(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記鋼床版には、当該鋼床版の高さを調整可能な高さ調整ボルトが前記鉄筋コンクリートに当接可能に螺合されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の床版構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の床版取替え方法では、以下のような問題があった。
ここで、コンクリート床版が取り替えを要するほど傷んでいる橋梁の多くは交通量が多いケースであり、コンクリート床版を取り替える際に交通量を制限したり、交通止めを行う必要があった。そのため、コンクリートの床版の取り替える際の交通制限にかかる必要時間が短いことが求められており、その点で改善の余地があった。
【0007】
そして、特許文献1では、主桁のウエブに床版支持ブラケットを溶接等によって取り付けている。そのため、床版支持ブラケットの取り付けに手間がかかるとともに、鋼床版の横リブを床版支持ブラケットに溶接等によって取り付けているので、この横リブに対する取り付けにも手間がかかる。
また、鋼床版の横リブは床版支持ブラケットに載置して当該床版支持ブラケットに取り付けられているが、基本的にこの床版支持ブラケットは片持ち梁として主桁に取り付けられている。そのため、鋼床版の重量を支える床版支持ブラケットは大きな強度を有する必要がある。
【0008】
また、床版支持ブラケットを介してのみ主桁に取り付けられているので、主桁と鋼床版との間で橋軸方向にせん断力を伝達するのが困難である。そのために鋼床版と主桁との一体構造の橋梁となり難く、橋梁としての強度が不足する虞がある。
【0009】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、コンクリート床版から鋼床版への床版の取り替えにかかる作業時間の短縮を図ることができ、主桁と鋼床版との間で橋軸方向にせん断力を確実に伝達することができる床版構造および床版取替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る床版構造は、橋梁の主桁に支持された床版構造であって、前記主桁の主桁上フランジの上面側に設けられた鉄筋コンクリートと、前記鉄筋コンクリートに被せるように配設された鋼床版と、を備え、前記鋼床版は、前記鉄筋コンクリート上に配置されたデッキプレートと、前記デッキプレートの下面側において橋軸方向に配設された主桁横縦リブと、を有し、前記主桁の主桁上フランジは、橋幅方向に隣り合って配置される一対の前記主桁横縦リブ同士の間に配置され、前記一対の主桁横縦リブには、前記鉄筋コンクリートの周囲に形成される凹部にずれ止め部材が設けられ、前記主桁上フランジの上面側において、前記一対の主桁横縦リブと前記鉄筋コンクリートとの間に、前記ずれ止め部材を一体的に埋設する不定形材料が充填されていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る床版取替え方法は、上述した橋梁の主桁に支持されて敷設されている既設の鉄筋コンクリート床版の一部を鋼床版に取り替える床版取替え方法であって、 前記鉄筋コンクリート床版の一部を除去するとともに、前記主桁上フランジの上面側に鉄筋コンクリートを残置する工程と、前記一対の主桁横縦リブに前記ずれ止め部材を設ける工程と、前記鋼床版を前記鉄筋コンクリートに被せるように配設し、該鉄筋コンクリートの周囲に設けられた前記凹部に前記ずれ止め部材を配置する工程と、前記主桁上フランジの上面側において、前記一対の主桁横縦リブと前記鉄筋コンクリートとの間に前記不定形材料を充填する工程と、を有することを特徴としている。
【0012】
本発明では、鋼床版におけるデッキプレートの下面側において橋軸方向に配設された主桁横縦リブ同士と鉄筋コンクリートとの間にずれ止め部材を一体的に埋設するように不定形材料が充填される。これにより鋼床版と主桁上フランジとが接合され、橋梁としての剛性と強度を確保することができる。その結果、従来のような床版支持ブラケットを用いた場合と比較して構造重量を低減することが可能となる。このとき、主桁上に鉄筋コンクリートが残されているので、主桁上フランジの座屈を抑制することができる。
また、本発明では、鉄筋コンクリートのうち除去しにくいスタッド間のコンクリートを残置させておくことが可能となるので、コンクリート除去作業にかかる手間や時間を低減することができる。
【0013】
さらに、本発明では、充填される不定形材料に埋設されるずれ止め部材が、充填された不定形材料に接する部分に設けられている。そのため、ずれ止め部材によって主桁から鋼床版に向けて橋軸方向のせん断力を確実に伝達することができる。
【0014】
また、本発明では、鋼床版と主桁上フランジと鉄筋コンクリートとの間に、不定形材料を充填するので、鉄筋コンクリートの鉄筋、鉄筋コンクリートの周囲の凹部に露出する鋼床版の下面、主桁上フランジの上面等の腐食を防止できる。
なお、この不定形材料には大きな強度を求める必要はない。そもそも鉄筋コンクリートも、十分な施工技術の無かった時代に打設されたコンクリートであり、さらに、長期間共用されていたことから、確実な設計が可能なだけの強度を保証することは困難であるため、そこに充填する不定形材料に大きな強度を求めなくてもよい。さらに、流動性が大きい不定形材料を用いることにより、残置されたコンクリートが劣化してひび割れが生じていた場合であっても、ひび割れに前記不定形材料が浸透、固化し、大きな強度回復が見込める利点がある。
さらに、上述したように鉄筋コンクリートを残す構造であり、鉄筋コンクリート床版のコンクリートを壊す量を低減できるので、騒音、振動、粉じんの発生を低減することができる。
【0015】
また、本発明に係る床版構造は、前記ずれ止め部材は、前記一対の主桁横縦リブの互いに対向する内面から突出する突起状部材であることを特徴としてもよい。
【0016】
この場合には、例えばボルトやスタッド等の突起状部材を互いに対向する一対の主桁横縦リブの内面に溶接等の固定手段によって容易に固定して突出させることができる。そして、突起状部材は充填される不定形材料に埋設されるため、主桁から鋼床版に向けて橋軸方向のせん断力を確実に伝達することができる。
【0017】
また、本発明に係る床版構造は、前記ずれ止め部材は、前記一対の主桁横縦リブの互いに対向する内面に形成される凹凸部であることを特徴としてもよい。
【0018】
この場合には、例えば表面に凹凸が形成されているチェッカープレートで主桁横縦リブを形成したり、主桁横縦リブの内面に重ね合わせて設けたり、或いは内面側の表面に凹凸部が形成された主桁横縦リブを採用することで容易にずれ止め部材を設けることができる。そして、主桁横縦リブに形成される凹凸部は充填される不定形材料に埋設されるため、主桁から鋼床版に向けて橋軸方向のせん断力を確実に伝達することができる。
【0019】
また、本発明に係る床版構造は、前記鋼床版は、デッキプレートの下面側において橋幅方向に配設された通し横リブを有し、前記
通し横リブは前記一対の主桁横縦リブを橋幅方向に貫通して連続して設けられ、前記鉄筋コンクリートには、上方に開口して橋幅方向に沿って延びる切欠部が形成され、前記切欠部に前記通し横リブが上方から差し込まれた状態で設けられ、前記ずれ止め部材は、前記切欠部に差し込まれた
前記通し横リブのうち前記一対の主桁横縦リブ間に介在している部分であることを特徴としてもよい。
【0020】
この場合には、鋼床版における横リブのうち通し横リブが一対の主桁横縦リブ間に介在した状態で設けられ、この一対の主桁横縦リブ間に位置する通し横リブをずれ止め部材として設けることができる。そして、一対の主桁横縦リブ間の通し横リブは充填される不定形材料に埋設されるため、主桁と鋼床版とが橋軸方向にせん断力を確実に伝達することができる。
また、本発明では、通し横リブは主桁左右の横リブ間を連続とするため、横桁やデッキプレートの発生応力を低減することができる。
【0021】
また、本発明に係る床版構造は、前記鉄筋コンクリートの上部の被りコンクリートが除去されていることが好ましい。
【0022】
この場合には、残置鉄筋コンクリートの上部の被りコンクリートを除去するのみでよいので、主桁上フランジに立設されているスタッド間のコンクリートを除去する必要がない。スタッド間のコンクリートは非常に除去に手間を要するため、当該コンクリートを残置することで、除去作業の手間を大幅に削減できる。なお、上部の被りコンクリートを除去するのは、路面高さを調整するための空間を確保すると共に、鋼床版の上に存在するアスファルト部の撤去を容易化するためである。
【0023】
また、本発明に係る床版構造は、前記鋼床版には、当該鋼床版の高さを調整可能な高さ調整ボルトが前記鉄筋コンクリートに当接可能に螺合されていることが好ましい。
【0024】
この場合には、高さ調整ボルトを回すことによって、鋼床版の高さを調整できるので、鋼床版の高さを、狙った位置に、例えば取り替え以前の鉄筋コンクリート床版の高さと等しくすることができる。つまり、現場において路面計画高を調整できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の床版構造および床版取替え方法によれば、コンクリート床版から鋼床版への床版の取り替えにかかる作業時間の短縮を図ることができ、主桁と鋼床版との間で橋軸方向にせん断力を確実に伝達することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態による床版構造および床版取替え方法について、図面に基づいて説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1及び
図2に示すように、本第1実施形態による床版構造は、橋梁10の主桁11に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版14の一部を鋼床版30(
図3(a)、(b)、及び
図13(a)、(b)参照))に取り替える構造である。つまり、第1実施形態では、橋幅方向Xに隣り合う主桁11、11の間隔が3m程度あり、橋幅方向Xに鉄筋コンクリート床版14の一部を切断して、新設の鋼床版30に取り替える場合に適用される。
【0029】
図1及び
図2は床版取替え前の橋梁10(ただし、片側の車線(図に示すものの場合、片側2車線)のみ)を示すもので、
図1は斜め上方から見た斜視図、
図2は斜め下方から見た斜視図である。
図1及び
図2に示すように、橋梁(橋梁の構造)10は、主桁11、横桁12、対傾構13および鉄筋コンクリート床版14を備えている。
【0030】
主桁11はH形鋼またはI形鋼によって形成され、橋軸方向(
図1においてZ方向)に延在して設けられている。なお、図に示すものの場合、両車線合わせて全部で6本の主桁が設けられている中で、片側の車線の3本のみが表されている。これらの主桁11は、橋幅方向(橋軸方向Zと直交する水平方向(いわゆる橋軸直交方向。
図1においてX方向))に所定間隔で配置されている。主桁11は主桁ウエブ11aと主桁上フランジ11bと主桁下フランジ11cとを有している。なお、主桁11は図示しない橋台や橋脚の間に架設されている。
【0031】
横桁12はH形鋼またはI形鋼によって形成され、橋幅方向Xに延在し、かつ隣り合う主桁11,11間に架設され、横桁12の端部は主桁ウエブ11aに溶接やボルト止め等によって結合されている。また、横桁12は、橋軸方向Zに所定間隔で複数配置されているが、
図2では橋梁10の一部を図示しているので、橋軸直交方向に同軸で延在する2本の横桁12が設けられている。
【0032】
対傾構13は、風や地震等の横荷重に抵抗するためのもので、上弦材、下弦材、縦材および斜材等からなるトラス構造となっている。対傾構13は隣り合う主桁11,11間に架設され、ガセット等によって主桁11に結合されている。また、対傾構13は、橋軸方向Zに所定間隔で複数配置されているが、
図2では橋梁10の一部を図示しているので、橋軸直交方向に同軸で延在する2つの対傾構13が設けられ、これら対傾構13が橋軸方向Zに離間し、かつ横桁12を挟む位置に設けられている。
【0033】
鉄筋コンクリート床版14は内部に鉄筋が縦横に配筋されており、当該鉄筋コンクリート床版14の下面には、当該下面から突出する凸条(ハンチ部)14aが橋軸方向Zに延在していて、本実施形態では凸条14aは橋幅方向Xに所定間隔で3つ形成されている。3つの凸条14aは、3本の主桁11の直上に位置しており、主桁上フランジ11bに設置固定されている。主桁上フランジ11bの上面11eには図示しないスタッドが橋幅方向Xおよび橋軸方向Zにそれぞれ所定間隔で複数立設され、これらスタッドが鉄筋コンクリート床版14のコンクリートと結合されている。また、鉄筋コンクリート床版14は橋幅方向Xの両端部にそれぞれ地覆14bが設けられ、一方の端部に高欄14cが設けられている。さらに、鉄筋コンクリート床版14の上面にはアスファルト等で形成された舗装部15が地覆14b,14b間において施工されている。
【0034】
次に、新設の鋼床版30の構成について具体的に説明する。
鋼床版30は、
図3(a)、(b)に示すように、デッキプレート31と、デッキプレート31の下面に溶接等によって接合された複数の縦リブ32と、縦リブ32に直角に配置された横リブ33と、を備えている。デッキプレート31の上面には予め舗装部34が施工されている。デッキプレート31の外周縁部31aは舗装部34の外周縁部34aより外側に突出している。
【0035】
複数の縦リブ32は、それぞれ橋軸方向Zに延在するとともに、橋幅方向Xにおいて所定間隔で平行に設けられている。
図4に示すように、これら複数の縦リブ32のうち主桁上フランジ11bを橋幅方向Xに挟むようにして配置されている2つの縦リブ32は他の縦リブ32より下方に突出し、かつ新設の鋼床版30のデッキプレート31を残置鉄筋コンクリート21を覆うように所定位置に配置させた状態において、下端部が主桁上フランジ11bの下面よりも十分に下方に延出する主桁横縦リブ32A,32Aとなっている。
なお、本実施形態では、主桁横縦リブ32Aは、他の縦リブ32よりも十分に下方に突出した状態で設けられているが、必ずしもこのような長さで突出される必要はなく、主桁上フランジ11bの上面11eよりも下方であればよい。
【0036】
横リブ33は、
図4に示すように、デッキプレート31の下面側において、略橋幅方向Xに配設され、かつ橋幅方向Xの一端面または両端面の少なくとも一部が直近の主桁11の主桁ウエブ11aのウエブ面と対向して設けられている。
具体的には、デッキプレート31の下面には、橋幅方向Xに延在する2つの横リブ33(33A,33B)が主桁11を挟んで溶接等によって接合されている。
【0037】
また、鋼床版30における橋幅方向Xの紙面右側の横リブ33Aは、主桁11から一定距離までは下端部が略水平方向に形成され、さらに主桁11から離れた位置においては、この主桁11から離れるにしたがって、下端部が次第にデッキプレート31側に近づくように傾斜した態様の板体状に形成されている(
図15(a)参照)。これは、横リブ33Aとしての必要高さよりも、主桁11への接合部のための必要高さが大きいためにこのような形状となっている。そのため、接合部近傍での高さで一様の高さにしてもよい。そして、この横リブ33Aの橋幅方向Xの一端面(つまり、主桁11側の端面)の一部が直近(紙面右側)の主桁ウエブ11aの右側のウエブ面と対向している。なお、横リブ33Aの下端面にはフランジ33bが固定されている。
なお、以下でいう右側とは、本明細書の表示面に向かって右側のことを意味する。左側についても同様である。
【0038】
このような横リブ33Aはデッキプレート31の短辺の長さ方向(橋軸方向Z)の略中央部に配置されており、この横リブ33Aに前記縦リブ32が直交して配置され、それらの交差部が溶接されている。なお、パネル間の接合部での発生応力を減少させるには、デッキプレート31の長さ方向の略1/3の部分に配置することも有効な手段である。また、主桁横縦リブ32Aは、主桁上フランジ11bとは反対側の面が、横リブ33Aの一端面と対向し、かつ主桁横縦リブ32Aの延在方向と横リブ33Aの延在方向とが直交するように当該横リブ33Aの一端面に当接されたうえで、この横リブ33Aと溶接によって接合されている。さらに、主桁横縦リブ32Aの一端部は、主桁上フランジ11bの下面よりも下方に延出していて、主桁ウエブ11aのウエブ面と対向した状態となっている。
【0039】
図3(b)に示すように、鋼床版30の橋幅方向Xで左側の横リブ33Bは、矩形板状に形成された基部と、橋幅方向Xの両端部に設けられて当該基部からそれぞれ下方に突出する突出部33cとを一体に有する板体状に形成されている。突出部33cは、その下端側が、横リブ33Bの延在方向の両端側に向かうにしたがって次第に下方側に突出する板体状に形成されている。したがって、横リブ33Bの両端およびその近傍は、突出部33cにより、延在方向の両端部に向かうに従って漸次鉛直方向の長さが大きくなる形状となっている。
【0040】
また、
図4に示すように、横リブ33Bの両端部33dは、それぞれ直近の主桁ウエブ11aのウエブ面と対向している。このような横リブ33Bはデッキプレート31の短辺の長さ方向の略中央部に配置、つまり横リブ33Aの延長上に配置されており、横リブ33Bに前記縦リブ32が直交して配置され、それらの交差部が溶接されている。
【0041】
次に、第1実施形態において、鉄筋コンクリート床版14を鋼床版30に取り替えるための床版構造について、
図4及び
図5に基づいて説明する。
床版構造は、
図13(a)、(b)に示す鉄筋コンクリート床版14のうち、主桁11の主桁上フランジ11bの上面側に設けられた残置鉄筋コンクリート21(鉄筋コンクリート)と、残置鉄筋コンクリート21に被せるように配設された前記鋼床版30と、を備えている。ここで、残置鉄筋コンクリート21は、主桁11上に設けられる鉄筋コンクリート床版14の鉄筋コンクリートを除去したときに残置される部分である。
なお、本実施形態では、主桁上フランジ11bと鋼床版30とによって囲まれる領域で鉄筋コンクリート床版14の鉄筋コンクリートが除去される領域をコンクリート除去領域2A(凹部)とする。
【0042】
一対の主桁横縦リブ32A、32Aの互いに対向する内面32bには、残置鉄筋コンクリート21の周囲に形成されるコンクリート除去領域2Aにずれ止め部材51(突起状部材)が設けられている。このずれ止め部材51は、通常は頭付きスタッドを用いる。ここで、主桁横縦リブ32A,32Aは、力学的な作用としては鋼床版30の縦リブとして作用する。
【0043】
ずれ止め部材51は、
図5に示すように、主桁11を挟んだ両側の主桁横縦リブ32A,32Aのそれぞれの主桁横縦リブ32A,32Aの対向する内面32bに対して垂直に突設されている。ずれ止め部材51は、頭部51aを突設先端側とし、軸部51bの基端部51cが突合せ溶接等により固着されている。ずれ止め部材51は、主桁11を挟んで橋軸方向Zに対象的に所定の間隔をあけて複数配置されている。
【0044】
これらのずれ止め部材51は、主桁横縦リブ32A,32A同士の間のコンクリート除去領域2Aに充填されたモルタル47(不定形材料)に一体的に埋設されている。ずれ止め部材51は、ずれ止め部材51を通じて鋼床版30と主桁11の間のずれ止めとして機能し、橋軸方向Zのせん断力を伝達する作用を有している。
ここで、コンクリート除去領域2Aは、主桁11の主桁上フランジ11b上と、デッキプレート31と、一対の主桁横縦リブ32A、32Aとによって囲まれる領域であって、これらの内側にモルタル47が充填される。
【0045】
本実施形態では、
図4に示すように、主桁上フランジ11bと横リブ取付部材16(後述する)との間の主桁ウエブ11aの上下方向の長さL1は、224mm以上である。
この長さL1は、主桁ウエブ11aの厚さの38倍以下であることが好ましい。これは、主桁上フランジ11bと主桁ウエブ11aとの間の溶接部に発生する応力が、疲労の生じないレベルまで十分に低減されるためである。
また、厚肉断面のウエブなども製作されるようになっており、この場合には1600mmの桁高で9mmの板厚とした場合のリブ取付部材の長さL1である224mmを、最低限の離間距離として設定する。よって、主桁上フランジ11bと主桁ウエブ11aとの間の応力を低減するには、長さL1として224mm以上の間隔を確保すれば適切であると言える。
また、座屈のことを考慮に入れると、道路橋示方書に記載されているように、主桁ウエブ11aに高強度鋼SBHSを使った場合の座屈耐力の低減が無いレベルの最大限の無補剛区間幅として、板厚の38倍を設定することが設計的にも適切な上限値である。
【0046】
次に、上述した構成の橋梁10の主桁11に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版14の一部を新設の鋼床版30に取り替える施工方法について、
図6の施工フローを参照しながら詳細に説明する。
先ず、準備工程(
図6のステップS1)として、橋梁10の下に、図示しない全面吊足場を設置し、この全面吊足場から、新設の鋼床版30の設置(取替え)の際に干渉する部材の撤去、改良、仕上げ(一部グラインダー作業)を行う。なお、検査等のためなどに全面足場が予め設置されている場合は、その足場を使って同じ作業を行うことができる。
【0047】
次に、
図7(a)、(b)、及び
図8(a)、(b)に示すように、主桁ウエブ11aの上部に横リブ取付部材16を高力ボルトによってボルト結合する。この場合、鉄筋コンクリート床版14の下面側で作業を行って横リブ取付部材16を主桁ウエブ11aにボルト結合する(ステップS2)。
なお、
図7(b)は、
図7(a)における右側の主桁11の、横リブ取付部材16を含む断面図である。
【0048】
横リブ取付部材16は、
図8(a)、(b)に示すように、断面T形に形成され、矩形板状の固定プレート16aと、この固定プレート16aの幅方向中央部に、当該固定プレート16aの板面から直角方向に突設させた矩形板状の連結プレート16bとを有している。固定プレート16aと連結プレート16bとは上下方向の長さが等しくなっており、連結プレート16bの固定プレート16aからの突出長さは、鋼床版30の横リブ33の端面に連結プレート16bの先端面が当接可能となるような長さに設定されている。この横リブ取付部材16は、横リブ33と主桁ウエブ11aを連続化させるための部材であり、引張ボルト接合によって主桁ウエブ11aに取り付けられ、また、鋼床版30の横リブ33とは2面せん断の摩擦接合により接続される。
また、固定プレート16aにはボルト孔16cが複数設けられ、連結プレート16bにはボルト孔16dが複数設けられている。
【0049】
横リブ取付部材16は、新設の鋼床版30を取り替える部位の下方に位置する主桁ウエブ11aのウエブ面に固定プレート16aを当接させてボルト結合することによって取り付ける。本実施形態では、
図7(a)において右側の主桁11と中央部の主桁11との間において鉄筋コンクリート床版14の一部を鋼床版30に取り替えるので、
図9に示すように、右側の主桁11の主桁ウエブ11aの両ウエブ面に、当該主桁ウエブ11aの厚さ方向の中央部を境として横リブ取付部材16を略左右対称的に取り付け、中央部の主桁11の主桁ウエブ11aの、右側の主桁11側を向くウエブ面に横リブ取付部材16を取り付ける。
【0050】
なお、
図9において、右側の横リブ取付部材16の方が左側の横リブ取付部材16より上下方向の長さが長く、かつ、右側の横リブ取付部材16の下端が左側の横リブ取付部材16の下端より下方に突出している。これは、横リブ33Aの主桁ウエブ11a側の端部の上下方向の長さが、横リブ33Bの主桁ウエブ11a側の端部の上下方向の長さより長く、かつ、横リブ33Aの下端が横リブ33Bの下端より下方に突出していることによるものである(
図3(b)参照)。したがって、横リブ33Aの主桁ウエブ11a側の端部の上下方向の長さと、横リブ33Bの主桁ウエブ11a側の端部の上下方向の長さとが等しい場合、右側の横リブ取付部材16の上下方向の長さと左側の横リブ取付部材16の上下方向の長さとが等しくてもよい。
【0051】
また、右側の主桁ウエブ11aのウエブ面に横リブ取付部材16を結合する場合、ウエブ面の塗装を剥離したうえで、高力ボルト18による通常の摩擦接合によって結合する。つまり、
図9に示すように、主桁ウエブ11aには、前記ボルト孔16cと対応した位置にボルト孔11dが設けられ、ボルト孔11dと、主桁ウエブ11aの両ウエブ面にそれぞれ当接された横リブ取付部材16,16の固定プレート16aのボルト孔16c,16cに高力ボルト18を挿通し、当該高力ボルト18にナットを螺合して締め付けることによって、主桁ウエブ11aのウエブ面に横リブ取付部材16を結合する。
【0052】
このとき、横リブ取付部材16の固定プレート16aには、あらかじめ工場で孔あけ加工がなされ、ボルト孔16cが設けられている一方で、主桁ウエブ11aには、結合作業を行う前の段階ではボルト孔11dは設けられていない。横リブ取付部材16を適切な位置に仮設置し、そのボルト孔16cをテンプレートとして、主桁ウエブ11aに現場で図示しない携帯式ボール盤のような器具を用いて穴あけ加工を行う。結合作業時においては、各部材間で位置ずれが生じる可能性がありボルト孔16cの位置を調節する必要があるが、この方式によって横リブ取付部材16と主桁ウエブ11aとのボルト孔の相対的な位置調節が可能となる。
【0053】
また、中央部の主桁ウエブ11aのウエブ面に横リブ取付部材16を結合する場合も同にして行う。
また、中央部の主桁ウエブ11aの反対側(左側の主桁11側)のウエブ面には、中央部の主桁11と左側の主桁11とに支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版14の一部を新設の鋼床版30に取り替える際に、同様にして横リブ取付部材16を取り付ける。
なお、横リブ取付部材16を主桁11に取り付けた後、
図10に示すように、必要に応じて、上部交通の車線規制を行う(ステップS3)。車線規制を行う場合、路面の幅方向(橋幅方向X)の中央部に仮設ガード17を橋軸方向Zに所定間隔で立設する。
図10は、右側の1車線を規制したものを示していて、仮設ガード17より左側が車両通行帯であり、右側が工事帯となっている。
【0054】
次に、工事帯において、
図4及び
図5に示すように、鉄筋コンクリート床版14の一部のうち、橋軸方向Zの所定の幅内において主桁上フランジ11bの上面11e側に設けられている部分(残置鉄筋コンクリート21)を残した領域(コンクリート除去領域2A)を除去することで、鉄筋コンクリート床版14の一部に除去部20を形成して、主桁上フランジ11bの上面11e側に残置鉄筋コンクリート21を残置する。
【0055】
すなわち、
図10及び
図11に示すように、橋幅方向Xの右側に位置する主桁11と中央部に位置する主桁11との間に位置する鉄筋コンクリート床版14の橋軸方向Zにおける所定部位を、鋼床版30の平面視形状や大きさ(この実施形態の場合、平面視略矩形状)に応じて、コンクリートカッタによって切断し、撤去する(ステップS4)。
この際、上述したように主桁上フランジ11bの上面11e側に設けられている部分以外(
図5に示すコンクリート除去領域2A)を除去して空間を形成することで、鉄筋コンクリート床版14の所定部位(一部)に除去部20を設ける。この場合、右側の主桁11の主桁上フランジ11bの上面全体に残置鉄筋コンクリート21を残置し、中央部の主桁11の主桁上フランジ11bの上面11eに残置鉄筋コンクリート21を残置する。
【0056】
また、このとき、コンクリート除去領域2Aにおいて、除去部20と橋幅方向Xに隣り合う鉄筋コンクリート床版14の部分については、主桁11の主桁上フランジ11bの上面11e側において
図12に示す舗装部15の一部を橋軸方向Zに沿って除去し、除去部20に沿う縁部を露出させる。さらに、主桁11,11間に位置し、除去部20と橋軸方向Zにおいて隣り合う鉄筋コンクリート床版14の部分については、橋幅方向Xに沿って舗装部15を除去し、除去部20に沿う一対の縁部を露出させる。
【0057】
このようにして鉄筋コンクリート床版14の所定部位を平面視略矩形状に切断することで形成された矩形状の除去部20の平面視における橋軸方向Zの長さは、取り替えられる新設の鋼床版30の平面視における橋軸方向Zの長さより若干長く設定される。また、
図11に示すように、鉄筋コンクリート床版14の所定部位を平面視略矩形状に切断する場合、右側の地覆14bおよび高欄14cを含めて切断するので、除去部20の橋幅方向X外側(右側)は開放されている。
【0058】
また、このような鉄筋コンクリート床版除去工程において、
図12に示すように、右側の主桁11の主桁上フランジ11b上の残置鉄筋コンクリート21の上部の被りコンクリート22およびその上部の舗装部15をハンマー打撃等による人力作業によって除去する(ステップS5)。この場合、残置鉄筋コンクリート21の上鉄筋より上側の被りコンクリート22を除去するが、主桁上フランジ11bの上面に立設されているスタッド(図示略)やスラブアンカ(図示略)等の鋼材は残置する。
【0059】
次に、
図13(a)に示すように、前記除去部20に、新設の鋼床版30を残置鉄筋コンクリート21に被せるように配設して、一旦仮置きする。この場合、
図4及び
図5に示す主桁横縦リブ32A,32A間に残置鉄筋コンクリート21を橋幅方向Xにおいて挟み込むようにして配置するとともに、デッキプレート31の下面を残置鉄筋コンクリート21の上面に当接することによって、鋼床版30を仮置きする(ステップS6)。
【0060】
そして、平面視矩形状の除去部20に、新設の鋼床版30を残置鉄筋コンクリート21に被せるように配設する際には、
図14(a)、(b)に示すように、主桁横縦リブ32A,32Aが主桁11の主桁上フランジ11bを橋幅方向Xに挟むようにして配設する。
なお、主桁上フランジ11bの橋幅方向Xの端部と、この端部と対向している主桁横縦リブ32A,32Aの橋幅方向Xの面との間には隙間があるので、この隙間にシール材36を嵌め込む。また、主桁横縦リブ32A,32Aの主桁上フランジ11bと対向する面から、シール材36の下面と主桁上フランジ11bの下面とにわたって、コンクリート型枠、防水、防蝕のためのチタン箔37を貼り付ける。
【0061】
また、鋼床版30には、
図14(a)、(b)に示すように、鋼床版30の高さを調整可能な高さ調整ボルト40が残置鉄筋コンクリート21に当接可能に螺合されている。すなわち、右側の主桁11の主桁上フランジ11b上の残置鉄筋コンクリート21の上方に位置するデッキプレート31の部位には、ねじ孔41が設けられており、このねじ孔41に高さ調整ボルト40が螺合され、高さ調整ボルト40の先端部(下端部)が残置鉄筋コンクリート21の上面21aに当接している。このような高さ調整ボルト40はデッキプレート31の橋軸方向Zの縁部で、かつ主桁11の上方に複数設けられている。そして、鋼床版配設工程の後に、高さ調整ボルト40を適宜正逆方向に回すことによって、鋼床版30を昇降させて高さを調整する。すなわち、鋼床版30の舗装部34の上面と、鉄筋コンクリート床版14の舗装部15の上面とがほぼ面一となるように、鋼床版30の高さを調整する(ステップS7)。
【0062】
次に、鋼床版30の横リブ33を当該横リブ33の橋幅方向Xの端部において、当該端部に直近の主桁ウエブ11aに剛結合する。
図15(a)、(b)、及び
図16に示すように、横リブ33A,33Bを、これらの横リブ33A,33Bにおける橋幅方向Xの端部の一端面を主桁ウエブ11aのウエブ面と対向させた状態において、横リブ33A,33Bの橋幅方向Xの端部33e,33eを直近の主桁ウエブ11a,11aに剛結合する。これによって、鋼床版30の床版作用に伴う交通荷重起因の発生応力を低減することができる。すなわち、同じ高さの横リブ33でも、主桁ウエブ11a,11aに剛結合することで鋼床版30に発生する応力が小さくなり,疲労寿命を十分に確保することが可能となる。
【0063】
具体的に、本実施形態においては、横リブ33Bについては、その橋幅方向Xの端部33eの一端部33dを主桁ウエブ11aのウエブ面と対向させた状態において、
図17に示すように、中央部の主桁11の主桁ウエブ11aに固定された横リブ取付部材16の連結プレート16bの先端面に当接させたうえで、この端部33eと連結プレート16bをその両面側からスプライスプレート42,42で挟み付け、高力ボルト45とナット45aによって摩擦接合する。これにより、横リブ33Bを当該横リブ33Bの橋幅方向Xの左側の端部33eにおいて、この端部33eに直近の主桁ウエブ11aに剛結合する。
【0064】
また、同様にして、横リブ33Bの橋幅方向Xの右側の端部33eを右側の主桁11の主桁ウエブ11aに固定された横リブ取付部材16の連結プレート16bの先端部に、スプライスプレート42,42および高力ボルト45とナット45aを用いて剛結合する。
【0065】
連結プレート16bには、
図8(a)、(b)に示すように、予め工場等において複数のボルト孔16dが形成され、スプライスプレート42にも、
図16及び
図17に示すように、予め工場等において複数のボルト孔42cが形成されている。
そして、同軸に配置されているボルト孔42c,16d,42cおよびボルト孔42c,33g,42cにそれぞれ高力ボルト45を挿通したうえで、この高力ボルト45にナット45aを螺合して締め付けることによって、横リブ33Bを当該横リブ33Bの橋幅方向Xの端部33eにおいて、当該端部33eを直近の主桁ウエブ11aに摩擦接合により剛結合する。なお、
図16では、高力ボルト45の図示を省略している。
【0066】
また、同様にして、
図15(a)、(b)に示すように、横リブ33Aについては、その橋幅方向Xの一端部33eの一端33dを主桁ウエブ11aのウエブ面と対向させた状態において、右側の主桁11の主桁ウエブ11aに固定された横リブ取付部材16の連結プレート16bの先端面に当接したうえで、端部33eと連結プレート16bをその両面側からスプライスプレート42,42で挟み付け、高力ボルト45によって締結することで、横リブ33Bを当該横リブ33Aの端部33eにおいて、当該端部33eに直近の主桁ウエブ11aに剛結合する。
【0067】
また、このような高力ボルトによる摩擦接合構造においても、横リブ33Aの橋幅方向Xの端部33eの表面が接合されるスプライスプレート42の面および連結プレート16bの表面が接合されるスプライスプレート42の面にアルミニウム等の金属溶射による摩擦面処理が工場等によって施されている。
【0068】
次に、
図4及び
図5に示すように、一対の主桁横縦リブ32A、32Aのそれぞれの内面32bに、コンクリート除去領域2A内に配置されるようにずれ止め5を予め溶接により固着して突設させる(ステップS8)。
【0069】
次に、
図14(b)に示すように、鋼床版30と主桁上フランジ11bと残置鉄筋コンクリート21との間に、モルタル47を充填する。このとき、高さ調整ボルト40はねじ孔41から取り外すことなく、デッキプレート31に予め設けられた充填孔(図示省略)から主桁上フランジ11bや残置鉄筋コンクリート21が収容されている主桁横縦リブ32A,32Aの間の空間内にモルタル47を充填する(ステップS9)。なお、高さ調整ボルト40、モルタル47が十分に硬化してから取り外してもよいし、モルタル47内に埋設させて残置してもよい。
【0070】
上述したように、主桁横縦リブ32A,32Aが主桁上フランジ11bを橋幅方向Xに挟むようにして配設され、主桁上フランジ11bと主桁横縦リブ32A,32Aとの間に充填されたモルタル47は、鋼床版30のデッキプレート31と、主桁上フランジ11bと、シール材36と、主桁横縦リブ32A,32Aとによって囲まれた空間(コンクリート除去領域2A)に隙間なく行き渡って当該隙間を埋める。これによって、残置鉄筋コンクリート21の上鉄筋、デッキプレート31の下面および主桁上フランジ11bの上面11e等の腐食を防止できる。
【0071】
なお、本実施形態では、不定形材料としてモルタル47を採用しているが、モルタル47以外でも無収縮の樹脂、ゴムラテックスなど、急速硬化性、流動性があるものを使用できる。
なお、このようなモルタル47の充填作業は、後述する鋼床版結合工程の後に行ってもよい。また、全体作業効率化のために、何パネル分かの鋼床版30の施工後にまとめて充填してもよい。鋼床版30に作用する死荷重および活荷重(交通荷重)は、設計的には横リブ33を通じて主桁ウエブ11aに伝達されるためである。
【0072】
本実施形態では、
図4に示すように、主桁11と鋼床版30とを、橋軸方向Zのせん断力を相互に伝達するずれ止め部材51によって結合することによって、主桁11から鋼床版30に向けて橋軸方向Zのせん断力を伝達できる。
【0073】
次に、
図13(b)及び
図18(a)、(b)に示すように、鋼床版30と、この鋼床版30に橋幅方向X及び橋軸方向Zにおいて隣り合う鉄筋コンクリート床版14との間に仮止め板55を架け渡し、この仮止め板55の上面側に、仮舗装部56を鋼床版30の上面に予め設けられている舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部15とほぼ面一に施工する(ステップS10)。仮止め板55は、一時的に鉄筋コンクリート床版14と鋼床版30との間、あるいは隣接する鋼床版間を連続させることにより、道路の陥没状態を抑止して車両の通行を可能ならしめる機能を有している。
【0074】
すなわち、
図18(a)に示すように、前述の鉄筋コンクリート床版除去工程によって、鋼床版30が配設されている除去部20を囲む鉄筋コンクリート床版14の周縁部分のうち、橋幅方向Xに隣り合う部分は、主桁11の主桁上フランジ11bの上面11e側において舗装部15の一部が除去されて、鉄筋コンクリート床版14の橋幅方向Xにおいて除去部20に隣接する縁部が露出した状態となっている。また、主桁11,11間に位置し、橋軸方向Zに隣り合う部分の鉄筋コンクリート床版14は、橋幅方向Xに沿って舗装部15の一部が除去されて、鉄筋コンクリート床版14の橋軸方向Zにおいて除去部20に隣接する縁部が露出した状態となっている。
【0075】
一方、鋼床版30のデッキプレート31の外周縁部31aは舗装部34の外周縁部より外側に突出しており、この突出している外周縁部31aにボルト孔31bが複数設けられている。
また、橋幅方向X及び橋軸方向Zにおいて、鋼床版30の外周縁部31aと鉄筋コンクリート床版14の橋軸方向Zおよび橋幅方向Xに沿う縁部(外周縁部32a)との間には隙間Sが設けられている。
【0076】
そして、
図18(b)に示すように、デッキプレート31の外周縁部31aと鉄筋コンクリート床版14の橋軸方向Zに沿う外周縁部32aとに前記隙間Sを跨ぐようにして、仮止め板55を架け渡す。この仮止め板55にはボルト孔55bが設けられており、当該ボルト孔55bが前記ボルト孔31bと同軸となるように、仮止め板55を架け渡す。そして、ボルト孔55b,31bにボルト57を挿通して、ナット57aによって締め付けることによって、仮止め板55を固定したうえで、仮止め板55の上面側に、仮舗装部56を鋼床版30の上面に予め設けられている舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部15とほぼ面一に施工する。
【0077】
このようにして施工された床版構造は、
図19に示すように、鉄筋コンクリート床版14の少なくとも一部のうち、主桁11の主桁上フランジ11bの上面11e側に設けられている部分以外を除去して残置されてなる残置鉄筋コンクリート21と、鉄筋コンクリート床版14の少なくとも一部を、残置鉄筋コンクリート21を露出状態で除去してなる除去部20(
図4参照)に、残置鉄筋コンクリート21に被せるように配設された鋼床版30とを備えている。
【0078】
また、鋼床版30は、デッキプレート31の下面側において橋幅方向Xに配設され、橋幅方向Xの一端面または両端面の少なくとも一部が直近の主桁11の主桁ウエブ11aのウエブ面と対向する横リブ33(33A,33B)を有しており、横リブ33が当該横リブ33の端部33eにおいて、当該端部33eに直近の主桁ウエブ11aに、横リブ取付部材16によって剛結合されている。
また、
図4に示すように、主桁11と鋼床版30とが橋軸方向Zにせん断力を伝達するずれ止め部材51及びモルタル47を介して結合されている。
【0079】
また、鋼床版30と主桁上フランジ11bと残置鉄筋コンクリート21との間に、モルタル47が充填されている。さらに、鋼床版30と、当該鋼床版30に隣り合う鉄筋コンクリート床版14との間に仮止め板55が架け渡され、仮止め板55の上面側に、仮舗装部56が鋼床版30の舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部15とほぼ面一に施工されている。
【0080】
このようにして、1つの鋼床版30の取り替えが終了した後、一時交通規制を解除して、工事帯を通行可能とする(ステップS11)。
2つめの鋼床版30の取り替えを行う場合、基本的に上述した工程を順次繰り返すことによって行う。ただし、各工程の詳細な説明は省略する。
まず、
図20及び
図21に示すように、工事帯において、先に取り換えた(新設した)鋼床版30と橋軸方向Zにおいて隣接する鉄筋コンクリート床版14の一部のうち、橋軸方向Zの所定の幅内において主桁上フランジ11bの上面側に設けられている部分以外を除去することで、鉄筋コンクリート床版14の一部に除去部20を設けるとともに、当該除去部20において主桁上フランジ11bの上面側に残置鉄筋コンクリート21を残置する。また、主桁ウエブ11aの上部に横リブ取付部材16を高力ボルトによってボルト結合する。
【0081】
次に、
図22及び
図23に示すように、除去部20に、次の鋼床版30を残置鉄筋コンクリート21(
図5参照)に被せるように配設するとともに、高さ調整ボルト40(
図14(a)、(b)参照)によって、鋼床版30の高さを調整する。
次に、鋼床版30の横リブ33を当該横リブ33の端部において、当該端部に直近の主桁ウエブ11aに、横リブ取付部材16によって剛結合する。
また、この段階において、
図24に示すように、隣り合う鋼床版30,30同士はパネル間継手35を使用して高力ボルト46によって接合する。このパネル間継手35は、2面せん断のボルト摩擦接合によって隣接する鋼床版30,30どうしを一体化するものである。このパネル間継手35によって、鋼床版30のデッキプレート31の橋軸方向Zおよび橋軸直角方向、さらに縦リブ32、主桁横縦リブ32Aのそれぞれが2面せん断のボルト摩擦接合によって接合される。なお、パネル間継手35を設ける場合には、先だって存在する仮止め板55が存在する場合には、その仮止め板55は撤去する。
【0082】
また、
図24に示すように、橋軸方向Z(
図24において紙面と直交する方向)に隣り合う鋼床版30,30どうしを接合するパネル間継手35は、デッキプレート31の上面側に設けられて、鋼床版30の長辺方向(橋軸直交方向)に延在する継手プレート35aと、デッキプレート31の下面側において橋軸直交方向に隣り合う縦リブ32,32間および縦リブ32と主桁横縦リブ32Aとの間にそれぞれ設けられて、継手プレート35aより短い複数の継手プレート35bとを備えている。そして、継手プレート35aと継手プレート35bとによって、隣り合う鋼床版30,30のデッキプレート31,31が挟み付けられ、高力ボルト46によって締結することで、鋼床版30,30どうしが接合されている。
【0083】
また、橋軸方向Zに隣り合う鋼床版30,30の縦リブ32,32どうしおよび主桁横縦リブ32A,32Aどうしを接合するパネル間継手35は、2枚の継手プレート35c,35cを備えている。継手プレート35cは橋軸方向Zに隣り合う鋼床版30,30の接合部を跨ぐようにして配置されている。そして、継手プレート35c,35cによって、橋軸方向Zに隣り合う鋼床版30,30の縦リブ32,32および主桁横縦リブ32A,32Aがそれぞれ挟み付けられ、高力ボルト46によって締結することで、鋼床版30,30どうしが接合されている。
【0084】
また、橋軸直交方向に隣り合う鋼床版30,30どうしを接合するパネル間継手35は、2枚の継手プレート(図示省略)を備えている。この継手プレートは橋軸直交方向に隣り合う鋼床版30,30の接合部を跨ぐように配置されるとともに、鋼床版30の短辺方向に沿って延在している。そして、継手プレートによって、橋軸直交方法に隣り合う鋼床版30,30のデッキプレート31,31がそれぞれ挟み付けられ、高力ボルト46によって締結することで、鋼床版30,30どうしが接合されている。
【0085】
最後に、今回取り替えた鋼床版30と、この鋼床版30に橋幅方向Xおよび橋軸方向Zにおいて隣り合う鉄筋コンクリート床版14との間に仮止め板55を架け渡し、この仮止め板55の上面側に、仮舗装部56を鋼床版30の上面に予め設けられている舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部15とほぼ面一に施工する(
図18(b)参照)。
【0086】
このようにして次の(2つめの)鋼床版30を取り替えた後、同様にして必要な数の鋼床版30を次々に取り替えることによって、橋軸方向Zに所望な距離だけ鉄筋コンクリート床版14に替えて新たな鋼床版30を新設する。以上のようにして、片側2車線のうち一方側の車線について橋軸方向Zにおいて所望な距離だけ新な鋼床版30を新設する。
【0087】
また、一方側の車線について橋軸方向Zに所望な距離だけ鉄筋コンクリート床版14に替えて新たな鋼床版30を新設した後、
図25に示すように、片側2車線のうちの他方側の車線(
図25において左側の車線)についても同様にして既設の鉄筋コンクリート床版14に替えて新たな鋼床版30を新設する。
図25では、一方側の車線において取り替えた鋼床版30が2枚記載されているが、実際は橋軸方向Zにおいて鋼床版30は所定数だけ連続して施工(新設)されている。
なお、他方側の車線において、鋼床版30を新設する場合、一方側の車線において、鋼床版30を新設した場合と同様にして鋼床版30を新設するので、以下ではその方法を簡単に説明する。
【0088】
片側2車線のうちの他方側の車線において、鉄筋コンクリート床版14に替えて新たな鋼床版30を新設する場合、準備工程として、全面足場の設置や干渉する部材の撤去を行った後、鉄筋コンクリート床版14の下面側で、所定の主桁11の主桁ウエブ11aの上部に横リブ取付部材16を高力ボルトによってボルト結合する作業を行う。
そして、他方側の車線について上部交通を規制(図示せず)した後、
図25及び
図26に示すように、他方側の車線の鉄筋コンクリート床版14の少なくとも一部のうち、主桁11の主桁上フランジ11bの上面側に設けられている部分以外を除去することで、鉄筋コンクリート床版14の少なくとも一部に除去部20を設けるとともに、この除去部20において主桁上フランジ11bの上面側に残置鉄筋コンクリート21を残置する(鉄筋コンクリート床版除去工程)。
【0089】
次に、
図27及び
図28に示すように、除去部20に、鋼床版30を残置鉄筋コンクリート21に被せるように配設す。次に、横リブ33を当該横リブ33の橋幅方向Xの両端部において、当該両端部に直近の主桁ウエブ11aに横リブ取付部材16によって剛結合する。なお、予め主桁ウエブ11aに横リブ取付部材16をボルト結合しておく。また、横リブ取付部材16に横リブ33をボルト結合する場合、横リブ取付部材16と横リブ33の端部とをスプライスプレート42によって挟み付けるとともに高力ボルトによって締結する。
次に、主桁11と鋼床版30とを橋軸方向Zにせん断力を伝達するずれ止め部材51を介してモルタル47によって結合する。
【0090】
次に、
図29に示すように、鋼床版30と、当該鋼床版30に隣り合う鉄筋コンクリート床版14との間に仮止め板55を架け渡し、仮止め板55の上面側に、仮舗装部56を鋼床版30の上面側の舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部とほぼ面一に施工する。また、前記鋼床版(他方側の車線の鋼床版)30と、一方側の車線に設置されている鋼床版30との間にはパネル間継手を取り付けて相互に接合し、パネル間継手の上面側に、仮舗装部56を橋幅方向Xに隣り合う鋼床版30の上面側の舗装部34とほぼ面一に施工する。
そして、橋梁において予定していた区間において鋼床版30の取り替えが終了することによって、工事全体を終了する。
【0091】
なお、他方側の車線においても、前記鉄筋コンクリート床版除去工程において、残置鉄筋コンクリート21の上部の被りコンクリート22を除去する。
また、鋼床版30に、この鋼床版30の高さを調整可能な高さ調整ボルト40が残置鉄筋コンクリート21に当接可能に螺合され、鋼床版配設工程の後に、高さ調整ボルト40を回すことによって、鋼床版30の高さを調整する。
さらに、鋼床版配設工程の後に、鋼床版30と主桁上フランジ11bと残置鉄筋コンクリート21との間に、モルタル47を充填する。
【0092】
以上説明した床版構造および床版取替え方法によれば、
図1及び
図2に示すように、鋼床版30におけるデッキプレート31の下面側において橋軸方向Zに配設された主桁横縦リブ32A、32A同士の間のコンクリート除去領域2Aで残置鉄筋コンクリート21を埋設するようにモルタル47が充填され、これにより鋼床版30と主桁上フランジ11bとが接合され、橋梁としての剛性と強度を確保することができる。その結果、従来のような床版支持ブラケットを用いた場合と比較して構造重量を低減することが可能となる。このとき、主桁11上に残置鉄筋コンクリート21が残されているので、主桁上フランジ11bの座屈を抑制することができる。
また、本実施形態では、鉄筋コンクリート床版14のうち除去しにくいスタッド間のコンクリート(残置鉄筋コンクリート21)を残置させておくことが可能となるので、コンクリート除去作業にかかる手間や時間を低減することができる。
【0093】
さらに、本実施形態では、充填されるモルタル47に埋設されるずれ止め部材51が、充填されたモルタル47に接する部分に設けられている。そのため、ずれ止め部材51によって主桁11から鋼床版30に向けて橋軸方向Zのせん断力を確実に伝達することができる。
【0094】
また、本実施形態では、鋼床版30と主桁上フランジ11bと残置鉄筋コンクリート21との間に、モルタル47を充填するので、残置鉄筋コンクリート21の鉄筋、鉄筋コンクリート床版14のうちコンクリート除去領域2Aに露出する鋼床版30の下面、主桁上フランジ11bの上面等の腐食を防止できる。
なお、このモルタル47には大きな強度を求める必要はない。そもそも残置鉄筋コンクリート21も、十分な施工技術の無かった時代に打設されたコンクリートであり、さらに、長期間共用されていたことから、確実な設計が可能なだけの強度を保証することは困難であるため、そこに充填するモルタル47に大きな強度を求めなくてもよい。また、残置鉄筋コンクリート21において、コンクリートの強度低下に大きな影響を及ぼすクラックにモルタル47が浸透することにより、残置鉄筋コンクリート21に強度低下が起きていた場合にも強度回復が得られる。
さらに、上述したように残置鉄筋コンクリート21を残す構造であり、鉄筋コンクリート床版14のコンクリートを壊す量を低減できるので、騒音、振動、粉じんの発生を低減することができる。
【0095】
また、本実施形態では、ずれ止め部材51を互いに対向する一対の主桁横縦リブ32A、32Aの内面32bに溶接等の固定手段によって容易に固定して突出させることができる。そして、ずれ止め部材51は充填されるモルタル47に埋設されるため、主桁11から鋼床版30に向けて橋軸方向Zのせん断力を確実に伝達することができる。
【0096】
また、本実施形態では、残置鉄筋コンクリート21の上部の被りコンクリートを除去するのみでよいので、主桁上フランジ11bに立設されているスタッド間のコンクリートを除去する必要がない。スタッド間のコンクリートは非常に除去に手間を要するため、当該コンクリートを残置することで、除去作業の手間を大幅に削減できる。なお、上部の被りコンクリートを除去するのは、路面高さを調整するための空間を確保すると共に、鋼床版30の上に存在するアスファルト部の撤去を容易化するためである。
【0097】
また、本実施形態では、鋼床版30に高さを調整可能な高さ調整ボルト40が残置鉄筋コンクリート21に当接可能に螺合されている。そのため、高さ調整ボルト40を回すことによって、鋼床版30の高さを調整できるので、鋼床版30の高さを、狙った位置に、例えば取り替え以前の鉄筋コンクリート床版14の高さと等しくすることができる。つまり、現場において路面計画高を調整できる。
【0098】
また、鋼床版30と、当該鋼床版30に隣り合う鉄筋コンクリート床版14との間に仮止め板55を架け渡し、この仮止め板55の上面側に、仮舗装部56が、鋼床版30の舗装部34および既設の鉄筋コンクリート床版14上の舗装部15とほぼ面一に施工されているので、既設の鉄筋コンクリート床版14の舗装部15と更新された(取り替えられた)鋼床版30の舗装部34を連続させることができる。このため、床版の取り替えの際に行っていた車線規制を解除して一時的に車両を走行させることができる。
【0099】
上述のように本実施形態による床版構造および床版取替え方法では、鉄筋コンクリート床版14から鋼床版30への床版の取り替えにかかる作業時間の短縮を図ることができ、主桁11から鋼床版30に向けて橋軸方向Zのせん断力を確実に伝達することができる。
【0100】
次に、本発明の床版構造および床版取替え方法の他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0101】
(第2実施形態)
図30及び
図31に示すように、第2実施形態による床版構造は、鋼床版30に設けられる横リブ330を、主桁上フランジ11bと鋼床版30のデッキプレート31、一対の主桁横縦リブ32A、32Aとに囲まれた接合領域に配置してずれ止め部材として機能させた構造である。
【0102】
第2実施形態による横リブ330は、主桁11の主桁ウエブ11aを挟んだ両側に配置される側方横リブ330A、330Bの上端同士を連結し、橋幅方向Xに沿って延びる通し横リブ331(ずれ止め部材)を有している。すなわち、横リブ330は、一対の側方横リブ330A、330Bと通し横リブ331とが一体的に設けられ、正面視で下方に開口するコの字状に形成されている。通し横リブ331は、デッキプレート31の下面側において橋幅方向Xに配設されている。
【0103】
横リブ330は、一対の主桁横縦リブ32A、32Aを橋幅方向Xに貫通して連続して設けられている。
図30に示すように、主桁11の主桁上フランジ11b上に残置されている残置鉄筋コンクリート21には、上方に開口して橋幅方向Xに沿って延びる切欠部23が形成されている。切欠部23は、スリット状で残置鉄筋コンクリート21を橋軸方向Zに分断するように形成されている。切欠部23には、鋼床版30を主桁11に被せて配置したときに、横リブ330の通し横リブ331の下方部分が上方から差し込まれた状態で設けられている。通し横リブ331において、切欠部23に差し込まれた部分を含み、一対の主桁横縦リブ32A、32A間に介在している部分がずれ止め部材となる。切欠部23は、この切欠幅寸法を極めて小さくすることができ、主桁上フランジ11bの上面の面出しも必要とされない。そのため、残置鉄筋コンクリート21に対して切欠部23を形成する手間を低減することができる。
【0104】
第2実施形態では、鋼床版30における横リブ330のうち通し横リブ331が一対の主桁横縦リブ32A、32A間の接合領域に介在した状態で設けられている。この一対の主桁横縦リブ32A、32A間に位置する通し横リブ331をずれ止め部材として設けることができる。そして、一対の主桁横縦リブ32A、32A間の通し横リブ331は充填されるモルタル47に埋設されるため、主桁11から鋼床版30に向けて橋軸方向Zのせん断力を確実に伝達することができる。
また、本実施形態では、通し横リブ331はモルタル47によって固定されるので、補剛材が無くとも座屈を生じるおそれはない。
そして、本実施形態では、通し横リブ331は主桁11左右の横リブ間を連続とするため、横桁やデッキプレート31の発生応力を低減することができる。
【0105】
また、本実施形態では、通し横リブ331は一対の側方横リブ330A、330Bと連続して一体化され、通し横リブ331が負担するせん断力を横リブ330全体に分散することができる。そのため、側方横リブ330A、330Bの高さ寸法を小さく抑えることができきる。
【0106】
以上、本発明による床版構造および床版取替え方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0107】
例えば、本第1実施形態では、一対の主桁横縦リブ32A、32Aの内面32bから突出する構成のずれ止め部材51としているが、このようなスタッド状のものであることに限定されることはない。例えば、ずれ止め部材51に代えてボルトを各主桁横縦リブ32Aの内面32bに穴を開けることで外側から内挿し、コンクリート除去領域2Aに配置されるように突出させたずれ止め部材を採用することも可能である。
【0108】
また、ずれ止め部材として、一対の主桁横縦リブ32A、32Aにおけるそれぞれの対向する内面32bに形成される凹凸部である構成としてもよい。この場合には、例えば表面に凹凸部が形成されているチェッカープレート(縞鋼板)を主桁横縦リブ32Aの内面32bに重ね合わせて設けたり、主桁横縦リブ32Aそのものをチェッカープレートで製作したり、或いは内面32bに凹凸部が形成された主桁横縦リブ32Aを採用することで容易にずれ止め部材を設けることができる。そして、主桁横縦リブ32Aに形成される凹凸部は充填されるモルタル47に埋設されるため、主桁11と鋼床版30とが橋軸方向Zにせん断力を確実に伝達することができる。
【0109】
なお、上述した実施形態では鋼製の主桁11に適用されたものを一例としているが、鋼桁のみに限定されることはなく、コンクリート桁(RC、PC)にも適用することができる。コンクリート桁の場合には、残置したコンクリート桁にドリルで搾穴し、ケミカルアンカー等で横リブ取付け部材16の固定プレート16aをコンクリート桁に取り付けることで、他の構成を変えることなく、横リブを主桁に剛結することができる。
【0110】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【課題】コンクリート床版から鋼床版への床版の取り替えにかかる作業時間の短縮を図ることができ、主桁と鋼床版との間で橋軸方向にせん断力を確実に伝達する床版構造および床版取替え方法を提供する。
【解決手段】橋梁の主桁11に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版の一部を凹状に除去するとともに、主桁上フランジ11bの上面側に残置鉄筋コンクリート21を残置し、一対の主桁横縦リブ32Aにずれ止め部材51を設け、鋼床版30を残置鉄筋コンクリート21に被せるように配設し、残置鉄筋コンクリート21の周囲に設けられたコンクリート除去領域2Aにずれ止め部材51を配置し、主桁上フランジ11bの上面側において、一対の主桁横縦リブ32Aと残置鉄筋コンクリート21との間にモルタル47を充填するようにした床版取替え方法を提供する。