特許第6757488号(P6757488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757488
(24)【登録日】2020年9月2日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】閉塞クリップの製作方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/122 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   A61B17/122
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-183(P2019-183)
(22)【出願日】2019年1月4日
(62)【分割の表示】特願2017-550084(P2017-550084)の分割
【原出願日】2015年12月10日
(65)【公開番号】特開2019-55294(P2019-55294A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2019年2月1日
(31)【優先権主張番号】62/091,230
(32)【優先日】2014年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516209360
【氏名又は名称】アトリキュア, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファーゴ,フランク エム
(72)【発明者】
【氏名】グレイ,キンバリー
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−356234(JP,A)
【文献】 米国特許第05695505(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0172084(US,A1)
【文献】 米国特許第04966603(US,A)
【文献】 特表2014−504185(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0021062(US,A1)
【文献】 米国特許第06193732(US,B1)
【文献】 特表2009−501570(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0109161(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12−17/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)材料のシートから閉塞クリップの前駆体の外形を切り出すステップと、
ここで、前記閉塞クリップの前駆体は、
第一細長閉塞アームと、
第二細長閉塞アームと、
前記第一細長閉塞アームの遠位部分に連結された第一細長付勢アームと、
前記第二細長閉塞アームの遠位部分に連結された第二細長付勢アームと、を有し、
前記第一細長付勢アームの近位部分は、前記第二細長付勢アームの近位部分に連結されており、前記閉塞クリップの前駆体はさらに、
前記第一細長閉塞アームの遠位端と前記第一細長付勢アームの遠位端とに挟まれた第一遠位空洞と、
前記第二細長閉塞アームの遠位端と前記第二細長付勢アームの遠位端とに挟まれた第二遠位空洞と、
前記第一細長閉塞アームの近位端と前記第一細長付勢アームの近位セクションとに挟まれた第一近位空洞と、
前記第二細長閉塞アームの近位端と前記第二細長付勢アームの近位セクションとに挟まれた第二近位空洞と、
前記第一近位空洞と前記第一遠位空洞とに挟まれ、前記第一細長閉塞アームと前記第一細長付勢アームとをリンクする第一ブリッジと、
前記第二近位空洞と前記第二遠位空洞とに挟まれ、前記第二細長閉塞アームと前記第二細長付勢アームとをリンクする第二ブリッジとを有したものであり、
(b)前記閉塞クリップの前駆体を圧縮し、前記第一細長閉塞アームと前記第二細長閉塞アームとに予負荷して閉塞クリップを形成するステップと、
備える、閉塞クリップを製作する方法。
【請求項2】
前記外形を切り出すステップは、放電加工を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放電加工は、ワイヤ放電加工を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記閉塞クリップをファブリックに包むステップをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ファブリックは、組織内方成長を促進するファブリックチューブを含む、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年12月12日に出願の「閉塞クリップ(OCCLUSION CLIP)」と題した米国特許仮出願第62/091,230号の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の序論
本開示は、閉塞クリップ、特に、移植可能開放端閉塞クリップを目的とする。例示的形態においては、左心耳を閉塞するために例示的閉塞クリップが利用されうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第一態様は、(a)第一細長閉塞アームと;(b)第二細長閉塞アームと;(c)第一細長閉塞アームの遠位部分に連結された第一細長付勢アームと;(d)第二細長閉塞アームの遠位部分に連結された第二細長付勢アームとを含む閉塞クリップであって、第一細長付勢アームの近位部分は、第二細長付勢アームの近位部分に連結され、第一細長閉塞アームは、その長さの大半に沿って第一細長付勢アームと平行に伸び、第二細長閉塞アームは、その長さの大半に沿って第二細長付勢アームと平行に伸びる、閉塞クリップを提供することである。
【0004】
第一態様のより詳細な実施形態では、第一細長閉塞アームは自由近位端を含み、第二細長閉塞アームは自由近位端を含む。別のさらに詳細な実施形態では、第一細長閉塞アームは第一凸状組織係合表面を含み、第二細長閉塞アームは第二凸状組織係合表面を含み、第一凸状組織係合表面は第二凸状組織係合表面に面する。さらなる詳細な実施形態では、第一凸状組織係合表面の一部分が第一平面に沿って存在し、第二凸状組織係合表面の一部分が第二平面に沿って存在し、第一平面と第二平面とは互いに平行である。さらに詳細な実施形態では、第一凸状組織係合表面のいずれの部分も第二平面を通って伸びず、第一凸状組織係合表面のいずれの部分も第二平面を通って伸びない。さらに詳細な実施形態では、第一細長閉塞アームは第一長手方向長さを含み、第二細長閉塞アームは第二長手方向長さを含み、第一長手方向長さの75パーセント超が、第一細長閉塞アームと第一細長付勢アームとに挟まれた第一ギャップを含み、第二長手方向長さの75パーセント超が第二細長閉塞アームと第二細長付勢アームとに挟まれた第二ギャップを含む。さらに詳細な実施形態では、第一細長付勢アームは第三長手方向長さを含み、第二細長付勢アームは第四長手方向長さを含み、第三長手方向長さは第一長手方向長さより大きく、第四長手方向長さは第二長手方向長さより大きい。
【0005】
第一態様の別のさらに詳細な実施形態では、第一細長閉塞アーム、第二細長閉塞アーム、第一細長付勢アーム、および第二細長付勢アームは、一体である。別のさらに詳細な実施形態では、閉塞クリップは、閉塞クリップの少なくとも一部分をカバーするファブリックをさらに含む。さらなる詳細な実施形態では、ファブリックカバーは、(a)第一細長閉塞アームおよび第一細長付勢アーム;ならびに(b)第二細長閉塞アームおよび第二細長付勢アームのうちの少なくとも一方に同時に外接するチューブを含む。さらなる詳細な実施形態では、チューブは、(a)第一細長閉塞アームおよび第一細長付勢アーム;ならびに(b)第二細長閉塞アームおよび第二細長付勢アームの両方に同時に外接する。より詳細な実施形態では、閉塞クリップは、第一細長閉塞アームの遠位端と第一細長付勢アームの遠位端とに挟まれた第一遠位空洞を含み、閉塞クリップは、第二細長閉塞アームの遠位端と第二細長付勢アームの遠位端とに挟まれた第二遠位空洞を含む。より詳細な実施形態では、閉塞クリップは、第一細長閉塞アームの近位端と第一細長付勢アームの近位セクションとに挟まれた第一近位空洞を含み、閉塞クリップは、第二細長閉塞アームの近位端と第二細長付勢アームの近位セクションとに挟まれた第二近位空洞を含み、第一ブリッジが第一近位空洞と第一遠位空洞とに挟まれ、第一ブリッジが第一細長閉塞アームと第一細長付勢アームとをリンクし、第二ブリッジが第二近位空洞と第二遠位空洞とに挟まれ、第二ブリッジが第二細長閉塞アームと第二細長付勢アームとをリンクする。
【0006】
本発明の第二態様は、一対の末端に挟まれた連続する長さの材料を含む閉塞クリップであって、この連続する長さの材料は、150度より大きい方向転換を有する第一ターンと、150度より大きい方向転換を有する第二ターンと、150度より大きい方向転換を有する第三ターンとを含み、第三ターンは閉塞クリップの近位端で生じ、第一および第二ターンは閉塞クリップの遠位端の近位で生じ、近位端および遠位端は互いに対向し、一対の末端は閉塞クリップの近位端の近位で生じる、閉塞クリップを提供することである。
【0007】
第二態様のより詳細な実施形態では、第一、第二および第三ターンは、共通平面内に存在する。別のさらに詳細な実施形態では、第一ターン、第二ターンおよび第三ターンのうちの少なくとも二つが共通平面内に存在する。さらなる詳細な実施形態では、第一ターンは第一細長閉塞アームを第一細長付勢アームに連結し、第二ターンは第二細長閉塞アームを第二細長付勢アームに連結し、第三ターンは第一細長付勢アームを第二細長付勢アームに連結し、第一および第二細長閉塞アームのうちの少なくとも一つは、第一および第二細長付勢アームに挟まれる。
【0008】
本発明の第三態様は、(b)材料のシートから閉塞クリップの前駆体の外形を切り出すステップであって、閉塞クリップの前駆体は、一対の閉塞アームと一対の付勢アームとを含む、ステップと;(b)一対の閉塞アームを予負荷して閉塞クリップを形成するために閉塞クリップの前駆体を圧縮するステップとを含む、閉塞クリップを製作する方法を提供することである。
【0009】
第三態様のより詳細な実施形態では、外形を切り出すステップは、放電加工を用いて行われる。別のさらに詳細な実施形態では、放電加工はワイヤ放電加工を含む。さらなる詳細な実施形態では、本方法は、閉塞クリップをファブリックに包むステップをさらに含む。さらなる詳細な実施形態では、ファブリックは、組織内方成長を促進するファブリックチューブを含む。より詳細な実施形態では、閉塞クリップは、一対の末端に挟まれた連続する長さの材料を含み、連続する長さの材料は、150度より大きい方向転換を有する第一ターンと、150度より大きい方向転換を有する第二ターンと、150度より大きい方向転換を有する第三ターンとを含み、第三ターンは閉塞クリップの近位端で生じ、第一および第二ターンは、閉塞クリップの遠位端の近位で生じ、近位端および遠位端は互いに対向し、一対の末端は閉塞クリップの近位端の近位で生じる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】開位置で示した本開示による第一例示的閉塞クリップの立面斜視図である。
図2】開位置で示した図1の第一例示的閉塞クリップの側面図である。
図3】閉位置で示した図1の第一例示的閉塞クリップの側面図である。
図4】閉位置で示した図1の第一例示的閉塞クリップの端面図である。
図5図1の第一例示的閉塞クリップの前駆体の側面図である。
図6】閉位置で示したファブリックチューブによりカバーされた図1の第一例示的閉塞クリップの立面斜視図である。
図7】閉位置で示した本開示による第二例示的閉塞クリップの立面斜視図である。
図8】閉位置で示した図7の第二例示的閉塞クリップの側面図である。
図9】閉位置で示した図7の第二例示的閉塞クリップの斜視端面図である。
図10図7の第二例示的閉塞クリップの前駆体の側面図である。
図11】閉位置で示したファブリックチューブによりカバーされた図7の第二例示的閉塞クリップの立面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
移植可能開放端閉塞クリップおよび左心耳を閉塞するために開放端閉塞クリップを移植する方法の様々な態様を包含するために、本開示の例示的実施形態を以下で図と共に説明する。通常の技術を有する当業者には当然のことながら、以下に記載する実施形態の性質は例示的であり、本開示の範囲および趣旨から逸脱することなく再構成されうる。しかし、明確および正確のため、以下に記載する例示的実施形態は、通常の技術を有する当業者が本開示の範囲内に収まるために必須ではないと認識するはずである任意のステップ、方法および特徴を含みうる。
【0012】
図1〜4を参照すると、左心耳を閉塞するために用いられうる第一例示的閉塞クリップ100は、チタンシート素材を用いてチタンから製作されうる単一の本体を含む。この第一例示的閉塞クリップ100を製作するために利用されるプロセスのより詳細な説明は、後のセクションに記載する。
【0013】
例示的座標系として、Z軸に沿って例示的閉塞クリップの厚みがとられる。Y軸およびX軸は、このZ軸に対して垂直である(X軸もY軸に対して垂直である)。例示的形態では、閉塞クリップ100の高さがY軸に沿ってとられ、閉塞クリップ100の長手方向長さ(主要寸法)がX軸に沿ってとられる。
【0014】
例示的形態では、閉塞クリップ100は、一対の細長付勢/バネアーム120、130に一体的に連結されたU字形セクション110を含む。各細長付勢アーム120、130は、U字形セクション110に向かって伸びるそれぞれの細長閉塞アーム140、150に一体的に連結される。特に、U字形セクション110は、一対の細長付勢アーム120、130の間で測定して約145〜215°の間の方向転換を有する第一ターン112を含む。さらに、第一細長付勢アーム120と第一細長閉塞アーム140との間の移行は、第一細長付勢アーム120と第一細長閉塞アーム140との間で測定して約145〜215°の間の方向転換を有する第二ターン114を含む。同様に、第二細長付勢アーム130と第二細長閉塞アーム150との間の移行は、第二細長付勢アーム130と第二細長閉塞アーム150との間で測定して約145〜215°の間の方向転換を有する第三ターン116を含む。
【0015】
各細長閉塞アーム140、150は、ほぼ剛性(すなわち柔軟性がない)であり、末端160を含み、この末端に、例示的閉塞クリップ100を構成する一連の材料の始めと終わりが含まれる。本例示的実施形態では、各閉塞アーム140、150は、凸状の組織係合表面180を含む。例示的形態では、組織係合表面180の凸状の性質は、各閉塞アーム140、150の長手方向長さ(X軸に沿った主要寸法)に沿ってほぼ一定である。特に、組織係合表面180の輪郭は円弧を表す。
【0016】
互いに均一に離間した一対の平面状表面210が、組織係合表面180を挟む。この第一例示的実施形態に関する説明のため、U字形セクション110、細長付勢アーム120、130、および細長閉塞アーム140、150を含む(組織係合表面180を除く)チタン材料の(Z方向の)厚みは一定である。組織係合表面180の弓形輪郭により、閉塞クリップ100の(Z方向の)厚みは頂点230で0に達するまで減少する。換言すれば、(図4に示した)閉位置では組織係合表面180が互いに平行であり、頂点が互いに接触しまたは互いに均一の距離だけ離間するように、閉塞クリップの厚み寸法に沿った中ほどで(すなわちZ方向において平面状表面210の間の中ほどで)各組織係合表面180の頂点230が生じる。
【0017】
各平面状表面210は、閉塞クリップ100の対向する横方向境界をそれぞれ画成する。本例示的実施形態では、U字形セクション110の外形を部分的に描く平面状表面210の頂点での高さ(外側周囲表面260および内部表面300に対して直角にとった高さ)は、ターン114、116の近位まで細長付勢アームの長手方向長さに沿ってほぼ一定である細長付勢アーム120、130の高さ(外側周囲表面260および内部表面320に対して直角にとった高さ)より約25パーセント(25%)大きい。この25パーセント(25%)の高さの増加は、U字形セクション110が線形細長付勢アーム120、130に出会う所で0パーセント変化に達するまで線形に減少する。第二および第三ターン114、116で、平面状表面210の高さが最大化される。換言すれば、ターン114、116の端での平面状表面210の高さは、細長付勢アーム120、130の高さに、閉塞アーム140、150の高さ、さらに細長付勢アーム120、130と閉塞アーム140、150との間のギャップ240の高さを加えたものにほぼ等しい。この平面状表面210の最大高さは、細長閉塞アーム140、150に沿って近位に伸びる際に急激に減少する。特に、平面状表面210の高さは、末端160の近位で最小高さに達するまで、細長閉塞アーム140、150の長さに沿って線形に減少する。これに対して遠位に移動したときには、平面状表面210の最大高さは遠位端250に達するまで僅かに減少する。遠位端250の近位では、遠位端に達するまで平面状表面210の高さが減少し、輪郭が円の湾曲を表すように変化する。
【0018】
遠位端250は、平面状表面210に挟まれた外側周囲表面260によって部分的に画成される。例示的形態では、この周囲表面260の高さは(Z方向に)一定であり、クリップ100の一定の厚みと整合する。遠位端では、周囲表面260は平面状であるが、平面状表面の円の湾曲をたどる弓形の湾曲を帯びる。この弓形の湾曲は、第二および第三ターン114、116の近くで平面状近位セグメントに280に合流する平面状遠位セグメント270へとつながる。近位平面状セグメント280は、曲面セクション290に合流し、曲面セクション290の湾曲は、クリップ100が開位置にあるか閉位置にあるかに依存して変化する。外側周囲表面260の反対側に、内部表面300がある。
【0019】
内部表面300は、平面状表面210、外側周囲表面260、および組織係合表面180とともにクリップ100の外部境界表面の輪郭を描く。特に、内部表面300は、クリップ100が開位置にあるか閉位置にあるかに依存して湾曲が変化する曲面セクション310を含む。この曲面セクション310は、ターン114、116のそれぞれで一つのU字形カーブ330に合流する一対の細長平面状付勢アームセクション320に移行する。各U字形カーブ330は、細長平面状閉塞アームセクション340にもそれぞれ合流する。細長閉塞アーム140、150の二つの末端160は、それぞれの細長平面状閉塞アームセクション340に移行する丸み付きセクション350を含む対応する平滑表面により輪郭が描かれる。
【0020】
図3および4に示すように、クリップ100は、細長閉塞アーム140、150が何も挟まないときに閉位置をとる。この閉位置では、細長閉塞アーム140、150が互いに当接する。特に、組織係合表面180が最小限に離間しまたは互いに接触する。加えて、細長付勢アーム120、130と閉塞アーム140、150との間のギャップ240は、U字形セクション110に向かってより顕著となる。換言すれば、細長付勢アーム120、130は、閉塞アーム140、150と平行ではない。しかし、クリップ100が開位置をとるときにはこれは必ずしも当てはまらない。
【0021】
図1〜4を再び参照すると、閉位置を越える任意の位置を、一般に開位置と呼称する。議論のため例示的形態で図示された全開位置は、閉塞アーム140、150と平行に向けられた細長付勢アーム120、130に対応するが、閉塞アーム140、150の遠位部分の間の(第二および第三ターン114、116の近位の)間隔(すなわちギャップ240の幅)は、閉塞アーム140、150の(末端160の近位の)近位部分の間の間隔の数倍である。この全開位置では、クリップ100は、組織係合表面180の間に左心耳(LAA)を受け取るように構成されうる。特に、全開位置のときには、クリップ100が、LAAの上を通らずにLAAが組織係合表面180の間に捕えられるようにLAAの基部に沿って(LAA基部の主要寸法と平行に)移動される。細長付勢アーム120、130が、Y方向のアームの曲げを可能にするためにY方向により薄いが、クリップ100の遠位端250がZ方向に離れるのを遅延させるためにZ方向により厚いアスペクト比を有する点に注意しなければならない。
【0022】
図5および6を参照すると、例示的クリップ100は様々な方法で製作されうる。例として、例示的クリップ100の製作をワイヤ放電加工(WEDM)の文脈で説明する。例示的形態では、各シートが1/8インチの厚み寸法を有し、長さおよび幅寸法(例えば12インチ×12インチ、12インチ×18インチなど)を有する、移植可能グレード(例えばグレード2、グレード5)のチタン材料の二つ以上のシートが、厚み寸法に沿って互いに積み重ねられ、脱イオン水を含みうる誘電浴に浸漬される。例えば、積層チタンシートは第一電極を含み、ワイヤ放電加工機は、スプール材料(例えば黄銅ワイヤ)を含む第二電極を含む。WEDMは当業者に周知であり、したがって簡潔化のためWEDMの詳細な説明は省略されている。
【0023】
WEDMを用いて、図5に示される例示的クリップ100の前駆体の外形が各チタンシートから同時に切り抜かれ、これによりシートと同数のクリップが同時に製作される。前駆体の外形が切断された後、ワイヤ放電加工機は、チタンシートに対して第二電極を再配置し、以前に切断されていない箇所に別の前駆体の外形を形成する。ワイヤ放電加工機が、例示的前駆体を切断できる未切断箇所を使い果たすまで、このプロセスが繰り返される。
【0024】
WEDMの後、各前駆体クリップ(全て同じ形状および寸法を有する)に、組織係合表面ステップが行われる。例示的形態では、組織係合表面ステップにより、(元はブロックのC字形輪郭すなわち長方形の輪郭を有していた)閉塞アーム140、150から材料が機械加工除去されて、組織係合表面180の弓形輪郭が形成される。
【0025】
組織係合表面ステップの後、各前駆体クリップ(全て同じ形状および寸法を有する)に圧縮ステップが行われる。例示的形態では、圧縮ステップにより、組織係合表面180に挟まれた任意のギャップの寸法のほか、クリップ100の持つ任意の予負荷(すなわち圧縮ステップ後には組織係合表面間にギャップが存在しないと仮定して組織係合表面を互いに分離するために必要な力の大きさ)が確立される。この例示的プロセスでは、前駆体がU字形セクション110の近位で圧縮され、それにより組織係合表面180が互いに向かって移動する。例えば、U字形セクションが、約0.38インチ圧縮され、その結果、組織係合表面180間のギャップがゼロとなり、予負荷が約1.5ポンドの力となる(すなわち係合表面180を互いに分離するために1.5ポンド以上の力が必要である)。圧縮ステップの結果、閉塞アーム140、150に対する閉鎖力が、特に完全閉位置と4ミリメートルの開き/ギャップを持つ開位置との間で、遠位端から近位端まで基本的に一定となる。このように、細長付勢アーム120、130はほぼ弾性であるが、U字形セクション110はほぼ非弾性的に変形される。さらに、クリップ100の(X方向の)長さに応じて、クリップを開くために必要な力の大きさは変化しうる。閉塞アーム140、150の間の開き/ギャップが2ミリメートルでのターゲット力が、閉塞部材の長さ1ミリメートルあたり約0.032ポンドである状況において、クリップ100のU字形セクション110にかけられるクランプ力の大きさは、クリップ100の長さに応じて異なりうる。例えば、50ミリメートルのクリップ100の場合には、圧縮により約1.6ポンドの予負荷が与えられうるが、35ミリメートルのクリップの場合には、予負荷は1.12ポンドに減少されうる(相対的に大きい予負荷には相対的に大きい圧縮程度が必要である)。前駆体がU字形セクション110の近位で圧縮された後、例示的クリップ100の製作は完了し、クリップ構成要素が図3および4に示した予負荷位置をとる。
【0026】
この第一例示的実施形態では、クリップ100は、閉塞アーム140、150の長さにわたり均一な力を持ちうる。特に、例えば1〜4ミリメートルの開きの間で、閉塞アーム140、150の長さにわたり均一な力がかけられうる。このような閉塞アーム140、150の長さに沿って均一な力のプロファイルは、大抵の左心耳の一般的な圧縮厚みと一致する。例えば、切断せずに閉塞するのに十分な圧縮された左心耳はおよそ2ミリメートル±1ミリメートルの厚みを有することが、データにより示されている。したがって、1〜4ミリメートルの範囲内で均一な力のプロファイルを及ぼすクリップは、閉塞圧縮を受ける大抵の患者の左心耳を網羅するであろう。閉塞アーム140、150の長さにわたり均一な力が必ずしも得られない場合には、閉塞アームの間にクランプされた組織が遠位端を越えて押し出されないようにするために、クリップ100がクリップの遠位端250に向かってより重く予負荷されうることに注意しなければならない。
【0027】
図6に示すように、さらなる例示的形態では、例示的クリップ100が、ポリエチレンテレフタレートおよび延伸ポリテトラフルオロエチレン等の生物学的組織内方成長を可能にするために有効な様々な材料のいずれかで製作されうるファブリックチューブ376を使用して被包されうる。特に、ファブリックチューブ376は、組織内方成長を促進するためにコラーゲン、アルブミンなどで処理されうる。本例示的実施形態では、ファブリックチューブを通って通路が伸び、チューブの両端の対向する開口部が通路の始めと終わりをそれぞれ画定する。例えば、ファブリックチューブ376の一つの開口部は、クリップ100の遠位端250の一つに外接し、細長付勢アーム120および細長閉塞アーム140の長さに沿って、両方に同時に外接するように近位に移動される。ファブリックチューブ376の継続的な近位移動により、やがて細長閉塞アーム140の末端160およびU字形セクション110に達し、ここでファブリックチューブはU字形セクション110の形状にしたがい、細長閉塞アーム150の末端160に達する。この地点で、ファブリックチューブ376の開口部が、細長付勢アーム130および細長閉塞アーム150に同時に外接するように遠位に再配置される。ファブリックチューブ376の継続的な遠位移動の結果、やがてファブリックチューブの端が、細長付勢アーム130および細長閉塞アーム150の遠位端250を僅かに通り過ぎ、それによってクリップ全体がファブリックチューブの通路内に収められる。ファブリックチューブ376は、対応する両端が縫い閉じられるのを可能にするために十分な長さだけ閉塞クリップ100の遠位端250を越えて伸びる対応する両端を含む。ファブリックチューブ376がクリップ100のまわりに配置された後、両端が縫い閉じられてもよいし、またはファブリックチューブをクリップのまわりに配置する前にファブリックチューブの一端が縫い閉じられてもよい。しかし、ファブリックチューブ376がクリップ100のまわりに配置された後には、ファブリックチューブの縫われた両端がクリップをファブリックチューブ内に封入するように働く。
【0028】
図7〜9を参照すると、第二例示的閉塞クリップ400は、チタンシート素材を使用してチタンから製作されうる単一の本体も含む。以下さらに詳細に述べるように、この第二例示的閉塞クリップ400は、第一例示的閉塞クリップ100と同様の様式で製作されうる。
【0029】
説明のため、この第二例示的閉塞クリップ400は、第一例示的閉塞クリップ100と共通の多くの特徴を有する。したがって、これらの共通する特徴の詳細な議論は、簡潔化のため省略しているが、この第二例示的閉塞クリップ400に関する添付の図面に存在する共通の参照番号から明らかとなる。
【0030】
この第二例示的閉塞クリップ400は、近位端460と第二ターン114または第三ターン116との間で均一な高さを有しない閉塞アーム440、450を有することにより、第一例示的閉塞クリップ100と部分的に異なる。代わりに、閉塞アーム440、450の(Y方向の)高さは、第二/第三ターン114/116から近位端460に達するまで近位方向に線形に減少する。
【0031】
加えて、第二例示的閉塞クリップ400は、異なる弓形輪郭の組織係合表面480を有することにより、第一例示的閉塞クリップ100と異なる。例示的形態では、組織係合表面480は、はるかに大きい直径を有する円弧に対応する組織係合表面180の弓形輪郭より実質的に小さい直径を有する円弧に対応する弓形輪郭を有する。このように、組織係合表面480の(Y方向の)高さは、第一例示的クリップ100の組織係合表面180の高さより実質的に大きい。
【0032】
第二例示的閉塞クリップ400と第一例示的閉塞クリップ100との間のもう一つの違いは、遠位端250、550である。最初に、図10に示すように、ブリッジ部分700が細長付勢アーム120、130のそれぞれを閉塞アーム440、450にそれぞれ接続するように細長付勢アーム120、130の遠位端を閉塞アーム440、450の遠位端から分ける働きをするU字形凹所710が、閉塞クリップ400の前駆体の遠位端550のそれぞれに含まれる。例示的形態では、閉塞クリップ400前駆体におけるU字形凹所710の高さはほぼ一定であり、近位端720で漸減して0に達し、U字形輪郭を表す。
【0033】
第一例示的閉塞クリップ100と同様に、この第二例示的閉塞クリップもWEDMを用いて製作されうる。例示的形態では、各シートが1/8インチの厚み寸法を有し、長さおよび幅寸法(例えば12インチ×12インチ、12インチ×18インチなど)を有する、移植可能グレード(例えばグレード2、グレード5)のチタン材料の二つ以上のシートが、厚み寸法に沿って互いに積み重ねられ、脱イオン水を含みうる誘電浴に浸漬される。例えば、積層チタンシートは第一電極を含み、ワイヤ放電加工機は、スプールされた材料(例えば黄銅ワイヤ)を含む第二電極を含む。WEDMを用いて、図10に示される例示的クリップ400の前駆体の外形が各チタンシートから同時に切り抜かれ、これによりシートと同数のクリップが同時に製作される。前駆体の外形が切断された後、ワイヤ放電加工機は、チタンシートに対して第二電極を再配置し、以前に切断されていない箇所に別の前駆体の外形を形成する。ワイヤ放電加工機が、例示的前駆体を切断できる未切断箇所を使い果たすまで、このプロセスが繰り返される。
【0034】
WEDMの後、各前駆体クリップ(全て同じ形状および寸法を有する)に、クリンピングステップが行われる。例示的形態では、細長付勢アーム120、130および閉塞アーム440、450の遠位端550がクリンピングされて、各細長付勢アーム120、130の遠位端が変形される。図7〜9に示すように、クリンピングステップの結果は、近位端720を除くU字形凹所710の高さを減少させる、細長付勢アーム120、130の変形である。クリンピングステップにより、閉塞アーム440、450および細長付勢アーム120、130の遠位部分の間に均一な間隔を生み出すことができるが、その必要はない。以下でさらに詳述するように、クリンピングステップは、U字形凹所710をファブリックチューブ376の部分を保持するように再成形するために有効である。
【0035】
WEDMの後、各前駆体クリップ(全て同じ形状および寸法を有する)に、組織係合表面ステップも行われる。例示的形態では、組織係合表面ステップにより、(元はブロックのC字形輪郭すなわち長方形の輪郭を有していた)閉塞アーム440、450から材料が機械加工除去されて、組織係合表面480の弓形輪郭が形成される。
【0036】
WEDMの後、各前駆体クリップ(全て同じ形状および寸法を有する)に圧縮ステップがさらに行われる。例示的形態では、圧縮ステップにより、組織係合表面480に挟まれた任意のギャップの寸法のほか、クリップ400の持つ任意の予負荷が確立される。この例示的プロセスでは、前駆体がU字形セクション110と遠位端550との間の中ほどで(細長付勢アーム120、130を圧縮することにより)圧縮され、それにより組織係合表面480が互いに向かって移動する。例えば、細長付勢アーム120、130が、約0.38インチ圧縮され、その結果、組織係合表面480間のギャップがゼロとなり、予負荷が約1.5ポンドの力となる(すなわち係合表面480を互いに分離するために1.5ポンド以上の力が必要である)。換言すると、前駆体が圧縮された後、例示的クリップ400の製作は完了し、クリップ構成要素が図7〜9に示した予負荷位置をとる。
【0037】
図11に示すように、さらなる例示的形態では、例示的クリップ400が、ポリエチレンテレフタレートおよび延伸ポリテトラフルオロエチレン等の生物学的組織内方成長を可能にするために有効な様々な材料のいずれかで製作されうるファブリックチューブ376を使用して被包されうる。特に、ファブリックチューブ376は、組織内方成長を促進するためにコラーゲン、アルブミンなどで処理されうる。本例示的実施形態では、ファブリックチューブを通って通路が伸び、チューブの両端の対向する開口部が通路の始めと終わりをそれぞれ画定する。例えば、ファブリックチューブ376の一つの開口部は、クリップ400の遠位端550の一つに外接し、細長付勢アーム120および細長閉塞アーム440の長さに沿って、両方に同時に外接するように近位に移動される。ファブリックチューブ376の継続的な近位移動により、やがて細長閉塞アーム440の末端460およびU字形セクション110に達し、ここでファブリックチューブはU字形セクション110の形状にしたがい、細長閉塞アーム450の末端460に達する。この地点で、ファブリックチューブ376の開口部が、細長付勢アーム130および細長閉塞アーム450に同時に外接するように遠位に再配置される。ファブリックチューブ376の継続的な遠位移動の結果、やがてファブリックチューブの端が、細長付勢アーム130および細長閉塞アーム450の遠位端550を僅かに通り過ぎ、それによってクリップ全体がファブリックチューブの通路内に収められる。ファブリックチューブ376は、対応する両端をクリンピングされたU字形凹所710に押し込むのを可能にするために十分な長さだけ閉塞クリップ100の遠位端550を越えて伸びる対応する両端を含む。クリンピングされた各U字形凹所710の寸法は、ファブリックチューブのそれぞれの端を各凹所内へ押し込み、その後(上述の通りクリンピングステップによって)U字形凹所710の遠位部分をクリンピングすることにより、ファブリックチューブの両端が摩擦嵌合によりU字形凹所710内に保持されるような寸法である。このように、他の例示的実施形態と異なり、ファブリックチューブ376の両端は縫い閉じられない。
【0038】
以上の例示的ファブリック付属品は、ファブリックループ端を縫い閉じる他の例示的方法に勝る利点を提供しうる。例えば、ファブリックの遠位端をクリップ400の遠位端に固定することにより、クリップのまわりでのファブリックチューブの回転が妨げられる。
【0039】
以上の説明にしたがい、通常の技術を有する当業者には当然のことながら、本明細書に記載された方法および装置は本開示の例示的実施形態を構成するが、本明細書に含まれる発明がこれらの正確な実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を逸脱することなくこのような実施形態に対して変更が加えられうる。加えて、本発明は特許請求の範囲により定義され、本明細書に記載の例示的実施形態を記述するいずれの制限または要素も、そのような制限または要素が明記されない限りクレーム要素の解釈に取り入れられるべきことは意図されていないことが理解されなければならない。同様に、本発明は特許請求の範囲により定義され、本明細書には明記されていないかもしれないが請求された本発明の固有の利点および/または予想外の利点が存在しうるため、いずれかのクレームの範囲内に該当するために本明細書に開示された本発明の特定された利点または目的のいずれかまたは全てを満たす必要はないことも理解されなければならない。
図1
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