特許第6757952号(P6757952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757952
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】体積測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20200910BHJP
   G01B 11/04 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   G01B11/24 K
   G01B11/04 H
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-63713(P2016-63713)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-181080(P2017-181080A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石井 稔之
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰司
(72)【発明者】
【氏名】片山 三郎
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−157051(JP,A)
【文献】 特開2002−081987(JP,A)
【文献】 特開2015−081766(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0075798(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − G01B 11/30
G01G 11/00 − G01G 11/20
G01F 22/00
G06T 1/00 − G06T 1/40
G06T 3/00 − G06T 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベア上を流れる土、砂、砂利、骨材、礫、岩のいずれかを含む被搬送物の体積を測定するための体積測定システムであって、
前記被搬送物に対して上方からレーザー光を照射する、ラインレーザと、
前記レーザー光の照射によって描かれた被搬送物の輪郭線を、前記ラインレーザの照射方向と異なる角度で、かつ、前記ベルトコンベアの進行方向の前側と後側のそれぞれ異なる場所から撮影する、複数のデジタルカメラと、
前記ベルトコンベアの移動量を計測する、移動量センサと、
前記複数のデジタルカメラから得る複数の画像データ、および前記ベルトコンベアの移動量から、被搬送物の体積を算出する機能を有する、解析装置と、を少なくとも備え
前記解析装置では、前記複数の画像データから、主たる画像データを選択し、前記主たる画像データで不足する輪郭線を、その余の画像データから補完するとともに、前記ベルトコンベアのベルトの稜線と途切れの無い輪郭線とで囲まれた領域の画素数と、前記デジタルカメラの一画素が占める面積との乗算によって被搬送物の断面積が求められ、前記被搬送物が撮影箇所に到達する前に、前記被搬送物の高さが一定以上の高さとならないように調整するゲートが、前記ベルトコンベアの上方に所定の高さだけ離隔するように設けられていることを特徴とする、
体積測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベア上を流れる土、砂、砂利、骨材、礫、岩などの被搬送物の体積を測定するための体積測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベア上を流れる土の体積を把握する方法として、出願人は、以前に以下の発明を着想した。
この発明は、ラインレーザから土などの被搬送物に対して照射したレーザー光の輪郭線を、前記ラインレーザの照射方向と異なる角度からデジタルカメラで撮影し、この画像データとベルトコンベアの移動量から、自動的に被搬送物の体積を随時把握できる、というものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ラインレーザによる輪郭線が消失しないように被搬送物を撮影することで、精度の高い体積測定を実現可能なシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、ベルトコンベア上を流れる土、砂、砂利、骨材、礫、岩のいずれかを含む被搬送物の体積を測定するための体積測定システムであって、前記被搬送物に対して上方からレーザー光を照射する、ラインレーザと、前記レーザー光の照射によって描かれた被搬送物の輪郭線を、前記ラインレーザの照射方向と異なる角度で、かつ、前記ベルトコンベアの進行方向の前側と後側のそれぞれ異なる場所から撮影する、複数のデジタルカメラと、前記ベルトコンベアの移動量を計測する、移動量センサと、前記複数のデジタルカメラから得る複数の画像データ、および前記ベルトコンベアの移動量から、被搬送物の体積を算出する機能を有する、解析装置と、を少なくとも備えた体積測定システムであって、前記解析装置では、前記複数の画像データから、主たる画像データを選択し、前記主たる画像データで不足する輪郭線を、その余の画像データから補完するとともに、前記ベルトコンベアのベルトの稜線と途切れの無い輪郭線とで囲まれた領域の画素数と、前記デジタルカメラの一画素が占める面積との乗算によって被搬送物の断面積が求められ、前記被搬送物が撮影箇所に到達する前に、前記被搬送物の高さが一定以上の高さとならないように調整するゲートが、前記ベルトコンベアの上方に所定の高さだけ離隔するように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、以下に記載する効果を奏する。
(1)隠れた輪郭線を補完することができる。
複数のデジタルカメラによって、異なる角度から被搬送物の輪郭線を撮影するため、各画像データを組み合わせることで、レーザー光の輪郭線を補完することができる。
(2)計算上の体積値を、実際の体積値へと近づけることができる。
画像データと移動量から求めた計算上の体積値に対し、予め入力した被搬送物の密度推定値を乗算することで、さらに実際の体積値に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の第1実施例に係る体積測定システムの構成図
図2】各デジタルカメラの撮影画像を加工した鉛直断面図と補完後の鉛直断面図
図3】本発明の第2実施例に係る体積測定システムの構成図
図4】ベルトコンベアの構成図。
図5】本発明の第3実施例に係る体積測定システムの構成図
図6】本発明の第4実施例に係る体積測定システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る体積測定システムの実施例について説明する。
【実施例1】
【0008】
<1>全体構成
図1は、本発明に係る体積測定システムの第1実施例を示す概略構成図である。
本発明に係る体積測定システムは、被搬送物Bを搬送するベルトコンベアAに設置するシステムである。
本実施例に係る体積測定システムは、ラインレーザ10と、複数のデジタルカメラ(一方のデジタルカメラ20a、他方のデジタルカメラ20b)と、移動量センサ30と、解析装置40と、を少なくとも備えて構成する。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0009】
<2>被搬送物
被搬送物Bは、土、砂、砂利、骨材、礫、岩などの土木工事で取り扱うもの全般を想定する。本実施例では、被搬送物として塊状を呈する岩や礫が含まれている。
【0010】
<3>ラインレーザ
ラインレーザ10は、ベルトコンベアAを流れる被搬送物Bの表面に輪郭線B1を描くための装置である。
ラインレーザ10は、ベルトコンベアAの上方に設け、照射するレーザー光11は、下方を向くように配置する。
レーザー光11の照射方向θ1は、水平方向を0°(180°)としたとき、0°<θ1<180°の範囲で適宜決定する。
本実施例では、レーザー光11の照射方向を鉛直方向(90°)としている。
レーザー光11は、常に照射する態様としても良いし、デジタルカメラの撮影時にのみ照射する態様としてもよい。
【0011】
<4>デジタルカメラ
デジタルカメラは、前記ラインレーザ10によって被搬送物Bの表面に描かれた輪郭線B1を撮影するための装置である。
本発明では、デジタルカメラを少なくとも二台以上設け、各デジタルカメラは、互いに、前記ベルトコンベアAの上方で、前記ラインレーザ10の照射方向と異なる位置かつその他のデジタルカメラとも異なる角度から撮影するものとする。これは、一方のデジタルカメラによる画像データが、死角領域Cの存在によって断面解析が不十分である場合に、その他のデジタルカメラによる画像データでもって、補完を行うためである。
図1では、ラインレーザ10を挟んで、ベルトコンベアの進行方向の前側に一方のデジタルカメラ20aを設置し、前記進行方向の後側に他方のデジタルカメラ20bを設置している。
【0012】
各デジタルカメラ20a、20bの画素数は、多ければ大きいほど、画像解析の精度が向上する点で好ましいが、画素数が多ければ大きいほど、解析時間も長くなるため、適切な範囲で決めれば良い。
【0013】
<5>移動量センサ
移動量センサ30は、ベルトコンベアAの移動量を検知するための装置である。
移動量センサ30は、公知の部材を用いることができる。
移動量センサ30は、各デジタルカメラによる被搬送物の画像データの取得間隔(Δt)でのベルトコンベアAの移動量(ΔL)を取得する。
【0014】
<6>解析装置
解析装置40は、ベルトコンベアAを流れる被搬送物Bの体積を算出するための装置である。
解析装置40は、PCなどの情報処理装置を用いることができる。
解析装置40は、前記デジタルカメラ20a、20bから得られる複数の画像データと、前記移動量センサ30で得られるベルトコンベアAの移動量のデータに基づいて、体積を算出する。
【0015】
<6.1>主たる画像データの選択方法
解析装置40は、複数のデジタルカメラ20a、20bから、予め主たるデジタルカメラを特定しておき、このデジタルカメラから得られる画像データを主たる画像データに選択して、主たる画像データで不足する箇所を、その余のデジタルカメラによる画像データで補完するように構成することができる。
また、複数のデジタルカメラ20a、20bのうち、主たるデジタルカメラを特定せずに、解析作業の度に、複数の画像データから不足する箇所が最も少ない画像データを主たる画像データとして選択するように構成してもよい。
なお、何れかのデジタルカメラにおいて、解析に十分な画像データが得られていれば、その他のデジタルカメラの画像データを要しない点は言うまでも無い。
【0016】
<6.2>体積の算出方法の具体例
解析装置40は、前記選択した画像データに基づいて求めた、輪郭線B1を照射した位置での被搬送物Bの鉛直断面図から得た断面積(Bs)と、次の画像データの取得までの移動量センサ30で得られるベルトコンベアAの移動量(ΔL)から、デジタルカメラの撮影間隔(Δt)の間に、ラインレーザ10を通過した被搬送物Bの体積(ΔV)を求める。
そして、このΔVを順次加算していくことによって、所定時間(t)内にラインレーザを通過した被搬送物の体積(V)を求める。
【0017】
上記の計算方法を数式化すると、以下の通りとなる。
【0018】
<7>使用方法
次に、再度図1、2を参照しながら、本実施例に係る体積測定システムの使用方法について説明する。
(1)レーザー光の照射
まず、ベルトコンベアAを流れる被搬送物Bに対し、該ベルトコンベアAの上方に設けたラインレーザ10から、レーザー光11を略鉛直方向に向けて照射する。
被搬送物Bの表面には、照射したレーザー光11によって輪郭線B1が描かれる。
【0019】
(2)輪郭線の撮影・画像データの合成
前記輪郭線B1を、各デジタルカメラ20a、20bで撮影し、各画像データを取得する。
取得した各画像データを画像処理して鉛直方向に切断した見かけの断面図を図2に示す。
図2(a)は、図1におけるデジタルカメラ20aで撮影したデータを鉛直断面に加工した図であり、図2(b)は、図1におけるデジタルカメラ20bで撮影したデータを鉛直断面に加工して左右反転した図であり、図2(c)は、図2(a)の図における消失部を、図2(b)の図の輪郭線で補完した後の画像データである。
図2(a)に示すように、被搬送物Bに塊状のものが含まれていると、各画像データにおいて、デジタルカメラ20aから輪郭線B1の一部が隠れて消えたように見える箇所(消失部B2)が生じる場合がある。
同様に、図2(b)においても、輪郭線B1’の一部に、消失部B2’が生じている。
そこで、解析装置40は、各デジタルカメラ20a、20bの座標関係に基づいて、これらの画像データを適宜合成・補完して、途切れのない輪郭線B3を有する鉛直断面図を生成する。
【0020】
(3)断面積の算出
解析装置は、図2(c)に示す補完後の鉛直断面図において、被搬送物Bの占める割合(ベルトコンベアAのベルトA1の稜線A11と途切れの無い輪郭線B3とで囲まれた領域)を画像解析することで、撮影時における被搬送物Bの断面積(Bs)を求めることができる。
被搬送物Bの断面積(Bs)は、ベルトコンベアAのベルトA1の稜線A11と途切れの無い輪郭線B3とで囲まれた領域の画素数と、デジタルカメラの一画素が占める面積との乗算によって求めることができる。
デジタルカメラの一画素が占める面積は、デジタルカメラの画素数や画角、デジタルカメラと撮影箇所との距離などの各種条件から求めることができる。
なお、ベルトコンベアの幅を1mとし、デジタルカメラの画素数を1000万画素と仮定した場合、1画素あたりの長さとして1mm以下を確保できる計算となるため、従来方法より高精度な断面積の測定が期待できる。
【0021】
(4)体積の算出
解析装置40は、上記の様に所定間隔でベルトコンベアAを流れる被搬送物Bの瞬間の断面である。断面積(Bs)を算出したのち、あとは移動量センサ30で得られるベルトコンベアAの移動量(ΔL)を乗じていけば、流れる被搬送物の計算上の体積値(ΔV)を求めることができる。
なお、被搬送物Bの別の手段で計測した推定実績率(τ’)が定まっていれば、前記体積値(見かけの体積)(ΔV)に推定実績率(τ’)を乗算することで、より精度の高い実体積(ΔV’)を求めることができる。
【0022】
このように、本発明によれば、被搬送物Bの体積を精度良く把握することができ、施工管理の精度が向上する。
【実施例2】
【0023】
[重量計の追加]
次に、本発明に係る体積測定システムの第2実施例について図3を参照しながら説明する。
本実施例は、ベルトコンベア上を流れる被搬送物の重量を測定可能な重量計50をさらに具備したことを特徴とする。
重量計には、公知のベルトスケールを用いることができる。
【0024】
本実施例によれば、被搬送物の重量(W)を計測することができるため、被搬送物Bの密度の推定値(ρ’)で除算すれば、被搬送物の想定上の体積値(V’)(V’=W/ρ’)を算出することができる。
また、前記で算出した被搬送物の想定上の体積値(V’)と、解析装置40で求めた計算上の体積値(V)とによって、実績率(τ)(τ=((V/V’)−1)×100)を算出することもできる。
【実施例3】
【0025】
[測定箇所の特定]
次に、本発明に係る体積測定システムの第3実施例について図4、5を参照しながら説明する。
本実施例は、被搬送物の断面積を求める位置を特定したことを特徴とする。
ベルトコンベアAは、ベルトA1と、ベルトA1を支持および運動させる架台A2とを少なくとも具備してなる(図4(a))。
ベルトA1に載せられた搬送物Bが重いと、搬送物Bの重みでベルトのたわみA3が変化し、デジタルカメラで撮影した撮影データの解析時に、ベルトA1の稜線A11の位置が特定できないことが考えられる(図4(b))。
【0026】
そこで、本実施例では、被搬送物Bの断面積を測定する箇所を、前記ベルトコンベアAを構成する架台A2の位置とする(図5)。
この位置は、ベルトA1が架台A2によって支持されているため、被搬送物Bの重みによってベルトの稜線A11の位置が変化することはない。
そして解析装置40による被搬送物Bの体積を測定する際に、ベルトの稜線A11の位置を固定して解析することで、高精度な体積測定が可能となる。
また、ベルトの稜線A11の位置を初期値として予め入力しておけば、解析のたびにベルトの稜線A11の位置を認識する必要もなくなるため、処理速度の高速化にも寄与する。
【0027】
本実施例によれば、ベルトコンベアAを構成する架台A2の直上で測定を行うことで、ベルトのたわみA3による測定誤差を除去することができる。
【実施例4】
【0028】
[ゲートの追加]
次に本発明に係る体積測定システムの第4実施例について、図6を参照しながら説明する。
本実施例は、被搬送物の高さを均すための手段をさらに設けたことを特徴とする。
ベルトコンベアAの上方に所定の高さだけ離隔するようにゲート60を設け、デジタルカメラによる撮影箇所に到達する前に、前記ゲート60でもって、搬送物Bの高さが一定以上の高さとならないように調整する。
ゲートによって被搬送物の高さを抑えることにより、デジタルカメラによるピント合わせが迅速にでき、連続撮影に対する応答性がよく精度も向上する。
【0029】
本実施例によれば、解析処理に係る時間を許容範囲内に収めることができる。
また、画像撮影のピントのブレを抑止することもできる。
また、この均し作業によって、死角領域Cの低減効果も期待できる。
【符号の説明】
【0030】
A ベルトコンベア
A1 ベルト
A11 稜線
A2 架台
B 被搬送物
B1 輪郭線
B2 消失部
B3 途切れのない輪郭線
C 死角領域
10 ラインレーザ
11 レーザー光
20a 一方のデジタルカメラ
20b 他方のデジタルカメラ
30 移動量センサ
40 解析装置
50 重量計
60 ゲート
図1
図2
図3
図4
図5
図6