特許第6757731号(P6757731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6757731-眼用デバイス適用剤 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757731
(24)【登録日】2020年9月2日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】眼用デバイス適用剤
(51)【国際特許分類】
   G02C 13/00 20060101AFI20200910BHJP
   A61K 31/726 20060101ALI20200910BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20200910BHJP
   A61K 31/216 20060101ALI20200910BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20200910BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20200910BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20200910BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   G02C13/00
   A61K31/726
   A61K31/728
   A61K31/216
   A61K47/54
   A61K9/08
   A61P27/02
   A61P27/04
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-535569(P2017-535569)
(86)(22)【出願日】2016年8月19日
(86)【国際出願番号】JP2016074203
(87)【国際公開番号】WO2017030184
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2019年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-162578(P2015-162578)
(32)【優先日】2015年8月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195524
【氏名又は名称】生化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】新井 圭一郎
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−511423(JP,A)
【文献】 特表2004−521682(JP,A)
【文献】 特開2002−249501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 13/00
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 27/02−27/14
A61L 12/00−12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
桂皮酸誘導体を含有する、眼用デバイス適用剤であって、
前記桂皮酸誘導体は、桂皮酸3−アミノプロピルエステルと共有結合したヒアルロン酸であり、
前記眼用デバイスはコンタクトレンズであり、
浸漬剤、又は保存剤である、眼用デバイス適用剤
【請求項2】
請求項に記載の眼用デバイス適用剤に浸漬されたコンタクトレンズと、当該コンタクトレンズを内包する容器と、を備える眼用デバイス格納体
【請求項3】
請求項1に記載の眼用デバイス適用剤にコンタクトレンズを浸漬することを含む、眼用デバイスの保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼用デバイス適用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
眼用デバイスであるコンタクトレンズは、角膜とコンタクトレンズとの距離がゼロに近いという特徴により、眼鏡に比べ像のゆがみや大きさの変化が少ない。コンタクトレンズは機能面において眼鏡より優れた点が多い。しかし、直接角膜に接触するため、装用に伴う眼の負担が大きい。特にソフトコンタクトレンズでは、バンデージ効果(傷を覆い隠してしまう・痛みがすぐ出ない)があり、角膜障害が悪化するまで気づかないことがある。また、コンタクトレンズ、特に新品のコンタクトレンズを最初に目に入れるときは、装用者が眼の中に異物があると気づき、不快感を覚える場合がある。
【0003】
また、眼瞼縁近傍の眼瞼結膜において、瞼板下溝から皮膚粘膜移行部までの間に、瞬目時に眼表面との間で摩擦を生じうる「lid-wiper」と名づけられた部位がある。そして、この部位に生じた上皮障害は、「lid-wiper epitheliopathy(LWE)」と呼ばれる。LWEは、ドライアイ症状を有するソフトコンタクトレンズ装用眼で、それを有しないソフトコンタクトレンズ装用眼に比べて高頻度に見られると報告されている。したがって、lid-wiperとソフトコンタクトレンズ表面との摩擦が、ソフトレンズ装用眼のドライアイ症状に大きく関係している可能性が十分に考えられる。
一方、桂皮酸が結合したヒアルロン酸(例えば、特表2009−511423号公報参照、以下、ヒアルロン酸を「HA」という)誘導体が眼等の粘膜に適用できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−511423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、眼用デバイスに適用することにより、眼表面における症状を改善又は眼表面の障害を予防することができる、眼用デバイス適用剤及び該眼用デバイス適用剤で被覆された眼用デバイスの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、桂皮酸誘導体、特にグリコサミノグリカン(例えば、HA)とアミノ基を有する桂皮酸エステルとが共有結合してなる化合物を含有する組成物で、眼表面に接触する眼用デバイスを被覆することにより、該眼用デバイスが眼表面における症状を改善する効果及び眼表面の障害を予防する効果を発揮することを見出し、本発明に至った。
本発明は以下の態様を包含する。
<1>桂皮酸誘導体を含有する、眼用デバイス適用剤。
<2>桂皮酸誘導体が、アミノ基を有する桂皮酸エステルとグリコサミノグリカンとが共有結合してなる化合物である、<1>に記載の眼用デバイス適用剤。
<3>眼用デバイスが、眼表面に適用されるものである、<1>又は<2>に記載の眼用デバイス適用剤
<4>浸漬剤、被覆剤、保存剤及び紫外線透過抑制剤の少なくとも1種である、<1>〜<3>のいずれかに記載の眼用デバイス適用剤。
<5>眼用デバイスと、眼用デバイスを被覆する<1>〜<4>のいずれかに記載の眼用デバイス適用剤と、を備える被覆眼用デバイス。
<6><5>に記載の被覆眼用デバイスからなる、眼表面疾患の処置デバイス。
<7>眼用デバイス適用剤の製造のための、桂皮酸誘導体の使用。
<8>眼表面疾患の処置デバイスの製造のための、桂皮酸誘導体の使用。
<9><5>に記載のデバイスを眼表面に装着することを含む、眼表面疾患の処置方法。
<10><1>〜<4>のいずれかに記載の眼用デバイス適用剤に浸漬された少なくとも1つの眼用デバイスと、眼用デバイスを内包する容器と、を備える眼用デバイス格納体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、眼用デバイスに適用することにより、眼表面における症状を改善又は眼表面の障害を予防することができる、眼用デバイス適用剤、該眼用デバイス適用剤で被覆された眼用デバイス、眼表面疾患の処置デバイス等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る眼用デバイス適用剤をモデル動物の眼に1日1回投与した場合のフルオレセイン染色の程度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本明細書において組成物中の各成分の含有量は、当該成分に属する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0010】
(1)眼用デバイス適用剤
眼用デバイス適用剤は、桂皮酸誘導体を含有する。
【0011】
(1−1)桂皮酸誘導体
眼用デバイス適用剤に含まれる桂皮酸誘導体は、化合物の構造の一部に桂皮酸に由来する構造を有している化合物であれば特に限定されない。桂皮酸誘導体としては例えば、桂皮酸のカルボキシ基がエステル結合又はアミド結合を形成して置換基を有している誘導体、桂皮酸のフェニル基が1〜5つの置換基で置換されている誘導体及びカルボキシ基とフェニル基の両方に置換基を有している誘導体が挙げられる。これらの誘導体の中では、桂皮酸のカルボキシ基がエステル結合を形成して置換基を有している桂皮酸エステルが好ましく、さらに、アミノ基を有する桂皮酸エステルとグリコサミノグリカン(以下、GAGと略記する)とが共有結合してなる誘導体が特に好ましい。「アミノ基を有する桂皮酸エステル」としては、例えば、桂皮酸アミノアルキルエステル、桂皮酸アミノアルケニルエステル、桂皮酸アミノアルキニルエステル等を挙げることができる。
【0012】
なお、上記「桂皮酸アミノアルキルエステル」の「アルキル」部分は直鎖に限定されず、「アルキル」部分を構成するメチレン基が、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。同様に、「桂皮酸アミノアルケニルエステル」及び「桂皮酸アミノアルキニルエステル」の「アルケニル」部分及び「アルキニル」部分も直鎖に限定されず、同様の置換基を有していてもよい。
【0013】
ここで、「桂皮酸アミノアルキルエステル」の「アルキル」部分の主鎖の炭素数としては、例えば、1〜18、1〜12、1〜6、2〜3が挙げられるが、2〜3であることが好ましい。また、「桂皮酸アミノアルケニルエステル」及び「桂皮酸アミノアルキニルエステル」の「アルケニル」及び「アルキニル」の主鎖の炭素数としては、例えば、2〜18、2〜12、2〜6、2〜3が挙げられるが、2〜3であることが好ましい。
【0014】
具体的に「桂皮酸アミノアルキルエステル」としては、桂皮酸アミノエチルエステル、桂皮酸アミノプロピルエステル等を挙げることができる。なかでも桂皮酸2−アミノエチルエステル及び桂皮酸3−アミノプロピルエステルの少なくとも一方が好ましく、特に桂皮酸3−アミノプロピルエステルが好ましい。
以下の説明を含め、本明細書における「アミノ基を有する桂皮酸エステル」の語は、これらの具体的な、ないし好ましい桂皮酸エステルを包含し、これに置換できることは、容易に理解されることであろう。
【0015】
このような「アミノ基を有する桂皮酸エステル」が共有結合するGAGは、アミノ糖とウロン酸(又はガラクトース)からなる二糖の繰り返し構造を有する酸性多糖である。このようなGAGの例としては、HA、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸等が挙げられるが、中でもHAが好ましい。HAは、N−アセチル−D−グルコサミンとD−グルクロン酸とがβ1,3結合で結合してなる二糖単位を構成単位とし、当該二糖単位がβ1,4結合により繰り返し結合することにより構成されている限りにおいて特に限定されない。またGAGは、塩を形成しない遊離状態であっても、薬学的に許容されうる塩を形成していても構わない。
【0016】
GAGの薬学的に許容されうる塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属イオン塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属イオン塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩、ジエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、アミノ酸等の有機塩基との塩が例示される。例えばHAの薬学的に許容されうる塩としては、アルカリ金属イオン塩がより好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0017】
GAGは、その種類に応じ、公知の方法で製造することができる。このような方法として、例えば、動物由来原料からの抽出精製、GAG産生菌等からの培養精製、糖鎖修飾、糖鎖合成などを挙げることがきる。
具体的には、HAであれば、鶏冠、臍帯、軟骨、皮膚など生体の一部から抽出し得られる天然物由来のもの、化学合成されたもの、微生物の培養又は遺伝子工学的手法により生産させたものの何れでも構わない。なお眼用デバイス適用剤は既存の眼用デバイスに適用され、そのデバイスは眼表面に接触するため、医薬として混入が許されない物質を実質的に含まないような高純度のものが好ましい。
【0018】
GAGの重量平均分子量は特に限定されないが、例えばHAであれば、1万〜500万が挙げられる。好ましくは20万〜300万であり、より好ましくは50万〜250万が例示される。なおHAの重量平均分子量は、極限粘度法で測定することができる。また、例えばコンドロイチン又はコンドロイチン硫酸であれば、1万〜20万であることが好ましく、1万〜6万であることがさらに好ましい。コンドロイチン及びコンドロイチン硫酸の重量平均分子量はサイズ排除クロマトグラフィー、又は光散乱法で測定することができる。
【0019】
アミノ基を有する桂皮酸エステルとGAGとが共有結合してなる化合物は、このようなGAGと、アミノ基を有する桂皮酸エステルとを共有結合させることにより得ることができる。この共有結合の様式も限定されないが、桂皮酸エステルのアミノ基とGAGのカルボキシ基とがアミド結合している様式のものが好ましい。以下、桂皮酸エステルとHAとがアミド結合してなる桂皮酸誘導体(以下、「HA‐桂皮酸誘導体」という)を例として挙げ、説明する。
【0020】
HA−桂皮酸誘導体において、HAが有するカルボキシ基のすべてが、アミノ基を有する桂皮酸エステルとアミド結合している必要はなく、カルボキシ基の少なくとも一部がアミド結合していればよい。以下、GAGに存在する全カルボキシ基のうち、アミド結合を形成している割合を「導入率」(DS)という。DSは、HAの構成二糖単位当たりのアミノ基を有する桂皮酸エステル残基の導入の割合(%)で計算され、例えば、構成二糖単位当たり1個のアミノ基を有する桂皮酸エステル残基が導入されたHA誘導体、及び、200糖(構成二糖単位として100個)当たり1個のアミノ基を有する桂皮酸エステル残基が導入されたHA誘導体のDSは、各々、100%及び1%である。
HA−桂皮酸誘導体における好ましいDSは、3〜50%、好ましくは3〜30%、より好ましくは10〜20%を、さらに好ましくは12〜18%を例示することができる。
【0021】
HA−桂皮酸誘導体は、例えば、桂皮酸アミノアルキルエステルを構成するアミノアルカノール(例えば、アミノエタノール(2−アミノエタノールなど)や、アミノプロパノール(3−アミノプロパノールなど))由来のアミノ基を、HAのカルボキシ基とアミド結合させることにより製造することができる。
【0022】
かかる桂皮酸アミノアルキルエステルは、桂皮酸のカルボキシ基とアミノアルカノールの水酸基とがエステル結合を形成しているエステル化合物である。なお上述のとおり桂皮酸アミノアルキルエステルを構成する桂皮酸は、フェニル基が1〜5つの置換基で置換されている置換桂皮酸でも構わない。
HA−桂皮酸誘導体の好ましい構造として、以下の一般式(I)で示すことができる。
[Ar−CH=CH−COO−(CH-NH−]−HA’ (I)
(式中、Arは置換基を有してもよいフェニル基を示し、nは2又は3を示し、HA’はHAのカルボキシ残基を示し、mはHAの全カルボキシ基に対するアミド化された割合を示し、mは全カルボキシ基の3〜50%である。)
【0023】
HA−桂皮酸誘導体は、例えば、特開2002−249501号公報、国際公開第2008/069348号などに記載されている方法に準じて製造することができる。具体的には、桂皮酸アミノアルキルエステルとHAとをアミド結合により化学的に結合させうる方法であれば特に限定されない。例えば、水溶性カルボジイミド(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI・HCl)、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド−メト−p−トルエンスルホン酸塩)等の水溶性の縮合剤を使用する方法、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等の縮合補助剤と上記の縮合剤とを使用する方法、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)等の縮合剤を用いる方法、活性エステル法、酸無水物法などが挙げられる。
【0024】
HA−桂皮酸誘導体は、予め桂皮酸とアミノアルカノール(例えば、3−アミノプロパノール。以下同じ。)を反応させて桂皮酸アミノアルキルエステル(例えば、桂皮酸3−アミノプロピルエステル。以下同じ。)を調製し、この桂皮酸アミノアルキルエステルのアミノ基とHAのカルボキシ基とをアミド結合させて調製してもよく、アミノアルカノールのアミノ基とHAのカルボキシ基とをアミド結合させてアミノアルカノールが導入されたHAを調製し、その後、桂皮酸のカルボキシ基と、前記アミノアルカノールが導入されたHAにおけるアミノアルカノール由来の水酸基とをエステル結合させて調製してもよい。
【0025】
桂皮酸誘導体は眼用デバイス適用剤や後述する眼表面疾患の処置デバイスの製造のために用いることができる。
【0026】
(1−2)眼用デバイス
眼用デバイス適用剤が適用される眼用デバイスは、眼科領域でもちいられる医療機器である限りにおいて特に限定されないが、眼表面に適用されるデバイスであることが好ましい。眼表面に適用されるデバイスとしては、例えば、コンタクトレンズ、強膜の圧迫子、開瞼器、レンズフック及び剪刃等が例示できる。中でもコンタクトレンズに適用することが好ましい。また適応されるコンタクトレンズの種類についても特に限定されず用いることができる。例えば、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、使い捨てコンタクトレンズ、酸素透過型コンタクトレンズ、カラーコンタクトレンズ等が挙げられる。
【0027】
(1−3)用途
眼用デバイス適用剤は、眼用デバイスに適用される限りにおいて、その用途は限定されないが、例えば、浸漬剤、被覆剤、保存剤、紫外線透過抑制剤等の用途に用いることができる。眼用デバイス適用剤を浸漬剤として用いる場合、眼用デバイスの全体を眼用デバイス適用剤に浸漬させて用いることもできるが、眼表面に接触する部分のみを眼用デバイス適用剤に浸漬させることもできる。
【0028】
例えば、コンタクトレンズの浸漬剤として用いる場合は、該コンタクトレンズの収納容器に、眼用デバイス適用剤をコンタクトレンズと共に収納する形で浸漬することもでき、コンタクトレンズ装用前に浸漬して用いることもできる。また、例えば、開瞼器の浸漬剤として用いる場合は、眼表面と接触する部分のみを使用前に浸漬させたのちに使用することもできる。
【0029】
後述する実施例からわかるとおり、眼用デバイス適用剤は、1日1回の点眼により、角膜上皮障害を改善する。したがって、眼表面に適用されるデバイスを予め眼用デバイス適用剤で浸漬させておくことにより、該眼用デバイスが眼表面に接触したときに眼表面の疾患を改善することが期待できる。
【0030】
また、後述の実施例のとおり、眼用デバイス適用剤は涙液に含まれるムチンと混ざることにより、高い粘度上昇率を示し、眼内での摩擦も低減できる。したがって、同様に該眼用デバイスが眼表面に接触したときに角膜上皮障害の予防効果も期待できる。またコンタクトレンズ装用眼におけるドライアイ症状の改善も期待できる。さらに、該眼用デバイス使用時に、眼表面に眼用デバイス適用剤が接触することにより、眼表面の乾燥を防ぐことも可能である。
【0031】
眼用デバイスを浸漬させる時間は、眼用デバイスの素材により異なる。例えば、ソフトコンタクトレンズのように、眼用デバイス自体が含水しているものであれば30分以上浸漬させる。これにより、該眼用デバイス内部にも桂皮酸誘導体が浸透し、眼表面で桂皮酸誘導体が徐放されることにより、より高い角膜上皮障害の改善効果を発揮することが期待できる。また点眼のような必要な時に点眼するといった手間も省くことも可能である。
【0032】
また、眼用デバイス適用剤を眼用デバイスの被覆剤として用いる場合、その被覆する方法は特に限定されず、眼用デバイスが眼表面に接触する部分が眼用デバイス適用剤で覆われさえすればよい。例えば、眼用デバイス適用剤を該デバイスに噴霧、滴下、塗布、カーテンコート等により被覆する又は眼用デバイス適用剤に該デバイスを浸漬させることにより被覆することができる。
【0033】
また、眼用デバイスがコンタクトレンズである場合は、コンタクトレンズ装用時に眼用デバイス適用剤を点眼することによって被覆することもできる。眼用デバイスの被覆剤として期待される効果は、上記浸漬剤と同様である。
【0034】
また、眼用デバイス適用剤を保存剤として用いる場合、その保存方法は特に限定されず、眼用デバイスが眼表面に接触する部分が、眼用デバイス適用剤で覆われている形で該眼用デバイスが保存されていればよい。
【0035】
具体的な保存液の利用方法としては後述する眼用デバイス格納体に眼用デバイスと共に格納される保存液としての利用の他、通常溶液中に保存されうる眼用デバイスの保存液として用いることができる。眼用デバイスの保存液として期待される効果は、上記浸漬剤と同様である。
【0036】
また、眼用デバイス適用剤は、桂皮酸誘導体を含有するため、320nm以下の波長の光を吸収することができる。例えば、0.1w/v%のHAに16%の導入率で桂皮酸アミノプロピルを導入した桂皮酸誘導体溶液を調製して、分光計(UV−1600、株式会社島津製作所製)により紫外線透過率を測定すると、320nm以下の波長の光を80%以上吸収できることが分かる。眼用デバイス適用剤を上記の被覆剤と同様の方法で眼用デバイスに適用することにより紫外線透過抑制剤として用いることができる。例えばコンタクトレンズを眼用デバイス適用剤で被覆すれば、装用時に眼表面に届く紫外線量を低減でき、紫外線に起因する角膜上皮障害を予防することもできる。
【0037】
眼用デバイス適用剤の形態は、眼用デバイスに適用する際に溶液の状態であればよく、桂皮酸誘導体の粉体を該眼用デバイスに適用する際に溶解して使用することもできる。
眼用デバイス適用剤のpHは、4〜9程度、又は5〜8に調製することが好ましい。pHが4以上、あるいは9以下である場合には、眼用デバイスが眼表面に接触した際の眼刺激が低減され、該眼用デバイスの素材に対する悪影響を抑制できる可能性がある。
【0038】
眼用デバイス適用剤は、桂皮酸誘導体の溶液をそのまま用いることができるが、その用途によって、また、本発明の効果を発揮できる限りにおいて、眼用デバイスの保存・洗浄液や眼科領域で用いられる添加剤を含有させてもよい。添加剤としては例えば、アラントイン、アズレンスルホン酸などの消炎剤;塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリンなどの充血除去剤;マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミンなどの抗アレルギー剤;メントールなどの清涼化剤;ポリヘキサメチレンビグアニド、塩化ベンザルコニウムなどの抗菌・殺菌・防腐剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油など界面活性剤;グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール;リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、イプシロン−アミノカプロン酸などの緩衝化剤、塩化ナトリウム、塩化カリウム、濃グリセリンなどの等張化剤、エデト酸ナトリウムなどの安定化剤;タンパク質分解酵素;脂肪分解酵素等を挙げることができ、これらから必要に応じて選択し、含有させることができる。
【0039】
眼用デバイス適用剤は後述する眼用デバイスの製造のために用いることや該眼用デバイスからなる眼表面疾患の処置デバイスの製造用途にも使用できる。
【0040】
(2)被覆眼用デバイスおよび該被覆眼用デバイスからなる眼表面疾患の処置デバイス
被覆眼用デバイスは、上記(1−2)で例示したような眼用デバイスを眼用デバイス適用剤で被覆したものである。その被覆の方法は特に限定されないが、眼用デバイス適用剤を(1−2)で例示したような眼用デバイスに噴霧、滴下、塗布、カーテンコート等により被覆するする又は眼用デバイス適用剤に該デバイスを浸漬させることにより被覆することができる。
【0041】
被覆眼用デバイスは、眼表面疾患を処置するデバイスとしても利用できる。眼表面疾患を処置する方法としては、眼表面に被覆眼用デバイスを接触させることにより行うことができ、例えばコンタクトレンズであれば、装用することにより眼表面を処置できる。
【0042】
本明細書における「眼表面に接触」とは、眼表面に触れる限りにおいてその条件や接触時間は特に限定されない。例えば、強膜の圧迫子のように術中に必要な時間接触させることもでき、コンタクトレンズのように終日眼表面に接触させることもできる。被覆眼用デバイスが、コンタクトレンズを被覆したものであれば、最初に目に入れたときの異物感、不快感も軽減できる。
本明細書における「眼表面」とは、強膜、結膜及び角膜を意味する。中でも角膜であることが好ましく、角膜上皮が特に好ましい。
本明細書における「処置」とは、疾患について施される何らかの処置であればよく、例えば、疾患の治療、改善及び進行の抑制(悪化の防止)、障害の予防が挙げられる。
本明細書における「眼表面疾患」とは、眼表面で起こる疾患その他の何らかの異常を意味し、例えば、角膜上皮欠損、角膜上皮びらん、角膜潰瘍、角膜穿孔、角結膜炎、点状表層角膜炎(SPK)等の角膜上皮障害が挙げられる。また、眼表面疾患は例えば、ドライアイ、シューグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群等の内因性疾患に伴う角膜上皮障害、又は、コンタクトレンズ装用、外傷、手術、感染性、薬剤性等の外因性疾患に伴う角膜上皮障害も包含する。
【0043】
(3)眼用デバイス格納体
眼用デバイス格納体は、容器内に少なくとも一つの眼用デバイスが眼用デバイス適用剤に浸漬されてなる。すなわち、眼用デバイス格納体は、眼用デバイス適用剤に浸漬された少なくとも1つの眼用デバイスと、眼用デバイスを内包する容器と、を備える。
【0044】
眼用デバイス格納体は、例えば以下の製造方法で製造できる。
密封可能な容器内に、少なくとも一つの眼用デバイスと共に、眼用デバイス適用剤を収納する工程と、眼用デバイス適用剤に少なくとも一つの眼用デバイスを浸漬した状態において、該容器を密封する工程と、さらに加圧滅菌する工程とを含む製造方法。
本発明の眼用デバイス格納体において「眼用デバイス」及び「眼用デバイス適用剤」の好ましい態様や条件は、上記(1)眼用デバイス適用剤及び(1−2)眼用デバイスの記載と同様である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例によって説明する。しかしながら、これにより本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0046】
[実施例1] 桂皮酸アミノアルキルエステルが共有結合したHAの調製
重量平均分子量88万(極限粘度法で測定)のHAを出発原料とし、特開2002−249501号公報の実施例2に記載の方法に準じて、桂皮酸アミノプロピルエステルが共有結合したHAを調製した。以下、この「桂皮酸アミノプロピルエステルが共有結合したHA」を「HA−3APC」と略記する。製造されたHA−3APCを、特開2002−249501号公報の実施例に記載の方法で分析した結果、HA繰返し二糖単位当たりの桂皮酸アミノプロピルエステルの導入率は15.3%であった。
【0047】
[実施例2] 点眼薬の調製
実施例1で調製したHA−3APC(被験物質)に、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)を加えて、HA−3APCの0.5w/v%、0.3w/v%及び0.1w/v%の各溶液を調製した後、0.22μmフィルターにてろ過滅菌し、これらをそれぞれ点眼薬とした。以下これらの点眼薬を、それぞれ0.5%被験物質溶液、0.3%被験物質溶液、0.1%被験物質溶液という。
【0048】
[実施例3] ドライアイ疾患モデル動物を用いた試験
(1)モデル動物の作製
7週齢のSD系雄性ラット(SPF)をジエチルエーテルで軽麻酔した後、イソフルラン吸入麻酔下で左右両側の頬部の毛を刈った。
毛を刈った部分を70%エタノール水溶液で消毒した後、耳の下方約7mmの部分を縦方向に約7mm切開し、両眼の眼窩外涙腺を摘出した。次いで切開創部分に抗菌剤(タリビット(登録商標)眼軟膏)を塗布し、創部を縫合した後、縫合部を10%ポビドンヨード液で消毒した。
【0049】
この涙腺摘出から2か月後、イソフルラン吸入麻酔下で、両眼の角膜上皮をフローレス(登録商標)試験紙(昭和薬品化工株式会社)を用いてフルオレセイン染色した。これにより、角膜上皮の欠損部分(障害部分)が、フルオレセインで染色されたこととなる。
スリットランプ(SL-D7、TOPCON CORPORATION社製)点灯下で角膜全体を肉眼的に上から3分割し、その各部分ごとに、以下の基準で角膜上皮障害の程度をスコア化した(1眼あたり9点満点となる)。各個体のスコアは両眼の平均値で表示した。またスコア化した各個体の角膜全体を、デジタル撮影ユニットを用いて撮影した。
【0050】
(基準)
0点:点状染色がない
1点:疎(点状のフルオレセイン染色が離れている)
2点:中間(疎と密の中間)
3点:密(点状のフルオレセイン染色のほとんどが隣接している)
【0051】
(2)群分け
上記のとおり作製しスコア化したモデル動物を、群間の平均スコアが同じになるように、表1に示す5つの群に分けた。
【0052】
【表1】
【0053】
(3)試験方法
各群に、表1にしたがって投与物質を投与した。投与は、連続分注器(マルチペットプラス、Eppendorf社製)を用い、点眼により1日1回、計21日間(3週間)継続して行った。投与開始直後(0週間目)、3日目、1週間目、2週間目及び3週間目に、それぞれ角膜上皮障害の程度を評価した。評価は、前記の基準にしたがい、ブラインド下でスコア化することにより行った。
各群の結果は平均値±標準誤差で示した。被験物質溶液を投与した群の、各評価時点における各群のスコアについて、Shirley-Williams検定及びJonckheere-Terpstra検定によって用量反応性を確認した。いずれも危険率5%未満を有意とした。
【0054】
(4)試験結果
結果を図1に示す。Shirley-Williams検定による用量反応性検定において、0.5%被験物質溶液を投与した群については3日目以降のすべての評価時点において、0.1%被験物質溶液を投与した群及び0.3%被験物質溶液を投与した群については1週間目及び3週間目において、それぞれ対照群に対し有意であった。
また、Jonckheere-Terpstra検定による用量反応性の傾向検定において、3日目、2週間目及び3週間目において、ヨンキー統計量が有意であった。
【0055】
上記結果から、本発明の眼用デバイス適用剤が1日1回投与することにより、角膜上皮障害を有意に改善することから、例えば、本発明の眼用デバイス適用剤が被覆されたコンタクトレンズを装用することによっても角膜上皮障害を有意に改善する。また、1日1回投与で効果を示すことから、例えば、1日使い切りのコンタクトレンズの保存液として用いた場合、コンタクトレンズ装用時に本発明の眼用デバイス適用剤が眼表面に1日1回の頻度で投与されると同じ結果が期待できる。
【0056】
[実施例4] 眼用デバイス適用剤の調製
実施例1で調製したHA−3APCに、基材(等張化剤として0.7w/v%塩化ナトリウム、0.2w/v%塩化カリウム、緩衝剤として0.03w/v%リン酸水素ナトリウム、0.07w/v%リン酸二水素ナトリウム、安定化剤として0.1w/v%エデト酸二ナトリウム及び防腐剤として0.003w/v%の塩化ベンザルコニウム)を添加し、pH5.0〜6.0となるように調製して、0.1w/v%、0.3w/v%及び0.5w/v%の各HA−3APC水溶液を調製した後、0.22μmフィルターにてろ過滅菌し、これを眼用デバイス適用剤とした。
【0057】
[実施例5]
実施例4の調製法に準じて、基材を表2に置き換えて同様に調製した。
グリセリンの濃度は0.5w/v%、その他の各成分の濃度は実施例4と同じとした。
【0058】
【表2】
【0059】
[実施例6] ムチンの相互作用による粘度上昇作用
一般に流体摩擦状態を保って摩擦を低減させる場合、摩擦面での潤滑剤の膜の安定性は高粘度のものほど良好である。そこで涙液に含まれるムチンとの相互作用による粘度上昇を指標として、桂皮酸誘導体の摩擦低減作用を評価した。
【0060】
実施例1で調製したHA−3APCをPBS(pH7.4)に溶解し、濃度1w/v%、0.5w/v%及び0.25w/v%の溶液を調製した。
同様にHAをPBS(pH7.4)に溶解し、濃度1w/v%のHA溶液を調製した。
ここで、これらの試料(1w/v% HA−3APC、0.5w/v% HA−3APC、0.25w/v% HA−3APC及び1w/v% HA)0.4mLに20w/v%ムチン0.4mL加えた試料を測定試料1とした。
20w/v%ムチン0.4mLにPBS0.4mLを加えた試料を測定試料2とした。
測定試料1のムチンの代わりにPBS0.4mLを加えた試料を測定試料3とした。
各測定試料を充分に混合したのち、速やかに回転粘度計(ADNANCED RHEOMETER(TA Instruments))を用いて粘度を測定し(せん断速度:100S−1、温度:35℃)、次式により粘度上昇値を測定した。
【0061】
粘度上昇値=μ1−μ2−μ3
μ1:測定試料1の粘度
μ2:測定試料2の粘度
μ3:測定試料3の粘度
【0062】
なお、HAとHA−3APCのムチンとの相互作用の強さの比較を、粘度上昇値を測定試料3の粘度で除して標準化した粘度上昇率によって行った。このような標準化の手段は、異なる試験物質間でムチンとの相互作用を比較する場合にしばし用いられている(例えば、J Ocul Pharmacol Ther. 2007.23(6):541−50)。
【0063】
濃度0.25w/v%、0.5w/v%、1.0w/v%(終濃度0.125w/v%、0.25w/v%、0.5w/v%)のHA−3APCと20w/v%ムチン溶液を混合し、粘度上昇値を算出した結果、ムチンとの相互作用の強度を示す粘度上昇値はHA−3APCの濃度依存的に上昇した。
また、濃度1.0w/v%(終濃度0.5w/v%)HA−3APCと20w/v%ムチン溶液を混合し粘度上昇率を算出した。同様に同濃度のHAと20w/v%ムチン溶液を混合し粘度上昇率を算出した結果、HA−3APCはHAよりも約1.5倍高い粘度上昇率を示した(1.0w/v%HA(終濃度0.5w/v%):2.49、1.0w/v%HA−3APC(終濃度0.5w/v%):3.65)。
【0064】
この結果から、桂皮酸誘導体は、眼表面において涙液中のムチンと相互作用をし、高い粘度上昇率を有することが示唆され、lid-wiperによる摩擦が低減させると考えられ、コンタクトレンズ装用眼におけるドライアイ症状の改善も期待できる。
【0065】
[実施例7] 被覆眼用デバイスの製造
コンタクトレンズ(A:ワンデーアキュビュー(登録商標)モイスト(登録商標):ジョンソン&ジョンソン社及びB:ワンデーピュア(登録商標):シード社)の各一枚を実施例4で調製した眼用デバイス適用剤の5mL中に、24℃で5時間浸漬して、被覆眼用デバイスを製造した。
【0066】
[実施例8] 眼用デバイス適用剤のレンズサイズに対する影響
コンタクトレンズ(実施例7に記載の2種)を実施例4で調製した眼用デバイス適用剤(0.3w/v% HA−3APC水溶液のもの用いた)に実施例7と同条件で浸漬し、浸漬前後のレンズサイズを測定した。その結果を表3に示す。この結果から本眼用デバイス適用剤は、レンズサイズにほとんど影響を及ぼさないことが示された。
【0067】
【表3】
【0068】
日本国特許出願2001−385072号(出願日:2001年12月18日)、日本国特許出願2008−519554号(出願日:2006年10月12日)及び日本国特許出願2015−162578号(出願日:2015年8月20日)の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
眼用デバイス適用剤は、眼用デバイスの浸漬剤、被覆剤、保存剤又は紫外線透過抑制剤として、また該眼用デバイスを眼用デバイス適用剤で被覆することにより眼表面疾患の処置デバイスとして、産業上利用することができる。
図1