特許第6757501号(P6757501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757501
(24)【登録日】2020年9月2日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス配索装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20200910BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20200910BHJP
   B60N 2/07 20060101ALI20200910BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20200910BHJP
【FI】
   H02G11/00
   B60R16/02 620A
   B60N2/07
   B60N2/90
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-93764(P2017-93764)
(22)【出願日】2017年5月10日
(65)【公開番号】特開2018-191464(P2018-191464A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】東小薗 誠
(72)【発明者】
【氏名】澤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】小原 一仁
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−070137(JP,A)
【文献】 特開2014−200157(JP,A)
【文献】 特開2003−235126(JP,A)
【文献】 特開2017−118657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
B60N 2/07
B60N 2/90
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに対してスライド可能に取り付けられたスライダに一端側が連結されるとともに、他端側が前記レールから導出されたワイヤハーネスと、
前記レールから導出されたワイヤハーネスを湾曲させて前記レールに沿う方向に折り返す折り返し案内部と、
底壁および当該底壁の側縁から立ち上がる側壁を有し、前記折り返し案内部により折り返された前記ワイヤハーネスを収容する収容部と、を有するワイヤハーネス配索装置であって、
前記ワイヤハーネスは前記収容部内において、前記レールに沿って配された直線状の直線部を有すると共に、前記直線部のうち前記折り返し案内部の反対側において前記レールに沿うようにさらに折り返された湾曲部を有しており、
前記収容部には、前記湾曲部を当該湾曲部の湾曲方向に沿ってスライド可能に保持しつつ、前記直線部の延び方向に沿って移動可能なスライド保持部材が設けられており、
前記スライド保持部材に、前記直線部を前記側壁から離間させる離間案内部が設けられているワイヤハーネス配索装置。
【請求項2】
前記スライド保持部材は、前記ワイヤハーネスを前記湾曲方向に案内する外側案内壁を有しており、
前記離間案内部は、前記外側案内壁から延びて前記ワイヤハーネスの直線部と前記側壁との間に位置する隔離壁である請求項1に記載のワイヤハーネス配索装置。
【請求項3】
前記直線部の延び方向に沿う方向への前記スライド保持部材の移動を案内する移動案内部が設けられている請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス配索装置。
【請求項4】
前記離間案内部は前記側壁から離れて配されている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のワイヤハーネス配索装置。
【請求項5】
前記スライド保持部材の前記底壁と交差する方向への傾きを規制する傾斜規制部が設けられている請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス配索装置。
【請求項6】
前記折り返し案内部は前記ワイヤハーネスを前記レールに沿う方向に湾曲させる外側湾曲壁を有しており、
前記収容部の前記側壁は、前記外側湾曲壁のうち前記側壁と隣接する領域より外側に配されて前記外側湾曲壁と段差状をなしている請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のワイヤハーネス配索装置。
【請求項7】
前記ワイヤハーネスは複数の電線の周囲を外装体により被覆してなり、前記外装体は一方向にのみ曲げが許容されている請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のワイヤハーネス配索装置。
【請求項8】
前記ワイヤハーネスと前記側壁との間に異音吸収材が設けられている請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のワイヤハーネス配索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、ワイヤハーネス配索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両と、車両に搭載されたスライドシート等のスライド部品との間を電気的に接続するワイヤハーネス配索装置として、特許文献1に記載のものが知られている。このワイヤハーネス配索装置は、レールと、レールに対してスライド移動可能に取り付けられたスライダと、レール内に配されて一端部がスライダに連結されたワイヤハーネスと、レールの外側に押し出されたワイヤハーネスの余長部分を収容する余長収容部とを備える。ワイヤハーネスは、外装体を備える場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−42658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成によると、スライダがレール内を移動すると、スライダに連結されたワイヤハーネスもスライダの移動に伴ってレール内を移動する。そして、レールから押し出されたワイヤハーネスの余長部分は余長収容部内に収容されるのであるが、この時、ワイヤハーネスが余長収容部の壁面と摺接するため、ワイヤハーネスが損傷したり、音がうるさいという問題がある。
【0005】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ワイヤハーネスと収容部の側壁との摺接を抑制することができるワイヤハーネス配索装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、レールに対してスライド可能に取り付けられたスライダに一端側が連結されるとともに、他端側が前記レールから導出されたワイヤハーネスと、前記レールから導出されたワイヤハーネスを湾曲させて前記レールに沿う方向に折り返す折り返し案内部と、底壁および当該底壁の側縁から立ち上がる側壁を有し、前記折り返し案内部により折り返された前記ワイヤハーネスを収容する収容部と、を有するワイヤハーネス配索装置であって、前記ワイヤハーネスは前記収容部内において、前記レールに沿って配された直線状の直線部を有すると共に、前記直線部のうち前記折り返し案内部の反対側において前記レールに沿うようにさらに折り返された湾曲部を有しており、前記収容部には、前記湾曲部を当該湾曲部の湾曲方向に沿ってスライド可能に保持しつつ、前記直線部の延び方向に沿って移動可能なスライド保持部材が設けられており、前記スライド保持部材に、前記直線部を前記側壁から離間させる離間案内部が設けられている。
【0007】
このような構成によれば、スライド保持部材に設けられた離間案内部により、ワイヤハーネスの直線部が収容部の側壁と離間した状態とされるから、ワイヤハーネスと収容部の側壁との摺接を抑制することができる。これにより、ワイヤハーネスが損傷することが回避されるとともに、発生する音の大きさを抑制することができる。
【0008】
上記ワイヤハーネス配索装置は、以下の構成を備えていてもよい。
【0009】
スライド保持部材は、ワイヤハーネスを湾曲方向に案内する外側案内壁を有しており、離間案内部は、外側案内壁から延びてワイヤハーネスの直線部と側壁との間に位置する隔離壁であってもよい。
【0010】
このように、離間案内部を実現するための一形態として、上述した隔離壁を設ける形態が挙げられる。
【0011】
直線部の延び方向に沿う方向へのスライド保持部材の移動を案内する移動案内部が設けられていてもよい。このような構成により、スライド保持部材を収容部内で正規の移動方向に安定的に移動させることが可能となる。
【0012】
離間案内部は側壁から離れて配されていてもよい。このような構成によれば、ワイヤハーネスだけでなく、離間案内部も側壁と離れた状態とされるから、音の発生をより抑制することができる。
【0013】
スライド保持部材の底壁と交差する方向への傾きを規制する傾斜規制部が設けられていてもよい。このような構成によれば、振動等によりスライド保持部材が底壁に対して傾くことが抑制される。
【0014】
折り返し案内部はワイヤハーネスをレールに沿う方向に湾曲させる外側湾曲壁を有しており、収容部の側壁は、外側湾曲壁のうち側壁と隣接する領域より外側に配されて外側湾曲壁と段差状をなしていてもよい。
【0015】
このような構成によれば、折り返し案内部から収容部内に導入されたワイヤハーネスの直線部は、離間案内部だけでなく段差部によっても側壁と離れた状態とされるから、より確実にワイヤハーネスと収容部の側壁との摺接を抑制することができる。
【0016】
ワイヤハーネスは複数の電線の周囲を外装体により被覆してなり、外装体は一方向にのみ曲げが許容されていてもよい。このような構成によれば、外装体により電線の損傷を抑制することができるとともに、ワイヤハーネスが本来の湾曲方向と異なる方向に曲げられることが抑制される。
【0017】
ワイヤハーネスと側壁との間に異音吸収材が設けられていてもよい。このような構成によれば、ワイヤハーネスと側壁とが接触した場合でも、異音吸収材により音の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書に開示される技術によれば、ワイヤハーネスと収容部の側壁との摺接を抑制することができるワイヤハーネス配索装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態のワイヤハーネス配索装置とシートとの接続状態を示す斜視図
図2】ワイヤハーネス配索装置の斜視図
図3】余長収容部の斜視図
図4】余長収容部の平面図
図5】余長収容部にスライド保持部材を配した状態の斜視図
図6図5の一部拡大平面図
図7】余長収容部およびスライド保持部材にワイヤハーネスを配索した状態の斜視図
図8図7の一部拡大平面図
図9】収容部およびスライド保持部材にワイヤハーネスを配索した状態の断面図
図10】スライド保持部材の斜視図
図11】同じく平面図
図12】同じく底面図
図13】同じく正面図
図14】スライド保持部材とワイヤハーネスとの関係を示す概念図
図15】スライド保持部材とワイヤハーネスとの他の関係を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0020】
一実施形態を、図1ないし図15を参照しつつ説明する。本実施形態のワイヤハーネス配索装置10は、自動車等の車両(図示せず)の車体(図示せず)とシート70との間にワイヤハーネス11を配索するものである。以下においては、図2のX方向を右方、Y方向を前方、Z方向を上方として説明する。
【0021】
(ワイヤハーネス配索装置10)
ワイヤハーネス配索装置10は、図2に示すように、レール20に対してスライド可能に取り付けられたスライダ25に一端側が連結されるとともに、他端側がレール20から導出されたワイヤハーネス11と、レール20から導出されたワイヤハーネス11の余長部分を吸収する余長収容部30と、を備えている。
【0022】
(ワイヤハーネス11)
ワイヤハーネス11は、車体の床上(のマットやパネル等の下)や床下に配索されており、車体側ではECU(Electronic Control Unit)等の機器に接続されている。このワイヤハーネス11を介して車体側の機器とシート70の電装品との間の給電や信号の送受が行われる。電装品としては、例えば、電動スライドや電動リクライニング用のモーター、シートヒーターなど、必要に応じて任意の電装品を用いることができる。
【0023】
配索されたワイヤハーネス11は、図7および図8に示すように、レール20及び余長収容部30に挿通されている。ワイヤハーネス11は、複数(本実施形態では4本)の電線12と、複数本の電線12を覆う外装体13とを備えている。各電線12は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等からなる金属製の導体部が絶縁層で被覆された被覆電線であり、シート70に備えられた各種電装品に接続されている。
【0024】
外装体13は例えば合成樹脂製であって、図9に示すように、電線12に沿って帯状に延びる帯状部15を一側壁とした複数の角筒部14の連なりで構成されている。帯状部15には、所定間隔ごとに可撓性を有する複数の可撓部16が形成されている。可撓部16は、外面側が全幅に亘って切り欠かれることで、撓み変形可能な程度に厚み寸法が小さくなっており、これにより、帯状部15は板面と交差する方向へ湾曲可能とされている。
【0025】
角筒部14のうち帯状部15の両側縁部から立ち上がるように連なる一対の側壁17,18は、一方側が帯状部15の板面に対して垂直に配された下側壁17であり、他方側は、垂直より外側に広がるように配された上側壁18である。また、帯状部15と対向する側壁は蓋部19とされており、一端側が下側壁にヒンジ19Aを介して開閉回動可能とされている。蓋部19が閉じられた状態において、角筒部14は、断面が直角台形状の四角筒とされている。
【0026】
外装体13は、帯状部15を内側とした一方向にのみ湾曲可能に形成されている。外装体13が帯状部15を外側とした方向に湾曲しようとした場合には、各角筒部14に設けられた湾曲規制部同士が当接するようになっており、その方向への湾曲が規制されるようになっている。
【0027】
(レール20)
レール20は金属製であって、各シート70に対して床上に一対設けられている。レール20を構成する金属としては、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。レール20は、前後方向(図2のY方向)に直線状に延びて形成されている。レール20は、前後方向に延びる底壁(図示せず)と、底壁の左右両側縁から上方に立ち上がる一対の側壁21と、一対の側壁21の上端縁を連結する上壁22と、を有しており、上壁22に前後方向に延びる通し溝23を設けることにより形成されている。
【0028】
レール20内には、図2に示すように、レール20に対してスライド可能なスライダ25が配されている。ワイヤハーネス11は、レール20内でスライダ25の前端部に固定されたガイド部材26に挿通されており、このガイド部材26によりその延び方向が前後方向から上方(シート70側)に変換されるようになっている。
【0029】
(余長収容部30)
レール20の前方及び側方に隣接する位置には、レール20から導出されたワイヤハーネス11の余長部分が吸収される余長収容部30が配されている。余長収容部30は、図3および図4に示すように、ワイヤハーネス11の余長部分を緩やかなU字状に湾曲させてレール20に沿うように折り返す折り返し案内部31と、折り返し案内部31により折り返されたワイヤハーネス11を収容する収容部41とを有する。
【0030】
シート70が前方にスライドすると、レール20内のワイヤハーネス11が前方に移動し、ワイヤハーネス11の余長部分が折り返し案内部31を通って収容部41に収容される。余長収容部30を形成する材料は、合成樹脂又は金属等、必要に応じて適宜に選択される。
【0031】
折り返し案内部31は、ワイヤハーネス11の折り返し方向における内側に配される内側湾曲壁33と、内側湾曲壁33から所定の距離を介して外側に配される外側湾曲壁34と、内側湾曲壁33および外側湾曲壁34の下端を連結する底壁35とからなる平面視U字形状の折り返し溝32を備えている。図8に示すように、折り返し溝32の一端側(図8の左側)は、レール20のうちワイヤハーネス11が収容されている領域(図8中左側、レール20の左端部寄りの位置)の前端に連結されている。折り返し溝32の他端側は、収容部41の右端部寄りに連結されている。
【0032】
収容部41は、図3および図4に示すように、前後方向に延びるとともに後端縁が平面視半円形状とされた底壁42と、底壁42の前後方向に延びる側縁部から立ち上がる一対の右側壁43および左側壁44と、右側壁43および左側壁44を後方側において連結する曲面状の後壁45と、を有する。
【0033】
右側壁43は、上述した折り返し案内部31の外側湾曲壁34のうち右側壁43と隣接する領域より外側(図4中右側)に配されている。すなわち、収容部41の右側壁43と外側湾曲壁34との境界部分は段差状をなしている。以下、この段差状の部分を段差部40とする。
【0034】
また、収容部41の底壁42の幅方向の中央部には、前後方向に延びる幅広の移動案内溝46(移動案内部の一例)が形成されている。移動案内溝46は収容部41の前後方向全体に亘って設けられている。移動案内溝46の幅方向(左右方向)における中央部は、下方に向けて窪んだ凹部46Aとされている。
【0035】
レール20の前端部から導出されたワイヤハーネス11は、図8に示すように、余長収容部30内において、折り返し案内部31の折り返し溝32(内側湾曲壁33と外側湾曲壁34との間)を通って収容部41に導入され、段差部40により右側壁43とは所定の距離を介しつつ右側壁43に沿って後方へと配索されている。ワイヤハーネス11のうち、この右側壁43に沿う部分を第1直線部11Aとする。第1直線部11Aの後方側(折り返し案内部31と反対側)は、レール20側(左側)に湾曲されて再び折り返され、左側壁44の内面に沿って前方へと配索されている。以下、湾曲された部分を湾曲部11Bとし、左側壁44に沿う部分を第2直線部11Cとする。左側壁44の前端部においては外装体13から複数の電線12が導出されており、複数の電線12は、詳細には図示しないが、折り返し溝32の下方を通ってワイヤハーネス配索装置10の外部へと導出されている。
【0036】
(スライド保持部材50)
本実施形態のワイヤハーネス配索装置10は、収容部41内において前後方向に移動可能なスライド保持部材50を備えている。
【0037】
スライド保持部材50は、ワイヤハーネス11の湾曲部11Bに対応する領域において、湾曲部11Bの湾曲方向Cにおける内側に配される内側案内部51と、同じく湾曲方向Cにおける外側(内側案内部51の外側)に配される外側案内部55と、内側案内部51および外側案内部55を一体に連結する連結部60と、を備えて構成されている(図10ないし図13参照)。
【0038】
内側案内部51は、背面側が後方に向けて平面視半円形状に湾曲された湾曲面とされるとともに湾曲面の両側が前方に向けて延びる一対の平面とされた、平面視U字型の内側案内壁52を有している。内側案内壁52の一対の前端縁は平板状の前壁53により連結されており、全体としてD字型の枠状をなしている。内側案内壁52および前壁53は複数の架橋部54により架橋されている。これらの内側案内壁52、前壁53、および複数の架橋部54の高さ寸法は、すべて同寸法とされている。
【0039】
外側案内部55は、内側案内壁52の背面(湾曲面)から後方側に所定距離離れた湾曲面を有する外側案内壁56を備えている。外側案内壁56のうち図11中右側の端部(一方側の前端)には、前方に向けて延びる隔離壁57(離間案内部の一例)が延設されている。
【0040】
隔離壁57は、内側案内壁52の右側の側面から所定距離離れて配されており、内側案内壁52と対向する面(左側の面)は平面状をなしている。また、その反対側の面(右側の面)には、収容部41の右側壁43に向けて突出する複数のリブ57Aが上下方向(図11の紙面に直交する方向)に延びて設けられている。隔離壁57は、前端(図11の下端)が内側案内部51の前端(前壁53の前面)と同位置になる長さに設定されている。
【0041】
外側案内部55は、後方に張り出す湾曲した板状の後壁58を有しており、全体として平面視略J字型の枠状とされている。外側案内壁56および後壁58は複数の架橋部59により架橋されている。外側案内壁56、後壁58、複数の架橋部59、および隔離壁57の高さ寸法は、すべて同寸法とされている。また、外側案内部55の高さ寸法は、内側案内部51の高さ寸法と同等とされている。さらに、外側案内部55の左右方向の幅寸法は、収容部41の幅寸法よりやや小さい寸法に設定されている。
【0042】
内側案内部51と外側案内部55とは、前後方向に延びる板状の連結部60により一体とされている。連結部60は、図9に示すように、内側案内部51より左右方向の幅がやや狭い板状とされるとともに、移動案内溝46内にほぼぴったり嵌め入れられる幅寸法とされており(移動案内部の一例)、内側案内部51の前端から外側案内部55の後端に亘るように下端部に設けられている。連結部60の底面(下面)には、前後方向に延びて上述した移動案内溝46内に収容可能な一対の案内リブ61が、下方に突出して設けられている(図13参照)。これらの案内リブ61により、連結部60の底面が移動案内溝46から離れた位置に配されるようになっている。
【0043】
内側案内壁52と外側案内壁56の間は湾曲スライドガイド部63とされており、ワイヤハーネス11が配されるようになっている。上記したように、ワイヤハーネス11は、複数の電線12が、外装体13によって覆われている。内側案内壁52と外側案内壁56との間の距離は、外装体13の幅寸法よりも大きい寸法に設定されている。これにより、外装体13は内側案内壁52と外側案内壁56との間の隙間(湾曲スライドガイド部63)を湾曲状態を保ちつつ左右方向(X方向)にスライド可能となっている。
【0044】
図7および図8に示すように、折り返し案内部31から収容部41内に導入されて直線状に配されたワイヤハーネス11(第1直線部11A)は、隔離壁57と内側案内壁52の右側の側面との間に進入し、湾曲スライドガイド部63内に導入される。そして、湾曲スライドガイド部63に沿って湾曲され(湾曲部11B)レール20に沿う方向(前後方向Y)に折り返され、収容部41の左側壁44に沿って前方に向けて直線状に配される(第2直線部11C)。
【0045】
図1に示すように、余長収容部30の開放面(上面)にはカバー65が装着されるようになっている。カバー65は、図9に示すように、余長収容部30を覆った状態において、スライド保持部材50の上面との間にスライド保持部材50と摺接しない程度の僅かな隙間だけを介するようになっている。スライド保持部材50が収容部41の底壁42に対して傾いた場合には、スライド保持部材50がカバー65に当接するため、カバー65によりスライド保持部材50の傾きが抑制される(傾斜規制部の一例)。
【0046】
(実施形態の作用)
本実施形態のワイヤハーネス配索装置10によれば、シート70が前方にスライドすると、スライダ25に連結されたワイヤハーネス11の一端側(左側の端部)は前方に移動し、ワイヤハーネス11の余長部分が折り返し案内部31を通って収容部41に収容される。
【0047】
詳細には、レール20の前端部から押し出されたワイヤハーネス11は、折り返し溝32の外側湾曲壁34に押し付けられ、外側湾曲壁34に案内されつつ湾曲されてレール20に沿う方向(前後方向Y)に折り返され、収容部41内に押し出される。この時、外側湾曲壁34と収容部41の右側壁43との境界部分には段差部40が形成されているから、ワイヤハーネス11はこの段差部40により、右側壁43とは所定の距離を介しつつ右側壁43に沿って直線状に後方へと配索される(第1直線部11A)。
【0048】
直線状に配されたワイヤハーネス11(第1直線部11A)の後方側は、スライド保持部材50の湾曲スライドガイド部63内に挿通され、湾曲されている(湾曲部11B)。湾曲部11Bは、第1直線部11A側から後方に向けて押されることで湾曲スライドガイド部63内を左方向(レール20側)に向けてスライドしつつ、外側案内部55の外側案内壁56を後方に向けて押圧する(図14参照)。これにより、スライド保持部材50は収容部41内において後方に移動する。
【0049】
この時、スライド保持部材50には、ワイヤハーネス11の第1直線部11Aと収容部41の右側壁43との間に位置する隔離壁57が設けられているから、ワイヤハーネス11が右側壁43と摺接することが抑制される。しかも上述したように、第1直線部11Aの折り返し案内部31側の端部は、段差部40により右側壁43と離されるようになっているから、ワイヤハーネス11の第1直線部11Aは段差部40と隔離壁57との間に架け渡された形態とされ、より確実に右側壁43と離されるようになっている。
【0050】
一方、シート70が後方にスライドした際には、スライダ25に連結されたワイヤハーネス11の一端側(左側の端部)は後方に移動し、ワイヤハーネス11の余長部分は収容部41から折り返し案内部31側に引っ張られる。
【0051】
詳細には、図15に示すように、スライド保持部材50の湾曲スライドガイド部63内に配された湾曲部11Bは、第1直線部11A側に引っ張られることで、湾曲スライドガイド部63内を右方向(レール20の反対方向)に向けてスライドしつつ、内側案内部51の内側案内壁52を背面側から前方に向けて引っ張る。これにより、スライド保持部材50は収容部41内において前方に移動する。
【0052】
(実施形態の効果)
本実施形態のワイヤハーネス配索装置10は、収容部41に、ワイヤハーネス11の湾曲部11Bをその湾曲方向Cに沿ってスライド可能に保持しつつ、第1直線部11Aの延び方向Yに沿って移動可能なスライド保持部材50が設けられている。そして、このスライド保持部材50に、外側案内壁56から前方に延びて第1直線部11Aと右側壁43との間に位置する隔離壁57が設けられている。
【0053】
このような構成によれば、隔離壁57により、ワイヤハーネス11の第1直線部11Aが収容部41の右側壁43と離間した状態とされるから、ワイヤハーネス11と右側壁43との摺接を抑制することができる。これにより、ワイヤハーネス11が損傷することが回避されるとともに、発生する音の大きさを抑制することができる。
【0054】
また、収容部41の底壁42に移動案内溝46が設けられるとともに、スライド保持部材50の連結部60がほぼぴったり嵌め入れられるようになっており、これらにより、第1直線部11Aの延び方向に沿う方向へのスライド保持部材50の移動が案内されるようになっている。したがって、スライド保持部材50を収容部41内において正規の移動方向に安定的に移動させることが可能である。
【0055】
なお、移動案内溝46内に異物が入り込む場合があるが、本実施形態においては移動案内溝46に凹部46Aが設けられているから、異物を凹部46A内に逃がすことができる。すなわち、凹部46Aによりスライド保持部材50のスライド時の異物によるがたつきの影響を抑制することができる。
【0056】
また、外側案内部55の幅寸法、すなわちスライド保持部材50全体の幅寸法は、収容部41の幅寸法よりも小さくなるように設定されているから、隔離壁57は右側壁43から離れて配される。このような構成によれば、ワイヤハーネス11だけでなく、隔離壁57、すなわちスライド保持部材50も右側壁43と離れた状態とされるから、音の発生をより抑制することができる。
【0057】
また、余長収容部30はカバー65により覆われており、カバー65は、余長収容部30を覆った状態において、スライド保持部材50の上面との間にスライド保持部材50と摺接しない程度の僅かな隙間だけを介するようになっている。すなわち、スライド保持部材50が収容部41の底壁42に対して振動等により傾いた場合には、スライド保持部材50はカバー65に当接するようになっており、カバー65によりスライド保持部材50の傾きが抑制される(傾斜規制部の一例)。
【0058】
また、折り返し案内部31はワイヤハーネス11をレール20に沿う方向に湾曲させる外側湾曲壁34を有しており、収容部41の右側壁43は、外側湾曲壁34との境界部において外側湾曲壁34より外側に配されて外側湾曲壁34との間に段差部40を形成している。
【0059】
従って、折り返し案内部31から収容部41内に導入されたワイヤハーネス11の第1直線部11Aは、隔離壁57だけでなく段差部40によっても右側壁43と離れた状態とされるから、より確実にワイヤハーネス11と収容部41の右側壁43との摺接を抑制することができる。
【0060】
さらに、ワイヤハーネス11は複数の電線12の周囲を外装体13により被覆してなり、外装体13は一方向にのみ曲げが許容されている。従って、外装体13により電線12の損傷を抑制することができるとともに、ワイヤハーネス11が本来の湾曲方向と異なる方向に曲げられることが抑制される。
【0061】
上述したように、本実施形態のワイヤハーネス配索装置10によれば、ワイヤハーネス11と収容部41の右側壁43との摺接を抑制することができる。
【0062】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0063】
(1)上記実施形態では、離間案内部が隔離壁57である形態を示したが、離間案内部は例えは外側案内部55から右側壁43に向けて突出する突部等としてもよい。要は、ワイヤハーネスが収容部の側壁から離間される構成であれば上記実施形態に限るものでない。
【0064】
(2)上記実施形態では、ワイヤハーネス11だけでなく隔離壁57(離間案内部)も右側壁43と離れて配される構成としたが、離間案内部は側壁と当接する構成であってもよい。
【0065】
(3)スライド保持部材50の幅寸法が収容部41の幅寸法とほぼ同等の場合には、移動案内部は省略してもよい。
【0066】
(4)上記実施形態では、スライド保持部材50のうち右側壁43に対向する側だけに離間案内部(隔離壁57)を設ける構成としたが、左側壁44にも設けてもよい。
【0067】
(5)段差部40は省略してもよく、折り返し案内部31から導出されたワイヤハーネス11が右側壁43と摺接しない構成であればどのような形態でもよい。
【0068】
(6)上記実施形態では、外装体13は一方向のみ曲げが許容されている構成としたが、他の方向に曲がるものでもよい。
【0069】
(7)ワイヤハーネス11と右側壁43や左側壁44との間に異音吸収材が設けられていてもよい。このような構成によれば、ワイヤハーネス11と右側壁43または左側壁44とが接触した場合でも、異音吸収材により音の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0070】
10:ワイヤハーネス配索装置
11:ワイヤハーネス
11A:第1直線部(直線部)
11B:湾曲部
11C:第2直線部
12:電線
13:外装体
20:レール
25:スライダ
30:余長収容部
31:折り返し案内部
32:折り返し溝
33:内側湾曲壁
34:外側湾曲壁
40:段差部
41:収容部
42:底壁
43:右側壁(側壁)
44:左側壁
46:移動案内溝(移動案内部)
50:スライド保持部材
51:内側案内部
52:内側案内壁
55:外側案内部
56:外側案内壁
57:隔離壁(離間案内部)
60:連結部(移動案内部)
61:案内リブ
63:湾曲スライドガイド部
65:カバー(傾斜規制部)
C:湾曲方向
Y:直線部の延び方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15