(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757639
(24)【登録日】2020年9月2日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】構造物用支承装置
(51)【国際特許分類】
E01D 19/04 20060101AFI20200910BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
E01D19/04 B
E04H9/02 331A
E04H9/02 331E
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-190530(P2016-190530)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-53547(P2018-53547A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】503121088
【氏名又は名称】株式会社ビー・ビー・エム
(73)【特許権者】
【識別番号】391051256
【氏名又は名称】株式会社美和テック
(73)【特許権者】
【識別番号】503121077
【氏名又は名称】株式会社カイモン
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(72)【発明者】
【氏名】合田 裕一
【審査官】
彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−057906(JP,U)
【文献】
特開2014−181522(JP,A)
【文献】
特開2004−011197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/04
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間プレートと、
前記中間プレートの上面に所定間隔を開けて立設され上端に直交する一方の方向のガイド部を形成した上部ガイド部材と、
前記中間プレートの下面に所定間隔を開けて立設され下端に直交する他方の方向のガイド部を形成した下部ガイド部材と、
上部構造側に固定され前記上部ガイド部材のガイド部に沿って直交する一方の方向に移動可能で直交する他方の方向に移動不能に配置される上部スライド部材と、
下部構造側に固定され前記下部ガイド部材のガイド部に沿って直交する他方の方向に移動可能で直交する一方の方向に移動不能に配置される下部スライド部材と、
前記上部スライド部材の下面と前期中間プレートの上面に固定される上部弾性体と、
前記下部スライド部材の上面と前期中間プレートの下面に固定される下部弾性体と、
を備え、
前記上部弾性体と前記下部弾性体の剛性が異なるように設定し、地震時の応力による直交する一方の方向と直交する他方の方向の変位量が異なるようにすることを特徴とする構造物用支承装置。
【請求項2】
上部ガイド部材に上部スライド部材の上揚力を阻止する上部上揚力止め部材を配置し、下部ガイド部材に下部スライド部材の上揚力を阻止する下部上揚力止め部材を配置することを特徴とする請求項1に記載の構造物用支承装置。
【請求項3】
上部ガイド部材に上部上揚力止め部材に形成した係合突部を嵌合する嵌合穴を形成し、下部ガイド部材に下部上揚力止め部材に形成した係合突部を嵌合する嵌合穴を形成することを特徴とする請求項2に記載の構造物用支承装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物、橋梁等の構造物に設置され、弾性部材の弾性変位により地震エネルギーを吸収する支承において、直交する二方向で変位量が異なる構造物用支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物や橋梁等の構造物の支承装置として、弾性部材の弾性変位により地震エネルギーを吸収する弾性支承装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−188122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の弾性支承装置は、弾性体それ自体のせん断弾性率は方向性がなく、直交する一方の方向と直交する他方の方向に対して同一の性能値(許容変位量・剛性)を有するものである。
【0005】
しかしながら、構造物の種別等により、直交する一方の方向の必要性能値(許容変位量・剛性)と直交する他方の方向の必要性能値(許容変位量・剛性)が異なる場合がある。
この場合、弾性支承の形状(構造)を決定するにあたり、その形状(構造)を必要性能の低い方に対応させて設定すると変位性能が不足することになるため、必要性能の高い方に対応させて形状(構造)を設定することになるが、これでは弾性層の平面寸法が大きくなり、弾性支承が大型になり、コスト高を招くことにもなるという問題があった。
【0006】
本発明は、前記従来技術の持つ問題点を解決する、構造が簡単で、弾性体の寸法を大きくすることなく、直交する一方の方向の必要性能値(許容変位量・剛性)と直交する他方の方向の必要性能値(許容変位量・剛性)を異なるように設定することが可能な構造物用支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の構造物用支承装置は、前記課題を解決するために、中間プレートと、前記中間プレートの上面に所定間隔を開けて立設され上端に直交する一方の方向のガイド部を形成した上部ガイド部材と、前記中間プレートの下面に所定間隔を開けて立設され下端に直交する他方の方向のガイド部を形成した下部ガイド部材と、上部構造側に固定され前記上部ガイド部材のガイド部に沿って直交する一方の方向に移動可能で直交する他方の方向に移動不能に配置される上部スライド部材と、下部構造側に固定され前記下部ガイド部材のガイド部に沿って直交する他方の方向に移動可能で直交する一方の方向に移動不能に配置される下部スライド部材と、前記上部スライド部材の下面と前期中間プレートの上面に固定される上部弾性体と、前記下部スライド部材の上面と前期中間プレートの下面に固定される下部弾性体と、を備え、前記上部弾性体と前記下部弾性体の
剛性が異なるように設定し、地震時の応力による直交する一方の方向と直交する他方の方向の変位量が異なるようにすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の構造物用支承装置は、上部ガイド部材に上部スライド部材の上揚力を阻止する上部上揚力止め部材を配置し、下部ガイド部材に下部スライド部材の上揚力を阻止する下部上揚力止め部材を配置することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の構造物用支承装置は、上部ガイド部材に上部上揚力止め部材に形成した係合突部を嵌合する嵌合穴を形成し、下部ガイド部材に下部上揚力止め部材に形成した係合突部を嵌合する嵌合穴を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
中間プレートと、前記中間プレートの上面に所定間隔を開けて立設され上端に直交する一方の方向のガイド部を形成した上部ガイド部材と、前記中間プレートの下面に所定間隔を開けて立設され下端に直交する他方の方向のガイド部を形成した下部ガイド部材と、上部構造側に固定され前記上部ガイド部材のガイド部に沿って直交する一方の方向に移動可能で直交する他方の方向に移動不能に配置される上部スライド部材と、下部構造側に固定され前記下部ガイド部材のガイド面に沿って直交する他方の方向に移動可能で直交する方向に移動不能に配置される下部スライド部材と、前記上部スライド部材の下面と前記中間プレートの上面に固定される上部弾性体と、前記下部スライド部材の上面と前記中間プレートの下面に固定される下部弾性体と、を備え、前記上部弾性体と前記下部弾性体の剛性を異なるように設定し、地震時の応力による直交する一方の方向と直交する他方の方向の変位量が異なるようにすることで、簡単な構造で、弾性体の寸法を大きくすることなく、直交する一方の方向の必要性能値(許容変位量・剛性)と直交する他方の方向の必要性能値(許容変位量・剛性)を異なるように設定することが可能となる。
上部ガイド部材に上部スライド部材の上揚力を阻止する上部上揚力止め部材を配置し、下部ガイド部材に下部スライド部材の上揚力を阻止する下部上揚力止め部材を配置することで、簡単な構造で地震時構造物に付加される鉛直方向の変位に対して対応することが可能になる。
上部ガイド部材に上部上揚力止め部材に形成した係合突部を嵌合する嵌合穴を形成し、下部ガイド部材に下部上揚力止め部材に形成した係合突部を嵌合する嵌合穴を形成することで、大きな上揚力に耐えることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を図により説明する。
図1は、本発明の構造物用支承装置1を直交する一方の方向からみた側面図であり、
図2は、本発明の構造物用支承装置1を直交する他方の方向からみた側面図である。
【0013】
構造物用支承装置1は、中間プレート2を備えている。中間プレート2の上面には、所定間隔を開けて一対の上部ガイド部材3が下端部を中間プレート2に固定されて直交する一方の方向に平行に立設される。一対の上部ガイド部材3の上端には、垂直面と水平面からなり直交する一方の方向に伸びる上部ガイド部3aが形成される。上部ガイド部材3には、後述する上部上揚力止め部材11の係合突部11bが嵌合する嵌合穴3bが形成される。
【0014】
中間プレート2の下面には、所定間隔を開けて一対の下部ガイド部材4が上端部を中間プレート2に固定されて直交する他方の方向に平行に立設される。一対の下部ガイド部材4の下端には、垂直面と水平面からなり直交する他方の方向に伸びる下部ガイド部4aが形成される。下部ガイド部材4には、後述する下部上揚力止め部材13の係合突部13bが嵌合する嵌合穴4bが形成される。
【0015】
上部ガイド部材3の上端に形成された垂直面と水平面からなる直交する一方の方向(X方向)に伸びる上部ガイド部3aに、上部スライド部材5が直交する一方の方向にスライド可能に、直交する他方の方向(Y方向)への移動を阻止されて係合する。上部スライド部材5は上部工6に固定される。
【0016】
下部ガイド部材4の下端に形成された垂直面と水平面からなる直交する他方の方向(Y方向)に伸びる下部ガイド部4aに、下部スライド部材7が直交する他方の方向にスライド可能に、直交する一方の方向(X方向)への移動を阻止されて係合する。下部スライド部材7は下部工8に固定される。
【0017】
図1、
図2は、各部材を組み込んだ構造物支承装置1のX方向から見た側面図とY方向からみた側面図である。構造物支承装置1を組み立てるには、中間プレート2の上下面に上部弾性体9と下部弾性体10を配置し、上部弾性体9の上面に上部スライド部材5、下部弾性体8の下面に下部スライド部材7を配置し、加硫成形により一体化する。
【0018】
上部ガイド3に、上部上揚力止め部材11の係合突部11bが嵌合穴3bに嵌合し、上部上揚力止め部材11は固定ボルト12により固定される。上部上揚力止め部材11には、上部スライド部材5の上面と係合する上部上揚力止め部11aが形成される。上部上揚力止め部材11は、係合突部11bの嵌合穴3bへの嵌合と固定ボルト12の固定により大きな上揚力に耐えることが可能になる。
【0019】
下部ガイド4に、下部上揚力止め部材13の係合突起13bが嵌合穴4bに嵌合し、下部上揚力止め部材13が固定ボルト12により固定される。下部上揚力止め部材13には、下部スライド部材7の下面と係合する下部上揚力止め部13aが形成される。下部上揚力止め部材13は、係合突部13bの嵌合穴4bへの嵌合と固定ボルト12の固定により大きな上揚力に耐えることが可能になる。
【0020】
図5に示すように、地震時の相対変位に対して、上部スライド部材2は、Y方向の変位をX方向に伸びる垂直面と水平面からなる上部ガイド部3aの垂直面によりY方向の変位が阻止され、X方向に変位し地震エネルギーを吸収する。鉛直方向の変位に対しては、上部上揚力止め部材11の上部上揚力止め部11aが上部スライド部材2の上面と係合して阻止する。
【0021】
図6に示すように、地震時の相対変位に対して、下部スライド部材7は、X方向の変位をY方向に伸びる垂直面と水平面からなる下部ガイド部7aの垂直面によりX方向の変位が阻止され、Y方向に変位し地震エネルギーを吸収する。鉛直方向の変位に対しては、下部上揚力止め部材13の下部上揚力止め部13aが下部スライド部材7の下面と係合して阻止する。
【0022】
構造物の種別において、X方向の必要性能(許容変位量・剛性)とY方向の必要性能(許容変位量・剛性)が異なるように設定される場合がある。X方向の変位量をY方向の変位量より小さくしたい場合、上部弾性体9の体積を下部弾性体10の体積より大きくする方法がある。しかし、この方法では、弾性体の寸法が大きくなり支承装置が大型化するという問題を有していた。
【0023】
本発明の構造物用支承装置1では、X方向の必要性能(許容変位量・剛性)とY方向の必要性能(許容変位量・剛性)が異なるように設定する場合、例えば、X方向の変位量をY方向の変位量より小さくしたい時には、上部弾性体9の剛性を下部弾性体10の剛性より大きくする。逆に、Y方向の変位量をX方向の変位量より小さくしたいという設定の場合、下部弾性体10の剛性を上部弾性体9の剛性より大きくする。上部弾性体9と下部弾性体10の剛性を異なるように設定するだけなので、構造が簡単で、弾性体の寸法を大きくすることなく、直交する一方の方向の必要性能値(許容変位量・剛性)と直交する他方の方向の必要性能値(許容変位量・剛性)を異なるように設定することが可能になる。
【0024】
以上のように、本発明の構造物用支承装置によれば、簡単な構造で、弾性体の寸法を大きくすることなく、直交する一方の方向の必要性能値(許容変位量・剛性)と直交する他方の方向の必要性能値(許容変位量・剛性)を異なるように設定することが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1: 構造物用支承装置、2:中間プレート、3:上部ガイド部材、3a:上部ガイド部、3b:嵌合穴、4:下部ガイド部材、4a:下部ガイド部、4b:嵌合穴、5:上部スライド部材、6:上部工、7:下部スライド部材、8:下部工、9:上部弾性体、10:下部弾性体、11:上部上揚力止め部材、11a:上部上揚力止め部、11b:係合突部、12:固定ボルト、13:下部上揚力止め部材、13a:下部上揚力止め部、13b:係合突部