特許第6757922号(P6757922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6757922
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】汚泥からの金属回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 19/20 20060101AFI20200910BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20200910BHJP
   C22B 3/20 20060101ALI20200910BHJP
   C22B 26/20 20060101ALI20200910BHJP
   C22B 26/22 20060101ALI20200910BHJP
   C22B 21/00 20060101ALI20200910BHJP
   C22B 34/12 20060101ALI20200910BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20200910BHJP
   C22B 3/10 20060101ALI20200910BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20200910BHJP
   C22B 7/00 20060101ALN20200910BHJP
【FI】
   C22B19/20 101
   C22B3/22
   C22B3/20
   C22B26/20
   C22B26/22
   C22B21/00
   C22B34/12
   C22B47/00
   C22B3/10
   C02F11/00 C
   !C22B7/00 H
   !C22B7/00 101
   !C22B7/00 G
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-221676(P2019-221676)
(22)【出願日】2019年11月20日
【審査請求日】2019年12月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511203097
【氏名又は名称】山▲崎▼ 公信
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 公信
【審査官】 河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−510483(JP,A)
【文献】 特表2015−535886(JP,A)
【文献】 特開2019−119895(JP,A)
【文献】 特開2016−069706(JP,A)
【文献】 特開2003−027153(JP,A)
【文献】 特開2006−347815(JP,A)
【文献】 特開昭56−009383(JP,A)
【文献】 特開2005−270860(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第108862372(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属メッキ、亜鉛クロムメッキ、溶融亜鉛メッキ又はリン酸製造に係る事業所で発生し、水溶性カリウム化合物と、水溶性ナトリウム化合物と、炭酸カルシウムと、酸化亜鉛と、前記4種の金属化合物以外の無機性固形成分と、有機性固形成分とを含む含水率が90〜95%のスラリー状の汚泥から、カルシウム及び亜鉛を、それぞれ濃縮塩化カルシウム水溶液及び濃縮塩化亜鉛水溶液の形態で回収するようにした金属回収方法であって、
該金属回収方法は、水溶性カリウム化合物と水溶性ナトリウム化合物とを除去するカリウム・ナトリウム除去ステップと、カルシウムを回収するカルシウム回収ステップと、残留する炭酸カルシウムを除去する残留カルシウム除去ステップと、亜鉛を回収する亜鉛回収ステップとを有し、
前記カリウム・ナトリウム除去ステップでは、前記汚泥を連続式真空回転円筒型濾過器で濾過し、炭酸カルシウムと酸化亜鉛と前記無機性固形成分と前記有機性固形成分とを含むケークを生成する一方、水溶性カリウム化合物と水溶性ナトリウム化合物とを含む濾液を除去し、
前記カルシウム回収ステップは、
前記カリウム・ナトリウム除去ステップで生成した前記ケークに水を混合し攪拌してスラリー化した上で、該ケーク中の炭酸カルシウムに対する当量の85〜95%の塩酸を添加し、炭酸カルシウムの一部を塩化カルシウムに変化させて水中に溶解させ、塩化カルシウム炭酸カルシウム酸化亜鉛前記無機性固形成分と前記有機性固形成分とを含む含水率が90〜95%の第1スラリーを生成する第1塩酸添加工程と、
第1スラリーをフィルタプレスで濾過し、塩化カルシウムを含む第1濾液と、炭酸カルシウムと酸化亜鉛と前記無機性固形成分と前記有機性固形成分とを含む第1ケークとを生成する第1濾過工程と、
第1濾液を加熱して水分を気化させることにより濃縮し、濃縮塩化カルシウム水溶液を生成するカルシウム回収工程とを有し、
前記残留カルシウム除去ステップは、
第1ケークに水を混合し攪拌してスラリー化した上で、第1ケーク中の炭酸カルシウムに対する当量の105〜110%の塩酸を添加し、炭酸カルシウム塩化カルシウムに変化させて水中に溶解させ、塩化カルシウム酸化亜鉛前記無機性固形成分と前記有機性固形成分とを含む含水率が90〜95%の第2スラリーを生成する第2塩酸添加工程と、
第2スラリーをフィルタプレスで濾過し、塩化カルシウムを含む第2濾液と、酸化亜鉛と前記無機性固形成分と前記有機性固形成分とを含む第2ケークとを生成する第2濾過工程とを有し、
前記亜鉛回収ステップは、
第2ケークに水を混合し攪拌してスラリー化した上で、第2ケーク中の酸化亜鉛に対する当量の100〜120%の塩酸を添加し、酸化亜鉛を塩化亜鉛に変化させて水中に溶解させ、塩化亜鉛と前記無機性固形成分と前記有機性固形成分とを含む含水率が90〜95%の第3スラリーを生成する第3塩酸添加工程と、
第3スラリーを濾過し、塩化亜鉛を含む第3濾液と、第3ケークとを生成する第3濾過工程と、
第3濾液を加熱して水分を気化させることにより濃縮し濃縮塩化亜鉛水溶液を生成する亜鉛回収工程とを有することを特徴とする金属回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛よりイオン化傾向が大きい金属(以下「易イオン化金属」という。)の難水溶性の化合物と、難水溶性の亜鉛化合物とを含む汚泥から、易イオン化金属を塩化物の形態で回収するとともに、亜鉛を塩化亜鉛の形態で回収するようにした金属回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、製鉄、非鉄金属製造、金属メッキ、無機化学品製造、窯業、印刷などに係る事業所で発生する汚泥ないしは廃物には、種々の金属又はその化合物が含まれている。このような汚泥ないしは廃物に含まれている金属又はその化合物のうちの一部のものは資源としての価値が高いので、汚泥ないしは廃物から特定の金属又はその化合物を回収する方法が種々提案されている。
【0003】
とくに、リン酸製造、亜鉛クロムメッキ、溶融亜鉛メッキなどに係る事業所で発生する汚泥ないしは廃物には、資源としての価値が高い亜鉛又はその化合物が多く含まれているので、このような汚泥ないしは廃物から亜鉛又は亜鉛化合物を回収する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−88319号公報
【特許文献2】特開昭61−158818公報
【特許文献3】特開2002−121626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜2に開示された亜鉛の回収方法では、亜鉛含有物(廃物)から亜鉛を回収するために金属亜鉛を使用するので、比較的低純度の亜鉛化合物を回収するために高純度の金属亜鉛を消費しなければならず、亜鉛回収の経済的効果が減殺されるといった問題がある。さらに、亜鉛含有物からの亜鉛の溶出にアンモニアを用いた後、アンモニアを回収して循環使用するようにしているので、アンモニアを循環させるための複雑な装置を必要とするといった問題がある。一方、特許文献3に開示されたメッキスラッジからの亜鉛化合物の回収方法では、亜鉛化合物の晶析に大量のエタノールを必要とするので、亜鉛回収のコストが非常に高くつくといった問題がある。また、特許文献1〜3に開示された亜鉛の回収方法では、亜鉛以外の金属、例えば易イオン化金属ないしはその化合物を回収することができないといった問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決するためになされたものであって、比較的簡素な工程ないしは装置でもって、低コストで、亜鉛又は亜鉛化合物と易イオン化金属又はその化合物とを含む汚泥から、亜鉛ないしはその化合物と、所定の易イオン化金属ないしはその化合物とを回収することを可能にする手段を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた本発明の第1の態様に係る金属回収方法は、易イオン化金属(亜鉛よりイオン化傾向が大きい金属)の化合物である難水溶性の易イオン化金属化合物と難水溶性の亜鉛化合物とを含む汚泥から、易イオン化金属を塩化物の形態で回収するとともに亜鉛を塩化亜鉛の形態で回収するためのものである。なお、回収可能な易イオン化金属としては、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)などが挙げられる。
【0008】
発明の第1の態様に係る金属回収方法は、次の各ステップを有する。
(1)易イオン化金属を回収する第1のステップ
(2)残留する易イオン化金属化合物を除去する第2のステップ
(3)亜鉛を回収する第3のステップ
【0009】
第1のステップは、次の各工程を有する。
・第1塩酸添加工程
・第1濾過工程
・易イオン化金属回収工程
【0010】
第1塩酸添加工程では、難水溶性の易イオン化金属化合物及び亜鉛化合物を含む汚泥を濾過して生成したケークに、水と、該ケーク中の易イオン化金属化合物に対する当量より少量(例えば、当量の85〜95%)の塩酸とを添加し、易イオン化金属化合物の一部を易イオン化金属塩化物に変化(化学変化)させて水中に溶解させ、易イオン化金属塩化物と易イオン化金属化合物(塩化物以外)と亜鉛化合物とを含む第1スラリーを生成する。第1濾過工程では、第1スラリーを濾過し、易イオン化金属塩化物を含む第1濾液と、易イオン化金属化合物(塩化物以外)及び亜鉛化合物を含む第1ケークとを生成する。易イオン化金属回収工程では、第1濾液を加熱して水分を気化させることにより、易イオン化金属塩化物又は濃縮易イオン化金属塩化物水溶液を生成する。
【0011】
第2のステップは、次の各工程を有する。
・第2塩酸添加工程
・第2濾過工程
【0012】
第2塩酸添加工程では、第1ケークに、水と、第1ケーク中の難水溶性の易イオン化金属化合物に対する当量より多量(例えば、当量の105〜110%)の塩酸とを添加し、易イオン化金属化合物を易イオン化金属塩化物に変化させて水中に溶解させ、易イオン化金属塩化物と、亜鉛化合物とを含む第2スラリーを生成する。第2濾過工程では、第2スラリーを濾過し、易イオン化金属塩化物を含む第2濾液と、難水溶性の亜鉛化合物を含む第2ケークとを生成する。
【0013】
第3のステップは、次の各工程を有する。
・第3塩酸添加工程
・第3濾過工程
・亜鉛回収工程
【0014】
第3塩酸添加工程では、第2ケークに、水と、第2ケーク中の難水溶性の亜鉛化合物に対する当量以上(例えば、当量の100〜120%)の塩酸とを添加し、亜鉛化合物を塩化亜鉛に変化させて水中に溶解させ、塩化亜鉛を含む第3スラリーを生成する。第3濾過工程では、第3スラリーを濾過し、塩化亜鉛を含む第3濾液と、第3ケークとを生成する。亜鉛回収工程では、第3濾液を加熱して水分を気化させることにより、塩化亜鉛又は濃縮塩化亜鉛水溶液を生成する。
【0015】
本発明の第2の態様に係る金属回収方法は、n種(n:2〜6の任意の整数)の難水溶性の易イオン化金属化合物を含むとともに難水溶性の亜鉛化合物を含む汚泥から、各易イオン化金属を塩化物の形態で回収するとともに亜鉛を塩化亜鉛の形態で回収するためのものである。ここで、第1〜第n易イオン化金属化合物を構成する各易イオン化金属のイオン化傾向は、第1〜第n易イオン化金属の順に小さくなっている。
【0016】
本発明の第2の態様に係る金属回収方法は、次の各ステップを有する。ただし、nが2の場合は、「(3)第k易イオン化金属を回収するステップ(群)」及び「(4)残留する第k易イオン化金属化合物を除去するステップ(群)」は存在しない。
(1)第1易イオン化金属を回収するステップ
(2)ケーク中に残留する第1易イオン化金属化合物を除去するステップ
(3)第k易イオン化金属を回収するステップ(群)(k:2〜(n−1)のいずれかの整数)
(4)ケーク中に残留する第k易イオン化金属化合物を除去するステップ(群)
(5)第n易イオン化金属を回収するステップ
(6)ケーク中に残留する第n易イオン化金属化合物を除去するステップ
(7)亜鉛を回収するステップ
【0017】
第1易イオン化金属を回収するステップは次の各工程を有する。
・第1塩酸添加工程
・第1濾過工程
・第1易イオン化金属回収工程
【0018】
第1塩酸添加工程では、難水溶性の第1〜第n易イオン化金属化合物及び難水溶性の亜鉛化合物を含む汚泥を濾過して生成したケークに、水と、該ケーク中の第1易イオン化金属化合物に対する当量より少量(例えば、当量の85〜95%)の塩酸とを添加し、第1易イオン化金属化合物の一部を水溶性の第1易イオン化金属塩化物に変化(化学変化)させて水中に溶解させ、第1易イオン化金属塩化物と、第1〜第n易イオン化金属化合物(塩化物以外)と、亜鉛化合物とを含む第1スラリーを生成する。第1濾過工程では、第1スラリーを濾過し、第1易イオン化金属塩化物を含む第1濾液と、第1〜第n易イオン化金属化合物(塩化物以外)及び亜鉛化合物を含む第1ケークとを生成する。第1易イオン化金属回収工程では、第1濾液を加熱して水分を気化させることにより、第1易イオン化金属塩化物又は濃縮第1易イオン化金属塩化物水溶液を生成する。
【0019】
ケーク中に残留する第1易イオン化金属化合物を除去するステップは、次の各工程を有する。
・第2塩酸添加工程
・第2濾過工程
【0020】
第2塩酸添加工程では、第1ケークに、水と、第1ケーク中の難水溶性の第1易イオン化金属化合物に対する当量より多量(例えば、当量の105〜110%)の塩酸とを添加し、第1易イオン化金属化合物を第1易イオン化金属塩化物に変化させて水中に溶解させ、第1易イオン化金属塩化物と、第2〜第n易イオン化金属化合物と、亜鉛化合物とを含む第2スラリーを生成する。第2濾過工程では、第2スラリーを濾過し、第1易イオン化金属塩化物を含む第2濾液と、第2〜第n易イオン化金属化合物及び亜鉛化合物を含む第2ケークとを生成する。
【0021】
第k易イオン化金属を回収するステップ(n=3の場合)又はステップ群(n=4〜6の場合)は、kを2から(n−1)まで1ずつ増加させながら実施する(n−2)個のステップ又はステップ群で構成される。ただし、nが2の場合はこのステップは存在しない。このステップ又はステップ群を構成する各ステップは次の各工程を有する。
・第(2k−1)塩酸添加工程
・第(2k−1)濾過工程
・第k易イオン化金属回収工程
【0022】
第(2k−1)塩酸添加工程(第3、・・・第(2n−3)塩酸添加工程)では、第(2k−2)濾過工程で生成された難水溶性の第k〜第n易イオン化金属化合物及び亜鉛化合物を含む第(2k−2)ケークに、水と、第(2k−2)ケーク中の第k易イオン化金属化合物に対する当量より少量(例えば、当量の85〜95%)の塩酸とを添加し、第k易イオン化金属化合物の一部を水溶性の第k易イオン化金属塩化物に変化させて水に溶解させ、第k易イオン化金属塩化物と、第k〜第n易イオン化金属化合物(塩化物以外)と、亜鉛化合物とを含む第(2k−1)スラリーを生成する。第(2k−1)濾過工程では、第(2k−1)スラリーを濾過し、第k易イオン化金属塩化物を含む第(2k−1)濾液と、第k〜第n易イオン化金属化合物(塩化物以外)及び亜鉛化合物を含む第(2k−1)ケークとを生成する。第k易イオン化金属回収工程では、第(2k−1)濾液を加熱して水分を気化させることにより、第k易イオン化金属塩化物又は濃縮第k易イオン化金属塩化物水溶液を生成する。
【0023】
ケーク中に残留する第k易イオン化金属化合物を除去するステップ(n=3の場合)又はステップ群(n=4〜6の場合)は、kを2から(n−1)まで1ずつ増加させながら実施される(n−2)個のステップ又はステップ群で構成される。ただし、nが2の場合はこのステップは存在しない。このステップ又はステップ群を構成する各ステップは次の各工程を有する。
・第2k塩酸添加工程
・第2k濾過工程
【0024】
第2k塩酸添加工程(第4、・・・第(2n−2)塩酸添加工程)では、第(2k−1)ケークに、水と、第(2k−1)ケーク中の難水溶性の第k易イオン化金属化合物に対する当量より多量(例えば、当量の105〜110%)の塩酸とを添加し、第k易イオン化金属化合物を第k易イオン化金属塩化物に変化させて水中に溶解させ、第k易イオン化金属塩化物と、第(k+1)〜第n易イオン化金属化合物と、亜鉛化合物とを含む第2kスラリーを生成する。第2k濾過工程では、第2kスラリーを濾過し、第k易イオン化金属塩化物を含む第2k濾液と、第(k+1)〜第n易イオン化金属化合物及び亜鉛化合物を含む第2kケークとを生成する。
【0025】
第n易イオン化金属を回収するステップは次の各工程を有する。
・第(2n−1)塩酸添加工程
・第(2n−1)濾過工程
・第n易イオン化金属回収工程
【0026】
第(2n−1)塩酸添加工程では、第(2n−2)濾過工程で生成された難水溶性の第n易イオン化金属化合物及び難水溶性の亜鉛化合物を含む第(2n−2)ケークに、水と、第(2n−2)ケーク中の第n易イオン化金属化合物に対する当量より少量(例えば、当量の85〜95%)の塩酸とを添加し、第n易イオン化金属化合物の一部を水溶性の第n易イオン化金属塩化物に変化させて水に溶解させ、第n易イオン化金属塩化物と、第n易イオン化金属化合物(塩化物以外)と、亜鉛化合物とを含む第(2n−1)スラリーを生成する。第(2n−1)濾過工程では、第(2n−1)スラリーを濾過し、第n易イオン化金属塩化物を含む第(2n−1)濾液と、第n易イオン化金属化合物(塩化物以外)及び亜鉛化合物を含む第(2n−1)ケークとを生成する。第n易イオン化金属回収工程では、第(2n−1)濾液を加熱して水分を気化させることにより、第n易イオン化金属塩化物又は濃縮第n易イオン化金属塩化物水溶液を生成する。
【0027】
ケーク中に残留する第n易イオン化金属化合物を除去するステップは次の各工程を有する。
・第2n塩酸添加工程
・第2n濾過工程
【0028】
第2n塩酸添加工程では、第(2n−1)ケークに、水と、第(2n−1)ケーク中の難水溶性の第n易イオン化金属化合物に対する当量より多量(例えば、当量の105〜110%)の塩酸とを添加し、第n易イオン化金属化合物を第n易イオン化金属塩化物に変化させて水中に溶解させ、第n易イオン化金属塩化物と、亜鉛化合物(塩化亜鉛以外)とを含む第2nスラリーを生成する。第2n濾過工程では、第2nスラリーを濾過し、第n易イオン化金属塩化物を含む第2n濾液と、亜鉛化合物(塩化亜鉛以外)を含む第2nケークとを生成する。
【0029】
亜鉛を回収するステップは次の各工程を有する。
・第(2n+1)塩酸添加工程
・第(2n+1)濾過工程
・亜鉛回収工程
【0030】
第(2n+1)塩酸添加工程では、亜鉛化合物を含む第2nケークに、水と、第2nケーク中の難水溶性の亜鉛化合物に対する当量以上(例えば、当量の100〜120%)の塩酸とを添加し、亜鉛化合物を塩化亜鉛に変化させて水に溶解させ、塩化亜鉛を含む第(2n+1)スラリーを生成する。第(2n+1)濾過工程では、第(2n+1)スラリーを濾過し、塩化亜鉛を含む第(2n+1)濾液と、第(2n+1)ケークとを生成する。亜鉛回収工程では、第(2n+1)濾液を加熱して水分を気化させることにより、塩化亜鉛又は濃縮塩化亜鉛水溶液を生成する。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る金属回収方法によれば、比較的簡素な工程ないしは装置でもって、低コストで、亜鉛ないしは亜鉛化合物と易イオン化金属ないしはその化合物とを含む汚泥から、亜鉛及び所定の易イオン化金属を、それぞれ塩化亜鉛及び易イオン化金属塩化物の形態で回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る金属回収方法を実施するための金属回収装置のシステム構成図である。
図2図1に示す金属回収装置を構成する、汚泥からカリウム分及びナトリウム分を除去する装置の模式的な立面図である。
図3図1に示す金属回収装置を構成する、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム又は亜鉛を塩化物水溶液として回収する装置の模式的な立面図である。
図4図1に示す金属回収装置を構成するケーク中に残留する難水溶性の易イオン化金属化合物(カルシウム、マグネシウム又はアルミニウムの化合物)を除去する装置の模式的な立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態を具体的に説明する。この実施形態は、本発明の第2の態様に係る金属回収方法において、nが3であって、第1〜第3易イオン化金属がそれぞれカルシウム、マグネシウム及びアルミニウムである場合に該当するものである。この実施形態における汚泥は、例えば製鉄、非鉄金属製造、金属メッキ、無機化学品製造、窯業、印刷などに係る事業所で発生する汚泥であり、第1〜第3易イオン化金属(カルシウム、マグネシウム、アルミニウム)のイオンないしは化合物のほかに、カリウム及びナトリウム(易イオン化金属)のイオンないしは化合物も含んでいる。なお、汚泥中の第1〜第3易イオン化金属の化合物は、大半が難水溶性(ほぼ非水溶性)であるが、これらの塩化物は水溶性である。一方、カリウム及びナトリウムの化合物はすべて水溶性である。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係る金属回収装置Sの全体構成を示している。この金属回収装置Sは、亜鉛のイオンないしは化合物(以下「亜鉛分」という。)と、亜鉛よりイオン化傾向が大きいカリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム及びアルミニウムのイオンないしは化合物(以下、それぞれ「カリウム分」、「カルシウム分」、「ナトリウム分」、「マグネシウム分」及び「アルミニウム分」という。)とを含む汚泥から、カルシウムとマグネシウムとアルミニウムと亜鉛とを、それぞれの塩化物水溶液(濃縮液)の形態で回収するものである。なお、金属回収装置Sでは、カリウム分及びナトリウム分を含む水溶液(混合物)は、カリウム分とナトリウム分の分離が煩瑣であるので、回収されずに処分ないしは廃棄される。
【0035】
図1に示すように、金属回収装置Sは、カリウム・ナトリウム分除去装置1(以下「K・Na除去装置1」という。)と、カルシウム分回収装置2(以下「Ca回収装置2」という。)と、残留カルシウム分除去装置3(以下「Ca除去装置3」という。)と、マグネシウム分回収装置4(以下「Mg回収装置4」という。)と、残留マグネシウム分除去装置5(以下「Mg除去装置5」という。)と、アルミニウム分回収装置6(以下「Al回収装置6」という。)と、残留アルミニウム分除去装置7(以下「Al除去装置7」という。)と、亜鉛分回収装置8(以下「Zn回収装置8」という。)とを備えている。
【0036】
K・Na除去装置1は、金属回収装置Sに導入された汚泥から、カリウム分及びナトリウム分を除去する。Ca回収装置2は、K・Na除去装置1で生成されたケークからカルシウムを塩化カルシウム水溶液の形態で回収する。Ca除去装置3は、Ca回収装置2で生成されたケークに残留しているカルシウム化合物(塩化カルシウム以外)を除去する。Mg回収装置4は、Ca除去装置3で生成されたケークからマグネシウムを塩化マグネシウム水溶液の形態で回収する。Mg除去装置5は、Mg回収装置4で生成されたケークに残留しているマグネシウム化合物(塩化マグネシウム以外)を除去する。Al回収装置6は、Mg除去装置5で生成されたケークからアルミニウムを塩化アルミニウム水溶液の形態で回収する。Al除去装置7は、Al回収装置6で生成されたケークに残留しているアルミニウム化合物(塩化アルミニウム以外)を除去する。Zn回収装置8は、Al除去装置7で生成されたケークから亜鉛を塩化亜鉛水溶液の形態で回収する。
【0037】
Ca回収装置2に対しては、該Ca回収装置2で生成された塩化カルシウム水溶液を、スチーム又は熱媒で加熱し、水分を気化させて濃縮する濃縮器10と、濃縮器10で発生した水蒸気を冷却水で冷却して凝縮させる凝縮器11と、濃縮器10で濃縮された塩化カルシウム水溶液を貯留する貯槽12とが付設されている。なお、凝縮器11の凝縮水(蒸留水)の一部又は全部はCa回収装置2に返送される。
【0038】
同様に、Mg回収装置4に対しては、塩化マグネシウム水溶液を濃縮する濃縮器13と、凝縮器14と、濃縮された塩化マグネシウム水溶液を貯留する貯槽15とが付設されている。Al回収装置6に対しては、塩化アルミニウム水溶液を濃縮する濃縮器16と、凝縮器17と、濃縮された塩化アルミニウム水溶液を貯留する貯槽18とが付設されている。Zn回収装置8に対しては、塩化亜鉛水溶液を濃縮する濃縮器19と、凝縮器20と、濃縮された塩化亜鉛水溶液を貯留する貯槽21とが付設されている。なお、3つの凝縮器14、17、20の凝縮水(蒸留水)の一部又は全部は、それぞれ、Mg回収装置4、Al回収装置6及びZn回収装置8に返送される。
【0039】
図2に示すように、K・Na除去装置1は、金属回収装置Sに導入された汚泥を濾過する汚泥濾過装置23を備えている。汚泥濾過装置23は、スラリー槽24内に配置された円筒形の吸引ドラム25を備えた連続式の真空回転円筒型濾過器(例えば、オリバーフィルタ)である。汚泥は、水と、カリウム分と、カルシウム分と、ナトリウム分と、マグネシウム分と、アルミニウム分と、亜鉛分と、難水溶性金属化合物以外の無機性の固形成分(例えば、細粒土)と、有機性の固形成分とを含み、その含水率は例えば90〜95%である。そして、汚泥濾過装置23は、汚泥を濾過により固液分離して濾液とケークとを生成する
【0040】
真空吸引されて吸引ドラム25(濾布)の外周面に付着しているケークは、吸引ドラム25の空気中に露出した外周面上で、散水機26から噴射される洗浄水で洗浄される。その結果、ケーク中の水に溶解しているカリウム分及びナトリウム分がケークから除去される。なお、ケーク中の水に溶解しているその他の水溶性物質も洗浄水で洗浄されてケークから除去される。
【0041】
かくして、K・Na除去装置1(汚泥濾過装置23)では、難水溶性のカルシウム化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物及び亜鉛化合物を含むケーク(例えば、含水率70〜85%)と、カリウム分及びナトリウム分を含む濾液とが生成される。ここで、ケークはCa回収装置2(図1参照)に導入され、濾液は処分場(図示せず)に導入されて適切に処分又は処理される。なお、金属回収装置Sに導入される汚泥の含水率が低く(例えば、80〜90%)、スラリー槽24内で汚泥を円滑に流動させるのが困難な場合は、予め混合槽(図示せず)に汚泥と適量の水とを投入し、撹拌機(図示せず)で攪拌して、含水率が90〜95%のスラリーを生成し、このスラリーを汚泥濾過装置23に供給すればよい。
【0042】
図3に示すように、Ca回収装置2は、K・Na除去装置1の汚泥濾過装置23(図1図2参照)で生成されたケークと水とを混合してスラリー(例えば、含水率90%以上)を生成する混合槽31を備えている。なお、凝縮器11(図1参照)の凝縮水の一部又は全部は、混合槽31でケークと混合する水として利用される。
【0043】
混合槽31には、攪拌機32と、攪拌機32を回転駆動するモータ33とが付設されている。混合槽31で生成されたスラリーは、スラリーポンプ34によって塩酸添加槽35に輸送される。塩酸添加槽35には、攪拌機36と、攪拌機36を回転駆動するモータ37とが付設されている。塩酸添加槽35では、混合槽31で生成されたスラリーに塩酸が添加される。塩酸添加槽35内のスラリーは、反応槽38に導入される。反応槽38には、攪拌機39と、攪拌機39を回転駆動するモータ40とが付設されている。
【0044】
具体的には、塩酸添加槽35では、難水溶性のカルシウム化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物及び亜鉛化合物を含むスラリーに、スラリー中のカルシウム化合物に対する当量より少量(例えば、当量の85〜95%)の塩酸が添加される。なお、カルシウム化合物の大半(例えば、95〜99wt%)は炭酸カルシウム(CaCO)である。マグネシウム化合物の大半(例えば、95〜99wt%)は酸化マグネシウム(MgO)及び炭酸マグネシウム(MgCO)である。アルミニウム化合物の大半(例えば、95〜99wt%)は酸化アルミニウム(Al)である。亜鉛化合物の大半(例えば、95〜99wt%)は酸化亜鉛(ZnO)である。
【0045】
一般に、複数種の難水溶性の易イオン化金属化合物を含むスラリーに、比較的少量の塩酸を添加した場合、塩酸は、スラリー中でイオン化傾向が最も大きい易イオン化金属(以下「最大易イオン化金属」という。)の化合物と優先的ないしは選択的に反応して最大易イオン化金属塩化物を生成する。したがって、このようなスラリーに、最大易イオン化金属化合物に対する当量の塩酸を添加した場合、塩酸の大半が最大易イオン化金属化合物と反応して最大易イオン化金属塩化物を生成する一方、一部の少量の塩酸が、最大易イオン化金属の次にイオン化傾向が大きい易イオン化金属(以下「次易イオン化金属」という。)の化合物と反応して少量の次易イオン化金属塩化物を生成する。したがって、最大易イオン化金属化合物に対する当量の塩酸を添加した場合、スラリーを濾過して得られる濾液(最大易イオン化金属塩化物水溶液)には、少量の次易イオン化金属塩化物が不純物として存在することになる。
【0046】
そこで、Ca回収装置2では、難水溶性のカルシウム化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物及び亜鉛化合物を含むスラリーに、スラリー中のカルシウム化合物に対する当量より少量(例えば、当量の85〜95%)の塩酸を添加することにより、難水溶性のマグネシウム化合物等が水溶性の塩化物に変化するのを防止し、スラリーを濾過して得られる濾液(塩化カルシウム水溶液)に塩化マグネシウム等の不純物が混在するのを防止するようにしている。この場合、スラリーを濾過して得られるケークには難水溶性のカルシウム化合物が残留するが、このカルシウム化合物は、後で説明するようにCa除去装置3で除去される。
【0047】
かくして、塩酸添加槽35ないし反応槽38では、難水溶性のカルシウム化合物の大部分(例えば、85〜95%)が塩酸によって水溶性の塩化カルシウムに変化(化学変化)させられ、塩化カルシウムは水に溶解する。なお、残りのカルシウム化合物(塩化カルシウム以外)は変化せず、水には溶解しない。一方、塩酸の量が比較的少ないので、スラリー中の難水溶性のマグネシウム化合物、アルミニウム化合物及び亜鉛化合物は変化せず、水には溶解しない。したがって、塩酸添加槽35ないし反応槽38では、水溶性の塩化カルシウムと、難水溶性のカルシウム化合物と、難水溶性のマグネシウム化合物と、難水溶性のアルミニウム化合物と、難水溶性の亜鉛化合物とを含むスラリーが生成される。なお、混合槽31に供給される水の量は、混合槽31、塩酸添加槽35あるいは反応槽38内のスラリーが、ポンプで輸送することが可能な程度の流動性を有すように(例えば、スラリーの含水率が90〜95%となるように)好ましく調整される。
【0048】
反応槽38内のスラリーは、スラリーポンプ41によってフィルタプレス42に圧送される。フィルタプレス42ではスラリーが濾過され、塩化カルシウムを含み不純物をほとんど含まない濾液と、カルシウム化合物(塩化カルシウム以外)、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物及び亜鉛化合物を含むケークとが生成される。濾液すなわち塩化カルシウム水溶液は濃縮器10に導入され、ケークはCa除去装置3に導入される。
【0049】
濃縮器10には、塩化カルシウム水溶液を収容する蒸発缶44と蒸発缶44内の塩化カルシウム水溶液を高圧スチームで加熱して水分を気化させる加熱器45と、加熱器45内のドレン(凝縮水)を排出するドレントラップ46とが設けられている。濃縮器10では、水分の気化により塩化カルシウム水溶液が所定の濃度(例えば、30〜50wt%)まで濃縮され、濃縮された塩化カルシウム水溶液は貯槽12に導入され、一時的に貯留される。蒸発缶44で発生する水蒸気は凝縮器11によって凝縮され、凝縮水(蒸留水)の一部又は全部はCa回収装置2に返送される。なお、加熱器45は、高圧スチームではなく高温の熱媒、例えばダウサム(登録商標)を用いるものであってもよい。
【0050】
図4に示すように、Ca除去装置3は、Ca回収装置2のフィルタプレス42(図3参照)で生成されたケークと、水と、塩酸とを混合してスラリー(例えば、含水率90%以上)を生成する混合槽51を備えている。混合槽51には、攪拌機52と、攪拌機52を回転駆動するモータ53とが付設されている。
【0051】
具体的には、混合槽51で、Ca回収装置2から供給されたケークに、該ケーク中の難水溶性のカルシウム化合物(残留分)に対する当量より多量(例えば、当量の105〜110%)の塩酸と、適量の水とが添加され、攪拌・混合される。これにより、カルシウム化合物(残留分)が塩酸によって塩化カルシウムに変化させられ、水に溶解する。このとき、カルシウム化合物に対して塩酸が過剰であるので、該ケークに含まれていた難水溶性のマグネシウム化合物の一部(少量)が塩化マグネシウムとなって水に溶解する。このため、マグネシウムの回収率はその分だけ目減りすることになる。なお、混合槽51に供給される水の量は、混合槽51内のスラリーが、ポンプで輸送することが可能な程度の流動性を有すように(例えば、スラリーの含水率が90〜95%となるように)好ましく調整される。
【0052】
かくして、混合槽51では、塩化カルシウムと、塩化マグネシウムと、マグネシウム化合物(塩化マグネシウム以外)と、アルミニウム化合物と、亜鉛化合物とを含むスラリーが生成される。混合槽51内のスラリーは、スラリーポンプ54によってフィルタプレス55に圧送される。フィルタプレス55ではスラリーが濾過され、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムを含む濾液と、マグネシウム化合物(塩化マグネシウム以外)、アルミニウム化合物及び亜鉛化合物を含むケークとが生成される。濾液は複数種の塩化物が混在する水溶液であり資源としての価値が低いので、処分場に排出されて処分又は処理される。ケークはMg回収装置4(図1参照)に導入される。
【0053】
再び図1に示すように、Mg回収装置4では、基本的にはCa回収装置2の場合と同様の装置及び処理手法により、塩化マグネシウム水溶液が生成されるととともに、難水溶性のマグネシウム化合物、アルミニウム化合物及び亜鉛化合物を含むケークが生成される。塩化マグネシウム水溶液は、基本的には塩化カルシウム水溶液と同様の装置と処理手法により、濃縮器13で濃縮された後、貯槽15に貯留される。ケークは、Mg除去装置5に導入される。なお、Mg回収装置4の構成は、基本的には図3に示すCa回収装置2の構成と同様であるので、図示を省略する。
【0054】
Mg除去装置5では、基本的にはCa除去装置3の場合と同様の装置及び処理手法により、塩化マグネシウム及び塩化アルミニウム(少量)を含む濾液と、難水溶性のアルミニウム化合物(塩化アルミニウム以外)及び亜鉛化合物を含むケークとが生成される。濾液は複数の塩化物が混在する水溶液であり資源としての価値が低いので、処分場に排出され処分又は処理される。ケークはAl回収装置6に導入される。なお、Mg除去装置5の構成は、基本的には図4に示すCa除去装置3の構成と同様であるので、図示を省略する。
【0055】
Al回収装置6では、基本的にはCa回収装置2の場合と同様の装置及び処理手法により、塩化アルミニウム水溶液が生成されるととともに、難水溶性のアルミニウム化合物及び亜鉛化合物を含むケークが生成される。塩化アルミニウム水溶液は、基本的には塩化カルシウム水溶液と同様の装置と処理手法により、濃縮器16で濃縮された後、貯槽18に貯留される。ケークは、Al除去装置7に導入される。なお、Al回収装置6の構成は、基本的には図3に示すCa回収装置2の構成と同様であるので、図示を省略する。
【0056】
Al除去装置7では、基本的にはCa除去装置3の場合と同様の装置及び処理手法により、塩化アルミニウム及び塩化亜鉛(少量)を含む濾液と、亜鉛化合物(塩化亜鉛以外)を含むケークとが生成される。濾液は複数の塩化物が混在する水溶液であり資源としての価値が低いので、処分場に排出され処分又は処理される。ケークはZn回収装置8に導入される。なお、Al除去装置7の構成は、基本的には図4に示すCa除去装置3の構成と同様であるので、図示を省略する。
【0057】
Zn回収装置8では、基本的にはCa回収装置2の場合と同様の装置及び処理手法により、塩化亜鉛水溶液とケークとが生成される。塩化亜鉛水溶液は、基本的には塩化カルシウム水溶液と同様の装置と処理手法により、濃縮器19で濃縮された後、貯槽21に貯留される。ケークは処分場に排出され、処分ないしは処理される。なお、Zn回収装置8の構成は、基本的には図3に示すCa回収装置2の構成と同様であるので、図示を省略する。
【0058】
以上、本発明に係る金属回収方法によれば、比較的簡素な工程ないしは装置でもって、低コストで、亜鉛ないしは亜鉛化合物と易イオン化金属ないしはその化合物とを含む汚泥から、亜鉛及び所定の易イオン化金属を、それぞれ純度が高く不純物をほとんど含まない塩化亜鉛水溶液及び易イオン化金属塩化物水溶液の形態で回収することができる。
【符号の説明】
【0059】
S 金属回収装置、1 カリウム・ナトリウム分除去装置(K・Na除去装置)、2 カルシウム分回収装置(Ca回収装置)、3 カルシウム分除去装置(Ca除去装置)、4 マグネシウム分回収装置(Mg回収装置)、5 マグネシウム分除去装置(Mg除去装置)、6 アルミニウム分回収装置(Al回収装置)、7 アルミニウム分除去装置(Al除去装置)、8 亜鉛分回収装置(Zn回収装置)、10 濃縮器、11 凝縮器、12 貯槽、13 濃縮器、14 凝縮器、15 貯槽、16 濃縮器、17 凝縮器、18 貯槽、19 濃縮器、20 凝縮器、21 貯槽、23 汚泥濾過装置、24 スラリー槽、25 吸引ドラム、26 散水機、31 混合槽、32 攪拌機、33 モータ、34 スラリーポンプ、35 塩酸添加槽、36攪拌機、37 モータ、38 反応槽、39 攪拌機、40 モータ、41 スラリーポンプ、42 フィルタプレス、44 蒸発缶、45 加熱器、46 ドレントラップ、51 混合槽、52 攪拌機、53 モータ、54 スラリーポンプ、55 フィルタプレス。
【要約】
【課題】簡素な工程と装置で、低コストで、亜鉛又は亜鉛化合物と易イオン化金属又はその化合物とを含む汚泥から、亜鉛と所定の易イオン化金属とを回収することを可能にする手段を提供する。
【解決手段】金属回収装置Sは、カリウム・ナトリウム分除去装置1と、カルシウム分回収装置2と、カルシウム分除去装置3と、マグネシウム分回収装置4と、マグネシウム分除去装置5と、アルミニウム分回収装置6と、アルミニウム分除去装置7と、亜鉛分回収装置8とを備えている。金属回収装置Sは、亜鉛ないしはその化合物と、亜鉛よりイオン化傾向が大きいカリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム及びアルミニウムないしはこれらの化合物とを含む汚泥から、カルシウムとマグネシウムとアルミニウムと亜鉛とを、それぞれの塩化物水溶液の形態で回収する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4