S1a,S2aとは、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCと比較される閾値であり、スタータジェネレータ16を発電休止状態から燃焼発電状態に切り替える際の閾値である。
【0122】
以下、ステップS21における発電閾値変更について詳細に説明する。前述した
図3に示すように、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが低下すると、スタータジェネレータ16は燃焼発電状態に切り替えられる。スタータジェネレータ16の燃焼発電状態においては、発電電圧がリチウムイオンバッテリ52の端子電圧よりも上げられ、リチウムイオンバッテリ52が充電される。また、
図4に示すように、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが上昇すると、スタータジェネレータ16は発電休止状態に切り替えられる。スタータジェネレータ16の発電休止状態においては、発電電圧がリチウムイオンバッテリ52の端子電圧よりも下げられ、リチウムイオンバッテリ52の放電が促される。
【0123】
このように、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCに基づき、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態と発電休止状態とに切り替えるため、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCと比較される発電閾値S1a,S2aや休止閾値S1b,S2bが設定されている。ここで、
図26はスイッチSW2の正常時に設定される発電閾値S1aおよび休止閾値S1bの一例を示す図である。
図27はスイッチSW2のON固着時に設定される発電閾値S2aおよび休止閾値S2bの一例を示す図である。
【0124】
図26に符号a1で示すように、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが、発電閾値S1aを下回る場合には、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御される。そして、充電によって上昇するリチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが、休止閾値S1bに到達すると(符号a2)、スタータジェネレータ16が発電休止状態に制御される。そして、放電によって低下するリチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが、発電閾値S1aに到達すると(符号a3)、再びスタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御される。その後、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが休止閾値S1bに到達すると(符号a4)、再びスタータジェネレータ16が発電休止状態に制御される。
【0125】
このように、スイッチSW2の正常時においては、発電閾値S1aや休止閾値S1bが低く設定されている。これにより、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCを低く抑えることができるため、リチウムイオンバッテリ52の空き容量αを確保することができ、減速走行時には回生機会を逃すことなくスタータジェネレータ16を回生発電状態に制御することができる。つまり、
図26に符号b1〜b2で示すように、回生機会を逃すことなくスタータジェネレータ16を回生発電状態に制御することができるため、多くの回生電力を確保することができ、車両11のエネルギー効率を高めることができる。
【0126】
これに対し、
図27に示すように、スイッチSW2にON固着が発生している場合には、スイッチSW2が正常である場合に比べて、発電閾値S2aや休止閾値S2bが高く設定されている。つまり、スイッチSW2が正常状態である場合には、発電閾値(第1閾値)として「S1a」が設定される一方、スイッチSW2にON固着が発生している場合には、発電閾値(第2閾値)として「S1a」よりも大きな「S2a」が設定される。同様に、スイッチSW2が正常状態である場合には、休止閾値として「S1b」が設定される一方、スイッチSW2にON固着が発生している場合には、休止閾値として「S1b」よりも大きな「S2b」が設定される。
【0127】
これにより、スイッチSW2のON固着時においては、
図27に符号c1で示すように、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが、発電閾値S2aを下回ると、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御される。そして、充電によって上昇するリチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが、休止閾値S2bに到達すると(符号c2)、スタータジェネレータ16が発電休止状態に制御される。そして、放電によって低下するリチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが、発電閾値S2aに到達すると(符号c3)、再びスタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御される。その後、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが休止閾値S2bに到達すると(符号c4)、再びスタータジェネレータ16が発電休止状態に制御される。
【0128】
このように、スイッチSW2にON固着が発生している場合には、スイッチSW2の正常時よりも発電閾値S2aを高く設定したので、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCを高めに維持することができる。すなわち、スイッチSW2にON固着が発生した状況とは、電源回路50からリチウムイオンバッテリ52を切り離すことができない状況である。この状況のもとで、リチウムイオンバッテリ52の充電状態SOCが過度に低下すると、鉛バッテリ51からリチウムイオンバッテリ52に多くの電力が供給され、電気機器群64の電源電圧を維持することが困難になる。このため、
図24に示すように、スイッチSW2にON固着が発生した場合には、フェイルセーフとして発電閾値を「S1a」から「S2a」に変更することにより、リチウムイオンバッテリ52の放電を抑制して電気機器群64の電源電圧を維持している。
【0129】
なお、
図27に示した例では、スイッチSW2にON固着が発生していると判定された場合に、発電閾値S2aや休止閾値S2bを高めることにより、スタータジェネレータ16が発電休止状態に制御されることを抑制しているが、これに限られることはない。例えば、スイッチSW2にON固着が発生していると判定された場合に、発電閾値S2aや休止閾値S2bを「100%」よりも大きく設定することにより、スタータジェネレータ16の発電休止状態を禁止しても良い。この場合には、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に維持されることになる。
【0130】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、第1蓄電体として鉛バッテリ51を用いているが、これに限られることはなく、第1蓄電体として他の種類のバッテリやキャパシタを用いても良い。また、第2蓄電体としてリチウムイオンバッテリ52を用いているが、これに限られることはなく、第2蓄電体として他の種類のバッテリやキャパシタを用いても良い。また、
図1および
図2に示した例では、リチウムイオンバッテリ52の正極ライン54にスイッチSW2を設けているが、これに限られることはない。例えば、
図2に一点鎖線で示すように、リチウムイオンバッテリ52の負極ライン59にスイッチSW2を設けても良い。また、前述の説明では、メインコントローラ80に、各種制御部81〜84,86〜91や故障判定部85を設けているが、これに限られることはない。他のコントローラに、各種制御部81〜84,86〜91や故障判定部85の一部や全部を設けても良い。
【0131】
図10〜
図23に示した故障判定制御1〜8については、故障判定制御1〜8の何れか1つを単独で実行しても良く、故障判定制御1〜8の少なくとも2つを組み合わせて実行しても良い。例えば、故障判定制御1と故障判定制御2とを組み合わせて実行しても良い。この場合には、故障判定制御1に基づいて、リチウムイオンバッテリ52の放電電流iLi_dが閾値id1を上回ると判定され、かつ故障判定制御2に基づいて、スタータジェネレータ16に対する印加電圧Visgが閾値V1を上回ると判定された場合に、スイッチSW2にON固着が発生していると判定される。
【0132】
図24に示したフェイルセーフ制御では、スイッチSW2にON固着が発生していると判定された場合に、アイドリングストップ制御を禁止し、モータアシスト制御を禁止し、コーストスリップロックアップ制御を禁止し、かつ発電閾値を第1閾値S1aから第2閾値S2aに変更しているが、これに限られることはない。例えば、スイッチSW2にON固着が発生していると判定された場合に、アイドリングストップ制御、モータアシスト制御およびコーストスリップロックアップ制御の少なくとも何れか1つを禁止しても良い。また、スイッチSW2にON固着が発生していると判定された場合に、アイドリングストップ制御等を禁止せずに、発電閾値を第1閾値S1aから第2閾値S2aに変更しても良い。