特許第6757400号(P6757400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6757400成分測定装置、成分測定方法及び成分測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757400
(24)【登録日】2020年9月1日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】成分測定装置、成分測定方法及び成分測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20200907BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20200907BHJP
   G01N 33/66 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   G01N21/78 Z
   G01N33/72 A
   G01N33/66 A
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-503993(P2018-503993)
(86)(22)【出願日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】JP2016084049
(87)【国際公開番号】WO2017154270
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2019年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-44694(P2016-44694)
(32)【優先日】2016年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】相川 亮桂
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/137074(WO,A1)
【文献】 特開2002−306458(JP,A)
【文献】 特開2014−233344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/78
G01N 33/66
G01N 33/72
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液中の被測定成分と試薬との呈色反応により呈色した色素成分を含む混合物の光学的特性に基づいて前記血液中の被測定成分を測定する成分測定装置であって、
散乱光の情報と、赤血球中の還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率と、に基づいて、測定波長における前記混合物の吸光度の実測値を補正する成分測定装置。
【請求項2】
前記実測値を第5実測値とした場合に、
前記色素成分の吸光度スペクトルにおけるピーク波長域の半値全幅域に対応する波長範囲に属する前記測定波長よりも長波長域に属する第1波長及び第2波長それぞれにおける前記混合物の吸光度である第1実測値及び第2実測値、前記半値全幅域に対応する前記波長範囲に属する前記測定波長よりも短波長域に属する第3波長及び第4波長それぞれにおける前記混合物の吸光度である第3実測値及び第4実測値、並びに、前記測定波長における前記混合物の吸光度である前記第5実測値、を取得する吸光度取得部と、
前記第5実測値を、前記第1実測値〜第4実測値を用いて補正する吸光度補正部と、を備え、
前記第3波長として、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの吸収係数の差が、所定値以下となる波長を用いると共に、前記第4波長として、前記吸収係数の差が、前記所定値より大きくなる波長を用いる、請求項1に記載の成分測定装置。
【請求項3】
前記第3波長として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が、所定の閾値以上となる波長を用いると共に、前記第4波長として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が、前記所定の閾値未満となる波長を用いる、請求項2に記載の成分測定装置。
【請求項4】
前記第3波長として、還元ヘモグロビンの吸収係数と酸化ヘモグロビンの吸収係数とが等しい波長を用いる、請求項2又は3に記載の成分測定装置。
【請求項5】
前記第3波長は、520nm〜550nmの範囲又は565nm〜585nmの範囲に属する、請求項2乃至4のいずれか1つに記載の成分測定装置。
【請求項6】
前記第4波長は、550nmより大きく、かつ、565nm未満の範囲に属する、又は、585nmより大きく、かつ、600nm未満の範囲に属する、請求項5に記載の成分測定装置。
【請求項7】
前記所定値を第1の所定値とした場合に、
前記第1波長として、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの吸収係数の差が、第2の所定値以下となる波長を用いると共に、前記第2波長として、前記第2の所定値より大きくなる波長を用いる、請求項2乃至6のいずれか1つに記載の成分測定装置。
【請求項8】
前記所定の閾値を第1閾値とした場合に、
前記第1波長として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が、前記第1閾値以上、かつ、第2閾値以下となる波長を用いると共に、前記第2波長として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が、前記第1閾値未満となる波長、又は、前記第2閾値より大きくなる波長を用いる、請求項3に記載の成分測定装置。
【請求項9】
前記第1波長として、還元ヘモグロビンの吸収係数と酸化ヘモグロビンの吸収係数とが等しい波長を用いる、請求項7又は8に記載の成分測定装置。
【請求項10】
前記第1波長は、790nm〜810nmの範囲に属する、請求項7乃至9のいずれか1つに記載の成分測定装置。
【請求項11】
前記第2波長は、前記色素成分の吸光度が、前記測定波長における前記色素成分の吸光度の10%以下となる波長に属する、請求項7乃至10のいずれか1つに記載の成分測定装置。
【請求項12】
前記第2波長は、前記色素成分の吸光度が、前記測定波長における前記色素成分の吸光度の0%となる波長である、請求項11に記載の成分測定装置。
【請求項13】
前記測定波長は、600nm以上、かつ、700nm以下の範囲に属する、請求項1乃至12のいずれか1つに記載の成分測定装置。
【請求項14】
血液中の被測定成分と試薬との呈色反応により呈色した色素成分を含む混合物の光学的特性に基づいて前記血液中の被測定成分を測定する成分測定方法であって、
散乱光の情報と、赤血球中の還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率と、に基づいて、測定波長における前記混合物の吸光度の実測値を補正する成分測定方法。
【請求項15】
血液中の被測定成分と試薬との呈色反応により呈色した色素成分を含む混合物の光学的特性に基づいて前記血液中の被測定成分を測定するための成分測定プログラムであって、
散乱光の情報と、赤血球中の還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率と、に基づいて、測定波長における前記混合物の吸光度の実測値を補正することを、成分測定装置に実行させる成分測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分測定装置、成分測定方法及び成分測定プログラムに関し、特に、血液中の被測定成分を測定する成分測定装置、成分測定方法及び成分測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生化学分野や医療分野において、検体としての血液(全血)中に含まれる目的成分(被測定成分ともいう)を測定する手法として、血液を被測定成分が含まれる部分と、被測定成分が含まれない部分とに分離し、被測定成分の量や濃度を測定する方法が知られている。例えば、血漿中のグルコース濃度(mg/dL)を測定するため、フィルタ等を用いて、血液から血漿成分を分離する工程を行い、血漿中のグルコース濃度を測定する方法がある。
【0003】
しかしながら、短時間で血液中の血漿成分を完全に分離することは難しく、更には分離するために用いられるフィルタ等の性能のばらつきもあるため、分離した血漿成分中に血球成分が一部含まれてしまう可能性があり、正確なグルコース濃度を測定することが難しい。この他に、例えば特許文献1のように、血液を溶血させてからグルコース濃度を測定する方法も知られているが、上述した血漿分離と同様、溶血を行うためには時間がかかり、更には溶血後の液体に血球成分が一部残ってしまう可能性がある。
【0004】
これに対して、血液から被測定成分を分離することなく、更には血液を溶血させることなく、血液中の被測定成分を測定する一手法として、吸光光度法を用いた全血測定が知られている。この手法によれば、上述した被測定成分の分離工程や溶血工程を行う手法と比較して、被測定成分の測定に要する時間を短縮することができる。ただし、被測定成分と異なる別の成分が血液中に多く含まれる場合、別の成分が光吸収・光散乱等の光学的現象を引き起こし、その結果、測定上の外乱因子として作用することがある。そこで、被測定成分の測定精度を維持すべく、この外乱因子の影響を除去することが必要であり、外乱因子の影響を除去する手法が種々提案されている。
【0005】
特許文献2には、測定波長よりも長波長側の長波長域の実測値から、測定波長における外乱因子の影響量を推定し、測定波長における実測値を、推定した外乱因子の影響量を用いて補正した後、予測したヘマトクリット値を用いて測定波長における実測値を更に補正することにより、血漿成分におけるグルコース濃度を測定する成分測定装置及び成分測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−34758号公報
【特許文献2】国際公開第2015/137074号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載されている成分測定装置及び成分測定方法によれば、血液から被測定成分としてのグルコースを含む血漿成分を分離させることなく、血液から血漿成分中のグルコース濃度を高い精度で測定することができる。しかしながら、血液中の血球成分等による光散乱や血液中のヘモグロビンによる光吸収などの外乱因子の影響量の推定の精度については、更なる改善の余地がある。
【0008】
本発明は、血液から所定の被測定成分を分離させることなく、所定の被測定成分を高精度に測定することが可能な成分測定装置、成分測定方法及び成分測定プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様としての成分測定装置は、血液中の被測定成分と試薬との呈色反応により呈色した色素成分を含む混合物の光学的特性に基づいて前記血液中の被測定成分を測定する成分測定装置であって、散乱光の情報と、赤血球中の還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率と、に基づいて、測定波長における前記混合物の吸光度の実測値を補正するものである。
【0010】
本発明の1つの実施形態としての成分測定装置は、前記実測値を第5実測値とした場合に、前記色素成分の吸光度スペクトルにおけるピーク波長域の半値全幅域に対応する波長範囲に属する前記測定波長よりも長波長域に属する第1波長及び第2波長それぞれにおける前記混合物の吸光度である第1実測値及び第2実測値、前記半値全幅域に対応する前記波長範囲に属する前記測定波長よりも短波長域に属する第3波長及び第4波長それぞれにおける前記混合物の吸光度である第3実測値及び第4実測値、並びに、前記測定波長における前記混合物の吸光度である前記第5実測値、を取得する吸光度取得部と、前記第5実測値を、前記第1実測値〜第4実測値を用いて補正する吸光度補正部と、を備え、前記第3波長として、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの吸収係数の差が、所定値以下となる波長を用いると共に、前記第4波長として、前記吸収係数の差が、前記所定値より大きくなる波長を用いることが好ましい。
【0011】
本発明の1つの実施形態としての成分測定装置は、前記第3波長として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が、所定の閾値以上となる波長を用いると共に、前記第4波長として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が、前記所定の閾値未満となる波長を用いることが好ましい。
【0012】
本発明の1つの実施形態としての成分測定装置は、前記第3波長として、還元ヘモグロビンの吸収係数と酸化ヘモグロビンの吸収係数とが等しい波長を用いることが好ましい。すなわち、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が、1となる波長を用いることが好ましい。
【0013】
本発明の1つの実施形態として、前記第3波長は、520nm〜550nmの範囲又は565nm〜585nmの範囲に属することが好ましい。
【0014】
本発明の1つの実施形態として、前記第4波長は、550nmより大きく、かつ、565nm未満の範囲に属する、又は、585nmより大きく、かつ、600nm未満の範囲に属することが好ましい。
【0015】
本発明の1つの実施形態としての成分測定装置は、前記所定値を第1の所定値とした場合に、前記第1波長として、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの吸収係数の差が、第2の所定値以下となる波長を用いると共に、前記第2波長として、前記第2の所定値より大きくなる波長を用いることが好ましい。
【0016】
本発明の1つの実施形態としての成分測定装置は、前記所定の閾値を第1閾値とした場合に、前記第1波長として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が、前記第1閾値以上、かつ、第2閾値以下となる波長を用いると共に、前記第2波長として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が、前記第1閾値未満となる波長、又は、前記第2閾値より大きくなる波長を用いることが好ましい。
【0017】
本発明の1つの実施形態としての成分測定装置は、前記第1波長として、還元ヘモグロビンの吸収係数と酸化ヘモグロビンの吸収係数とが等しい波長を用いることが好ましい。
【0018】
本発明の1つの実施形態として、前記第1波長は、790nm〜810nmの範囲に属することが好ましい。
【0019】
本発明の1つの実施形態として、前記第2波長は、前記色素成分の吸光度が、前記測定波長における前記色素成分の吸光度の10%以下となる波長に属することが好ましい。
【0020】
本発明の1つの実施形態として、前記第2波長は、前記色素成分の吸光度が、前記測定波長における前記色素成分の吸光度の0%となる波長であることが好ましい。
【0021】
本発明の1つの実施形態として、前記測定波長は、600nm以上、かつ、700nm以下の範囲に属することが好ましい。
【0022】
本発明の第2の態様としての成分測定方法は、血液中の被測定成分と試薬との呈色反応により呈色した色素成分を含む混合物の光学的特性に基づいて前記血液中の被測定成分を測定する成分測定方法であって、散乱光の情報と、赤血球中の還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率と、に基づいて、測定波長における前記混合物の吸光度の実測値を補正するものである。
【0023】
本発明の第3の態様としての成分測定プログラムは、血液中の被測定成分と試薬との呈色反応により呈色した色素成分を含む混合物の光学的特性に基づいて前記血液中の被測定成分を測定するための成分測定プログラムであって、散乱光の情報と、赤血球中の還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率と、に基づいて、測定波長における前記混合物の吸光度の実測値を補正することを、成分測定装置に実行させるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、血液から所定の被測定成分を分離させることなく、所定の被測定成分を高精度に測定することが可能な成分測定装置、成分測定方法及び成分測定プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態としての成分測定装置に成分測定チップが装着された成分測定装置セットの上面図である。
図2図1のI-I断面図のうち、成分測定チップが装着されている箇所近傍の拡大断面図である。
図3図1に示す成分測定チップの上面図である。
図4図3のII-II断面図である。
図5図1に示す成分測定装置の電気ブロック図である。
図6図5に示す演算部の機能ブロック図である。
図7】6種の血液検体それぞれを試薬と呈色反応させることにより得られる6種の混合物の吸光度スペクトルを示す図である。
図8】7種の血液検体それぞれの吸光度スペクトルを示す図である。
図9】還元ヘモグロビンの吸収係数及び酸化ヘモグロビンの吸収係数を示す図である。
図10】還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率を示す図である。
図11】回帰分析により推定される測定波長における色素成分以外の吸光度において、長波長域の占有率と短波長域の占有率とを示すグラフである。
図12図12(a)は、本発明の一実施形態としての成分測定方法から測定される吸光度と真値との誤差を示すグラフであり、図12(b)は、比較例としての成分測定方法から測定される吸光度と真値との誤差を示すグラフである。
図13】本発明の一実施形態としての成分測定方法を示すフローチャートである。
図14】2つの色素成分の吸光度スペクトルを示す図である。
図15】回帰分析により推定される測定波長における色素成分以外の吸光度において、長波長域の占有率と短波長域の占有率とを示すグラフである。
図16図16(a)は、本発明の一実施形態としての成分測定方法から測定される吸光度と真値との誤差を示すグラフであり、図16(b)は、比較例としての成分測定方法から測定される吸光度と真値との誤差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る成分測定装置、成分測定方法及び成分測定プログラムの実施形態について、図1図16を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0027】
まず、本発明に係る成分測定装置の1つの実施形態について説明する。図1は、本実施形態における成分測定装置1に成分測定チップ2が装着された成分測定装置セット100を示す上面図である。図2は、図1のI-Iに沿う断面のうち、成分測定チップ2が装着されている箇所近傍の拡大断面図である。
【0028】
成分測定装置セット100は、成分測定装置1と、成分測定チップ2と、を備えている。本実施形態の成分測定装置1は、血液中の被測定成分としての血漿成分中のグルコース、の濃度(mg/dL)を測定可能な血糖値測定装置である。また、本実施形態の成分測定チップ2は、成分測定装置1としての血糖値測定装置の先端部に装着可能な血糖値測定チップである。なお、ここで言う「血液」とは、成分毎に分離されておらず、すべての成分を含む全血を意味するものである。
【0029】
成分測定装置1は、樹脂材料からなるハウジング10と、このハウジング10の上面に設けられたボタン群と、ハウジング10の上面に設けられた液晶又はLED(Light Emitting Diodeの略)等で構成される表示部11と、成分測定装置1に装着された状態の成分測定チップ2を取り外す際に操作される取り外しレバー12と、を備えている。なお、本実施形態のボタン群は、電源ボタン13と、操作ボタン14とにより構成されている。
【0030】
ハウジング10は、上述したボタン群及び表示部11が上面(図1参照)に設けられている、上面視の外形が略矩形の本体部10aと、本体部10aから外方に突設され、上面(図1参照)に取り外しレバー12が設けられたチップ装着部10bと、を備えている。図2に示すように、チップ装着部10bの内部には、チップ装着部10bの先端面に形成された先端開口を一端とするチップ装着空間Sが区画されている。成分測定装置1に対して成分測定チップ2を装着する際は、外方から先端開口を通じてチップ装着空間S内に成分測定チップ2を挿入し、成分測定チップ2を所定位置まで押し込むことにより、成分測定装置1のチップ装着部10bが成分測定チップ2を係止した状態となり、成分測定チップ2を成分測定装置1に装着することができる。なお、成分測定装置1による成分測定チップ2の係止は、例えば、チップ装着部10b内に成分測定チップ2の一部と係合可能な爪部を設ける等、各種構成により実現可能である。
【0031】
逆に、成分測定装置1に装着されている成分測定チップ2を成分測定装置1から取り外す際は、ハウジング10の外部から上述した取り外しレバー12を操作することにより、成分測定装置1のチップ装着部10bによる成分測定チップ2の係止状態が解除されると共に、ハウジング10内のイジェクトピン26(図2参照)が連動して移動し、成分測定チップ2を成分測定装置1から取り外すことができる。
【0032】
なお、本実施形態のハウジング10は、上面視(図1参照)で略矩形の本体部10aと、本体部10aから外方に突設されているチップ装着部10bと、を備える構成であるが、成分測定チップ2を装着可能なチップ装着部を備えるものであればよく、本実施形態のハウジング10の形状に限られるものではない。したがって、本実施形態のハウジング10の形状の他に、ユーザにとって片手で把持し易くするための形状を種々採用することも可能である。
【0033】
表示部11は、成分測定装置1により測定された被測定成分の情報を表示するものである。本実施形態では、成分測定装置1としての血糖値測定装置により測定されたグルコース濃度(mg/dL)を表示部11に表示することができる。なお、表示部11には、被測定成分の情報のみならず、成分測定装置1の測定条件やユーザに所定の操作を指示する指示情報等、各種情報を表示できるようにしてもよい。ユーザは、表示部11に表示された内容を確認しながら、ボタン群の電源ボタン13や操作ボタン14を操作することができる。
【0034】
次に、成分測定チップ2単体について説明する。図3は、成分測定チップ2を示す上面図である。また、図4は、図3のII-IIに沿う断面図である。図3及び図4に示すように、成分測定チップ2は、略矩形板状の外形を有するベース部材21と、このベース部材21に保持されている試薬としての発色試薬22と、ベース部材21を覆うカバー部材25と、を備えている。
【0035】
ベース部材21の厚み方向の一方側の外面には溝が形成されている。ベース部材21の溝は、カバー部材25に覆われることにより、厚み方向と直交する方向に延在する中空部となり、この中空部が成分測定チップ2の流路23を構成している。流路23の一端には、血液を外方から供給可能な供給部24が形成されている。また、流路23の内壁のうちベース部材21の溝の溝底部には、発色試薬22が保持されており、外方から供給部24に供給された血液は、例えば毛細管現象を利用して流路23に沿って移動し、発色試薬22が保持されている保持位置まで到達し、発色試薬22と接触して呈色反応することにより、色素成分が発色する。
【0036】
なお、本実施形態の流路23は、ベース部材21とカバー部材25とにより区画される中空部により構成されているが、流路はこの構成に限られるものではない。ベース部材21の厚み方向の一方側の外面に形成された溝のみにより流路を形成してもよい。
【0037】
ベース部材21およびカバー部材25の材質としては、光の透過のために透明性の素材を用いることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、環状ポリオレフィン(COP)や環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネード(PC)等の透明な有機樹脂材料;ガラス、石英等の透明性な無機材料;が挙げられる。
【0038】
試薬としての発色試薬22は、血液中の被測定成分と反応して、被測定成分の血中濃度に応じた色に呈色する呈色反応を引き起こすものである。本実施形態の発色試薬22は、流路23としての溝の溝底部に塗布されている。なお、本実施形態の発色試薬22は、血液中の被測定成分としてのグルコースと反応するものである。本実施形態の発色試薬22としては、例えば、(i)グルコースオキシダーゼ(GOD)と(ii)ペルオキシダーゼ(POD)と(iii)1−(4−スルホフェニル)−2,3−ジメチル−4−アミノ−5−ピラゾロンと(iv)N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン,ナトリウム塩,1水和物(MAOS)との混合試薬、あるいはグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)とテトラゾリウム塩及び電子メディエーターとの混合試薬などが挙げられる。さらに、リン酸緩衝液のような緩衝剤が含まれていてもよい。なお、発色試薬22の種類、成分については、これらに限定されるものではない。
【0039】
但し、本実施形態の発色試薬22としては、血液中のグルコースと発色試薬22との呈色反応により呈色する色素成分の吸光度スペクトルにおけるピーク波長が、血球中のヘモグロビンの光吸収特性に起因するピーク波長とは異なる波長となるようなものを使用している。本実施形態の発色試薬22は、血液中のグルコースと発色試薬22との呈色反応により呈色する色素成分の吸光度スペクトルが650nm付近にピーク波長を有するものであるが、ピーク波長が650nm付近になるものに限られるものではない。この詳細は後述する。
【0040】
図2に示すように、成分測定装置1により被測定成分を測定する際には、成分測定チップ2をチップ装着部10b内に装着する。そして、成分測定チップ2の一端に設けられている供給部24に血液を供給すると、血液は、例えば毛細管現象により流路23内を移動し、流路23の発色試薬22が保持されている保持位置まで到達し、この保持位置において発色試薬22と反応する。いわゆる比色式の成分測定装置1は、この発色試薬22の保持位置に向かって光を照射し、その透過光量(又は反射光量)を検出し、血中濃度に応じた発色の強度に相関する検出信号を得る。そして、成分測定装置1は、予め作成された検量線を参照することにより、被測定成分を測定することができる。なお、本実施形態の成分測定装置1は、血液中の血漿成分におけるグルコース濃度(mg/dL)を測定するものである。
【0041】
図5は、図1及び図2に示す成分測定装置1の電気ブロック図である。なお、図5には、説明の便宜上、成分測定装置1に装着された状態の成分測定チップ2の断面(図4と同じ断面)を併せて示している。また、図5では、成分測定チップ2の近傍を拡大したものを左上に別途示している。以下、成分測定装置1の更なる詳細について説明する。
【0042】
図5に示すように、成分測定装置1は、上述したハウジング10、表示部11、取り外しレバー12、電源ボタン13及び操作ボタン14の他に、演算部60と、メモリ62と、電源回路63と、測定光学系64と、を更に備えている。
【0043】
演算部60は、MPU(Micro-Processing Unit)又はCPU(Central Processing Unit)で構成されており、メモリ62等に格納されたプログラムを読み出し実行することで、各部の制御動作を実現可能である。メモリ62は、揮発性又は不揮発性である非一過性の記憶媒体で構成され、ここで示す成分測定方法を実行するために必要な各種データ(プログラムを含む)を読出し又は書込み可能である。電源回路63は、電源ボタン13の操作に応じて、演算部60を含む成分測定装置1内の各部に電力を供給し、又はその供給を停止する。
【0044】
測定光学系64は、血液と試薬としての発色試薬22との呈色反応により呈色した色素成分を含む混合物Xの光学的特性を取得可能な光学システムである。測定光学系64は、具体的には、発光部66と、発光制御回路70と、受光部72と、受光制御回路74と、を備えている。
【0045】
本実施形態の発光部66は5種類の光源67a、67b、67c、67d及び68を備えている。光源67a〜67d及び68は、分光放射特性が異なる光(例えば、可視光、赤外光)を放射する。以下、説明の便宜上、光源67aを「第1光源67a」、光源67bを「第2光源67b」、光源67cを「第3光源67c」、光源67dを「第4光源67d」、光源68を「第5光源68」と記載する。
【0046】
第1〜第5光源67a、67b、67c、67d及び68の発光波長は、第1〜第5波長λ1、λ2、λ3、λ4及びλ5を含み、発光波長が異なる光源である。複数種類の光源67a〜67d及び68としては、LED素子、有機EL(Electro−Luminescenceの略)素子、無機EL素子、LD(Laser Diodeの略)素子を含む種々の発光素子を適用することができる。
【0047】
図2図5に示すように、本実施形態の受光部72は、発光部66と成分測定チップ2を挟んで対向して配置された1個の受光素子により構成されている。受光部72は、発光部66の第1〜第5光源67a〜67d及び68から成分測定チップ2の発色試薬22の保持位置に照射され、成分測定チップ2を透過した透過光を受光する。受光部72としては、PD(Photo Diodeの略)素子、フォトコンダクタ(光導電体)、フォトトランジスタ(Photo Transistorの略)を含む種々の光電変換素子を適用することができる。
【0048】
発光制御回路70は、第1〜第5光源67a〜67d及び68それぞれに駆動電力信号を供給することで、第1〜第5光源67a〜67d及び68を点灯させ、又は消灯させる。受光制御回路74は、受光部72から出力されたアナログ信号に対して、対数変換及びA/D変換を施すことでデジタル信号(以下、検出信号という)を取得する。
【0049】
図6は、図5に示す演算部60の機能ブロック図である。演算部60は、測定光学系64による測定動作を指示する測定指示部76、及び、各種データを用いて被測定成分の濃度を測定する濃度測定部77の各機能を実現する。
【0050】
濃度測定部77は、吸光度取得部78と、吸光度補正部84と、を備えている。
【0051】
図6では、メモリ62には、測定光学系64により測定された第1波長λ1〜第5波長λ5それぞれにおける混合物Xの吸光度である第1実測値D1〜第5実測値D5の実測値データ85と、第1波長λ1〜第4波長λ4それぞれでの混合物Xの吸光度に相関する一群の補正係数を含む補正係数データ86と、第5波長λ5で実測された混合物Xの吸光度を補正係数データ86により補正して得られる混合物X中の色素成分の吸光度と各種物理量(例えば、グルコース濃度)との関係を示す検量線や、混合物X中のヘモグロビンの吸光度とヘマトクリット値との関係を示す検量線などの検量線データ90と、が格納されている。なお、「ヘマトクリット値」とは、血液中の血球成分の血液(全血)に対する容積比を百分率で示したものである。
【0052】
以下、血液中の被測定成分としてのグルコースと発色試薬22との呈色反応を、グルコースを含む血漿成分を血液から分離することなく、血液(全血)と発色試薬22とにより行い、この呈色反応により得られた混合物X全体の各種波長における吸光度に基づき、グルコースと発色試薬22との呈色反応により呈色した色素成分の所定の測定波長における吸光度を推定する、本発明の1つの実施形態としての成分測定方法について説明する。
【0053】
まず、図7及び図8を参照しつつ、血液中の被測定成分を、血液(全血)を用いた吸光度測定に基づいて推定しようとする際の問題点について言及する。なお、以降の実施例では、発色試薬22としてグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)とテトラゾリウム塩(WST−4)及び電子メディエーターとの混合試薬を用いた。
【0054】
図7は、ヘマトクリット値及びグルコース濃度が既知である6種の血液検体それぞれを発色試薬22と呈色反応させることにより得られる6種の混合物Xの吸光度スペクトルを示している。この6種の血液検体を第1〜第6検体とする。第1検体は、ヘマトクリット値が20%で、グルコース濃度が0mg/dL(図7中では「Ht20 bg0」と表記)のものである。第2検体は、ヘマトクリット値が20%で、グルコース濃度が100mg/dL(図7中では「Ht20 bg100」と表記)のものである。第3検体は、ヘマトクリット値が20%で、グルコース濃度が400mg/dL(図7中では「Ht20 bg400」と表記)のものである。第4検体は、ヘマトクリット値が40%で、グルコース濃度が0mg/dL(図7中では「Ht40 bg0」と表記)のものである。第5検体は、ヘマトクリット値が40%で、グルコース濃度が100mg/dL(図7中では「Ht40 bg100」と表記)のものである。第6検体は、ヘマトクリット値が40%で、グルコース濃度が400mg/dL(図7中では「Ht40 bg400」と表記)のものである。
【0055】
また、図8は、ヘマトクリット値及びグルコース濃度が既知である7種の血液検体それぞれの吸光度スペクトルを示している。この7種の血液検体を第1〜第7検体とする。なお、第1〜第6検体は、図7に示す第1〜第6検体と同じものである。第7検体は、ヘマトクリット値が70%で、グルコース濃度が100mg/dLのものである。また、ヘマトクリット値が等しい血液検体の吸光度スペクトルは略一致するため、図8ではヘマトクリット値の異なる3つの曲線のみを示している。具体的には、ヘマトクリット値が20%(図8では「Ht20」と表記)、40%(図8では「Ht40」と表記)、70%(図8では「Ht70」と表記)の3つの曲線のみを示している。
【0056】
一般的に、吸光度の測定対象となる色素成分以外の成分が試料の中に含まれるとき、光学的現象の発生によって色素成分の測定結果に影響を与えることがある。例えば、血液中の血球成分、成分測定チップ表面、又は成分測定チップに付着した塵埃といった微粒子等による「光散乱」や、測定対象となる色素成分とは別の色素成分(具体的には、ヘモグロビン)による「光吸収」が発生することで、真の値よりも大きい吸光度が測定される傾向がある。
【0057】
具体的に、図8に示す血液検体の吸光度スペクトルは、540nm付近及び570nm付近を中心とする2つのピークを有する。この2つのピークは、主に、赤血球中の酸化ヘモグロビンの光吸収に起因するものである。また、図8に示す血液検体の吸光度スペクトルでは、600nm以上の波長域において、波長が長くなるにつれて、吸光度が略直線状になだらかに減少している。この略直線状の部分は、主に、血球成分や成分測定チップに付着した塵や埃といった微粒子等の光散乱に起因するものである。
【0058】
換言すれば、600nm付近より長波長側の波長域における血液検体の吸光度は、血球成分等による光散乱の影響が支配的である。600nm付近より短波長側の波長域における血液検体の吸光度は、血球成分等による光散乱の影響よりも、ヘモグロビンによる光吸収の影響が大きい。
【0059】
一方、図7に示す混合物Xの吸光度スペクトルでは、図8に示す血液の吸光度スペクトルと同様、波長が長くなるにつれて吸光度が次第に小さくなるトレンド曲線を有している。しかし、図7に示す混合物Xの吸光度スペクトルは、図8に示す曲線と比較して、可視光の波長域である600nm〜700nm辺りにわたって吸光度が増加している。この600nm〜700nm辺りにわたって増加している吸光度は、主に、血液中のグルコースと発色試薬22との呈色反応により呈色する色素成分の吸光特性に起因するものである。
【0060】
このように、測定対象となる色素成分の他に、図8に示す吸光特性を有する血液を含む混合物Xを用いて、色素成分由来の吸光度を正確に測定する場合には、所定の測定波長(例えば650nm)における吸光度の実測値から、血球成分等による光散乱やヘモグロビンによる光吸収などの影響(ノイズ)を除去する必要がある。
【0061】
より具体的には、測定対象となる色素成分の光吸収率が高い所定の測定波長(例えば650nm)における、血球成分等による光散乱やヘモグロビンによる光吸収などの影響(ノイズ)を推定し、同測定波長における吸光度の実測値を補正することが必要となる。
【0062】
以下、成分測定装置1により実行される成分測定方法の詳細について説明する。
【0063】
成分測定装置1は、血液と試薬としての発色試薬22との呈色反応により呈色した色素成分を含む混合物Xの光学的特性に基づいて、血液中の被測定成分を測定するものである。具体的に、本実施形態では、血液中の血漿成分に含まれるグルコースの濃度を測定する。
【0064】
そして、成分測定装置1は、血液中の血球成分、成分測定チップ2の表面、又は成分測定チップ2に付着した塵埃といった微粒子による光学的特性と、赤血球中の還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率と、に基づいて、測定波長における混合物Xの吸光度の実測値を補正することにより、血液中のグルコース濃度を算出するものである。換言すれば、成分測定装置1による成分測定方法は、血液中の血球成分、成分測定チップ2の表面、又は成分測定チップ2に付着した塵埃といった微粒子、による散乱光の情報と、赤血球中の還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率に基づいて、測定波長における混合物Xの吸光度の実測値を補正する工程を含むものである。
【0065】
図9は、還元ヘモグロビン(図9では「Hb」と表記)の吸収係数及び酸化ヘモグロビン(図9では「HbO2」と表記)の吸収係数を示している。赤血球中のヘモグロビンは、主に、酸素と結合した酸化ヘモグロビンと、酸素分圧が小さい場所で酸素が解離した還元ヘモグロビンと、を含んでいる。酸化ヘモグロビンは、還元ヘモグロビンが肺を通過して酸素と結合し、動脈を通って体中に酸素を運搬する役割を果たすものであり、動脈血中に多く確認できる。例えば、指の腹から血液を採取する際は、毛細血管の血液となるためこの酸化ヘモグロビンの量が比較的多い。逆に、還元ヘモグロビンは、静脈血中に多く確認できるものである。
【0066】
既存の技術としては、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率は何ら考慮することなく、例えばヘマトクリット値を利用して、測定対象となる色素成分に対応する測定波長で得られた吸光度を補正することが一般的である。しかしながら、図9に示すように、還元ヘモグロビンの吸収係数と、酸化ヘモグロビンの吸収係数とは一致しておらず、還元ヘモグロビンによる吸収量と酸化ヘモグロビンによる吸収量とは波長により異なるものである。図10に還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビン吸収係数の比率を示す。例えば、測定対象となる色素成分の吸光度を測定する測定波長が650nmのとき、還元ヘモグロビンの吸収係数は約0.9であり、酸化ヘモグロビンの吸収係数は約0.09である。すなわち、酸化ヘモグロビンの吸収係数は、全ヘモグロビンの吸収係数の約10%に相当する。測定対象となる色素成分に由来する吸光度をより正確に推定するためには、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率を考慮することが重要である。
【0067】
そのため、成分測定装置1では、混合物Xに含まれる色素成分の吸光度を測定するための測定波長を650nmとし、この測定波長で測定された混合物Xの吸光度の実測値から、血球成分等の光散乱による影響や、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率を加味したヘモグロビンの光吸収による影響を除去する補正を行う。これにより、混合物Xに含まれる色素成分の吸光度を推定し、この推定された吸光度とグルコース濃度との関係を示す検量線を用いてグルコース濃度を導出する。
【0068】
以下、成分測定装置1により実行される成分測定方法の更なる詳細について説明する。
【0069】
まず、本実施形態で用いる発色試薬22は、血液中のグルコースと呈色反応することにより呈色する色素成分の吸光度が600nm付近にピークを有するものを使用しているが、本実施形態において色素成分の吸光度を測定する測定波長は650nmとしている。
【0070】
測定対象となる色素成分の吸光度を測定するための測定波長は、色素成分の光吸収率が相対的に大きくなる波長であって、かつ、ヘモグロビンの光吸収による影響が比較的小さい波長を用いればよい。具体的には、測定対象となる色素成分の吸光度スペクトルにおけるピーク波長域の半値全幅域に対応し、かつ、全吸光度に対するヘモグロビンの光吸収による吸光度の割合が比較的小さい波長範囲W3(図7図8参照)に属する波長とすればよい。なお、「ピーク波長域の半値全幅域に対応する」波長範囲とは、吸光度スペクトルにおけるピーク波長域の半値全幅域を特定した際に、短波長側の半値を示す波長から、長波長側の半値を示す波長までの範囲を意味している。本実施形態の測定対象となる色素成分の吸光度スペクトルは、600nm付近がピーク波長となり、約500nm〜約700nmが半値全幅域に対応する波長範囲となるものである。また、全吸光度におけるヘモグロビンの光吸収による影響は、600nm以上の波長域で比較的小さくなる。したがって、本実施形態において、測定対象となる色素成分の吸光度スペクトルにおけるピーク波長域の半値全幅域に対応し、かつ、全吸光度に対するヘモグロビンの光吸収による吸光度の割合が比較的小さい波長範囲W3は、600nm以上、かつ、700nm以下である。そのため、測定波長としては、本実施形態の650nmに限られるものではなく、600nm〜700nmの範囲に属する別の波長を測定波長としてもよい。なお、色素成分の吸光度を表すシグナルが強く、全吸光度に対するヘモグロビンの光吸収による吸光度の割合が非常に小さい波長範囲である方が、色素成分由来の吸光度をより正確に測定できるため、色素成分の吸光度スペクトルにおけるピーク波長となる600nm付近よりやや長波長となる650nm付近を測定波長とすることが好ましい。より具体的には、測定波長を630nm〜680nmの範囲に属する波長とすることが好ましく、640nm〜670nmの範囲に属する波長とすることがより好ましく、本実施形態のように650nmとすることが特に好ましい。このような色素成分の例としてはテトラゾリウム塩が好ましく、例えばWST−4が最も好ましい。
【0071】
更に、本実施形態では、色素成分の吸光度スペクトルにおけるピーク波長域の半値全幅域が約500nm〜約700nmとなるような発色試薬22を使用しているが、ピーク波長域の半値全幅域がこの範囲と異なるような発色試薬を使用してもよい。但し、上述したとおり、ヘモグロビンの吸光特性を考慮し、ヘモグロビンの光吸収による吸光度が大きくなる波長域(600nm以下)と、色素成分の吸光度スペクトルにおける測定波長とが重ならないようにすることが望ましい。
【0072】
以下、本実施形態の測定波長である650nmにおける色素成分の吸光度を推定するための方法について説明する。成分測定装置1は、測定波長(650nm)とは異なる4つの第1波長λ1〜第4波長λ4における混合物Xの吸光度をそれぞれ実測し、この4つの第1実測値D1〜第4実測値D4と、予め定めた補正係数データ86とを用いて、測定波長における混合物Xの吸光度の第5実測値D5を補正し、測定波長における色素成分の吸光度を推定する。なお、以下、説明の便宜上、測定波長を「第5波長λ5」と記載する。
【0073】
具体的に、成分測定装置1は、上述した4つの第1実測値D1〜第4実測値D4として、測定波長である第5波長λ5よりも長波長側の2つの第1波長λ1及び第2波長λ2それぞれにおける混合物Xの吸光度の2つの第1実測値D1及び第2実測値D2と、測定波長である第5波長λ5よりも短波長側の2つの第3波長λ3及び第4波長λ4それぞれにおける混合物Xの吸光度の2つの第3実測値D3及び第4実測値D4と、を利用する。
【0074】
より具体的には、上述した4つの第1実測値D1〜第4実測値D4として、測定波長である第5波長λ5よりも長波長側で、全吸光度において血球成分等の光散乱による影響が支配的な波長域に属する2つの第1波長λ1及び第2波長λ2それぞれにおける混合物Xの吸光度の2つの第1実測値D1及び第2実測値D2と、測定波長である第5波長λ5よりも短波長側で、全吸光度においてヘモグロビンの光吸収による影響が大きい波長域に属する2つの第3波長λ3及び第4波長λ4それぞれにおける混合物Xの吸光度の2つの第3実測値D3及び第4実測値D4と、を利用する。
【0075】
換言すれば、成分測定装置1は、上述した第1実測値D1及び第2実測値D2として、測定対象である色素成分の吸光度スペクトルにおけるピーク波長域の半値全幅域に対応する波長範囲(本実施形態では500〜700nm)に属する測定波長よりも長波長域に属する、例えば、波長範囲W3よりも長波長側の長波長域W1に属する第1波長λ1及び第2波長λ2それぞれにおける混合物Xの吸光度を利用する。
【0076】
また、成分測定装置1は、上述した第3実測値D3及び第4実測値D4として、測定対象である色素成分の吸光度スペクトルにおけるピーク波長域の半値全幅域に対応する波長範囲(500〜700nm)に属する測定波長よりも短波長域に属する、例えば、波長範囲W3よりも短波長側の短波長域W2に属する第3波長λ3及び第4波長λ4それぞれにおける混合物Xの吸光度である第3実測値D3及び第4実測値D4を利用する。
【0077】
成分測定装置1の吸光度取得部78は、上述した第1実測値D1〜第5実測値D5を取得する。具体的には、発光部66の第1〜第5光源67a〜67d及び68から、第1波長λ1〜第5波長λ5それぞれの発光波長を含む照射光が混合物Xに対して照射される。そして、受光部72は、それぞれの照射光のうち混合物Xを透過する透過光を受光する。そして、演算部60は、照射光と透過光との関係から各波長における混合物Xの吸光度を算出し、各波長における混合物Xの吸光度である第1実測値D1〜第5実測値D5を、実測値データ85としてメモリ62に格納する。成分測定装置1の吸光度取得部78は、メモリ62から実測値データ85を取得することができる。なお、吸光度取得部78が第1実測値D1〜第5実測値D5を取得する手段は、上述したものに限られるものではなく、各種公知の手段により取得することが可能である。
【0078】
そして、成分測定装置1の吸光度補正部84は、第1実測値D1〜第4実測値D4を用いて第5実測値D5を補正し、測定波長である第5波長λ5(本例では650nm)における色素成分の吸光度を推定する。
【0079】
特に、図7及び図8から分かるように、血球成分等の光散乱が支配的な長波長域W1では、混合物Xの吸光度スペクトルが略直線状になることから、第1波長λ1における吸光度である第1実測値D1と、第2波長λ2における吸光度である第2実測値D2と、が取得できれば、第1実測値D1と第2実測値D2との間の傾きを求めることにより、測定波長である第5波長λ5における、色素成分の吸光度以外のノイズをある程度推定することは可能である。成分測定装置1は、血液中の血球成分等による光学的特性に加えて、赤血球中の還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率を考慮して、血液中のグルコース濃度を導出するものである。そのため、成分測定装置1では、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率により選択される2つの波長(第3波長及び第4波長)を利用することでより精度の高い補正を行うことができる。
【0080】
具体的には、第3波長λ3として、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの吸収係数の差が、第1の所定値以下となる波長を用いると共に、第4波長λ4として、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの吸収係数の差が、上述の第1の所定値より大きくなる波長を用いる。より具体的には、第3波長λ3として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率(図10参照)が、所定の閾値としての第1閾値以上となる波長を用いると共に、第4波長λ4として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が上述した第1閾値未満となる波長を用いている。換言すれば、第3波長λ3及び第4波長λ4として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が、第1閾値以上となる波長及び第1閾値未満となる波長の2つの波長を利用する。これにより、上述した吸光度補正部84が、第5実測値D5を、第1実測値D1〜第4実測値D4を用いて補正する際に、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率を考慮した、より精度の高い補正を行うことができる。
【0081】
なお、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率により選択される2つの波長としては、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率によるヘモグロビンの光吸収の差が大きい2つの波長とすることが好ましい。したがって、本実施形態では、第3波長λ3として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が0.8以上となる波長、すなわち、520nm〜550nmの範囲に属する波長、又は、565nm〜585nmの範囲に属する波長を利用する。また、第4波長λ4として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が0.8未満となる波長、すなわち、550nmより大きく、かつ、565nm未満の範囲に属する波長、又は、585nmより大きく、かつ、600nm未満の範囲に属する波長、を利用することが好ましい。但し、第3波長λ3としては、ヘモグロビン全体の量やヘマトクリット値を同時に推定することが可能となるように、還元ヘモグロビンの吸収係数と酸化ヘモグロビンの吸収係数とが等しい波長、すなわち、本実施形態では530nm付近、545nm付近、570nm付近又は580nm付近の波長を用いることが好ましく、更にヘモグロビン全体の吸収係数が大きい540〜545nmの範囲から選ばれる波長を用いるのが特に好ましい。また、第4波長λ4としては、550nmより大きく、かつ、565nm未満の範囲内でも吸収係数の差が最も大きくなる560nm付近、又は、585nmより大きく、かつ、600nm未満の範囲内でも吸収係数の差が最も大きくなる590nm付近、とすることがより好ましい。
【0082】
このように、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率によってヘモグロビン全体の光吸収が大きく変動する短波長域W2において、ヘモグロビン全体の光吸収の差が大きくなる第3波長λ3及び第4波長λ4を利用することにより、測定波長である第5波長λ5(本実施形態では650nm)における、色素成分の吸光度以外のノイズを、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率をも加味して精度よく推定することができる。そのため、成分測定装置1によれば、測定波長である第5波長λ5における色素成分の吸光度、更には、被測定成分の測定(本実施形態ではグルコースの濃度測定)を精度よく行うことができる。
【0083】
なお、本実施形態では、第3波長λ3及び第4波長λ4のみを、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率の影響を大きく考慮した波長としたが、第3波長λ3及び第4波長λ4に加えて、第1波長λ1及び第2波長λ2についても、同様の波長を利用することがより好ましい。
【0084】
具体的には、血球成分等の光散乱が支配的な長波長域W1における第1波長λ1として、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの吸収係数の差が、第2の所定値以下となる波長を用いると共に、同じく長波長域W1における第2波長λ2として、第2の所定値より大きくなる波長を用いる。より具体的に、第1波長λ1として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が、上述の第1閾値以上で、かつ、第2閾値以下となる波長を用いると共に、同じく長波長域W1における第2波長λ2として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が上述の第1閾値未満となる波長、又は、第2閾値より大きくなる波長を用いることが好ましい。なお、第2閾値とは、第1閾値よりも大きい別の所定の閾値である。つまり、第1波長λ1及び第2波長λ2として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が異なる範囲にある2つの波長を利用することが好ましい。これにより、上述した吸光度補正部84が、第5実測値D5を、第1実測値D1〜第4実測値D4を用いて補正する際に、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率をより一層考慮した精度の高い補正を行うことができる。
【0085】
特に、長波長域W1では血球成分等の光散乱による影響が支配的ではあるが、ヘモグロビンの光吸収による影響も被測定成分の測定波長と同程度含まれるため、第1波長λ1及び第2波長λ2として、ヘモグロビンの光吸収が、還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率により比較的大きく変化する2つの波長を利用することが好ましい。
【0086】
したがって、本実施形態では、第1波長λ1として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数の比率が0.8以上かつ1.5以下となる範囲に属する波長を利用することが好ましく、790nm〜850nmの範囲に属する波長を利用することが好ましい。但し、第1波長λ1としては、長波長域W1においてヘモグロビンの光吸収が比較的大きく表れる、還元ヘモグロビンの吸収係数と酸化ヘモグロビンの吸収係数とが等しい波長付近から選ぶのが特に好ましく、本実施形態では800〜810nmの範囲から選ばれる波長を用いることが特に好ましい。
【0087】
また、本実施形態では、第2波長λ2として、還元ヘモグロビンの吸収係数に対する酸化ヘモグロビンの吸収係数との比率が0.8より小さくなる波長、又は1.5より大きくなる波長を利用することが好ましい。また、波長によって媒質(ここでは血球)の屈折率(散乱特性)やヘモグロビンの光吸収も変化するため、第2波長λ2として、測定波長に近い波長を利用すると、測定波長(本実施形態では650nm)における血球成分等の光散乱やヘモグロビンの光吸収による影響をより正確に推定できる。すなわち、本実施形態では第1波長λ1よりも短い波長を利用することが好ましい。より具体的に、本実施形態では、第2波長λ2として、700nmより大きく、かつ、790nm未満の範囲に属する波長を利用することが好ましい。
【0088】
更に、第2波長λ2は、長波長域W1であって、第2波長λ2における全吸光度に含まれる色素成分の吸光度が、測定波長における全吸光度に含まれる色素成分の吸光度の10%以下、好ましくは6%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは実質的に0%となる波長とする。換言すれば、色素成分の吸光度スペクトルのピーク波長域の長波長側の裾となる波長以上の波長を利用することが特に好ましい。これにより、色素成分の光吸収の影響を排除し、長波長域W1における血球成分等の光散乱による影響が支配的なノイズをより正確に推定することができる。したがって、本実施形態では、第2波長λ2として、725nm以上であり、かつ、790nm未満の範囲に属する波長を利用することがより好ましい。そして、第2波長λ2としては、測定波長により近い波長が最も好ましいことから、第2波長λ2として、色素成分の吸光度がゼロとなる波長、すなわち、色素成分の吸光度スペクトルのピーク波長域の長波長側の裾となる波長を利用することが特に好ましい。したがって、本実施形態では、755nmを第2波長λ2とすることが特に好ましい。なお、上述した「全吸光度に含まれる色素成分の吸光度」の「全吸光度」とは、混合物全体の吸光度を意味する。また、上述した「全吸光度に含まれる色素成分の吸光度」の「色素成分の吸光度」とは、血液中の被測定成分と試薬中の色素成分とが呈色反応することにより生じる反応物の吸光度、すなわち、混合物における色素成分由来の吸光度を意味する。
【0089】
以上のとおり、成分測定装置1は、測定波長における混合物Xの吸光度の実測値である第5実測値D5を、第1波長λ1〜第4波長λ4それぞれにおける混合物Xの吸光度の実測値である第1実測値D1〜第4実測値D4を用いて補正し、測定波長における色素成分の吸光度を推定することができる。
【0090】
以下、成分測定装置1の吸光度補正部84による補正手法について説明する。
【0091】
上述したように、成分測定装置1のメモリ62には、測定光学系64により測定された第1波長λ1〜第5波長λ5それぞれにおける混合物Xの吸光度である第1実測値D1〜第5実測値D5の実測値データ85と、第1波長λ1〜第4波長λ4それぞれでの混合物Xの吸光度に相関する一群の補正係数データ86と、第5波長λ5で実測された混合物Xの吸光度を補正係数データ86により補正して得られる混合物X中の色素成分の吸光度と各種物理量との関係を示す検量線データ90と、が格納されている。
【0092】
吸光度補正部84は、メモリ62に格納されている実測値データ85及び補正係数データ86に基づき、測定波長である第5波長λ5における色素成分の吸光度を導出する。
【0093】
ここで、補正係数データ86とは、以下の[数1]で示す式を用いて予め実施された回帰分析によって導出されたものである。
【0094】
【数1】
【0095】
B(λ)とは、波長λにおける、色素成分の吸光度以外のノイズを意味しており、多種の血液検体を用いて上記[数1]で示す式によって回帰計算を行い、係数b0、b1、b2、b3及びb4を導出する。具体的に、本実施形態では、上述した第1〜第4波長λ1〜λ4の選定基準に基づき、第1波長λ1として810nm、第2波長λ2として750nm、第3波長λ3として545nm、第4波長λ4として560nmを用いている。また、多種の血液検体は、成分組成が異なる6つの血液検体を基礎とし、それぞれヘマトクリット値が10%〜70%の範囲に調整された血液検体を準備し、調整した血液検体の吸光度スペクトル測定を行い、回帰分析を使用して、係数b0、b1、b2、b3及びb4を導出している。また、今回行った観測数は全部で766回である。そして、導出されたこれらの係数b0〜b4に基づき、第1波長λ1〜第4波長λ4それぞれでの混合物Xの吸光度に相関する一群の補正係数を導出する。この補正係数を含む補正係数データ86を用いることにより、545nm、560nm、750nm、810nmの混合物Xの吸光度の実測値から、測定波長である650nmの混合物Xの吸光度の実測値を補正し、650nmにおける色素成分の吸光度を推定することができる。
【0096】
ここで、上記回帰計算によって得られる係数b0〜b4それぞれは、測定系に固有の値として定めることが可能であり、ヘマトクリット値によって異なるものではない。したがって、ヘマトクリット値に応じては、回帰計算に使用するB(λ1)〜B(λ4)の数値(実測値)が変動する。
【0097】
図11は、上述の回帰計算において、測定波長における色素成分以外の吸光度(ノイズ)における、長波長域W1の実測値による影響度(図11では「W1」と表記している。)と、短波長域W2の実測値による影響度(図11では「W2」と表記している。)と、を示すグラフである。なお、ここで言う「影響度」とは、データの占有率を意味している。図11に示すように、上述の回帰計算により得られた実測データの結果を考察すると、測定波長における色素成分以外の吸光度(ノイズ)を、第1実測値D1〜第4実測値D4を用いて推定する際に、長波長域W1の第1波長λ1及び第2波長λ2での第1実測値D1及び第2実測値D2は、ヘマトクリット値が10%から70%へと大きくなるにつれて、92%から90%へと影響度が減少する(図11の「W1」参照)。その一方で、短波長域W2の第3波長λ3及び第4波長λ4での第3実測値D3及び第4実測値D4は、ヘマトクリット値が10%から70%へと大きくなるにつれて、8%から10%へと影響度が増加する(図11の「W2」参照)。このように、ヘマトクリット値に応じて使用する長波長域W1と短波長域W2の影響度が変化することにより、測定波長における色素成分以外の吸光度(ノイズ)をより正確に推定することができ、結果として測定波長における色素成分の吸光度をより正確に推定することができる。また、第1実測値D1〜第4実測値D4に色素成分の吸収が含まれる場合は、第1実測値D1〜第4実測値D4に補正計算を行い、色素以外の吸光度(ノイズ)であるB(λ)を算出する必要がある。
【0098】
なお、成分測定装置1では、第3波長λ3として、ヘモグロビンの光吸収による影響が圧倒的に大きい短波長域W2で、還元ヘモグロビンの吸収係数と酸化ヘモグロビンの吸収係数とが等しい波長(図9では530nm、545nm、570nm又は580nm)を用いる場合、この第3実測値D3から、又は、この第3実測値D3と血球成分等の光散乱による影響が大きい長波長域W1で、還元ヘモグロビンの吸収係数と酸化ヘモグロビンの吸収係数とが等しい波長(図9では800nm)を用いた第1実測値D1を利用して、ヘマトクリット値を導出することが可能である。なお、ヘマトクリット値は、メモリ62に格納されたヘモグロビンの吸光度とヘマトクリット値との検量線から導出可能である。
【0099】
次に、上述した成分測定装置1において、血液中の血球成分等や埃などによる散乱光を含む光学的特性と、赤血球中の還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率と、に基づいて推定した、測定波長における色素成分の吸光度の精度についての検証実験の結果を説明する。検体(n=6)は、各血液をヘマトクリット値が10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%に調製したものを用いた。
【0100】
図12(a)は、上述した第1波長λ1として810nm、第2波長λ2として750nm、第3波長λ3として545nm、第4波長λ4として560nm、測定波長である第5波長λ5として650nmを用いた場合に、成分測定装置1の上記成分測定方法により導出される測定波長での色素成分以外の吸光度と、同測定波長における色素成分以外の吸光度の真値と、の誤差を示すグラフである。なお、本実施例では、第2波長λ2における全吸光度に含まれる色素成分の吸光度は、測定波長における吸光度の3%に相当する。これに対して図12(b)は、比較例として、上述した第1波長λ1〜第4波長λ4のうち810nm及び750nmの2つのみを用いて同様の手法により導出された、測定波長(650nm)における色素成分以外の吸光度と、同測定波長における色素成分以外の吸光度の真値と、の誤差を示すグラフである。
【0101】
図12(a)に示す誤差は、標準誤差の2倍が0.0058であるのに対して、図12(b)に示す誤差は、標準誤差の2倍が0.0109であり、図12(a)に示す誤差が、図12(b)に示す誤差よりも小さいことがわかる。つまり、本実施形態の成分測定装置1により実行される上述の成分測定方法によれば、長波長域W1の2つの波長(本検証実験では810nm及び750nm)のみから推定した測定波長における色素成分の吸光度よりも、精度の高い吸光度を推定することができる。なお、本実施例においては、ヘマトクリット40%とした際に、吸光度誤差0.001は血糖値で1[mg/dL]の誤差に相当する。この成分測定方法を用いた成分測定装置1は、ヘマトクリット10%〜70%の幅広いヘマトクリット値の血液に対して、血糖値測定誤差を低減させることが可能となる。
【0102】
最後に、上述した成分測定装置1の成分測定方法について、図13を参照してまとめて説明する。図13は、成分測定装置1により実行される成分測定方法を示すフローチャートである。
【0103】
この成分測定方法は、第1波長λ1における混合物Xの吸光度である第1実測値D1、第2波長λ2における混合物Xの吸光度である第2実測値D2、第3波長λ3における混合物Xの吸光度である第3実測値D3、第4波長λ4における混合物Xの吸光度である第4実測値D4、及び、第5波長λ5における混合物Xの吸光度である第5実測値D5を取得するステップS1と、第1実測値D1〜第5実測値D5の少なくとも1つを利用してヘマトクリット値を導出するステップS2と、第5実測値D5を、第1実測値D1〜第4実測値D4及び、回帰計算によって得られた補正係数を用いて補正し、測定波長における色素成分の吸光度を取得するステップS3と、測定波長における色素成分の吸光度と導出したヘマトクリット値から血液中の被測定成分を算出するステップS4と、を含むものである。
【0104】
ステップS1では、上述したように、測定光学系64の発光部66及び受光部72を用いて、第1実測値D1〜第5実測値D5を取得する。本実施形態では、ステップS2において、第3実測値D3に基づいて、又は、第3実測値D3及び第1実測値D1に基づいて、ヘマトクリット値を導出する。具体的には、ステップS2において、第3実測値D3から、または、第3実測値D3及び第1実測値D1から、ヘモグロビンの吸光度を推定し、ヘマトクリット値を導出する。さらに、第3実測値D3に、又は、第3実測値D3及び第1実測値D1に、色素成分の吸収が含まれる場合は、それぞれ、第3実測値D3に、又は、第3実測値D3及び第1実測値D1に、色素成分の吸収分を差し引く補正計算を行い取得した補正値から、ヘマトクリット値を導出する。本実施形態では、ヘマトクリット値を、メモリ62に格納されている混合物X中のヘモグロビンの吸光度とヘマトクリット値との関係を示す検量線から導出する。ステップS3では、実際に、第5実測値D5を、第1実測値D1〜第4実測値D4及び回帰計算によって得られた補正係数を用いて補正し、測定波長における色素成分の吸光度を推定し、取得する。最後に、ステップS4では、取得した測定波長における色素成分の吸光度と導出したヘマトクリット値から、グルコース濃度との関係を示す検量線を用いて、グルコース濃度を算出する。
【0105】
ここで、上述した発色試薬22とは異なる別の発色試薬を使用した場合について説明する。上述の発色試薬22は、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)とテトラゾリウム塩(WST−4)及び電子メディエーターとの混合試薬であるが、ここで説明する発色試薬は、以下の[化1]で示されるテトラゾリウム塩Aである。なお、式中 X=Naである。
【0106】
【化1】
【0107】
図14は、グルコース濃度が300mg/dLのグルコース水を検体として用いた場合の、上述の発色試薬22に含まれる色素成分であるWST−4の吸光度スペクトル(図14では「色素成分1」と表記)と、ここで説明する発色試薬に含まれる色素成分であるテトラゾリウム塩Aの吸光度スペクトル(図14では「色素成分2」と表記)と、を示す図である。
【0108】
図14に示すように、テトラゾリウム塩Aの吸光度スペクトルは、WST-4の吸光度スペクトルと比較して、より大きく、かつ、より明瞭な吸収ピークを有する。そのため、テトラゾリウム塩Aを含む発色試薬の吸収ピークを利用すれば、WST−4を含む発色試薬22の吸収ピークを利用する場合よりも、色素成分の吸光度を表すシグナルを検出し易く、被測定成分の測定誤差を低減することができる。また、テトラゾリウム塩Aのピーク波長は、650nm付近であるため、上述した例と同様、測定波長である第5波長λ5として650nmを利用することができる。但し、図14に示すように、テトラゾリウム塩Aのピーク波長域は、WST-4のピーク波長域よりも長波長側にずれている。そのため、上述の例で用いた第2波長λ2と同じ波長を利用すると、テトラゾリウム塩Aの光吸収による影響を大きく受けるため、被測定成分の測定誤差が生じ易くなる。
【0109】
そこで、色素成分としてテトラゾリウム塩Aを含む発色試薬を用いる場合は、第2波長λ2として、発色試薬の光吸収の影響を受けにくい波長範囲に属する波長を利用する。具体的に、テトラゾリウム塩Aを含む発色試薬を用いる場合の第2波長λ2は、長波長域W1であって、第2波長λ2における全吸光度に含まれる色素成分の吸光度が、測定波長における全吸光度に含まれる色素成分の吸光度の10%以下、好ましくは6%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは実質的に0%となる波長とする。そのため、本例では、測定波長を650nmとした場合、790nm以上の波長を利用することが好ましく、810nm以上の波長を利用することがより好ましく、830nm以上の波長を利用することが更に好ましく、920nm以上の波長を利用することが特に好ましい。
【0110】
但し、実際に用いるLED素子などの汎用的な光源の特性を考慮すると、950nm以下の波長であることが好ましく、940nm以下であることがより好ましい。
【0111】
なお、第1波長λ1、第3波長λ3、第4波長λ4及び第5波長λ5ついては、上述の例で示した波長範囲と同様の波長範囲を利用することができる。そして、第1波長λ1〜第5波長λ5を用いて、上述の例と同様の成分測定方法を実行すれば、血液中の血球成分等による光学的特性と、赤血球中の還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率に応じた補正を行うことができるため、精度の高い測定結果を得ることができる。
【0112】
ここで、テトラゾリウム塩Aを含む発色試薬を用いることを想定した上で、上述した第1波長λ1〜第4波長λ4の選定基準に基づき、第1波長λ1として810nm、第2波長λ2として900nm、第3波長λ3として545nm、第4波長λ4として560nmを用いて、上述の例で示した[数1]の式を用いて回帰分析を実行した。なお、回帰分析の手法は、上述の例で示したものと同様である。
【0113】
図15は、この回帰計算において、測定波長における色素成分以外の吸光度(ノイズ)における、長波長域W1の実測値による影響度(図15では「W1」と表記している。)と、短波長域W2の実測値による影響度(図15では「W2」と表記している。)と、を示すグラフである。なお、ここで言う「影響度」とは、上記同様、データの占有率を意味している。図15に示すように、上述の回帰計算により得られた実測データの結果を考察すると、上述の例と同様の結果が得られていることがわかる。具体的に、測定波長における色素成分以外の吸光度(ノイズ)を第1実測値D1〜第4実測値D4を用いて推定する際に、長波長域W1の第1波長λ1及び第2波長λ2での第1実測値D1及び第2実測値D2は、ヘマトクリット値が10%から70%へと大きくなるにつれて、90%から88%へと影響度が減少する(図15の「W1」参照)。その一方で、短波長域W2の第3波長λ3及び第4波長λ4での第3実測値D3及び第4実測値D4は、ヘマトクリット値が10%から70%へと大きくなるにつれて、10%から12%へと影響度が増加する(図15の「W2」参照)。このように、ヘマトクリット値に応じて使用する長波長域W1と短波長域W2の影響度が変化することにより、測定波長における色素成分以外の吸光度(ノイズ)をより正確に推定することができ、結果として測定波長における色素成分の吸光度をより正確に推定することができる。なお、第1実測値D1〜第4実測値D4に色素成分の吸収が含まれる場合は、第1実測値D1〜第4実測値D4に補正計算を行い、色素以外の吸光度(ノイズ)であるB(λ)を算出する必要がある。
【0114】
次に、テトラゾリウム塩Aを含む発色試薬を用いた上で、血液中の血球成分等による光学的特性と、赤血球中の還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率と、に基づいて推定した、測定波長における色素成分の吸光度の精度についての検証実験の結果を説明する。検体(n=6)は、各血液をヘマトクリット値が10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%に調製したものを用いた。
【0115】
図16(a)は、上述した第1波長λ1として810nm、第2波長λ2として900nm、第3波長λ3として545nm、第4波長λ4として560nm、測定波長である第5波長λ5として650nmを用いた場合に、成分測定装置1の上記成分測定方法により導出される測定波長での色素成分以外の吸光度と、同測定波長における色素成分以外の吸光度の真値と、の誤差を示すグラフである。なお、本例では、第2波長λ2における全吸光度に含まれる色素成分の吸光度は、測定波長における全吸光度に含まれる吸光度の1%に相当する。これに対して図16(b)は、比較例として、上述した第1波長λ1〜第4波長λ4のうち810nm及び900nmの2つのみを用いて同様の手法により導出された、測定波長(650nm)における色素成分以外の吸光度と、同測定波長における色素成分以外の吸光度の真値と、の誤差を示すグラフである。
【0116】
図16(a)に示す誤差は、標準誤差の2倍が0.0085であるのに対して、図16(b)に示す誤差は、標準誤差の2倍が0.0140であり、図16(a)に示す誤差が、図16(b)に示す誤差よりも小さいことがわかる。つまり、発色試薬の種類にかかわらず、成分測定装置1により実行される成分測定方法によれば、長波長域W1の2つの波長(本検証実験では810nm及び900nm)のみから推定した測定波長における色素成分の吸光度よりも、精度の高い吸光度を推定することができる。なお、本例においては、ヘマトクリット40%とした際に、吸光度誤差0.002は血糖値で1[mg/dL]の誤差に相当する。この成分測定方法を用いた成分測定装置1は、ヘマトクリット10%〜70%の幅広いヘマトクリット値の血液に対して、血糖値測定誤差を低減させることが可能となる。
【0117】
なお、上述したように、本例で用いる第2波長λ2は900nmであり、上述した例で用いた第2波長λ2である750nmよりも長波長側の波長域に属する。そのため、テトラゾリウム塩Aを含む発色試薬を用いる場合の第2波長λ2の値は、WST−4を含む発色試薬22を用いる場合の第2波長λ2の値と比較して、測定波長である650nmからは離れることになる。そのため、この観点では、測定誤差が生じ易い条件となる。しかしながら、図14に示すように、テトラゾリウム塩Aは、WST−4よりも吸収ピークが大きいため、色素成分の吸光度を表すシグナルをより検出し易い。このシグナルの強さにより、第2波長λ2が測定波長から離れることによる測定誤差の増加を抑制することができる。その結果、測定波長から離れた第2波長λ2を利用しても、被測定成分の測定誤差を小さくすることができる。
【0118】
本発明に係る成分測定装置、成分測定方法及び成分測定プログラムは、上述した実施形態の具体的な記載に限られるものではなく、特許請求の範囲の記載した発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0119】
上述の実施形態では、被測定成分としてのグルコースの測定として、グルコース濃度を測定しているが、濃度に限られるものではなく、別の物理量を測定するものであってもよい。また、上述の実施形態では、血液中の被測定成分として、血漿成分中のグルコースを例示しているが、これに限られるものではなく、例えば血液中のコレステロールを被測定成分とすることも可能である。したがって、成分測定装置は、血糖値測定装置に限られるものではない。
【0120】
更に、上述の実施形態では、発光部66として、複数種類の第1〜第5光源67a〜67d及び68を例に挙げて説明したが、単一の光源と、該光源の前方に配置された複数種類の光学フィルタ(バンドパス型)を組み合わせて構成してもよい。あるいは、単一の光源と、複数種類の受光部を組み合わせて構成してもよい。また更に、上述の実施形態では、成分測定チップ2を透過する透過光を受光する受光部72としているが、成分測定チップ2から反射する反射光を受光する受光部としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、成分測定装置、成分測定方法及び成分測定プログラムに関し、特に、血液中の被測定成分を測定する成分測定装置、成分測定方法及び成分測定プログラムに関する。
【符号の説明】
【0122】
1:成分測定装置
2:成分測定チップ
10:ハウジング
10a:本体部
10b:チップ装着部
11:表示部
12:取り外しレバー
13:電源ボタン
14:操作ボタン
21:ベース部材
22:発色試薬(試薬)
23:流路
24:供給部
25:カバー部材
26:イジェクトピン
60:演算部
62:メモリ
63:電源回路
64:測定光学系
66:発光部
67a〜67d:第1光源〜第4光源
68:第5光源
70:発光制御回路
72:受光部
74:受光制御回路
76:測定指示部
77:濃度測定部
78:吸光度取得部
84:吸光度補正部
85:実測値データ
86:補正係数データ
90:検量線データ
100:成分測定装置セット
D1〜D5:第1実測値〜第5実測値
S:チップ装着空間
W1:長波長域
W2:短波長域
W3:半値全幅域に対応する波長範囲
X:混合物
λ1〜λ5:第1波長〜第5波長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16