(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る燃料電池セル及びセルスタック装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、燃料電池セルの一例として固体酸化物形燃料電池セル(SOFC)を用いて説明する。
図1はセルスタック装置を示す斜視図、
図2はマニホールドの断面図である。なお、
図1及び
図2において、いくつかの燃料電池セルの記載を省略している。
【0015】
[セルスタック装置]
図1に示すように、セルスタック装置100は、マニホールド2と、複数の燃料電池セル10と、を備えている。
【0016】
[マニホールド]
図2に示すように、マニホールド2は、燃料電池セル10にガスを供給するように構成されている。また、マニホールド2は、燃料電池セル10から排出されたガスを回収するように構成されている。マニホールド2は、ガス供給室21とガス回収室22とを有している。ガス供給室21には、燃料処理器70から燃料ガスが供給される。ガス回収室22は、各燃料電池セル10にて使用された燃料ガスを回収する。
【0017】
マニホールド2は、マニホールド本体部23と、仕切板24とを有している。マニホールド本体部23は、内部に空間を有している。マニホールド本体部23は、直方体状である。
【0018】
図3に示すように、マニホールド本体部23の天板部231には、複数の貫通孔232が形成されている。各貫通孔232は、マニホールド本体部23の長さ方向(z軸方向)に間隔をあけて並んでいる。各貫通孔232は、マニホールド本体部23の幅方向(y軸方向)に延びている。各貫通孔232は、ガス供給室21及びガス回収室22と連通している。なお、各貫通孔232は、ガス供給室21と連通する部分とガス回収室22と連通する部分とに分かれていてもよい。
【0019】
仕切板24は、マニホールド本体部23の空間をガス供給室21とガス回収室22とに仕切っている。詳細には、仕切板24は、マニホールド本体部23の略中央部において、マニホールド本体部23の長さ方向に延びている。仕切板24は、マニホールド本体部23の空間を完全に仕切っている必要は無く、仕切板24とマニホールド本体部23との間に隙間が形成されていてもよい。
【0020】
図2に示すように、ガス供給室21の底面には、ガス供給口211が形成されている。また、ガス回収室22の底面には、ガス排出口221が形成されている。ガス供給口211は、例えば、燃料電池セル10の配列方向(z軸方向)において、マニホールド2の中心Cよりも第1端部201側に配置されている。一方、ガス排出口221は、例えば、燃料電池セル10の配列方向(z軸方向)において、マニホールド2の中心Cよりも第2端部202側に配置されている。
【0021】
[燃料電池セル]
図4は、セルスタック装置の断面図を示している。
図4に示すように、燃料電池セル10は、マニホールド2から上方に延びている。燃料電池セル10は、基端部101及び先端部102を有している。燃料電池セル10は、基端部101がマニホールド2に取り付けられている。すなわち、マニホールド2は、各燃料電池セル10の基端部101を支持している。本実施形態では、燃料電池セル10の基端部101は下端部を意味し、燃料電池セル10の先端部102は上端部を意味する。
【0022】
図1に示すように、各燃料電池セル10は、主面同士が対向するように並べられている。また、各燃料電池セル10は、マニホールド2の長さ方向(z軸方向)に沿って間隔をあけて並べられている。すなわち、燃料電池セル10の配列方向は、マニホールド2の長さ方向に沿っている。なお、各燃料電池セル10は、マニホールド2の長さ方向に沿って等間隔に配置されていなくてもよい。
【0023】
図4及び
図5に示すように、燃料電池セル10は、支持基板4と、複数の発電素子部5と、連通部材3と、を有している。各発電素子部5は、支持基板4の第1主面45及び第2主面46に支持されている。なお、第1主面45に形成される発電素子部5の数と第2主面46に形成される発電素子部5の数とは、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。また、各発電素子部5の大きさは、互いに異なっていてもよい。
【0024】
[支持基板]
支持基板4は、マニホールド2から上下方向に延びている。詳細には、支持基板4は、マニホールド2から上方に延びている。支持基板4は、扁平状であり、基端部41と先端部42とを有している。基端部41及び先端部42は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)における両端部である。本実施形態では、支持基板4の基端部41は下端部を意味し、支持基板4の先端部42は上端部を意味する。
【0025】
支持基板4の基端部41は、マニホールド2に取り付けられる。例えば、支持基板4の基端部41は、接合材などによってマニホールド2の天板部231に取り付けられる。詳細には、支持基板4の基端部41は、天板部231に形成された貫通孔234に挿入されている。なお、支持基板4の基端部41は、貫通孔234に挿入されていなくてもよい。このように支持基板4の基端部41がマニホールド2に取り付けられることによって、支持基板4の基端部41は、ガス供給室21及びガス回収室22と連結している。
【0026】
支持基板4は、複数の第1ガス流路43と、複数の第2ガス流路44とを有している。第1ガス流路43は、支持基板4内を上下方向に延びている。すなわち、第1ガス流路43は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に延びている。第1ガス流路43は、支持基板4を貫通している。各第1ガス流路43は、支持基板4の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。なお、各第1ガス流路43は、等間隔に配置されていることが好ましい。支持基板4は、長さ方向(x軸方向)よりも幅方向(y軸方向)の寸法の方が長くてもよい。
【0027】
図4に示すように、隣り合う第1ガス流路43のピッチp1は、例えば、1〜5mm程度である。この隣り合う第1ガス流路43のピッチp1は、第1ガス流路43の中心間の距離である。例えば、第1ガス流路43のピッチp1は、基端部41、中央部、及び先端部42のそれぞれにおいて測定したピッチの平均値とすることができる。
【0028】
第1ガス流路43は、燃料電池セル10の基端部101から先端部102に向かって延びている。燃料電池セル10をマニホールド2に取り付けた状態において、第1ガス流路43は、基端部101側において、ガス供給室21と連通している。
【0029】
第2ガス流路44は、支持基板4内を上下方向に延びている。すなわち、第2ガス流路44は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に延びている。第2ガス流路44は、第1ガス流路43と実質的に平行に延びている。
【0030】
第2ガス流路44は、支持基板4を貫通している。各第2ガス流路44は、支持基板4の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。なお、各第2ガス流路44は、等間隔に配置されていることが好ましい。
【0031】
隣り合う第2ガス流路44のピッチp2は、例えば、1〜5mm程度である。この隣り合う第2ガス流路44のピッチp2は、第2ガス流路44の中心間の距離である。例えば、第2ガス流路44のピッチp2は、基端部41、中央部、及び先端部42のそれぞれにおいて測定したピッチの平均値とすることができる。なお、各第2ガス流路44間のピッチp2は、各第1ガス流路43間のピッチp1と実質的に等しいことが好ましい。
【0032】
第2ガス流路44は、燃料電池セル10の先端部102から基端部101に向かって延びている。燃料電池セル10をマニホールド2に取り付けた状態において、第2ガス流路44は、基端部101側において、マニホールド2のガス回収室22と連通している。
【0033】
隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0は、例えば、1〜10mm程度である。この隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0は、第1ガス流路43の中心と第2ガス流路44の中心との距離である。例えば、ピッチp0は、支持基板4の第1端面411において測定することができる。
【0034】
隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0は、隣り合う第1ガス流路43のピッチp1よりも大きい。また、隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0は、隣り合う第2ガス流路44のピッチp2よりも大きい。
【0035】
第1ガス流路43と第2ガス流路44とは、燃料電池セル10の先端部102側において互いに連通している。詳細には、第1ガス流路43と、第2ガス流路44とが、連通部材3の連通流路30を介して連通している。
【0036】
第1ガス流路43及び第2ガス流路44は、第1ガス流路43内におけるガスの圧力損失が第2ガス流路44内におけるガスの圧力損失よりも小さくなるように構成されてい
る。
【0037】
例えば、各第1ガス流路43の流路断面積は、各第2ガス流路44の流路断面積よりも大きくすることができる。なお、第1ガス流路43の数と第2ガス流路44との数とが異なる場合は、各第1ガス流路43の流路断面積の合計値が、各第2ガス流路44の流路断面積の合計値よりも大きくすることができる。
【0038】
特に限定されるものではないが、各第2ガス流路44の流路断面積の合計値は、各第1ガス流路43の流路断面積の合計値の20〜95%程度とすることができる。なお、第1ガス流路43の流路断面積は、例えば、0.5〜20mm
2程度とすることができる。また、第2ガス流路44の流路断面積は、例えば、0.1〜15mm
2程度とすることができる。
【0039】
なお、第1ガス流路43の流路断面積は、第1ガス流路43が延びる方向(x軸方向)と直交する面(yz平面)で切断した切断面における第1ガス流路43の流路断面積を言う。また、第1ガス流路43の流路断面積は、基端部41側の任意の箇所における流路断面積と、中央部の任意の箇所における流路断面積と、先端部42側の任意の箇所における流路断面積との平均値とすることができる。
【0040】
また、第2ガス流路44の流路断面積は、第2ガス流路44が延びる方向(x軸方向)と直交する面(yz平面)で切断した切断面における第2ガス流路44の流路断面積を言う。また、第2ガス流路44の流路断面積は、基端部41側の任意の箇所における流路断面積と、中央部の任意の箇所における流路断面積と、先端部42側の任意の箇所における流路断面積との平均値とすることができる。
【0041】
図5に示すように、支持基板4は、第1主面45と、第2主面46とを有している。第1主面45と第2主面46とは、互いに反対を向いている。第1主面45及び第2主面46は、各発電素子部5を支持している。第1主面45及び第2主面46は、支持基板4の厚さ方向(z軸方向)を向いている。また、支持基板4の各側面47は、支持基板4の幅方向(y軸方向)を向いている。各側面47は、湾曲していてもよい。
図1に示すように、各支持基板4は、第1主面45と第2主面46とが対向するように配置されている。
【0042】
図5に示すように、支持基板4は、発電素子部5を支持している。支持基板4は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板4は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成される。または、支持基板4は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板4の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。この気孔率は、例えば、アルキメデス法、又は微構造観察により測定される。
【0043】
支持基板4は、緻密層48によって覆われている。緻密層48は、第1ガス流路43及び第2ガス流路44から支持基板4内に拡散されたガスが外部に排出されることを抑制するように構成されている。本実施形態では、緻密層48は、支持基板4の第1主面45、第2主面46、及び各側面47を覆っている。なお、本実施形態では、緻密層48は、後述する電解質7と、インターコネクタ9とによって構成されている。緻密層48は、支持基板4よりも緻密である。例えば、緻密層48の気孔率は、0〜7%程度である。
【0044】
[発電素子部]
複数の発電素子部5が、支持基板4の第1主面45及び第2主面46に支持されている。各発電素子部5は、第1及び第2ガス流路43,44が延びる方向(x軸方向)に沿って間隔をあけて配置される。詳細には、各発電素子部5は、支持基板4上において、基端部41から先端部42に向かって互いに間隔をあけて配置されている。なお、各発電素子部5は、インターコネクタ9によって、互いに直列に接続されている。
【0045】
発電素子部5は、支持基板4の幅方向(y軸方向)に延びている。発電素子部5は、支持基板4の幅方向において第1部分51と第2部分52とに区画される。なお、第1部分51と第2部分52との厳密な境界はない。例えば、燃料電池セル10をマニホールド2に取り付けた状態において、支持基板4の長さ方向視(x軸方向視)において、ガス供給室21とガス回収室22との境界と重複する部分を、第1部分51と第2部分52との境界部とすることができる。
【0046】
支持基板4の厚さ方向視(z軸方向視)において、第1ガス流路43は、発電素子部5の第1部分51と重複している。また、支持基板4の厚さ方向視(z軸方向視)において、第2ガス流路44は、発電素子部5の第2部分52と重複している。なお、複数の第1ガス流路43のうち、一部の第1ガス流路43が第1部分51と重複していなくてもよい。同様に、複数の第2ガス流路44のうち、一部の第2ガス流路44が第2部分52と重複していなくてもよい。
【0047】
図6は、第1ガス流路43に沿って切断した燃料電池セル10の断面図である。なお、第2ガス流路44に沿って切断した燃料電池セル10の断面図は、第2ガス流路44の流路断面積が異なる以外は、
図6と同じである。
【0048】
発電素子部5は、燃料極6、電解質7、及び空気極8を有している。また、発電素子部5は、反応防止膜11をさらに有している。燃料極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極6は、燃料極集電部61と燃料極活性部62とを有する。
【0049】
燃料極集電部61は、凹部49内に配置されている。凹部49は、支持基板4に形成されている。詳細には、燃料極集電部61は、凹部49内に充填されており、凹部49と同様の外形を有する。各燃料極集電部61は、第1凹部611及び第2凹部612を有している。燃料極活性部62は、第1凹部611内に配置されている。詳細には、燃料極活性部62は、第1凹部611内に充填されている。
【0050】
燃料極集電部61は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部61は、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部61の厚さ、及び凹部49の深さは、50〜500μm程度である。
【0051】
燃料極活性部62は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部62は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部62の厚さは、5〜30μmである。
【0052】
電解質7は、燃料極6上を覆うように配置されている。詳細には、電解質7は、一のインターコネクタ9から他のインターコネクタ9まで長さ方向に延びている。すなわち、支持基板4の長さ方向(x軸方向)において、電解質7とインターコネクタ9とが交互に配置されている。また、電解質7は、支持基板4の第1主面45、第2主面46、及び各側面47を覆っている。
【0053】
電解質7は、支持基板4よりも緻密である。例えば、電解質7の気孔率は、0〜7%程度である。電解質7は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質7は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0054】
反応防止膜11は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜11は、平面視において、燃料極活性部62と略同一の形状である。反応防止膜11は、電解質7を介して、燃料極活性部62と対応する位置に配置されている。反応防止膜11は、電解質7内のYSZと空気極活性部81内のSrとが反応して電解質7と空気極活性部81との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜11は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜11の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0055】
空気極8は、燃料極6と協働して電解質7を挟むように配置されている。空気極8は、空気極活性部81及び空気極集電部82を有している。
【0056】
空気極活性部81は、反応防止膜11上に配置されている。空気極活性部81は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。空気極活性部81は、空気極集電部82よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、空気極活性部81における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、空気極集電部82における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0057】
空気極活性部81は、多孔質の材料から構成される。空気極活性部81は焼成体である。空気極活性部81は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極活性部81は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極活性部81の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0058】
空気極集電部82は、空気極活性部81上に配置されている。空気極集電部82は、空気極活性部81から、隣の発電素子部5に向かって延びている。空気極集電部82は、インターコネクタ9を介して隣の発電素子部5の燃料極集電部61と電気的に接続されている。なお、燃料極集電部61と空気極集電部82とは、支持基板20の長手方向(x軸方向)において、発電領域から互いに反対側に延びている。なお、発電領域とは、平面視(z軸方向視)において、燃料極活性部62と電解質7と空気極活性部81とが重複する領域である。
【0059】
空気極集電部82は、電子伝導性を有する多孔質材料から構成される。空気極集電部82は、焼成体である。空気極集電部82は、空気極活性部81よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。空気極集電部82は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0060】
空気極集電部82は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電部82は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電部82は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。なお、空気極集電部82の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0061】
インターコネクタ9は、x軸方向において隣り合う発電素子部5を電気的に接続するように構成されている。インターコネクタ9は、隣り合う発電素子部5の一方の発電素子部5の燃料極6と、他方の発電素子部5の空気極8とを電気的に接続している。詳細には、インターコネクタ9は、一方の発電素子部5の燃料極集電部61と、他方の発電素子部5の空気極集電部82とを電気的に接続している。
【0062】
このように、各発電素子部5は、インターコネクタ9によって、第1及び第2主面45、46のそれぞれにおいて燃料電池セル10の先端部102から基端部101まで直列に接続されている。
【0063】
インターコネクタ9は、例えば、燃料極集電部61の第2凹部612内に配置されている。詳細には、インターコネクタ9は、第2凹部612内に埋設(充填)されている。インターコネクタ9は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ9は、支持基板4よりも緻密である。例えば、インターコネクタ9の気孔率は、0〜7%程度である。インターコネクタ9は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ9の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0064】
図7に示すように、各燃料電池セル10において最も基端側に配置されたインターコネクタ9dは、第1主面45に配置される発電素子部5と、第2主面に配置される発電素子部5とを電気的に接続している。なお、各燃料電池セル10の各主面45,46において最も基端側に配置された一対の発電素子部5は、互いに隣り合っている。また、本実施形態では、第2主面46において最も基端側に配置されたインターコネクタ9が、各燃料電池セル10において最も基端側に配置されたインターコネクタである。
【0065】
第1主面45において最も基端側に配置された発電素子部5の空気極集電部82は、第1主面45から側面47を介して第2主面46まで延びている。すなわち、この最も基端側に配置された発電素子部5の空気極集電部82は、環状に延びている。そして、第2主面46において最も基端側に配置されたインターコネクタ9は、第1主面45から第2主面46まで延びる空気極集電部82と、第2主面46において最も基端側に配置された発電素子部5の燃料極集電部61と、を電気的に接続している。
【0066】
このように、第1主面45において直列接続された複数の発電素子部5と、第2主面46において直列接続された複数の発電素子部5とは、インターコネクタ9によって、燃料電池セル10の基端部101において直列接続されている。
【0067】
[連通部材]
図4に示すように、連通部材3は、支持基板4の先端部42に取り付けられている。そして、連通部材3は、第1ガス流路43と第2ガス流路44とを連通させる連通流路30を有している。詳細には、連通流路30は、各第1ガス流路43と各第2ガス流路44とを連通する。連通流路30は、各第1ガス流路43から各第2ガス流路44まで延びる空間によって構成されている。連通部材3は、支持基板4に接合されていることが好ましい。また、連通部材3は、支持基板4と一体的に形成されていることが好ましい。連通流路30の数は、第1ガス流路43の数よりも少ない。本実施形態では、一本の連通流路30のみによって、複数の第1ガス流路43と複数の第2ガス流路44とが連通されている。
【0068】
連通部材3は、例えば、多孔質である。また、連通部材3は、その外側面を構成する緻密層31を有している。緻密層31は、連通部材3の本体よりも緻密に形成されている。例えば、緻密層31の気孔率は、0〜7%程度である。この緻密層31は、連通部材3と同じ材料や、上述した電解質7に使用される材料、結晶化ガラス等によって形成することができる。
【0069】
[集電部材]
図8に示すように、集電部材12は、隣り合う燃料電池セル10の間に配置されている。そして、集電部材12は、隣り合う燃料電池セル10を互いに電気的に接続している。集電部材12は、隣り合う燃料電池セル10の先端部102同士を接合している。例えば、集電部材12は、支持基板4の両主面に配置された複数の発電素子部5のうち、最も先端側に配置された発電素子部5よりも先端側に配置されている。集電部材12は、隣り合う燃料電池セル10の最も先端側に配置された発電素子部5同士を電気的に接続している。なお、各燃料電池セル10の各主面45,46において最も先端側に配置された発電素子部5は、隣の燃料電池セル10の最も先端側に配置された発電素子部5と隣り合っている。
【0070】
集電部材12は、導電性接合材103を介して、発電素子部5から延びる空気極集電部82に接合される。導電性接合材103としては、周知の導電性セラミックス等を用いることができる。例えば、導電性接合材103は、(Mn,Co)
3O
4、(La,Sr)MnO
3、及び(La,Sr)(Co,Fe)O
3などから選ばれる少なくとも1種によって構成することができる。
【0071】
このように、各燃料電池セル10において最も先端側に配置された第1先端側インターコネクタ9bは、集電部材12及び空気極集電部82を介して、隣り合う一対の燃料電池セル10の発電素子部5同士を電気的に接続している。本実施形態では、第1主面45において最も先端側に配置されたインターコネクタ9が、各燃料電池セル10において最も先端側に配置されたインターコネクタである。
【0072】
[発電素子部の面積]
図9に示すように、各発電素子部5は、支持基板4上において、燃料電池セル10の基端部101から先端部102に向かって互いに間隔をあけて配置されている。この各発電素子部5のうち、最も先端側(
図9の一番上側)に配置された発電素子部5を第1先端側発電素子部5aと称する。なお、先端側とは、燃料電池セル10の連通流路30に近い側を言う。最も先端側に配置された発電素子部5とは、最も連通流路30に近い発電素子部5と同義である。
【0073】
また、第1先端側発電素子部5aと隣り合う発電素子部5を第2先端側発電素子部5bと称する。第2先端側発電素子部5bは、
図9の上から二番目の発電素子部である。
【0074】
第1先端側発電素子部5aの面積は、他の発電素子部5の面積の平均値よりも大きい。すなわち、第1先端側発電素子部5aを除いた各発電素子部5の面積の平均値よりも、第1先端側発電素子部5aの面積の方が大きい。好ましくは、第1先端側発電素子部5は、各発電素子部5のうち最も大きい面積を有する。
【0075】
発電素子部5の面積は、発電素子部5の厚さ方向に沿って見た状態(z軸方向視)において、燃料極活性部62、電解質7、及び空気極活性部81が重複する部分の面積を言う。第1先端側発電素子部5aは、他の発電素子部5と比べて、幅方向(y軸方向)の寸法を同じにして、長手方向(x軸方向)の寸法を変えることによって、面積を大きくすることが好ましい。
【0076】
各発電素子部5の面積の比較は、各発電素子部5が形成された支持基板4の面毎に行う。例えば、支持基板4の両面に各発電素子部5が形成されている場合、支持基板4の第1主面45に形成された第1先端側発電素子部5aの面積は、支持基板4の第1主面45に形成された他の各発電素子部5の面積の平均値よりも大きくなるように設計される。また、支持基板4の第2主面46に形成された第1先端側発電素子部5aの面積は、支持基板4の第2主面46に形成された他の各発電素子部5の面積の平均値よりも大きくなるように設計される。
【0077】
また、第2先端側発電素子部5bの面積は、第2先端側発電素子部5bよりも基端側にある各発電素子部5の面積の平均値よりも大きい。すなわち、第1及び第2先端側発電素子部5a、5bを除いた各発電素子部5の面積の平均値よりも、第2先端側発電素子部5bの面積の方が大きい。好ましくは、第2先端側発電素子部5bの面積は、第2先端側発電素子部5bよりも基端側にある各発電素子部5の各面積よりも大きい。例えば、第2先端側発電素子部5bは、第1先端側発電素子部5aの次に大きい面積を有する。
【0078】
好ましくは、第1及び第2先端側発電素子部5a、5bを除いた他の各発電素子部5の面積の平均値S0に対する、第1先端側発電素子部5aの面積Saの割合Sa/S0は、1.05以上とすることが好ましい。また、上記割合Sa/S0は、3.0以下とすることが好ましい。
【0079】
好ましくは、第1及び第2先端側発電素子部5a、5bを除いた他の各発電素子部5の面積の平均値S0に対する、第2先端側発電素子部5bの面積Sbの割合Sb/S0は、1.1以上とすることが好ましい。また、上記割合Sb/S0は、2.8以下とすることが好ましい。
【0080】
なお、発電素子部5の面積は、例えば、任意の2点においてxz断面を作成し、各xz断面において発電素子部5のx軸方向の長さを測定して平均値を算出する。また、任意の2点においてyz断面を作成し、各yz断面において発電素子部5のy軸方向の長さを測定して平均値を算出する。そして、この各平均値を乗算することによって、発電素子部5の面積を算出することができる。
【0081】
[インターコネクタの接触面の面積]
図10に示すように、インターコネクタ9は、空気極8と接触する接触面91を有する。接触面91は、空気極8の空気極集電部82と接触する面である。インターコネクタ9の外周縁部は、電解質7によって覆われており、空気極集電部82とは接触していない。このため、インターコネクタ9の外周縁部は接触面91ではない。
【0082】
図11は、燃料電池セル10の正面図である。なお、
図11では、インターコネクタ9の接触面91が見えるように、空気極活性部81及び反応防止膜11の記載を省略している。
図11に示すように、本実施形態では、インターコネクタ9の接触面91は、電解質7の開口部から露出している面である。
【0083】
図11に示すように、各インターコネクタ9のうち、燃料電池セル10の中央部に配置された中央インターコネクタ9aの接触面91の面積は、他のインターコネクタ9の接触面91の面積の平均値よりも小さい。本実施形態では、各燃料電池セル10は、10個のインターコネクタ9を有している。このため、基端側から5番目のインターコネクタ9と、先端側から5番目のインターコネクタ9との双方が、中央インターコネクタ9aである。
【0084】
中央インターコネクタ9aの接触面91の面積は、各インターコネクタ9のうち、最も先端側に配置された第1先端側インターコネクタ9bの接触面91の面積よりも小さい。また、中央インターコネクタ9aの接触面91の面積は、第2先端側インターコネクタ9cの接触面91の面積よりも小さい。この第2先端側インターコネクタ9cは、第1先端側インターコネクタ9bと隣り合うインターコネクタである。すなわち、第2先端側インターコネクタ9cは、先端側から2番目のインターコネクタ9である。第2先端側インターコネクタ9cの接触面91は、第1先端側インターコネクタ9bの接触面91と実質的に同じ面積を有してもよい。なお、第1先端側インターコネクタ9bは本発明の先端側インターコネクタの一例である。
【0085】
中央インターコネクタ9aの接触面91の面積は、各インターコネクタ9のうち、最も基端側に配置された第1基端側インターコネクタ9dの接触面91の面積よりも小さい。また、中央インターコネクタ9aの接触面91の面積は、第2基端側インターコネクタ9eの接触面91の面積よりも小さい。この第2基端側インターコネクタ9eは、第1基端側インターコネクタ9dと隣り合うインターコネクタである。すなわち、第2基端側インターコネクタ9eは、基端側から2番目のインターコネクタ9である。第2基端側インターコネクタ9eの接触面91は、第1基端側インターコネクタ9dの接触面91と実質的に同じ面積を有してもよい。なお、第1基端側インターコネクタ9dは、本発明の基端側インターコネクタの一例である。
【0086】
一対の中央インターコネクタ9a、第1及び第2先端側インターコネクタ9b、9c、並びに第1及び第2基端側インターコネクタ9d,9eを除いた他のインターコネクタ9の接触面91の面積は、例えば、中央インターコネクタ9aの接触面91の面積と実質的に同じとすることができる。
【0087】
好ましくは、第1先端側インターコネクタ9bの接触面91の面積の平均値Tbに対する、中央インターコネクタ9aの接触面91の面積Taの割合Ta/Tbは、0.3〜0.9程度とすることが好ましい。
【0088】
また、第1基端側インターコネクタ9dの接触面91の面積の平均値Tdに対する、中央インターコネクタ9aの接触面91の面積Taの割合Ta/Tdは、0.3〜0.9程度とすることが好ましい。
【0089】
中央インターコネクタ9aの接触面91は、第1先端側インターコネクタ9bの接触面91又は第1基端側インターコネクタ9dの接触面91と比べて、幅方向(y軸方向)の寸法を同じにして、長手方向(x軸方向)の寸法dを変えることによって、面積を小さくすることが好ましい。
【0090】
なお、インターコネクタ9の面積は、例えば、任意の2点においてxz断面を作成し、各xz断面においてインターコネクタ9のx軸方向の長さを測定して平均値を算出する。また、任意の2点においてyz断面を作成し、各yz断面においてインターコネクタ9のy軸方向の長さを測定して平均値を算出する。そして、この各平均値を乗算することによって、インターコネクタ9の面積を算出することができる。
【0091】
各インターコネクタ9の面積の比較は、各インターコネクタ9が形成された支持基板4の面毎に行う。例えば、支持基板4の両面に各インターコネクタ9が形成されている場合、支持基板4の第1主面45に形成された中央インターコネクタ9aの接触面91の面積は、支持基板4の第1主面45に形成された他の各インターコネクタ9の接触面91の面積の平均値よりも大きくなるように設計される。また、支持基板4の第2主面46に形成された中央インターコネクタ9aの接触面91の面積は、支持基板4の第2主面46に形成された他の各インターコネクタ9の接触面91の面積の平均値よりも大きくなるように設計される。
【0092】
[発電方法]
上述したように構成されたセルスタック装置100では、燃料ガスをマニホールド2のガス供給室21に供給するとともに、燃料電池セル10を空気などの酸素を含むガスに曝す。すると、空気極8において下記(1)式に示す化学反応が起こり、燃料極6において下記(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O
2+2e
−→O
2− …(1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− …(2)
【0093】
詳細には、ガス供給室21に供給された燃料ガスは、各燃料電池セル10の第1ガス流路43内を流れ、各発電素子部5の燃料極6において、上記(2)式に示す化学反応が起こる。各燃料極6において未反応であった燃料ガスは、第1ガス流路43を出て連通部材3の連通流路30を介して第2ガス流路44へ供給される。そして、第2ガス流路44へ供給された燃料ガスは、再度、燃料極6において上記(2)式に示す化学反応が起こる。第2ガス流路44を流れる過程において燃料極6において未反応であった燃料ガスは、マニホールド2のガス回収室22へ回収される。
【0094】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0095】
変形例1
上記実施形態では、セルスタック装置100の全ての燃料電池セル10において、各発電素子部5のうち第1先端側発電素子部5aが最も大きい面積を有していたが、これに限定されない。例えば、セルスタック装置100の複数の燃料電池セル10のうち、少なくとも一つの燃料電池セル10において、第1先端側発電素子部5aの面積が他の発電素子部5の面積の平均値よりも大きければよい。すなわち、複数の燃料電池セル10のうち、いくつかの燃料電池セル10において、第1先端側発電素子部5aの面積が他の発電素子部5の面積の平均値以下であってもよい。
【0096】
変形例2
各燃料電池セル10の第1及び第2主面45、46のそれぞれにおいて、各発電素子部5のうち第1先端側発電素子部5aの面積が他の発電素子部5の面積の平均値よりも大きかったが、これに限定されない。例えば、各燃料電池セル10の第1及び第2主面45,46の一方において、第1先端側発電素子部5aの面積が他の発電素子部5の面積の平均値よりも大きく、第1及び第2主面45,46の他方において、第1先端側発電素子部5aの面積が他の各発電素子部5の面積の平均値以下であってもよい。
【0097】
変形例3
上記実施形態では、各燃料電池セル10が有するインターコネクタ9の数が偶数であってため、中央インターコネクタ9aが2つ存在したが、インターコネクタ9の数が奇数の場合、中央インターコネクタ9aの数は1つとなる。
【0098】
変形例4
上記実施形態では、第1ガス流路43と第2ガス流路44とは、連通部材3が有する連通流路30によって連通されていたが、この構成に限定されない。例えば、
図12に示すように、支持基板4が、内部に連通流路30を有していてもよい。この場合、セルスタック装置100は、連通部材3を備えていなくてもよい。この支持基板4内に形成された連通流路30によって、第1ガス流路43と第2ガス流路44とが連通されている。
【0099】
変形例5
上記実施形態では、支持基板4は、複数の第1ガス流路43を有しているが、1つの第1ガス流路43のみを有していてもよい。同様に、支持基板4は、複数の第2ガス流路44を有しているが、1つの第2ガス流路44のみを有していてもよい。
【0100】
変形例6
上記実施形態では、燃料電池セル10はマニホールド2から上方に延びるように構成されているが、これに限定されない。例えば、燃料電池セル10は、マニホールド2から下方に延びていてもよい。この場合、燃料処理器70は、例えばマニホールド2の上方に配置される。また、マニホールド2の底面は上方を向いている。
【0101】
変形例7
上記実施形態のマニホールド2では、1つのマニホールド本体部23を仕切板24で仕切ることによって、ガス供給室21とガス回収室22とを画定しているが、マニホールド2の構成はこれに限定されない。例えば、2つのマニホールド本体部23によってマニホールド2を構成することもできる。この場合、1つのマニホールド本体部23がガス供給室21を有し、別のマニホールド本体部23がガス回収室22を有している。