【文献】
Nivedita Nivedita,Continuous separation of blood cells in spiral microfluidic devices,BIOMICROFLUIDICS,2013年 9月 5日,Vol. 7, 054101,pp. 1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも第1の端部および第2の端部を有するスパイラル形状フローチャネルを含むマイクロ流体デバイスであって、前記スパイラル形状フローチャネルが、前記第1の端部もしくはその付近に2つの入口ポートおよび前記第2の端部もしくはその付近に少なくとも2つの出口ポートを有し、ここで前記2つの入口ポートの一方が前記スパイラル形状フローチャネルの内壁に位置し、かつ他方の入口ポートが前記スパイラル形状フローチャネルの外壁に位置し、かつ前記出口ポートの少なくとも1つが血液細胞の貯蔵を可能にする容器に接続され;ここで前記スパイラル形状フローチャネルが110〜130μmの高さを有し、前記少なくとも2つの出口ポートが少なくとも4つの出口ポートを含み、前記スパイラル形状フローチャネルが前記出口ポートの分岐部で約1000μmの幅まで徐々に拡大し、第1の出口ポートが、前記内壁から前記外壁にかけて形成される前記スパイラル形状フローチャネルの0〜100μmの幅をカバーし、第2の出口ポートが101〜250μmの幅をカバーし、第3の出口ポートが251〜650μmの幅をカバーし、かつ第4の出口ポートが651〜1000μmの幅をカバーする、マイクロ流体デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明者は、意外にも、ディーンフロー分画(DFF)が血液中に存在する血液成分および/または微小粒子(細菌など)を分離するものとして認定されていることを見出した。目的の成分または微小粒子によると、マイクロ流体デバイスのパラメータ設定は、効率的かつ明確な精製に適応されることが必要とされる。本発明者は、好中球の他の血液成分からの分離を可能にする方法を見出した。その後、これらの精製された好中球は、糖尿病を診断するためのさらなるアッセイにおいて用いることができる。
【0031】
したがって、第1の態様では、本発明は、このように、血液細胞を分離するための方法であって、(a)血液試料の赤血球を溶解し、前記試料を希釈する工程と;(b)少なくとも第1の端部および第2の端部を有するスパイラル形状フローチャネルを含むマイクロ流体デバイスであって、前記フローチャネルは、前記第1の端部もしくはその付近に2つの入口ポートおよび前記第2の端部もしくはその付近に少なくとも2つの出口ポートを有し、ここで2つの入口ポートの一方はスパイラル形状フローチャネルの内壁に位置し、かつ他方の入口ポートはスパイラル形状フローチャネルの外壁に位置し、かつ出口ポートの少なくとも1つは血液細胞の貯蔵を可能にする容器に接続される、マイクロ流体デバイスを提供する工程と;(c)工程(a)の試料をスパイラル形状フローチャネルの外壁に位置する入口ポートに導入し、かつシース液をスパイラル形状フローチャネルの内壁に位置する入口ポートに導入する工程と;(d)前記試料およびシース液を、スパイラル形状フローチャネルを通すように駆動する工程と;(e)少なくとも1つの出口ポートに接続された少なくとも1つの容器内の血液細胞を回収する工程と、を含む、方法を対象とする。
【0032】
ディーンフロー分画(DFF)と称されるマイクロ流体細胞選別技術は、異常細胞のサイズに基づく分離として周知である[ホウ,H.W.(Hou,H.W.)ら著、サイエンティフィック・レポート(Sci.Rep.)、第3号(2013年);ホウ,H.W.(Hou,H.W.)ら著、ラボラトリーチップ(Lab Chip)、第15巻、p.2297−2307(2015年)]。DFFは、高い流速で支配的な慣性力(F
L)(レイノルズ数、Re:約50〜100)により明確な位置に集束するための流線を通る粒子または細胞の側方遊走を含む、慣性微少流体技術に基づく選別方法である。DFFシステムでは、スパイラルマイクロチャネルをフロースルーする流体は、半径方向外向きの遠心加速を受けて、チャネルの上半分および下半分で、2つの対称的な反対方向に回転するディーン渦の形成をもたらす。スパイラルマイクロチャネルにおけるディーン渦の存在は、両方の力(F
LおよびF
D)の粒径とのスケール非線形性として優位な分解能をもたらす、さらなる側方のディーン牽引力(F
D)を課し、それらの重ね合わせ(FL/FD)がチャネル横断面内部の平衡位置を決定する(
図1B)。
【0033】
用語「分離」、「分離する」、または「部分的に精製する」は、本明細書で交換可能に用いられ、分子の1種、特に血液試料の天然もしくは非天然成分(好ましくは好中球および/または単球)が、血液試料の他の成分(この試料中に天然もしくは非天然に存在している)を少なくとも60%含まない、好ましくは75%含まない、また最も好ましくは90%含まないことを指す。これらの百分率値は、目的の成分の重量またはモル濃度に関連し得る。例えば、これは、分離後の単球および好中球が1つの容器内で一緒に回収されるが、血液試料の他の成分の少なくとも60%が前記容器内に存在しない場合、単球および好中球は血清から分離されていることを意味する。様々な実施形態では、回収された好中球および/または単球はリンパ球から分離される。これは、好中球および/または単球がこれらの細胞に天然に付随するリンパ球の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは98%から分離されることを意味する。
【0034】
用語「血液細胞」は、本明細書で用いられるとき、血小板、赤血球および白血球を含むことを意味する。すべての白血球は有核であることから、それらは無核の赤血球および血小板から区別される。白血球のタイプは、標準的方法で分類され得る。2対の最も広いカテゴリーによると、それらは構造(顆粒球または無顆粒球)または細胞系統(骨髄系細胞またはリンパ球様細胞)のいずれかによって分類される。これらの最も広いカテゴリーはさらに、5つの主なタイプ:好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、および単球に分割され得る。これらのタイプは、それらの物理および機能特性により区別される。単球および好中球は食作用性がある。さらなるサブタイプ分類は当該技術分野で周知である。
【0035】
「試料」または「患者試料」は、本明細書で用いられるとき、組織および体液などの生物学的試料を含む。「体液」は、限定はされないが、血液、血清、血漿、唾液、脳脊髄液、胸水、涙、乳糜管液(lactal duct fluid)、リンパ、痰、尿、羊水、および精液を含んでもよい。試料は、「無細胞」である体液を含んでもよい。「無細胞体液」は、約1%(w/w)未満の全細胞物質を含む。血漿または血清は、無細胞体液の例である。試料は、天然または合成起源の検体を含んでもよい。「血漿」は、本明細書で用いられるとき、血液中に見出される無細胞液を指す。「血漿」は、当該技術分野で公知の方法(例えば、遠心分離、濾過など)によって全細胞物質を血液から除去することにより、血液から得てもよい。本明細書で用いられるとき、「末梢血血漿」は、末梢血試料から得られる血漿を指す。「血清」は、本明細書で用いられるとき、血漿または血液の凝固が可能になり、凝固した画分が除去された後に得られる血漿の画分を含む。したがって、血清試料は無細胞でもある。それに対し、用語「全血」は、本明細書で用いられるとき、ヒトなどの被験者から本質的に収集され、未分離血液細胞を含有する血液を意味する。さらに、全血を適切な緩衝液などで希釈することにより、かつ/または添加剤、例えば抗凝固剤もしくはプロテアーゼ阻害剤を添加することにより得られる試料は、全血試料として用いられてもよい。全血試料は、血液細胞、例えば血小板、赤血球および白血球を含む。
【0036】
「溶解する」は、本明細書で用いられるとき、目的の所望される血液成分または微小粒子、例えば好中球および/または単球を放出するための赤血球またはそのタンパク質の破裂である。
【0037】
用語「希釈」は、本明細書で用いられるとき、一般に、同用語の通常の意味、すなわち、第2の流体または希釈液の、被験材料、例えば可溶性化学成分または部分的に不溶性の材料の懸濁液もしくは乳濁液を含有する第1の流体への添加と、それにより被験材料の得られる濃度が第1の流体の濃度よりも減少することを通じた、特定の被験材料のその材料を含有する流体の単位体積あたりの量における減少を包含する。本発明の観点では、希釈剤は、水性もしくは非水性液体を含む種々の形態を呈してもよく、かつ/または、追加的な材料成分、例えば可溶性化学成分または少なくとも部分的に不溶性の成分の懸濁液もしくは乳濁液を含んでもよい。上で言及されるように、被験材料は、化合物、可溶性のものかまたは懸濁液もしくは乳濁液として、生物学的材料のいずれか、可溶性のものかまたは懸濁液(例えば細胞)もしくは乳濁液としてなどのいずれかを含む、実質的に任意の組成物を含んでもよい。様々な実施形態では、被験材料は、上で定義されるような血液試料であり、かつ/または、希釈剤は、緩衝液、好ましくは血液細胞と適合できる緩衝液、例えばリン酸塩緩衝生理食塩水(略してPBS)および他の周知の緩衝液である。希釈剤の体積に対する被験材料の体積の比は、少なくとも1:0、5;1:1;1:2;1:3;1:4;1:5;1:6;1:7;1:8;1:9;1:10;1:13;1:15または例えば1:1〜1:35;1:5〜1:30もしくは1:10〜1:20の範囲であってもよい。
【0038】
本明細書で用いられるとき、表現「フローチャネル」は、液体用管状通路を意味する。好ましくは、フローチャネルはスパイラル形状である。スパイラル形状が非対称的形状を表すので、内壁および外壁を定義することが可能である(
図1、10、16および18)。本明細書で用いられるとき、表現「マイクロ流体デバイス」は、小さい、典型的にはミリメートル未満の規模まで幾何的に制約される、流体の制御および操作を可能にする物理的要素を意味する。「マイクロ流体デバイス」は、本明細書で用いられるとき、液体試料を、典型的には1ミリリットル未満の体積で、運搬し、貯蔵し、混合し、反応し、かつ/または分析するように設計された、1つ以上のマイクロ流体フローチャネルを含むデバイスを指す。マイクロ流体デバイスを作製するのに使用可能な材料の代表例として、限定はされないが、シリコンゴム、ガラス、プラスチック、シリコンおよび金属が挙げられ、好ましくは、マイクロ流体デバイスはポリジメチルシロキサン(PDMS)製である。
【0039】
用語「入口ポート」は、本明細書で用いられるとき、希釈試料およびシース液と最初に接触されるフローチャネルの端部と定義される。それに対し、用語「出口ポート」は、希釈試料の流体材料およびシース液をマイクロ流体デバイスから放出するフローチャネルの端部を指す。
【0040】
用語「容器に接続される」は、本明細書で用いられるとき、本発明のマイクロ流体デバイスにおいて回収される流体の第2の貯蔵ユニットへの移送に関する。「容器」は、本発明としての意味では、回収された流体を貯蔵するという機能のみを有するユニットだけでなく、さらなる精製、例えばカラムもしくはフィルターユニット、または回収された流体の分析を可能にするデバイスであり得る。回収された流体の分析に用いられるデバイスは、限定はされないが、FACS装置、質量分析装置、顕微鏡、遠心分離機、PCRサーマルサイクラーおよびコーティング剤を含む第2のフローチャネル(機能的アッセイを実施するのに利用可能である)を含んでもよい。様々な実施形態では、かかるコーティングされたチャネルは、好中球のローリング速度を測定可能にするE−セレクチンコーティングを含む。
【0041】
用語「シース液」は、本明細書で用いられるとき、水性もしくは非水性液体および/または追加的な材料成分、例えば、可溶性化学成分または少なくとも部分的には不可溶性の成分の懸濁液もしくは乳濁液を含み得る液体を含む、種々の液体を指す。好ましくは、シース液は、緩衝液、好ましくは血液細胞と適合できる緩衝液、例えばリン酸塩緩衝生理食塩水(略称PBS)や他の周知の緩衝液である。用語「緩衝液」は、本明細書で用いられるとき、溶解または分散される環境のpHを制御する任意の化合物または化合物の組み合わせを意味する。pH値については、緩衝液は、緩衝液に添加される酸または塩基の効果を低下させる。緩衝液は一般に、その溶解度に基づいて2つのカテゴリーに分けることができる。両カテゴリーの緩衝液は、別々に、または組み合わせて用いることができる。「水溶性緩衝液」は、典型的には、100ml中少なくとも1グラム、好ましくは75ml中少なくとも1グラム、より好ましくは30ml中少なくとも1グラムの水への溶解度を有する。水溶性緩衝液の例として、限定はされないが、PBS、メグルミン、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、酒石酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、グリセロリン酸カルシウム、トロメタミン、酸化マグネシウムまたは前述の任意の組み合わせが挙げられる。「水不溶性緩衝液」は、典型的には、1,000ml中1グラム未満、好ましくは5,000ml中1グラム未満、より好ましくは10,000ml中1グラム未満の水への溶解度を有する。水不溶性緩衝液の例として、限定はされないが、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウム炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、アミノ酢酸ジヒドロキシアルミニウム、酸化マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、および前述の組み合わせが挙げられる。緩衝液はまた、支持剤、例えば塩、洗剤、BSA(ウシ血清アルブミン)などが添加され得る。上記の緩衝液の各々において使用可能な濃度は当該技術分野で周知である。
【0042】
試料は、毛管引力の力によって駆動され得る。あるいは、試料は、電気力により、または試料を駆動するための他の手段により、ポンプに駆動され得る。ポンプは、限定はされないが、回転(遠心)ポンプ;蠕動ポンプ;および超音波ポンプを含む。電気力は、限定はされないが、電気流体力学的力;電場駆動力、例えば、電気泳動、電気浸透;および表面張力駆動、例えば、電気湿潤、誘電体表面上の電気湿潤を含む。試料を駆動するための手段は、ヌグイェン(Nguyen)ら、エリクソン(Erickson)ら、グローバー(Grover)ら、ハント(Hunt)らおよびベルサノ・ベゲイ(Bersano−Begey)らにより、より詳細に考察されている[ヌグイェン(Nguyen)ら著
、「微少流体技術の基礎と応用(Fundamentals and Applications of Microfluidics)」、第2版、アーテックハウス社(ARTECH HOUSE,INC.)(ノーウッド、マサチューセッツ州:2006年)、p.255−309;エリクソン(Erickson)ら著、「微少流体システムにおける動電輸送への導入(Introduction to Electrokinetic
Transport in Microfluidic Systems)」、ラブオンアチップ技術(Lab on a Chip Technology)、第1巻、「製作および微少流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister
Academic Press)(ノーフォーク、英国:2009年)、p.231−248;グローバー(Grover)ら著、「モノリシック膜の弁およびポンプ(Monolithic Membrane Valves and Pumps)」、ラブオンアチップ技術(Lab on a Chip Technology)、第1巻、「製作および微少流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(ノーフォーク、英国:2009年)、p.285−317;ハント(Hunt)ら著、「誘電体操作のための集積回路/マイクロ流体チップ(Integrated Circuit/Microfluidic Chips for Dielectric Manipulation)」、ラブオンアチップ技術(Lab on a Chip Technology)、第2巻:「生体分子の分離および分析(Biomolecular Separation and Analysis)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(ノーフォーク、英国:2009年)、p.187−206、ベルサノ・ベゲイ(Bersano−Begey)ら著、「ブライユ微少流体(Braille microfluidics)」、ラブオンアチップ技術(Lab on a Chip Technology)、第2巻:「生体分子の分離および分析(Biomolecular Separation and Analysis)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(ノーフォーク、英国:2009年)、p.269−285]。Nguyenらは、マイクロ弁、マイクロポンプ、マイクロフローセンサ、マイクロフィルターおよびマイクロセパレータについて詳細に考察している。ヘロルド(Herold)らにおける章では、弁、ポンプ、および分離について詳細に考察されている。
【0043】
試料は、シリンジを用いて、デバイスを試料に浸漬することにより、または他の手段により、マイクロ流体デバイスのフローチャネルに導入され得る。試料をマイクロ流体デバイスのフローチャネルに導入するための他の手段は、マイクロディスペンサー、例えば液滴ディスペンサー、例えば注射ノズルなど;インチャネルディスペンサー(in−channel dispensers)、例えば計量ディスペンサーを含む。試料をマイクロ流体デバイスのフローチャネルに導入するための手段は、ヌグイェン(Nguyen)らおよびリー(Li)らにより、より詳細に考察されている[ヌグイェン(Nguyen)ら著、「微少流体技術の基礎と応用(Fundamentals and Applications of Microfluidics)」、第2版、アーテックハウス社(ARTECH HOUSE,INC.)(ノーウッド、マサチューセッツ州:2006年)、p.395−417;リー(Li)ら著、「マイクロチップに基づく分析システム用の注射スキーム(Injection Schemes for Microchip−based Analysis Systems)」、ラブオンアチップ技術(Lab on a Chip Technology)、第1巻:「製作および微少流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(ノーフォーク、英国:2009年)、p.385−403]。ヌグイェン(N
guyen)らはマイクロディスペンサーについてより詳細に考察している。リー(Li)らはマイクロディスペンサーについてより詳細に考察している。
【0044】
用語「回収する」は、本明細書で用いられるとき、ポリペプチドまたは細胞などの種を、例えば当該技術分野で周知の細胞および/またはタンパク質精製技術を用いる単離により、天然に付随する成分を実質的に含まないようにする過程を指す。
【0045】
本発明の様々な実施形態では、本発明の方法は、(a)遠心分離工程;および/または(b)少なくとも1つのタイプの血液細胞がマーカー分子で標識される場合の標識工程を含まない。用語「遠心分離工程」は、本明細書で用いられるとき、遠心分離によって提供される細胞試料の他の成分(例えば非細胞成分)からの細胞の分離を指す。遠心工程は、以下の態様:限定はされないが、勾配分離、赤血球減少、血小板除去および細胞洗浄のうちの1つ、2つ以上もしくは全部を含んでもよい。用語「標識」は、本明細書で用いられるとき、1つ以上の検出可能なマーカー(または「標識」)の本発明で用いられる細胞、タンパク質および/またはペプチドへの付着または取り込みを意味する。用語「マーカー分子」または「検出可能なマーカー」は、本明細書で交換可能に用いられるとき、化学、物理または酵素反応において検出可能な化合物またはシグナルを直接的または間接的に生成する、1つ以上の適切な化学物質または酵素を含む任意の化合物を指す。本明細書で用いられるとき、同用語は、上記のような標識(すなわち、タンパク質および/またはペプチドに結合される化合物または部分)と標識試薬(すなわち、ペプチドまたはタンパク質との結合に先立つ化合物または部分)の双方を含むように理解されるべきである。本発明で用いられる標識は、タンパク質および/またはペプチドのアミノ酸残基に共有結合または非共有結合を介して付着されてもよい。典型的には、結合は共有結合である。標識は、特に、同位体標識、等圧標識、酵素標識、着色標識、蛍光標識、発色標識、発光標識、放射性標識、ハプテン、ビオチン、金属錯体、金属、およびコロイド金から選択され得るが、同位体標識および等圧標識が特に好ましい。これらの標識タイプはすべて、当該技術分野で十分に確立されている。
【0046】
本発明の範囲はまた、試料が指穿刺試料または静脈穿刺から生成される試料である場合の様々な実施形態を包含する。「指穿刺試料」は、本明細書で用いられるとき、指(先)から採取される1滴からなる血液の試料である。好ましくは、試料は、痛みなく皮膚に穴を開けて新たな血流を生み出すことができる小型の指先ランセットデバイスによって採取される。一旦停滞している1滴の血液が指上で利用可能であれば、コレクターがその液滴に適用可能であり、血液はコレクターにより吸収され得る。指穿刺試料の体積は、10〜500μL、好ましくは50〜300μL、より好ましくは80〜150μLの範囲であってもよい。
【0047】
本発明のさらなる様々な実施形態では、少なくとも2つの出口ポートは少なくとも4つの出口ポートである。他の様々な実施形態では、スパイラル形状フローチャネルをフロースルーする試料のレイノルズ数(Re)は50〜100である。
【0048】
本明細書で用いられるとき、表現「レイノルズ数」は、ρυL/μ(式中、ρは液体の密度を表し;υは液体の速度を表し;Lはフローチャネルの特徴的長さを表し、μは液体の粘度を表す)を意味する。
【0049】
本発明の範囲によりさらに包含されるのは、スパイラル形状フローチャネルが、(a)ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むかまたはポリジメチルシロキサン(PDMS)からなり;(b)400〜600μm、好ましくは500μmの幅を有し;(c)110〜130μm、好ましくは115μmの高さを有し;かつ/または(d)7〜13cm、好ましくは10cmの全長を有することである。
【0050】
マイクロ流体デバイスおよびそのフローチャネルの寸法、ならびにマイクロ流体デバイスを構築するための材料およびマイクロ流体デバイスを構築するための方法は、ヌグイェン(Nguyen)ら、タベリング(Tabeling)、アルマニ(Armani)ら、ツァオ(Tsao)ら、カーレン(Carlen)ら、チェン(Cheung)ら、サン(Sun)らおよびワッデル(Waddell)により記載がなされている[ヌグイェン(Nguyen)ら著、「微少流体技術の基礎と応用(Fundamentals and Applications of Microfluidics)」、第2版、アーテックハウス社(ARTECH HOUSE,INC.)(ノーウッド、マサチューセッツ州:2006年)、p.55−115;タベリング(Tabeling)著、「微少流体技術入門(Introduction to Microfluidics)」、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)(オックスフォード、グレート・ブリテン:2005年)、p.244−295;アルマニ(Armani)ら著、「ビニルサインプロッターを用いたPDMSマイクロ流体チャネルの製作(Fabricating PDMS Microfluidic Channels Using a Vinyl Sign Plotter)」、ラブオンアチップ技術(Lab on a Chip Technology)、第1巻:「製作および微少流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(ノーフォーク、英国:2009年)、p.9−15;ツァオ(Tsao)ら著、「熱可塑性マイクロ流体におけるボンディング技術(Bonding Techniques for Thermoplastic Microfluidics)」、ラブオンアチップ技術(Lab on a Chip Technology)、第1巻:「製作および微少流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(ノーフォーク、英国:2009年)、p.45−63;カーレン(Carlen)ら著、「シリコンおよびガラス微細加工(Silion and Glass Micromachining)、ラブオンアチップ技術(Lab on a Chip Technology)、第1巻:「製作および微少流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(ノーフォーク、英国:2009年)、p.83−114;チェン(Cheung)ら著、「多成分生体適合性微細構造の製作における微少流体技術に基づくリソグラフィー(Microfluidics−based Lithography for Fabrication of Multi−Component Biocompatible Microstructures)」、ラブオンアチップ技術(Lab on a Chip Technology)、第1巻:「製作および微少流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(ノーフォーク、英国:2009年)、p.115−138;サン(Sun)ら著、「酵素および化学分析のためのラミネートオブジェクト製造(LOM)技術に基づく多チャネルラブオンアチップ(Laminated Object Manufacturing(LOM)Technology−Based Multi−Channel Lab−on−a−Chip for Enzymatic and Chemical Analysis)」、ラブオンアチップ技術(Lab on a Chip Technology)、第1巻:「製作および微少流体(Fabrication
and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(ノーフォーク、英国:2009年)、p.161−172;ワッデル(Waddell)著、「レーザー微細加工(Laser Micromachining)」、ラブオンアチップ
技術(Lab on a Chip Technology)、第1巻:「製作および微少流体(Fabrication and Microfluidics)」、ヘロルド(Herold)ら編、ケイスター・アカデミック・プレス(Caister Academic Press)(ノーフォーク、英国:2009年)、p.173−184]。
【0051】
様々な実施形態では、スパイラル形状フローチャネルは、出口ポートの分岐部で800〜1200μmの幅まで徐々に拡大する。好ましい実施態様では、拡大された幅は1000μmである。
【0052】
本明細書で用いられるとき、用語「分岐される」は、枝に分割されることを意味する。本明細書で用いられるとき、用語「枝」は、より大きいかまたはより複雑な本体の限られた部分、すなわち、一次フローチャネルから出現するかまたは一次フローチャネルに入力もしくは再入力するより小さいフローチャネルを意味する。本明細書で用いられるとき、用語「一次フローチャネル」または「第1のフローチャネル」は、試料の少なくとも大部分がフロースルーするフローチャネルを意味する。
【0053】
本発明のさらなる様々な実施形態では、第1の出口ポートは内壁から外壁にかけて規定されるフローチャネルの0〜100μmの幅をカバーし、第2の出口ポートは101〜250μmの幅をカバーし、第3の出口ポートは251〜650μmの幅をカバーし、第4の出口ポートは651〜1000μmの幅をカバーする。
【0054】
本発明の他の実施形態では、第1の出口ポートはフローチャネルの幅の1〜20%をカバーし、第2の出口ポートはフローチャネルの幅の10〜20%をカバーし、第3の出口ポートはフローチャネルの幅の30〜50%をカバーし、第4の出口ポートはフローチャネルの幅の25〜45%をカバーし、ここで出口ポート1〜4の順序は内壁から外壁にかけて規定される。
【0055】
さらに包含されるのは、血液細胞が好中球、単球およびリンパ球、血小板ならびに赤血球を含む場合の実施形態である。さらなる好ましい実施形態では、好中球および単球は第2の出口ポートによって回収され、かつ/またはリンパ球は第3の出口ポートによって回収される。
【0056】
用語「白血球」は、本明細書で用いられるとき、顆粒球およびリンパ球系統の哺乳動物細胞を意味する。白血球細胞の例として、多形核白血球、例えば好中球、および単核食細胞、例えば単球およびマクロファージ、およびリンパ球が挙げられる。
【0057】
用語「単球」は、本明細書で用いられるとき、(1)常在性マクロファージおよび樹状細胞を正常状態下で補充し、かつ(2)炎症性シグナルに応答し、単球が組織内の感染部位に高速に移動し(約8〜12時間)、マクロファージおよび樹状細胞に分離/分化して免疫応答を誘発するという免疫系における2つの主な機能を有する白血球の1種を指す。それらの半数は脾臓に貯蔵される。単球は通常、染色塗抹でその大きい二葉核によって同定される。CD14の発現に加えて、単球はまた、以下の表面マーカー:125I−WVH−1、63D3、アディポフィリン、CB12、CD11a、CD11b、CD15、CD54、Cd163、シチジンデアミナーゼ、Flt−1などのうちの1つ以上の発現を示す。
【0058】
単球という用語は、限定はされないが、古典的単球と非古典的炎症促進性単球の双方(双方ともヒト血液中に存在する)を含む。
用語「古典的単球」は、本明細書で用いられるとき、CD14細胞表面受容体の高レベル発現によって特徴づけられる単球細胞(CD14++単球)の1種を指し、用語「非古
典的炎症促進性単球」は、本明細書で用いられるとき、CD14の低レベル発現とともに、微生物産物による刺激に応答して腫瘍壊死因子およびインターロイキン−12などの炎症促進性サイトカインを多量に産生することによって特徴づけられるCD16受容体のさらなる同時発現を伴う細胞(CD14+CD16+単球)を指す。これらの細胞は、CD14++単球から発生する。
【0059】
用語「マクロファージ」は、本明細書で用いられるとき、非特異的防御(先天性免疫)ならびに脊椎動物の特異的防御機構(獲得免疫)の開始を支援することの双方で作用する貪食細胞であるように特徴づけられる、単球の分化から誘導されるCD14+陽性細胞を指す。その役割は、細胞残屑および病原体を定常細胞または可動細胞のいずれかとして貪食する(飲み込み、次に消化する)ことであり、また病原体に応答するため、リンパ球および他の免疫細胞を刺激することである。
【0060】
CD14の発現に加えて、マクロファージはまた、以下の表面マーカー:CD11b、F4/80(マウス)/EMRl(ヒト)、リゾチームM、MAC−l/MAC−3、27E10、カルボキシペプチダーゼM、カテプシンK、CD163およびCD68のうちの1つ以上の発現を示す。これらのマーカーは、フローサイトメトリーまたは免疫組織化学染色によって測定され得る。
【0061】
用語「骨髄樹状細胞」は、本明細書で用いられるとき、単球から誘導され、限定はされないがmDC−1およびmDC−2を含む樹状細胞の集団を指す。CD14の発現に加えて、骨髄樹状細胞はまた、以下の表面マーカー:ADAM19、BDCA−2、CDa、CD11c、CD21、CD86、CD208、クラスタリン、エストロゲン受容体−αのうちの1つ以上の発現を示す。
【0062】
「好中球」は、本明細書で用いられるとき、骨髄細胞、後骨髄球および帯状体などの前駆細胞から生じ、かつ好酸球性または好塩基球性(好酸球または好塩基球など)でない細胞質を有する成熟白血球を意味する。「好中球」という用語は、ビタミンB12の欠乏および/または葉酸欠乏が原因で生じる好中球および巨赤芽球性の好中球を含む。巨赤芽球性好中球はまた、過分葉核を有することがある。好中球はまた、ヒトを含む動物における好中球様細胞を包含する。好中球様細胞の具体例が、ジブチリル環状AMPでの処理後に分化したHL60細胞である。用語「好中球刺激活性」は、ヒトを含む動物における好中球または好中球様細胞の遊走(時として「化学遊走」と称される)および/または活性化を促進する活性を意味する。遊走は、好中球または好中球様細胞の組織への浸潤およびそれらの局所部位への移動を包含する。活性化は、活性酸素の産生、分解性酵素(例えばβ−HA)の分泌、様々なサイトカインおよび過酸化物の産生、ならびに食作用を包含する。これらの好中球刺激活性は、好中球の走化活性、活性酸素の放出を測定し、かつβ−ΗΑ分泌の量および/または細胞内Ca
2+濃度の上昇を測定することによりアッセイされ得る。特定のポリペプチドが「好中球刺激活性を有する」ことが本明細書中に記載されるとき、目的の好中球刺激活性は、好中球の遊走を促進する活性もしくは好中球の活性化を促進する活性のいずれかまたは両方の活性であってもよい。
【0063】
用語「リンパ球細胞」または「リンパ球」は、本明細書で交換可能に用いられるとき、ナチュラルキラー(NK)細胞(通常、細胞媒介性の細胞傷害性自然免疫に関与する)、T細胞(通常、細胞媒介性の細胞傷害性獲得免疫に関与する)、B細胞(通常、体液性の抗体駆動性獲得免疫に関与する)、それらの大部分およびそれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つを指す。末梢血単核性(PBMC)細胞、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)細胞およびリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞(通常、腫瘍細胞の死滅に関与する)もまた、リンパ球細胞と考えられる。リンパ球の非限定例として、細胞傷害性リンパ球(CTL、CD8
+またはCD4
+)、NK細胞(CD2
+)、およびヘルパーT細胞
(CD4
+)が挙げられる。
【0064】
様々な実施形態では、(a)シース液の流速は希釈試料の流速よりも少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍高く;かつ/または(b)希釈試料の流速は120〜130μL/分である。
【0065】
さらなる実施形態では、(a)血液細胞は緩衝液で回収され;かつ/または(b)血液試料は緩衝液で少なくとも1:5に希釈される。
「少なくとも1つ」は、本明細書で用いられるとき、1つ以上、特に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれより多いことに関する。
【0066】
さらなる態様では、本発明は、被験者における糖尿病または炎症性疾患を診断するための方法であって、(a)前記被験者の血液試料を提供し、好中球を単離する工程と;(b)(I)前記被験者の試料の単離された好中球が、少なくとも1名の健常者との比較可能な対照試料の単離された好中球と比べて、糖尿病または炎症性疾患を示す、増加した平均ローリング速度を有するか否か;(II)前記被験者の試料の単離された好中球が、少なくとも1名の健常者との比較可能な対照試料の単離された好中球と比べて、糖尿病または炎症性疾患を示す、減少した好中球真円度(NC)指数を有するか否か、または(III)前記被験者の試料の単離された好中球が、少なくとも1名の健常者との比較可能な対照試料の単離された好中球と比べて、糖尿病または炎症性疾患を示す、細胞内反応性酸素種(ROS)もしくはCD11bの増加した発現またはPSGL−1の低下した発現を有するか否か、を判定する工程と、を含む、方法に関する。
【0067】
用語「診断する」および「診断」は、本明細書で用いられるとき、当業者が、被験者が所与の疾患、障害または状態を患うか否かを評価し、ひいては判定することができる方法を指す。当業者は、1つ以上の診断指標(上記の通り)に基づいて診断を行い、その(存在または不在を含む)量は、状態の存在、重症度、または不在についての指標である。
【0068】
用語「被験者」は、本明細書で用いられるとき、個人、植物、または動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、チンパンジーおよび他の類人猿およびサル種)、家畜(例えば、鳥類、魚、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、およびウマ)、家畜哺乳動物(例えば、イヌおよびネコ)、または実験動物(例えば齧歯類、例えばマウス、ラットおよびモルモット)を指す。同用語は、特定の年齢または性別を意味しない。用語「被験者」は、胚および胎児を包含する。被験者という用語は、本発明との関連では、患者という用語と交換可能に用いられてもよい。
【0069】
「糖尿病」は、本明細書で用いられるとき、別段の指示がない限り、真性糖尿病を指し、1型、2型、および3型(1.5型とも称される)を含む。「糖尿病」は、75gの経口グルコース負荷の摂取から2時間後の126mg/dl(6.9ミリモル/l)以上の空腹時血漿グルコース濃度、または200mg/dl(11.1ミリモル/l)以上の血漿グルコース濃度に対応する。好ましくは、糖尿病は2型糖尿病である。用語「2型糖尿病」は、本明細書で用いられるとき、血糖レベルにおける不適切な上昇によって特徴づけられる疾患を指す。糖尿病の慢性高血糖症は、長期損傷、機能障害、および異なる臓器の不全を伴い、網膜症、腎症、および末梢神経障害などの種々の合併症をもたらす。2型糖尿病は、低下したβ細胞の質量および機能の組み合わせに起因する、末梢組織(主に骨格筋、脂肪組織、および肝臓)におけるインスリン抵抗性および不適切な代償性インスリン分泌応答によって引き起こされる。グルコース濃度の上昇に加えて、欠陥のあるインスリン作用が、コレステロールまたはトリグリセリドレベルの上昇をもたらすことが多い。
【0070】
「炎症性疾患」は、本明細書で用いられるとき、炎症によって特徴づけられる疾患また
は状態を指す。炎症は、感染または刺激に対する免疫系の初期応答を包含し、時として自然カスケードと称される。炎症は、典型的には、以下の症状:関連する臓器の紅化、発熱、腫脹、疼痛、および機能障害のうちの1つ以上によって特徴づけられる。「治療」は、本明細書で用いられるとき、疾患またはその進行の予防、疾患または状態に伴う1つ以上の症状(例えば疼痛)の軽減、および/または元の病態または状態の寛解もしくは治癒を包含する。
【0071】
本明細書に記載のように治療可能な炎症性疾患の例として、限定はされないが、移植拒絶;関節の慢性炎症性障害、例えば関節炎、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、変形性関節症および骨再吸収の増加に関連した骨疾患;炎症性腸疾患、例えば回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群、およびクローン病;炎症性肺障害、例えば喘息、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)または慢性閉塞性気道疾患;眼の炎症性障害、例えば角膜異栄養症、トラコーマ、オンコセルカ症、ぶどう膜炎、交感神経性眼球炎および眼内炎;歯肉の慢性炎症性障害、例えば歯肉炎および歯周炎;結核;ハンセン病;腎臓の炎症性疾患、例えば尿毒性合併症、糸球体腎炎およびネフローゼ;肝臓の炎症性疾患、例えばウイルス性肝炎および自己免疫性肝炎;皮膚の炎症性障害、例えば硬化性皮膚炎、乾癬、紅斑、湿疹、または接触皮膚炎;中枢神経系の炎症性疾患、例えば脳卒中、神経系の慢性脱髄性疾患、多発性硬化症、AIDS関連神経変性およびアルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症およびウイルス性もしくは自己免疫性脳炎;自己免疫性疾患、例えば糖尿病、免疫複合体脈管炎、全身性エリテマトーデス(SLE);心臓の炎症性疾患、例えば心筋症、虚血性心疾患、高コレステロール血症、および粥状動脈硬化;ならびに子癇前症、慢性肝不全、脳および脊髄外傷、およびがんなどの様々な疾患に起因する炎症、が挙げられる。本明細書に記載のような治療可能な炎症性疾患は、身体の全身性炎症をさらに含む。全身性炎症の例として、限定はされないが、グラム陽性もしくはグラム陰性ショック、敗血症、敗血症性ショック、出血性もしくはアナフィラキシーショック、および全身性炎症性応答症候群が挙げられる。炎症性疾患のさらなる例として、循環性ショック、出血性ショックおよび心原性ショックが挙げられる。
【0072】
用語「測定する」は、本明細書で用いられるとき、一般に、例えば限られた体積(例えば液滴)の定量的もしくは定性的な分析もしくは測定、および/または限られた体積内の種、特性、もしくは状態の存在、不在、もしくは量の検出を指す。
【0073】
「単離された」として本明細書で参照される細胞は、その元となる供給源(例えばそれが細胞またはインビトロもしくは合成発現系において存在するとき)の他の細胞および他の細胞成分から分離された細胞であり、さらなる処理を受けていてもよい。「単離された」は、本明細書で用いられるとき、細胞が天然に会合する他の成分を少なくとも60%含まない、好ましくは75%含まない、最も好ましくは90%含まない細胞を指す。この百分率値は、重量または数/モル濃度に関する場合がある。「単離された」細胞は、本質的に純粋な細胞を含む、本明細書に記載の方法、類似方法または他の好適な方法によって得られる細胞を含む。「単離する」は、本明細書で用いられるとき、単一成分、例えば規定された高分子種を、成分の混合物から、例えば組換え細胞の培養物から放出し、獲得する過程と定義される。これは典型的には、遠心分離、真空下での濾過もしくは真空下でない濾過、正圧下での濾過、蒸留、蒸発またはそれらの組み合わせなどの手段により実行される。単離は、精製(その間に単離物の化学純度、キラル純度または化学およびキラル純度が増加する)を伴う場合または伴わない場合がある。精製は、典型的には、結晶化、蒸留、抽出、酸性、塩基性もしくは中性アルミナを通す濾過、酸性、塩基性もしくは中性炭を通す濾過、キラル定常期が詰め込まれたカラムでのカラムクロマトグラフィー、多孔質紙、プラスチックもしくはガラスバリアを通す濾過、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、再結晶化、順相高性能液体クロマトグラフィー
、逆相高性能液体クロマトグラフィー、研和などの手段により実行される。
【0074】
用語「対照試料」は、本明細書で用いられるとき、例えば、がんまたは他の疾患を患っていない健常被験者由来の試料、評価対象の被験者よりも大して重篤でないかまたは進行が遅い所与の疾患を有する被験者由来の試料、一部の他の疾患タイプを有する被験者由来の試料、治療前の被験者由来の試料、非患部組織(例えば非腫瘍組織)の試料、患部に対して同じ起源および近い起源に由来する試料などを含む、任意の臨床的に関連した比較可能な試料を指す。対照試料は、1名以上の被験者由来の試料を含んでもよい。対照試料はまた、評価対象の被験者からより早い時点に作製された試料であってもよい。例えば、対照試料は、疾患の発症前に、疾患のより早いステージで、または治療もしくは治療の一部を施す前に、評価対象の被験者から採取された試料であり得る。対照試料は、精製された試料、細胞、化合物、タンパク質、および/または核酸であり得る。かかる対照試料は、追加的薬剤がさらに添加され得る。
【0075】
用語「健常」は、本明細書で用いられるとき、用語「健常」が任意の絶対的評価または状態に対応するように限定され得ないことから、具体的な疾患、または疾患因子、または疾患判定基準に対して相対的であることは理解されるであろう。したがって、任意の具体的な疾患または疾患判定基準を参照して健常と定義される個体は、実際には任意の他の1つ以上の疾患と診断され得るかまたは任意の他の1つ以上の疾患判定基準を呈し得る。
【0076】
白血球では、血液が身体の組織に到達するための輸送培地として用いられる。白血球溢出は、4つの工程:化学誘引、ローリング接着、密な接着および遊出に分かれる。ローリング接着の間、循環白血球上の炭水化物リガンドは、容器の内壁上のセレクチン分子にわずかな親和性で結合する。これにより、白血球は減速し、容器壁の内表面に沿ってローリングし始める。このローリング動作の間、セレクチンとそのリガンドとの間で、一過性の結合が形成され、破壊される。このローリング動作は、所与の時間枠内での白血球によりカバーされる距離を測定することにより測定され得る。用語「ローリング速度」は、本明細書で用いられるとき、カバーされる距離と時間とのこの関係を指す。糖尿病の期間、白血球のローリング速度は、健常者における白血球の速度と比べて増加する。好ましい実施態様では、少なくとも4.5、5.0、5.3、5.5、6.0、6.5もしくは7.0μm/秒のローリング速度は糖尿病を示す。
【0077】
用語「好中球真円度(NC)指数」は、本明細書で用いられるとき、白血球の形態の定量化を可能にする系を指す。好中球真円度指数を決定するため、好中球の画像が画像分析ソフトウェア、例えばImageJバージョン1.33(アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)、ベセスダ、メリーランド州)を用いて分析され、細胞真円度が判定される。細胞の真円度[(4Π×面積)/周囲長
2]は、真円に対応する1.0に接近し;より小さい値は次第に細長い楕円を表す。好中球の真円度を定量するための方法およびソフトウェアは当該技術分野で周知である。好ましい実施態様では、好中球真円度(NC)指数の減少は、少なくとも0.85の好中球真円度(NC)を有する被験好中球の60%、65%、70%、73%、76%、78%もしくは80%より小さいと定義される。
【0078】
用語「発現された」または「発現」は、本明細書で用いられるとき、遺伝子の2つの核酸鎖の一方の領域に対して部分的に少なくとも相補的なRNA核酸分子をもたらすための遺伝子からの転写を指す。用語「発現された」または「発現」はまた、本明細書で用いられるとき、タンパク質もしくはポリペプチドまたはその一部をもたらすための前記RNA核酸分子からの翻訳を指す。
【0079】
用語「反応性酸素種(ROS)は、本明細書で用いられるとき、酸素を含有する化学反
応性分子に関する。例として、ペルオキシド、スーパーオキシド、ヒドロキシル基、および一重項酸素が挙げられる。生物学的状況下では、ROSは、酸素の正常代謝の天然副産物として形成され、細胞シグナル伝達および恒常性において重要な役割を有する。しかし、環境ストレス(例えば紫外線または熱への曝露)または病態形成の期間では、ROSレベルは劇的に上昇し得る。
【0080】
インテグリン・アルファM(ITGAM)は、マクロファージ−1抗原(Mac−1)または補体受容体3(CR3)としても公知のヘテロ二量体インテグリン・アルファ−M・ベータ−2(α
Mβ
2)分子を形成する1つのタンパク質サブユニットである。ITGAMはまた、CR3A、および表面抗原分類分子11B(CD11B)としても公知である。α
Mβ
2の第2鎖は、CD18として公知の共通のインテグリンβ
2サブユニットであり、それ故、インテグリンα
Mβ
2はβ
2サブファミリー(または白血球)インテグリンに属する。
【0081】
PSGL−1、SELPLGまたはCD162(表面抗原分類162)としても公知のセレクチンPリガンドはヒト遺伝子である。SELPLGは、骨髄系細胞上および刺激されたTリンパ球上のP−セレクチン上での高親和性の対抗受容体である。そのように、それはP−セレクチンを発現する活性化された血小板または内皮へのこれらの細胞の繋留において重要な役割を果たす。P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1は、E−セレクチン(内皮)およびL−セレクチン(白血球)を含むセレクチンのファミリーの1つであるP−セレクチン(Pは血小板を表す)に結合する白血球および内皮細胞の上に見出される糖タンパク質である。セレクチンは、細胞接着分子のより広範なファミリーの一部である。PSGL−1は、そのファミリーの3つすべてのメンバーに結合し得るが、P−セレクチンに最良に(最高の親和性で)結合する。
【0082】
好ましい実施態様では、糖尿病を有する患者由来の好中球内での細胞内反応性酸素種(ROS)またはCD11bの発現レベルは、健常患者におけるレベルと比べて、少なくとも5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%もしくは100%増加する。他の好ましい実施形態では、糖尿病を有する患者由来の好中球内でのPSGL−1の発現レベルは、健常患者におけるレベルと比べて、少なくとも5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%もしくは80%減少する。
【0083】
本発明の様々な実施形態では、好中球は、本発明の血清または血漿に由来する血液細胞を分離するための方法に従って単離される。
本発明の範囲はまた、糖尿病が2型糖尿病(T2DM)である場合の様々な実施形態を包含する。
【0084】
好中球のローリング速度の測定に関する本発明のさらなる様々な実施形態では、増加した平均ローリング速度は少なくとも5.30μm/秒である。様々な他の実施形態では、ローリング速度は、E−セレクチンでコーティングされたチャネル内で測定される。
【0085】
CD62抗原様ファミリーメンバーE(CD62E)としても公知であるE−セレクチンは、内皮−白血球接着分子1(ELAM−1)、または白血球−内皮細胞接着分子2(LECAM2)は、サイトカインによって活性化される内皮細胞に限って発現される細胞接着分子である。他のセレクチンと同様、それは炎症における重要な部分を担う。ヒトでは、E−セレクチンはSELE遺伝子によってコードされる。
【0086】
本発明の範囲によりさらに包含されるのは、好中球真円度(NC)指数の決定に関する実施形態では、減少した好中球真円度(NC)指数は、少なくとも0.85の好中球真円度(NC)を有する被験好中球の76%未満と定義される。
【0087】
細胞内反応性酸素種(ROS)、CD11bおよびPSGL−1の発現に関する様々な実施形態では、(a)前記被験者の試料の単離された好中球における細胞内反応性酸素種(ROS)もしくはCD11bの発現は、比較可能な対照試料における発現と比べて少なくとも10%増加し;かつ/または(b)前記被験者の試料の単離された好中球におけるPSGL−1の発現は、比較可能な対照試料における発現と比べて少なくとも10%減少する。
【0088】
本発明のさらなる態様では、本範囲は、少なくとも第1の端部および第2の端部を有するスパイラル形状フローチャネルを含むマイクロ流体デバイスであって、前記フローチャネルが、前記第1の端部もしくはその付近に2つの入口ポートおよび前記第2の端部もしくはその付近に少なくとも2つの出口ポートを有し、ここで2つの入口ポートの一方がスパイラル形状フローチャネルの内壁に位置し、かつ他方の入口ポートがスパイラル形状フローチャネルの外壁に位置し、かつ出口ポートの少なくとも1つが血液細胞の貯蔵を可能にする容器に接続され;ここでフローチャネルが110〜130μm、好ましくは115μの高さを有する、マイクロ流体デバイスを包含する。
【0089】
デバイスの様々な実施形態では、少なくとも2つの出口ポートは少なくとも4つの出口ポートである。
本発明の範囲はまた、スパイラル形状フローチャネルが出口ポートの分岐部で800〜1200μmの幅まで徐々に拡大する場合の様々な実施形態を包含する。好ましい実施態様では、スパイラル形状フローチャネルは、出口ポートの分岐部で800〜1200μmの幅まで徐々に拡大する。さらなる好ましい実施形態では、拡大された幅は1000μmである。さらなる好ましい実施形態では、第1の出口ポートは、内壁から外壁にかけて規定されるフローチャネルの0〜100μmの幅をカバーし、第2の出口ポートは101〜250μmの幅をカバーし、第3の出口ポートは251〜650μmの幅をカバーし、かつ第4の出口ポートは651〜1000μmの幅をカバーする。
【0090】
本発明の範囲によりさらに包含されるのは、様々な実施形態では、スパイラル形状フローチャネルが、(a)ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むかまたはポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる;(b)7〜13cm、好ましくは10cmの全長を有する;かつ/または(c)400〜600μm、好ましくは500μmの幅を有することである。
【0091】
デバイスの好ましい実施形態では、少なくとも2つの出口ポートは2つの出口ポートである。上で規定される2つの出口ポートデバイスのより好ましい実施形態では、第1の出口ポートはフローチャネルの幅の5〜30%、好ましくは20%をカバーし、かつ第2の出口ポートはフローチャネルの幅の70〜95%をカバーし、ここで第1の出口ポートは内壁に位置し、かつ第2の出口ポートは外壁に位置する。上で規定される2つの出口ポートデバイスの様々な実施形態では、スパイラル形状フローチャネルは、(a)ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むかまたはポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる;(b)5〜10cm、好ましくは6.5cmの全長を有する;(c)200〜400μm、好ましくは300μmの幅を有する;かつ/または(d)30〜90μm、好ましくは60μmの高さを有する。
【0092】
分離方法について説明されるすべての好ましい実施形態はまた、本発明のマイクロ流体デバイスに適用される。
好ましい実施態様では、本発明の両方法(1.血液細胞を分離するための方法と2.糖尿病を診断するための方法)は共役される。この場合、糖尿病の診断に必要とされる好中球は、本明細書に記載の通りに血液細胞を分離するための方法に従って精製および生成さ
れる。したがって、かかる共役方法を実施するため、上記工程を実施することを可能にする2つのデバイスは相互接続され得る。したがって、本発明のマイクロ流体デバイスは、内壁にてE−セレクチンでコーティングされた第2のマイクロ流体フローチャネルに直接的に連結され得る。第2のフローチャネルを用いて、好中球のローリング速度は、本明細書に記載のように測定され得る。したがって、本発明のマイクロ流体デバイスの1つ以上の出口ポートまたはその容器は、被験患者に対する糖尿病診断を行うため、好中球を試料から精製し、そのローリング速度を直接的に分析するための、E−セレクチンでコーティングされたフローチャネルと接続され得る。
【0093】
別の態様では、本発明はまた、内壁がE−セレクチンでコーティングされたマイクロ流体フローチャネルに関する。かかるチャネルは、少なくとも0.1cmの長さを有してもよい。好ましくは、チャネルは0.5〜2cmの長さを有する。幅は、少なくとも200μm、好ましくは350〜500μmの間であってもよい。チャネル高さは、少なくとも40μm、好ましくは45〜75μmの間であってもよく、より好ましくは、高さは60μmである。E−セレクチンでコーティングされたチャネルを用いてローリング速度を測定するための例が下記に示される。つまり、直線状のマイクロチャネル(1cmの長さ×400μmの幅×60μmの高さ)は、4℃で1時間、E−セレクチンでコーティングされ(50μg/mL、ペプロテック(Peprotech))、PBS中0.5%BSAで室温にて30分間ブロッキングされ得る。ブロッキング後、チャネルは、チャネル内の余分なE−セレクチンを刺激し、洗い流すため、PBS中0.1%BSAが負荷されたシリンジに接続され得る。ローリングアッセイにおいては、E−セレクチン上での好中球の結合およびローリングのカルシウム依存性相互作用を促進するため、CaCl
2(20μΜ、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich))がDFFで精製された好中球に添加され得る。約10〜20μLのDFFで精製された好中球(約10
6個の細胞/mL)が入口リザーバーで負荷され得、またシリンジが、好中球ローリングを開始させるため、2.6μL/分(約2ダインcm
−2)で取り除くように設定され得る。位相差像が、メタモルフ(MetaMorph)ソフトウェア(モレキュラーデバイス(Moleular Devices))を用いて20倍の倍率で0.5秒間隔ごとにマイクロチャネルの中央部で30秒間捕捉され得る(全部で61フレーム)。炎症および病態を誘発するため、DFFで精製された好中球はまた、腫瘍壊死因子α(TNF−α、10ng/mL、ペプロテック(Peprotech))、PMA(2nM、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich))またはD−グルコース(30mM、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich))で室温にて30分間処理され得る。次に、好中球は、ローリングアッセイのため、1000×gで4分間洗浄され、20μΜ CaCl
2とともに約10
6個の細胞/mLの濃度まで再懸濁され得る。
【0094】
さらなる態様では、本発明は、上記のようなスパイラル形状フローチャネルを含むマイクロ流体デバイスに関し、ここでフローチャネルは、PDMS製でもよく、また200〜400μm、好ましくは300μmの幅を有してもよい。高さは50〜100μm、好ましくは60μmであってもよい。チャネルの全長は5〜10cmであってもよい。第1の出口ポートの幅は0〜50μmであってもよく、第2の出口ポートの幅は51〜300であってもよい(内壁〜外壁から決定)。
【0095】
さらなる態様では、本発明は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)および大腸菌(E.Coli)を分離する方法に関する。この方法では、上記の2つの出口ポートデバイスが用いられる。
【0096】
さらなる態様では、本発明は、上記の2つの出口ポートデバイスを用いて微小粒子を血液から回収する方法に関する。
[実施例]
実施例1:糖尿病におけるマイクロ流体好中球の精製および表現型決定
全血由来の循環腫瘍細胞(CTC)[ハウ,H.W.(Hou,H.W.)ら著、サイエンティフィック・レポート(Sci.Rep.)、第3号(2013年)]および微生物[ハウ,H.W.(Hou,H.W.)ら著、ラボラトリーチップ(Lab Chip)、第15巻、p.2297−2307(2015年)]を含む異常細胞のサイズに基づく分離のため、ディーンフロー分画(DFF)と称されるマイクロ流体細胞選別技術が開発されている。ここで、白血球サブタイプ間のわずかな細胞サイズ差が、単一工程方式で溶解全血から好中球を精製するための4出口DFFスパイラルデバイスによる分離において十分であり得るか否かを試験した(
図1)。
【0097】
DFFスパイラルデバイスは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)中で製作されたもので、全長が約10cmの2入口、4出口のスパイラルマイクロチャネル(500μm(幅)×115μm(高さ))から構成される。大きめの白血球(約8〜12μm、a
p/h>0.07(apは粒径))のみが慣性集束を受けて、内壁により接近して平衡化できるように、チャネル高は115μmで固定した。出口領域付近で、チャネルは、異なる幅の4つの収集出口を有する分岐部でより大きい幅(1000μm)まで徐々に拡大する(内壁:出口1(O1):100μm、出口2(O2):150μm、出口3(O3):400μm、出口4(O4):350μmから開始)。好中球を全血から精製するため、ヒト全血をRBC溶解緩衝液で溶解し(1:10体積)、その後、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加した1×リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)でクエンチした(1:2体積)。希釈した溶解血液試料を外側入口に130μL分
−1でポンピングし、シース液(0.1%BSAを添加したl×PBS)を、内側入口を通してより高い流速(10×、1300μL分
−1)でポンピングし、試料流を外壁付近で拘束した。血液試料がチャネル沿いに流れるとき、細胞は支配的なF
Dにより内壁の方への側方遊走を経る。小さめの血小板および溶解RBC(a
p/h<0.05)は外壁に戻るように再循環し、ディーンサイクル(DC1)を完成させる一方、大きめの白血球(a
p/h>0.07)は、追加的な慣性揚力(F
L)を受け、内壁付近に集中する。細胞サイズ差に起因し、大きめの好中球/単球(10〜12μm、a
p/hが約0.9〜0.1)は、リンパ球(約7〜8μm、a
p/hが約0.07)よりも強力なF
Lを(内壁方向に向けて)受け、内壁により接近して平衡化し、好中球およびリンパ球各々の出口2および3への白血球分画を生じる(
図1B)。これにより、選別された好中球が収集中にシース緩衝液に再懸濁される一方、元の溶解血液試料(血小板、溶解RBCおよび遊離ヘモグロビン)が出口4で溶出されることから、効率的な好中球精製が促進される。
【0098】
好中球精製のための最適なフロー条件を決定するため、血液試料を溶解し、PBSで洗浄し、RBC汚染物質を除去した。次に、主に白血球および血小板からなる洗浄試料をスパイラルDFFデバイスに異なる流速でポンピングし、フローサイトメトリー分析のため、溶出剤を4つの出口から収集した。白血球示差分析においては、白血球をフォワードおよびサイドスキャッターシグナルに基づいてゲーティングし、抗体のカクテルで染色し、好中球、単球およびリンパ球を同定した。
図2Aに示すように、大きめの好中球および単球は出口2へ120〜130μL分
−1の試料流速で効率的に選別され(>80%)、小さめのリンパ球の大部分(約95%)は出口3へ分離された。これは高速顕微鏡画像によって明白であり、大きめの細胞は内壁により接近した慣性集束を示した(
図2B)。選別された白血球はまた、ライト・ギムザ染色で染色し、出口2で好中球同一性を確認し、細胞は分離後にその形態を十分に保存することが示された(
図2C)。流速が130μL分
−1を超えて増加するにつれて、好中球の出口2での回収は減少したが、単球選別は無影響のままであった。それ故、最適な流速は、出口2でのリンパ球汚染が最少のハイスループットな好中球選別を達成するためのその後の実験において130μL分
−1に設定した。この単一工程手順では、好中球を指穿刺血液の1滴(約50μLの全血;全溶解血液量が約1〜1.5mL)から単離するのに約10分必要である。好中球精製に加えて、単球
およびリンパ球の非標識分画を、密度勾配遠心分離から得られる末梢血単核球(PBMC)を用いて行った(
図S2)。
【0099】
ポイントオブケア試験においては、結果の一貫性を保証するため、マニュアル試料の調製を最低限にすることは重要である。次に(遠心分離を伴わない)直接的な溶解血液処理の効果を、DFFを用いて試験し、同様の好中球分離性能が、2倍の生理食塩水体積でクエンチされた溶解血液試料を用いて実証された。好中球は内壁付近に集中しており、ゴーストRBCから明確に分離され(
図2D)、出口2において高い好中球純度(約90%)が得られた(
図2E)。最後に、DFF分離の前と後における好中球CD66bの発現および細胞内ROSレベルを特徴づけ、(健常被験者から得られる)選別された未処理の好中球のROSレベルが活性化された(PMA処理された)好中球よりも有意に低いままであることが示された。これにより、以前の試験[ウーL.(Wu,L.)ら著、アナリティカルケミストリー(Anal.Chem.)、第84巻、p.9324−9331(2012年)]と一致するように、スパイラルデバイス内部での高フロー条件(約m/秒)が白血球活性化に対して無視できる効果を有することが示され、T2DMもしくは代謝異常の他の状態(例えば糖尿病を伴わない心血管疾患)を有する患者由来の血液試料を処理するためのDFF好中球精製技術の利用がさらに検証される。
【0100】
E−セレクチン上での好中球ローリング表現型について試験するため、直線状のマイクロチャネル(1cm(長さ)×400μm(幅)×60μm(高さ))を組換えヒトE−セレクチン(50μg/mL)でコーティングし、毛細管後の細静脈におけるフロー条件(約1〜10ダインcm
−2)をシミュレートした。DFFで選別された好中球を生理学的剪断条件(2ダインcm
−2)でチャネルにポンピングし、時間差イメージングを用いて好中球ローリングを捕獲した。MATLAB追跡アルゴリズムを開発し、好中球ローリング軌道を追跡し、ハイスループット単一細胞分析のため、速度を測定した。
図3Aに示すように、健常好中球は、直線経路内で安定的なローリング挙動を呈した一方、腫瘍壊死因子α(TNF−α)が活性化された好中球におけるローリング軌道は「フリッピング」動作を伴って不連続であった。グルコース処理(30mM)およびTNF−α活性化(10ng/mL)が施された好中球のローリング速度は、健常好中球よりも高く(P<0.005)、PMA処理(1μΜ)が施された好中球は、ローリングしない代わりに、フロー下でE−セレクチンに堅く付着した(
図3B)。ローリング表現型におけるこれらの差については、E−セレクチン上での白血球ローリングを媒介することで知られる、好中球でのPSGL−1の発現、ならびにE−セレクチンへの付着を支持する白血球上で発現されるCD11b、Mac−1インテグリンを測定することにより、さらに検討した。好中球上でのPSGL−1の発現は、グルコースおよびTNF−α処理の双方とともに減少し、その下方制御はPMA処理された好中球においてより有意であったが、それは活性化された白血球においてPSGL−1の脱落を示す以前の報告に一致する(
図3C)。同様に、好中球でのCD11bレベルはすべての処理条件において上方制御され、PMA処理された好中球における増加がより高かった(
図3D)。これらの結果によると、PSGL−1およびCD11bの表面発現の改変がE−セレクチン上での好中球ローリングに影響し、細胞ローリング表現型の、糖尿病患者における好中球活性化を評価するための新規な機能的バイオマーカーとしての使用を示唆することが確認された。
【0101】
好中球機能障害がT2DM患者において以前に報告されていることから、1回目の免疫表現型決定を、フローサイトメトリーならびに低グレードの炎症状態および心血管リスクのための主要マーカーであるC反応性タンパク質(CRP)の測定を用いることにより、健常被験者(n=13)およびT2DM(n=16)患者において実施した(
図7にまとめる)。T2DM患者における白血球数および好中球数の双方が健常被験者と比べてより高かったが(P<0.001)、これはインビボでの炎症応答の増強を示している(
図4A、B)。平均好中球ROSレベル(
図4C)およびCD11b発現(
図4D)について
もT2DM群にて上昇したことから(P<0.01)、T2DM患者におけるより明白な好中球活性化が確認された。興味深いことに、T2DM患者における好中球でのPGSL−1発現の有意な下方制御が認められた(P<0.05)(
図4E)。PSGL−1の発現低下が好中球活性化の増強に関連したことから、これは健常およびT2DM患者双方において好中球ROSレベル(
図4F)およびCD11b発現(
図4G)と十分に相関した。T2DM患者におけるDFFで選別された好中球と遠心分離で洗浄された好中球との間で、PSGL−1およびCD11bの発現における無視できる差が認められたが、DFFが下流アッセイまたはポイントオブケア試験における効率的な好中球精製技術であることがさらに検証された。好中球以外では、T2DM患者の単球においてもPSGL−1発現の下方制御が認められ(P<0.01)、T2DM患者における単球−内皮相互作用および心血管合併症において洞察を得るための試験であることがさらに確認された。まとめると、これらの結果は、慢性炎症状態に寄与し得る活性化された好中球の存在の増加を伴う、T2DM患者における炎症誘発状態を明示する。
【0102】
現在のマイクロ流体ローリングアッセイは、設計の複雑性およびアッセイに先立つ従来式白血球単離方法により制限を受ける。T2DM患者における好中球ローリング表現型を特徴づけるため、開発したDFFマイクロ流体技術を用いて健常被験者(n=13)およびT2DM(n=16)患者から好中球を単離し、マイクロ流体アッセイにおいてE−セレクチン上でそのローリング速度を測定した。想定通り、T2DM患者由来の血液試料を処理するとき、スパイラルデバイスの出口2にて高い好中球純度(−90%)が得られた(
図5A)。好中球ローリング速度は、T2DM患者におけるより高いローリング速度度数分布への変化によって明白であるように、健常およびT2DM患者間で変動した(
図5B)。これはT2DM患者においてより高い平均ローリング速度を生じさせ(6.01±0.21μm/秒(T2DM)対5.04±0.23μm/秒(健常)、P<0.05)、T2DM好中球のローリング軌道は、健常好中球と比べてより不連続かつ不規則であった(
図5C)。平均ローリング速度は、健常被験者とT2DM患者の双方において、好中球ROSレベル(
図5D)およびPSGL−1発現(P<0.001)(
図5E)と強く相関したが、CD11bとはそうではなく、これは炎症の間に白血球ローリングを媒介する上でのPSGL−1の主要な役割を示唆する。同じ患者からの静脈穿刺または指穿刺を用いて得られた血液試料中で好中球ローリングパターンを比較した。好中球ローリング速度における無視できる差が異なる血液試料採取方法の間で認められた(Pが約0.35〜0.68)が、これは好中球選別および機能的な表現型決定に用いられる開発されたマイクロ流体的方法の頑強性を示す。最後に、好中球形態を好中球真円度(NC)指数に基づいて特徴づけた。
図5Fに示すように、DFFで選別された健常好中球は大部分が環状であったが(NC>0.85を有する細胞の約76%)、T2DM患者由来の好中球は形状がより異質性であり、より多数の細長い細胞が存在した(NC0.5〜0.8を有する細胞の約55%)。かかる細胞質延長は、細胞形態に影響することが知られている好中球活性化に起因し得る[ラヴォア・ラムルーA.(Lavoie−Lamoureux,A.)ら著、アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー・ラング・セルラー・アンド・モレキュラー・フィジオロジー(Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol)、第299巻、L472−L482(2009年)]。要するに、DFF好中球精製技術の健常被験者およびT2DM患者のコホートにおける検証が奏功し、健常好中球および糖尿病好中球が、E−セレクチン上でのそのローリング表現型に影響する明確な活性化特性および細胞形態を有するという明白な証拠が提供されている。
【0103】
T2DM患者由来の好中球が健常被験者と比べてより高速にE−セレクチン上をローリングしたことを確認してから、健常被験者の平均ローリング速度より高い(>5μm/秒)、T2DM患者におけるローリング速度度数を分析することにより、これらの機能的差異が臨床状態と関連し得るか否かを判定した。より高い心血管リスク因子を有する患者は、低グレード炎症のレベル増加に起因してローリングがより高速な好中球を有する可能性
が高い。当然、より高いヘモグロビンA1c(HbA1c)レベルは、T2DM患者におけるローリング速度が5μm/秒のより高い度数に対応し(
図6A)、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールおよびCRPレベルも各々、ローリングが6および8μm/秒でより高速な好中球の度数の増加に関連した(
図6B、C)。これらの関係は、好中球の機能性(細胞ローリング)に影響し、ひいては内皮の炎症に対する白血球の動員/応答を減弱させ得る、好中球活性化におけるグルコースおよびコレステロール代謝の重要性を明示する。糖尿病試験における機能的バイオマーカーとしての好中球ローリング速度の臨床的有効性をさらに評価するため、ローリング速度度数(5μm/秒)が、T2DM患者における空腹時血糖レベルよりも感度が高いHbA1cに対する指数(%)であることが示された。9μm/秒でのローリング速度度数の診断カットオフを用いた患者データの受信者動作特性(ROC)の分析により、感度および特異度として各々、約81%および約70%が得られる(
図6D)。次に、臨床的尺度(
図7)およびローリング速度分布に関する主成分分析(PCA)を実施し、それは第1主成分スコアによる健常およびT2DM患者の十分な分離を示した(
図6E)。好中球ローリング速度を特徴づける分布を説明するため、平均、中央値(Mean/Median_roll)、標準偏差(SD_roll)、歪度および尖度(Kurtosis/skew_roll)を含む複数のパラメータを用いた。95パーセンタイルを超えるローリング速度は、平均し(95p_roll)、右テール上の分布を捕らえるために用いた。さらに、PCA分析によると、第1主成分負荷における大規模な判断として、ローリング速度およびその分布特性が糖尿病表現型を識別する上で多大な寄与を有することも示された(
図6F)。最後に、メトホルミンおよびプラバスタチンを含む確立された血管リスク改良薬の健常好中球のローリング表現型に対する効果を試験した。これらの薬剤は、一般に糖尿病患者、ならびに代謝異常状態(すなわち、前糖尿病、CHD)を有する患者において用いられ、糖尿病を発症するリスクを低減するさらなる抗炎症効果を有する[ディーンズ,K.A.(Deans,K.A.)およびサッターN.(Sattar,N.)、ダイアベティス・テクノロジー・アンド・セラピューティクス(Diaetes Technol Ther)、第8巻、p.18−27(2006年)]。それらは好中球化学走性および食作用活性を改変することが記載されており[パーク,D.W.(Park,D.W.)ら著、モレキュラー・メディスン(Mol.Med.)、第19巻、p.387−398(2013年);ドゥンゼンドルファーS.(Dunzendorfer,S.)ら著、サーキュレーション・リサーチ(Circ Res)、第81巻、p.963−969(1997年)]、ひいては好中球−内皮相互作用における他の遊走性応答に影響する可能性が高い。これらの薬物への先行曝露を回避するため、実験は健常被験者を用いて実施し、マイクロ流体ローリングアッセイ前に、DFFで精製された好中球を、メトホルミン(1mM)およびプラバスタチン(20μΜ)とともに1時間インキュベートした。両方の薬剤で処理した好中球の平均ローリング速度は、すべての対となる観察結果において対照(未処理)よりも高かったが(P<0.05)、これは好中球ローリング表現型の迅速かつ活発な変化と薬剤監視における炎症性機能的マーカーとしてのその潜在性を示唆する。
【0104】
実施例2:2出口デバイスを用いた微少流体を用いての小型マイクロ/ナノ粒子の分離
マイクロ流体デバイスは、標準のソフトリソグラフィー技術を用いてポリジメチルシロキサン(PDMS)中で製作する。開発されたマイクロデバイスは、0.5〜0.6cmの半径および約6.5cmの全長を有する2入口、2出口のスパイラルマイクロチャネル(300μm(幅)×60μm(高さ))からなる。試料(50μmの幅)およびシース(250μmの幅)の入力は各々、チャネルの外壁および内壁に固定する。出口の2分岐においては、チャネル内壁の小さい方の出口チャネルは小さめの粒子を収集するように設計する(出口1)一方、大きめの粒子は大きい方の出口で収集される(出口2)。
【0105】
デバイスの操作中、ビーズ試料を外部入口にポンピングする一方、シース液(1×PBS)は高流速(1:5)で内部入口を通してポンピングし、外壁付近の試料流を制限する
。我々のデバイスにおける慣性集束の不在を確認するため、より小さい半径(50nm、1μm、2μmおよび3μm)のビーズを、それらがデバイス内で慣性集束を受けないことになるように選択した(a
p/h≪0.07)。ビーズがチャネルを通過すると、それらは側方牽引力(F
D)を受け、固有のディーン渦に起因し、内壁に向けて遊走する。内壁領域付近で、遊走するビーズは追加的な壁に誘導される慣性揚力(F
WL)を受け、外壁へ戻るように再循環する前にサイズ依存性の過渡的位置が得られる。興味深いことに、大きめのビーズは壁に誘導される慣性揚力の増加を受け、過渡的平衡化位置は内壁からさらに離される。チャネル流体抵抗性がないチップを制御することにより、異なるサイズのビーズのディーン過渡的位置におけるわずかな差異は、サイズが近い小型粒子の分離のため、利用され得る。
【0106】
チャネルに沿う小型粒子のディーン遊走特性を理解するため、マイクロデバイスを、試料入口が外壁ではなく内壁に固定される点以外では同じ幾何学およびチャネル寸法で設計した。50nmの蛍光ビーズ溶液を同じフロー条件で両方のデバイスにポンピングし、それらのディーン誘導性の側方遊走パターンをチャネルに沿った異なる位置でのイメージングによって特徴づけた(
図10A、B)。実験データは、50nmのビーズのディーン遊走特性における差異を明示した。ビーズを内壁に最初に導入した時、それらは外壁へ向かうバンドとして密接にチャネル中央線沿いに遊走することになった。それに対して、ビーズは最初に外壁で、内壁に向かってチャネルの最上部および底部に沿って遊走することになった。側方位置における差異は粒子のディーン遊走速度を計算するために用い、それはオオカワラ(Ookawara)らのディーン速度方程式に基づく分析値と十分に一致した(
図10C)。
【0107】
内壁でのビーズのディーン過渡的位置における差異を特徴づけるため、様々な直径(50nm、1μm、2μmおよび3μm)のビーズを、異なる流速でデバイスに別々に導入した。
図11に示すように、最小の50nmのビーズがすべて、無視できるF
WLにより、内壁に向けて遊走した。大きめのビーズはF
WLの増加を受け、内壁からさらに離れた過渡的平衡化位置が得られる。
【0108】
ビーズの内壁での過渡的位置におけるこのわずかな差異が、間隔が密なサイズを有する小型粒子の分離において使用可能であることを実証するため、様々な組み合わせのビーズ混合物(5μmおよび3μmのビーズ;3μmおよび2μmのビーズ;2μmおよび1μmのビーズ)を、経験的に決定される最適化されたフロー条件でのスパイラルデバイスによって処理した。
図12に示すように、デバイスは、フロー条件を変えて、出口チャネルの抵抗性を調節することにより、すべてのビーズの組み合わせに対する二成分選別を達成することができた。小型粒子は有意に濃縮され(約10〜30倍)、出口1にて継続的に収集された。唯一の例外は、5μmのビーズが内壁で慣性集束されるようになった一方(a
p/hが約0.08)、より小さい3μmのビーズが外壁に向けて再循環し、代わりに出口2で収集された)ことから、5μmおよび3μmのビーズの選別である。同様に、ナノ粒子合成またはエキソソームに関連した試験(エキソソームはサイズが約50nm)において重要である、50nmおよび2μmのビーズの選別は見事に達成された(
図13)。
【0109】
実施例3:細菌選別
2出口スパイラルデバイスにおける集束機構に基づき、細菌種の分離および濃縮をそれらの細胞サイズに基づいて実施した。概念の証拠として、大腸菌(E.Coli)(桿状、約2〜4μmの長さ、1μmの幅)および黄色ブドウ球菌(S. aureus)(環状、約1μmの直径)の混合物を含有する試料溶液をデバイスにポンピングした。より小さい黄色ブドウ球菌(S. aureus)を出口1で選別した一方、大腸菌(E.Coli)は大部分、出口2にて回収した(
図14)。興味深いことに、大腸菌(E.Col
i)のサイズ分画が、より小さい大腸菌(E.Coli)(平均±標準偏差;2.03±0.46μm)およびより大きい大腸菌(E.Coli)(2.85±0.75μm)として認められ、出口1および2にて各々選別された(
図15)。これはさらに、細菌選別または診断に対する本技術の優れた分離分解能を例示する。
【0110】
実施例4:単球選別
単球は、
図16のワークフローに従って血液試料から分画している。単球の濃縮画分は4出口マイクロ流体デバイスにおいて選別しており、選別はフローサイトメトリー(FACs)分析により検討している(
図17)。
【0111】
実施例5:糖尿病患者における迅速な血管健康プロファイリングに対する内皮微小粒子の全血からの単一工程単離
下流での処理および分析用に効率的に微小粒子(MP)を全血から直接的に単離するため、本発明の技術を用いての高速な(約5分)単一工程式マイクロ流体プラットフォームについて説明する。この技術の臨床的有用性は、2型糖尿病(T2DM)患者および健常被験者におけるMPレベルを数え上げ、検査することにより、さらに実証された(
図1〜3)。
【0112】
本発明は、本明細書で広範かつ一般的に説明されている。一般的開示の範囲内に該当するより狭い種および下位分類の各々もまた、本発明の一部を形成する。これは、任意の主題を属から除く但し書きや消極的限定を、除かれた内容が本明細書で詳述されるか否かにかかわらず有する本発明の一般的説明を含む。他の実施形態は以下の特許請求の範囲に含まれる。さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュグループの観点で説明される場合、本発明についてもマーカッシュグループの任意の個別のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点で説明されることを当業者は理解するであろう。
【0113】
本発明が目的を遂行し、言及される目標および利点、ならびにその中に固有のものを得るのに十分に適応することを当業者であれば容易に理解するであろう。さらに、本発明の範囲および精神から逸脱することない限り、様々な置換および修飾を本明細書に開示される本発明に行ってもよいことは当業者に容易に理解されるであろう。本明細書に記載の組成物、方法、手順、処理、分子および特定化合物は現在、例示的であり、本発明の範囲に対する制限として意図されないような好ましい実施形態を代表するものである。当業者が思い付くであろう、本発明の精神の範囲内に包含されるような本明細書中の変化および他の使用は、特許請求の範囲によって限定される。本明細書中での以前に公開された文書についてのリストまたは考察は、その文書が先端技術の一部であるまたは周知の一般的知識であることの承認として必ずしも解釈されるべきではない。
【0114】
本明細書に例示的に記載される本発明は、好適には、本明細書で詳細には開示されていない任意の1つもしくは複数の要素、1つもしくは複数の制限の不在下で実行されてもよい。したがって、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などは、限定はされないが、拡大解釈されるべきである。したがって、用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、記載の整数または整数の群の包含であり、任意の整数または整数の群の排除でないことを意味することが理解されるであろう。加えて、本明細書で用いられる用語および表現は、制限の用語としてでなく説明の用語として用いられており、かかる用語および表現を、示され、説明される特徴の任意の均等物またはその部分を除外するように用いる意図はないばかりか、様々な修飾が請求される本発明の範囲内に含まれる可能性があることは理解されている。したがって、本発明が本明細書で例示される本発明の例示的実施形態および任意選択的な特徴、修飾および変形により詳細に開示されているが、本明細書での開示内容が当業者
に依存してもよく、またかかる修飾および変形が本発明の範囲内に含まれると考えられることは理解されるべきである。
【0115】
本明細書中で引用されるすべての文書および特許文書は、それら全体が参照により援用される。