特許第6757637号(P6757637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6757637-誘導性負荷駆動装置 図000002
  • 特許6757637-誘導性負荷駆動装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757637
(24)【登録日】2020年9月2日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】誘導性負荷駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20200910BHJP
【FI】
   H02M7/48 F
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-185082(P2016-185082)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-50411(P2018-50411A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 誠二
(72)【発明者】
【氏名】金森 英児
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−070534(JP,A)
【文献】 特開2001−245466(JP,A)
【文献】 特開平11−032429(JP,A)
【文献】 特開2009−011013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の出力端の少なくともいずれか一方に平滑コンデンサが設けられた直流電源から供給された電力に基づいて誘導性負荷を駆動する駆動回路と、前記駆動回路を制御する制御回路とを備える誘導性負荷駆動装置であって、
前記平滑コンデンサの端子電圧が所定の制限電圧以下となるように前記駆動回路を電圧クランプするアクティブクランプ回路を備え、
前記駆動回路は、
前記直流電源の高電位側出力端と前記誘導性負荷の一端との間に設けられた第1スイッチング素子と、
前記直流電源の高電位側出力端と前記誘導性負荷の他端との間に設けられた第2スイッチング素子と、
前記直流電源の低電位側出力端と前記誘導性負荷の一端との間に設けられた第3スイッチング素子と、
前記直流電源の低電位側出力端と前記誘導性負荷の他端との間に設けられた第4スイッチング素子と
を備え、
前記第4スイッチング素子はトランジスタであり、
前記アクティブクランプ回路は、前記第4スイッチング素子の制御端子電圧を前記第4スイッチング素子がオン状態となる電圧にクランプすることにより前記駆動回路を電圧クランプし、
前記アクティブクランプ回路は、
前記誘導性負荷の他端と前記トランジスタの制御端子との間に設けられる定電圧ダイオードとスイッチとの直列回路と、
前記トランジスタの制御端子と前記直流電源の低電位側出力端との間に設けられた抵抗器とを備え、
前記定電圧ダイオードは、アノード端子が前記トランジスタの制御端子側に設けられており、
前記スイッチは、前記制御回路によって前記駆動回路と別に制御されている
ことを特徴とする誘導性負荷駆動装置。
【請求項2】
前記第2スイッチング素子は、アノード端子が前記誘導性負荷の前記他端に接続され、カソード端子が前記直流電源の高電位側出力端に接続されたダイオードであることを特徴とする請求項記載の誘導性負荷駆動装置。
【請求項3】
前記直流電源は、
電池と、
前記電池から入力される電力を昇圧して前記駆動回路に供給する昇圧回路と
を備えることを特徴とする請求項1または2記載の誘導性負荷駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導性負荷駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、誘導性負荷からの逆起電力を回生させる場合に、直流電源における回路素子の破壊を防止することが可能な誘導性負荷駆動装置が開示されている。この誘導性負荷駆動装置は、誘導性負荷の他端とグランドとの間に介挿されたスイッチング素子を備え、回生中の直流電源の出力電圧が予め設定された閾値以上となった場合に、上記スイッチング素子をオンにすることによって誘導性負荷で発生した逆起電力をグランドに出力する回路素子保護回路を備えている。このような回路素子保護回路を有する誘導性負荷駆動装置によれば、直流電源に高電圧が印加されることを抑止することができ、直流電源が備える平滑コンデンサを小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−70534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、回路素子保護回路が、複数の抵抗やコンパレータを有する判定回路と、スイッチング素子やダイオードを有する導通回路とを備えている。このため、誘導性負荷駆動装置が、多数の素子を備えた複雑な構造となってしまう。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、直流電源において小型の平滑コンデンサを使用可能としつつ、誘導性負荷駆動装置の構造を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、一対の出力端の少なくともいずれか一方に平滑コンデンサが設けられた直流電源から供給された電力に基づいて誘導性負荷を駆動する駆動回路と、上記駆動回路を制御する制御回路とを備える誘導性負荷駆動装置であって、上記平滑コンデンサの端子電圧が所定の制限電圧以下となるように上記駆動回路を電圧クランプするアクティブクランプ回路を備えるという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記駆動回路が、上記直流電源の高電位側出力端と上記誘導性負荷の一端との間に設けられた第1スイッチング素子と、上記直流電源の高電位側出力端と上記誘導性負荷の他端との間に設けられた第2スイッチング素子と、上記直流電源の低電位側出力端と上記誘導性負荷の一端との間に設けられた第3スイッチング素子と、上記直流電源の低電位側出力端と上記誘導性負荷の他端との間に設けられた第4スイッチング素子とを備えるという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、上記第4スイッチング素子はトランジスタであり、上記アクティブクランプ回路が、上記第4スイッチング素子の制御端子電圧を上記第4スイッチング素子がオン状態となる電圧にクランプすることにより上記駆動回路を電圧クランプするという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記アクティブクランプ回路が、上記誘導性負荷の他端と上記トランジスタの制御端子との間に設けられる定電圧ダイオードとスイッチとの直列回路と、上記トランジスタの制御端子と上記直流電源の低電位側出力端との間に設けられた抵抗器とを備え、上記定電圧ダイオードが、アノード端子が上記トランジスタの制御端子側に設けられているという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、第2〜4いずれかの発明において、上記第2スイッチング素子が、アノード端子が上記誘導性負荷の上記他端に接続され、カソード端子が上記直流電源の高電位側出力端に接続されたダイオードであるという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、上記直流電源が、電池と、上記電池から入力される電力を昇圧して上記駆動回路に供給する昇圧回路とを備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、直流電源に含まれる平滑コンデンサの端子電圧が所定の制限電圧以下となるように駆動回路を電圧クランプするアクティブクランプ回路を備えている。このようなアクティブクランプ回路を備えることによって、特許文献1に示すような回路素子保護回路を用いなくとも、直流電源に含まれる平滑コンデンサに所定の制限電圧よりも高い電圧が印加されることを防止することができる。したがって、本発明によれば、直流電源において小型の平滑コンデンサを使用可能としつつ、誘導性負荷駆動装置の構造を簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における誘導性負荷駆動装置を含む回路構成図である。
図2】本発明の一実施形態における誘導性負荷駆動装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る誘導性負荷駆動装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0016】
図1は、本実施形態の誘導性負荷駆動装置1を含む回路構成図である。この図に示すように、本実施形態の誘導性負荷駆動装置1は、直流電源10と、誘導性負荷20とに電気的に接続されており、直流電源10から供給された電力に基づいて誘導性負荷を駆動する。
【0017】
直流電源10は、電池30と、昇圧回路40とを備えている。電池30は、複数の電池セルを備えるバッテリであり、正極端子と負極端子とを有している。この電池30は、正極端子が昇圧回路40に接続され、負極端子がグランドに接続されている。電池30の負極端子は、直流電源10の低電位側出力端として機能する。
【0018】
昇圧回路40は、一端が昇圧回路40の入力端に接続されたコイル41と、アノード端子がコイル41の他端に接続され、カソード端子が昇圧回路40の出力端(直流電源10の高電圧側出力端として機能)に接続されたダイオード42と、昇圧回路40の出力端とグランドとの間に介挿された分圧回路43と、ダイオード42のアノード端子とグランドとの間に介挿されたスイッチング素子44と、分圧回路43の出力値を参照しつつ、出力電圧を一定にするようにスイッチング素子44のオン/オフ動作をPWM制御する昇圧回路用制御回路45と、昇圧回路40の出力端とグランドとの間に介挿された昇圧コンデンサ46(平滑コンデンサ)とを備えている。このような昇圧回路40は、電池30から供給される電力を昇圧して誘導性負荷駆動装置1の後述する駆動回路2に供給する。
【0019】
このような直流電源10は、高電位側出力端(昇圧回路の出力端)と低電池側出力端(電池30の負極端子)とからなる一対の出力端とを備え、高電位側出力端に設けられた昇圧コンデンサ46を備えている。この昇圧コンデンサ46は、誘導性負荷20から逆起電力が回生された場合に、この逆起電力を一時的に蓄電する。なお、直流電源10における昇圧回路40の構成は、上記構成に限られるものではない。また、直流電源10が昇圧回路40を備えずに平滑コンデンサのみ備える構成とすることも可能である。
【0020】
本実施形態の誘導性負荷駆動装置1は、図1に示すように、駆動回路2と、アクティブクランプ回路3と、制御回路4とを備えている。なお、図1においては、視認性を向上させるために、誘導性負荷20が本実施形態の誘導性負荷駆動装置1として示された範囲に含まれているが、誘導性負荷20は、上述のように誘導性負荷駆動装置1に属するものではない。
【0021】
駆動回路2は、第1スイッチング素子2aと、第2スイッチング素子2bと、第3スイッチング素子2c、第4スイッチング素子2dとを備えている。第1スイッチング素子2aは、直流電源10の高電位側出力端と誘導性負荷20の一端との間に設けられている。この第1スイッチング素子2aは、本実施形態においては、FET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)であり、ゲート端子(制御端子)が制御回路4に接続され、制御回路4から電圧値がハイレベルである制御信号がゲート端子に入力されるとオン状態となり、電圧値がローレベルである制御信号がゲート端子に入力されるとオフ状態となる。なお、この第1スイッチング素子2aには、図1に示すように、保護用ダイオード2eが併設されている。
【0022】
第2スイッチング素子2bは、直流電源10の高電位側出力端と誘導性負荷20の他端との間に設けられている。この第2スイッチング素子2bは、本実施形態においては、ダイオードであり、アノード端子が誘導性負荷20他端に接続され、カソード端子が直流電源10の高電位側出力端に接続されている。
【0023】
第3スイッチング素子2cは、直流電源10の低電位側出力端(グランド)と誘導性負荷20の一端との間に設けられている。第4スイッチング素子2dは、直流電源10の低電位側出力端(グランド)と誘導性負荷20の他端との間に設けられている。これらの第3スイッチング素子2c及び第4スイッチング素子2dは、本実施形態においては、第1スイッチング素子2aと同様にFETであり、ゲート端子(制御端子)が制御回路4に接続されている。なお、第3スイッチング素子2cには、図1に示すように、保護用ダイオード2fが併設されている。また、第4スイッチング素子2dには、保護用ダイオード2gが併設されている。
【0024】
なお、第1スイッチング素子2a、第3スイッチング素子2c、第4スイッチング素子2dは、FET以外にも、例えばバイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)であってもよい。さらに、第3スイッチング素子2cは、第2スイッチング素子2bと同様にダイオードとすることも可能である。
【0025】
このような駆動回路2は、制御回路4の制御の下に、直流電源10から供給された電力に基づいて誘導性負荷20を駆動する。また、駆動回路2は、誘導性負荷20から逆起電力が出力された場合に、当該逆起電力を直流電源10に供給する。
【0026】
アクティブクランプ回路3は、直列回路3aと、抵抗器3bとを備えている。直列回路3aは、一端が誘導性負荷20の他端と第4スイッチング素子2dとの間に接続され、他端が第4スイッチング素子2dのゲート端子に接続されている。つまり、直列回路3aは、誘導性負荷20の他端とトランジスタからなる第4スイッチング素子2dとの間に設けられている。この直列回路3aは、直列して配置される定電圧ダイオード3a1と、スイッチ3a2とを有している。定電圧ダイオード3a1は、アノード端子が第4スイッチング素子2dのゲート端子側に設けられており、スイッチ3a2がオンの場合(すなわち直列回路3aが導通可能な場合)に、昇圧コンデンサ46に印加される電圧を規定する。ここでは、定電圧ダイオード3a1は、昇圧コンデンサ46の電圧が、昇圧コンデンサ46の定格電圧(所定の制限電圧)以下に設定された基準電圧を超えた場合に、スイッチ3a2がオンとされた直列回路3aに電流が流れるように降伏電圧が設定されている。このような定電圧ダイオード3a1は、直列回路3aに電流が通れる場合には、第4スイッチング素子2dのゲート端子の電圧を高い状態にクランプし、第4スイッチング素子2dを常にオン状態とする。スイッチ3a2は、直列回路3aの導通状態を切り替えるものであり、制御回路4により制御される。
【0027】
抵抗器3bは、一端が第4スイッチング素子2dのゲート端子に接続され、他端が第4スイッチング素子2dとグランドとの間に接続されている。つまり、抵抗器3bは、トランジスタである第4スイッチング素子2dのゲート端子と直流電源10の低電位側出力端との間に設けられている。この抵抗器3bは、制御回路4の出力端子側よりも抵抗値が低く、ゲート端子よりも抵抗が高く設定されている。このような抵抗器3bは、直列回路3aを流れる電流をグランドに向けて流す。
【0028】
このようなアクティブクランプ回路3は、駆動回路2及び制御回路4と別体として設けられており、昇圧コンデンサ46の電圧が基準電圧以上となった場合に、第4スイッチング素子2dが常にオン状態となるように、第4スイッチング素子2dのゲート端子の電圧を高い状態にクランプする。つまり、アクティブクランプ回路3は、直流電源10の昇圧コンデンサ46の端子電圧が昇圧コンデンサ46の定格電圧以下に設定された基準電圧となるように駆動回路2を電圧クランプする。なお、この基準電圧は、実験やシミュレーションによって予め求められており、制御回路4に予め記憶されている。
【0029】
制御回路4は、第1スイッチング素子2a、第3スイッチング素子2c及び第4スイッチング素子2dの制御を行うマイクロコントローラであり、内部に記憶するプログラムに基づいて第1スイッチング素子2a、第3スイッチング素子2c及び第4スイッチング素子2dのゲート端子に制御信号を入力する。つまり、制御回路4は、駆動回路2の制御を行う。また、制御回路4は、アクティブクランプ回路3のスイッチ3a2の制御を行う。具体的には、制御回路4は、昇圧コンデンサ46への逆起電力の供給を制限しない場合に昇圧コンデンサ46が基準電圧を超える可能性がある期間において、スイッチ3a2をオン状態とする。例えば、制御回路4は、少なくとも誘導性負荷20から逆起電力が出力される期間は、スイッチ3a2をオンにする。
【0030】
次に、このように構成された本実施形態の誘導性負荷駆動装置1の動作について、図2のタイミングチャートを参照して説明する。
【0031】
図2に示すタイミングチャートおいては、常にアクティブクランプ回路3を作動させない(スイッチ3a2をオンにしない)場合と、少なくとも昇圧コンデンサ46の電圧が上昇する期間にアクティブクランプ回路3を作動させる(スイッチ3a2をオンにする)場合とを時系列的に並べて示している。より詳細には、時系列的に見て先に、常にアクティブクランプ回路3を作動させない場合を示し、時系列的に見て後に、少なくとも昇圧コンデンサ46の電圧が上昇する期間にアクティブクランプ回路3を作動させる場合を示している。これらの2つの動作のうち、アクティブクランプ回路3を作動させる場合のパターンが本実施形態の本実施形態の誘導性負荷駆動装置1の動作に相当する。
【0032】
また、図2に示すタイミングチャートにおいて、負荷電流は誘導性負荷20に流れる電流を示している。また、図2に示すタイミングチャートにおいて、スイッチは、アクティブクランプ回路3のスイッチ3a2のオン/オフ状態を示している。また、図2に示すタイミングチャートにおいて、ゲート電圧(1)は第1スイッチング素子2aのゲート電極の電圧(すなわち第1スイッチング素子2aに入力される制御信号)を示し、ゲート電圧(3)は第3スイッチング素子2cのゲート電極の電圧(すなわち第3スイッチング素子2cに入力される制御信号)を示し、ゲート電圧(4)は第4スイッチング素子2dのゲート電極の電圧(すなわち第4スイッチング素子2dに入力される制御信号)を示している。また、図2に示すタイミングチャートにおいて定格電圧は昇圧コンデンサ46の定格電圧を示している。
【0033】
誘導性負荷20は、第1スイッチング素子2aと、第3スイッチング素子2cと、第4スイッチング素子2dにパルス状の制御信号が制御回路4から入力されることによって駆動される。制御回路4は、誘導性負荷20に電力を供給する場合には、第4スイッチング素子2dをオン状態のまま、第1スイッチング素子2aと第3スイッチング素子2cのオン状態とオフ状態とを切り替える。ここで、図2に示すように、第1スイッチング素子2aがオン状態の場合には第3スイッチング素子2cはオフ状態とされ、第1スイッチング素子2aがオフ状態の場合には第3スイッチング素子2cはオン状態とされる。
【0034】
第4スイッチング素子2dをオン状態であり、第1スイッチング素子2aがオン状態で第3スイッチング素子2cがオフ状態である場合には、図2に示すように負荷電流が急激に上昇する。つまり、第1スイッチング素子2aがオン状態で第3スイッチング素子2cがオフ状態である場合には、昇圧回路40あるいは直流電源10から誘導性負荷20に電力が供給される。また、第4スイッチング素子2dをオン状態であり、第1スイッチング素子2aがオフ状態で第3スイッチング素子2cがオン状態である場合には、図2に示すように負荷電流は一定に推移する。ここでは、誘導性負荷20で発生した逆起電力が再び第3スイッチング素子2cを介して誘導性負荷20に還流する。
【0035】
一方、制御回路4は、誘導性負荷20への電力供給を停止する場合には、第1スイッチング素子2aをオフ状態のまま、第3スイッチング素子2cをオン状態のまま、第4スイッチング素子2dのオン状態とオフ状態とを切り替える。第1スイッチング素子2aをオフ状態のまま、第3スイッチング素子2cをオン状態のまま、第4スイッチング素子2dがオフ状態である場合には、誘導性負荷20で発生した逆起電力が第2スイッチング素子2bを介して昇圧回路40の昇圧コンデンサ46に給電され、蓄電される。このとき、図2に示すように負荷電流が急激に下降する。なお、昇圧コンデンサ46に蓄えられた電力は、次回、誘導性負荷20へ電力を供給する際に放電される。また、第1スイッチング素子2aをオフ状態のまま、第3スイッチング素子2cをオン状態のまま、第4スイッチング素子2dがオン状態である場合には、誘導性負荷20で発生した逆起電力が再び第3スイッチング素子2cを介して誘導性負荷20に還流し、負荷電流が一定に推移する。
【0036】
ここで、アクティブクランプ回路3を作動させない(スイッチ3a2をオンにしない)場合には、負荷電流が下降傾向にある期間において逆起電力が常に昇圧コンデンサ46に回生し、昇圧コンデンサ46が定格電圧を超えて昇圧する。一方で、アクティブクランプ回路3を作動させる(スイッチ3a2をオンにする)場合には、昇圧コンデンサ46の電圧が定格電圧に近づき基準電圧を超えると、定電圧ダイオード3a1を通じて直列回路3aに電流が流れ、駆動回路2(すなわち昇圧コンデンサ46)の電圧が基準電圧にクランプされる。このとき、第4スイッチング素子2dのゲート端子に常に高い電圧が印加されるため、第4スイッチング素子2dが常にオン状態となり、誘導性負荷20で発生した逆起電流は、第4スイッチング素子2dを介してグランドに流れる。
【0037】
以上のような本実施形態の誘導性負荷駆動装置1によれば、直流電源10の昇圧回路40に含まれる昇圧コンデンサ46の端子電圧が定格電圧以下となるように駆動回路2を電圧クランプするアクティブクランプ回路3を備えている。このようなアクティブクランプ回路3を備えることによって、特許文献1に示すような回路素子保護回路を用いなくとも、昇圧コンデンサ46に定格電圧よりも高い電圧が印加されることを防止することができる。したがって、本実施形態の誘導性負荷駆動装置1によれば、小型の昇圧コンデンサ46を使用可能としつつ、誘導性負荷駆動装置1の構造を簡素化することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態の誘導性負荷駆動装置1においては、第4スイッチング素子2dはトランジスタであり、アクティブクランプ回路3は、第4スイッチング素子2dの制御端子電圧を第4スイッチング素子2dがオン状態となる電圧にクランプすることにより駆動回路2を電圧クランプする。このため、本実施形態の誘導性負荷駆動装置1によれば、駆動回路2の電圧をクランプした際に、第4スイッチング素子2dを介してグランド(直流電源10の低電位側出力端子)に逆起電力を流すことができる。したがって、本実施形態の誘導性負荷駆動装置1によれば、逆起電力をグランドに逃がす経路を別途設ける必要がなく、簡易な構成とすることができる。
【0039】
また、本実施形態の誘導性負荷駆動装置1においては、アクティブクランプ回路3が、誘導性負荷20の他端と第4スイッチング素子2dのゲート端子との間に設けられる定電圧ダイオード3a1とスイッチ3a2との直列回路3aと、第4スイッチング素子2dのゲート端子と直流電源10の低電位側出力端との間に設けられた抵抗器3bとを備えている。さらに、定電圧ダイオード3a1は、アノード端子が第4スイッチング素子2dのゲート端子側に設けられている。このため、本実施形態の誘導性負荷駆動装置1によれば、昇圧コンデンサ46の電圧を常に監視しなくても、簡易な回路構成にて昇圧コンデンサ46に定格電圧以上の電圧が印加することを防止することができる。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態においては、第2スイッチング素子2bがダイオードである構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、第2スイッチング素子をトランジスタとする構成を採用することも可能である。
【0042】
また、上記実施形態においては、直列回路3aの一端を誘導性負荷20の他端と第4スイッチング素子2dとの間に接続する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、誘導性負荷20の他端と第2スイッチング素子2bとの間に接続する構成を採用することも可能である。
【0043】
また、上記実施形態においては、1つの駆動回路2を備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の駆動回路2を備え、複数の誘導性負荷20を駆動可能な構成を採用することも可能である。この場合、原則的には全ての駆動回路2に対してアクティブクランプ回路3を設置する構成となるが、例外提起にいずれかの駆動回路2のみにアクティブクランプ回路3を設置することも可能である。
【0044】
また、上記実施形態においては、本発明の誘導性負荷駆動装置1に電力を供給する直流電源10が昇圧回路を備え、本発明の平滑コンデンサが昇圧コンデンサ46である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、出力端子に接続された平滑コンデンサを備える直流電源から電力が供給される誘導性負荷駆動装置の全般に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1……誘導性負荷駆動装置、2……駆動回路、2a……第1スイッチング素子、2b……第2スイッチング素子、2c……第3スイッチング素子、2d……第4スイッチング素子、3……アクティブクランプ回路、3a……直列回路、3a1……定電圧ダイオード、3a2……スイッチ、3b……抵抗器、4……制御回路、10……直流電源、20……誘導性負荷、30……電池、40……昇圧回路、46……昇圧コンデンサ(平滑コンデンサ)
図1
図2