(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで公知技術では、座席の背部を構成する基部と、表面の透明樹脂層の間に、意匠体に相当する樹脂製の表示シートが介装されている。このように座席の背部に意匠体を設ける場合には、表示シートに対する保護性能向上の観点から、硬い透明樹脂層を用いることができる。しかし乗員が頻繁に接触する位置に意匠体が配置されている場合、実質的に撓まない硬い透明樹脂層を用いると、意匠体の設けられている表皮部分の感触が極端に硬くなるなどして異物感が発生することが懸念される。このため公知技術の構成は、意匠体を配置する部位が限られるなどして、やや汎用性に欠ける構成となりがちであった。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、表皮の感触を極力損なうことなく、意匠面上の意匠体を好適に保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の乗物内装品の表皮は、乗物内装品の意匠面を構成するとともに、意匠面上に設けられている意匠体を備えている。この種の構成においては、意匠面上の意匠体を好適に保護できることが望ましい。そこで本発明では、可撓性を備えた保護層が意匠体上に設けられているとともに、意匠体の存在が保護層を通して目視で確認可能とされている。本発明では、可撓性を備えた保護層によって、表皮の感触を極力損なうことなく、意匠体を好適に保護することができる。
【0007】
さらに第
1発明の乗物内装品の表皮は
、意匠体が設けられている第一領域と、意匠体が設けられていない第二領域とを有しているとともに、保護層が、第一領域にのみ設けられている。本発明では、第一領域の意匠体を保護層で保護しつつ、意匠体と保護層が設けられていない第二領域において表皮自体を露出させておくことができる。
【0008】
第
2発明の乗物内装品の表皮の製造方法は、乗物内装品の意匠面を構成するとともに、意匠面上に設けられている意匠体を備えた乗物内装品の表皮の製造方法である。本発明では、表皮に、意匠体が設けられている第一領域と、意匠体が設けられていない第二領域とが設けられる。そして可撓性を備えた保護層を意匠体上に設けて、意匠体の存在を、保護層を通して目視で確認可能とする。このとき本発明では、第一領域又は意匠体上にのみ、保護層を形成可能な流動性を備えた薬剤を付与して、薬剤が固化してなる保護層を意匠体上に形成する。本発明では、第一領域の意匠体を保護層で保護しつつ、第二領域において表皮自体を露出させておく。このとき保護層となる流動性を備えた薬剤を第一領域又は意匠体上にのみ付与することにより、保護層を、より確実に第一領域にのみ形成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る第1発明によれば、表皮の感触を極力損なうことなく、意匠面上の意匠体を好適に保護することができる。また第
1発明によれば、表皮の感触をより好適に損なうことなく、意匠体を好適に保護することができる。そして第
2発明によれば、表皮の感触をより好適に損なうことなく、保護層を適宜の位置に設けて、意匠面上の意匠体を好適に保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜
図9を参照して説明する。各図には、便宜上、乗物用シートの前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示することがある。
図1の乗物用シート2は、乗物内装品の一例であり、シートクッション4と、シートバック6と、ヘッドレスト8を有する。これらシート構成部材は、各々、シート骨格をなすシートフレーム(4F,6F,8F)と、シート外形をなすシートパッド(4P,6P,8P)と、シートパッドを被覆するシートカバー(4S,6S,8S)を有する。本実施例では、シートクッション4の後部にシートバック6の下部が起倒可能に連結するとともに、起立状態のシートバック6の上部にヘッドレスト8が配設される。
【0012】
ここでシートバック6の前側の意匠面は、
図1を参照して、天板メイン部6aと、左右の天板サイド部6bと、左右のカマチ部6cに区分けできる。天板メイン部6aは、シート幅方向におけるシートバック6の中央部分であり、乗員の背凭れが可能な幅寸法でシート上下方向に延びている。また天板メイン部6aの左右両側には、それぞれ天板メイン部6aよりも前方に突出する天板サイド部6bが設けられており、これら左右の天板サイド部6bによってカーブ走行時などの旋回時に乗員側部を支持できる。そしてカマチ部6cは、シート幅方向におけるシートバック6の左右の側面をなす面である。
【0013】
またシートクッション4の前側の意匠面も、
図1を参照して、天板メイン部4aと、天板サイド部4bと、カマチ部4cに区分けできる。天板メイン部4aは、シート幅方向におけるシートクッション4の中央部分であり、乗員の着座が可能な幅寸法でシート前後方向に延びている。また天板メイン部4aの左右両側には、それぞれ天板メイン部4aよりも上方に突出する天板サイド部4bが設けられており、これら左右の天板サイド部4bによってカーブ走行時などの旋回時に乗員側部を支持できる。そしてカマチ部4cは、シート幅方向におけるシートクッション4の左右の側面をなす面である。
【0014】
<実施例1>
各シートカバー4S,6S,8Sは、それぞれシートの意匠面を構成する面材であり、布帛(織物,編物,不織布)や皮革(天然皮革,合成皮革)で構成されている。そして
図1及び
図2を参照して、各シートカバー4S,6S,8Sの意匠面の適所には対応する意匠体群20A〜20Gが設けられており、各意匠体群20A〜20Gは、それぞれ複数の意匠体20(詳細後述)で構成されている(
図1及び
図2では、便宜上、一つの意匠体群を構成する意匠体にのみ符号20を付す)。例えばシートバック6では、左側(右側)のカマチ部6cの間に意匠体群20A(20B)が設けられており、天板メイン部6aの上部にも一対の意匠体群20C,20Dが設けられている。またシートクッション4では、右側のカマチ部4cに意匠体群20Eが設けられている。そしてヘッドレスト8では、前面に意匠体群20Fが設けられており、左側面にも意匠体群20Gが設けられている。こうして本実施例では、各シートカバー4S,6S,8Sの人目につきやすい部位に、対応する意匠体群20A〜20Gを設けて意匠性の向上を図っている。
【0015】
ところで各意匠体群20A〜20Gは、上述したように人目につきやすい部位に配置されるため、他部材との接触が避けられないものであった。例えば乗物用シート2においては、各意匠体群20A〜20Gが、乗員の着座動作や乗降動作時などに他部材としての乗員に接し、このときの乗員との摩擦によって対応するシートカバー4S,6S,8Sから剥離するおそれがあった。もっとも公知技術のように、硬い透明樹脂層などで各意匠体20を保護することもできるが、そうすると各シートカバー4S,6S,8Sの感触が部分的に損なわれてしまう。そこで本実施例では、後述する保護層30によって、各シートカバー4S,6S,8Sの感触を極力損なうことなく、各意匠体群20A〜20Gを構成する各意匠体20を好適に保護することとした。ここで各意匠部群20A〜20Gは略同一の基本構成を有するため、以下に、シートバック6の右側の天板サイド部6bに設けた意匠体群20Aを一例にその詳細を説明することとする。
【0016】
[意匠体]
天板サイド部6bの意匠体群20Aでは、
図1を参照して、複数の意匠体20が、上下方向に等間隔で設けられており、これら複数の意匠体20は、いずれも同一構成の再帰性反射材で構成されている。例えば天板サイド部6bで最も上方に配置する意匠体20を一例に説明すると、この意匠体20は、
図3を参照して、基材21と、この基材21上に固定された複数の反射ビーズ22で構成されている。基材21は、可撓性を備えた略矩形のシート材であり、各種の樹脂にて構成することができる。また複数の反射ビーズ22は、例えばφ20μm〜40μmの透明な球レンズ(ガラスビーズなど)であり、基材21上に接着された状態でカレンダー加工などの手法で埋込状に一体化されている。そして各意匠体20は、シートの意匠性を考慮して、後方から前方に向かうにつれて次第に下方に向かう傾斜状態とされてシートカバー6Sに一体化されており、さらに後述する保護層30で覆われている。
【0017】
ここでシートカバー6Sに対する各意匠体20の一体化の手法は特に限定しないが、各意匠体20を、
図3を参照して、それぞれシートカバー6Sに接着材24を介して一体化することができる。例えば反射ビーズ22が一体化されている基材21の原材(図示省略)を用意し、この原材から意匠体20を個別に型抜きする。つぎに各意匠体20を、接着材24を介してシートカバー6Sの適宜の位置に配置する。この状態で図示しないウェルド装置にて接着材24を溶融させたのち固化させることで、各意匠体20を、接着材24を介してシートカバー6Sに一体化することができる。また別の手法として、反射ビーズ22が一体化されている基材21の原材を、そのまま接着材24を介してシートカバー6Sの適宜の位置に配置する。この状態で溶断可能なウェルド装置にて、各意匠体20だけをシートカバー6Sに一体化すると同時に、残りの原材部分を、各意匠体20から溶断して除去しておくこともできる。
【0018】
[保護層]
保護層30は、
図3を参照して、適度な可撓性を備えた層であり、意匠体20を覆うようにシートカバー6Sに設けることができる。この保護層30は、光透過性を備えた透明又は半透明の層であり、この保護層30を通して意匠体20の存在を目視で確認できる。この種の保護層30の素材として、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂を例示できる。なかでも好適な耐熱性を備えて黄変しにくいポリウレタン樹脂や、強度に優れて破断しにくいアクリル樹脂が保護層30の素材として望ましい。また保護層30の素材として、擦傷や打痕傷などの傷を受けにくく、さらに打痕傷が自然に修復される自己修復性能を備えた素材を用いることが好ましい。この種の自己修復性能を備えた素材として、アクリル系やウレタン系の架橋構造を有する樹脂を例示でき、この種の素材では、素材自身の復元力により、打痕傷によってできた凹みが自然に元にもどりやすいことが知られている。
【0019】
ここで保護層30の形成手法は特に限定しないが、例えば保護層30を形成可能な流動性を備えた液状又はゲル状の薬剤を用いることができ、この種の薬剤として、ナトコ社製の商品名:自己治癒(登録商標)クリアーNo.100の薬剤を例示できる。そして
図3を参照して、シートカバー6Sに各意匠体20を一体化したのち、このシートカバー6Sの略全面に薬剤を付与する。そして薬剤が硬化(固化)することにより、各意匠体20を含むシートカバー6Sの略全面上に保護層30が形成され、この保護層30によって各意匠体20を保護することができる。なお薬剤の付与方法として、スプレーや刷毛による塗布、含浸、スクリーンプリント等の印刷などの各種手法を例示できる。
【0020】
[変形例]
ここで保護層30は、シートカバー6Sの略全面に形成する場合のほか、シートカバー6Sの一部にのみ形成することもできる。例えば本変形例では、
図4を参照して、シートカバー6Sに、意匠体20が設けられている第一領域A1と、意匠体20が設けられていない第二領域A2とを設ける。そして可撓性を備えた保護層30を意匠体20上に設けて、意匠体20の存在を、保護層30を通して目視で確認可能とする。このとき第一領域A1又は意匠体20上にのみ、保護層30を形成可能な流動性を備えた薬剤を付与し、薬剤が固化してなる保護層30を意匠体20上に形成する。
【0021】
例えば上述した基材21の原材から意匠体20を個別に型抜きし、この段階の各意匠体20に薬剤を付与する。こうして予め保護層30の形成された意匠体20を、接着材24を介してシートカバー6Sに一体化する。こうすることでシートカバー6Sに、第一領域A1と第二領域A2を形成するとともに、第一領域A1に設けられた意匠体20上にのみ保護層30を積層状に設けることができる。このように本変形例では、第一領域A1の意匠体20を保護層30で保護しつつ、第二領域A2においてシートカバー6S自体を露出させておく。このとき保護層30となる流動性を備えた薬剤を意匠体20上にのみ付与することにより、保護層30を、より確実に第一領域A1にのみ形成することができる。また別の手法として、基材21の原材に薬剤を付与して、原材の略全面に保護層30を形成する。この状態で原材を、接着材24を介してシートカバー6Sの適宜の位置に配置する。そして溶断可能なウェルド装置にて、保護層30の形成された各意匠体20だけをシートカバー6Sに一体化すると同時に、残りの原材部分を、各意匠体20から溶断して除去しておくこともできる。
【0022】
[シートカバーの使用]
そして
図1を参照して、各シートカバー4S,6S,8Sを、対応するシートパッドに被せることで、各シートカバー4S,6S,8Sによってシートの意匠面が構成される。そして各意匠体群20A〜20Gを構成する各意匠体20が、人目につきやすいシートカバー部分に配置されることで、各シートカバー4S,6S,8Sの意匠性が向上している。そして本実施例では、各保護層30によって各意匠体20が覆われることにより、乗員の着座動作や乗降動作時などにおいて乗員との摩擦によって各意匠体20が剥離することが防止又は低減されている。そして乗物用シート2に乗員が着座した際には、各シートカバー4S,6S,8Sが適度に撓みながら乗員を支持する。このとき各意匠体20を覆う保護層30が適度な可撓性を有し、シートカバー6Sとともに適度に撓み変形するため、保護層30が原因の違和感(異物感)などが極力生じない構成とされている。さらに変形例のように第二領域A2からシートカバー6Sがそのまま露出する構成では、第二領域A2において、シートカバー6S自体が有する感触を乗員に感じさせることができる。
【0023】
以上説明したとおり本実施例では、可撓性を備えた保護層30によって、各シートカバー4S,6S,8Sの感触を極力損なうことなく、意匠体20を好適に保護することができる。このため本実施例によれば、各シートカバー4S,6S,8Sの感触を極力損なうことなく、意匠面上の意匠体20を好適に保護することができる。また変形例においては、第一領域A1の意匠体20を保護層30で保護しつつ、意匠体20と保護層30が設けられていない第二領域A2において各シートカバー4S,6S,8S自体を露出させておく。こうすることで第二領域A2において、各シートカバー4S,6S,8S自体の感触を乗員に感じさせることができる。さらに保護層30の形成過程において、保護層30となる流動性を備えた薬剤を第一領域A1又は意匠体20上にのみ付与することにより、保護層30を、より確実に第一領域A1にのみ形成することができる。
【0024】
<実施例2>
実施例2では、実施例1の構成部材とほぼ同一の基本構成を備える構成については、対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。実施例2では、
図5を参照して、シートバック6の右側のカマチ部6cに意匠体群21Aが設けられており、この意匠体群21Aは、複数の意匠体21aで構成されている(
図5では、便宜上、一つの意匠体にのみ符号21aを付す)。そして
図6を参照して、各意匠体21aが、それぞれ後述の金属蒸着フィルム材で構成され且つエンボス加工などの手法にてシートカバー6Sに凹設されて一体化されている点が実施例1と異なっている。
【0025】
複数の意匠体21aは、いずれも同一構成の金属蒸着フィルム材で構成されている。例えば最も上方に配置する意匠体21aを一例に説明すると、この意匠体21aは、
図6を参照して、各種金属が蒸着された略矩形のシート材で構成されており、適度な可撓性を有している。ここで蒸着すべき金属は特に限定しないが、アルミニウム、金、銀、銅、白金、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタンなどの各種金属(各金属の酸化物や炭化物や窒化物を含む)を例示できる。なお各意匠体21aの外形は、便宜上、略正方形とされているが、それぞれ文字を模した外形形状を有していてもよい。例えば特定の文字を模した各意匠体21aを、シート上下方向に適宜の間隔で配置しておくことで、意匠体群20A全体で、意味のある文字配列を表現することもできる。
【0026】
またシートカバー6Sに対する各意匠体21aの一体化の手法は特に限定しないが、各意匠体21aを、
図6を参照して、それぞれシートカバー6Sに接着材26を介して一体化することができる。例えば各意匠体21aを含む原材を、接着材26を介してシートカバー6Sの適宜の位置に配置する。この状態で図示しない熱プレス装置にて、原材を、シートカバー6Sに押し付けながら、接着材24を溶融させたのち固化させることでシートカバー6Sに接着する。このとき各意匠体21aだけをシートカバー6Sに接着すると同時に、残りの原材部分を、各意匠体21aからカットして除去しておくこともできる。なお原材のプレス面には、蒸着された金属の剥離を防止する観点から、剥離材を貼着しておくことが望ましい。つぎに高周波ウェルダー装置を用いて、シートカバー6Sに各意匠体21aを強く押し付けることで(エンボス加工を施すことで)、これら各意匠体21aを、シートカバー6Sに凹設することができる。さらにスクリーンプリント用の版を用いて、シートカバー6Sの凹設部分にのみ薬剤を付与することにより、第一領域A1の意匠体20上にのみ保護層30を形成することができる。そして上述の手法によれば、原材のカットと接着を同時に行うことができるため、シートカバー6Sに対する各意匠体21aの柄ズレが起こりにくい。また予め意匠体21aを原材から切り出す必要がないため、シートの作製工程やコスト低減に資する構成となる。
【0027】
こうして本実施例においても、可撓性を備えた保護層30によって、シートカバー6Sの感触を極力損なうことなく、各意匠体21aを好適に保護することができる。特に本実施例では、各意匠体21aを、シートカバー6Sに凹設したため、蒸着された金属部分が破損しにくい構成とされている。
【0028】
<実施例3>
実施例3では、実施例1の構成とほぼ同一の基本構成を備える構成については、対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。実施例3では、
図7を参照して、刷毛模様をなす意匠体22Aが、シートクッション4とシートバック6の意匠面に跨って設けられている。そして
図8を参照して、意匠体22Aが、可撓性を備えた塗膜層で構成されている点が実施例1と異なっている。この意匠体22Aとしての塗膜層は、UV(紫外線)硬化塗料、ラッカー、常乾塗料、水系塗料、粉体塗料、熱硬化塗料により形成でき、本実施例においては、UV硬化塗料を用いたスクリーンプリントにより、意匠体22Aとしての塗膜層が形成されている。
【0029】
そして意匠体22Aが保護層30にて覆われており、この保護層30は、
図8を参照してシートカバー6Sの略全面に形成でき、また
図9を参照してシートカバー6Sの第一領域A1にのみ形成することもできる。そして実施例3では、保護層30に、艶出し材やラメ材を含めておくことができる。こうすることで保護層30を通して意匠体20の存在を目視した際に、意匠層22Aの柄と保護層30の柄が重なっているような多層感のある柄を呈することとなり、さらに意匠性が向上することとなる。こうして本実施例においても、可撓性を備えた保護層30によって、シートカバー6Sの感触を極力損なうことなく、意匠体22Aを好適に保護することができる。
【0030】
本実施形態の乗物内装品の表皮は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。例えば本実施形態では、意匠体群20A〜20G及び意匠体20等の構成(形状,寸法,配置位置,配置数など)を例示したが、これらの構成を限定する趣旨ではない。例えば各意匠体群を構成する意匠体は、全て同形同寸であっても良く、形状や寸法が異なっていてもよい。また各実施例と変形例の構成を適宜組み合わせて用いることができる。また意匠体として、蓄光材の混入された発光可能な樹脂シートなどを用いることができる。
【0031】
また本実施形態では、保護層30の構成(形状,寸法,配置位置など)を例示したが、保護層の構成を限定する趣旨ではない。例えば発光可能な意匠体を用いる場合には、意匠体の発光を目視で確認でき且つ蓄光材の蓄光を許容できる限り、不透明な保護層を用いることもできる。
【0032】
また変形例等では、シートカバーに第一領域A1と第二領域A2を形成する例を説明した。第一領域は、各意匠体の外形に倣った領域でもよく、各意匠体よりも面方向に若干広い領域であってもよい。例えば実施例3において、刷毛模様をなす意匠体22Aの外形を網羅する第一領域を設定し、意匠体の刷毛と刷毛の間に配置するシートカバー部分にも保護層を形成しておくことができる。
【0033】
また本実施形態では、乗物内装品として、乗物用シート2を例示したが、乗物内装品の種類を限定する趣旨ではない。乗物内装品は、乗物室内に配置され且つ表皮を備えた部材であればよく、ドア部やインストルメントパネルや天井部やコンソールなどの各種部材を例示できる。また乗物用シートにおいては、シートクッションやシートバックやヘッドレストのほか、アームレスト等の各種シート構成部材のシートカバーに本実施形態の構成を適用できる。そして乗物内装品に応じて、表皮の構成を適宜変更することができ、さらに意匠体群や意匠体の配置位置も適宜変更することができる。そして本実施形態の構成は、車両や航空機や電車などの乗物に搭載される乗物内装品に適用できる。