特許第6757657号(P6757657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757657
(24)【登録日】2020年9月2日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】ベルトコンベア装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 23/44 20060101AFI20200910BHJP
   B65G 15/32 20060101ALN20200910BHJP
【FI】
   B65G23/44
   !B65G15/32
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-238682(P2016-238682)
(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公開番号】特開2018-95334(P2018-95334A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】八巻 正人
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−297038(JP,A)
【文献】 特開昭63−247208(JP,A)
【文献】 特開平08−225131(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0046566(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 23/44
B65G 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のベルト部材を連結して構成され、搬送物を載せて循環するコンベア部と、当該コンベア部を駆動させる駆動部と、を備えたベルトコンベア装置において、
前記コンベア部に載置して自重により鉛直下方に前記コンベア部を付勢する重り部材を備え
前記重り部材が前記コンベア部の幅に亘って載置してあり、前記重り部材の両端部を保持する一対の保持部を備え、
円柱状に形成した前記重り部材が、内部に樹脂部と軸芯部を備え、前記重り部材の両端部は少なくとも前記軸芯部が前記重り部材の長さ方向に突出する突出部を備え、それぞれの前記保持部が前記突出部を挟持するように二本の棒状部材を備え、
前記保持部の上部に、前記重り部材の両端部を載置可能なブラケット部材を備えたベルトコンベア装置。
【請求項2】
前記コンベア部の少なくとも一部がハウジング内に備えられ、前記搬送物が前記ハウジングの入口開口から侵入して出口開口に搬出されるとき、前記重り部材は前記出口開口側の駆動部のガイドローラの近傍に備えてある請求項1に記載のベルトコンベア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を載せて循環するコンベア部と、当該ベルトコンベアを駆動させる駆動部と、を備えたベルトコンベア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、閉空間内に上下方向に配置された螺旋状搬送ベルトで食品を搬送しながら該食品の処理を行う食品搬送用のコンベア装置が記載してある。
【0003】
具体的には、冷凍庫の内部にコンベア装置が設けられ、入口開口から冷凍庫の内部に進入する入口路と、冷凍庫の外部に延設された出口路と、出口路の端でガイドスプロケットによって反転し、その後ガイドローラで再反転して入口路に連なるリターン路とから構成されている。
【0004】
ガイドスプロケットには駆動モータが設けられ、出口開口が形成された冷凍庫の側壁の外側に搬送ベルトの張力調整機構が設けてある。当該張力調整機構には、リターン路に面して、一対のガイドスプロケットと、テンションローラとが設けてある。テンションローラは、テンションウエイトによって上下方向に移動可能に設けられ、テンションローラの移動によって搬送ベルトの張力を調整でき、これにより、搬送ベルトの弛みを防止していた。また、テンションローラの出口側部位にリターン路の張力を検出する張力検出センサが設けてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/103886号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベルトコンベアは、材質により、周囲環境の温度の変化を受けて伸びが生じる虞があり、この場合、ベルトコンベアが弛んで空回りするという問題があった。
【0007】
特許文献1に記載のコンベア装置に設けられた張力調整機構は、一対のガイドスプロケット、テンションローラ、テンションウエイトおよび張力検出センサによって構成してある。そのため、張力調整機構の構造が複雑になり、コンベア装置の製造が煩雑になっていた。
【0008】
従って、本発明の目的は、簡便な構成でベルトコンベアの弛みを防止できるベルトコンベア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るベルトコンベア装置は、樹脂製のベルト部材を連結して構成され、搬送物を載せて循環するコンベア部と、当該コンベア部を駆動させる駆動部と、を備えたベルトコンベア装置であって、その第一特徴構成は、前記コンベア部に載置して自重により鉛直下方に前記コンベア部を付勢する重り部材を備え、前記重り部材が前記コンベア部の幅に亘って載置してあり、前記重り部材の両端部を保持する一対の保持部を備え、円柱状に形成した前記重り部材が、内部に樹脂部と軸芯部を備え、前記重り部材の両端部は少なくとも前記軸芯部が前記重り部材の長さ方向に突出する突出部を備え、それぞれの前記保持部が前記突出部を挟持するように二本の棒状部材を備え、前記保持部の上部に、前記重り部材の両端部を載置可能なブラケット部材を備えた点にある。
【0010】
本構成によれば、重り部材が自重により鉛直下方にコンベア部を付勢するため、常に、コンベア部に張りを持たせる状態とすることができる。即ち、特に樹脂製のコンベア部は、周囲環境の温度の変化を受けて伸びが生じる虞があるが、仮に当該コンベア部に伸びが生じた場合であっても、当該重り部材によって、コンベア部に張りを持たせる状態とすることができるため、簡便な構成でコンベア部の弛みを解消することができる。そのため、コンベア部が弛んでコンベア部が空回りするのを未然に防止することができる。
また、本構成によれば、重り部材の両端部を保持する一対の保持部を備えることにより、重り部材の位置を固定することができるため、仮に当該コンベア部に伸びが生じた場合であっても、重り部材がコンベア部の上を転がって移動するのを未然に防止することができる。
また、本構成によれば、突出部は、二本の棒状部材の間で自在に鉛直方向に移動することができる。即ち、コンベア部の弛みの程度によって突出部は、二本の棒状部材の間で自在に上下に移動することができるため、重り部材は常にコンベア部を適切な押圧力で付勢することができる。
さらに、本構成によれば、コンベア部の交換などベルトコンベア装置のメンテナンス時などにおいて重り部材を使用しない場合に、重り部材の両端部をブラケット部材にそれぞれ載置することができ、ベルトコンベア装置のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0013】
本発明に係るベルトコンベア装置の第二特徴構成は、前記コンベア部の少なくとも一部がハウジング内に備えられ、前記搬送物が前記ハウジングの入口開口から侵入して出口開口に搬出されるとき、前記重り部材は前記出口開口側の駆動部のガイドローラの近傍に備えた点にある。
【0014】
本構成によれば、例えばパストライザ装置においては、出口開口の側に搬送物を冷却する冷却ゾーンが形成されている場合がある。この場合、入口開口における搬送物の温度と、出口開口における搬送物の温度とにおける温度差が大きくなるため、出口開口側でコンベア部の伸び(弛み)が生じやすい場合がある。本構成のように、重り部材を出口開口側の駆動部のガイドローラの近傍に備えると、このような場合におけるコンベア部の弛みを重り部材によって直ちに解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のベルトコンベア装置の概要を示す断面図である。
図2】ベルトコンベア装置の上面視の要部概略図である。
図3】ブラケット部材(載置不可能状態)の概略図である。
図4】ブラケット部材(載置可能状態)の概略図である。
図5】重り部材をブラケット部材に載置したときの要部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜5に、本発明のベルトコンベア装置Xの概要を示す。当該ベルトコンベア装置Xは、樹脂製のベルト部材1を連結して構成され、搬送物Aを載せて循環するコンベア部10と、当該コンベア部10を駆動させる駆動部20と、を備えており、コンベア部10に載置して自重により鉛直下方にコンベア部10を付勢する重り部材30を備える。
【0021】
重り部材30は、例えばコンベア部10の幅と同等或いはそれ以下の寸法等を設定することができる。重り部材30をコンベア部10の幅以下の寸法とする場合は、例えばコンベア部10の幅の大半をカバーするような寸法とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
本実施形態では、重り部材10がコンベア部10の幅に亘って載置してあり、当該重り部材30の両端部を保持する一対の保持部40を備える場合について説明する。
【0023】
また、本実施形態では、当該ベルトコンベア装置Xをパストライザ装置Yにて使用する場合について説明するが、これに限定されるものではない。
【0024】
パストライザ装置Yは、飲料(充填品)が充填されて密封された容器(搬送物A)に、大気圧下で熱水を連続的に散布することにより加熱殺菌を行う装置である。例えば、10℃程度の低温で充填した飲料をコンベア部10で移動させながらスプレーノズル(図外)により熱水のシャワーを浴びせる。このとき、徐々に温度を上げ、例えば当該飲料が65℃に達するまでシャワーを浴びせ熱殺菌する。その後、冷却ゾーンにおいて徐々に温度を下げ、最終的には例えば飲料が40℃以下になるまで温度を下げて加熱殺菌を完了する。
【0025】
コンベア部10は、樹脂製のベルト部材1を連結して構成され、搬送物Aを載せて循環する。コンベア部10は、例えばプラスチックモジュラーチェーンなどのネットコンベア等を使用することができるが、これに限定されるものではない。ベルト部材1に使用される樹脂は特に限定されるものではないが、ポリプロピレン(PP)等を使用することができる。コンベア部10の寸法は、例えば長さ約20m、幅約7mとすることができるが、当該寸法はこれに限定されるものではない。また、コンベア部10をネットコンベアとすることで、搬送面に多数の穴を配置することができるため、搬送面に残る余分な水等を除去することが容易となり、搬送物Aに浴びせた熱水を下方で回収し易くなる。
【0026】
搬送物Aは、例えば飲料(充填品)が充填されて密封された容器であり、当該容器はペットボトルや瓶等が使用できる。
【0027】
本発明のベルトコンベア装置Xは、コンベア部10の少なくとも一部がパストライザ装置Yのハウジング50内に備えてある。当該ハウジング50には、搬送物Aをパストライザ装置Yの内部に搬入するための入口開口51が設けてあり、搬送物Aをパストライザ装置Yの外部に搬出するための出口開口52が設けてある。
【0028】
本実施形態では、搬送物Aがハウジング50の入口開口51から侵入して出口開口52に搬出されるとき、重り部材30は出口開口52側の駆動部20のガイドローラ21aの近傍に備えてある場合について説明するが、当該重り部材30の設置位置はこれに限定されるものではない。駆動部20は、出口開口52側に設けられたガイドローラ21aと、ガイドローラ21aに設けられた駆動モータ22と、入口開口51側に設けられたガイドローラ21bとを備える。
【0029】
尚、コンベア部10は、入口開口51からハウジング50の内部に進入する入口路11と、ハウジング50の外部に延設された出口路12と、出口路12の端でガイドスプロケット(ガイドローラ21a)によって反転し、その後ガイドローラ(ガイドローラ21b)で再反転して入口路11に連なるリターン路13と、から構成されている。即ち、本実施形態における重り部材30は、リターン路13における駆動部20のガイドローラ21aの近傍に備えてある。また、リターン路13には、重り部材30の下流側にガイドローラ21cを備えてもよい。
【0030】
パストライザ装置Yにおいては、出口開口52の側に搬送物Aを冷却する冷却ゾーンが形成されている場合がある。この場合、入口開口51における搬送物Aの温度と、出口開口52における搬送物Aの温度とにおける温度差が大きくなるため、出口開口52側でコンベア部10の伸び(弛み)が生じやすい場合がある。本構成のように、重り部材30を出口開口52側の駆動部20のガイドローラ21aの近傍に備えると、このような場合におけるコンベア部10の弛みを重り部材30によって直ちに解消することができる。
【0031】
重り部材30は、コンベア部10の幅に亘ってコンベア部10に載置し、自重により鉛直下方にコンベア部10を付勢する。本実施形態では、重り部材30は、コンベア部10の幅(約7m)と同等の長さを有する場合について説明するが、これに限定されるものではない。重り部材30は、金属製、特にステンレス製とするのがよいが、パストライザ装置Yの内部において腐食し難い材質であればこれに限定されるものではない。
コンベア部10のサイズが上述した大きさ(長さ約20m、幅約7m)の場合、重り部材30は3〜5kg程度とするのがよい。
【0032】
本実施形態の重り部材30は円柱状に形成してあり、内部に樹脂部31と軸芯部32を備え、重り部材30の両端部は少なくとも軸芯部32が重り部材30の長さ方向に突出する突出部30A,30Bを備える場合について説明するが、これに限定されるものではない。本実施形態では、突出部30A,30Bにおいて、軸芯部32が樹脂部31に覆われた状態である場合について説明する。
【0033】
保持部40は、当該重り部材30の両端部(突出部30A,30B)を保持する一対の保持部40A,40Bを備える。それぞれの保持部40A,40Bは、突出部30A,30Bを挟持するように二本の棒状部材41を備えてある。即ち、保持部40Aでは、二本の棒状部材41Aを備え、保持部40Bでは、二本の棒状部材41Bを備える。
【0034】
本構成のように、例えば保持部40Aが突出部30Aを挟持するように二本の棒状部材41Aを備えてあると、突出部30Aは、二本の棒状部材41Aの間で自在に鉛直方向に移動することができる。即ち、コンベア部10の弛みの程度によって突出部30Aは、二本の棒状部材41Aの間で自在に上下に移動することができるため、重り部材30は常にコンベア部10を適切な押圧力で付勢することができる。
【0035】
上述したように、コンベア部10の幅に亘ってコンベア部10に載置し、自重により鉛直下方にコンベア部10を付勢する重り部材30を備え、当該重り部材30の両端部を保持する一対の保持部40を備えることにより、常に、コンベア部10に張りを持たせる状態とすることができる。即ち、特に樹脂製のコンベア部10は、周囲環境の温度の変化を受けて伸びが生じる虞があるが、仮に当該コンベア部10に伸びが生じた場合であっても、自重により鉛直下方にコンベア部10を付勢する重り部材30によって、コンベア部10に張りを持たせる状態とすることができるため、コンベア部10の弛みを解消することができる。そのため、コンベア部10が弛んでコンベア部10が空回りするのを未然に防止することができる。
【0036】
また、重り部材30の両端部を保持する一対の保持部40を備えることにより、重り部材30の位置を固定することができるため、仮に当該コンベア部10に伸びが生じた場合であっても、重り部材30がコンベア部10の上を転がって移動するのを未然に防止することができる。
【0037】
保持部40(40A,40B)の上部には、重り部材30の両端部(突出部30A,30B)を載置可能なブラケット部材60(60A,60B)をそれそれ備えてもよい。このとき、ブラケット部材60には両端部を載置する載置面61を備える。
【0038】
即ち、保持部40Aに備えたブラケット部材60Aには突出部30Aを載置し、保持部40Bに備えたブラケット部材60Bには突出部30Bを載置することができる(図5)。また、ブラケット部材60Aには突出部30Aを載置する載置面61aを有し、ブラケット部材60Bには突出部30Bを載置する載置面61bを有する。
【0039】
本構成のように保持部40の上部に、重り部材30の両端部を載置可能なブラケット部材60を備えると、コンベア部10の交換などベルトコンベア装置のメンテナンス時などにおいて重り部材30を使用しない場合に、重り部材30の両端部をブラケット部材60にそれぞれ載置することができ、ベルトコンベア装置のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0040】
また、保持部40の上部にブラケット部材60を備えてあると、重り部材30が二本の棒状部材41の間で自在に上下に移動する際に、重り部材30が保持部40から外れるのを未然に防止することができる。
【0041】
本実施形態のブラケット部材60は、断面がコの字状となるように構成してある場合について説明する。この場合、載置面61の対面には、ブラケット部材60を保持部40の棒状部材41にボルト等で固定可能な固定部62を備える。
【0042】
本実施形態では、ブラケット部材60が重り部材30の両端部を載置できる載置可能状態と、両端部を載置できない載置不可能状態とを有するように構成する場合について説明する。
【0043】
即ち、図1,3には載置不可能状態の場合を示しており、載置面61が固定部62の上方に位置する場合を示す。一方、図4,5には載置可能状態の場合を示しており、載置面61が固定部62の下方に位置する場合を示す。
【0044】
即ち、載置不可能状態は、載置面61が固定部62の上方に位置して載置面61が下方を向くように棒状部材41に固定しているため、重り部材30の両端部を載置できない状態となっている。一方、載置可能状態は、載置面61が固定部62の下方に位置して載置面61が上方を向くように棒状部材41に固定しているため、重り部材30の両端部を載置できる状態となっている。
【0045】
載置不可能状態から載置可能状態への変更は、棒状部材41に固定したボルトをはずしてブラケット部材60の固定状態を上述した状態となるようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、搬送物を載せて循環するコンベア部と、当該ベルトコンベアを駆動させる駆動部と、を備えたベルトコンベア装置に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
X ベルトコンベア装置
A 搬送物
1 ベルト部材
10 コンベア部
20 駆動部
21a ガイドローラ
30 重り部材
30A,30B 突出部
31 樹脂部
32 軸芯部
40 保持部
41 棒状部材
50 ハウジング
51 入口開口
52 出口開口
60 ブラケット部材
図1
図2
図3
図4
図5