(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自車両が走行する走行環境情報を取得する走行環境情報取得手段と、上記自車両の走行情報を検出する走行情報検出手段とを備え、上記走行環境情報と上記自車両の走行情報に基づいて自動運転制御を実行する車両の走行制御装置において、
上記自車両が自動運転で走行している際のドライバの状態を検出するドライバ状態検出手段と、
上記ドライバ状態検出手段で検出した上記ドライバの状態に基づき、自動運転状態から自動運転状態ではないと判定された際に上記ドライバに引き継がれるハンドル操作による操舵角の修正操作の反応遅れが予想されるか否かを調べ、該反応遅れが予想される場合には、目標進路を該目標進路のカーブ内側方向に、予め設定した補正量でオフセット補正し、補正された目標進路に応じた目標車速と目標操舵角を設定する目標進路補正手段と
を備え、
上記目標進路補正手段は、上記補正された目標進路に基づき、上記自車両がカーブの接線方向への走行を継続した際に上記現在の走行車線から逸脱すると推定されるまでの予め設定した時間に応じた上記目標車速を設定する
ことを特徴とする車両の走行制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1において、符号1は、車両の走行制御装置を示し、この走行制御装置1には、走行制御部10に、周辺環境認識装置11、ドライバ状態検出装置12、走行パラメータ検出装置13、自車位置情報検出装置14、車車間通信装置15、道路交通情報通信装置16、スイッチ群17の各入力装置と、エンジン制御装置21、ブレーキ制御装置22、ステアリング制御装置23、表示装置24、スピーカ・ブザー25の各出力装置が接続されている。
【0011】
周辺環境認識装置11は、車両の外部環境を撮影して画像情報を取得する車室内に設けた固体撮像素子等を備えたカメラ装置(ステレオカメラ、単眼カメラ、カラーカメラ等)と、車両の周辺に存在する立体物からの反射波を受信するレーダ装置(レーザレーダ、ミリ波レーダ等)、ソナー等(以上、図示せず)で構成されている。
【0012】
周辺環境認識装置11は、カメラ装置で撮像した画像情報を基に、例えば、距離情報に対して周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報を予め設定しておいた三次元的な道路形状データや立体物データ等と比較することにより、車線区画線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、車両(先行車、対向車、並走車、駐車車両)等の立体物データ等を自車両からの相対的な位置(距離、角度)を、速度と共に抽出する。
【0013】
また、周辺環境認識装置11は、レーダ装置で取得した反射波情報を基に、反射した立体物の存在する位置(距離、角度)を、速度と共に検出する。尚、本実施の形態では、周辺環境認識装置11で認識可能な最大距離(立体物までの距離、車線区画線の最遠距離)を視程としている。このように、周辺環境認識装置11は走行環境情報取得手段として設けられている。
【0014】
ドライバ状態検出装置12は、例えば、特開2006−318049号公報に開示されるような車室内に設けた、視野カメラ、赤外線ランプ等により、ドライバの視野挙動を検出して、ドライバの視線や顔の向きを検出し、ドライバの視線や顔向きが設定範囲から外側にあり、ドライバが脇見運転状態か否か判定して走行制御部10に出力する。
【0015】
また、ドライバ状態検出装置12は、上述の視野カメラ、赤外線ランプ等や、或いは、特開2012−234398号に開示されるような、ハンドル操作(操舵角)を検出することにより、ドライバの覚醒度の低下を検出し、走行制御部10に出力する。
【0016】
更に、ドライバ状態検出装置12は、特開2002−104013号公報に開示されるような、生体センサにより、ドライバの心拍数、脈波形、血圧、発汗状態、体温等を検出し、これら検出した値と、例えば、ドライバの個人時歴データ平均値とを比較し、ある程度の範囲内にあるかどうかを判定することによりドライバの体調が異常状態か否か判定し、走行制御部10に出力する。
【0017】
このように、本実施の形態では、ドライバ状態検出装置12は、ドライバ状態検出手段として設けられている。
【0018】
走行パラメータ検出装置13は、自車両の走行情報、具体的には、車速V、操舵トルクTdrv、操舵角θH、ヨーレートγ、アクセル開度、スロットル開度、及び走行する路面の路面勾配、路面摩擦係数推定値等を検出する。また、走行パラメータ検出装置13は、他に、自車両の電源系、すなわち、電源電圧の低下状態、バッテリの充電状態(State of charge:SOC)の低下状態、通信エラーの頻度等を算出して走行制御部10に出力する。このように、走行パラメータ検出装置13は、走行情報検出手段の機能を有して設けられている。
【0019】
自車位置情報検出装置14は、例えば、公知のナビゲーションシステムである。このナビゲーションシステムは、例えば、GPS[Global Positioning System:全地球測位システム]衛星から発信された電波を受信し、その電波情報に基づいて現在位置を検出して、フラッシュメモリや、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイ(Blu−ray:登録商標)ディスク、HDD(Hard disk drive)等に予め記憶しておいた地図データ上に自車位置を特定する。
【0020】
この予め記憶される地図データは、道路データおよび施設データを有している。道路データは、リンクの位置情報と種別情報、ノードの位置情報と種別情報、および、ノードとリンクとの接続関係の情報、すなわち、道路の分岐、合流地点情報と分岐路における最大車速情報等を含んでいる。施設データは、施設毎のレコードを複数有しており、各レコードは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、施設種別(デパート、商店、レストラン、駐車場、公園、車両の故障時の修理拠点の別)情報を示すデータを有している。そして、地図位置上の自車位置を表示して、操作者により目的地が入力されると、出発地から目的地までの経路が所定に演算され、ディスプレイ、モニタ等の表示装置24に表示され、また、スピーカ・ブザー25により音声案内して誘導自在になっている。このように、自車位置情報検出装置14は、走行環境情報取得手段として設けられている。
【0021】
車車間通信装置15は、例えば、無線LANなど100[m]程度の通信エリアを有する狭域無線通信装置で構成され、サーバなどを介さずに他の車両と直接通信を行い、情報の送受信を行うことが可能となっている。そして、他の車両との相互通信により、車両情報、走行情報、交通環境情報等を交換する。車両情報としては車種(本形態では、乗用車、トラック、二輪車等の種別)を示す固有情報がある。また、走行情報としては車速、位置情報、ブレーキランプの点灯情報、右左折時に発信される方向指示器の点滅情報、緊急停止時に点滅されるハザードランプの点滅情報がある。更に、交通環境情報としては、道路の渋滞情報、工事情報等の状況によって変化する情報が含まれている。このように、車車間通信装置15は、走行環境情報取得手段として設けられている。
【0022】
道路交通情報通信装置16は、所謂、道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication System:登録商標)で、FM多重放送や道路上の発信機から、渋滞や事故、工事、所要時間、駐車場の道路交通情報をリアルタイムに受信し、この受信した交通情報を、上述の予め記憶しておいた地図データ上に表示する装置となっている。このように、道路交通情報通信装置16は、走行環境情報取得手段として設けられている。
【0023】
スイッチ群17は、ドライバの運転支援制御に係るスイッチ群で、例えば、速度を予め設定しておいた一定速で走行制御させるスイッチ、或いは、先行車との車間距離、車間時間を予め設定しておいた一定値に維持して追従制御させるためのスイッチ、走行車線を設定車線に維持して走行制御するレーンキープ制御のスイッチ、走行車線からの逸脱防止制御を行う車線逸脱防止制御のスイッチ、先行車(追い越し対象車両)の追い越し制御を実行させる追い越し制御実行許可スイッチ、これら全ての制御を協調して行わせる自動運転制御を実行させるためのスイッチ、これら各制御に必要な車速、車間距離、車間時間、制限速度等を設定するスイッチ、或いは、これら各制御を解除するスイッチ等から構成されている。
【0024】
エンジン制御装置21は、例えば、吸入空気量、スロットル開度、エンジン水温、吸気温度、酸素濃度、クランク角、アクセル開度、その他の車両情報に基づき、車両のエンジン(図示せず)についての燃料噴射制御、点火時期制御、電子制御スロットル弁の制御等の主要な制御を行う公知の制御ユニットである。
【0025】
ブレーキ制御装置22は、例えば、ブレーキスイッチ、4輪の車輪速、操舵角θH、ヨーレートγ、その他の車両情報に基づき、4輪のブレーキ装置(図示せず)をドライバのブレーキ操作とは独立して制御可能で、公知のアンチロック・ブレーキ・システム(Antilock Brake System)や、横すべり防止制御等の車両にヨーモーメントを付加するヨーモーメント制御(ヨーブレーキ制御)を行う公知の制御ユニットである。そして、ブレーキ制御装置22は、走行制御部10から、各輪のブレーキ力が入力された場合には、該ブレーキ力に基づいて各輪のブレーキ液圧を算出し、ブレーキ駆動部(図示せず)を作動させる。このように、ブレーキ制御装置22は、自車両のヨー運動を制御する制御機能を備えている。また、ブレーキ制御装置22では、ハイドロリックユニット、ブレーキブースタ、その他等を含む制動系、ブレーキ制御装置22自身の異常を検出するようになっており、走行制御部10により、これらの異常状態の発生が監視されている。
【0026】
ステアリング制御装置23は、例えば、車速、操舵トルク、操舵角、ヨーレート、その他の車両情報に基づき、車両の操舵系に設けた電動パワーステアリングモータ(図示せず)によるアシストトルクを制御する、公知の制御装置である。また、ステアリング制御装置23は、上述の走行車線を設定車線に維持して走行制御するレーンキープ制御、走行車線からの逸脱防止制御を行う車線逸脱防止制御が可能となっており、これらレーンキープ制御、車線逸脱防止制御に必要な操舵角(目標操舵角θHt)、或いは、操舵トルクが、走行制御部10により算出されてステアリング制御装置23に入力され、入力された制御量に応じて電動パワーステアリングモータが駆動制御される。また、ステアリング制御装置23では、操舵機構を含む操舵系、操舵トルクセンサ、操舵角センサ等の異常を検出するようになっており、走行制御部10により、これらの異常状態の発生が監視されている。尚、ステアリング制御装置23は、操舵機構そのものの明らかな異常以外にも、パワーステアリングモータの駆動回路やモータレゾルバ等の保護のために一時的に作動する保護状態(例えば、オーバーロードによる電流カット等)も異常として検出される。
【0027】
表示装置24は、例えば、モニタ、ディスプレイ、アラームランプ等のドライバに対して視覚的な警告、報知を行う装置である。また、スピーカ・ブザー25は、ドライバに対して聴覚的な警告、報知を行う装置である。そして、これら表示装置24、スピーカ・ブザー25は、車両の様々な装置に異常が生じた場合には、ドライバに警報を適宜発生する。
【0028】
そして、走行制御部10は、上述の各装置11〜16からの各入力信号に基づいて、障害物等との衝突防止制御、定速走行制御、追従走行制御、レーンキープ制御、車線逸脱防止制御、その他追い越し制御等を協調させて行って自動運転制御等を実行する。この自動運転制御の際に、ドライバ状態検出装置12からの信号により、ドライバの修正操作の反応遅れが予想される場合には、目標進路を該目標進路のカーブ内側方向に、予めドライバの反応遅れを予想し、車線逸脱を遅らせるために予め設定した補正量でオフセット補正し、該補正された目標進路に応じた目標車速Vtと目標操舵角θHtを設定し、この目標車速Vtと目標操舵角θHtとで自動運転制御を実行する。このように、走行制御部10は、目標進路補正手段としての機能を有して設けられている。
【0029】
次に、走行制御部10で実行される、自動運転制御を、
図2のフローチャートで説明する。
【0030】
まず、ステップ(以下、「S」と略称)101では、自動運転制御が実行されている自動運転状態か否か判定され、自動運転状態ではない場合は、プログラムを抜け、自動運転状態の場合には、S102に進み、走行制御部10は、操舵系、制動系、電源系統、通信系統の情報を取得する。
【0031】
具体的には、ブレーキ制御装置22から、車両にヨーモーメントを付加するヨーモーメント制御(ヨーブレーキ制御)を行うヨー運動制御系の情報を読み込み、ステアリング制御装置23から、パワーステアリングモータの駆動回路やモータレゾルバ等の情報を読み込む。また、走行パラメータ検出装置13から、電源電圧、バッテリのSOC、通信エラー等の頻度等を読み込み、電源電圧が予め設定しておいた閾値よりも低下している場合、バッテリのSOCが予め設定しておいた閾値よりも低下している場合、通信エラーの頻度が所定値よりも高く、ヨー運動制御系に異常が予想される状況となっているか読み込む。
【0032】
次いで、S103に進み、舵角制御や、ヨーモーメント制御(ヨーブレーキ制御)の異常が予想されるか否か判定され、これらヨー運動制御系の異常発生が予想されない場合には、S104に進む。
【0033】
S104では、ドライバ状態検出装置12で、ドライバ状態(ドライバの脇見運転状態、ドライバの覚醒度の低下状態、ドライバの体調の異常状態)の検出が行われる。
【0034】
そして、S105に進み、ドライバが脇見運転状態、或いは、ドライバの覚醒度が低下している状態、或いは、ドライバの体調が異常状態であり、自動運転状態から自動運転状態ではないと判定された際にドライバの修正操作の反応遅れが予想されるか否か判定される。
【0035】
このS105の判定の結果、ドライバが脇見運転状態ではなく、且つ、覚醒度も低下しておらず、且つ、ドライバの体調の異常も検出されておらず、ドライバの修正操作の遅れが予想されない場合は、S106に進み、通常の自動運転制御(目標進路に沿った操舵・速度制御)が実行され、プログラムを抜ける。
【0036】
この通常の自動運転制御は、例えば、旋回半径R(
図3に示すようなカーブ中心線の例)の目標進路を走行する場合、以下の(1)式により、目標操舵角θHtを算出し、該目標操舵角θHtをステアリング制御装置23に出力して目標進路に沿った操舵制御を実行する。
【0037】
θHt=(1+A・V
2)・(l/R)・n ・・・(1)
ここで、lはホイールベース、nはステアリングギヤ比、Aはスタビリティファクタ(車両固有値)である。
【0038】
また、自動運転制御により設定される目標車速Vtは、周辺環境認識装置11、自車位置情報検出装置14、車車間通信装置15、道路交通情報通信装置16等からの情報(交通標識認識結果、地図情報、道路状況通信情報等)により取得した道路の制限速度とドライバが予め設定した目標車速の小さい方の値に設定され、この目標車速Vtになるように設定される。
【0039】
一方、S103で、舵角制御や、ヨーモーメント制御(ヨーブレーキ制御)の異常が予想される場合、或いは、前述のS105で、ドライバが脇見運転状態、或いは、ドライバの覚醒度が低下している状態、或いは、ドライバの体調が異常状態であり、ドライバの修正操作の反応遅れが予想される場合は、S107に進む。
【0040】
S107では、目標進路補正(目標進路を該目標進路のカーブ内側方向に、予めドライバの反応遅れを予想して設定した補正量でオフセットする補正)の禁止条件に関する情報の取得が実行される。
【0041】
具体的には、周辺環境認識装置11からの画像情報等を基に目標進路のカーブ内側に路側障害物やガードレールが存在するか否か、また、カーブ内側に対向車が存在するか否か、並走車が存在するか否か、ドライバの後述する前方注視点が周辺環境認識装置11の画像情報等で認識可能か(目標進路の前方が認識できるか)否かの情報の取得が行われる。
【0042】
上述の前方注視点とは、予め設定する目標進路の前方の点であり、例えば、自車両が直進して時刻t1(予め設定した値)後に到達する距離点とすると、(V・t1)前方の距離の点である。また、
図4に示すように、自車両の進行路を考慮してx−y座標上で、前方注視点を算出すると以下のように算出される。
【0043】
すなわち、現在の自車位置P0(x0,y0)、ヨー角をΨ、ヨーレートを(dΨ/dt)とおくと、時刻t1後に到達する前方注視点P1(x1,y1)は、以下の(2)式、(3)式の座標で算出される。尚、時刻t1まで、車速Vとヨーレート(dΨ/dt)は一定と仮定する。
【0044】
x1=x0+∫(V・cos(Ψ+(dΨ/dt)・t))dt
(但し、積分範囲は0〜t1)
=x0+(V/(dΨ/dt))・(cos(Ψ)・sin((dΨ/dt)
・t1)+sin(Ψ)・(cos((dΨ/dt)・t1)−1))
=x0+(V/(dΨ/dt))・(sin(Ψ+(dΨ/dt)・t1)
−sin(Ψ)) ・・・(2)
y1=y0+∫(V・sin(Ψ+(dΨ/dt)・t))dt
(但し、積分範囲は0〜t1)
=y0+(V/(dΨ/dt))・(sin(Ψ)・sin((dΨ/dt)
・t1)−cos(Ψ)・(cos((dΨ/dt)・t1)−1))
=y0−(V/(dΨ/dt))・(cos(Ψ+(dΨ/dt)・t1)
−cos(Ψ)) ・・・(3)
次いで、S108に進むと、目標進路のカーブ内側の路側障害物やガードレールの存在状態、カーブ内側の対向車の存在状態、並走車の存在状態、前方注視点の認識状態が判定される。
【0045】
このS108の判定の結果、目標進路のカーブ内側に路側障害物やガードレールが存在する、或いは、カーブ内側に対向車が存在する、或いは、並走車が存在する、或いは、前方注視点が周辺環境認識装置11の画像情報等で認識できないと判定された場合は、目標進路補正(目標進路を該目標進路のカーブ内側方向に、予めドライバの反応遅れを予想して設定した補正量でオフセットする補正)を禁止して前述のS106の通常の自動運転制御を実行する。
【0046】
また、目標進路のカーブ内側に路側障害物やガードレールが存在せず、且つ、カーブ内側に対向車が存在せず、且つ、並走車が存在せず、且つ、前方注視点が周辺環境認識装置11の画像情報等で認識できると判定された場合は、目標進路補正を実行すべくS109に進む。
【0047】
S109では、目標進路補正(目標進路を該目標進路のカーブ内側方向に、予めドライバの反応遅れを予想して設定した補正量でオフセットする補正)の目標進路補正旋回半径rを求める。この目標進路補正旋回半径rは、例えば、以下の(4)式により、算出する。
【0048】
r=R−((Wr−Wb)/2)+di ・・・(4)
ここで、
図3に示すように、Rは走行車線のカーブ中心線を目標進路とした場合の旋回半径、Wrは車線幅、Wbは車両全幅、diは車体(
図3の例では左側面)からカーブ内側の車線区画線までの距離(予め設定しておいた値)であり、オフセット補正量(R−r)は、予め設定されている距離diを基準に、車幅Wrと車両全幅Wbとに基づいて設定される。
(R−r)=((Wr−Wb)/2)−di
尚、
図3中のdoは車体(
図3の例では右側面)からカーブ外側の車線区画線までの距離であり、
図3の車線では、Wr=Wb+di+doの関係となっている。
【0049】
次いで、S110に進み、例えば、以下の(8)式により、上述の目標進路補正旋回半径rに沿って走行する目標車速Vtを算出する。
【0050】
ここで、目標車速Vtを算出する(8)式について説明する。
【0051】
まず、カーブから接線方向への逸脱に関しては、以下の(5)式が成立する。
【0052】
d=(1/2)・(d
2y/dt
2)0・t
2 ・・・(5)
ここで、dは目標進路から外側への膨らみ量、(d
2y/dt
2)0は元の旋回横加速度、tは経過時間である。
【0053】
図3に示すような、Wr=Wb+di+doの車線において、車両が車線から逸脱するまでの時間をts(設定値)確保すると予め仮定した場合、目標進路から外側への膨らみ量dを上述のdoとして、経過時間tをtsとし、このtsを自車両が現在の走行車線をカーブの接線方向へ走行を継続しても現在の走行車線から逸脱しないと推定される予め設定した時間(自動運転制御においてドライバの修正操作の反応遅れが予想される場合、ドライバの反応遅れを考慮して、実験、計算等により予め設定した時間)として、以下の(6)式が得られる。
【0054】
Wr−Wb−di=(1/2)・(d
2y/dt
2)0・ts
2 ・・・(6)
この(6)式を(d
2y/dt
2)0について解くと、
(d
2y/dt
2)0=2・(Wr−Wb−di)/ts
2
=Vt
2/r ・・・(7)
従って、この(7)式より、Vt=(r・(d
2y/dt
2)0)
1/2であるから、
Vt=((R−((Wr−Wb)/2)+di)
・(2・(Wr−Wb−di)/ts
2))
1/2 ・・・(8)
そして、この目標車速Vtに基づいて、現在の車速Vとを比較して必要な加減速度を算出してエンジン制御装置21、及び、ブレーキ制御装置22に出力し、速度制御を実行する。尚、目標車速Vtは、S106で説明したように、周辺環境認識装置11、自車位置情報検出装置14、車車間通信装置15、道路交通情報通信装置16等からの情報(交通標識認識結果、地図情報、道路状況通信情報等)により取得した道路の制限速度とドライバが予め設定した目標車速の小さい方の値で制限される。
【0055】
次いで、S111に進み、例えば、前述の(1)式と同様の、以下の(9)式に従って、目標操舵角θHtを算出し、該目標操舵角θHtをステアリング制御装置23に出力して目標進路に沿った操舵制御を実行する。
【0056】
θHt=(1+A・V
2)・(l/r)・n ・・・(9)
このように、本発明の実施の形態によれば、自動運転制御の際に、自車両のヨー運動制御系の異常発生が予想される場合、或いは、ドライバの修正操作の反応遅れが予想される場合は、自車両が現在の走行車線をカーブの接線方向へ走行を継続しても現在の走行車線から逸脱しないと推定される予め設定した時間(自動運転制御においてヨー運動制御系やドライバの修正操作の反応遅れが予想される場合、ドライバの反応遅れを考慮して、実験、計算等により予め設定した時間)分、目標進路を該目標進路のカーブ内側方向に、オフセット補正し、該補正された目標進路に応じた目標車速Vtと目標操舵角θHtで自動運転制御を実行する。このため、自動運転制御において、ドライバの修正操作の反応遅れが予想される場合、ドライバの反応遅れを考慮して適切に目標進路を設定して安全性を十分に確保した制御がなされる。また、目標進路のカーブ内側に路側障害物やガードレールが存在する、或いは、カーブ内側に対向車が存在する、或いは、並走車が存在する、或いは、前方注視点が周辺環境認識装置11の画像情報等で認識できないと判定された場合は、上述の目標進路補正をキャンセルするようになっているため、不用意な補正が確実に回避される。尚、本実施の形態では、目標進路補正のキャンセルを、目標進路のカーブ内側に路側障害物やガードレールが存在する場合、カーブ内側に対向車が存在する場合、並走車が存在する場合、前方注視点が周辺環境認識装置11の画像情報等で認識できないと判定された場合の何れか一つでも成立した場合としているが、何れか一つの条件をキャンセル条件とする構成であっても良く、何れか2つの条件をキャンセル条件とする構成であっても良く、何れか3つの条件をキャンセル条件とする構成であっても良い。