(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1集電体の少なくとも一方の面上に正極活物質層を配置してなる正極板と、負極活物質層を、前記正極活物質層の面積よりも大きな面積をもって、第2集電体の少なくとも一方の面上に配置してなる負極板とを、電解質を保持するセパレータを挟んで、前記正極活物質層と前記負極活物質層とが対向した状態で積層してなる発電要素を有し、
前記負極活物質層は、前記セパレータを挟んで前記正極活物質層に対向している対向部と、前記対向部の外周に位置し、前記セパレータを挟んで前記正極活物質層に対向していない非対向部と、を備え、
前記負極活物質層と前記セパレータとは、接着層を介して接着されており、
前記接着層において、前記セパレータに前記対向部を接着する第1接着部の接着強度よりも、前記セパレータに前記非対向部を接着する第2接着部の接着強度の方が大きい、二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態とその改変例について説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面における各部材の大きさや比率は、説明の都合上誇張され実際の大きさや比率とは異なる場合がある。なお、図中において、Xは、二次電池100の短手方向を示し、Yは、二次電池100の長手方向を示し、Zは、発電要素110の積層方向を示している。
【0012】
本実施形態に係る二次電池100を
図1〜
図5を参照しつつ説明する。本実施形態では、二次電池100として、非水電解質二次電池、より具体的にはリチウムイオン二次電池を例示して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る二次電池100の斜視図である。
図2は、
図1の2−2線に沿う断面図である。
図3は、
図1の3−3線に沿う断面の要部を示す断面図である。
図4は、二次電池100の発電要素110の平面図である。
図5Aは、第1接着部45aを形成する様子を示す概略断面図であり、
図5Bは、第2接着部45bを形成する様子を示す概略断面図である。
【0014】
図1〜
図3を参照して、本実施形態に係る二次電池100は、概説すれば、第1集電体11の両面11a、11b上に正極活物質層12を配置してなる正極板10と、負極活物質層22を、正極活物質層12の面積よりも大きな面積をもって、第2集電体21の両面21a、21b上に配置してなる負極板20とを、電解質を保持するセパレータ30を挟んで、正極活物質層12と負極活物質層22とが対向した状態で積層してなる発電要素110を有する。
【0015】
負極板20は、セパレータ30を挟んで正極活物質層12に対向している対向部20aと、対向部20aの外周に位置し、セパレータ30を挟んで正極活物質層12に対向していない非対向部20bと、を備える。負極板20とセパレータ30とは、第2接着層45(接着層に相当)を介して接着されており、第2接着層45において、セパレータ30に対向部20aを接着する第1接着部45aの接着強度よりも、セパレータ30に非対向部20bを接着する第2接着部45bの接着強度の方が大きい。二次電池100は、発電要素110を電解液とともに収容する外装部材120をさらに有する。以下、本実施形態に係る二次電池100について詳述する。
【0016】
<発電要素>
図2および
図3を参照して、発電要素110は、セパレータ30を挟んで後述する正極活物質層12と負極活物質層22とが対向した状態で、正極板10と負極板20とを積層してなる。
【0017】
発電要素110は、正極板10と負極板20とがセパレータ30を挟んで積層された状態において外装部材120に収容されている。
【0018】
<電解液>
電解液の種類は特に限定されず、従来公知のものを適宜利用することができる。本実施形態では、電解液として、液体電解質を用いたものを使用するが、ゲル電解質を用いた電解液を使用してもよい。
【0019】
液体電解質は、溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解したものである。溶媒の種類は特に限定されず、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)などの従来公知のものを適宜使用できる。
【0020】
<外装部材>
外装部材120は、発電要素110を電解液とともに収容する。
【0021】
外装部材120は、3層構造のラミネートシートから構成される。1層目は、熱融着性樹脂に相当し、例えばポリエチレン(PE)、アイオノマー、またはエチレンビニルアセテート(EVA)を用いて形成している。1層目の材料は、負極板20に隣接させている。2層目は、金属を箔状に形成したものに相当し、例えばAl箔またはNi箔を用いて形成している。3層目は、樹脂性のフィルムに相当し、例えば剛性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)またはナイロンを用いて形成している。3層目の材料は、正極板10に隣接させている。
【0022】
<正極>
正極板10は、第1集電体11の両面11a、11b上に正極活物質層12を配置してなる。
【0023】
第1集電体11は、薄膜状の形状を備える。第1集電体11を構成する材料は特に限定されず、例えば、アルミニウムとすることができる。第1集電体11には、充放電用の正極タブ13が接続されている。
【0024】
第1集電体11の厚さは特に限定されないが、例えば1〜100μm程度である。
【0025】
正極活物質層12は、正極活物質を含む。正極活物質の種類は特に限定されず、例えば、LiNiCoAlO2とすることができる。
【0026】
本実施形態において、正極活物質層12は、第1集電体11の両面11a、11bの全面にわたって配置されている。しかしながら、正極活物質層12の配置の形態は、正極板10と負極板20とがセパレータ30を介して積層された状態において、セパレータ30を挟んで正極活物質層12と負極活物質層22とが対向し得る限りにおいて特に限定されない。
【0027】
正極活物質層12の厚さは特に限定されないが、例えば1μm〜100μm程度である。正極活物質層12の厚さを制御する方法は特に制限されないが、ドクターブレード法などが挙げられる。また、正極活物質層12の厚さを定量的に求める方法としては、種々の方法が考えられるが、例えば、マイクロメーターで測定や放射線を用いた膜厚測定などにより求められる。
【0028】
正極板10の製造方法は特に限定されないが、本実施形態では、第1集電体11の両面11a、11b上に正極スラリーを塗工してから乾燥させることによって正極活物質層12を第1集電体11の両面11a、11b上に形成する。乾燥した正極活物質層12は、第1集電体11の両面11a、11bに結着させている状態で、第1集電体11の両側からプレス加工している。
【0029】
正極スラリーは、正極活物質、導電助剤、バインダー、および粘度調整溶媒を含む。正極活物質として、LiNiCoAlO2を90wt%の比率で用いる。導電助剤として、アセチレンブラックを、5wt%の比率で用いる。バインダーとして、PVDFを、5wt%の比率で用いる。
【0030】
<負極>
負極板20は、第2集電体21の両面21a、21b上に負極活物質層22を配置してなる。
【0031】
第2集電体21は、薄膜状の形状を備える。第2集電体21を構成する材料は特に限定されず、例えば、銅とすることができる。第2集電体21には、充放電用の負極タブ23が接続されている。
【0032】
第2集電体21の厚さは特に限定されないが、例えば1〜100μm程度である。
【0033】
負極活物質層22の面積は、正極活物質層12の面積よりも大きい。
【0034】
これにより、正極活物質層12および負極活物質層22の位置が相対的にずれた場合であっても正極活物質層12と負極活物質層22との対向面積を一定に維持できる。そのため、正極活物質層12と負極活物質層22との対向面積が変化することに起因して発電容量が変動することを抑制できる。
【0035】
負極活物質層22は、負極活物質を含む。負極活物質の少なくとも1種は、シリコン単体(Si)、シリコン合金、シリコン酸化物からなる群から選択される。
【0036】
シリコンは、単位体積当たりのリチウムイオンの吸蔵能力が黒鉛等と比較して高い。そのため、上述した材料を負極活物質に使用することによって負極活物質層22を薄くすることができる。その結果、負極板20を小型化・高容量化でき、ひいては二次電池100を小型化・高容量化できる。
【0037】
負極活物質層22の厚さは特に限定されないが、例えば1μm〜100μm程度である。負極活物質層22の厚さを制御する方法は特に限定されないが、正極活物質層12の厚さを制御する方法と同様の方法を使用できる。
【0038】
負極板20の製造方法は特に限定されないが、本実施形態では、第2集電体21の両面21a、21bに負極スラリーを塗工してから乾燥させることによって、第2集電体21の両面21a、21b上に負極活物質層22を形成する。乾燥した負極活物質層22は、第2集電体21の両面21a、21bに結着させている状態で、第2集電体21の両側からプレス加工している。
【0039】
負極スラリーは、例えば、負極活物質、導電助剤、バインダーおよび粘度調整溶媒を含むことができる。負極スラリーは、例えば、負極活物質として80wt%のシリコン合金と、導電助剤として5wt%のアセチレンブラックと、バインダーとして15wt%のポリイミドと、を混合したものを使用できる。スラリーの粘度を調整する溶媒としてNMPを使用できる。
【0040】
<セパレータ>
セパレータ30は、電解液に含まれる電解質を保持する。
【0041】
セパレータ30の種類は、電解液に含まれる電解質を保持し得る限りにおいて特に限定されず、従来公知のものを適宜利用できる。セパレータ30として、例えば、電解液に含まれる電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を用いることができる。
【0042】
セパレータ30の厚さは特に限定されないが、例えば1〜50μm程度である。
【0043】
<接着層>
正極板10とセパレータ30とは、第1接着層40を介して接着されており、負極板20とセパレータ30とは、第2接着層45を介して接着されている。
【0044】
第1接着層40は、正極活物質層12とセパレータ30との間に配置され、正極活物質層12とセパレータ30とを接着することによって正極板10とセパレータ30とを接着する。第2接着層45は、負極活物質層22とセパレータ30との間に配置され、負極活物質層22とセパレータ30とを接着することによって負極板20とセパレータ30とを接着する。第1接着層40の厚さは特に限定されないが、例えば100nm〜500nm程度である。同様に、第2接着層45の厚さは限定されないが、例えば100nm〜500nm程度である。
【0045】
第1接着層40を構成する材料は、正極活物質層12とセパレータ30とを接着し得る限りにおいて限定されない。第2接着層45を構成する材料は、負極活物質層22とセパレータ30とを接着し得る限りにおいて限定されない。
【0046】
第1接着層40および第2接着層45を構成する材料として、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物等の熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン(カルボキシル基を一部側鎖に持つもの)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の(メタ)アクリル系樹脂、アラミド、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等を用いることができる。
【0047】
第1接着層40および第2接着層45を構成する材料として、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドを用いるのがより好ましい。
【0048】
第1接着層40を構成する材料および第2接着層45を構成する材料として上述した材料は、耐熱性に優れ、さらに酸化電位、還元電位双方に安定である。
【0049】
第1接着層40を構成する材料および第2接着層45を構成する材料として上述した材料のうち、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂等は、酸化側、還元側のいずれの電位にも強いから、第1接着層40および第2接着層45のいずれに対しても好適に使用可能である。
【0050】
第1接着層40を構成する材料および第2接着層45を構成する材料として上述した材料のうち、PTFE等は、酸化電位に強いから、正極活物質層12とセパレータ30とを接着する第1接着層40を構成する材料として用いるのが好ましい。
【0051】
一方、第1接着層40を構成する材料および第2接着層45を構成する材料として上述した材料のうち、SBR等は、還元電位に強いことから負極活物質層22とセパレータ30とを接着する第2接着層45を構成する材料として用いるのが好ましい。
【0052】
第1接着層40を構成する材料および第2接着層45を構成する材料として上述した材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
第1接着層40は、セパレータ30において正極活物質層12に臨む面30aのうち、正極活物質層12に対向する部位に配置されている。しかしながら、第1接着層40の配置の形態は、正極活物質層12とセパレータ30とを接着し得る限りにおいて特に限定されない。例えば、第1接着層40は、セパレータ30において正極活物質層12に臨む面30aの全面にわたって配置されていてもよい。
【0054】
第2接着層45も同様に、セパレータ30において負極活物質層22に臨む面30bのうち負極活物質層22に対向する部位に配置されている。しかしながら、第2接着層45の配置の形態は、負極活物質層22とセパレータ30とを接着し得る限りにおいて特に限定されない。例えば、第2接着層45は、セパレータ30において負極活物質層22に臨む面30bの全面にわたって配置されていてもよい。
【0055】
<第2接着層と負極板との関係>
図3および
図4を参照して、負極板20は、セパレータ30を挟んで正極活物質層12に対向している対向部20aと、対向部20aの外周に位置し、セパレータ30を挟んで正極活物質層12に対向していない非対向部20bと、を備える。
【0056】
第2接着層45は、セパレータ30に対向部20aを接着する第1接着部45aと、セパレータ30に非対向部20bを接着する第2接着部45bと、を備える。第1接着部45aは、セパレータ30と対向部20aとの間に配置されている。第2接着部45bは、セパレータ30と非対向部20bとの間に配置されている。
【0057】
第2接着部45bの接着強度は、第1接着部45aの接着強度よりも大きい。接着強度の評価方法は、第1接着部45aの接着強度および第2接着部45bの接着強度の評価が同じ評価方法によって行われる限りにおいて特に限定されない。接着強度の評価方法として、例えば、JISのK6854−1(90度はく離試験)やK6854−2(180度はく離試験)に記載の方法を使用できる。
【0058】
負極活物質層22は、使用に伴って膨張収縮する。具体的には、上述したように、負極活物質の少なくとも1種はシリコンを含有するが、シリコンは、充放電に伴う体積変化が大きい。そのため、シリコンを含有する材料を負極活物質に用いた場合、シリコンの体積変化に伴って負極活物質層22が膨張収縮する。具体的には、負極活物質層22は充電時には膨張し、放電時には収縮する。
【0059】
負極活物質層22が膨張収縮すると負極板20が伸縮するが、伸縮寸法(伸縮の大きさ)は、負極板20全体にわたって均一にならない。具体的には、
図2および
図3を参照して、負極板20の対向部20aは充放電による正極板10とのイオンの授受に伴い伸縮する。一方、負極板20の非対向部20bは正極板10とのイオンの授受が少なく、充放電への寄与が小さいことから、対向部20aに比して伸縮寸法が小さい。
【0060】
ここで、充電時の負極板20の非対向部20bにおける負極活物質層22の膨張は、対向部20aにおける負極活物質層22の膨張よりも小さい。しかしながら、非対向部20bにおける負極板20は対向部20aの伸張に伴って張力が付与されることにより、第2集電体21が引き伸ばされて伸張する。この状態から放電が実施されると、対向部20aにおける負極板20は負極活物質層22が収縮して縮小するが、非対向部20bにおける負極板20は負極活物質層22の収縮が小さく殆ど縮小しない。
【0061】
このように、対向部20aが伸縮した際に非対向部20bとの間の伸縮寸法の大きさに差が生じ、伸縮寸法の差に起因して発生する非対向部20bの張力変化によって皺が発生する。
【0062】
本実施形態に係る二次電池100によれば、第2接着部45bの接着力が第1接着部45aの接着力よりも大きいことによって、対向部20aよりも非対向部20bの伸縮を抑制して、非対向部20bの伸縮寸法を小さくできる。これにより、対向部20aと非対向部20bとの間の伸縮寸法の差に起因した非対向部20bの張力変化を抑制できる。そのため、負極活物質層22が膨張収縮することに起因して、負極板20の外周縁部に皺が発生することを抑制できる。
【0063】
第2接着部45bの接着強度は、第1接着部45aの接着強度よりも大きい限りにおいて特に限定されないが、例えば、第1接着部45aの接着強度と第2接着部45bの接着強度との比は、0.02<(第1接着部45aの接着強度/第2接着部45bの接着強度)<0.5とし得る。別の言い方をすれば、第1接着部45aの接着強度:第2接着部45bの接着強度の比を、1:2から1:50までの間の範囲内に設定し得る。
【0064】
本実施形態では、第2接着部45bを構成する材料の平均粒径は、第1接着部45aを構成する材料の平均粒径よりも大きい。平均粒径とは、第2接着層45を構成する材料のうち接着力を生じさせる材料の平均粒径を意味する。例えば、第2接着層45を構成する材料として、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた場合には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)の平均粒径を意味する。また、第2接着層45を構成する材料として二種類以上の材料を併用した場合には、それら材料全てについての平均粒径を意味する。
【0065】
第2接着層45を構成する材料のうち接着力を生じさせる材料の平均粒径を小さくすると接着強度が増大するため、平均粒径を異ならせるという簡便な方法によって、第1接着部45aの接着強度よりも第2接着部45bの接着強度を大きくできる。
【0066】
第1接着部45aを構成する材料の平均粒径および第2接着部45bを構成する材料の平均粒径は、第2接着部45bの接着強度が第1接着部45aの接着強度よりも大きくなる限りにおいて特に限定されない。例えば、第2接着層45を構成する材料としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた場合、第1接着部45aを構成する材料の平均粒径を1μmとし、第1接着部45aを構成する材料の平均粒径を0.1μmとすることができる。
【0067】
第1接着部45aを構成する材料の平均粒径および第2接着部45bを構成する材料の平均粒径の算出方法は、第1接着部45aを構成する材料の平均粒径の算出方法と第2接着部45bを構成する材料の平均粒径の算出方法とが同じである限りにおいて限定されない。第1接着部45aを構成する材料の平均粒径および第2接着部45bを構成する材料の平均粒径として、例えば、レーザー回折・散乱法による小粒子径側からの50%積算粒子径を用いることができる。
【0068】
第1接着部45aおよび第2接着部45bの形成方法は特に限定されないが、例えば、以下の手順によって形成できる。
【0069】
図5Aを参照して、セパレータ30において負極活物質層22に臨む面30bの部位のうち、正極板10と負極板20とをセパレータ30を介して積層したときに負極活物質層22に対向しない部位に第1接着部45aと同じ厚さを備える剥離紙Mを配置する。そして、第1接着部45aを構成する材料を30bに向かって塗工する。これにより、第1接着部45aが面30b上に形成される。
【0070】
次に、剥離紙Mをはがして、正極板10と負極板20とをセパレータ30を介して積層したときに負極活物質層22に対向しない部位に第2接着部45bを構成する材料を塗工する。これにより、
図5Bに示すように第2接着部45bが面30b上に形成される。
【0071】
<二次電池の動作>
本実施形態に係る二次電池100は、燃料電池車およびハイブリッド電気自動車等の車両のモータ等の駆動用電源や補助電源として充放電が繰り返しなされる。充放電によって、負極活物質層22に含まれる負極活物質の体積が変化して負極活物質層22が膨張収縮する。
【0072】
本実施形態に係る二次電池100では、負極板20の非対向部20bをセパレータ30に接着する第2接着部45bの接着強度は、対向部20aをセパレータ30に接着する第1接着部45aの接着強度よりも大きい。これにより、対向部20aよりも非対向部20bの伸縮を抑制して、非対向部20bの伸縮寸法を小さくできる。そのため、対向部20aと非対向部20bとの間の伸縮寸法の差に起因した非対向部20bの張力変化を抑制できる。そのため、負極活物質層22が膨張収縮することに起因して、負極板20の外周縁部に皺が発生することを抑制できる。
【0073】
負極板20の外周縁部に皺が生じることを抑制することによって、対向部20a、すなわち、電極として反応する部位に皺が生じることを抑制できる。そのため、電極として反応する部位に皺が生じて電極間距離が不均一になることに起因した反応の局在化(電流密度の不均一化など)を抑制し、電池の性能低下およびサイクル寿命低下を防止できる。
【0074】
(作用・効果)
本実施形態に係る二次電池100は、第1集電体11の両面11a、11b上に正極活物質層12を配置してなる正極板10と、負極活物質層22を、正極活物質層12の面積よりも大きな面積をもって、第2集電体21の両面21a、21b上に配置してなる負極板20とを、電解質を保持するセパレータ30を挟んで、正極活物質層12と負極活物質層22とが対向した状態で積層してなる発電要素110を有する。負極板20は、セパレータ30を挟んで正極活物質層12に対向している対向部20aと、対向部20aの外周に位置し、セパレータ30を挟んで正極活物質層12に対向していない非対向部20bと、を備える。負極板20とセパレータ30とは、第2接着層45を介して接着されており、第2接着層45において、セパレータ30に対向部20aを接着する第1接着部45aの接着強度よりも、セパレータ30に非対向部20bを接着する第2接着部45bの接着強度の方が大きい。
【0075】
本実施形態に係る二次電池100によれば、負極板20の非対向部20bとセパレータ30とを接着する第2接着部45bの接着強度は、負極板20の対向部20aとセパレータ30とを接着する第1接着部45aの接着強度よりも大きい。これにより、対向部20aよりも非対向部20bの伸縮を抑制して、非対向部20bの伸縮寸法を小さくできる。そのため、対向部20aと非対向部20bとの間の伸縮寸法の差に起因した非対向部20bの張力変化を抑制できる。そのため、負極活物質層22が膨張収縮することに起因して、負極板20の外周縁部に皺が発生することを抑制できる。従って、性能低下・サイクル寿命低下を防止することが可能な二次電池を提供できる。
【0076】
また、本実施形態に係る二次電池100は、第2接着部45bを構成する材料の平均粒径は、第1接着部45aを構成する材料の平均粒径よりも小さい。
【0077】
本実施形態に係る二次電池100によれば、平均粒径を異ならせるという簡便な方法によって、第2接着部45bの接着強度を第1接着部45aの接着強度よりも高めることができる。そのため、二次電池の製造が容易になる。
【0078】
また、本実施形態に係る二次電池100は、リチウムイオン二次電池であり、負極活物質層22に含まれる負極活物質の少なくとも1種は、シリコン、シリコン合金およびシリコン酸化物からなる群から選択される。
【0079】
本実施形態に係る二次電池100によれば、負極活物質層22を薄くすることができるから、負極板20を小型化・高容量化できる。そのため、二次電池100の小型化・高容量化を実現できる。
【0080】
(改変例1)
上述した実施形態では、第1接着部45aを構成する材料よりも第2接着部45bを構成する材料の平均粒径を小さくすることにより、第1接着部45aの接着強度よりも第2接着部45bの接着強度を大きくした。しかしながら、第2接着部45bの接着強度を第2接着部45bの接着強度よりも大きくする方法は特に限定されない。
【0081】
例えば、第2接着部45bを構成する材料の目付量を、第1接着部45aを構成する材料の目付量よりも大きくしてもよい。ここで、本明細書において、「目付量」とは、第2接着層45を構成する材料のうち接着力を生じさせる材料の第2接着層45の単位面積当たりの質量を意味する。
【0082】
第2接着層45は、目付量が増すことによって接着強度が大きくなる。すなわち、本改変例に係る二次電池によれば、目付量を異ならせるという簡便な方法によって第2接着部45bの接着強度を第1接着部45aの接着強度よりも大きくできる。そのため、二次電池100の製造が容易になる。
【0083】
第2接着部45bを構成する材料の目付量は、第1接着部45aを構成する材料の目付量よりも大きい限りにおいて特に限定されない。例えば、第2接着層45を構成する材料としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた場合、第1接着部45aの目付量を5mg/cm2とし、第2接着部45bの目付量を20mg/cm2とすることができる。
【0084】
第1接着部45aの目付量と第2接着部45bの目付量とを異ならせる方法は特に限定されないが、例えば、セパレータ30において負極活物質層22に臨む面30aに第2接着層45を構成する材料を塗工する際に、材料を塗布する時間を調整することによって目付量を異ならせることができる。すなわち、第1接着部45aを構成する材料を塗布する時間と第2接着部45bを構成する材料を塗布する時間とを異ならせることによって目付量を異ならせることができる。塗布する時間が長い程、目付量は大きくなる。
【0085】
本改変例に係る二次電池によれば、目付量を異ならせるという簡便な方法によって、第2接着部45bの接着強度を第1接着部45aの接着強度よりも高めることができる。そのため、二次電池の製造が容易になる。
【0086】
(改変例2)
また、第2接着部45bは、非イオン透過性を備えてもよい。
【0087】
これにより、負極板20の非対向部20bの負極活物質層22が非イオン透過性を備えた部材によって覆われるから、電極として機能しない非対向部20bの負極活物質層22と電解液とが接触して電解液が消費されることを防止できる。これにより、電解液を有効に利用できるため二次電池100に充填する電解液の量を減らせる。そのため、二次電池100をさらに小型化できるとともに製造コストを削減できる。
【0088】
第2接着部45bに非イオン透過性を備えさせる方法は特に限定されないが、例えば、第2接着部45bの空孔率を小さくすることによって第2接着部45bに非イオン透過性を備えさせることができる。空孔率の調整は、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のディスパージョン溶液をセパレータ30に塗工した後に、乾燥条件(乾燥温度や乾燥時間など)を変更することによって可能であり、乾燥時間が長い程、また乾燥温度が高い程、空孔率が小さくなる。
【0089】
(改変例3)
また、上述した実施形態並びに改変例1および改変例2では、第1接着部45aを構成する材料と第2接着部45bを構成する材料とは同じだった。しかしながら、第1接着部45aを構成する材料と第2接着部45bを構成する材料とは異なっていてもよい。
【0090】
これにより、材料を異ならせるという簡便な方法によって、第2接着部45bの接着強度を第1接着部45aの接着強度よりも大きくできる。そのため、二次電池の製造が容易になる。
【0091】
第1接着部45aを構成する材料と第2接着部45bを構成する材料の組合せは、第1接着部45aの接着強度よりも第2接着部45bの接着強度が大きくなる限りにおいて特に限定されない。例えば、第1接着部45aを構成する材料としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)ディスパージョン溶液を使用し、第2接着部45bを構成する材料としてセラミック粒子およびアクリルバインダーをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)へ分散させたものを使用できる。
【0092】
(その他の改変例)
さらに、上述した実施形態および改変例では、第1集電体11の両面11a、11bに正極活物質層12が配置されるとともに、第2集電体21の両面21a、21bに負極活物質層22が配置された、いわゆる非双曲型の二次電池を例に説明した。
【0093】
しかしながら、
図6に示すように、第1集電体11(第2集電体21)の一方の面11a(21a)上に正極活物質層12が配置されるとともに一方の面11a(21a)に対向する他方の面11b、21b上に負極活物質層22が配置された、いわゆる双曲型の二次電池に本発明を適用することも可能である。
【0094】
本改変例では、第1集電体11および第2集電体21は同一の構造を備えてよい。第1集電体11を構成する材料および第2集電体21を構成する材料は特に限定されず、従来公知のものを使用できる。第1集電体11を構成する材料および第2集電体21を構成する材料は、例えば、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、SUSとアルミニウムのクラッド材あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材であってよい。また、金属表面に、アルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。さらに、2つ以上の金属箔を張り合わせた、いわゆる複合集電体を用いてもよい。
【0095】
本改変例に係る二次電池によっても、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。また、上述した実施形態の改変例において説明した構成を本改変例に係る二次電池に適用することが可能であり、それによって、上述した実施形態の改変例に係る二次電池と同様の効果を奏することができる。
【0096】
以上、実施形態およびその改変例を通じて二次電池を説明したが、本発明は実施形態とその改変例において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0097】
例えば、本発明は、使用に伴って負極活物質層が膨張収縮する二次電池である限りにおいて、二次電池の種類や活物質の種類、電解質の種類などによらず適用可能である。
【0098】
また、上述した実施形態およびその改変例では、二次電池100の一の辺から正極タブ13および負極タブ23が取り出されているタイプの二次電池を例に説明した。しかしながら、二次電池の一の辺から正極タブが取り出されるとともに、他の辺から負極タブが取り出されるタイプの二次電池に本発明を適用することも可能である。
【0099】
さらに、上述した実施形態およびその改変例では、積層型の二次電池を例に説明したが、本発明は、巻回型の二次電池にも適用可能である。
【0100】
本出願は、2016年9月29日に出願された日本特許出願番号2016−191862号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。