特許第6757686号(P6757686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757686
(24)【登録日】2020年9月2日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/0638 20060101AFI20200910BHJP
   F16D 13/52 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   F16D25/0638 100
   F16D13/52 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-44103(P2017-44103)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-146081(P2018-146081A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】酒井 秀彰
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−110963(JP,A)
【文献】 実開昭61−202722(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00−39/00,48/00−48/12
F16D 11/00−23/14
F16F 1/00− 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンと、
前記ピストンを軸方向に付勢する皿ばねと、
前記皿ばねの径方向内側に配置された内側部材と、
前記皿ばねの被支持部に径方向内側から当接する当接部を有し、前記皿ばねの径方向内端部が前記内側部材から径方向に離れた位置で、前記皿ばねを支持する支持部材と、
前記支持部材の前記内側部材に対する軸方向の移動を規制する規制部材と、を有し、
前記支持部材と前記規制部材とは別体で構成され、
前記支持部材は、前記当接部から径方向内側に延び、前記内側部材の外周面に接触する環状の支持部を有する、クラッチ装置。
【請求項2】
ピストンと、
前記ピストンを軸方向に付勢する皿ばねと、
前記皿ばねの径方向内側に配置された内側部材と、
前記皿ばねの被支持部に径方向内側から当接する当接部を有し、前記皿ばねの径方向内端部が前記内側部材から径方向に離れた位置で、前記皿ばねを支持する支持部材と、
前記支持部材の前記内側部材に対する軸方向の移動を規制する規制部材と、を有し、
前記皿ばねは、環状の本体部と、前記本体部の内周縁から径方向内側に向けて延びる複数の爪部と、を有し、
前記被支持部は前記本体部の内周縁である、クラッチ装置。
【請求項3】
ピストンと、
前記ピストンを軸方向に付勢する皿ばねと、
前記皿ばねの径方向内側に配置された内側部材と、
前記皿ばねの被支持部に径方向内側から当接する当接部を有し、前記皿ばねの径方向内端部が前記内側部材から径方向に離れた位置で、前記皿ばねを支持する支持部材と、
前記支持部材の前記内側部材に対する軸方向の移動を規制する規制部材と、を有し、
前記皿ばねは、複数の貫通孔が形成された環状の本体部を有し、
前記被支持部は、前記貫通孔の内面である、クラッチ装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記当接部から径方向内側に延び、前記内側部材の外周面に接触する支持部を有し、
前記当接部から前記内側部材の外周面までの径方向における距離をL1とし、前記皿ばねにおける前記被支持部から径方向内端部までの長さをL2とするとき、
L2<L1である、請求項1から3のいずれか1項に記載のクラッチ装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記当接部から径方向内側に延び、前記内側部材の外周面に接触する環状の支持部を有し、
前記当接部は、前記支持部の外周縁から軸方向に延びている、請求項2または3に記載のクラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ピストンと、ピストンを軸方向に付勢する皿ばねと、皿ばねの径方向内側に配置されたラジアルベアリング(内側部品)と、皿ばねの内側部材に対する軸方向の移動を規制するスナップリング(規制部材)と、を備えた構成が開示されている。この構成では、内側部材に対して皿ばねを径方向外側から接触させることで、皿ばねの径方向の位置を決めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5867477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の皿ばねは、ピストンが軸方向に変位する際に、皿ばねの径方向内端が径方向内側に向けて移動するように弾性変形する。このため、皿ばねの弾性変形に伴って、皿ばねの径方向内端が内側部材の外周面に強く圧接され、この外周面を削ってしまうおそれがある。
このような内側部材の削れを防止するために、例えば皿ばねの外周部で径方向の位置決めを行い、皿ばねと内側部材との接触を回避することも考えられる。しかしながら、このような構成では、設計上の制約が増して設計自由度が低くなってしまう。
あるいは、内側部材の外周面に表面処理を施して削れにくくすることで、削れを防止することも考えられる。しかしながら、このような表面処理は製造コストを増大させるだけでなく、上記した皿ばねの弾性変形がピストンの往復運動に伴って繰り返されることを考慮すると、表面処理を施しても削れへの対策が不充分となるおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、皿ばねの内側に配置された内側部材の削れを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るクラッチ装置は、ピストンと、前記ピストンを軸方向に付勢する皿ばねと、前記皿ばねの径方向内側に配置された内側部材と、前記皿ばねの被支持部に径方向内側から当接し、前記皿ばねの径方向内端部が前記内側部材から径方向に離れた位置で、前記皿ばねを支持する支持部材と、前記支持部材の前記内側部材に対する軸方向の移動を規制する規制部材と、を有する。
【0007】
上記態様に係るクラッチ装置では、支持部材が皿ばねを内側部材から径方向に離れた位置で支持する。これにより、皿ばねと内側部材との接触が回避されるため、皿ばねの弾性変形に伴って内側部材が削れてしまうのを防止することができる。また、支持部材が皿ばねの被支持部に径方向内側から当接することで皿ばねが支持されるため、例えば皿ばねの荷重特性を調整するために皿ばねの本体部の外径等の寸法を変更したとしても、皿ばねの支持構造には影響が及ばない。従って、皿ばねの寸法を容易に変更することが可能となり、設計の自由度を高めることができる。
【0008】
また、前記支持部材は、前記被支持部に径方向内側から当接する当接部と、前記当接部から径方向内側に延び、前記内側部材の外周面に接触する支持部と、を有し、前記当接部から前記内側部材の外周面までの径方向における距離をL1とし、前記皿ばねにおける前記被支持部から径方向内端部までの長さをL2とするとき、L2<L1であってもよい。
【0009】
この場合、当接部から内側部材の外周面までの径方向における距離L1の分だけ、皿ばねの被支持部から内側部材の外周面までの距離を確保することができる。そして、皿ばねにおける被支持部から径方向内端部までの長さL2がL1より小さいため、皿ばねが弾性変形することで、皿ばねの径方向内端部が最も内側部材に接近したときであっても、この径方向内端部が内側部材に接触するのを回避することができる。
【0010】
また、前記支持部は環状に形成され、前記当接部は、前記支持部の外周縁から軸方向に延びていてもよい。
【0011】
この場合、支持部材が断面視でL字形状となり、例えば板材を曲げることで支持部材を製造することが可能となる。これにより、支持部材の製造時間または製造コストを抑えることができる。
【0012】
また、前記皿ばねは、環状の本体部と、前記本体部の内周縁から径方向内側に向けて延びる複数の爪部と、を有し、前記被支持部は前記本体部の内周縁であってもよい。
【0013】
この場合、皿ばねのうち、環状の本体部の内周縁が、支持部材によって支持される。そして、この内周縁から径方向内側に向けて延びる爪部の先端部(皿ばねの径方向内端部)が、内側部材に接触するのを前述の通り回避することができる。この構成により、例えば爪部の長さ等を適宜変更することで、この皿ばねのストロークに対する荷重特性を容易に調整することが可能であり、設計の自由度を確保することができる。
【0014】
また、前記皿ばねは、複数の貫通孔が形成された環状の本体部を有し、前記被支持部は、前記貫通孔の内面であってもよい。
【0015】
この場合、本体部の貫通孔における内面に支持部材が当接することで、皿ばねが支持されるため、例えばこの本体部の内周縁を支持部材などの相手部品に当接させて、皿ばねによる弾性復元力を発生させることができる。これにより、例えば本体部の内周縁から突出する爪部を相手部品に当接させる場合と比較して、皿ばねのうち、弾性変形して弾性復元力を生じさせる本体部が占める割合を大きくして、大きな弾性復元力を生じさせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様によれば、皿ばねの内側に配置された内側部材の削れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態のクラッチ装置の概略図である。
図2図1の皿ばねおよび支持部材の説明図であり、(a)は両部材の斜視図であり、(b)は異なる角度から見た両部材の斜視図である。
図3】第2実施形態のクラッチ装置の概略図である。
図4図3の皿ばねおよび支持部材の説明図であり、(a)は両部材の斜視図であり、(b)は異なる角度から見た両部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係るクラッチ装置の構成を、図1図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため縮尺を適宜変更している。また、不図示の構成は従来と同様であるため省略している。
クラッチ装置30は、図1に示されるように、ウェーブスプリング1と、皿ばね10と、ケース体(クラッチドラム)31と、筒状のピストン34と、摩擦機構36と、クラッチハブ37と、スナップリング38(規制部材)と、を備えている。皿ばね10は、このクラッチ装置30のリターンスプリングとして用いられている。
【0019】
ウェーブスプリング1、皿ばね10、ピストン34、摩擦機構36、クラッチハブ37、およびスナップリング38の各中心軸は、共通の軸(以下、単に共通軸という)上に配置されている。ここで本実施形態では、共通軸に沿う方向(図1のX軸方向)を単に軸方向という。また、ピストン34は軸方向に沿う有底筒状に形成されている。以下、軸方向に沿うピストン34の開放端部34d側を単に+X側といい、その反対側を−X側という。
また、軸方向から見た平面視において、共通軸に直交する方向を径方向といい、共通軸回りに周回する方向を周方向という。
【0020】
ケース体31は、例えばアルミニウム合金などで形成されている。ケース体31は、ウェーブスプリング1、皿ばね10、ピストン34、摩擦機構36、およびクラッチハブ37を内部に収容している。ケース体31には、軸方向に延びる円筒状の支持突部(内側部材)31bが形成されている。
なお、支持突部31bは軸方向に延びる円柱状であってもよい。また、ケース体31に固定された、ケース体31と別体の内側部材を、支持突部31bの代わりに用いてもよい。
【0021】
ピストン34は、ケース体31の支持突部31bに対して軸方向に往復移動する。ピストン34の底壁部34aには、共通軸と同軸に位置する貫通孔34bが形成され、この貫通孔34bの内側に、支持突部31bが配設されている。ピストン34の周壁部34cにおける開放端部34dは、摩擦機構36に対して軸方向に対向している。
【0022】
摩擦機構36は、ピストン34の開放端部34dに、軸方向に沿うピストン34の外側(+X側)から対向して配置されている。摩擦機構36は、環状の従動プレート40と、従動プレート40より内径および外径が小さい環状の摩擦プレート39と、が軸方向に交互に配置されて構成されている。従動プレート40および摩擦プレート39は、共通軸と同軸に配置されている。従動プレート40の外周面には、径方向の外側に向けて突出する外規制突片40aが形成されている。摩擦プレート39の内周面には、径方向の内側に向けて突出する内規制突片39aが形成されている。
【0023】
従動プレート40の外規制突片40a、およびウェーブスプリング1の後述する規制突片14は、ケース体31の内面に形成された窪み部31aに係合されている。
窪み部31aは、軸方向に延びるとともに、径方向の内側に向けて開口した溝状に形成されている。窪み部31aは、軸方向から見て矩形状を呈し、その4つの辺のうちの2辺は径方向に延びている。窪み部31aを画成する3つの内面31c、31dは、軸方向に真っ直ぐ延びている。窪み部31aを画成する内面31c、31dのうち、周方向で互いに対向する一対の対向面31cが、規制突片14の周端面に、周方向で対向している。
【0024】
クラッチハブ37は、摩擦機構36における径方向の内側に配置されている。クラッチハブ37の外周面には、摩擦プレート39の内規制突片39aが係合する係合凹部37aが形成されている。
【0025】
ウェーブスプリング1は、軸方向の一方側に向けて突となる山部およびその反対側に向けて突となる谷部が周方向に交互に連ねられて形成された環状体13を備えている。環状体13の外周面には、径方向外側に向けて突出する規制突片14が配設されている。ウェーブスプリング1は、ピストン34の周壁部34cにおける開放端部34dと摩擦機構36との間の軸方向の隙間に配置されている。
【0026】
皿ばね10は、環状の本体部2と、複数の爪部3と、を有している(図2(b)参照)。各爪部3は、本体部2の内周縁2aから、径方向内側に向けて突出している。各爪部3は、本体部2の内周縁2aに、周方向に等間隔を空けて複数配置されている。各爪部3は、径方向内側に向かうに従って漸次+X側に向けて延びている。皿ばね10における本体部2の外周縁は、ピストン34の底壁部34aに当接している。皿ばね10は、ピストン34を軸方向の−X側に向けて付勢している。本実施形態における爪部3の先端部3aは、皿ばね10のうち、径方向内端に位置する径方向内端部である。
【0027】
ここで、本実施形態のクラッチ装置30は、皿ばね10を支持する支持部材20を備えている。支持部材20は、軸方向において、皿ばね10とスナップリング38との間に位置している。また、スナップリング38は、支持突部31bの外周面に固定されている。皿ばね10の爪部3における先端部3aは、支持部材20の後述する支持部21に、軸方向−X側から当接している。この構成により、支持部材20および皿ばね10の軸方向+X側への移動は、スナップリング38により規制される。これら皿ばね10、支持部材20、およびスナップリング38は、ピストン34の周壁部34cの内側に配置されるとともに、支持突部31bの径方向外側に位置している。
【0028】
支持部材20は、支持突部31bに外嵌された環状の支持部21と、支持部21の外周縁から軸方向−X側に向けて延びる当接部22と、を備えている。支持部21は、共通軸と同軸上に配置されている。図2(a)に示すように、当接部22は、支持部21の外周縁に、周方向に等間隔を空けて複数形成されている。当接部22は皿ばね10の本体部2における内周縁2aに径方向内側から当接している。本実施形態における本体部2の内周縁2aは、支持部材20に支持される被支持部である。共通軸に沿う縦断面視で、本体部2が延びる方向における内周縁2aから爪部3の先端部3aまでの長さ(本体部2の内周面から爪部3の径方向内側の端面までの長さ)はL2となっている。
【0029】
支持部21は、当接部22から径方向内側に向けて延び、支持突部31bの外周面に接触している。支持部21の径方向の長さ(縦断面視における当接部22の外周面から支持部21の内周面までの長さ)はL1となっている。このため、当接部22の外周面から支持突部31bの外周面までの径方向における距離もL1となっている。また、皿ばね10における先述の長さL2は、距離L1よりも小さい。すなわち、L2<L1となっている。この構成により、支持部材20は、爪部3の先端部3a(径方向内端部)が支持突部31bから径方向に離れた位置で、皿ばね10を支持している。
【0030】
次に、以上のように構成されたクラッチ装置30の作用について説明する。
【0031】
ピストン34が図1に示す状態から軸方向の+X側に移動すると、皿ばね10およびウェーブスプリング1が弾性変形させられる。このとき、皿ばね10は、爪部3の先端部3aから本体部2の外周縁までの、軸方向における長さが小さくなるように弾性変形する。この弾性変形に伴って、爪部3の先端部3aは、支持突部31bに近づくように移動する。なお、ピストン34が摩擦機構36に当接する際に生じる衝撃力は、ウェーブスプリング1によって緩和される。
次に、皿ばね10の弾性復元力により、ピストン34は軸方向の−X側に復元変位する。このとき、皿ばね10は、爪部3の先端部3aから本体部2の外周縁までの、軸方向における長さが大きくなるように復元変形する。この復元変形に伴って、爪部3の先端部3aは、支持突部31bから遠ざかるように移動する。
【0032】
このように、ピストン34の軸方向における往復移動に伴って、爪部3の先端部3aは支持突部31bに対する接近および離間を繰り返す。このため、例えば爪部3の先端部3aを支持突部31bに当接させることで皿ばね10の径方向における位置を決めた場合には、この先端部3aが支持突部31bに繰り返し押し付けられる。これにより、支持突部31bの外周面が削れてしまう場合がある。
【0033】
しかしながら本実施形態では、爪部3の先端部3aが支持突部31bから径方向に離れた位置で、支持部材20がこの皿ばね10を支持する。これにより、皿ばね10と支持突部31bとの接触が回避されるため、皿ばね10の弾性変形に伴って支持突部31bが削れてしまうのを防止することができる。
【0034】
また、本実施形態では、径方向における支持部21の長さL1の分だけ、皿ばね10の内周縁2aから支持突部31bの外周面までの距離を確保することができる。そして、皿ばね10の内周縁2aから爪部3の先端部3aまでの長さL2がL1より小さい。この構成により、皿ばね10が弾性変形することで、爪部3の先端部3aが支持突部31bに最も接近したときであっても、この先端部3aが支持突部31bに接触するのを回避することができる。
さらに、当接部22が、環状に形成された支持部21の外周縁から軸方向に延びていることにより、支持部材20が断面視でL字形状となっている。これにより、例えば板材を曲げることで支持部材20を製造することが可能となり、支持部材20の製造時間または製造コストを抑えることができる。
【0035】
また、例えば爪部3の先端部3aを支持突部31bに当接させることで、皿ばね10の径方向の位置を決める場合には、皿ばね10を支持突部31bに組み付ける際にも、支持突部31bの外周面を削ってしまうおそれがある。さらに、組み付け時にこのような削れが生じないようにするためには、皿ばね10が支持突部31bに接触しないように組み付ける必要が生じるため、組み付け作業の効率低下につながる。
これに対して本実施形態では、支持部材20に皿ばね10を組み付けた状態で、これらの部材10、20を支持突部31bに組み付ければよいため、上記した組み付け時の削れを抑えて、組み付け作業の効率を向上させることも可能となる。
【0036】
また、例えば皿ばね10の荷重特性を調整するために、爪部3の長さや本体部2の外径等の寸法を変更したとしても、皿ばね10の支持構造には影響が及ばない。従って、これらの寸法を容易に変更することが可能となり、皿ばね10の設計の自由度を高めることができる。
【0037】
なお、ピストン34の往復運動に伴って、支持部材20の当接部22が削れることも考えられるが、その場合には支持部材20を交換すればよい。支持部材20は他の部材よりも比較的安価で交換しやすい構成とすることができるため、本実施形態によれば、クラッチ装置30のメンテナンス性も向上させることができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0039】
本実施形態の皿ばね10Aは、図4(b)に示すように、爪部を有していない。従って、皿ばね10Aの径方向内端部は、環状の本体部4の内周縁4bである。また、皿ばね10Aの本体部4には、周方向に延びる貫通孔4aが形成されている。貫通孔4aは、周方向に等間隔を空けて複数形成されている。各貫通孔4aの周方向における長さは、支持部材20の当接部22の周方向における長さより大きい。各貫通孔4aの径方向における幅は、当接部22の径方向における幅(支持部材20の厚み)よりも大きい。
【0040】
図3および図4(a)に示すように、各貫通孔4aには、支持部材20の当接部22が挿通されている。そして、貫通孔4aの径方向外側の内面に、当接部22が径方向内側から当接することで、皿ばね10Aが支持部材20によって支持される。すなわち、本実施形態における被支持部は、貫通孔4aの径方向外側の内面である。貫通孔4aにおける径方向外側の内面から、本体部4の内周縁4bまでの長さL2は、支持部材20の前述の長さL1よりも小さい。
この構成により、皿ばね10Aは、本体部4の内周縁4bが支持突部31bの外周面から径方向に離れた位置で、支持部材20により支持されている。
【0041】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、本体部4の内周縁4bが支持突部31bの外周面に当接することで削れが発生するのを防止することができる。
また、本実施形態の皿ばね10Aは爪部を有しておらず、本体部4の内周縁4bが支持部材20の支持部21に当接することで、皿ばね10Aを弾性変形させている。このため、爪部3を支持部21に当接させている第1実施形態と比較して、弾性変形する本体部4の体積を確保し、皿ばね10Aの弾性復元力を大きくすることができる。
【0042】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態では、皿ばね10、支持部材20、およびスナップリング38がケース体31における支持突部31bの径方向外側に配置された構成について説明したが、これに限られない。例えば、他の形態の内側部材の径方向外側に、これらの部材10、20、38が配置されてもよい。
また、スナップリング38以外の規制部材を用いて、支持部材20等の軸方向の移動を規制してもよい。
【0044】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0045】
例えば、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせて、皿ばね10Aの本体部4の内周縁から、径方向内側に向けて爪部が突出する形態を採用してもよい。この場合、この爪部の先端が、皿ばね10Aの径方向内端部に相当する。
【符号の説明】
【0046】
2、4…本体部 2a…内周縁(被支持部) 3…爪部 3a…先端部(径方向内端部) 4a…貫通孔(被支持部) 4b…内周縁(径方向内端部) 10、10A…皿ばね 20…支持部材 21…支持部 22…当接部 30…クラッチ装置 31b…支持突部(内側部材) 34…ピストン 38…スナップリング(規制部材)
図1
図2
図3
図4