(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステアリングシャフトを内包する筒状のステアリングジャケットをフレームとフィクサプレートとで挟持した状態で、前記ステアリングジャケットに固定されるステアリングロック装置において、
前記フレームの外面部に開口するボルト穴に螺合され、前記フィクサプレートを前記フレームに固定するフィクサボルトと、
前記フレームにおいて前記ステアリングジャケットの外周面に当接するジャケット当接面に開口され、前記フレームの内部に延在するロック部材収容孔と、
前記ロック部材収容孔内に配置され、前記ステアリングシャフトをロックするロック位置と前記ステアリングシャフトのロックを解除するロック解除位置との間をスライド可能に構成されたロック部材と、
前記ロック部材が前記ロック位置にある状態で、前記ロック部材を前記ロック位置に保持する補助ロック部と、を有し、
前記補助ロック部は、
前記フレームの外面部に開口され、当該フレームの内部に延在しながら前記ロック部材収容孔と交差する規制部材収容孔と、
前記規制部材収容孔内に配置され、前記ロック部材に係合することで当該ロック部材を前記ロック位置に保持する係合位置と前記ロック部材に対して係合しない非係合位置との間をスライド可能に構成された規制部材と、を有し、
前記フィクサボルトは、前記フレームの外面部との間に前記フィクサプレートを挟持しており、
前記規制部材収容孔は、前記フレームの外面部に現れる開口の少なくとも一部分が、前記フィクサプレートを介して前記フィクサボルトにより塞がれていることを特徴とするステアリングロック装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態に係るステアリングロック装置1について説明する。ここで、
図1は、本実施形態に係るステアリングロック装置1を模式的に示す正面図である。
図2は、フィクサプレート30を外した状態のステアリングロック装置1を
図1のA矢視方向から示す平面図である。
図3は、
図1に示すステアリングロック装置1をA矢視方向から示す平面図である。
図4は、
図3に示すステアリングロック装置1のBB線に沿う断面図である。
図5は、
図3に示すステアリングロック装置1のCC線に沿う断面図である。
図6は、
図3に示すステアリングロック装置1のDD線に沿う断面図である。
【0016】
ステアリングロック装置1は、例えば電動ステアリングロック装置であり、フレーム10と、ロックロッド20と、フィクサプレート30と、フィクサボルト40と、電動モータ60と、制御基板70と、補助ロック部80と、を主体に構成されている。このステアリングロック装置1は、ステアリングジャケット100をフレーム10とフィクサプレート30とで挟んだ状態で、フィクサボルト40によってフィクサプレート30をフレーム10に固定することで、ステアリングジャケット100に固定されている。
【0017】
ステアリングジャケット100は、円筒形状を有し、内部にステアリングシャフト101を回動自在に支持している。また、ステアリングジャケット100には、矩形状の係止孔102が設けられており、後述するロックロッド20が、係止孔102を通じて外部からステアリングシャフト101と係合できるようになっている。ステアリングシャフト101の外周面には、軸方向に沿って延在する係合溝が、周方向にかけて所定の間隔で形成されている。
【0018】
フレーム10は、例えば亜鉛ダイカストを用いて所要の形状に成形されており、フレーム10には、ステアリングジャケット100の外周形状に対応する半円筒形状のジャケット当接面11が設けられている。ジャケット当接面11は、フレーム10をステアリングジャケット100に組み付けた状態で、ステアリングジャケット100の外周面に当接する。
【0019】
フレーム10には、先端側がジャケット当接面11に開口され、フレーム10の内部に筒状に形成されたロックロッド収容孔12が設けられている。
【0020】
ジャケット当接面11におけるロックロッド収容孔12の周囲には、ステアリングシャフト101方向へと台状に盛り上がった係合突部13が形成されている。この係合突部13も、ジャケット当接面11の一部として機能する。係合突部13は、フレーム10がステアリングジャケット100に固定された状態で、ステアリングジャケット100の係止孔102に嵌入される。このため、フレーム10に過大な力が加わっても取り付けた位置からフレーム10がずれることが抑制される。
【0021】
ロックロッド収容孔12には、ロックロッド20が収容されている。ロックロッド20は、硬質な材料からなる四角柱状の部材である。ロックロッド20は、ロックロッド収容孔12に収容された状態で、当該ロックロッド20の長手方向に沿ってスライド可能に構成されている。このロックロッド20は、駆動手段である電動モータ60の動力によって駆動され、ロック位置とロック解除位置との間をスライド移動する。
【0022】
ロックロッド20がロック位置にある場合、ロックロッド20の先端部(ロッド先端部21)がジャケット当接面11(係合突部13)から突出する。この場合、ロッド先端部21はステアリングシャフト101に係合し、ステアリングシャフト101の回動を規制する。一方、ロックロッド20がロック解除位置にある場合、ロッド先端部21はフレーム10(ロックロッド収容孔12)内に収容される。この場合、ロックロッド20はステアリングシャフト101とは係合せず、ステアリングシャフト101は自在に回動する。
【0023】
フレーム10には、フレームカバー15が取り付けられている。フレームカバー15は、一面(
図1の左側面)が開口する箱形状を備えており、フレームカバー15の開口端に設けられた開口部15aと、フレーム10の周縁に設けられた係止部10aとを係合することで、フレーム10に組み付けられている。
【0024】
フレームカバー15は、その内部に収容空間を形成している。フレームカバー15の内部には、ロックロッド20が変位するための動力を付与する電動モータ60や制御基板70等が収容されている。電動モータ60は、ギア等の動力伝達機構(図示せず)を介してロックロッド20に動力を伝達し、ロックロッド20を駆動する。制御基板70は、電力を電動モータ60に供給し、当該電動モータ60の正転、逆転、停止の制御を行う。
【0025】
フレーム10には、フィクサボルト40が螺合するボルト穴が2箇所に設けられている。
【0026】
ステアリングジャケット100にフレーム10が組み付けられた状態で、フレーム10の車両上方に面するフレーム10の外面部(以下「上方フレーム外面部10b」という)には、一方のボルト穴である上部ボルト穴14aが、ロックロッド収容孔12に対して交差(例えば直交)するように設けられている。また、フレーム10の下方に位置し、車両左右方向に面するフレーム10の外面部(以下「側方フレーム外面部10c」という)には、他方のボルト穴である側部ボルト穴(図示せず)が、ロックロッド収容孔12に対して略平行になるように設けられている。
【0027】
フィクサプレート30は、ステアリングジャケット100を間に挟んでフレーム10と対向して設けられ、フィクサボルト40を用いてフレーム10をステアリングジャケット100に取り付ける部材である。フィクサプレート30は、円弧状に湾曲する帯状のプレート基部31と、プレート基部31の両端に設けられた上部座面部32及び側部座面部33とで構成されている。
【0028】
上部座面部32は、プレート基部31の一方の端部に連設されており、当該プレート基部31の端部からその接線方向に沿って平面状に設けられている。フィクサプレート30がフレーム10に取り付けられた状態で、上部座面部32は、上方フレーム外面部10bに当接する。この上部座面部32には、上部ボルト穴14aに螺合されるフィクサボルト40を挿通するための挿通孔が形成されている。
【0029】
側部座面部33は、プレート基部31の他方の端部に連設されており、当該プレート基部31の端部からその法線方向に立ち上げられている。フィクサプレート30がフレーム10に取り付けられた状態において、側部座面部33は、側方フレーム外面部10cに当接する。側部座面部33には、側部ボルト穴に螺合されるフィクサボルト40を挿通するための挿通孔が形成されている。
【0030】
このように、上部座面部32と側部座面部33とは、互いに90度の角度をなすように設定されている。
【0031】
フィクサボルト40は、上部ボルト穴14aに組み付けられるフィクサボルト(以下「上部フィクサボルト40a」という)と、側部ボルト穴に組み付けられるフィクサボルト(以下「側部フィクサボルト40b」という)とを含み、各ボルト40a,40bで形状が異なっている。
【0032】
図7及び
図8は、上部フィクサボルト40a及び脱落防止手段の説明図である。上部フィクサボルト40aは、軸部41と、軸部41の基端側に連設された頭部46とで構成されている。軸部41には、挿入方向先端側にねじ山が形成されたねじ部42と、ねじ部42と頭部46との間に位置する係止部43とが形成されている。係止部43は、ねじ部42よりも径が大きな環状部と、当該環状部よりも径の小さな小径部とから構成されている。
【0033】
頭部46は、軸部41の挿入方向後端(基端)側に位置し、取付座47と締付部48とで構成されている。取付座47は、フレーム10にフィクサボルト40を螺合した際に、フレーム10との間にフィクサプレート30(上部座面部32)を挟持する。締付部48は、取付座47の後端部分に連設され、フィクサボルト40を螺合する際に工具が嵌合され、当該工具による締付トルクを受けて取付座47及び軸部41に回転力を伝達する。この締付部48は、所定値以上の締付トルクが加わった際に、取付座47との連設部分がせん断され、折損するように構成されている。
【0034】
側部フィクサボルト40bは、軸部41が全てねじ部42で構成されており、頭部46は上部フィクサボルト40aと同様の形状である。
【0035】
上部フィクサボルト40aは、フィクサプレート30の上部座面部32の挿通孔を介して上部ボルト穴14aに螺合されている一方、側部フィクサボルト40bは、フィクサプレート30の側部座面部33の挿通孔を介して側部ボルト穴に螺合されている。フィクサプレート30は、これらの各ボルト40a,40bによってフレーム10に締結されている。これにより、ステアリングジャケット100がフィクサプレート30とフレーム10とで挟持され、フレーム10がステアリングジャケット100に取り付けられる。
【0036】
このように、上部座面部32と側部座面部33との関係と同様、上部フィクサボルト40aと側部フィクサボルト40bとは、互いに90度の角度をなすように設定されている。
【0037】
フレーム10には、先端側がジャケット当接面11に開口するスライド穴16が設けられている。スライド穴16は、上部ボルト穴14aと直交しかつ側部ボルト穴と平行になるように延在しており、その奥端側が上部ボルト穴14aに連通している。このスライド穴16は、開口側が広く、上部ボルト穴14aと連通する部位(奥端側の部位)が狭い段付きの形状を備えている。
【0038】
スライド穴16には、その奥側から開口側にかけて、係合スライダ51及び巻ばね56がこの順番で配置されている。
【0039】
係合スライダ51は、短辺部と長辺部とからなる断面略L字形状に形成されている。短辺部の先端部分には、係合爪が設けられており、係合爪の先端部上面側には、上部フィクサボルト40aをねじ込む方向に対して斜めに形成された斜面が形成されている。長辺部は、その背面側が巻ばね56の付勢力を受ける受圧面として機能する。
【0040】
スライド穴16の開口側は、閉止蓋57によって塞がれている。閉止蓋57は、巻ばね56の反力により、スライド穴16の開口側から脱落しないように嵌入されている。これにより、係合スライダ51は、巻ばね56の反力によりスライド穴16の奥側へと付勢されている。もっとも、ステアリングジャケット100にフレーム10が取り付けられた状態においては、スライド穴16の開口側がステアリングジャケット100の外周面によって塞がれている。このため、閉止蓋57が外れそうになっても、閉止蓋57の脱落は抑制される。
【0041】
このような構成において、係合スライダ51の係合爪とフィクサボルト40の係止部43とは、脱落防止手段として機能する。すなわち、上部フィクサボルト40aを組み付けた際に係合爪と係止部43とが係合することにより、フィクサボルト40が引き抜かれることを規制する。
【0042】
補助ロック部80は、ロック位置に存するロックロッド20がロック位置を維持するように、当該ロックロッド20のスライド移動をロックするものである。補助ロック部80は、ロックピン収容孔17と、ロックピン81と、付勢手段82と、トリガー83とで構成されている。
【0043】
フレーム10には、先端側が上方フレーム外面部10bに開口され、フレーム10の内部に筒状に形成されたロックピン収容孔17が設けられている。このロックピン収容孔17は、上部ボルト穴14aと平行に延在し、ロックロッド収容孔12と交差している。ロックピン収容孔17には、その奥側から開口側にかけて、付勢手段82及びロックピン81がこの順番で収容されている。
【0044】
ロックピン81は、ロックピン収容孔17の延在方向に沿って長手形状となる四角柱状又は円柱状の部材であり、ロックピン収容孔17の延在方向に沿って係合位置と非係合位置との間を移動可能に配置されている。ロックピン81は、係合位置に位置した状態において、ロック位置に位置するロックロッド20に形成されるロックピン受け溝22と係合する。この係合により、ロック位置に位置するロックロッド20は、当該ロック位置からの移動が規制される。一方、ロックピン81は、非係合位置に位置した状態で、ロックロッド20から離間する。これにより、ロックロッド20は、ロック位置とロック解除位置との間で移動が可能となる。
【0045】
付勢手段82は、ロックピン81を非係合位置側から係合位置側に向かって付勢するものであり、例えば巻ばねで構成されている。付勢手段82は、ロックピン81が非係合位置に存する状態で、ロックピン81とロックピン収容孔17の奥端との間で圧縮された状態となる。
【0046】
トリガー83は、ロックピン81を非係合位置に保持するとともに、フレームカバー15がフレーム10から離脱された場合に、ロックピン81が係合位置へと移動することを許容するものである。
【0047】
トリガー83は、クランク状に成形された平板状のトリガー本体84と、巻ばねからなるトリガー付勢手段85とで構成されている。通常、トリガー付勢手段85は、トリガー本体84の中央部に形成されるL字状の段部84aに当接することで、圧縮状態で保持されている。トリガー本体84の先端側は、ロックピン収容孔17に連通するトリガー孔18に対して挿脱可能に挿通されている。また、トリガー本体84の後端側は、トリガー付勢手段85の圧縮反力によって、フレームカバー15の内面に当接している。そして、トリガー本体84の先端部は、ロックピン収容孔17内に突出し、ロックピン81に係合する。この係合状態により、ロックピン81が非係合位置に保持される。
【0048】
本実施形態の特徴の一つとして、ロックピン収容孔17は、上方フレーム外面部10bに現れる開口部分が、上部フィクサボルト40aと重なり合うように設定されている。したがって、ロックピン収容孔17は、上方フレーム外面部10bに現れる開口の少なくとも一部分が、上部フィクサボルト40aにより塞がれた状態となっている。特に本実施形態では、上部フィクサボルト40aは、上方フレーム外面部10bとの間にフィクサプレート30の上部座面部32を挟持している。このため、ロックピン収容孔17の開口側は、フィクサプレート30の上部座面部32を介して上部フィクサボルト40aによって覆われた状態となっている。これにより、ロックピン収容孔17の開口の一部が遮蔽されるため、外部からロックピン81を引き抜くといった不正行為を抑制することができる。
【0049】
なお、ロックピン収容孔17の開口側は、上部フィクサボルト40aによりその全部が覆われている必要はなく、ロックピン81が引き抜かれないように、少なくとも開口の一部分が覆われていればよい。
【0050】
次に、ステアリングロック装置1の組み付け手順を説明する。
【0051】
まず、ロックピン収容孔17に、その開口側から、付勢手段82及びロックピン81を順次挿入し、先細な工具などを用いて、付勢手段82の反力に逆らいながらロックピン81を非係合位置まで押し入れる。つぎに、トリガー83をトリガー孔18に挿入し、トリガー本体84の先端部をロックピン81に係合させることで、ロックピン81を非係合位置に保持する。トリガー83をトリガー孔18に挿入する際には、段部84aにトリガー付勢手段85が配置され、トリガー付勢手段85が圧縮状態で保持される。そして、フレーム10に対してフレームカバー15が取り付けられ、トリガー本体84の後端側は、フレームカバー15の内面により押圧される。
【0052】
つぎに、スライド穴16に、その開口側から、係合スライダ51及び巻ばね56を順次挿入し、閉止蓋57でスライド穴16の開口部を塞ぐ。
【0053】
最後に、フィクサプレート30及びフィクサボルト40により、フレーム10をステアリングジャケット100に組み付ける。まず、フレーム10の係合突部13をステアリングジャケット100の係止孔102に嵌入させながら、フレーム10のジャケット当接面11をステアリングジャケット100の外周面に密着させる。一方、ステアリングジャケット100の反対側からフィクサプレート30を配置して、上部ボルト穴14a及び側部ボルト穴(図示せず)に上部座面部32及び側部座面部33の各挿通孔を位置合わせし、上部フィクサボルト40a及び側部フィクサボルト40bを上部ボルト穴14a及び側部ボルト穴にそれぞれ螺合する。
【0054】
上部フィクサボルト40a及び側部フィクサボルト40bの取付座47が、フレーム10の外面部との間にフィクサプレート30(上部座面部32、側部座面部33)を挟持するまで、上部フィクサボルト40a及び側部フィクサボルト40bを締め付ける。そして、上部フィクサボルト40a及び側部フィクサボルト40bが、上部ボルト穴14a及び側部ボルト穴の奥側まで到達すると、締付部48に所定値以上の締付トルクを加え、締付部48を折損させる。これにより、上部フィクサボルト40a及び側部フィクサボルト40bは、これを逆回転させて、上部ボルト穴14a及び側部ボルト穴から引き抜くことができない状態となる。
【0055】
この際、上部ボルト穴14aに組み付けられた上部フィクサボルト40aは、螺合する際に、係止部43が係合スライダ51の係合爪に当接して、巻ばね56の付勢反力に抗して係合スライダ51を係合解除方向へスライドさせる。さらに上部フィクサボルト40aがねじ込まれると、係合爪が係止部43と係合する。このため、上部フィクサボルト40aは、仮に逆回転させられたとしても容易に抜くことができない状態となる。
【0056】
以上のような一連の工程を経て、ステアリングロック装置1がステアリングジャケット100に取り付けられる。
【0057】
次に、本実施形態に係るステアリングロック装置1の動作を説明する。
【0058】
まず、ロックロッド20がロック位置に保持された状態では、ロックロッド20のロッド先端部21が係合突部13から突出している。これによって、ロッド先端部21がステアリングシャフト101の係合溝に係合し、ステアリングシャフト101の回動が規制される。
【0059】
そして、ロック状態のステアリングロック装置1に、車体側からロック解除信号が入力されると、制御基板70は電動モータ60が正転するように電力を供給する。電動モータ60が正転すると、当該電動モータ60からの動力が伝達されて、ロックロッド20がロック位置からロック解除位置へ移動する。
【0060】
ロックロッド20がロック解除位置に移ると、制御基板70から電動モータ60への電力が止まり、電動モータ60が停止する。これによって、ロックロッド20は、ロック解除位置に保持される。
【0061】
ロック解除状態のロックロッド20は、ロックロッド収容孔12内に引込まれている。このため、ロッド先端部21とステアリングシャフト101の係合溝との係合が解除され、ステアリングシャフト101の回動が可能となっている。
【0062】
次に、ロック解除状態のステアリングロック装置1に、制御基板70を介して車体側からロック信号が入力されると、制御基板70は電動モータ60が逆転するように電力を供給する。そして、電動モータ60が逆転すると、当該電動モータ60からの動力が伝達されて、ロックロッド20がロック解除位置からロック位置へ移動する。
【0063】
ロックロッド20がロック位置に変位すると、制御基板70から電動モータ60への電力が止まり、電動モータ60が停止する。そして、ロックロッド20は、ロック位置に保持される。ロックロッド20がロック位置に保持された場合、ロッド先端部21がステアリングシャフト101の係合溝に係合し、ステアリングシャフトの回動が規制される。
【0064】
次に、不正行為等により外力がステアリングロック装置1に作用し、フレームカバー15が、フレーム10から脱落した場合について説明する。ここで、
図9から
図11は、ステアリングロック装置1からフレームカバー15が脱落した状態でのステアリングロック装置1の動作を示す説明図であり、
図4から
図6と対応している。
【0065】
フレームカバー15が脱落すると、トリガー本体84の後端側の規制が無くなる。したがって、トリガー付勢手段85の圧縮反力によって、トリガー本体84がトリガー孔18から離脱される。これにより、トリガー本体84とロックピン81との係合が外れ、付勢手段82の付勢力によって、ロックピン81が係合位置へ移動する。このとき、ロックロッド20がロック位置に位置していた場合には、ロックピン81の端部がロックロッド20のロックピン受け溝22に係合する。そして、ロックピン81とロックロッド20との係合により、ロックロッド20がロック位置に保持される。
【0066】
以上の構成により、フレームカバー15をフレーム10から取り外そうとするといった不正行為に対しては、補助ロック部80が動作することで、ロックロッド20をロック位置に保持することができる。
【0067】
このように本実施形態に係るステアリングロック装置1において、ロックピン収容孔17は、フレーム10の上方フレーム外面部10bに現れる開口の少なくとも一部分が、フィクサボルト40により塞がれている。
【0068】
この構成によれば、ロックピン収容孔17の開口側がフィクサボルト40によって閉塞されるので、ロックピン81が引き抜かれる事態を抑制することができる。これにより、ロックロッド20がロック位置から解除されることを効果的に抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、ロックピン収容孔17がフレーム10の外面部(上方フレーム外面部10b)に設けられているため、ジャケット当接面11にロックピン81用の開口を設ける必要がない。このため、フレーム10の強度低下を抑制することができる。
【0070】
よって、フレーム10の強度を維持しつつ、防盗性にも優れるステアリングロック装置1を提供することができる。
【0071】
また、本実施形態において、フィクサボルト40は、フィクサプレート30の一方の端部側(上部座面部32)に設けられた挿通孔に挿通され、ロックロッド収容孔12に対して直交する上部ボルト穴14aに螺合される上部フィクサボルト40aと、フィクサプレート30の他方の端部側(側部座面部33)に設けられた挿通孔に挿通され、ロックロッド収容孔12に対して平行する側部ボルト穴(第2ボルト穴)に螺合される側部フィクサボルト40bと、を含んでいる。この場合、ロックピン収容孔17は、上方フレーム外面部10bに現れる開口の少なくとも一部分が、上部フィクサボルト40aにより塞がれている。
【0072】
この構成によれば、上部フィクサボルト40aと側部フィクサボルト40bとが互いに直交するような関係となっており、ロックロッド収容孔12に対して上部フィクサボルト40aが直交している。このため、上方フレーム外面部10bに現れるロックピン収容孔17の開口側を、上部フィクサボルト40aにより適切に塞ぐことができる。これにより、ロックピン81が引き抜かれるという事態を抑制することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、上部フィクサボルト40a及び側部フィクサボルト40bを用いた2点締結によりフィクサプレート30をフレーム10に固定している。上述の通り、ロックピン収容孔17の開口側を上部フィクサボルト40aによって塞ぐ必要があることから、フィクサプレート30の一方の端部側についてはフィクサボルト40(上部フィクサボルト40a)によって締結する構造としているが、フィクサプレート30の反対側の端部については、側部フィクサボルト40bによって締結する以外の構造であってもよく、例えばフレーム10に対して単純に連結する構造であってもよい。一例としては、ロックロッド収容孔12に対して平行するようにフレーム10の外面部にピンを配置し、このピンによりフィクサプレート30の反対側の端部を軸支することにより、フィクサプレート30の反対側の端部とフレーム10とをヒンジ構造で連結する、といった如くである。
【0074】
また、本実施形態において、上部フィクサボルト40aは、上方フレーム外面部10bとの間にフィクサプレート30を挟持しており、ロックピン収容孔17の開口側の少なくとも一部分が、フィクサプレート30を介して上部フィクサボルト40aにより塞がれている。
【0075】
この構成によれば、上部フィクサボルト40aの周囲がフィクサプレート30(上部座面部32)により覆われるため、ロックピン収容孔17の開口側をより広範囲に塞ぐことができる。このため、ロックピン収容孔17の開口側を露見させるためには、フィクサプレート30を捲り上げる必要があり、ロックピン81が引き抜かれるという事態を抑制することができる。また、フィクサプレート30を捲り上げられたとしても、ロックピン収容孔17の開口側の少なくとも一部分は、上部フィクサボルト40aにより塞がれているため、ロックピン81が引き抜かれる事態を抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態において、上部フィクサボルト40aは、先端側にねじ山が形成された軸部41と、軸部41の基端側に連設された頭部46と、で構成されており、頭部46は、上方フレーム外面部10bとの間にフィクサプレート30を挟持する取付座47と、取付座47の後端部分に連設され、上部フィクサボルト40aを螺合する際に工具が嵌合される締付部48と、を有している。そして、締付部48は、工具により所定値以上の締付トルクが加えられた際に、取付座47との連設部位においてせん断され、折損するように構成されている。
【0077】
この構成によれば、上部フィクサボルト40aによりフィクサプレート30を締結した後に、締付部48を折損させることができる。これにより、ひとたび螺合されてしまえば、工具を用いても上部フィクサボルト40aを取り外すことが不可能となる。このような上部フィクサボルト40aで、ロックピン収容孔17の開口側を塞ぐことで、ロックピン81が引き抜かれる事態を抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態において、補助ロック部80は、ロックピン81を非係合位置側から係合位置側に向かって付勢する付勢手段82と、ロックピン収容孔17に連通するトリガー孔18に対して挿脱可能に挿通されており、ロックピン81を非係合位置に保持するトリガー83と、を有している。この場合、トリガー83は、フレーム10に組み付けられたフレームカバー15が脱落することでトリガー孔18から離脱して、ロックピン81の係合位置への移動を許容する。
【0079】
この構成によれば、フレームカバー15が取り外されるといった不正な行為に対して、ロックピン81を係合位置へと移動させることができる。これにより、ロックロッド20を確実にロック位置へと保持することができる。
【0080】
なお、上述した実施形態では、ロックピン収容孔17の奥側に付勢手段82が配置され、その開口側にロックピン81が配置されているが、これらの関係は逆になるものであってもよい。ただし、後者のケースでは、組み付け時、付勢手段82がロックピン収容孔17から脱落することを規制するための仮止め部材を、ロックピン収容孔17に嵌入させる必要がある。
【0081】
また、本実施形態では、ロックピン収容孔17を、上部ボルト穴14aとは独立して設けている。しかしながら、上部ボルト穴14aの奥端側に孔を連通させ、上部ボルト穴14aをロックピン収容孔17として共用するものであってもよい。
【0082】
以上、本実施形態に係るステアリングロック装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。例えば、ステアリングロック装置は、電動で動作するものに限らず、解錠キーの操作を伴うシリンダ錠の動作に連動するステアリングロック装置であってもよい。
【0083】
また、本実施形態において、フィクサボルトは、工具により締付可能な締結部材を広く含むものであり、ボルトそのものに限定されるものではない。