【実施例2】
【0033】
3−((S)−2−(6−メトキシナフタ−2−イル)プロパノイルオキシ)−4,5−ビス(((S)−2−(6−メトキシナフタ−2−イル)プロパノイルオキシ)メチル)−2−メチルピリジニウム(S)−2−(6−メトキシナフタ−2−イル)プロパノエート(化合物I)の調製
82.0gの化合物IVを丸底フラスコに入れ、1lのアセトンを加えて、10分間撹拌する。得られた溶液に、18.22gの(S)−2−(6−メトキシ−2−ナフチル)プロピオン酸(ナプロキセン)IIIを加え、沈殿物が完全に無くなるまで撹拌する。ロータリーエバポレーター(90rpm、残圧10ミリバール、温度40℃)を用いて真空中でアセトンを除去する。沈殿物を収集し、ロータリーエバポレーター(90rpm、残圧10ミリバール、温度80℃)を用いて真空下で乾燥する。請求された化合物Iの収率は100.1g(99.9%)である。
【0034】
融解温度は145℃である。[α]
24D=+22.8°(c=3.01、CH
2Cl
2)。式Iの化合物の溶液の吸収スペクトルは、アセトニトリルおよび塩化メチレン中、200〜450nmの範囲の波長で測定する。この場合、最大吸収は、262、272、317および332nmにある。最大位置の偏差は±2nmである。溶液の濃度は40μg/mlである。
1H NMRスペクトルで下記のシグナルが観察される(400MHz、CDCl
3、δ、ppm、J/Hz):1.33(br d,3H,CH
3,
3J=3.7);1.40(d,3H,CH
3,
3J=7.1);1.50(d,6H,2CH
3,
3J=7.1);1.90(br s,3H,CH
3);3.47(br s,1H,);3.65(k,1H,CH,
3J=7.1);3.74−3.87(m,13H);4.50(br s,1 N);4.80(br s,1 N);4.95および5.04(AB,2H,CH
2,
2J=−12.8);6.95−7.66(m,20 N),8.19(s,1H,CH).
13C NMRスペクトルで下記のシグナルが観察される(100MHz、CDCl
3、δ、ppm):17.96;18.42;18.52;18.92;45.02;45.34;45.38;55.40;57.13;61.65;105.66;105.73;119.09;119.13;119.18;119.38;125.96;126.09;126.16;126.20;126.38;126.57;127.30;127.36;127.49;128.96;129.01;129.39;129.64;133.78;133.81;133.86;134.05;134.13;135.18;135.21;135.42;136.16;144.78;147.16;152.75;157.74;157.79;157.96;171.95;174.02;179.30.
【0035】
標的物質Iは、化合物IVとナプロキセンとの塩である。これに関しては、逆相HPLCの条件(表1)下、この塩はクロマトグラム上に化合物IVとナプロキセンに相当する2つのピークとして現れ、その質量スペクトルは、計算データおよび文献データ(それぞれ、806.3324および229.0870)に対応する。
【0036】
式Iの化合物の急性毒性の調査
実験は、両方の性のWistarラット、6匹/群に対し、固定用量法に従って実施した。初期胃内投与量は、5000mg/kgとした。使用溶媒は0.5%ツイーン80溶液(ツイーン80−ポリオキシエチレンのソルビタンおよびオレイン酸誘導体;市販ポリマー)で、これは、0.5gのツイーン80を100mlの蒸留水中に溶解することにより調製した。
【0037】
5000mg/kgの用量を調製するために、25gの試験化合物を、秤のVibra(新光電子、日本、カタログ番号AF225DRCE)上のポリスチレンボート中に秤取して、クラスAの精度の100mlのメスフラスコに移し、ツイーン80の0.5%の水溶液で100mlに調節し、調製物の懸濁液を分散剤SilentCrusher(Heidolph,Germany,P/N595−06000−00−3)を用いて均一な粘稠度になるまで撹拌した。
【0038】
食料を与えていない(8時間以上の期間)が水は自由に与えた動物に対し、投与を実施した。投与の量は、投与の直前に記録した体重を基準にして、各動物に対し個別に計算した。フィードは投与の1時間後に新しくした。投与後30分間動物を個別に観察した後、4時間の間は少なくとも1時間に1回、その後は1日1回で14日間観察した。体重を調製物の投与の直前に記録して投与量を計算し、その後は、2日毎に1回記録した。試験中に動物が死亡した場合、死亡時間を特定し、可能な限り正確に記録した。可能な限り速やかに動物を秤量し、切開した。臨死動物は、秤量し、安楽死させて切開した。二酸化炭素の吸入により、動物を安楽死させた。IBM SPSS 統計ソフトウェアを用いたプロビット分析により、毒性投与量LD
10、LD
16、LD
50およびLD
84を計算した。
【0039】
5000mg/kgの投与量を胃内投与した場合には、動物の軽微な活動の抑制が観察された。20〜30分でこの症状は消失した。1.5〜2時間後、動物は食物と水の摂取を始めた。3日後、1匹のラット(雌)が倒れて死亡した。試験中を通して、さらなる死亡例はなかった。
【0040】
実験全体を通して、実験動物の生命活動の全ての主要な指標は、標準活動に相当し、対照の活動とは異ならなかった。動物は、良好な食欲、光沢のある外被を有し、可視粘膜は淡いピンク色であり、行動は、この種の動物に相当し、観察期間中に異常性は観察されなかった。ラットの体重は、実験の開始後2日および4日目に、それぞれ(1〜4)%および(2〜6)%増加し、これは、対照群のラットの体重増とほぼ一致した。調査の8日目に、動物の体重は、(2〜8)%増加した。実験終了時点で、体重は(5〜13)%増加した。急性毒性パラメーターを表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
実験の終わりに、対照および実験動物の安楽死および病理形態学的切開を実施した。ラットの剖検中、変化は観察されなかった。動物の死体は、適切な構造で、平均的であるか、または平均的肥満度であった。自然開口部:口は閉じられ、舌は口中にあり、唇および歯茎の粘膜は、淡いピンク色で、なめらかで、光沢がある。鼻開口部−粘膜は淡いピンク色で、乾燥し、流出物は無く、透過性は良好である。耳介は変化がなく、外耳道はきれいである。肛門は閉じ、粘膜は淡いピンク色である。毛髪はうまく保持され、毛被は光沢がある。皮膚は弾性があり、皮下線維は良好に発現し、黄色がかった色で弾性がある。筋肉は赤みがかっており、よく発達し、腱および靱帯は白色で弾性および耐久性がある。骨および関節の配置は、破壊されていない。胸部および腹部空洞の器官の位置は解剖学的に正しい。胸部および腹部空洞に体液はない。咽頭および食道の開通性は、破壊されていない。心臓の体積は変化していない。心臓の空洞は、少量の非凝集血を含み、心内膜はなめらかで光沢がある。肺は、淡いピンク色で、均一に着色し、膨潤の徴候はなく、分葉は良好に発現している。脾臓は拡大しておらず、シャープエッジを有し、楕円形状であり、弾性的堅さがあり、赤褐色である。肝臓は拡大しておらず、シャープエッジを有し、形状は変化しておらず、密度が高く、赤褐色である。胃は、均一な堅さの灰色のフィード塊を含む。胃の粘膜は淡い灰色である。腸の薄いまたは厚い部分の腸粘膜は、淡いピンク色または淡い灰色である。腎臓は、豆形状で、暗褐色であり、腎傍体では、わずかな量の脂肪があり、嚢は容易に分離し、皮質と脳ゾーンとの間の境界は発現している。膀胱は、空であるか、または淡黄色の尿で満たされ、粘膜は淡いピンク色である。生殖器は異常が無い。雄の精巣は、弾性的堅さがあって、陰嚢の空洞中にあり、楕円形状をしている。雌は、正常な卵巣および子宮を有する。脳は水腫性ではなく、脳の白質は弾性があり、出血はない。
【0043】
このように、実施した調査は、式Iの請求された化合物は、胃内投与後、第4危険物クラス、すなわち、低危険性物質(GOST 12.1.007−76「有害物質。分類および一般安全性要件」)に属し、およびLD
50致死用量の観点でのその安全性は、現在まで知られているほとんどのNSAIDを凌ぐ(表3)。例えば、請求された化合物は、ナプロキセンより8倍低い毒性である。
【0044】
【表3】
【0045】
式Iの化合物の胃毒性
胃毒性の調査では、6〜7週齡の、180〜220gの体重の雌および雄Wistarラットを採用した。各群の動物の数は10匹とした。
式Iの化合物を、調査前の16時間にわたり断食させたラットの胃内に1回投与した。2000mg/kgの量の試験物質の懸濁液(ツイーン80の0.5%水溶液中)の投与の3時間後に、動物を安楽死させた;それらの胃を取り出し、小弯に沿って切開し、生理的溶液で洗浄して内容物を取りだした。
【0046】
胃毒性の評価は、4点尺度法で実施された。
0−損傷なし;
0.5−充血;
1−単一微量損傷(1または2箇所の出血);
2−複数の損傷(びらん、スポット出血);
3−粘膜の顕著な複数の損傷(びらん、出血);
4−粘膜の全表面にわたる全体損傷(広範囲の出血、びらん、穿孔)。
【0047】
評価の結果に従い、UD
50−2点に相当する胃毒性(潰瘍発生)効果を引き起こす試験物質の投与量−を決定した。
【0048】
2000mg/kgの用量を調製するために、32.0gの式Iの化合物を、秤のVibra(新光電子、日本、カタログ番号AF225DRCE)上のポリスチレンボート中に秤取して、クラスAの精度の400mlのメスフラスコに移し、ツイーン80の0.5%の水溶液で400mlに調節し、調製物の懸濁液を分散剤SilentCrusher(Heidolph,ドイツ,P/N595−06000−00−3)を用いて均一な粘稠度になるまで撹拌した。ラットへの導入は、5ml/200g以下の量で実施される。
【0049】
二酸化炭素吸入法により、動物を安楽死させた。
【0050】
2000mg/kgの用量の式Iの化合物の単一導入では、胃毒性効果は、雄ラットの0.6点および雌ラットの0.4点の平均に一致した(表4)。
【0051】
【表4】
【0052】
このように、式Iの化合物に対しては、UD
50の値は、>2000mg/kgであり、これは、ほとんどのNSAIDの類似のパラメーターを凌ぐ(表3)。例えば、請求された化合物は、ナプロキセンより40倍低い毒性である。
【0053】
式Iの化合物のインビトロ抗炎症活性
立体構造的酵素シクロオキシゲナーゼ1(COX1)は、種々の細胞型で発現し、それらの正常な(生理学的)機能活性の確保に関与している。シクロオキシゲナーゼ2(COX2)は、重度炎症状態においてプロスタグランジンの合成に関与している。
【0054】
COX活性の分析は、シクロオキシゲナーゼのペルオキシダーゼ活性の測定にある。PGG2(プロスタグランジンG2)と、COXプローブとして使用されるキット「シクロオキシゲナーゼ(COX)活性アッセイキット(蛍光定量的)」(Biovision,カタログ番号K549−100)で提供されるADHP(10−アセチル−3,7−ジヒドロフェノキサジン)との反応中に、蛍光成分レゾルフィンが形成され、この吸収波長は530〜540nm、発光波長は(585〜595)nmである。蛍光強度は、試料中のCOXの残留活性に正比例する。皮膚線維芽細胞(HSF)は、シクロオキシゲナーゼ酵素源として選択された。線維芽細胞のライセートは、2.131μU/mgのCOX活性を有することが示された。
【0055】
細胞ライセートの調製:皮膚線維芽細胞(2〜6x10
6個)を10mlのリン酸緩衝液で1回洗浄する。細胞を5mlの緩衝液に再懸濁し、15mlのチューブに移す。これを、1500gで4分間遠心分離する。その後、上清を捨て、細胞ペレットを0.5〜1mlのプロテアーゼ反応混液(100μlの細胞ペレットあたり約0.4mlの緩衝液)を含む冷溶解緩衝液中に再懸濁し、4℃で15分間、10,000gで遠心分離する。上清を分離し、COXの原料として使用する。
【0056】
試薬の調製:COX補助因子を2μlの補助因子を398μlの緩衝液に使用直前に加えることにより、200倍に溶解した。65μlのアラキドン酸および65μlのNaOHを混合した後、1170μlの蒸留水で10倍に希釈する。この溶液は1時間、安定である。
【0057】
下記に示した次の試薬を混合することにより、反応混合物を調製する(2つの並列ウエルに対し):
・COXプローブ−2μl;
・溶解した補助因子−4μl(1時間安定);
・細胞ライセート−20μl;
・COX緩衝液を用いて、体積を172μlにする。
【0058】
試験物質の調製:
ナプロキセンストック溶液およびジメチルスルホキシド(DMSO)中の1000μMの濃度の式Iの物質を使用して、2倍希釈により予備的希釈液を調製する。それぞれ、62.5〜1000μMの5つの希釈液を調製する。
【0059】
マルチチャンネルピペットを用いて、試薬を適切なプレートウエルに次のように加える:最初に、反応混合物、次に試験物質のDMSO中の一連の濃度の溶液および対照物質(阻害剤COX1 SC560および阻害剤COX2 セレコキシブ)、純粋な溶媒DMSO(より高い活性のウエルに対し)。2回反復処理を行う。これらを5分間インキュベートする。
【0060】
反応の開始:反応の開始前に、プレートのウエル中で単回の蛍光測定を実施して、それ自身の試験物質および対照物質の信号を考慮する。その後、10μlのアラキドン酸溶液をマルチチャンネルピペットを用いてプレートの全ウエルに加えて、反応を開始する。アラキドン酸添加後、直ちに、蛍光(Ex/Em=535/587nm)を反応速度モードで15秒毎に30分間にわたり測定する
【0061】
対照および試験物質による画像の蛍光パラメーターを式:
平均正味RFU=平均RFU−平均ブランクRFU
COX阻害のパーセンテージは、次式に従って計算される:
【0062】
【数1】
【0063】
さらに、試験物質および基準物質(ナプロキセン)に対して利用できるデータポイントを用いて、我々は、最も好適するシグモイド阻害曲線を作製する。この曲線に基づいて、試験試料のCOXに対するIC
50が計算される。
【0064】
使用したキットの製造業者の推奨に従って、COX1阻害剤SC560およびCOX2阻害剤セレコキシブを2μlの体積で反応混合物に加える(この量は、適切なアイソフォームを完全に阻害するのに十分である)。SC560およびセレコキシブによる処理後に、細胞ライセート中に含まれるCOXの残留活性は、それぞれ、72.8%および32.0%である。
【0065】
阻害活性の調査では、ナプロキセンおよび試験物質のウエル中の濃度は、1.25〜20μMである。
【0066】
それぞれのアイソフォームの調製により阻害の割合を決定するために、選択的阻害剤COX1 SC560の存在下、ならびに選択的阻害剤COX2セレコキシブの存在下で、調査物質を一定の濃度パターンで試験する。阻害剤は、対応する酵素のアイソフォームを完全に阻害するのに十分な量であると同時に、他のアイソフォームが活性のまま残る量で添加される。
【0067】
試験調製物のみが100%の存在下で活性を従来方式で仮定して、COX1およびCOX2の残留活性ならびに各アイソフォームの調製物による阻害パーセンテージが計算される。式Iの化合物は、COX2のアイソフォームに対し優先的阻害活性を示す。
【0068】
したがって、ナプロキセンIC
50(プロトタイプ)は9.56μMであり、これは、式Iの化合物のIC
50(7.7μM)の1.25倍である。上記のことから、請求された式Iの化合物は、より低い濃度で作用するので、シクロオキシゲナーゼ阻害剤として、より効果的であることが結論できる。
【0069】
式Iの化合物のインビボ抗炎症活性
この実験は、6〜7週齡の、180〜220gの体重の雌および雄Wistarラットを使って実施した。各群の動物の数は10匹とした。
【0070】
1%のカラゲニン(アイルランドの紅藻類由来の硫酸化ポリサッカライド)溶液の0.1mlの足底下(足底または足底腱膜の下)投与により、急性炎症反応(浮腫)を再現した。炎症反応の重症度を炎症誘導の3時間後に足の体積の変化により評価した(臓器容積測定法)。カラゲニンの1%溶液の導入の1時間前に、式Iの物質をプローブと共に胃中に投与した。0.5%のツイーン80溶液を陰性対照として使用した。浮腫の減少で評価される、抗炎症効果を、対照のパーセンテージとして表した。分析物の4種の投与量の作用の結果に従い、ED
50の計算を実施した。
【0071】
50mg/kgの用量を調製するために、1000mgの式Iの化合物を、秤のVibra(新光電子、日本、カタログ番号AF225DRCE)上のポリスチレンボート中に秤取して、クラスAの精度の200mlのメスフラスコに移し、ツイーン80の0.5%の水溶液で200mlに調節し、調製物の懸濁液を分散剤SilentCrusher(Heidolph,ドイツ,P/N595−06000−00−3)を用いて均一な粘稠度になるまで撹拌した。ラットへの導入は、1ml/100g以下の量で実施された。得られた溶液の濃度は、5mg/mlであった。
【0072】
20mg/kgの用量を調製するために、5mg/ml(50mg/kg)の濃度の40mlの溶液を採取し、クラスAの精度の100mlのメスフラスコに移し、ツイーン80の0.5%の水溶液で100mlに調節し、調製物の懸濁液を均一な粘稠度になるまで分散剤を用いて撹拌した。
【0073】
10mg/kgの用量を調製するために、5mg/ml(50mg/kg)の濃度の20mlの溶液を採取し、クラスAの精度の100mlのメスフラスコに移し、ツイーン80の0.5%の水溶液で100mlに調節し、調製物の懸濁液を均一な粘稠度になるまでマグネチックスターラーMR Hei−Standard(Heidolph,ドイツ)で撹拌した。
【0074】
5mg/kgの用量を調製するために、5mg/ml(50mg/kg)の濃度の4mlの溶液を採取し、クラスAの精度の100mlのメスフラスコに移し、ツイーン80の0.5%の水溶液で100mlに調節し、調製物の懸濁液を均一な粘稠度になるまでマグネチックスターラーで撹拌した。
【0075】
投与の30分後に動物を個別に観察した後、4時間の間は少なくとも1時間に1回観察した。体重を調製物の投与の直前に記録して投与量を計算した。
【0076】
二酸化炭素の吸入により、動物を安楽死させた。
【0077】
50、20、10および5mg/kgの投与量の式Iの化合物が雄ラットに投与されると、炎症性浮腫は、対照群に対して、それぞれ、62.34、51.25、23.57および12.39%減少した。50、20、10および5mg/kgの投与量の式Iの化合物が雌ラットに投与されると、浮腫は、それぞれ、65.47、67.89、38.64および13.37%減少した。結果を表5に示す。
【0078】
【表5】
【0079】
得られたデータの統計処理の結果によると、雄に対する式Iの化合物のED
50は、23mg/kg、雌に対しては14mg/kgである。性の区別のないED
50の平均値は、18.5(約19)mg/kgである。
【0080】
文献によると、ED
50は、ナプロキセンで15mg/kg、イブプロフェンで48mg/kg、ジクロフェナクナトリウムで8mg/kg、ピロキシカムで20mg/kg、フェニルブタゾンで56mg/kg、インドメタシンで10mg/kg、アセチルサリチル酸で98mg/kgである(非特許文献1)。このように、出願者は、式Iの化合物の高抗炎症活性の存在を実験的に証明した。この化合物は、最近のNSAIDの抗炎症活性よりその値が優れている(7つのケースの内の4つで)またはそれと同等である。
【0081】
式Iの化合物の鎮痛作用
式Iの化合物の鎮痛特性の調査では、6〜7週齡の、180〜220gの体重の雌および雄Wistarラットを採用した。各群の動物の数は10匹とした。
【0082】
カラゲニン(アイルランドの紅藻類由来の硫酸化ポリサッカライド)の1%溶液の0.1mlの右後肢の足底下投与により、ラットにおける慢性免疫炎症のモデルとした。胃中プローブを使って、物質を胃内へ投与した。ナプロキセンを比較薬物として使用し、0.5%のツイーン80溶液を陰性対照として使用した。浮腫の減少により評価した抗炎症効果を、対照に対するパーセンテージで表し、試験物質の4種の投与量の作用の結果に従い、ED
50の計算を実施した。
【0083】
炎症性痛覚過敏(ラットの炎症性組織の増大した痛覚感受性)をカラゲニンにより生じさせ、カラゲニンの導入の前およびその3時間後に、動物の足組織の機械的刺激(圧迫)に対する痛覚感受性閾値−PSTの低減により(PSTの差異により)評価した。測定は、炎症性足に対し実施した。使用した無痛覚計Ugo Basile S.R.L.(イタリア)は、ラットの炎症性足に対し、疼痛反応が現れるまで(動物の鳴き声、または足を引っ込めることにより評価される)、後負荷を段階的に増加させる。分析物をカラゲニン投与の2時間後に投与した。ED
50の評価による鎮痛作用を、分析物の胃内投与の1時間後の痛覚過敏の減少により評価した。調査物質の影響下で、疼痛反応閾値の増加は、足の圧迫力の増加で表され、調製物の鎮痛作用の強度を特徴付ける。実験後、二酸化炭素吸入法により、動物を安楽死させた。
【0084】
50mg/kgの用量を調製するために、1000mgの式Iの化合物を、秤のVibra(新光電子、日本、カタログ番号AF225DRCE)上のポリスチレンボート中に秤取して、クラスAの精度の200mlのメスフラスコに移し、ツイーン80の0.5%の水溶液で200mlに調節し、懸濁液を分散剤SilentCrusher(Heidolph,ドイツ,P/N595−06000−00−3)を用いて均一な粘稠度に分散させた。ラットへの導入は、1ml/100g以下の量で実施された。得られた溶液の濃度は、5mg/mlであった。
【0085】
20mg/kgの用量を調製するために、5mg/ml(50mg/kg)の濃度の40mlの溶液を採取し、クラスAの精度の100mlのメスフラスコに移し、ツイーン80の0.5%の水溶液で100mlに調節し、懸濁液を分散剤を用いて均一な粘稠度に分散させた。
【0086】
10mg/kgの用量を調製するために、5mg/ml(50mg/kg)の濃度の20mlの溶液を採取し、クラスAの精度の100mlのメスフラスコに移し、ツイーン80の0.5%の水溶液で100mlに調節し、懸濁液を均一な粘稠度になるまでマグネチックスターラーMR Hei−Standard(Heidolph,ドイツ)で撹拌した。
【0087】
5mg/kgの用量を調製するために、5mg/ml(50mg/kg)の濃度の4mlの溶液を採取し、クラスAの精度の100mlのメスフラスコに移し、ツイーン80の0.5%の水溶液で100mlに調節し、懸濁液を均一な粘稠度になるまでマグネチックスターラーで撹拌した。
実験の結果を表6に示す。
【0088】
【表6】
【0089】
本結果から、請求された式Iの化合物は、5mg/kgの投与量で既に、顕著な麻酔作用を示すが、一方、ナプロキセン(プロトタイプ)は、15mg/kgになってようやく類似の効果を有するということになり、これは、その高い効率の事実を実証するものである。したがって、鎮痛作用の観点での請求された化合物の治療指数(LD
50/ED
50)は、ナプロキセンの42に対し、1000を超え、また、安全指数(UD
50/ED
50)は、ナプロキセンの3.2に対して、400を超える。
【0090】
ラットに対する式Iの化合物の解熱作用
式Iの化合物の解熱特性の調査では、6〜7週齡の、180〜220gの体重の雌および雄Wistarラットを採用した。各群の動物の数は10匹とした。
【0091】
発熱反応を、ベーキング酵母の20%懸濁液の皮下投与により生じさせた。酵母の導入の前および導入の18時間後に、電子体温計で直腸温を測定した(これらの間の差異は、推定体温上昇反応である)。調製物を体温上昇のピーク時(18時間後)に動物に1回投与した。解熱作用は、試験物質の注入の2時間後の体温上昇の減少により評価し、動的作用(effect dynamics)を7時間にわたり1時間間隔で記録した。
【0092】
75mg/kgの用量を調製するために、1500mgの式Iの化合物を、秤のVibra(新光電子、日本、カタログ番号AF225DRCE)上のポリスチレンボート中に秤取して、クラスAの精度の200mlのメスフラスコに移し、ツイーン80の0.5%の水溶液で200mlに調節し、調製物の懸濁液を分散剤SilentCrusher M(Heidolph,ドイツ)を用いて均一な粘稠度になるまで撹拌した。ラットへの導入は、1ml/100g以下の量で実施された。得られた溶液の濃度は、7.5mg/mlであった。
【0093】
50mg/kgの用量を調製するために、7.5mg/ml(75mg/kg)の濃度の66.7mlの溶液を採取し、クラスAの精度の100mlのメスフラスコに移し、ツイーン80の0.5%の水溶液で100mlに調節し、調製物の懸濁液を均一な粘稠度になるまで分散剤を用いて撹拌した。
【0094】
20mg/kgの用量を調製するために、7.5mg/ml(75mg/kg)の濃度の26.7mlの溶液を採取し、クラスAの精度の100mlのメスフラスコに移し、ツイーン80の0.5%の水溶液で100mlに調節し、調製物の懸濁液を均一な粘稠度になるまでマグネチックスターラーMR Hei−Standard(Heidolph,ドイツ)で撹拌した。調製物投与後および酵母で誘導の18時間後の温度の差異を体温上昇低減のパラメーターとして求めた。
【0095】
投与後、試験の全体を通して、個別に動物を観察した。体重を調製物の投与の直前に記録して投与量を計算した。全てのデータに対し、記述統計を用いた;平均値および平均値の標準誤差を計算し、最後の表7に結果を示した。ウィルコクソンノンパラメトリック基準を、実験群の統計比較に用いた。差異は、0.05レベルの有意性で判定した。R−スタジオプログラムを用いて、統計分析を実施した。種々の投与量の式Iの化合物の解熱作用の調査結果を表7に示す。
【0096】
【表7】
【0097】
ベーキング酵母懸濁液の皮下投与の18時間後、動物群で平均1.5℃の直腸温の増加が観察された。全体の観察期間を通して、対照群の動物では、温度の低下は、観察されなかった(調製物投与の7時間後まで)。20mg/kgの投与量の式Iの化合物の雄および雌の両方への投与により、解熱作用は観察されなかった。投与量を50mg/kgに増やした場合、雌の群で温度の明確な低下が観察された−すなわち、物質の投与の2および3時間後に、温度が投与前よりも0.9℃低く、投与の4、5、6および7時間後には、(0.5〜0.7)℃低下した。
【0098】
50mg/kgの投与量の式Iの化合物の投与により、投与の3〜4時間後に、有意な温度の低下が観察された。低下のレベルは、(0.34〜0.97)℃であった。
【0099】
最大の効果は、75mg/kgの投与量の式Iの化合物が投与された動物群で観察された。したがって、実験全体を通して、75mg/kgの投与量での物質の投与により、温度は有意に低下し、投与の前より(0.76〜1.5)℃低かった。
【0100】
15mg/kg(または65μmol/kg)の投与量のナプロキセンの投与の場合にも、温度は有意に低下した。温度低下のレベルは、(0.74〜1.6)℃であった。
【0101】
得られた結果をまとめると、75mg/kgの投与量では、請求された化合物は、15mg/kgのナプロキセンの投与量のレベルの解熱特性を有すると結論づけられるべきである。ナプロキセンのモル質量は、式Iの化合物のモル質量よりかなり小さく、ナプロキセンの230g/molと、請求された化合物の1036g/molであることから、モルの観点からは、これらの投与量は、実用上は異ならないことに特に留意すべきである。解熱作用の観点での請求された化合物の治療指数(LD
50/ED
50)は、ナプロキセンの42に対し、67を超え、また、安全指数(UD
50/ED
50)は、ナプロキセンの3.2に対して、27を超える。
【0102】
したがって、上記結果から、出願者はピリドキシンおよびナプロキセンに基づく新規化合物:3−((S)−2−(6−メトキシナフタ−2−イル)プロパノイルオキシ)−4,5−ビス(((S)−2−(6−メトキシナフタ−2−イル)プロパノイルオキシ)メチル)−2−メチルピリジニウム(S)−2−(6−メトキシナフタ−2−イル)プロパノエート、を得て、これは、ナプロキセン(プロトタイプ)の類似の特性に勝る、またはそれと同等の高い抗炎症、鎮痛および解熱特性と同時に、極端に低い毒性(胃毒性を含む)を維持する特性を同時に有するということになる。
【0103】
一般に、請求された化合物は、ナプロキセン(プロトタイプ)と比べて、8倍低い毒性で、40倍低い胃毒性である。
【0104】
請求された技術的解決策は、発明に該当する「新規性」の基準を満たす。理由は、調査した技術のレベルからは、低胃毒性を含む低毒性を有する新規ピリドキシンおよびナプロキセン誘導体である、示した技術的結果の実現に繋がる本質的な特徴に関して請求されたものに一致する技術的解決策が見つからなかったためである。請求された化学的化合物は、リウマチ性疾患、ならびに炎症、疼痛および熱が伴う疾患の治療用製品の範囲を拡大し、使用の有効性および安全性の観点から、世界的に基本的に新規な、他に例を見ないものである。
【0105】
請求した技術的解決策は、この技術分野の専門家には明らかではない、すなわち、調査した技術レベルからは、請求された構造の抗炎症、鎮痛および解熱薬は特定されなかったので、本発明に該当する「進歩性」の基準に適合する。
【0106】
請求された技術的解決策は、標準的な装置、よく知られた国内の材料および技術を用いて任意の特殊化された事業で実施することができるので、「産業上の利用可能性」の基準に適合する。出願者は実験室で標的製品−請求された技術的結果を有するナプロキセン系非ステロイド性抗炎症薬を得、また、全ての請求された目的を達成した。