【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた本発明の第1の態様に係る金属回収方法は、易イオン化金属(亜鉛よりイオン化傾向が大きい金属)の化合物である難水溶性の易イオン化金属化合物と難水溶性の亜鉛化合物とを含む汚泥から、易イオン化金属を塩化物の形態で回収するとともに亜鉛を塩化亜鉛の形態で回収するためのものである。なお、回収可能な易イオン化金属としては、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)などが挙げられる。
【0008】
発明の第1の態様に係る金属回収方法は、次の各ステップを有する。
(1)易イオン化金属を回収する第1のステップ
(2)残留する易イオン化金属化合物を除去する第2のステップ
(3)亜鉛を回収する第3のステップ
【0009】
第1のステップは、次の各工程を有する。
・第1塩酸添加工程
・第1濾過工程
・易イオン化金属回収工程
【0010】
第1塩酸添加工程では、難水溶性の易イオン化金属化合物及び亜鉛化合物を含む汚泥を濾過して生成したケークに、水と、該ケーク中の易イオン化金属化合物に対する当量より少量(例えば、当量の85〜95%)の塩酸とを添加し、易イオン化金属化合物の一部を易イオン化金属塩化物に変化(化学変化)させて水中に溶解させ、易イオン化金属塩化物と易イオン化金属化合物(塩化物以外)と亜鉛化合物とを含む第1スラリーを生成する。第1濾過工程では、第1スラリーを濾過し、易イオン化金属塩化物を含む第1濾液と、易イオン化金属化合物(塩化物以外)及び亜鉛化合物を含む第1ケークとを生成する。易イオン化金属回収工程では、第1濾液を加熱して水分を気化させることにより、易イオン化金属塩化物又は濃縮易イオン化金属塩化物水溶液を生成する。
【0011】
第2のステップは、次の各工程を有する。
・第2塩酸添加工程
・第2濾過工程
【0012】
第2塩酸添加工程では、第1ケークに、水と、第1ケーク中の難水溶性の易イオン化金属化合物に対する当量より多量(例えば、当量の105〜110%)の塩酸とを添加し、易イオン化金属化合物を易イオン化金属塩化物に変化させて水中に溶解させ、易イオン化金属塩化物と、亜鉛化合物とを含む第2スラリーを生成する。第2濾過工程では、第2スラリーを濾過し、易イオン化金属塩化物を含む第2濾液と、難水溶性の亜鉛化合物を含む第2ケークとを生成する。
【0013】
第3のステップは、次の各工程を有する。
・第3塩酸添加工程
・第3濾過工程
・亜鉛回収工程
【0014】
第3塩酸添加工程では、第2ケークに、水と、第2ケーク中の難水溶性の亜鉛化合物に対する当量以上(例えば、当量の100〜120%)の塩酸とを添加し、亜鉛化合物を塩化亜鉛に変化させて水中に溶解させ、塩化亜鉛を含む第3スラリーを生成する。第3濾過工程では、第3スラリーを濾過し、塩化亜鉛を含む第3濾液と、第3ケークとを生成する。亜鉛回収工程では、第3濾液を加熱して水分を気化させることにより、塩化亜鉛又は濃縮塩化亜鉛水溶液を生成する。
【0015】
本発明の第2の態様に係る金属回収方法は、n種(n:2〜6の任意の整数)の難水溶性の易イオン化金属化合物を含むとともに難水溶性の亜鉛化合物を含む汚泥から、各易イオン化金属を塩化物の形態で回収するとともに亜鉛を塩化亜鉛の形態で回収するためのものである。ここで、第1〜第n易イオン化金属化合物を構成する各易イオン化金属のイオン化傾向は、第1〜第n易イオン化金属の順に小さくなっている。
【0016】
本発明の第2の態様に係る金属回収方法は、次の各ステップを有する。ただし、nが2の場合は、「(3)第k易イオン化金属を回収するステップ(群)」及び「(4)残留する第k易イオン化金属化合物を除去するステップ(群)」は存在しない。
(1)第1易イオン化金属を回収するステップ
(2)ケーク中に残留する第1易イオン化金属化合物を除去するステップ
(3)第k易イオン化金属を回収するステップ(群)(k:2〜(n−1)のいずれかの整数)
(4)ケーク中に残留する第k易イオン化金属化合物を除去するステップ(群)
(5)第n易イオン化金属を回収するステップ
(6)ケーク中に残留する第n易イオン化金属化合物を除去するステップ
(7)亜鉛を回収するステップ
【0017】
第1易イオン化金属を回収するステップは次の各工程を有する。
・第1塩酸添加工程
・第1濾過工程
・第1易イオン化金属回収工程
【0018】
第1塩酸添加工程では、難水溶性の第1〜第n易イオン化金属化合物及び難水溶性の亜鉛化合物を含む汚泥を濾過して生成したケークに、水と、該ケーク中の第1易イオン化金属化合物に対する当量より少量(例えば、当量の85〜95%)の塩酸とを添加し、第1易イオン化金属化合物の一部を水溶性の第1易イオン化金属塩化物に変化(化学変化)させて水中に溶解させ、第1易イオン化金属塩化物と、第1〜第n易イオン化金属化合物(塩化物以外)と、亜鉛化合物とを含む第1スラリーを生成する。第1濾過工程では、第1スラリーを濾過し、第1易イオン化金属塩化物を含む第1濾液と、第1〜第n易イオン化金属化合物(塩化物以外)及び亜鉛化合物を含む第1ケークとを生成する。第1易イオン化金属回収工程では、第1濾液を加熱して水分を気化させることにより、第1易イオン化金属塩化物又は濃縮第1易イオン化金属塩化物水溶液を生成する。
【0019】
ケーク中に残留する第1易イオン化金属化合物を除去するステップは、次の各工程を有する。
・第2塩酸添加工程
・第2濾過工程
【0020】
第2塩酸添加工程では、第1ケークに、水と、第1ケーク中の難水溶性の第1易イオン化金属化合物に対する当量より多量(例えば、当量の105〜110%)の塩酸とを添加し、第1易イオン化金属化合物を第1易イオン化金属塩化物に変化させて水中に溶解させ、第1易イオン化金属塩化物と、第2〜第n易イオン化金属化合物と、亜鉛化合物とを含む第2スラリーを生成する。第2濾過工程では、第2スラリーを濾過し、第1易イオン化金属塩化物を含む第2濾液と、第2〜第n易イオン化金属化合物及び亜鉛化合物を含む第2ケークとを生成する。
【0021】
第k易イオン化金属を回収するステップ(n=3の場合)又はステップ群(n=4〜6の場合)は、kを2から(n−1)まで1ずつ増加させながら実施する(n−2)個のステップ又はステップ群で構成される。ただし、nが2の場合はこのステップは存在しない。このステップ又はステップ群を構成する各ステップは次の各工程を有する。
・第(2k−1)塩酸添加工程
・第(2k−1)濾過工程
・第k易イオン化金属回収工程
【0022】
第(2k−1)塩酸添加工程(第3、・・・第(2n−3)塩酸添加工程)では、第(2k−2)濾過工程で生成された難水溶性の第k〜第n易イオン化金属化合物及び亜鉛化合物を含む第(2k−2)ケークに、水と、第(2k−2)ケーク中の第k易イオン化金属化合物に対する当量より少量(例えば、当量の85〜95%)の塩酸とを添加し、第k易イオン化金属化合物の一部を水溶性の第k易イオン化金属塩化物に変化させて水に溶解させ、第k易イオン化金属塩化物と、第k〜第n易イオン化金属化合物(塩化物以外)と、亜鉛化合物とを含む第(2k−1)スラリーを生成する。第(2k−1)濾過工程では、第(2k−1)スラリーを濾過し、第k易イオン化金属塩化物を含む第(2k−1)濾液と、第k〜第n易イオン化金属化合物(塩化物以外)及び亜鉛化合物を含む第(2k−1)ケークとを生成する。第k易イオン化金属回収工程では、第(2k−1)濾液を加熱して水分を気化させることにより、第k易イオン化金属塩化物又は濃縮第k易イオン化金属塩化物水溶液を生成する。
【0023】
ケーク中に残留する第k易イオン化金属化合物を除去するステップ(n=3の場合)又はステップ群(n=4〜6の場合)は、kを2から(n−1)まで1ずつ増加させながら実施される(n−2)個のステップ又はステップ群で構成される。ただし、nが2の場合はこのステップは存在しない。このステップ又はステップ群を構成する各ステップは次の各工程を有する。
・第2k塩酸添加工程
・第2k濾過工程
【0024】
第2k塩酸添加工程(第4、・・・第(2n−2)塩酸添加工程)では、第(2k−1)ケークに、水と、第(2k−1)ケーク中の難水溶性の第k易イオン化金属化合物に対する当量より多量(例えば、当量の105〜110%)の塩酸とを添加し、第k易イオン化金属化合物を第k易イオン化金属塩化物に変化させて水中に溶解させ、第k易イオン化金属塩化物と、第(k+1)〜第n易イオン化金属化合物と、亜鉛化合物とを含む第2kスラリーを生成する。第2k濾過工程では、第2kスラリーを濾過し、第k易イオン化金属塩化物を含む第2k濾液と、第(k+1)〜第n易イオン化金属化合物及び亜鉛化合物を含む第2kケークとを生成する。
【0025】
第n易イオン化金属を回収するステップは次の各工程を有する。
・第(2n−1)塩酸添加工程
・第(2n−1)濾過工程
・第n易イオン化金属回収工程
【0026】
第(2n−1)塩酸添加工程では、第(2n−2)濾過工程で生成された難水溶性の第n易イオン化金属化合物及び難水溶性の亜鉛化合物を含む第(2n−2)ケークに、水と、第(2n−2)ケーク中の第n易イオン化金属化合物に対する当量より少量(例えば、当量の85〜95%)の塩酸とを添加し、第n易イオン化金属化合物の一部を水溶性の第n易イオン化金属塩化物に変化させて水に溶解させ、第n易イオン化金属塩化物と、第n易イオン化金属化合物(塩化物以外)と、亜鉛化合物とを含む第(2n−1)スラリーを生成する。第(2n−1)濾過工程では、第(2n−1)スラリーを濾過し、第n易イオン化金属塩化物を含む第(2n−1)濾液と、第n易イオン化金属化合物(塩化物以外)及び亜鉛化合物を含む第(2n−1)ケークとを生成する。第n易イオン化金属回収工程では、第(2n−1)濾液を加熱して水分を気化させることにより、第n易イオン化金属塩化物又は濃縮第n易イオン化金属塩化物水溶液を生成する。
【0027】
ケーク中に残留する第n易イオン化金属化合物を除去するステップは次の各工程を有する。
・第2n塩酸添加工程
・第2n濾過工程
【0028】
第2n塩酸添加工程では、第(2n−1)ケークに、水と、第(2n−1)ケーク中の難水溶性の第n易イオン化金属化合物に対する当量より多量(例えば、当量の105〜110%)の塩酸とを添加し、第n易イオン化金属化合物を第n易イオン化金属塩化物に変化させて水中に溶解させ、第n易イオン化金属塩化物と、亜鉛化合物(塩化亜鉛以外)とを含む第2nスラリーを生成する。第2n濾過工程では、第2nスラリーを濾過し、第n易イオン化金属塩化物を含む第2n濾液と、亜鉛化合物(塩化亜鉛以外)を含む第2nケークとを生成する。
【0029】
亜鉛を回収するステップは次の各工程を有する。
・第(2n+1)塩酸添加工程
・第(2n+1)濾過工程
・亜鉛回収工程
【0030】
第(2n+1)塩酸添加工程では、亜鉛化合物を含む第2nケークに、水と、第2nケーク中の難水溶性の亜鉛化合物に対する当量以上(例えば、当量の100〜120%)の塩酸とを添加し、亜鉛化合物を塩化亜鉛に変化させて水に溶解させ、塩化亜鉛を含む第(2n+1)スラリーを生成する。第(2n+1)濾過工程では、第(2n+1)スラリーを濾過し、塩化亜鉛を含む第(2n+1)濾液と、第(2n+1)ケークとを生成する。亜鉛回収工程では、第(2n+1)濾液を加熱して水分を気化させることにより、塩化亜鉛又は濃縮塩化亜鉛水溶液を生成する。