特許第6757745号(P6757745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6757745医療診断装置で使用するための物体接近検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757745
(24)【登録日】2020年9月2日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】医療診断装置で使用するための物体接近検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20200910BHJP
   A61B 6/10 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   A61B6/00 300D
   A61B6/00 300X
   A61B6/00 310
   A61B6/10 351
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-560926(P2017-560926)
(86)(22)【出願日】2016年5月20日
(65)【公表番号】特表2018-519026(P2018-519026A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】EP2016061496
(87)【国際公開番号】WO2016188925
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】2676/CHE/2015
(32)【優先日】2015年5月28日
(33)【優先権主張国】IN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チャンドワドカー ニヒル ラジャン
(72)【発明者】
【氏名】ドンガー ムクンド ドンディラム
(72)【発明者】
【氏名】ダルマディカリ シリパド アニル
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−231943(JP,A)
【文献】 特開平01−181101(JP,A)
【文献】 特表平10−513393(JP,A)
【文献】 特開平05−107259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 −6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの接近センサから該少なくとも1つの接近センサの第1基準値に対して測定される応答信号を受信するための入力インターフェースと、
フィルタ済応答信号を生成するために、前記少なくとも1つの接近センサ及び物体が互いに相対運動で通過することによる前記応答信号において、1以上の周波数を低減するように前記応答信号をフィルタ処理するフィルタモジュールと、
前記フィルタ済応答信号が第1閾値を横切る場合に、接近イベントが発生したと宣言する接近イベント宣言部と、
前記接近イベントが発生したとの宣言に応答して、新たな基準値を選択する基準値適応部と、
を有する、物体接近検出装置。
【請求項2】
前記応答信号又は前記フィルタ済応答信号が前記新たな基準値に対して測定された第2閾値を横切る場合に、物体接近アクションが取られるための出力信号を送出するアクションモジュールを有する、請求項1に記載の物体接近検出装置。
【請求項3】
前記応答信号は、前記少なくとも1つの接近センサと少なくとも1つの物体との間に相対運動が存在する間に受信される、請求項1に記載の物体接近検出装置。
【請求項4】
前記新たな基準値は、前記接近イベントの発生の場合にキャプチャされるフィルタ処理されていない応答信号に対応する、請求項1に記載の物体接近検出装置。
【請求項5】
前記フィルタモジュールがハイパス又は帯域通過フィルタである、請求項1に記載の物体接近検出装置。
【請求項6】
前記接近イベント宣言部は前記応答信号又は前記フィルタ済応答信号を監視すると共に、前記フィルタ済応答信号が前記第1閾値を再び横切った場合に前記接近イベントを非接近イベントに宣言し直す、請求項1に記載の物体接近検出装置。
【請求項7】
前記アクションモジュールは前記接近イベントが宣言された場合にのみ前記出力信号を送出する、請求項2に記載の物体接近検出装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの接近センサが、医療撮像装置の可動部分に取り付けられる、請求項に記載の物体接近検出装置。
【請求項9】
撮像装置と、
請求項1に記載の物体接近検出装置と、
前記応答信号が受信される前記接近センサの1以上と、
を有する、撮像システム。
【請求項10】
前記接近センサの1以上が前記撮像装置の可動部分に配置される、請求項に記載の撮像システム。
【請求項11】
少なくとも1つの接近センサから該少なくとも1つの接近センサの第1基準値に対して測定される応答信号を受信するステップと、
フィルタ済応答信号を生成するために、前記少なくとも1つの接近センサ及び物体が互いに相対運動で通過することによる前記応答信号において、1以上の周波数を低減することによって、前記応答信号をフィルタ処理するステップと、
前記フィルタ済応答信号が第1閾値を横切る場合に、接近イベントが発生したと宣言するステップと、
前記接近イベントが発生したとの宣言に応答して、新たな基準値を選択するステップと、
を有する、物体接近検出のための方法。
【請求項12】
前記応答信号又は前記フィルタ済応答信号が前記新たな基準値に対して測定された第2閾値を横切る場合に、物体接近アクションが取られるための出力信号を送出するステップを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
処理ユニット上で請求項12に記載の方法を実行する、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項12に記載の方法を実行するコンピュータプロセッサを制御するソフトウェアを記憶したコンピュータ読取可能な媒体。
【請求項15】
請求項12に記載の方法を実行する、コンピュータプロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体接近検出装置、撮像システム、物体接近検出のための方法、コンピュータプログラム要素及びコンピュータ読取可能な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療撮像装置の使用は、医療分野において広く行き渡っている。
【0003】
例えば、カテーテル導入等の介入治療においては、Cアーム型のX線撮像装置が、しばしば、当該カテーテル又は他の医療ツールの適切な位置決定を保証すべく当該患者の内部構造の像を得るために使用される。
【0004】
最良の結果を得るために、画像は多数の異なる視方向から取得される。これを行うことができるように、当該撮像装置のX線源及び/又は検出器は、X線画像を取得するために当該患者の周りを回転する可動ガントリ(Cアームとも呼ばれる)上に取り付けられる。幾つかのシナリオにおいて、これらの回転は、医療要員が当該患者の近くに及び/又は当該撮像装置自体の近くに居る間に行われる。
【0005】
衝突が発生するのは希ではなく、例えば、人員がCアームに当たり又は周囲の装置は、不注意にCアームの経路に不適切に配置されたままとされると、損傷を受け得る。
【0006】
これらの状況を軽減するために、幾つかの最新のX線撮像器は衝突防止システムを使用している。これらのシステムにおいては、Cアームに対する物体の接近を検出するために接近センサ(近接センサ)が使用され、Cアームが減速される又は該Cアームの動きが停止される等の衝突回避動作(衝突回避アクション)がとられる。
【0007】
しかしながら、経験は、これらの衝突防止システムの実際の状況下での性能がしばしば不満足であることを示している。特に、これらのシステムは、しばしば、許容されない程の数の“偽陽性(誤検出)”又は“偽陰性(検出ミス)”結果を生じることが観察されている。例えば、当該システムが、物体が存在したのに存在しかなったとの結論に至って必要な衝突回避アクションを取り損なう。又は、当該システムが注意過多で、医療装置の効率的使用を妨害することが起きる。又は、衝突防止アクションが、衝突の危険性がないのに取られる。又は、当該システムが、実際には存在しないのに障害物があったと誤って判断する。
【0008】
衝突回避機能を備えた例示的撮像システムは、出願人の米国特許第5,570,770号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、特に人が可動部分を備えた作業装置の傍で作業している状況で使用するための物体接近検出のための代替的方法及びシステムに対する必要性が存在し得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、独立請求項の主題により解決され、更なる実施態様は従属請求項に組み込まれている。本発明の以下に記載される態様は、物体接近検出方法、撮像システム、コンピュータプログラム要素及びコンピュータ読取可能な媒体にも等しく当てはまることに注意されたい。
【0011】
本発明の第1態様によれば、物体接近検出装置が提供され、該装置は、
− 少なくとも1つの接近センサ(近接センサ)から該少なくとも1つのセンサの第1基準値に対して測定される応答(感応)信号を受信するための入力インターフェースと、
− 前記応答信号をフィルタ処理してフィルタ済応答信号を生成するよう構成されたフィルタモジュールと、
− 前記フィルタ済応答信号が第1条件を満たす、特には第1閾値を横切る場合に、接近イベントが発生したと宣言するよう構成された接近イベント宣言部と、
− 前記接近イベントが発生したとの宣言に応答して、新たな基準値を選択するよう構成された基準値適応部と、
を有する。
【0012】
言い換えると、当該装置は、物体接近の検出を接近イベントの検出及び接近持続性の検出に分解することにより、新規な方法でセンサ信号(容量値等)を解釈することを可能にする。有効な接近イベントを区別するために周波数抑圧方法が使用され、接近イベントの持続性を判定するために“単点(single-point)”、即ち、瞬時的基準値キャプチャが用いられる。当該システムは、更に、物体が接近イベント及び実際の接触イベントを生じさせる間に十分な時間間隔が存在するなら、非接触接近と接触(例えば、物理的接触)との間を区別することもできる。提案される当該システムは、非接触センサ技術(容量性接近センサ等)を使用することができ、これらを接触又は非接触イベント使用のために動作させることができる。当該装置は、このように、接触感知を実現する追加の衝突安全性のための別途のハードウェアの必要性を取り除く助けとなる。
【0013】
“物体”とは、物理的物体(装置、家具等)のみならず、人又は動物の身体部分等の生物物体のように広く解釈されるべきである。特に、当該装置が移動するガントリを備えた撮像装置において使用される場合、当該物体は、該ガントリの周囲に配置された医療装置に、又は撮像されている患者の、医療要員(ユーザ)の若しくは撮像の間に、特には上記ガントリ(例えば、Cアーム型X線撮像装置のCアーム)の運動の間に傍に居合わせる他の人の身体部分に関係し得る。
【0014】
一実施態様によれば、当該装置は、前記応答信号又は前記フィルタ済応答信号が第2条件を満たす、特には前記新たな基準値に対して測定された第2閾値を横切る場合に、物体接近アクションが取られるための出力信号を送出するよう構成されたアクションモジュールを有する。
【0015】
上記物体接近アクションは、必ずしも全ての実施態様においてではないが、特に、接触イベントが生じる前に当該センサの動きに関連する対応する移動部分の速度を低減し又は軌道を変更する等の物体衝突回避アクションを含む。物体接近アクションは、接触イベントが発生した後の関連する移動部分の停止等の軽減アクションも含むことができる。
【0016】
一実施態様によれば、前記応答信号は、前記少なくとも1つの接近センサと少なくとも1つの物体との間に相対運動が存在する間に受信される。一実施態様において、前記Cアーム又はそれ以外等の可動部分に取り付けられていることにより移動するものは当該接近センサである。
【0017】
一実施態様によれば、前記フィルタモジュールは、前記少なくとも1つの接近センサ及び前記(1以上の)物体が互いに相対運動で通過することによる応答信号において、1以上の周波数を低減するよう構成される。例えば、斯かるフィルタ除去される周波数は、当該接近センサが空間を経て移動しており、そうしている際に、周囲環境内の物体(又は複数の物体)を通り過ぎる場合に見られるようなものである。他の例として、当該接近センサは固定され、該センサを通過するものが当該物体(又は複数の物体)である。
【0018】
一実施態様によれば、前記フィルタモジュールはハイパス又は帯域通過フィルタである。
【0019】
一実施態様によれば、前記接近イベント宣言部は、前記フィルタ済応答信号又はフィルタ処理されていない前記応答信号を監視すると共に、前記フィルタ済応答信号又は前記フィルタ処理されていない応答信号が前記第1閾値を再び横切った場合に前記接近イベントを非接近イベントに宣言し直すように構成され、前記アクションモジュールは前記接近イベントが宣言された場合にのみ前記出力信号を送出するように構成される。“フィルタ処理されていない”とは、上述したフィルタモジュールが適用されていないことを意味する。他の可能な信号処理が適用され又は適用されていないこともあり得る。
【0020】
一実施態様によれば、前記少なくとも1つの接近センサは、作業装置の、特には医療用作業装置の、更に特別には医療撮像装置の可動部分に取り付けられる。
【0021】
一実施態様によれば、前記接近センサは人体に取り付けるためにウエアラブル(ウエアラブル装置)に組み込まれる。
【0022】
一実施態様によれば、前記応答(応答信号)は容量測定値である。
【0023】
本発明の第2態様によれば、撮像システムが提供され、該撮像システムは、
− 撮像装置と、
− 上述した実施態様の何れか1つによる物体接近検出装置と、
− 前記応答信号が受信される前記接近センサの1以上と、
を有する。
【0024】
当該システムの一実施態様によれば、i)前記少なくとも1つの接近センサは前記撮像装置の可動部分に配置され、及び/又はii)前記少なくとも1つの接近センサは前記撮像装置の周囲に居る人の身体に配置される。
【0025】
本発明の第3態様によれば、物体接近検出のための方法が提供され、該方法は、
− 少なくとも1つの接近センサから該少なくとも1つのセンサの第1基準値に対して測定される応答信号を受信するステップと、
− 前記応答信号をフィルタ処理してフィルタ済応答信号を生成するステップと、
− 前記フィルタ済応答信号が第1条件を満たす、特には第1閾値を横切る場合に、接近イベントが発生したと宣言するステップと、
− 前記接近イベントが発生したとの宣言に応答して、新たな基準値を選択するステップと、
を有する。
【0026】
一実施態様によれば、当該方法は、
− 前記応答信号又は前記フィルタ済応答信号が第2条件を満たす、特には前記新たな基準値に対して測定された第2閾値を横切る場合に、物体接近アクションが取られるための出力信号を送出するステップ、
を有する。
【0027】
要約すると、提案された装置及び関連する方法は、以下の利点を確保することを可能にする。
・ “偽陽性(誤検出)”状況の発生を低減することができるので、衝突リスクの低減させる。
・ 基準値の連続的監視が必要とされないので、計算的費用及び/又は故障モードを減少させる。
・ システム電源投入時に基準値履歴が必要とされない。
・ システム校正のために手動介入(時間が掛かり得る)が必要とされない。校正はセンサ(又は複数のセンサ)が自身の環境に“慣らされる”ことを保証することを可能にするもので、該環境は周囲の物理的物体及び温度、湿度等の環境要因を含む。校正されないシステムは、一般的に、感度不足又は過剰感度及び誤った検出になり易い。
・ 非接触接近及び物理的接触の間を区別する能力がある。これは、少なくとも部分的に、ここで用いられる周波数抑圧によるものである。即ち、前記フィルタ済信号は、人又は動物の身体部分を含む物体の接近イベントに対して特に敏感であることが分かっている。典型的に、人体の一部が当該センサに接近する又は該センサにより接近される際に、該フィルタ済信号は指数関数的に上昇する。接触イベントの発生時において、当該フィルタ済信号の上昇は特に急峻となる。接近イベントを検出する第1閾値を設定することが可能であるのと同様に、第2閾値(第1閾値より高い)を設定することも可能である。この第2閾値は、第1閾値による単なる接近イベントとは異なり、接触イベントに起因する(フィルタ済又はフィルタ処理されていない)信号の上記急峻な上昇を検出することを可能にする。
・ 基準値が適応化されるので、システム性能に及ぼす環境条件(湿度、温度)に対する強さの改善がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、物体接近検出(サブ)システムを含む撮像装置を示す。
図2図2は、図1で使用される物体接近検出システムの拡大図を示す。
図3図3は、図2の物体接近検出システムの処理要素を更に詳細に示す。
図4図4は、図3による処理要素の状態図を示す。
図5図5は、図3及び4による処理要素において使用されるフィルタモジュールによる周波数応答曲線を示す。
図6図6は、物体接近検出方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の例示的実施態様を、添付図面(必ずしも実寸通りではない)を参照して説明する。
【0030】
図1を参照すると、1以上の可動部分を備えた作業装置が示されている。特に一実施態様で想定されるように、図1は撮像装置IA及び物体接近検出システムACSを有する撮像設備ISを概略的に示している。
【0031】
当該撮像装置は、必ずしも全ての実施態様においてではないが、特にはX線撮像装置を有する。該撮像装置は、撮像部品、特にはX線源ユニットXR(ここでは、“XR線源”とも称する)及び該線源XRにより放出される放射を検出するように配置されたX線感知検出器ユニットD(ここでは、“検出器”とも称する)を有する。X線ユニットXRは、線源ハウジング内に収容されたX線管を有している。検出器ユニットDは、フラットパネル検出器又は同様の検出器のもの等のX線放射感知面及びX線画像をキャプチャするための関連する電子回路を有している。該検出器電子回路及びX線放射感知面も同様に検出器ハウジング内に収容される。
【0032】
天板7及びオプションとして患者の快適さのためのマットレス8を備えた患者テーブル2が存在する。該患者テーブルはX線源XRと検出器Dとの間の撮像領域内で位置決め可能である。該テーブルはTに沿って手動で又は適切なアクチュエータを介して高さ調整可能であり得る。当該撮像装置、特に該X線撮像装置は、主に医療目的のためが想定されるが、ここでは医療以外の用途も除外されるものではない。言い換えると、以下では医療の前後関係を参照するが、これは他の前後関係を除外するものではない。ここで主に想定される医療X線の形式の前後関係においては、上記天板上に患者が配置される。
【0033】
X線源ユニットXR及び検出器ユニットDはガントリCA上に配置される。図示された実施態様において、当該X線撮像器はCアーム型のものであるが、ここでは他の撮像器構成も考えられるので、これは限定するものではない。名称が示す通り、当該ガントリ、即ちCアーム撮像器はC字(又は、横転U字)形状を有し、その一端には上記X線ユニットが取り付けられ、反対側の他端には検出器ユニットDが取り付けられている。
【0034】
上記Cアームはクレードル構造体内に移動可能に配置されている。該クレードル構造体は検査室の床又は天井に静止固定的に取り付けることができ、又は該クレードル構造体は図1に示されるように移動手段とすることができ、その場合、該クレードルは移動可能な台車DLに組み込まれ、かくして、当該X線撮像装置IAは部屋から部屋へと移動させることができる。
【0035】
上記Cアーム構造体は当該撮像装置の可動部分を形成する。該Cアームは、アームCAの動きの間においても実質的に変形無しで又は非常に僅かな変形で撮像部品の重量を安全に担持することができるように、金属又はその他の十分に剛性な材料から形成される。
【0036】
特に、当該Cアームは前記撮像領域の周りにおいて1以上の軸の周りに回転することができる。例えば、図1の描画面に対して平行に延びる1つの回転軸はCとして示される一方、他の回転軸は図1の描画面に垂直に延在し、対応する回転がCにより示されている。加えて又は代わりに、当該Cアーム構造体CAは地面に対して高さ調整可能とすることもできる。これがCとして示されている。回転運動に加えて又は代えて、CアームCAは平行移動も可能である。斯かる回転(若しくは複数の回転)又は平行移動(若しくは複数の平行移動)は、当該クレードル内の適切なメカニズムにより可能にされる。
【0037】
Cアームの動きは、検出器D及びX線源XRに、対応する動きを付与する。しかしながら、CアームガントリCAの存在が全ての実施態様で想定されるというものではない。撮像部品のCアームで誘起される動きの代わりに、これらは、適切なガイドレール及び/又は伸縮自在/関節接続アーム(又は複数のアーム)上の壁、床又は天井取付のものとすることもできる。特に、これらの実施態様において、当該撮像装置は撮像部品の撮像領域に対して個別の且つ互いに独立の運動を可能にするよう配置することができる。
【0038】
Cアームの可動性並びに/又はX線源及び検出器Dの可動性は、複数の異なる角度又は投影方向からX線像を取得する(好ましくは、リアルタイムに)ことを可能にする。このことは、例えば、診断又は介入治療目的のために極めて貴重である。例えば、後者の用途においては、カテーテル又は同様の医療装置が患者の身体内でナビゲートされねばならない。従って、当該介入治療放射線医師は当該医療装置が人体内の何処に存在するかを常に正確に知らされることが極めて重要である。
【0039】
一実施態様において、CアームCAの動き(1以上の軸に沿う又は周りの)は、ユーザによりハンドル車機構又は同様のものを介して手動で実施される。しかしながら、好ましくは、ユーザにより電子的に制御されるサーボ又はステップモータ等の好適なアクチュエータが代わりに配置される。例えば、一実施態様において、Cアームの、従ってX線源及び/又は検出器の動きは操作者パネル又はコンソールCONにより制御することができる。該操作者パネルはジョイスティック等の適切なボタン操作装置を有することができ、該装置はCアーム位置の直感的な空間的制御を可能にする。テーブル高調整のための対応するパネル3も存在し得る。ユーザ制御の代わりに、完全自動化動き制御も考えられる。例えば、プロトコルにより正確な動きをリクエストすることができ、このプロトコルにおいては、該プロトコルがエンコードされた一連の命令を処理するプロセッサ等のプロトコル・インタープリタ装置により動きコマンドが発せられる。上記プロセッサは、撮像器IAのアクチュエータと適切にインターフェースされた汎用計算ユニットとして実現することができる。一実施態様において、当該撮像装置は手動及びアクチュエータ制御の両方を備え、かくして、ユーザは撮像部品の所望の動きをどの様に実行するかを選択することができる。
【0040】
上記及び以下の説明を限定することなく、Cアームの実施態様を更に詳細に説明する。使用時において、Cアームは1又は2以上の回転軸の周りで当該撮像領域に対して(更に特定的には、関心生体構造に対して)好適な撮像位置へと回転する。回転に代えて又は加えて、Cアームは特定のモデルにより許容される特定の自由度に依存して平行移動又は傾斜することもできる。患者の関心生体構造に対して所望の位置へと移動(即ち、回転又は平行移動等)されたなら、ユーザ又はプロトコル・インタープリタは画像収集コマンドを送出する。これが送出されると、X線放射が前記X線源XRから放出され、出射窓を介して該X線源を出射し、次いで当該患者を通過する。放出されたX線放射は、患者の組織と作用し合い、相互作用後の放射は患者の遠端側から出射して、検出器Dに入力される。更に詳細には、出射する放射線は検出器ユニットDの入射窓を通過し、該検出器ユニットDの放射感知面に入射する。該入射した放射は電気信号を生じさせ、該電気信号は適切な信号処理回路により、1以上のモニタMT上で視覚化することができる1以上の画像へと処理される。このようにして発生されたX線画像は、次いで、医療要員により当該患者の内部構造(例えば、臓器構造、これら構造の境界及び/又は当該患者内のカテーテルの位置等)を調べるために使用することができる。ここではX線撮像が参照されているが、X線に代えて又は加えて、位相コントラスト撮像、超音波又はその他等の他の方式も考えられる。
【0041】
CアームのC構造(又は、Uアーム構造)は、通常、十分な剛性の材料から形成される(金属コア等)。この構成は、X線源及び検出器が周りを回転することができる撮像検査領域を形成するために当該X線ユニット及び検出器ユニットを対向して安定に配置することを可能にする。
【0042】
撮像装置ISの構成及び機能から理解されるように、可動部分、特にCアームは、患者の周囲に位置する装置又は人員と不注意に当たり又は衝突する可能性がある。当該Cアームの剛性さは、該Cアームが回転する相対的に高い速度と組み合わさって、装置又は人との衝突が発生した場合、相当の損傷又は怪我を生じさせ得る。この相対的に高い回転速度は、当該X線撮像装置IAが例えば緊急手術等において患者の安全を保証するために異なる視方向において画像を迅速に取得することが必須とされる救急室等における緊急状況において使用される故に、時には必要となる。前記天板上に横たわる患者でさえ、動くCアームにより衝突されることから必ずしも安全とは限らない。例えば、不注意に患者の頭を持ち上げる又は患者の腕を天板外に出すことは怪我を生じさせ得る。相対的に高い回転速度を必要とする他の理由は、患者の周りの異なる角度からの投影画像が収集され、これら画像が当該患者の関心領域の内部生体構造の3D画像へと適切な画像プロセッサにより再構築されるような3D撮像を実行する要望である。
【0043】
このような衝突事象(衝突イベント)が発生することを防止するために、又は少なくとも斯様なイベントが起きる危険性を低減するために、当該撮像システムISは、衝突防止システム(ここでは、同様に符号“ACS”により参照される)等の接近検出システムACSを含む。
【0044】
衝突防止システムACSの構成要素は図2のブロック図に示されている。
【0045】
該衝突防止システムACSは1以上の接近センサ(近接センサ)PS及び1以上の衝突防止ユニットACUを有している。
【0046】
1つの接近センサPSは1以上の感知領域SAから広く構成される。図2の例示的実施態様においては、4つの感知領域SAが示されているが、単一の、2つの、3つの又は5以上の感知領域も考えられる。当該接近センサは、広く、感知領域に接近する物体を検出することができる。接近すると、該接近センサにより応答信号(感応信号)が発せられ、この応答信号は次いで衝突防止ユニットACUのうちの少なくとも1つにより解釈される。該衝突防止ユニットは上記1以上の応答信号を処理し、特定の接近条件が満たされた場合に、出力信号を生成し、該出力信号は適切な物体接近動作(アクション)を実行するために使用することができる。このアクションは、例えば、CアームCA等の関係する移動部分に関連する1以上のセンサPSの動きを保持又は減速することを含み得る。
【0047】
図1に戻ると、1以上の接近センサ(図1には一例として3つのセンサが示され、PS〜PSと符号が付されている)は適切な配置により各移動部分に関連付けられている。特に及び好ましくは、該1以上のセンサPSは当該撮像装置IAの起き易い(評判の悪い)衝突ゾーンに配置される。例えば、接近センサは検出器ユニットDのハウジングに配置することができる。更に詳細には、図1にPSと符号が付された接近センサは、該ハウジングの放射線入射窓4(放射線が放射線感知面へと通過する箇所)に又は該窓の周辺に配置することができる。言い換えると、該接近センサPSは検出器ユニットDのハウジングにおけるX線ユニットXRに近い側の部分に配置することができる。当該検出器ハウジングの遠端部分、特に該ハウジングの縁部における配置も考えられる(図示略)。
【0048】
これに加えて又は代えて、X線ユニットXRにおける接近センサ装置、即ち接近センサPSをX線源XRに配置することができる。更に詳細には、接近センサPSはX線ユニットハウジングの放射線出射窓5に配置することができる。加えて又は代わりに、接近センサPSを当該X線管ハウジングにおける出射窓5から遠い側の縁部6に配置することもできる。一実施態様において、上記1以上の接近センサPS〜PSはX線ユニット又は検出器ユニットの各ハウジングの内部に配置される。しかしながら、幾つかの実施態様においては、斯かるハウジングの外側における、又は一般的に当該撮像装置IAの外表面における配置も想定される。事実、当該撮像装置の可動部分上における上記1以上の接近センサPSの如何なる好適な配置も考えられる。例えば、当該1以上の接近センサPSはCアーム自体における1以上の位置に配置することもできる。しかしながら、接近センサは図1に示されるように可動部分(又は複数の可動部分)における一層衝突を引き起こし易いと予測することができる特定の外部の又は露出された位置に配置することが好ましいであろう。
【0049】
前述したように、患者テーブルも適切なアクチュエータの操作により高さ(T)調整可能である。従って、幾つかの状況では、接近センサを電動患者テーブルに配置することも適切であり得る。しかしながら、患者テーブルにより上下又は水平移動でなされる動きは、Cアームの相対的に速い動きと較べて相対的に遅い。接近センサは、他のものと比較して相対的に速く移動する部分に配置することが一層好ましい。接近センサの配置は、Cアーム撮像装置を示す図1を特に参照して説明された。他の医療設備又は非医療設備において(例えば、移動する部分が産業ロボットのものである工業設備において)、動く部分を備える自律型若しくは半自律型又は遠隔制御される装置上への他の配置も勿論考えられる。
【0050】
図2を続けて参照すると、前述されたように、各接近センサPSは2以上の感知領域SAを含むことができる。図2に例示として示された4つ等の、2以上の感知領域を用いることは、接近する物体の存在を検出することを可能にするのみならず、3Dでの位置特定も可能にする。複数の接近センサが使用される場合、各接近センサが同じ数の感知領域を有することは必要ではない。例えば、当該撮像システム内の幾つかの位置では単一の感知領域を持つセンサで十分であり得る一方、他の位置では、当該位置に接近している物体に関する更なる詳細が必要とされるので、2つ、3つ又は4より多い感知領域が必要とされる。言い換えると、一実施態様において各位置センサは単一の感知領域のみを有する一方、他の実施態様において各接近センサは複数の(2、3又はそれ以上の)感知領域を有する。しかしながら、幾つかの接近センサが単一の感知領域のみを有し、他の接近センサが複数の対応する感知領域を有するような混合実施態様も考えられる。
【0051】
ここで想定される好ましいタイプのセンサは容量型のものであり、これら容量型のものは医療撮像状況において良好に動作するという信頼性のある結果を生じることを示しており、相対的に低価格であり、低い電力要件を有し、高い信頼性を有しているからである。ここでは特定の他のタイプのセンサが除外されるものではなく、誘導型、磁気、赤外線、熱、ホール効果型、光学又は音響型(特に、超音波型)等を含む。これらのタイプの接近センサは、物体の接近が変調される物理量により区別することができる。
【0052】
ここで提案される接近センサ構成は、接触型感知とは対照的に非接触型感知(容量性センサが好ましい実施態様である)として主に想定される。しかしながら、更に後述されるように、ここで想定されるACUは、非接触型センサを接触型センサとして使用することができるように構成することもできる。
【0053】
ここで一実施態様による容量型接近センサを更に詳細に参照すると、これらセンサにおいて、各感知領域SAは、コンデンサを形成するために或る間隔で互いに適切に配置された金属プレート等の1対の電極を本質的に有している。容量タイプの接近センサにおいて、接近する物体の誘電特性は各感知領域の電極の間に形成される電界の容量を妨害し、この容量の変化は電圧又は電流の変化を生じさせ、該変化は適切な電子回路により捕捉されると共に当該物体が当該電極の一方又は両方からどの程度離れているかに関する表示情報として解釈される。
【0054】
代替例として、各センサの感知領域は単一のプレートから形成することができる一方、他の電極の役割は接近する物体により引き受けられる。これらのタイプの“単一プレート”感知領域を持つセンサは、ここでは好ましい実施態様であるが、対状の電極プレートを持つ上述した実施態様を用いる構成を排除しようとするものではない。単一プレート感知領域は、一実施態様では、PCB内又はガラス上に配置された導電性パッドとして構成することができる。
【0055】
これらのセンサの実施態様の何れかにおいて、(各)感知領域の特定の近傍内に物体が存在しない場合、当該容量は特定の安定した基準値(ここでは、単に“基準”又は“基準値”とも称する)を呈する。この基準値は、温度、湿度等の周囲条件の変化により変化し得る。該基準値は、当該物体接近検出システムACUの電源投入時に校正フェーズにおいて初期的に確立される必要がある。前記接近センサ応答信号は、本質的に、検出される容量が基準容量から逸脱する量を測定する又は斯かる量に対応するものである。この基準値の概念は容量型以外のタイプの検出器にも適用可能であり(前述したように)、従って以下の説明は斯かる代替的検出器タイプにも等しく適用可能であるが、前述したように、容量型センサは好ましい実施態様のままであり、以下の記載は容量型のセンサを主に参照して説明される。
【0056】
以下に更に詳細に説明されるように、幾つかの既知のシステムは、一定の基準値が与えられた場合に上記逸脱が特定の閾値を超えるやいなや衝突防止アクションがとられるような“単純な”閾処理を行う。以下に更に詳細に説明するように、提案される当該ACUシステムはダイナミック閾処理方式を用いる故に、これとは相違する。このダイナミック閾処理方式において、基準は特定の態様で変化し、動作が行われるか否かは、特定の基準逸脱のみならず、基準自体の大きさ、即ち当該ACSが励起又は接近状態にあるかにも依存する。
【0057】
即ち、提案される当該システムはダイナミック閾処理を行い、該処理において基準は連続して監視及び適応化され、衝突回避アクションは当該衝突防止システムが励起又は接近(イベント)状態にある場合にのみ行われる。更に詳細には、ここで提案される該衝突防止ユニットACUは接近センサ(又は複数の接近センサ)から受信される信号応答をi)周波数抑圧に基づいた接近イベント及びii)これらイベントの持続に分解する。接近持続の検出は、一実施態様では、本質的に、感知領域における接近イベントの発生の場合における瞬時的な基準値キャプチャ(“単一点基準値キャプチャ”)により実現される。次いで感知領域(又は複数の感知領域)において応答信号を監視するために使用されるのは、このようにしてキャプチャされた基準値である。当該プロセッサACUは、物体が接近イベントを生じるのと実際の接触イベントとの間に十分な時間間隔が存在する限り、非接触接近と物理的接触との間を区別することができる。該プロセッサは接近イベントを検出することができ、これにより当該システムが40mm以下の指定された距離で常に停止されることを可能にする。上記距離は、設定可能なソフトウェアパラメータ(例えば、パラメータT及び/又はT、これらパラメータが説明される図6参照)を介して調整可能である。好ましくは、当該信号処理はリアルタイムとする。
【0058】
図3は、一実施態様において想定される衝突防止ユニットACUの構成要素のブロック図を更に詳細に示す。適切なデータ収集回路(図示略)を備えた入力ポートINが存在し、該データ収集回路は前記1以上の接近センサPSから応答信号を受信することができ、斯様にして受信された応答信号はA/D(アナログ−デジタル)変換段によりデジタル形態で処理される。該データ収集回路は、増幅要素等の何らかの信号調整回路も含むことができる。一実施態様によれば、該データ収集段は一実施態様において前記コンデンサプレートに所定の電流を高周波矩形パルスで供給する手段を含む。このことは当該センサをスイッチドキャパシタに変化させる。該スイッチドキャパシタの間の電圧降下から等価抵抗、従って当該センサの容量を測定することができる。内部A/D変換器は、この計算をデジタル値に変換して、処理することができる接近応答信号を形成する。
【0059】
このようにしてデジタル化された接近応答信号は、次いで、フィルタモジュール段FMにおいて処理され、該応答信号における所定の周波数を抑圧し又は除去さえする。更に詳細には、当該接近センサの自身の環境に対する単なる動きによる応答変化は抑圧される。図1における構成から理解されるように、CアームCAが動いている間において、該Cアームに取り付けられた接近センサ(又は複数の接近センサ)PSは空間内で或る軌跡を辿り、そのようにしている間において、装置、人員(医療要員又は居合わせる人)等の周囲の物体の傍を衝突せずに通過する。しかしながら、環境内の物体に対する斯かる無害の繰り返される接近は、接近センサの各基準値の変動を引き起こす。当該フィルタモジュールFMは、センサを斯かる無害な接近イベントに対して鈍感にさせるように構成される。この場合、“生の”センサ信号x、即ちフィルタモジュールFMによりフィルタ処理される前の前記データ収集段により供給される信号は、ここでは保持される(バッファ記憶部等に)ことに注意されたい。これら信号は、直ぐ下に示されるフィルタ処理された信号(フィルタ済信号)と共に、後の段において更に処理されるからである。
【0060】
フィルタ済信号yに戻ると、この信号は接近イベント宣言段PEDにおいて第1閾値に対して監視される。この閾値に対してフィルタ済信号yが第1条件を満たす場合、例えば該フィルタ済信号が該閾値を横切る(即ち、該閾値を超える又は該閾値より低下する)場合、所与のセンサ又は一群のセンサに関して接近イベントが宣言される。このイベントの発生は、センサの身元と接近イベントとの関連付けを可能にする適切なデータ構造内にフラグを設定することにより記録することができる。単一の接近センサしか使用されない場合、このことは、接近イベントが発生したか否かを記録するために単に二進変数=‘1’又は=‘0’を設定するものとして実施することができる。複数のセンサが使用される場合、センサの身元に依存する接近イベントを記録するために表形式のデータ構造を使用することができる。
【0061】
接近イベントが発生した場合、基準値適応器段BVAが動作状態になり、以前のフェーズにおいて(例えば、当該システムACSの電源投入の際)設定され又はユーザにより手動で設定された現基準値を置換するために新たな基準値を設定する。該新たな基準値は、当該接近イベントが宣言された前又は好ましくは後に受信されたフィルタ処理されていない生の信号xから計算される。
【0062】
接近イベントの発生が宣言される時点が、接近期間の開始を印す。センサPSに関して接近イベントが宣言された後、好ましくは、BVAは接近期間/イベントの宣言を維持することができるか又は該接近イベントが依然として有効であるかに関して、当該フィルタ済センサ応答信号を常に監視する。このようにして、当該フィルタ済センサ応答が前記第1条件に違反するか(例えば、信号yが前記第1閾値を再び横切ったか)が確認される。これが生じない場合、当該接近イベント状態は維持される。それ以外の場合、当該接近は非接近状態に戻り、PEDは関連するフラグをリセットすることにより、そのように宣言し直すよう動作する。言い換えると、当該衝突防止ユニットプロセッサACUは、接近イベントの持続を監視するように構成される。
【0063】
接近イベントが有効な間において、アクションモジュールAMは物体接近アクション(衝突回避アクション等)が取られるためのリクエストを出力ポートOUTにおける出力信号として送出するよう動作することができる。該出力信号(ここでは“アクション信号”とも称する)は、当該接近イベント期間内に受信される未フィルタ応答信号又はフィルタ済応答信号が前記新たに定義された基準値から所定の第2閾値より多く逸脱した場合に送出される。このような逸脱が検出され、且つ、当該接近イベントが依然として有効である場合にのみ、上記アクション信号のためのリクエストが出力ポートOUTにおいて送出される。
【0064】
上記出力信号は、次いで、当該撮像装置のアクチュエータ制御回路により捕捉される。次いで、適切なドライバ及びインターフェースにより衝突回避アクションが実行される。該衝突回避アクションは、減速、停止、又は当該撮像装置における当該接近センサが取り付けられた各動き部分に対するそれ以外の作用を含む。
【0065】
図4の状態図に要約されるように、ここで提案される衝突防止ユニットACUは2つの状態で、即ち“接近状態”及び“非接近状態”と称することができる活性状態及び非活性状態で動作することができる。接近イベントの検出は、非接近イベントが接近イベントのために放棄される時点を示す。
【0066】
システムの電源投入時等又はユーザにより調整される等の初期状態S405において、所与のセンサPSに対して特定のデフォルト基準値が設定される。2以上のセンサが存在する場合、全てのセンサには同一の基準値又は異なる基準値を付与することができる。一実施態様において、PSに対して最後に利用可能な基準値(又は複数の基準値)を電源オフ時に記憶し、次いで、この/これらの基準値を電源投入時に再使用することもできる。次いで、当該システムはステージS410においてアイドルモード又は非接近状態に入る。接近イベントpjiが検出された場合、当該システムは、S420において第2の励起状態、即ち接近状態に入る。
【0067】
当該システムはフィルタ済センサ信号を監視することにより接近状態に留まる。該フィルタ済入力信号が所定の第1条件に違反する(例えば、第1閾値Bjiより低下する)と、当該システムはS410の非接近状態、即ちアイドル状態に戻る。表記“Bji”は、上記第1閾値がj番目のセンサのためのものであり、この閾値はセンサjに対して設定されたi番目のものであることを意味する。同様の表記が、上記において、pjiとして示された接近イベントに関しても使用されている。
【0068】
接近状態S420における場合、新たに取得された基準値が第2閾値に対して使用される。言い換えると、状態S420において、フィルタ済又は未フィルタ信号の逸脱は、ここでは、この新たな基準値に対して測定される。この第2閾値が、励起された物体接近状態の間において、横切られた場合(即ち、上記フィルタ済又は未フィルタ信号が第2閾値を超えた又は該第2閾値より低下した場合)、非接触接近アクション信号Saを発し、出力信号OSとして出力することができる。代わりに、この励起状態において、当該システムは接触信号イベントS430に対して適切に選択された第2閾値で監視し、その場合にのみ、アクション信号Sbが出力信号OSとして出力する。即ち、接近状態の間において、当該衝突防止ユニットは接触又は非接触ベースの感知用として動作するよう構成することができる。即ち、新たな基準値に基づき、第2閾値に対して監視することにより、当該アクション信号は、第2閾値がどの様に設定されるかに依存して、接近する物体が当該感知領域に十分に近いか、又は該物体が該感知領域に実際に接触した場合に送出される。
【0069】
フィルタ済又は未フィルタセンサ応答信号に依存して、本明細書で提案される衝突防止ユニットACUは2つの状態、即ち非接近及び接近状態の間で行き来し、当該システムが接近イベント状態にあり、且つ、第2閾値が横切られた場合にのみ動作(アクション)を行う。このようにして、当該システムは、専ら接近センサと周囲の(環境の)物体との間の相対運動に起因する好ましくは低い周波数の基準値変動に対して鈍感にされる。これらの周囲の物体は、かなりのセンサ応答を誘起させるほど十分に近いが、それでも、当該接近センサが対応する移動部分CAの動きの間に自身の経路を辿る際において該接近センサの軌道の外側である。偽陽性又は偽陰性状況の発生は、該提案された2状態方法により最少化することができる。
【0070】
図3及び図4に提案された衝突防止ユニットACUは、純粋にソフトウェアで実施化することができるが、好ましくはハードウェアで専用の集積回路(IC)として実施化される。データ収集段INは好ましくは図3に示されるように残りの構成要素と統合されるが、このことは必ずしも全ての実施態様においてそのようである必要はない。例えば、該データ収集段INはセンサ位置に委託することができ、その場合、応答信号は当該ACUの残りの構成要素に有線又は無線態様で伝達される。ACU構成要素が全て完全に統合(集積化)される実施態様は、良好な結果を生じることが分かっている適切なSOC(システム・オン・チップ)で実施化することができる。フィルタ処理される計算の複雑さに依存して、例えば前記フィルタ等のように、メモリ及びCPU要件は緩やかとすることができ、当該方法は出願人により相対的に費用効果的なSOCで実施化可能であることが分かっている。例えば、幾つかの状況では、16KBのフラッシュメモリ(コードを記憶するために要するメモリを含む)及び1KBのRAMを備える8ビットマイクロコントローラの仕様で十分であることが分かっている。当該ICは、適切にプログラム可能なFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)として又は配線されたICチップとして構成することができる。IC構成の代替物として、当該ACUの構成部品はマイクロコントローラと共にPCB(印刷回路基板)上に配置することができる。
【0071】
図1に関連して図3に更に示されるように、各接近センサは、当該接近センサとインターフェースされる自身の専用の衝突防止ユニットACUを有することができる。しかしながら、このことは必ずしも全ての実施態様において、そのようであるとは限らない。例えば、代替実施態様においては、全ての接近センサからの応答信号を処理する単一の中央ACUを使用することができる。
【0072】
純粋にICベースのもの以外の構成も考えられ、その場合、データ収集段のみがローカルに実施される一方、当該ACUの残りの機能はデジタル化された信号ICを受信する汎用計算ユニット上で集中的に実施される。
【0073】
上述した構成の何れかにおいて、1以上のACUは当該撮像装置に配置された1以上の接近センサと適切にインターフェースされる。センサ応答信号は該1以上の衝突防止ユニットACUに有線又は無線通信により伝送することができる。
【0074】
次に、物体接近検出のための方法が一層詳細に説明された図6のフローチャートを参照する。以下に説明される方法のステップは図1図4において前述したアーキテクチャと必ずしも結び付けられるものではなく、以下の方法の説明は、それ自体での教示として理解することができることに注意されたい。
【0075】
初期化ステップS600において、前述した衝突防止ユニット等の物体接近検出システムは電源が投入され、1以上の接近センサのための初期基準値が発生される。該初期基準値はユーザにより供給されるものとすることもできる。
【0076】
この初期基準値に対し、ステップS605において、(生の)応答信号が1以上の接近センサから受信される。これらの(生の)応答信号は、センサの感知領域Jから受信される信号に関して、ここでは小文字xでx等として参照される。好ましくは、当該接近センサは容量型のものとするが、接近する物体から受信される測定値が評価される基準値評価の前記概念が当てはまる限りにおいて、ここでは他の技術が除外されるものではない。
【0077】
図1図2に関連して前述されたように、当該接近センサの1以上は、撮像システム、特には医療撮像装置、更に特別にはCアームシステム等の作業装置の1以上の可動部分に取り付けられる。受信された応答信号は、好ましくは、A/D変換によりデジタル化される。例示的一実施態様において、当該応答信号(例えば、センサ容量値)は、好ましくは固定のサンプリングレートにおいて16ビット分解能のデジタル入力の形で供給される。上記分解能は利用可能なハードウェアに依存して一層高く又は一層低くすることができるが、好ましくは、最小でも12ビットで供給されるべきである。当該センサ(又は複数のセンサ)から受信される生の応答信号は、該センサの容量に線形に関係するものでなければならない。また、好ましくは、全てのセンサの大凡の安定した容量基準値Xは、選択された信号分解能の半分でなければならない。好ましくは、各感知領域に対して、ここでは容量値は以下のステップ毎に別個に処理される。ステップS605において受信される応答信号xは、通常、当該センサと該接近センサの環境における物体との間に相対的動きが存在する間に供給される。ここで使用される“物体(又は複数の物体)”なる用語は、装置等の無生物物体を含むのみならず、当該接近センサが取り付けられた前記可動部分の運動の間において当該作業装置の近傍に少なくとも部分的に存在する人又は動物も含む。この時点までに斯様にして受信された応答信号は、前記初期基準値に対する逸脱として測定されるものである。
【0078】
ステップS610において、当該センサから受信された生のデータストリームxからフィルタ済信号yが計算される。更に詳細には、ステップS610において、各センサに関する取得された生のセンサ応答信号は、周波数抑圧フィルタを通過されるが、オリジナルの生の信号xは保持される。この場合、限定詞“生の”は、このフィルタ処理ステップS610が適用されていないセンサ信号を指すことが理解されよう。
【0079】
当該フィルタは、好ましくは、事前に計算されたデジタルIIRフィルタ、特にはバターワース帯域通過フィルタとする。該フィルタの差分方程式は、一実施態様によれば:
【数1】
であり、ここで、j=1,2,3,…,Kであり、KはセンサPSの各感知領域に対するインデックスであり、nはサンプル時点である。フィルタ済信号yは、一般的に(相対的)センサ運動に起因するセンサ応答信号xの低周波変動に対して実質的に鈍感となる。従って、如何なる近接した物体もない場合の当該センサの運動は、該フィルタ済み信号に全く又は非常に僅かな励起しか生じない。一実施態様においては式(1)において約(0.6、0.6、0.8、0.1)なる係数が想定されるが、他の係数も使用することができるので、これは限定するものではない。
【0080】
上記周波数抑圧フィルタの例示的周波数応答曲線frcが図5に示されている。該周波数応答曲線frcは図5において正規化された周波数対利得としてグラフ化されている。即ち、利得は垂直方向にグラフ化され、正規化された周波数は水平方向にグラフ化されている。正規化された周波数は、サンプル当たり半サイクル:half-cycles per sample(又は等価的に“2サンプル”当たりのサイクル:cycles per 2 samples)なる正規化された単位で表されている。半サイクルでの正規化された周波数表示において、当該周波数はナイキスト周波数(即ち、サンプリングレートの2倍)により正規化される。ここでは、正規化がサンプリングレートによるサンプル当たりのサイクル(cycles per samples)等の、他の等価な、特には正規化された表現も考えられる。
【0081】
当該周波数応答曲線frcは、約0.05〜0.75の間の正規化された周波数帯域を持つ帯域通過フィルタの特性を有している。代わりにハイパスフィルタも使用することができる。センサ対環境の相対運動に関わるものは特に低周波数成分であることが分かっており、これらの低周波数成分を実質的に除去したいからである。驚くべきことに、図5のものに類似する“フカヒレ”状のプロファイルを有するfrcを備えたフィルタは、当該センサが移動する環境の特定の構造に無関係に多数の異なる設備において動作することが分かった。“低”により、0.01より低い、0.02より低い又は0.05より低い正規化された周波数成分を主に想定しているが、これは一実施態様のみによるものであり、必ずしも本明細書で説明されるシステムを限定するものではない。
【0082】
更に詳細には、関心の周波数帯域を推定するために、事前試験センサデータの時間/周波数分析を連続ウェーブレット変換(CWT)を用いて実行することができる。種々の記録された訓練センサ信号のCWTを比較して、関心の正規化デジタル周波数帯域は、0.018〜0.595、約0.02〜0.6、又は前述したように約0.05〜0.75となるよう選択された。これらの帯域のために、一次IIRバターワース帯域通過フィルタが式(1)の差分方程式により構築された。図5の例示的実施態様に示されるように、frcは当該周波数帯域の下端まで相対的に急峻な傾斜を有し、次いで該周波数帯域の上端に向かって相対的に低い下向き傾斜で漸減する。一層高次のフィルタは、間違いなく、一層帯域に適合した周波数応答関数を提供するであろう。しかしながら、斯かる次数は、当該ACU上で使用されるマイクロコントローラ内での浮動小数点計算により課される計算的制約により制限される。一次フィルタを使用することの利点は、フィルタ処理される信号を計算する際の時間遅延を低減することができることである。
【0083】
ステップS620において、関連するセンサ又は一群のセンサに対して接近イベントが既に宣言されているか、及び該イベントが未だ有効であるかが確定される。このことは、図4の状態図に関して前述したように適切な記録に記録された関連するフラグの状態(イエス/ノー)を調べることにより実現することができる。
【0084】
何の接近イベントも今のところ有効でない場合、当該方法はステップS640に進み、該ステップにおいて、当該1以上のフィルタ済検出器応答ストリームがプリセット閾値Tと比較される。複数のセンサ応答信号y(複数のセンサPSにより感知された)に関して、接近イベントが所与のセンサPSにおいて発生するための第1条件又は評価基準は下記のように規定することができ:
【数2】
ここで、感知領域J−1、J及びJ+1は物理的に互いに隣り合う(J=1ならJ−1=Kであり、J=KならJ+1=1であることに注意)。
【0085】
単一の接近センサしか存在しない場合、考察されるものは条件i.a)のみであることが理解される。即ち、当該接近センサからのフィルタ済信号が閾値Tを横切る、例えば超えたなら、接近イベントが宣言される。
【0086】
更に詳細には、接近イベントが発生しないまでは、フィルタ済信号は監視だけされ、何のアクションもとられない。何れかの時点において個々のフィルタ済信号yの何れか又は隣接する信号の組合せにおいてT(例えば、TはXの1.3%とすることができる)より振幅が大きい励起が観測されたなら、センサJにおいて接近イベントが発生したと宣言される。
【0087】
一実施態様によれば、関知領域Jにおいて接近イベントが宣言されるためには、上記条件1.a〜i.c)及びii)が満足されねばならない。
【0088】
上記関係i)、ii)は、分離して且つ多数の異なる実施態様に到るために使用することもできる。例えば、一実施態様において、考察されるのは条件ii)のみである。即ち、最も優勢なフィルタ済応答信号からの信号のみが第1閾値Tに対して考察される。更に、一群の循環的に配置された接近センサの場合、閾値Tに対して評価されるものは個々の接近応答(のみ)であるが、更に又は代わりに考察されるものは、条件i.b)、i.c)に表されるように、隣の接近センサ(概略的に、J-1又はJ-1として示される)の(恐らくは重み付けられた)和でもある。
【0089】
ステップS640において尋問された条件が満たされた場合、ステップS660において接近イベントが発生したと宣言され、このことが、関連するセンサPS又は一群のセンサに関してフラグ付けされる。複数の接近センサが使用される場合、接近イベントは一般的に該複数の接近センサからの個々の接近センサと関連付けられることが理解される。例えば、当該接近イベントが1以上の接近センサに対して宣言されるが、他のものに対しては宣言されないことは非常に良く起こりえる。
【0090】
当該接近イベントがステップS660で宣言された時点で、又はその直後に、ステップS680において関連するデータストリームからの信号キャプチャにより新たな更新された基準値が選択され、このようなキャプチャ基準値がバッファ等に記憶される。
【0091】
イベントpjiに対する新たな基準値Bji(例えば、センサ3における電源投入後の最初の接近イベントはp30と書くことができる)は、当該接近イベントの開始時にxなる値として定義することができる。代わりに、イベントpJiの時点において、オリジナル信号xの最後のn個のサンプルがキャプチャされ、この一連のn個の値から最小容量値が選択され、この最小値がBJiとしてキャプチャされる。他の例として、各センサ又は一群のセンサの生のデータストリームにおいてキャプチャされたn個の値から、(恐らくは加重)平均が形成される。サンプルの数nに関して、n≧1であり、nは好ましくはセンサのサンプリングレートに依存する。即ち、nが大きいほど、サンプリングレートは高くなる。
【0092】
ここで、ステップS620の分岐点に戻り、接近イベントが関連するセンサ(又は複数のセンサ)に対して依然として有効であると仮定すると、当該提案された方法はステップS630において当該接近イベントの持続を準連続的に監視するためのループ(妥当なサンプリングレートまで)を含む。
【0093】
即ち、接近イベントが発生したとの宣言は、オン/オフイベントではなく、進行中の手続きである。更に詳細には、当該接近イベントが宣言された時点から、該イベントが持続しているかは、S630において(準)連続的に監視される(妥当なサンプリングレートで)。更に一層詳細には、持続する接近の存在を検出するために、ここではオリジナルのデータストリームにおける容量値が連続して監視される。生の応答信号xが第2条件を満たす時点まで、当該物体接近信号は設定されたままである。即ち、一実施態様において,上記第2条件は以下の様に規定される。即ち、当該応答信号xがRji(例えば、Rji=Bji+Sjiであり、Sji=Bjiの0.15%である)より低下しないまでは、当該物体接近信号は設定されたままである。該第2条件が満たされない場合、即ち、当該信号がRjiより低下する一実施態様において、当該物体接近信号はリセットされる。言い換えると、ステップS630においては、現在の生信号xが最新の基準値Bjiに近い又は該基準値より低いかが判定される。
【0094】
他の例においては、同様の比較が現在のフィルタ済信号yに基づいて実行される。即ち、ステップS630において、現在のフィルタ済接近信号yがステップS640における第1閾値Tに対する条件を依然として満たしているかが判定される。
【0095】
要約すると、ステップS630においては以前に宣言された接近イベントが依然として有効であるかが判定される。ステップS630において該接近イベントが依然として有効であることが分かった場合、作業の流れはステップS605に戻り、該ステップにおいて新たな接近信号ストリームが受信される。
【0096】
しかしながら、ステップS650において以前に宣言された接近イベントが最早有効でないと判定された場合、当該フラグはリセットされる。即ち、当該接近イベントは非接近イベントへと宣言し直され、当該物体接近検出システムは非励起状態の非接近状態に戻る。この段階において、流れは再びステップS605に戻り、該ステップにおいて、当該接近センサ又は複数のセンサからの新たな信号の測定値が受信される。
【0097】
同時に、接近状態の間においては、ステップS670において、もしあるとすれば何のアクションが行われるべきかが判定される。
【0098】
当該フローチャートから、関連するセンサ又はセンサグループに対する接近イベントが有効である間においてのみアクションをとることができることが明らかである。ステップS670において、オリジナルの生の接近センサ信号x又は該信号のフィルタ済バージョンyが、ステップS680において設定された新たな基準値に対して評価される。更に詳細には、当該接近イベントが有効である間に受信されたx又はyが上記新たは基準値から所定の第2閾値Tより多く逸脱しているかが判定される。
【0099】
上記第2閾値の大きさは非接触イベント又は接触イベントのために監視するよう選択することができる。更に詳細には、ステップS690において、場合に応じてx又はyが、前記新たな基準値に対して測定される該第2閾値Tを横切ったかが判定される。もし横切ったなら、接触又は接近信号がステップS690において送出される。この信号は、当該物体接近方式が用いられるシステム(前記撮像装置等)に関してアクションが取られるためのリクエストに相当する。更に詳細には、一実施態様において衝突回避アクションが取られる。一方、上記第2閾値が横切られなかった場合、当該流れはステップS605に進み、生の応答信号が受信され続ける。
【0100】
他の例として、接触イベントに関する信号xの監視は、接近イベントが検出されるのと同様の態様で達成される。即ち、当該システムが接近状態である間の何れかの時点でTより振幅の大きな励起がyにおいて観察されたなら、当該センサJにおいて接触イベントが発生したと宣言され、該接触イベントを示す出力信号Sbが使用されて、主システムIAにおいて適切なアクションを実施する。
【0101】
図4の状態図において先に説明したように、当該方法は2つの状態、即ち接近状態と非接近状態との間で実効的に行き来する。アクション(衝突回避アクション等)のリクエストは、当該システム方法が物体イベント状態にある場合にのみ発せられる。
【0102】
上述したものは3以上のイベント又は状態に容易に一般化することができると理解される。即ち、物体イベント状態の階層構造を導入することができる。更に詳細には、非接近状態イベントと接近イベント状態との間で行き来するというより、当該システムは複数の接近イベント又は状態の恐らくは優先付けされたレベルの間で行き来することができる。異なるレベルの接近イベントの各々において、関連する新たな基準値がキャプチャされる。この場合、一実施態様において、前記アクション信号は当該階層構造における最高の部類の接近イベントが仮定される場合にのみ送出される。他の実施態様では、一群の異なるアクションが異なる接近レベルに各々割り当てられ、これらレベルに関連する各アクションは、対応するレベルにおける接近イベントが有効な場合にのみ実行される。言い換えると、図6の上述した方法は、レベルの階層で配置された複数の接近イベントへと縦続接続することができる。
【0103】
上述したシステム及び方法は、必ずしも医療用撮像用途に、更に医療分野自体にさえも関連される必要はないことも理解される。更に詳細には、上述した物体接近システムACS及び方法は、動く部分を備える如何なる作業装置にも適用することができる。更に特定的には、本発明は、ロボット又は他の運動する装置が人と並んで用いられ、衝突が発生し得るような、例えば工業製造における又は倉庫管理におけるロボット環境に使用することができる。例えば、ロボットにおいては、接近センサをロボットアームの適切な箇所等に取り付けることができる。斯かるロボットが作業を行っている間に、これらロボットの近くで作業するように派遣される保守要員は、不注意な衝突から安全に維持される。
【0104】
前述した説明から明らかなように、前記フィルタ段における周波数抑圧は、当該接近センサと周囲の物体との間の相対運動に向けられたものである。更に詳細には、接近センサは必ずしも動く部分自体に取り付ける必要はなく、例えば斯かる動く部分の近傍における特定の装置に取り付けることができるか、又は人自体により装着されるウエアラブルに組み込むこともできる。例えば、接近センサは、作業衣に組み込むことができ、又は周囲の作業装置の動く部分との衝突を一層受け易い人体の露出部分上にパッチ等として装着することもできる。例えば、接近センサは帽子若しくはベスト又は他の衣服に挿入することもできる。この場合、接近センサの測定値又は応答は、例えば、前述したように、人により装着される送信器により対応する衝突回避ユニットACUに無線で伝送される。
【0105】
本発明の他の例示的実施態様においては、コンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が提供され、斯かるコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素は、適切なシステム上で前記実施態様の1つによる方法の方法ステップを実行するように構成されることを特徴とする。
【0106】
従って、上記コンピュータプログラム要素はコンピュータユニット上に記憶することができ、該コンピュータユニットは本発明の一実施態様の一部とすることもできる。このコンピュータユニットは、上述した方法のステップの実行を行い又は生じさせるように構成することができる。更に、該コンピュータユニットは上述した装置の構成部品を動作させるように構成することもできる。該コンピュータユニットは自動的に動作し及び/又はユーザの命令を実行するように構成することもできる。コンピュータプログラムは、データプロセッサの作業メモリにロードすることができる。該データプロセッサは、このように、本発明の方法を実行するように装備することができる。
【0107】
本発明の該例示的実施態様は、本発明を当初から使用するコンピュータプログラム及び更新により既存のプログラムを、本発明を使用するプログラムに変えるコンピュータプログラムの両方をカバーする。
【0108】
更に、前記コンピュータプログラム要素は、前述したような方法の例示的実施態様の手順を満たす全ての必要なステップを提供することができる。
【0109】
本発明の他の例示的実施態様によれば、CD−ROM等のコンピュータ読取可能な媒体が提供され、該コンピュータ読取可能な媒体は前段で述べたコンピュータプログラム要素を記憶している。
【0110】
コンピュータプログラムは、光記憶媒体又は他のハードウェアと一緒に若しくは他のハードウェアの一部として供給される固体媒体等の適切な媒体(必ずしもではないが、特には非一時的媒体)により記憶及び/又は分配することができるのみならず、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介して等のように他の形態で分配することもできる。
【0111】
しかしながら、当該コンピュータプログラムはワールドワイドウェブ等のネットワーク上に提示することもでき、斯様なネットワークからデータプロセッサの作業メモリにダウンロードすることもできる。本発明の他の例示的実施態様によれば、コンピュータプログラム要素をダウンロードのために利用可能にする媒体も提供され、該コンピュータプログラム要素は本発明の前述した実施態様の1つによる方法を実行するように構成される。
【0112】
本発明の実施態様は異なる主題に関して説明されたことに注意すべきである。特に、幾つかの実施態様は方法のタイプの請求項に関して説明される一方、他の実施態様は装置タイプの請求項に関して説明されている。しかしながら、当業者であれば上記及び下記の説明から、そうでないと示されない限り、1つのタイプの主題に属するフィーチャの何らかの組み合わせに加えて、別の主題に関するフィーチャの間の如何なる組み合わせも、この出願で開示されたと見なされるものと推測するであろう。しかしながら、全てのフィーチャは組み合わせることができ、斯かるフィーチャの単なる寄せ集め以上の相乗的効果を提供するものである。
【0113】
以上、本発明を図面及び上記記載において詳細に図示及び説明したが、このような図示及び説明は解説的又は例示的なものであって、限定するものではないと見なされるべきである。本発明は開示された実施態様に限定されるものではない。開示された実施態様に対する他の変形例は、当業者によれば、請求項に記載の発明を実施するに際して図面、本開示及び従属請求項の精査から理解し実施することができるものである。
【0114】
尚、請求項において“有する”なる文言は他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。また、単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項に記載された幾つかの項目の機能を充足することができる。また、特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に使用することができないということを示すものではない。また、請求項における如何なる符号も当該範囲を限定するものと見なしてはならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6