特許第6757497号(P6757497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757497
(24)【登録日】2020年9月2日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】シールド端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6593 20110101AFI20200910BHJP
【FI】
   H01R13/6593
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-18550(P2017-18550)
(22)【出願日】2017年2月3日
(65)【公開番号】特開2018-125243(P2018-125243A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前岨 宏芳
(72)【発明者】
【氏名】一尾 敏文
【審査官】 杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−254454(JP,A)
【文献】 特開2012−195315(JP,A)
【文献】 特開2016−072067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6593
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド電線の芯線の前端部に接続される内導体と、
前記内導体を収容する誘電体と、
外導体を構成し、前記誘電体を包囲した状態で保持する筒状部材と、
前記筒状部材とは別体の部品であり且つ前記外導体を構成し、前記シールド電線のシールド層の前端部に接続される一対の半割状の分割シェルと、
前記一対の分割シェルに形成され、前記筒状部材の後端と前記シールド層の前端との間において前記芯線を全周に亘って包囲する一対の覆い部と、
一方の前記分割シェルに形成されたガイド溝と、
他方の前記分割シェルに形成された閉塞板部と、
前記閉塞板部に形成され、前記他方の分割シェルを前記一方の分割シェル及び前記筒状部材に組み付ける過程で前記ガイド溝に摺接するガイドピンとを備え、
前記ガイドピンは、前記閉塞板部の内面側へ突出した形態であり、
前記他方の分割シェルを前記一方の分割シェル及び前記筒状部材に取り付けた状態では、前記ガイドピンと前記ガイド溝の嵌合部分が前記閉塞板部で覆い隠されるシールド端子。
【請求項2】
前記一対の分割シェルのうち少なくとも一方の後端部には、前記シールド層の外周に圧着される圧着部が形成され、
前記圧着部が形成されている前記分割シェルの前端部には、前記筒状部材の後端部内縁部に係止する引掛け部が形成されている請求項1に記載のシールド端子。
【請求項3】
前記ガイドピンと前記ガイド溝とから構成され、前記引掛け部を支点として前記分割シェルを揺動させつつ正規の組付位置へ案内するガイド手段を備えている請求項2に記載のシールド端子。
【請求項4】
一方の前記分割シェルには、前記シールド層の外周の一部を覆う固着部が形成され、
他方の前記分割シェルには、前記固着部の外周にカシメ付けられるカシメ片を有し、前記シールド層の外周に圧着される圧着部が形成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシールド端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アウター端子とインナー端子と誘電体とを備えたシールド端子が開示されている。アウター端子の前端部には保持部が形成され、保持部には誘電体が保持されている。誘電体にはインナター端子が取り付けられ、インナー端子はシールド電線の芯線に接続されている。アウター端子の後端部にはオープンバレル状の圧着部が形成され、圧着部はシールド電線のシールド層に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−129103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アウター端子のうち保持部と圧着部との間の領域では、芯線とインナー端子がアウター端子の外部へ露出した状態となるため、シールド機能の低下が懸念される。この対策としては、保持部と圧着部との間に芯線とインナ端子を全周に亘って包囲する筒状部を形成することが考えられる。しかし、筒状部を形成した場合、保持部に誘電体とインナー端子を取り付けた状態では、インナー端子を芯線に接続することが難しく、組付け作業に制約が生じるという問題がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、組付け作業の制約を低減し、シールド性能の信頼性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
シールド電線の芯線の前端部に接続される内導体と、
前記内導体を収容する誘電体と、
外導体を構成し、前記誘電体を包囲した状態で保持する筒状部材と、
前記筒状部材とは別体の部品であり且つ前記外導体を構成し、前記シールド電線のシールド層の前端部に接続される一対の半割状の分割シェルと、
前記一対の分割シェルに形成され、前記筒状部材の後端と前記シールド層の前端との間において前記芯線を全周に亘って包囲する一対の覆い部とを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
一対の覆い部が、筒状部材の後端とシールド層の前端との間において芯線を全周に亘って包囲するので、シールド性能の信頼性が向上する。一対の覆い部が形成されている一対の分割シェルは、筒状部材とは別体であって半割状をなしているので、筒状部材に誘電体と内導体を取り付けた状態で、芯線に内導体を接続する作業を行うことができる。したがって、本発明によれば、組付け工程の制約が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】シールドコネクタの斜視図
図2】シールドコネクタの側断面図
図3】シールド端子の分解斜視図
図4】アッパ部材の側断面図
図5】内導体と芯線を接続する前の状態をあらわす斜視図
図6】筒状部材と誘電体にロア部材を組み付けている状態をあらわす斜視図
図7】筒状部材と誘電体にロア部材を組み付けている状態をあらわす側断面図
図8】筒状部材と誘電体にロア部材を組み付けている状態をあらわす側面図
図9】筒状部材と誘電体にロア部材を組み付けた状態をあらわす側面図
図10】筒状部材とロア部材にアッパ部材を組み付けている状態をあらわす斜視図
図11】筒状部材とロア部材にアッパ部材を組み付けている状態をあらわす側面図
図12】筒状部材とロア部材にアッパ部材を組み付けている状態をあらわす側断面図
図13】筒状部材とロア部材とアッパ部材の組付けが完了した状態をあらわす側面図
図14】筒状部材とロア部材とアッパ部材の組み付けが完了した状態をあらわすシールド端子の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、前記一対の分割シェルのうち少なくとも一方の後端部には、前記シールド層の外周に圧着される圧着部が形成され、前記圧着部が形成されている前記分割シェルの前端部には、前記筒状部材の後端部内縁部に係止する引掛け部が形成されていてもよい。この構成によれば、圧着部をシールド層に圧着する際には、圧着時の反力によって分割シェルの前端部が径方向外方へ浮き上がるように変位しようとするが、分割シェルの前端部に形成した引掛け部が、筒状部材の後端部内縁部に係止されているので、分割シェルの前端部が浮き上がることを防止できる。
【0010】
本発明は、前記引掛け部を支点として前記分割シェルを揺動させつつ正規の組付位置へ案内するガイド手段を備えていてもよい。この構成によれば、ガイド手段により、分割シェルを他の部材と干渉させることなく組み付けることができる。
【0011】
本発明は、一方の前記分割シェルには、前記シールド層の外周の一部を覆う固着部が形成され、他方の前記分割シェルには、前記固着部の外周にカシメ付けられるカシメ片を有し、前記シールド層の外周に圧着される圧着部が形成されていてもよい。この構成によれば、カシメ片を固着部の外周にカシメ付けながら圧着部を圧着する工程だけで、一対の分割シェルをシールド層に固着することができる。
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図14を参照して説明する。尚、以下の説明において、シールドコネクタ1及びシールド端子Tの前後の方向については、図1〜14における左方を前方と定義する。上下の方向については、図1〜14にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。
【0013】
シールドコネクタ1は、合成樹脂製のハウジング2と、シールド端子Tとを備えて構成されている。図2に示すように、ハウジング2内には、前後両端が開放された端子収容室3が形成され、端子収容室3内にはハウジング2の後方からシールド端子Tが挿入されている。端子収容室3の上面部には、端子収容室3に挿入されたシールド端子Tが後方へ抜けるのを規制するための弾性撓み可能なランス4が形成されている。また、端子収容室3の下面部には、端子収容室3に挿入されたシールド端子Tを前止まりするための前止まり部5が形成されている。
【0014】
シールド端子Tは、図3に示すように、金属製の外導体10と、合成樹脂製の誘電体46と、複数の金属製の内導体52とを組み付けて構成されている。外導体10は、本体部材11と、本体部材11とは別体の単一部品であるアッパ部材35(請求項に記載の他方の分割シェル)とを組み付けて構成されている。本体部材11は、単一部品である筒状部材12と、筒状部材12とは別体の単一部品であるロア部材18(請求項に記載の一方の分割シェル)とを組み付けて構成されている。つまり、外導体10は、筒状部材12とアッパ部材35とロア部材18の3部品を組み付けて構成されている。
【0015】
筒状部材12は、所定形状の金属板材に曲げ加工等を施すことにより全体として概ね角筒状に成形されたものである。筒状部材12を構成する4つの板部の前端側領域には、夫々、4つの弾性接触片13が形成されている。各弾性接触片13は、各板部の一部を切り起こして斜め内側前方へ片持ち状に延出させた形態である。これらの弾性接触片13は、相手側外導体(図示省略)の外周面に対し弾性的に当接するようになっている。
【0016】
筒状部材12の後端側領域は、誘電体46を保持するための略角筒状の保持部14として機能する。図3に示すように、保持部14を構成する左右両側板部には、夫々、窓孔状の第1係止部15と、保持部14の後端縁を切欠した形態の第2係止部16と、窓孔状の第3係止部17とが形成されている。第2係止部16は、第1係止部15よりも下方で且つ第1係止部15よりも後方の位置に配されている。第3係止部17は、第1係止部15よりも下方で且つ第2係止部16よりも前方の位置に配されている。
【0017】
ロア部材18は、金属板材に曲げ加工等を施して成形されたものである。ロア部材18の前端側領域は、下板部20の左右両側縁から左右一対の内側板部21を立ち上げた形態の第1覆い部19(請求項に記載の覆い部)となっている。第1覆い部19の下板部20には、その前端縁に沿ってリブ状に突出し、且つ側面視形状が下板部20に対して上方へ段差状に配された第1引掛け部22(請求項に記載の引掛け部)が形成されている。第1覆い部19の下板部20には、下方(下板部20の外面側)へ叩き出された形態の突当部23が形成されている。
【0018】
第1覆い部19の左右両内側板部21には、夫々、内側板部21の前端縁の上端部から斜め下後方へ切欠した形態の第1ガイド溝24と、内側板部21の後端縁の上端部から斜め下前方へ切欠した形態の第2ガイド溝25が形成されている。第1ガイド溝24の上縁部のうち後端(奥端)に近い位置には、突起状の第1ストッパ26が形成されている。第2ガイド溝25の上縁部のうち前端(奥端)に近い位置には、突起状の第2ストッパ27が形成されている。第1ガイド溝24は第1ガイド手段28(請求項に記載のガイド手段)を構成し、第2ガイド溝25は第2ガイド手段29(請求項に記載のガイド手段)を構成する。
【0019】
第1覆い部19の左右両内側板部21には、夫々、窓孔状の第4係止部30と、窓孔状の第5係止部31が形成されている。第4係止部30と第5係止部31は上下に並ぶように位置関係にあり、第5係止部31は第4係止部30より下方の位置に配されている。第4係止部30と第5係止部31は、前後方向において第1ガイド溝24の後端と第2ガイド溝25の前端との間に配されている。
【0020】
ロア部材18の後端側領域には、オープンバレル状の圧着部32が形成されている。圧着部32は、第1覆い部19の下板部20の後端から後方へ延出した略円弧形断面の基板部33と、基板部33の左右両側縁から立ち上がる左右非対称な一対のカシメ片34とを備えて構成されている。圧着部32は、シールド電線60のシールド層65の外周に導通可能に固着されている。
【0021】
アッパ部材35は、金属板材に曲げ加工等を施して成形されたものである。アッパ部材35の前端側領域は、上板部37の左右両側縁から左右一対の外側板部38を下方へ延出させた形態の第2覆い部36(請求項に記載の覆い部)となっている。第2覆い部36の上板部37には、その前端縁に沿ってリブ状に突出し、且つ側面視形状が上板部37に対して下方へ段差状に配された第2引掛け部39(請求項に記載の引掛け部)が形成されている。上板部37には、上方(上板部37の外面側)へ叩き出した形態の抜止め突起40が形成されている。
【0022】
第2覆い部36の左右両外側板部38の前端部は、第2引掛け部39(上板部37の前端)よりも前方へ延出した形態であり、閉塞板部41として機能する。左右両外側板部38には、夫々、内面側へ突出した形態の第3係止突起42と、内面側へ突出した形態の第5係止突起43と、内面側へ突出した形態の第2ガイドピン44が形成されている。第3係止突起42は、外側板部38の前端部(閉塞板部41)に配されている。第5係止突起43は、第2引掛け部39よりも後方の位置に配されている。第2ガイドピン44は、第5係止突起43よりも後方で且つ第5係止突起43よりも上方の位置に配されている。第2ガイドピン44は第2ガイド手段29を構成する。
【0023】
アッパ部材35の後端側領域は、上板部37の後端から後方へ延出した形態の固着部45が形成されている。固着部45の断面形状は、ロア部材18の圧着部32に対し上方から対向するような略円弧状をなしている。固着部45は、圧着部32との間でシールド電線60のシールド層65の前端部を上下に挟むように配されている。
【0024】
誘電体46は、合成樹脂製であり、全体としてブロック状をなす。誘電体46の内部には、前後方向に細長い複数の導体収容室47が形成されている。複数の導体収容室47は、上下2段に分かれて配され、且つ上下対称な形態となっている。誘電体46の後端部においては、上段側の導体収容室47の後端部が誘電体46の上方外部へ開放されているとともに、下段側の導体収容室47の後端部が誘電体46の下方外部へ開放されている。
【0025】
誘電体46の左右両外側面には、夫々、第1係止突起48と、第2係止突起49と、第4係止突起50と、第1ガイドピン51とが形成されている。第1係止突起48は、誘電体46の外側面の前端部における上端位置に配されている第2係止突起49は、第1係止突起48よりも下方で且つ第1係止突起48よりも僅かに後方の位置に配されている。第4係止突起50は、誘電体46の外側面の後端部に配されている。第1ガイドピン51は、第1係止突起48及び第2係止突起49よりも後方であり且つ第4係止突起50よりも前方の位置に配されている。第1ガイドピン51は第1ガイド手段28を構成する。
【0026】
内導体52は、金属材料からなり、全体として前後方向に細長い形状である。内導体52は、角筒状の導体本体部53と、導体本体部53から前方へ片持ち状に延出した形態の細長いタブ54と、導体本体部53から後方へ延出した形態の電線接続部55が形成されている。各内導体52は、誘電体46の後方から導体収容室47内に収容されている。上段側の導体収容室47に挿入された内導体52と、下段側の導体収容室47に挿入された内導体52は、上下対称な向きとなっている。
【0027】
内導体52を誘電体46に取り付けた状態では、導体本体部53が導体収容室47内に保持され、タブ54が誘電体46の前端面から前方へ突出する。また、上段側の導体収容室47では、電線接続部55が誘電体46の上方へ露出し、下段側の導体収容室47では、電線接続部55が誘電体46の下方へ露出した状態となる。各電線接続部55には、シールド電線60の芯線62が半田付けにより接続される。
【0028】
シールド端子Tが接続されるシールド電線60は、複数本の細い被覆電線61と、複数本の被覆電線61を束ねた状態で包囲する編組線等からなるシールド層65と、シールド層65を包囲する円筒状のシース64とを備えて構成されている。被覆電線61は、芯線62と、芯線62を包囲する絶縁被覆63とから構成されており、シース64の前端から前方へ延出している。芯線62の前端部は、絶縁被覆63を除去することにより露出した状態となっている。シールド層65のうちシース64の前端より延出した前端部は、外周側後方へ折り返されてシース64の外周を覆っている。
【0029】
次に、本実施例のシールドコネクタ1の組付け手順を説明する。まず、誘電体46に複数の内導体52を取り付け、その後、筒状部材12に対し、その後方から誘電体46を挿入して組み付ける。図5に示すように、誘電体46を筒状部材12に取り付けた状態では、誘電体46の前端側領域が、筒状部材12の保持部14内に嵌合され、複数のタブ54が筒状部材12によって一括して包囲される。
【0030】
筒状部材12と誘電体46は、第1係止部15と第1係止突起48の係止と、第2係止部16と第2係止突起49の係止とにより、組付け状態に保持される。つまり、筒状部材12と誘電体46は、前後方向、上下方向及び左右方向において相対変位を規制された状態に位置決めされる。また、第4係止突起50と第1ガイドピン51と内導体52の電線接続部55が筒状部材12よりも後方の位置で露出した状態となっている。
【0031】
誘電体46を筒状部材12に取り付けた後、各内導体52の電線接続部55には、夫々、シールド電線60の芯線62の前端部が半田付けにより導通可能に接続される。このとき、上段側の複数の電線接続部55においては、これらの電線接続部55に上方から芯線62が載置されて半田付けされる。下段側の電線接続部55については、誘電体46と筒状部材12を上下反転させた状態で、芯線62が載置され、半田付けされる。
【0032】
全ての芯線62を電線接続部55に接続した後、筒状部材12と誘電体46にロア部材18を組み付ける。ロア部材18の取り付けに際しては、図6,7に示すように、第1ガイド溝24の入口(前端部)に第1ガイドピン51を進入させるとともに、ロア部材18の第1引掛け部22を筒状部材12(保持部14)の後端の下縁部に係止し、その係止位置を支点としてロア部材18を上方へ揺動させる。この組付け時のロア部材18の揺動方向は、シールド電線60の軸線に対して交差する方向である。
【0033】
ロア部材18を揺動する過程では、図8に示すように、第1ガイド溝24の縁部に第1ガイドピン51が摺動することで、ロア部材18の上下方向及び前後方向における揺動軌跡が安定する。また、左右一対の内側板部21が誘電体46の外側面に摺接することにより、ロア部材18が誘電体46及び筒状部材12に対し左右方向に位置決めされる。図9に示すように、第1ガイドピン51が第1ガイド溝24の奥端(後端)に到達すると、筒状部材12及び誘電体46に対するロア部材18の組付けが完了し、外導体10の本体部材11が構成される。
【0034】
本体部材11の組付けが完了した状態では、第1ガイドピン51が、第1ストッパ26に係止することで第1ガイド溝24の奥端部に嵌合した状態に保持され、第1引掛け部22が筒状部材12の後端縁に対し導通可能に係止し、第4係止部30と第4係止突起50が係止する。この嵌合と係止とにより、ロア部材18と筒状部材12と誘電体46が、前後方向、上下方向への相対変位を規制された組付け状態に保持される。
【0035】
ロア部材18を筒状部材12と誘電体46に取り付けた状態では、ロア部材18のうち第1引掛け部22を除いた領域の全体が、筒状部材12の後方に連なるように位置する。また、ロア部材18の第1覆い部19が、誘電体46のうち筒状部材12より後方の領域の側面部と、芯線62の前端部の露出領域と、下段側の導体収容室47に取り付けられている内導体52の電線接続部55とを覆い隠す。また、圧着部32が、シールド層65の前端部の外周のうち下面側領域を覆うように位置する。
【0036】
この後、本体部材11にアッパ部材35を組み付ける。アッパ部材35の取り付けに際しては、図10,11,12に示すように、第2ガイドピン44を第2ガイド溝25の入口(後端部)に進入させるとともに、アッパ部材35の第2引掛け部39を筒状部材12(保持部14)の後端の上縁部に係止し、その係止位置を支点としてアッパ部材35を下方へ揺動させる。この組付け時のアッパ部材35の揺動方向は、シールド電線60の軸線に対して交差する方向である。
【0037】
アッパ部材35を揺動する過程では、第2ガイド溝25の溝縁部に第2ガイドピン44が摺動することで、アッパ部材35の上下方向及び前後方向における揺動軌跡が安定する。また、左右一対の外側板部38がロア部材18の内側板部21の外面に摺接することにより、アッパ部材35が本体部材11に対し左右方向に位置決めされる。図13に示すように、第2ガイドピン44が第2ガイド溝25の奥端(前端)に到達すると、本体部材11に対するアッパ部材35の組付けが完了し、シールド端子Tが構成される。
【0038】
アッパ部材35の組付けが完了した状態では、第2ガイドピン44が、第2ストッパ27に係止することで第2ガイド溝25の奥端部に嵌合した状態に保持され、第2引掛け部39が筒状部材12の後端縁に対し導通可能に係止し、第3係止部17と第3係止突起42が導通可能に係止し、第5係止部31と第5係止突起43が導通可能に係止する。この嵌合と係止とにより、本体部材11とアッパ部材35が、前後方向及び上下方向への相対変位を規制された組付け状態に保持される。
【0039】
アッパ部材35を本体部材11に取り付けた状態では、アッパ部材35のうち第2引掛け部39を除いた領域の全体が、筒状部材12の後方に連なるように位置するとともに、ロア部材18との間でシールド電線60の前端部と誘電体46の後端部を上下に挟んで対向するような位置関係となる。また、アッパ部材35の第2覆い部36が、第1覆い部19の内側部と、芯線62の前端部の露出領域と、上段側の導体収容室47に取り付けられている内導体52の電線接続部55とを覆い隠す。
【0040】
また、アッパ部材35の閉塞板部41は、第1係止部15と第1係止突起48の係止部分、第2係止部16と第2係止突起49の係止部分、第3係止部17、第4係止部30と第4係止突起50の係止部分、第5係止部31、第1ガイド溝24と第1ガイドピン51との嵌合部分、第2ガイド溝25と第2ガイドピン44の嵌合部分を覆い隠す。
【0041】
第1覆い部19と第2覆い部36は、第3係止部17と第3係止突起42との係止部分、及び第5係止部31と第5係止突起43との係止部分において、導通可能に接続される。そして、筒状部材12の後端とシールド層65の前端との間では、複数本の芯線62の前端部と複数の内導体52の電線接続部55が、シールド機能を有する第1覆い部19及び第2覆い部36により全周に亘って包囲された状態となる。
【0042】
また、固着部45は、シールド層65の前端部の外周のうち上面側領域を覆うように、且つ圧着部32との間でシールド層65の前端部を上下に挟むように位置する。アッパ部材35を組み付けた後は、図14に示すように、圧着部32を、固着部45とシールド層65の外周に圧着する。圧着時には、カシメ片34を固着部45の外周に密着させるようにカシメ付ける。これにより、圧着部32の基板部33の内周面と固着部45の内周面が、シールド層65の外周に対し全周に亘って包囲し且つ導通可能な状態で固着される。以上により、シールド端子Tの組付けが完了する。
【0043】
この後、ハウジング2に対し後方からシールド端子Tを挿入する。挿入されたシールド端子Tは、突当部23が前止まり部5に突き当たることでそれ以上の挿入方向の移動(前進)が規制されるとともに、抜止め突起40をランス4に係止させることで後方への抜けが規制され、抜止め状態に保持される。この後、予めシールド電線60に外嵌させておいたゴム栓66とリヤホルダ67を、ハウジング2の後端部に取り付ければ、シールドコネクタ1の組付けが完了する。
【0044】
本実施例1のシールド端子Tは、シールド電線60の芯線62の前端部に接続される内導体52と、内導体52を収容する誘電体46と、外導体10と、第1ガイド手段28とを備えて構成されている。外導体10は、誘電体46を包囲した状態で保持する筒状部材12と、筒状部材12とは別体の部品であり、シールド電線60のシールド層65に接続可能な圧着部32を有するロア部材18とを有する。ロア部材18の前端部には、筒状部材12の後端縁部に係止可能な第1引掛け部22が形成されている。第1ガイド手段28は、第1引掛け部22を支点としてロア部材18を揺動させつつ正規の組付位置へ案内する。
【0045】
本実施例のシールド端子Tは、誘電体46が筒状部材12によって包囲されているので、シールド性能の信頼性が高い。また、ロア部材18を筒状部材12に組み付ける前の状態では、筒状部材12の後方に圧着部32が存在しないので、誘電体46を後方から筒状部材12に取り付ける際の作業性が良好である。また、ロア部材18を筒状部材12に組み付ける際には、第1ガイド手段28によってロア部材18が案内されるので、作業性が良い。
【0046】
また、圧着部32は、オープンバレル状をなしていてシールド層65の外周に圧着されている。そして、第1引掛け部22は筒状部材12の内周縁部に係止されている。圧着部32をシールド層65に圧着する際には、圧着時の反力によってロア部材18の前端部が径方向外方(筒状部材12の下方)へ浮き上がるように変位しようとするが、ロア部材18の前端部に形成した第1引掛け部22が、筒状部材12の後端部の内縁縁部に係止されているので、ロア部材18の前端部が浮き上がることを防止できる。
【0047】
また、第1ガイド手段28は、ロア部材18と誘電体46とに形成されているので、筒状部材12にガイド手段を形成する場合に比べると、筒状部材12の形状を簡素化することができる。また、第1ガイド手段28は、誘電体46に形成した第1ガイドピン51と、ロア部材18に形成されて第1ガイドピン51を摺接させる第1ガイド溝24とから構成されている。この構成によれば、筒状部材12にガイド手段を形成せずに済むので、筒状部材12の形状を簡素化することができる。
【0048】
また、本実施例のシールド端子Tは、外導体10と第2ガイド手段29とを備えて構成されている。外導体10は、本体部材11とアッパ部材35とを組み付けて構成されている。本体部材11は、誘電体46を包囲した状態で保持する筒状の保持部14と、シールド電線60のシールド層65の前端部に接続される圧着部32とを有している。そして、アッパ部材35は、本体部材11とは別体であり、保持部14の後端とシールド層65の前端との間において本体部材11とともに芯線62を全周に亘って包囲する。本体部材11とアッパ部材35が、保持部14の後端とシールド層65の前端との間において芯線62を全周に亘って包囲するので、シールド性能の信頼性が向上する。
【0049】
また、アッパ部材35の前端部には、保持部14の後端縁部に係止可能な第2引掛け部39が形成されている。そして、第2ガイド手段29は、第2引掛け部39を支点としてアッパ部材35を揺動させつつ正規の組付位置へ案内する。この構成によれば、アッパ部材35を本体部材11に組み付ける際には、第2ガイド手段29によってアッパ部材35が案内されるので、作業性が良い。
【0050】
また、アッパ部材35にはシールド層65の外周に圧着される固着部45が形成されており、第2引掛け部39が保持部14の内周縁部に係止されている。この構成によれば、固着部45をシールド層65に圧着する際には、圧着時の反力によってアッパ部材35の前端部が径方向外方(アッパ部材35の上方)へ浮き上がるように変位しようとするが、アッパ部材35の前端部に形成した第2引掛け部39が、保持部14の後端部の内縁縁部に係止されているので、アッパ部材35の前端部が浮き上がることを防止できる。
【0051】
また、本体部材11は、保持部14が形成されている筒状部材12と、圧着部32が形成されているロア部材18とを組み付けて構成されたものである。この構成によれば、ロア部材18を筒状部材12に組み付ける前の状態では、筒状部材12の後方に圧着部32が存在しないので、誘電体46を後方から筒状部材12に取り付ける際の作業性が良好である。
【0052】
また、第2ガイド手段29は、アッパ部材35とロア部材18とに形成されているので、筒状部材12にガイド手段を形成する場合に比べると、筒状部材12の形状を簡素化することができる。また、第2ガイド手段29は、アッパ部材35に形成した第2ガイドピン44と、ロア部材18に形成されて第2ガイドピン44を摺接させる第2ガイド溝25とから構成されている。この構成によれば、筒状部材12にガイド手段を形成せずに済むので、筒状部材12の形状を簡素化することができる。
【0053】
本実施例1のシールド端子Tの外導体10は、誘電体46を包囲した状態で保持する筒状部材12と、筒状部材12とは別体の部品であり、シールド電線60のシールド層65の前端部に接続されるロア部材18と、シールド層65の前端部に接続されるアッパ部材35とを備えて構成されている。ロア部材18とアッパ部材35は、一対の半割状の分割シェルを構成する。ロア部材18とアッパ部材35には、筒状部材12の後端とシールド層65の前端との間において芯線62と内導体52の電線接続部55を全周に亘って包囲する一対の覆い部(第1覆い部19と第2覆い部36)が形成されている。
【0054】
この構成によれば、第1覆い部19と第2覆い部36が、筒状部材12の後端とシールド層65の前端との間において芯線62と電線接続部55を全周に亘って包囲するので、シールド性能の信頼性が高い。また、第1覆い部19と第2覆い部36が形成されている一対の分割シェル(ロア部材18とアッパ部材35)は、筒状部材12とは別体であって半割状をなしている。したがって、筒状部材12に誘電体46と内導体52を取り付けた状態で、芯線62に内導体52を接続する作業を行うことができる。したがって、本実施例のシールド端子Tは、組付け工程の制約を低減することができる。
【0055】
また、ロア部材18の後端部には、シールド層65の外周に圧着される圧着部32が形成され、圧着部32が形成されているロア部材18の前端部には、筒状部材12の後端部内縁部に係止する第1引掛け部22が形成されている。この構成によれば、圧着部32をシールド層65に圧着する際には、圧着時の反力によってロア部材18の前端部が径方向外方(ロア部材18の下方)へ浮き上がるように変位しようとするが、ロア部材18の前端部に形成した第1引掛け部22が、筒状部材12の後端部内縁部に係止されているので、ロア部材18の前端部が浮き上がることを防止できる。
【0056】
また、シールド端子Tは、第1ガイド手段28を備えている。第1ガイド手段28は、第1引掛け部22を支点としてロア部材18を揺動させつつ正規の組付位置へ案内する。したがって、第1ガイド手段28により、ロア部材18を他の部材と干渉させることなく筒状部材12と誘電体46に組み付けることができる。
【0057】
また、アッパ部材35には、シールド層65の外周の一部を覆う固着部45が形成されている。ロア部材18には、固着部45の外周にカシメ付けられるカシメ片34を有し、シールド層65の外周に圧着される圧着部32が形成されている。この構成によれば、カシメ片34を固着部45の外周にカシメ付けながら圧着部32を圧着する工程だけで、ロア部材18とアッパ部材35をシールド層65に固着することができる。
【0058】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、引掛け部を、ロア部材(圧着部が形成されている第1分割シェル)とアッパ部材(圧着部が形成されていない第2分割シェル)の両方に形成したが、ロア部材とアッパ部材のうちいずれか一方のみに引掛け部を形成してもよく、ロア部材とアッパ部材のいずれにも引掛け部を形成しない形態としてもよい。
(2)上記実施例では、引掛け部が、ロア部材とアッパ部材を筒状部材に組み付ける際の揺動支点として機能するようになっているが、ロア部材とアッパ部材は、揺動させずに筒状部材に組み付けられてもよい。
(3)上記実施例では、圧着部をロア部材(一方の分割シェル)のみに形成したが、圧着部は、アッパ部材のみに形成してもよく、ロア部材とアッパ部材の両方に形成してもよい。
(4)上記実施例では、ロア部材の圧着部を圧着する工程だけで、ロア部材とアッパ部材の両方をシールド層に固着したが、アッパ部材をシールド層に固着する工程は、ロア部材をシールド層に圧着する工程とは別に行ってもよい。
(5)上記実施例では、内導体を誘電体に取り付けた状態で、内導体と芯線を接続したが、本発明は、内導体を、芯線に接続した後側で誘電体に取り付ける場合にも適用することができる。
(6)上記実施例では、内導体が前端部に細長いタブを有する雄形の端子である場合について説明したが、本発明は、内導体が前端部に角筒部を有する雌形の端子である場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0059】
T…シールド端子
10…外導体
12…筒状部材
18…ロア部材(一方の分割シェル)
19…第1覆い部(覆い部)
22…第1引掛け部(引掛け部)
28…第1ガイド手段(ガイド手段)
29…第2ガイド手段(ガイド手段)
32…圧着部
34…カシメ片
35…アッパ部材(他方の分割シェル)
36…第2覆い部(覆い部)
39…第2引掛け部(引掛け部)
45…固着部
46…誘電体
52…内導体
60…シールド電線
62…芯線
65…シールド層
図1
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