(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ウェルの容積が小さいマイクロプレートを用いると、反応液からの発光または蛍光の絶対量が低下するため、発光または蛍光の検出感度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、発光または蛍光の検出感度が低下しない測定方法とそれに用いる反応容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【0007】
本発明の測定方法は、
複数のウェルが形成されたマイクロプレートと、ウェル内に注入された透明な鉱油とを含んでなる反応容器のウェル内に少なくとも2種の液体を注入して反応させ、反応液から生じ透明な鉱油を通過した発光を検出し、発光の強度を測定することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の測定方法は、
複数のウェルが形成されたマイクロプレートと、ウェル内に注入された透明な鉱油とを含んでなる反応容器のウェル内に少なくとも1種の液体を注入し、液体に励起光を照射して液体から蛍光を生じさせ、透明な鉱油を通過した蛍光を検出し、蛍光の強度を測定することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の測定方法は、
複数のウェルが形成されたマイクロプレートのウェル内に少なくとも2種の液体を注入して反応させ、反応直後に透明な鉱油を注入し、反応液から生じ透明な鉱油を通過した発光を検出し、発光の強度を測定することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の測定方法は、
複数のウェルが形成されたマイクロプレートのウェル内に、少なくとも1種の液体と透明な鉱油を注入し、液体に励起光を照射して液体から蛍光を生じさせ、透明な鉱油を通過した蛍光を検出し、蛍光の強度を測定することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の反応容器は、
複数のウェルが形成されたマイクロプレートと、ウェル内に注入された透明な鉱油とを含んでなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の測定方法は、複数のウェルが形成されたマイクロプレートと、ウェル内に注入された透明な鉱油とを含んでなる反応容器のウェル内に少なくとも2種の液体を注入して反応させ、反応液から生じ透明な鉱油を通過した発光を検出し、発光の強度を測定するように構成した。
【0013】
また、本発明の測定方法は、複数のウェルが形成されたマイクロプレートと、ウェル内に注入された透明な鉱油とを含んでなる反応容器のウェル内に少なくとも1種の液体を注入し、液体に励起光を照射して液体から蛍光を生じさせ、透明な鉱油を通過した蛍光を検出し、蛍光の強度を測定するように構成した。
【0014】
また、本発明の測定方法は、複数のウェルが形成されたマイクロプレートのウェル内に少なくとも2種の液体を注入して反応させ、反応直後に透明な鉱油を注入し、反応液から生じ透明な鉱油を通過した発光を検出し、発光の強度を測定するように構成した。
【0015】
また、本発明の測定方法は、複数のウェルが形成されたマイクロプレートのウェル内に、少なくとも1種の液体と透明な鉱油を注入し、液体に励起光を照射して液体から蛍光を生じさせ、透明な鉱油を通過した蛍光を検出し、蛍光の強度を測定するように構成した。
【0016】
したがって、本発明の測定方法によれば、発光または蛍光の検出感度が低下することがない。
【0017】
また、本発明の反応容器は、複数のウェルが形成されたマイクロプレートと、ウェル内に注入された透明な鉱油とを含んでなるように構成した。したがって、本発明によれば、発光または蛍光の検出感度が低下することがない反応容器を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の加飾品の製造方法について、実施形態の一例を説明する。
【0020】
<第1実施形態>
本発明の測定方法は、複数のウェル10aが形成されたマイクロプレート10と、ウェル10a内に注入された透明な鉱油11とを含んでなる反応容器1のウェル10a内に少なくとも2種の液体2、3を注入して反応させ、反応液4から生じ透明な鉱油11を通過した発光を検出し、発光の強度を測定することを特徴とするものである(
図1参照)。
【0021】
マイクロプレート10は、長さ0.1〜130mm、幅0.1〜90mm、高さ0.1〜30mmであり、材質はポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの樹脂やガラスなどを用いることができる。マイクロプレート10には複数のウェル10aが形成されている。ウェル10aは、深さ0.01mm〜20mm、直径0.01mm〜80mm、容積0.8pL〜100mL、数1〜42400000、ウェル間距離15μm〜145mmであるマイクロプレート10を用いることができる。なお、ウェル10aの底は平らでもよいし、丸くてもよい。
【0022】
ウェル10a内にはあらかじめ透明な鉱油11を注入しておく(
図1(a)、
図3参照)。透明な鉱油11は、精製されたものであり、不揮発性を有し、水相よりも比重が低いものを用いる。たとえば、流動パラフィンなどの炭素数が6以上の炭化水素化合物(直鎖飽和炭化水素、分岐鎖飽和炭化水素、環状飽和炭化水素)、エチルエーテル、石油エーテル、ジフェニルエーテ
ルなどを用いることができる。これらは、単体または混合物として用いることができる。中でも、流動パラフィ
ンが好ましい。透明であり不純物が少ないため、反応液4から生じた発光を吸収または減衰しにくい。
【0023】
上記のマイクロプレート10のウェル10a内に透明な鉱油11を注入した反応容器1に、液体2を注入する(
図1(b)参照)。注入には、たとえばディスペンサ8を用いることができる。液体2はたとえば、細胞組織、抗体、DNA、RNAなどの試料を用いることができる。このとき、ウェル10a内には透明な鉱油11が注入されているため、透明な鉱油11によって液体2の蒸発を防ぐことができる。
【0024】
次に、ウェル10a内に液体3を注入する(
図1(c)参照)。注入には、たとえばディスペンサ8を用いることができる。液体3はたとえば、試薬、抗原、基質などを用いることができる。
【0025】
液体2、3をウェル10a内に注入した後、化学反応が開始される(
図1(d)参照)。反応液4から発光が生じ、その光が透明な鉱油11を通過して、測定器9の検出部9aに届く(
図1(e)参照)。検出部9aで光を検出し、発光強度を測定する。測定器9としては、マイクロプレートリーダ、マイクロアレイスキャナ、ルミノメーター、CCDイメージャーなどを用いることができる。
【0026】
反応液4から生じた発光は、透明な鉱油11を通過して検出部9aへ集められる。透明な鉱油11がない従来の方法においては、反応液からの発光が拡散してしまう(
図2(b)参照)。一方、反応液4の液面に透明な鉱油11が存在している本発明においては(
図2(a)参照)、透明な鉱油11が凸メニスカスレンズを形成している。ここで、マイクロプレート10は上記したように樹脂やガラスでできており、反応液4は水溶液である。そのため、反応液4がウェル10aの内壁を濡らし、反応液4の液面は下に凸のメニスカスとなる。その液面上にある透明な鉱油11も同様にウェル10aの内壁を濡らすため、下に凸のメニスカスを形成する。したがって、反応液4から生じた発光は凸メニスカスレンズ状の透明な鉱油11によって集光され、従来の方法と比較して発光の検出感度を高めることができる。凸メニスカスレンズによる効果を得るためには、透明な鉱油11の注入量は反応液4の体積の半分以下であることが好ましい。
【0027】
なお、透明な鉱油11があらかじめ注入されたウェル10a内に反応液4を注入し、直後に液体2、3とは異なる試料をさらに注入する形態であってもよい。この形態においても、透明な鉱油の凸メニスカスレンズ効果によって、発光の検出感度を高めることができる。
【0028】
反応容器1は、複数のウェル10aが形成されたマイクロプレート10と、ウェル10a内に注入された透明な鉱油11とを含んでなる(
図3参照)。なお、ウェル10aは角穴であってもよい。
【0029】
ウェル10a内には透明な鉱油11があらかじめ注入されている。したがって、反応容器1を保管する際は、透明な鉱油11がウェル10aから漏れないようにする必要がある。そのような例としては、たとえば、
図4(a)〜(c)に示すような形態が挙げられる。
図4(a)は、マイクロプレート10と同じ大きさの蓋材12を用いる形態である。蓋材12の材質は、たとえばマイクロプレート10と同じものにすることができる。四隅に突起を設けた蓋材12と、突起に対応した箇所に穴を形成したマイクロプレート10とを用いて蓋材12を固定することができる。また、蓋材12は粘着剤などでマイクロプレート10に密着させて固定することもできる。蓋材12を固定すると、ウェル10aから透明な鉱油11が漏れることを防止できる。なお、蓋材12はマイクロプレート10に固定しなくてもよい。蓋材12を固定しない場合は、反応容器を使用したい時にすぐ使用することができる。
【0030】
図4(b)は、マイクロプレート10と同じ大きさのシール材13を用いる形態である。シール材13の材質は、たとえば樹脂フィルムなどを用いることができる。シール材13は、マイクロプレート10に粘着剤で密着させて固定する。蓋材12を固定すると、ウェル10aから透明な鉱油11が漏れることを防止できる。
【0031】
図4(c)は、真空包装材14を用いてマイクロプレート10を密封する形態である。真空包装材14の材質は、たとえば、ガスバリア性を有する樹脂フィルムなどを用いることができる。透明な鉱油11をウェル10a内に注入したマイクロプレート10を真空包装材14で覆い、脱気シーラーなどを用いて密封する。このようにすると、
図4(a)や(b)と比較してより確実に、ウェル10aから透明な鉱油11が漏れることを防止できる。なお、上記した蓋材12やシール材13を用いた上で、真空包装材14を用いて密封する形態も好ましい。このようにすると、さらに確実にウェル10aから透明な鉱油11が漏れることを防止できる。
【0032】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の測定方法は、複数のウェル10aが形成されたマイクロプレート10と、ウェル10a内に注入された透明な鉱油11とを含んでなる反応容器1のウェル10a内に少なくとも1種の液体5を注入し、液体5に励起光を照射して液体5から蛍光を生じさせ、透明な鉱油11を通過した蛍光を検出し、蛍光の強度を測定することを特徴とするものである(
図5参照)。
【0033】
第2実施形態は、ウェル内に注入する液体が少なくとも1種であり、液体に励起光を照射して液体から蛍光を生じさせる点において、第1実施形態とは異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0034】
まず、マイクロプレート10のウェル10a内にあらかじめ透明な鉱油11を注入した反応容器1を準備する(
図5(a))。この反応容器1に、たとえばディスペンサ8を用いて液体5を注入する(
図5(b)参照)。液体5は、励起光を照射して蛍光を発するものであれば、特に制限されない。蛍光物質としては、たとえば、フルオレセイン、Cy3、Cy5などの蛍光色素、GFP(Green Fluorescent Protein;緑色蛍光タンパク質)をはじめとする蛍光タンパク質、およびこれらが標識された蛍光標識抗体などを用いることができる。なお、液体5とは異なる種類の液体を複数注入してもよい。
【0035】
次に、励起光を反応容器の上方から液体5に向けて照射する(
図5(c)参照)。励起光としては、たとえば紫外線、可視光線、X線、赤外線などを用いることができ、ウェル10a内に注入する蛍光物質によって励起光の種類を変えてもよい。なお、励起光の照射は反応容器の下方から液体5に向けて照射してもよい。
【0036】
液体5に励起光を照射した後、液体5から蛍光が発生する(
図5(d)参照)。その蛍光が透明な鉱油11を通過して、測定器9の検出部9aに届く(
図5(e)参照)。検出部9aで蛍光を検出し、蛍光強度を測定する。測定器9としては、マイクロプレートリーダ、マイクロアレイスキャナ、CCDイメージャー、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡などを用いることができる。
【0037】
液体5から生じた蛍光の検出感度を高めることができる理由および透明な鉱油11の好ましい注入量については、第1実施形態と同様である。
【0038】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本発明の測定方法は、複数のウェル10aが形成されたマイクロプレート10のウェル10a内に少なくとも2種の液体2、3を注入して反応させ、反応直後に透明な鉱油11を注入し、反応液4から生じ透明な鉱油11を通過した発光を検出し、発光の強度を測定することを特徴とするものである(
図6参照)。
【0039】
第3実施形態は、ウェル内にまず液体2、3を注入してから透明な鉱油を注入する点において、第1実施形態とは異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0040】
まず、マイクロプレート10のウェル10a内にディスペンサ8などを用いて液体2を注入する(
図6(a)参照)。次いで液体3を注入する(
図6(b)参照)。液体3を注入すると化学反応が始まり、発光が生じる。反応直後に、ディスペンサ8などを用いて透明な鉱油11を注入する(
図6(c)参照)。反応液4から生じた発光は、透明な鉱油11を通過して測定器9の検出部9aに届く(
図6(d)参照)。
【0041】
液体2と液体3との化学反応が始まるとすぐに発光が生じるため、透明な鉱油11はできるだけ早く注入することが好ましい。たとえば、液体3を注入するディスペンサと透明な鉱油11を注入するディスペンサとを用意し、液体3を注入するディスペンサが移動すると、透明な鉱油11を注入するディスペンサがそれを追跡する形態とすることができる。なお、始めに液体2を注入し、その後、透明な鉱油11、液体3を順番に注入する形態であってもよい。また、始めに液体2を注入し、透明な鉱油11と液体3を同時に注入する形態であってもよい。
このようにすると、反応直後もしくは反応とほぼ同時に透明な鉱油11を注入することになるため、反応液から生じた発光を凸メニスカスレンズ効果により効率よく集光できる(
図2(a)参照)。
【0042】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本発明の測定方法は、複数のウェルが形成されたマイクロプレートのウェル内に、少なくとも1種の液体と透明な鉱油を注入し、液体に励起光を照射して液体から蛍光を生じさせ、透明な鉱油を通過した蛍光を検出し、蛍光の強度を測定することを特徴とするものである(
図7参照)。
【0043】
第4実施形態は、ウェル10a内にまず液体5を注入し、その後に透明な鉱油11を注入し、液体5に励起光を照射する点において、第2実施形態とは異なる。以下、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0044】
ウェル10a内に、たとえばディスペンサ8を用いて液体5を注入する(
図7(a)参照)。その後、ディスペンサ8などを用いて透明な鉱油11を注入する(
図7(b)参照)。励起光を照射する(
図7(c)参照)。励起光を照射すると化学反応が始まり、液体5から蛍光が発生する。生じた蛍光は、透明な鉱油11を通過して測定器9の検出部9aに届く(
図7(d)参照)。液体5に励起光を照射して化学反応が始まるとすぐに蛍光が生じ、蛍光が発生している時間はきわめて短い(たとえばナノ秒単位)ため、測定器9は蛍光強度の測定と励起光の照射とが可能なものが好ましい。第4実施形態においても、透明な鉱油の凸メニスカスレンズ効果によって、蛍光の検出感度を高めることができる。
【0045】
上記では液体5を先に注入し、その後に透明な鉱油11を注入しているが、液体5と透明な鉱油11は同時に注入してもよい。透明な鉱油11は液体5よりも比重が小さいため、同時に注入しても、所定の時間が経過すれば透明な鉱油11と液体5は二層に分かれ、透明な鉱油11が液体5に対して上の層となる。したがって、反応液から生じた蛍光を凸メニスカスレンズ効果により効率よく集光できる(
図2(a)参照)。
【0046】
(実施例1)
マイクロプレートは白色であり、96個のウェルを有するものを用いた。ウェルの各寸法は、直径6.35mm、深さ10.67mm、容積338μLである。ウェルの底面はフラットのものを用いた。このマイクロプレートのウェル内にあらかじめ透明な鉱油を50μL注入した反応容器を準備した。透明な鉱油としてミネラルオイルを用いた。これは無色透明であり、比重0.85、25℃における粘度が22.5mPa・s、DNase(デオキシリボヌクレアーゼ)、RNase(リボヌクレアーゼ)、Protease(プロテアーゼ)は含まれないことが特徴である。
【0047】
次に、反応容器に次の2種の試料を注入して化学反応させた。1μMのATP溶液(rATP10mMをTrisバッファーを加えて濃度調整したもの)とReagent溶液(Kinase‐Glo(登録商標)SubstrateとKinase‐Glo(登録商標)Bufferの混合液)を1ウェルあたり50μLずつ使用して酵素基質反応を行った。なお、反応時間は16分とした。試料の注入にはピペットとピペットチップを用いた。
【0048】
反応液から生じた発光を測定器で検出して発光強度を測定した。使用した測定器はマルチモードマイクロプレートリーダー(DSファーマバイオメディカル社製 パワースキャンHT、吸光・蛍光・化学発光測定に対応)である。3回測定を行い、算出した平均値382631RLUを測定結果とした。
【0049】
(実施例2)
上記の試料をウェル内に注入して化学反応させ、反応直後に透明な鉱油を50μL注入した。それ以外は実施例1と同様にして行った。平均値は392935RLUであった。
【0050】
(比較例1)
透明な鉱油を注入せず、上記の試料をウェル内に注入して化学反応させた。それ以外は、実施例1と同様にして行った。平均値は330859RLUであった。
【0051】
実施例1および2と比較例1の結果を、表1と表2に示す。表2に示すグラフ中の縦軸は発光量(RLU)である。
【0053】
表1および表2より、実施例1と2は比較例1よりも発光量が大きいものであった。