特許第6757968号(P6757968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757968
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/10 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   F24H1/10 303Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-125211(P2016-125211)
(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-227407(P2017-227407A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 渉
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−013242(JP,A)
【文献】 特開2009−036387(JP,A)
【文献】 特開2012−117782(JP,A)
【文献】 特開2005−098638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの水を導入する経路である入水路にそれぞれが連通する複数の個別導入路と、
外部に水を導出する経路である供給路にそれぞれが連通する複数の個別導出路と、
複数の前記個別導出路と複数の前記個別導出路とに接続され、それぞれが前記個別導入路を介して導入される水を加熱して前記個別導出路から導出する構成をなす複数の給湯器と、
複数の前記給湯器を制御する制御部と、
を有し、
前記給湯器は、
ガスバーナと、
当該給湯器に対応する前記個別導入路から導入される水に対して前記ガスバーナで発生した燃焼熱を伝熱して加熱し、加熱した水を当該給湯器に対応した前記個別導出路に導出する熱交換器と、
当該給湯器の通水量を検出する通水量検出部と、
当該給湯器を通水許可状態と止水状態とに切り替える切替部と、
を備え、
前記制御部は、
予め定められた所定の順序決定方式に基づいて複数の前記給湯器の中から次回に最初に動作させる優先給湯器を選定し、
いずれの前記個別導入路でも通水が行われていない状態では、選定された前記優先給湯器の前記切替部を前記通水許可状態とし、複数の前記給湯器における前記優先給湯器以外の前記給湯器の前記切替部を止水状態とする待機制御を行い、
前記待機制御中に前記優先給湯器の通水量が所定の必要通水量に達した場合に、複数の前記給湯器のうち前記優先給湯器のみに給湯動作を行わせる第1給湯制御を行い、
前記第1給湯制御中に所定条件が成立した場合、前記優先給湯器とともに他の給湯器を動作させる第2給湯制御を行い、
前記第2給湯制御が行われているときの前記優先給湯器の通水量と前記他の給湯器の通水量との差の絶対値が一定値を超える場合に前記他の給湯器を異常と判定する給湯システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2給湯制御において前記他の給湯器が異常と判定されなかった場合に、前記他の給湯器を次回の前記第1給湯制御を行う前記優先給湯器として選定する請求項1に記載の給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
共通の給水路に複数の給湯器が並列に接続された給湯システムの例として、特許文献1のような技術が提案されている。特許文献1で開示される併設型給湯装置は、共通の給水理に複数の給湯器が接続されており、優先順位に従って複数の給湯器の出湯動作を制御する構成をなす。この併設型給湯装置では、優先順位を、運転回数に基づいて切り替えており、優先順位が1位の給湯器(第1優先器)の運転回数が所定値以上に達したときに優先順位を切り替えることで各給湯器の運転回数を平均化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−135687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1で開示される併設型給湯装置のような複数台の給湯器が並列に接続された構成の給湯システムでは、給水路の通水が停止している待機時に、いずれかの給湯器を通水待ちとし、残余の給湯器については止水状態とする。この状態で、蛇口の開放操作などがなされて給水路の通水が開始すると、これに応じて通水待ちとなっている給湯器内に水が通り、この給湯機内に設けられた通水センサ(例えば水量センサ)が通水を検知する。このように通水待ちの給湯器で通水が検知されると、この検知を開始条件として給湯動作を開始する。
【0005】
このように、複数台の給湯器が並列に接続された給湯システムでは、通水待ちとなっている給湯器で通水が検知されることを条件として給湯動作を開始することができる。しかし、このような方式で給湯動作を開始するシステムでは、蛇口の開放などによって通水が開始し、通水待ちの給湯器に水が送り込まれたときに、その給湯器の通水を確実に検知しなければならない。逆に言えば、通水待ちの給湯器で通水が検知できない不具合(例えば通水センサの故障など)が生じていると、通水待ちの給湯器に水が送り込まれているのに、システムがこのような通水状態を把握できずに給湯動作を停止させ続けてしまうといった異常動作が起こり得る。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、複数台の給湯器が並列に接続された給湯システムにおいていずれかの給湯器で通水が正常に確認できない異常状態が生じた場合にその異常を検出し得る構成を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の給湯システムは、
外部からの水を導入する経路である入水路にそれぞれが連通する複数の個別導入路と、
外部に水を導出する経路である供給路にそれぞれが連通する複数の個別導出路と、
複数の前記個別導出路と複数の前記個別導出路とに接続され、それぞれが前記個別導入路を介して導入される水を加熱して前記個別導出路から導出する構成をなす複数の給湯器と、
複数の前記給湯器を制御する制御部と、
を有し、
前記給湯器は、
ガスバーナと、
当該給湯器に対応する前記個別導入路から導入される水に対して前記ガスバーナで発生した燃焼熱を伝熱して加熱し、加熱した水を当該給湯器に対応した前記個別導出路に導出する熱交換器と、
当該給湯器の通水量を検出する通水量検出部と、
当該給湯器を通水許可状態と止水状態とに切り替える切替部と、
を備え、
前記制御部は、
予め定められた所定の順序決定方式に基づいて複数の前記給湯器の中から次回に最初に動作させる優先給湯器を選定し、
いずれの前記個別導入路でも通水が行われていない状態では、選定された前記優先給湯器の前記切替部を前記通水許可状態とし、複数の前記給湯器における前記優先給湯器以外の前記給湯器の前記切替部を止水状態とする待機制御を行い、
前記待機制御中に前記優先給湯器の通水量が所定の必要通水量に達した場合に、複数の前記給湯器のうち前記優先給湯器のみに給湯動作を行わせる第1給湯制御を行い、
前記第1給湯制御中に所定条件が成立した場合、前記優先給湯器とともに他の給湯器を動作させる第2給湯制御を行い、
前記第2給湯制御が行われているときの前記優先給湯器の通水量と前記他の給湯器の通水量との差の絶対値が一定値を超える場合に前記他の給湯器を異常と判定する。
【発明の効果】
【0009】
本構成の給湯システムにおいて、制御部は、いずれの個別導入路でも通水が行われていない状態では、選定部によって選定された優先給湯器の切替部を通水許可状態とし、複数の給湯器における優先給湯器以外の給湯器の切替部を止水状態とする待機制御を行い、待機制御中に優先給湯器の通水量が所定の必要通水量に達した場合に、複数の給湯器のうち優先給湯器のみに給湯動作を行わせる第1給湯制御を行う。
【0010】
このように、いずれの個別導入路でも通水が行われていない状態では、選定された優先給湯器の切替部を通水許可状態とするため、システム内で通水が開始した直後には優先給湯器に優先的に水を通すことができる。そして、この優先給湯器の通水量が所定の必要通水量に達することを条件として給湯動作を開始することができる。
【0011】
更に、本構成の給湯システムは、第1給湯制御中に所定条件が成立した場合、優先給湯器とともに他の給湯器を動作させる第2給湯制御を行い、第2給湯制御が行われているときの優先給湯器の通水量と他の給湯器の通水量との関係が所定の異常関係である場合に他の給湯器を異常と判定することができる。
【0012】
この方法によれば、他の給湯器が異常であるか否かの判定を行う上での要素として、実際に検出された優先給湯器の通水量を用いることができる。他の給湯器の通水量検出部に異常が生じていない場合、実際に検出される優先給湯器の通水量と他の給湯器の通水量は所定の正常な関係になる可能性が高いため、これらが所定の異常関係にあるか否かによって他の給湯器に異常が生じているか否かを判定すれば、より正確な判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1に係る給湯システムを例示する概略回路図である。
図2図2は、実施例1の給湯システムで行われる給湯制御の流れを例示するフローチャートである。
図3図3は、優先給湯器及び優先順位の割り当てを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の望ましい例を以下に示す。但し、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0015】
制御部は、第2給湯制御において他の給湯器が異常と判定されなかった場合に、他の給湯器を次回の第1給湯制御を行う優先給湯器として選定するように機能し得る。
【0016】
このように、第2給湯制御において「他の給湯器」が異常と判定されなかった場合、その給湯器(他の給湯器)の通水量検出部は正常であるといえる。よって、次回の第1給湯制御を行うときにその給湯器(他の給湯器)を優先給湯器として選定すれば、次回の通水開始時に通水が確実に検知される可能性が高く、次回の第1給湯制御が支障なく行われる可能性が高まる。
【0017】
<実施例1>
以下、発明の一例を示す実施例1について、図面を参照して説明する。
(基本構成)
【0018】
図1で示す給湯システム1は、入水路2に複数の給湯器20が並列に接続された構成をなすものである。以下では、図1のようにN個の給湯器20が並列に接続された構成について説明する。
【0019】
入水路2は、外部の水道管に連結され、外部から水が流れ込む導入経路として構成されている。この入水路2は、複数の給湯器20に水を送り込む共通の管路である。供給路4は、図示しない出湯口に向けて水(給湯器20で加熱された湯)を導出する経路として構成されている。この供給路4は、複数の給湯器20からの水を送り出す共通の管路であり、供給路4に連通するいずれかの出湯口(図示しない蛇口など)が開放しているときには供給路4を流れる水が出湯口に向けて流れ込み、全ての出湯口が閉鎖しているときには、供給路4内の通水が停止するようになっている。
【0020】
入水路2には、複数の個別導入路10がそれぞれ連通しており、供給路4には、複数の個別導出路12がそれぞれ連通している。各個別導入路10は、各給湯器20に水(冷水)を導入する経路であり、各個別導出路12は、各給湯器20から水(加熱された湯)を導出する経路である。
【0021】
複数の給湯器20は、複数の個別導出路12及び複数の個別導出路12に接続されており、それぞれが個別導入路10を介して導入される水を加熱して個別導出路12から導出する構成をなす。これら複数の給湯器20は同様の構成をなしているため、以下では、給湯器20の共通の構成を説明する。
【0022】
各々の給湯器20において、ガスバーナ22は、ガス管46を介して供給される燃焼ガスを燃焼させて燃焼排気を発生させる部分である。ガスバーナ22へのガスの供給を行うガス管46には、上流側からガス元電磁弁44、給湯ガス比例制御弁42がそれぞれ設けられている。ガス元電磁弁44の開閉や、給湯ガス比例制御弁42の開度は、コントローラ40によって公知の方法で制御される。
【0023】
熱交換器24は、個別導入路10から導入された水が流れる伝熱管24Aを備え、伝熱管24Aの内部を通る水(即ち、個別導入路10から導入される水)に対してガスバーナ22での燃焼によって生じた熱を伝えるように機能する。伝熱管24Aの下流側には個別導出路12が接続されており、個別導入路10から導入された水が伝熱管24Aを通る際に加熱され、個別導出路12から導出される。
【0024】
給湯器20において、熱交換器24の上流側の個別導入路10には、個別導入路10内の通水量(具体的には、個別導入路10を流れる単位時間当たりの水の量を特定し得る値)を検出する水量センサ26が設けられている。水量センサ26は、通水量検出部の一例に相当し、この水量センサ26が設けられた給湯器20の通水量を検出するように機能する。熱交換器24の上流側の個別導入路10には、個別導入路10を通る水の温度(即ち、熱交換器24よりも上流側の位置の水温)を検出するサーミスタ32が設けられ、熱交換器24の下流側の個別導出路12には、個別導出路12内の水の温度を検出するサーミスタ34が設けられている。サーミスタ32,34で生成される検出信号や水量センサ26で生成される検出信号は、コントローラ40に入力される。
【0025】
個別導入路10には、個別導入路10を開閉すると共に個別導入路10の通水量を制御する通水量制御装置28が設けられている。通水量制御装置28は、切替部の一例に相当し、この通水量制御装置28が設けられた給湯器20を通水許可状態と止水状態とに切り替えるように機能する。通水量制御装置28は、例えば、個別導入路10を開閉する弁体と、弁体を変位させる水量制御モータとを備える。弁体は、水量制御モータの回転軸に連結されるとともに個別導入路10の内部で変位可能に配置され、弁体の変位(回転角度)に応じて個別導入路10内の所定部位の開度が変化するようになっている。このように所定部位の開度を変化させることで、通水量を変化させる。水量制御モータは、例えばステッピングモータなどの公知のモータによって構成され、コントローラ40からの指示を受けて弁体を回転駆動し、弁体の回転角度を変化させる構成をなす。水量制御モータの回転量はコントローラ40によって公知の方法で制御される。
【0026】
各給湯器20には、コントローラ40が設けられる。コントローラ40は、例えば、公知のマイクロコンピュータ等として構成される制御回路、公知の半導体メモリ等として構成されるメモリ、外部との通信を行うためのインタフェースとして構成される通信部などを備える。各々の給湯器20のコントローラ40は、上位コントローラ50(制御装置)と通信し得る形で接続されている。
【0027】
上位コントローラ50(制御装置)は、例えば、公知のマイクロコンピュータ等として構成される制御回路や、公知の半導体メモリ等として構成されるメモリと、外部との通信を行うためのインタフェースとして構成される通信部などを備える。
【0028】
(給湯制御)
次に、給湯制御について、図2等を参照して説明する。
本構成では、上位コントローラ50及び各コントローラ40が制御部の一例に相当し、図2で示す給湯制御を実行する。
【0029】
給湯システム1では、いずれの個別導入路10でも通水が行われていない状態のときに、ステップS1の待機制御を行い、いずれかの給湯器20を優先給湯器として通水許可状態とし、それ以外の他の給湯器を止水状態(通水不許可状態)とし、このような設定で通水が行われるまで待機する。
【0030】
ステップS1において、いずれの給湯器20を優先給湯器とするかについては、上位コントローラ50が、予め定められた所定の順序決定方式に基づいて複数の給湯器20の中から次回に最初に動作させる優先給湯器(即ち、ステップS1にて通水許可状態とする給湯器)を選定するようになっている。
【0031】
例えば、上位コントローラ50は、図2の給湯制御を開始した際に、ステップS1では、前回実行された図2の給湯制御での動作に基づいて優先給湯器を選定する。具体的には、前回実行された図2の給湯制御において、燃焼台数が1台未満のままで終了したとき(ステップS7でNoとならずに終了したとき)には、前回実行された図2の給湯制御で優先給湯器とされていた給湯器20をそのまま優先給湯器として継続する。また、前回実行された図2の給湯制御において燃焼台数が2台以上となった場合、その前回の給湯制御のステップS8で故障検出対象となった給湯器20のうち、ステップS8で異常と判定されなかったものが新たな優先給湯器として設定され、この給湯器20を、今回実行されるステップS1において優先給湯器として用いる。
【0032】
また、上位コントローラ50は、予め定められた所定の順序決定方式に従い、複数の給湯器20に対して優先順位を割り当てる。複数の給湯器20に対して優先順位を割り当てる方法は様々であるが、例えば、図3(A)のように、優先給湯器として選定された給湯器20(図3(A)では給湯器(1))を第1位の優先順位とし、残りの給湯器20(図3(A)では、給湯器(2)〜給湯器(N)については、第2位〜最下位までの順位を割り当てるようにすればよい。この場合、上位コントローラ50は、新たな優先給湯器を選定する毎に、新たに優先給湯器とされた給湯器20の優先順位を第1位と、それまで優先給湯器であった給湯器20の優先順位を最下位とし、残りの給湯器20の順位を繰り上げるように更新すればよい。例えば、図3(A)のように給湯器(1)が優先給湯器とされた設定状態から変化し、図3(B)のように、給湯器(2)が優先給湯器とされた場合、新たに優先給湯器とされた給湯器(2)の優先順位を第1位と、それまで優先給湯器であった給湯器(1)の優先順位を最下位とし、残りの給湯器20の順位を繰り上げるように更新すればよい。このようにすれば、優先給湯器をローテーションすることができ、いずれかの給湯器20のみが極端に使用されるような偏りを抑えることができる。
【0033】
コントローラ40,50は、図2の給湯制御を開始した後、いずれの個別導入路10でも通水が行われていない状態では、上述の方法で選定されたいずれかの給湯器20(優先給湯器)の通水量制御装置28(切替部)を通水許可状態とし、複数の給湯器20における優先給湯器以外の給湯器20の通水量制御装置28を止水状態とする待機制御を行う(ステップS1)。具体的には、優先給湯器とされた給湯器20の通水量制御装置28において、水量制御モータを基準位置からある程度回転させ、弁体をある程度の開度に保った状態で維持する。一方、優先給湯器とされていない残りの給湯器20の通水量制御装置28については、水量制御モータを基準位置で維持し、弁体を閉状態とする。なお、図2のフローチャートでは、優先給湯器を給湯器Aとしている。
【0034】
コントローラ40,50は、ステップS1の待機制御中に優先給湯器とされた給湯器20の通水量が所定の必要通水量(この給湯器20のガスバーナの点火を実行する上での必要水量として予め設定された水量)に達した場合(ステップS2でYes)、その給湯器20(優先給湯器である給湯器A)に燃焼指示を与え、ガスバーナ22を燃焼させる公知の燃焼動作(給湯動作)を行わせる(ステップS3)。なお、ステップS1で待機状態となった後、優先給湯器とされた給湯器20の通水量が所定の必要通水量に達するまでは、ステップS2でNoの判断が繰り返され、待機状態が維持される。
【0035】
コントローラ40,50は、優先給湯器とされた給湯器20の燃焼動作(給湯動作)をステップS3で開始させた後、給湯動作を行う必要台数を算出する(ステップS4)。必要台数の算出は、予め定められた設定温度(給湯温度)と、サーミスタ32,34で検出される温度と、水量センサ26(通水量検出部)で検出される通水量などに基づいて公知の方法で決定することができる。例えば、水量センサ26(通水量検出部)で検出される通水量に比例させて台数を多くするように決定してもよく、予め定められた設定温度(給湯温度)とサーミスタ32で検出される温度(入水温度)との差(差温)と水量センサ26(通水量検出部)で検出される通水量との積が大きくなるほど、それに比例して必要台数を多くするように必要台数を決定してもよい。或いは、設定温度(給湯温度)及びサーミスタ32,34での検出温度を加味して台数を決定する場合、例えば、予め定められた設定温度(給湯温度)と、サーミスタ32で検出される温度(入水温度)と、サーミスタ34で検出される温度(出湯温度)と、水量センサ26(通水量検出部)で検出される通水量とをパラメータとする予め定められた演算式によって必要台数を算出する方法を用いてもよい。
【0036】
ステップS4で算出された必要台数が、現在動作している給湯器20の台数(燃焼台数)と異なる場合(ステップS5でYesの場合)、ステップS6では、ステップS4で算出された必要台数の給湯器20(具体的には、優先順位が高い必要台数分の給湯器20)のいずれにおいても通水量制御装置28を開動作させ、それら必要台数の給湯器20に対して燃焼指示を与え、公知の方法でこれらの給湯器20のガスバーナ22を燃焼させる燃焼動作(給湯動作)を行わせる。なお、ステップS4で算出された必要台数が、現在動作している給湯器20の台数(燃焼台数)と異なる場合(ステップS5でNoの場合)、ステップS6を省略する。
【0037】
コントローラ40,50は、ステップS6の後、又はステップS5でNoの場合には、ステップS7の判断処理を行い、燃焼動作(給湯動作)を行っている給湯器20の台数(燃焼台数)が1台であるか否かを判断し、燃焼台数が1台である場合(ステップS7でYesの場合)、ステップS10の判断を行う。
【0038】
コントローラ40,50は、ステップS7において燃焼動作(給湯動作)を行っている給湯器20の台数(燃焼台数)が1台でないと判断した場合(ステップS7でNoの場合)、動作中の給湯器20の水量センサによる検出値に基づいて、異常判定を行う。具体的には、燃焼動作(給湯動作)を行っている複数台の給湯器20の通水量を把握するとともに、優先給湯器とされた給湯器20の通水量(基準通水量)を基準とし、優先給湯器以外の燃焼動作中の給湯器20(他の給湯器)と通水量を比較する。そして、優先給湯器以外の燃焼動作中の給湯器20(他の給湯器)の通水量(比較通水量)と、優先給湯器とされた給湯器20の通水量(基準通水量)との差の絶対値が一定値未満に収まっていれば、比較対象(故障検出対象)となる給湯器20(優先給湯器以外の燃焼動作中の給湯器)を正常と判定し、そうでなければ異常と判定する。なお、燃焼台数が3台以上であり、優先給湯器以外の燃焼動作中の給湯器20が複数存在する場合、それら給湯器20の通水量(各比較通水量)を優先給湯器とされた給湯器20の通水量(基準通水量)とそれぞれ比較し、基準通水量との差の絶対値が一定値を超える通水量(比較通水量)となっている給湯器20については異常と判定する。
【0039】
コントローラ40,50は、ステップS8において優先給湯器以外の燃焼動作中の給湯器20を異常と判定した場合、その異常と判定した給湯器20の燃焼動作を停止させるとともに、異常と判定した給湯器20の通水量制御装置28を閉動作させて止水状態とする。そして、その異常と判定した給湯器20の使用を禁止する。ステップS9で異常と判定した給湯器20の使用を禁止する場合、その給湯器20が使用禁止である旨を特定する情報をメモリなどに記憶しておく。以降の給湯制御では、使用禁止とされた給湯器20は給湯動作を行わせる候補から外される。
【0040】
このように、制御部に相当するコントローラ40,50は、複数の給湯器20のうち優先給湯器として選定された給湯器20のみに給湯動作を行わせる第1給湯制御を行い、第1給湯制御中に所定条件が成立した場合(具体的には、必要台数が2台以上と算出された場合)、優先給湯器として選定された給湯器20とともに優先給湯器以外の他の給湯器20を動作させる第2給湯制御を行う。そして、第2給湯制御が行われているときに優先給湯器とされた給湯器20の通水量と優先給湯器以外の他の給湯器20の通水量との関係が所定の異常関係である場合(具体的には、通水量の差の絶対値が一定値を超える関係である場合)に他の給湯器20を異常と判定する。
【0041】
コントローラ40,50は、ステップS7でYesの場合、又はステップS8でYesの場合、若しくはステップS9の後に、ステップS10の判断を行い、燃焼動作中の給湯器20のいずれかにおいて、水量センサで検知される通水量が所定値(消火水量)未満になったか否かを判断する。そして、ステップS10において、燃焼動作中の給湯器20のいずれかで水量センサで検知される通水量が所定値(消火水量)未満になったと判断した場合、ステップS11の動作を行い、全ての給湯器20の燃焼動作を停止させる。
【0042】
コントローラ50は、ステップS11において、S1〜S10までの給湯制御結果に基づき優先給湯器を再選定する。具体的には、ステップS1〜S10の給湯制御において第1給湯制御のみが行われ第2給湯制御が行われなかった場合(即ち、ステップS7でNoとなることなくステップS11が実行される場合)、図2の給湯制御の開始時に選定されていた優先給湯器をそのまま次回の優先給湯器として選定する。ステップS1〜S10の給湯制御において第2給湯制御が行われ、その第2給湯制御において優先給湯器以外の給湯器20(他の給湯器)が異常と判定されなかった場合に(即ち、ステップS8でYesの判断がなされ、ステップS8でNoとなることなくステップS11が実行された場合)、その給湯器20(他の給湯器)を次回の優先給湯器として選定する。なお、ステップS8で複数の給湯器20が故障検出対象となり、このステップS8で異常と判定されなかったものが複数台存在する場合、それらの中で優先順位が最も高い給湯器20を優先給湯器として用いればよい。そして、ステップS11では、このように優先給湯器として再選定した給湯器20の通水量制御装置28を開状態(通水許可状態)とし、それ以外の給湯器20の通水量制御装置28を閉状態(止水状態)とする。ステップS11の処理が終わると、図2の給湯制御は終了し、短い時間間隔で再び図2の給湯制御が開始される。なお、ステップS11で再選定された優先給湯器は、次に図2の給湯制御が開始したときの優先給湯器として扱われる。
【0043】
以下、本構成の効果を例示する。
本構成の給湯システム1は制御部として機能するコントローラ40、50を有し、この制御部は、いずれの個別導入路10でも通水が行われていない状態では、優先給湯器として選定された給湯器20の通水量制御装置28(切替部)を通水許可状態とし、優先給湯器以外の給湯器20の通水量制御装置28(切替部)を止水状態とする待機制御を行う。そして、待機制御中に優先給湯器として選定された給湯器20の通水量が所定の必要通水量に達した場合に、複数の給湯器20のうち優先給湯器20のみに給湯動作を行わせる第1給湯制御を行う。このように、いずれの個別導入路10でも通水が行われていない状態では、優先給湯器として選定された給湯器20の通水量制御装置28(切替部)を通水許可状態とするため、システム内で通水が開始した直後には優先給湯器20に優先的に水を通すことができる。そして、この給湯器20(優先給湯器)の通水量が所定の必要通水量に達することを条件として給湯動作を開始することができる。
【0044】
特に、この方法では、待機状態のときに管路が開放される給湯器が1つのみに絞られるため、入水路2や供給路4の通水が給湯器の通水として反映され易く、入水路2や供給路4での通水量が低くても給湯器で通水が検知され易くなる。
【0045】
更に、本構成の給湯システム1は、第1給湯制御中に所定条件が成立した場合、優先給湯器として選定された給湯器20とともに他の給湯器20を動作させる第2給湯制御を行い、第2給湯制御が行われているときの優先給湯器の通水量と他の給湯器20の通水量との関係が所定の異常関係である場合に他の給湯器20を異常と判定する。この方法によれば、優先給湯器以外の他の給湯器20が異常であるか否かの判定を行う上での要素として、優先給湯器で実際に検出された通水量を用いることができる。他の給湯器20の水量センサ26(通水量検出部)に異常が生じていない場合、優先給湯器で実際に検出された通水量と他の給湯器20で実際に検出された通水量は所定の正常な関係(具体的には、両通水量の差が小さい関係)になる可能性が高いため、これらが所定の異常関係にあるか否かによって他の給湯器20に異常が生じているか否かを判定すれば、より正確な判定が可能となる。
【0046】
更に、制御部に相当する上位コントローラ50は、第2給湯制御において優先給湯器以外の給湯器20(他の給湯器)が異常と判定されなかった場合に、その給湯器20を次回の第1給湯制御を行う優先給湯器として選定する。このように、第2給湯制御で優先給湯器以外の給湯器20(他の給湯器)が異常と判定されなかった場合、その給湯器20の水量センサ26(通水量検出部)は正常であるといえる。よって、次回の第1給湯制御を行うときにその給湯器20(他の給湯器)を優先給湯器20として選定すれば、次回の通水開始時に通水が確実に検知される可能性が高く、次回の第1給湯制御が支障なく行われる可能性が高まる。
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0047】
実施例1では、上位コントローラ50によって図2の制御を行う例を示したが、いずれかの給湯器20のコントローラ40が図2の制御を行う構成であってもよい。この場合、上位コントローラ50を省略し、複数のコントローラ40が相互に通信し合う構成としてもよい。
【0048】
実施例1で説明した順位決定方法はあくまで一例であり、優先給湯器以外の順位については乱数などを用いてランダムに選択するなど、どのような方法で優先順位を決定してもよい。
【0049】
実施例1では、複数台の給湯器20の中から図2で示す給湯制御で最初に燃焼動作させる優先給湯器を1つ選定する例を示したが、給湯システム1が3台以上の給湯器を備える構成であれば、最初に動作させる優先給湯器を2以上(但し、全台数よりも少ない数)選定してもよい。この場合、図2の燃焼制御において、ステップS11やステップS1では、優先給湯器とされた複数台の給湯器20の通水量制御装置28を開状態とし、その他の給湯器20の通水量制御装置28を閉状態に設定すればよい。ステップS2では、例えば、いずれかの優先給湯器の通水量が必要通水量(点火水量)以上であるか否かを判断し、いずれかの優先給湯器の通水量が必要通水量(点火水量)以上であれば、ステップS3で全ての優先給湯器を燃焼動作させればよい。そして、ステップS7では、燃焼台数が優先給湯器の台数以下であるか否かを判定し、燃焼台数が優先給湯器の台数を超えた場合には、ステップS8において、優先給湯器以外の他の給湯器20の水量センサ26の通水量を検査すればよい。また、この場合、図3のように優先順位が決められる複数の給湯器20のうち、上位複数が優先給湯器として選定されることになり、ステップS8でYesに進んだ後にステップS11で優先給湯器を更新するときには、それまで優先給湯器とされていた複数の給湯器のうち優先順位が高いものから順にステップS8で正常と判定された給湯器の数だけ(但し、優先給湯器の台数以下の範囲で)優先順位を最下位(又は下位複数)に下げ、決められた優先給湯器の台数の範囲内で、ステップS8で正常と判定された給湯器を新たな優先給湯器として選定するように更新すればよい。
【0050】
1…給湯システム
2…入水路
4…供給路
10…個別導入路
12…個別導出路
20…給湯器
22…ガスバーナ
24…熱交換器
26…水量センサ(通水量検出部)
28…通水量制御装置(切替部)
40…コントローラ(制御部)
50…コントローラ(制御部)
図1
図2
図3