特許第6758081号(P6758081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6758081メヤニ発生が少ないダイプレートを用いたペレットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758081
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】メヤニ発生が少ないダイプレートを用いたペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 9/06 20060101AFI20200910BHJP
   B29C 48/345 20190101ALI20200910BHJP
【FI】
   B29B9/06
   B29C48/345
【請求項の数】12
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-91892(P2016-91892)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-196875(P2017-196875A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】大田 佳生
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−034200(JP,A)
【文献】 特開2013−166974(JP,A)
【文献】 特開平01−178409(JP,A)
【文献】 特開2008−087192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 9/00−9/16
B29C 48/00−48/96
C08J 3/00−3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径Dが3.7〜8mm、長さLが内径Dの0.3〜2.0倍である複数個のオリフィスを有するダイプレートが装着された押出機を用い、溶融混練された熱可塑性樹脂組成物の前記オリフィスでの平均滞留時間Tを1〜15ミリ秒として、熱可塑性樹脂組成物ストランドを得て、前記熱可塑性樹脂組成物ストランドをペレタイズして熱可塑性樹脂組成物ペレットを得ることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項2】
前記複数個のオリフィスのうち前記ダイプレートの幅方向の最外端に位置する前記オリフィスの長さLoが、前記複数個のオリフィスのうち前記ダイプレートの幅方向の中心に最近接して位置する前記オリフィスの長さLcの0.5〜0.8倍である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項3】
前記複数個のオリフィスのうち前記ダイプレートの幅方向の最外端に位置する前記オリフィスの内径Doが、前記複数個のオリフィスのうち前記ダイプレートの幅方向の中心に最近接して位置する前記オリフィスの内径Dcの1.05〜1.3倍である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項4】
前記ダイプレートの前記オリフィスが開口する面及び前記オリフィスの内面の少なくとも一部の表面硬度が800〜5000である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項5】
前記押出機の下流側に、冷却装置、ペレタイザー、脱水装置、ペレット冷却機、ペレット選別機、外潤剤添加装置、ペレット搬送装置、金属選別機、異物選別機、切粉分離機、中間タンク、製品タンク、金属探知機、乾燥空気発生装置、脱水装置からなる群から選ばれる少なくとも1つをさらに用いる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項6】
前記冷却装置が冷却水が貯められた槽である、請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項7】
前記冷却装置が、その延在方向と水平面とのなす傾斜角度を30〜80°とし、その一端から他端に向かって冷却水が流された流路である、請求項5に記載の熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
【請求項8】
前記流路の少なくとも1箇所において冷却水を吹き付ける、請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項9】
前記中間タンク及び/又は前記製品タンクが、前記熱可塑性樹脂組成物ペレットを均質に混合するためのペレット混合装置を備える、請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物が、ポリフェニレンエーテル系樹脂20〜98質量部と、ポリスチレン系樹脂2〜80質量部とを含む熱可塑性樹脂と、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂との合計100質量部に対して0〜50質量部の難燃剤とを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂組成物ペレットの少なくとも95%が、外径2〜4mm、長さ2〜4mmとなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メヤニ発生が少ないダイプレートを用いたペレットの製造方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太さ及び長さ共に数mm程度の熱可塑性樹脂組成物ペレットを製造する一つの方法として、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を、押出機末端のダイ部に接合したダイプレートのオリフィス(孔出口)から、複数のストランドとして排出し、この溶融ストランドを冷却装置を用いて冷却し、ペレタイザーにて切断する方法が、一般的によく知られている。
【0003】
通常のダイプレートを用いた場合、ダイプレートのオリフィスに、メヤニとも称される溶融した樹脂組成物の塊が発生し、ストランドの調製が不安定になるという問題がある。
この問題を解決する技術として、ダイプレートのオリフィスにガスを吹き付けて、メヤニを除外する技術が提案されている(特許文献1参照)。また、排出されるストランドの全てを安定化させる方法として、ダイプレートのオリフィスの数を30以上としつつ、ダイプレートの両端に位置するオリフィスの長さを、ダイプレート中心に位置するオリフィスの長さよりも小さくする技術も提案されている(特許文献2参照)。さらに、特許文献3には、ダイス部のオリフィスの長さ(ランド長)を20mm未満とし、ダイス部のせん断速度を600〜900s-1とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−000320号公報
【特許文献2】特開2006−001015号公報
【特許文献3】特開2015−217552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、メヤニの発生そのものは防止するものではなく、メヤニにガスを吹き付けて物理的にメヤニを除外するものであり、メヤニの発生量の抑制することはできていない。また、この技術では、押出量を上げていったときの樹脂温度の上昇を抑えることができず、メヤニの発生量が増えるという課題があった。
特許文献2の技術では、ダイプレート両端のオリフィスをダイプレート中心のオリフィスよりも短くすることで、ストランドを安定させているが、実施例に記載されているオリフィス径、オリフィス長さ、押出量では、メヤニの発生を抑制することができず、前述の通り、押出量を増加させた場合にメヤニの発生量が増えるという課題があった。
特許文献3では、実施例の記載より、ダイス部のオリフィスのせん断速度が1000s-1であり、(なお、オリフィス径は3.6mm、1穴当たりの流量は18kg/hrであり、)樹脂組成物のオリフィスでの滞留時間が長くなるため、ペレットの生産性も下がるうえに、メヤニの発生量も増える傾向にある。
【0006】
上述のように、ダイ部での樹脂温度の上昇を抑制し、ダイ部のオリフィスの出口でのメヤニの発生量を抑え、ダイ部のオリフィスの出口から排出されるストランドを安定させ、ペレットの生産性を高め、良品のペレットの収率を上げることが可能な技術が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、オリフィスの開口部でのメヤニの発生を抑制して、良質な熱可塑性樹脂組成物ペレットを製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を有利に解決するため鋭意検討を重ねた結果、ダイプレートのオリフィスの開口部における樹脂組成物の温度を低減することで、オリフィスの開口部でのメヤニの発生を効果的に抑制することができ、ストランドを安定して調製し、良質な熱可塑性樹脂組成物ペレットを良好な収率で得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]内径Dが3.7〜8mm、長さLが内径Dの0.3〜2.0倍である複数個のオリフィスを有するダイプレートが装着された押出機を用い、溶融混練された熱可塑性樹脂組成物の前記オリフィスでの平均滞留時間Tを1〜15ミリ秒として、熱可塑性樹脂組成物ストランドを得て、前記熱可塑性樹脂組成物ストランドをペレタイズして熱可塑性樹脂組成物ペレットを得ることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
[2]前記複数個のオリフィスのうち前記ダイプレートの幅方向の最外端に位置する前記オリフィスの長さLoが、前記複数個のオリフィスのうち前記ダイプレートの幅方向の中心に最近接して位置する前記オリフィスの長さLcの0.5〜0.8倍である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
[3]前記複数個のオリフィスのうち前記ダイプレートの幅方向の最外端に位置する前記オリフィスの内径Doが、前記複数個のオリフィスのうち前記ダイプレートの幅方向の中心に最近接して位置する前記オリフィスの内径Dcの1.05〜1.3倍である、[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
[4]前記ダイプレートの前記オリフィスが開口する面及び前記オリフィスの内面の少なくとも一部の表面硬度が800〜5000である、[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
[5]前記押出機の下流側に、冷却装置、ペレタイザー、脱水装置、ペレット冷却機、ペレット選別機、外潤剤添加装置、ペレット搬送装置、金属選別機、異物選別機、切粉分離機、中間タンク、製品タンク、金属探知機、乾燥空気発生装置、脱水装置からなる群から選ばれる少なくとも1つをさらに用いる、[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
[6]前記冷却装置が冷却水が貯められた槽である、[5]に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
[7]前記冷却装置が、その延在方向と水平面とのなす傾斜角度を30〜80°とし、その一端から他端に向かって冷却水が流された流路である、[5]に記載の熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
[8]前記流路の少なくとも1箇所において冷却水を吹き付ける、[7]に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
[9]前記中間タンク及び/又は前記製品タンクが、前記熱可塑性樹脂組成物ペレットを均質に混合するためのペレット混合装置を備える、[5]に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
[10]前記熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[9]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
[11]前記熱可塑性樹脂組成物が、ポリフェニレンエーテル系樹脂20〜98質量部と、ポリスチレン系樹脂2〜80質量部とを含む熱可塑性樹脂と、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂との合計100質量部に対して0〜50質量部の難燃剤とを含む、[1]〜[10]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
[12]前記熱可塑性樹脂組成物ペレットの少なくとも95%が、外径2〜4mm、長さ2〜4mmとなる、[1]〜[11]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ダイプレートのオリフィスの開口部における樹脂組成物の温度を低減することで、オリフィスの開口部でのメヤニの発生を抑制して、良質な熱可塑性樹脂組成物ペレットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法の概要について示す図である。(A)は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法の一例の概要について示す図であり、(B)は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法の別の例の概要について示す図であり、(C)は、(B)に示す冷却装置を拡大して示す斜視図である((C)中、一点鎖線の部分は省略を意味する。)。
図2】本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法の一例において用いられる押出機に装着されるダイ部について示す図である。(A)は、ダイ部をその底面に垂直な面で切断したときの断面図、具体的には、(B)に示す線I−Iに沿う面によるダイ部の断面図であり、(B)は、ダイ部をその底面に平行な面で切断したときの断面図、具体的には、(A)に示す線II−IIに沿う面によるダイプレートの断面図である。
図3】本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法の別の例において用いられる押出機に装着されるダイ部について示す図である。(A)は、ダイ部をその底面に垂直な面で切断したときの断面図、具体的には、(B)に示す線I−Iに沿う面によるダイ部の断面図であり、(B)は、ダイ部をその底面に平行な面で切断したときの断面図、具体的には、(A)に示す線II−IIに沿う面によるダイプレートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。そして、本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0013】
なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断りのない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面中、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。本実施形態の寸法比率は図示の寸法比率に限られるものではない。
【0014】
(熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法は、内径Dが3.7〜8mm、長さLが内径Dの0.3〜2.0倍である複数個のオリフィスを有するダイプレートが装着された押出機を用いることを肝要とする。
また、本実施形態の製造方法においては、上記ダイプレートが装着された押出機以外に、押出機の下流側に、冷却装置、ペレタイザー、脱水装置、ペレット冷却機、ペレット選別機、外潤剤添加装置、ペレット搬送装置、金属選別機、異物選別機、切粉分離機、中間タンク、製品タンク、金属探知機、乾燥空気発生装置、脱水装置から選ばれる少なくとも1つを用いてよい。
【0015】
そして、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法では、溶融混練された熱可塑性樹脂組成物のオリフィスでの平均滞留時間Tを1〜20ミリ秒として、熱可塑性樹脂組成物ストランドを得ることを肝要とする。
本実施形態の製造方法では、続いて、熱可塑性樹脂組成物ストランドを冷却装置を用いて冷却し、適度に冷却された熱可塑性樹脂組成物ストランドをペレタイザーで適当な長さにカッティングする等して、円柱形状の熱可塑性樹脂組成物ペレットを得てよい。
【0016】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法によれば、ダイプレートのオリフィスの開口部における樹脂組成物の温度を低減することで、オリフィスの開口部でのメヤニの発生を抑制することができる。
さらには、本実施形態では、熱可塑性樹脂組成物ストランドを安定して調製し、熱可塑性樹脂組成物ペレットを高い良品率で得ることも可能となる。
【0017】
以下、上記ダイプレートが装着された押出機、さらには、押出機の下流側に、冷却装置、ペレタイザー、(脱水装置)、ペレット冷却機、ペレット選別機、外潤剤添加装置、ペレット搬送装置、金属選別機、異物選別機、切粉分離機、中間タンク、製品タンク、金属探知機、乾燥空気発生装置、脱水装置を、この順に用いる、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法の一例について詳述する。
【0018】
図1に、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法の概要について示す。図1(A)は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法の一例の概要について示す図であり、図1(B)は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法の別の例の概要について示す図であり、図1(C)は、図1(B)に示す冷却装置を拡大して示す斜視図である(図1(C)中、一点鎖線の部分は省略を意味する。)。
【0019】
本実施形態の製造方法の一例では、まず、熱可塑性樹脂組成物(組成については後述)を押出機1を用いて溶融混練する。溶融混練の条件は、目的や用途に応じて、適宜定めてよい。
【0020】
押出機1としては、特に限定されることなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の多軸押出機等が挙げられる。単軸押出機としては、例えば、スクリュー軸が前後に駆動しながら回転する、ブッス社製の単軸押出機(コニーダシリーズ)、異方向回転二軸押出機、同方向回転二軸押出機(例えば、コペリオン社製のZSKシリーズ、東芝機械社製のTEMシリーズ、日本製鋼所社製のTEXシリーズ)等が挙げられる。押出機1としては、高トルクの押出機、例えば、コペリオン社製のMcシリーズ、McPlusシリーズ、Mc18シリーズ、東芝機械社製のSSシリーズ、SXシリーズ、日本製鋼所社製のα2シリーズ、α3シリーズが好ましい。
押出機1の規格や大きさは、特に限定されないが、バレル内径(直径)40〜300mmであることが好ましく、バレル有効長はバレル内径の10〜60倍であることが好ましい。
押出機1のバレル構成としては、特に限定されることなく、複数のバレルを含み、所望のバレルにおいて、固体搬送ゾーン、溶融体搬送ゾーン、混練ゾーン等を形成するものとしてよく、所望のバレルに、真空ベントや大気ベント等のベントを設けてもよく、トップフィーダー、サイドフィーダー、液状添加装置を設けてもよい。各ゾーンの長さとしては、押出機長さ(バレル有効長)を100%とした場合、固体搬送ゾーンの長さは、10〜30%であり、溶融体搬送ゾーンの長さは、30〜85%であり、混練ゾーンの長さは、5〜40%としてよい。
バレルに使用するスクリューエレメントとしては、例えば、2条又は3条のニーディングブロック(右廻り、左廻り、ニュートラル、逆送り)、2条又は3条のフライトスクリュー(右廻り、左廻り)、1条、2条又は3条の切り欠きスクリューやカットスクリュー、バリスターリング等が挙げられ、これらを適宜組み合わせて用いてよい。
押出量としては、特に限定されないが、例えば、58mmΦ二軸押出機では、300〜1500kg/hrとしてよく、スクリューの回転数としては、300〜1500rpmとしてよい。
【0021】
本実施形態の製造方法の一例では、次いで、押出機1の先端部に設けられているダイ部2で溶融状態の熱可塑性樹脂組成物をストランドにする。
【0022】
図2に、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法の一例において用いられる押出機に装着されるダイ部について示す。図2(A)は、ダイ部をその底面に垂直な面で切断したときの断面図、具体的には、図2(B)に示す線I−Iに沿う面によるダイ部の断面図であり、図2(B)は、ダイ部をその底面に平行な面で切断したときの断面図、具体的には、図2(A)に示す線II−IIに沿う面によるダイプレートの断面図である。
【0023】
図3に、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法の別の例において用いられる押出機に装着されるダイ部について示す。図3(A)は、ダイ部をその底面に垂直な面で切断したときの断面図、具体的には、図3(B)に示す線I−Iに沿う面によるダイ部の断面図であり、図3(B)は、ダイ部をその底面に平行な面で切断したときの断面図、具体的には、図3(A)に示す線II−IIに沿う面によるダイプレートの断面図である。
【0024】
図2に示すダイ部2と図3に示すダイ部2とは、オリフィスの延在方向と押出機の軸方向とのなす傾斜角度(図示せず)が異なること以外は、同様の構成を有するものとしてよい。
具体的には、図2に示すダイ部2では、図2(A)の断面において、オリフィスの延在方向と押出機の軸方向とのなす傾斜角度(図示せず)は0〜60°としてよく、図3に示すダイ部2では、図3(A)の断面において、オリフィスの延在方向と押出機の軸方向とのなす傾斜角度(図示せず)は80〜100°(ほぼ90°)としてよい。
【0025】
ダイ部2は、ダイ接続部21、溶融した樹脂に含まれる異物をろ過により除去するためのスクリーンチェンジャー部22、マニホールド部23、ダイプレート部24からなる。
【0026】
スクリーンチェンジャー部22は、目開きが#20〜#300の金属メッシュを1種単独で又は2種以上組み合わせて取り付けることが可能なブレーカープレートが装着されていてもよい。ブレーカープレートには、ろ過面積を1.5〜2.0倍に増やすことが可能なスーパープレートが装着されていてもよい。また、熱可性樹脂組成物が強化材を含む場合には、ブレーカープレートが取り外されていてもよい。
【0027】
マニホールド部23は、内部に樹脂組成物の流路を備えるものであり、ここで、樹脂組成物の流路の幅(ダイ部2の幅方向の長さ)は、ダイ部2の先端に向かって(押出機の軸方向の上流側から下流側に向かって)漸増している。具体的には、図2(b)及び図3(b)において、流路を画成する線は、ダイ部2の幅方向について両側について対称に、流路の幅が漸増を開始する位置からダイ部2の先端に向かって、直線状に延びている。
なお、本実施形態のマニホールド部23は、図2(b)及び図3(b)に示すものに限定されることなく、流路を画成する線は、ダイ部2の幅方向について両側について非対称であってもよく、曲線状に延びていてもよいが、生産性等の観点から、対称であることが好ましく、直線状であることが好ましい。
【0028】
ここで、図2(b)及び図3(B)に示すように、ダイ部2をその底面に平行な面で切断したときの断面図における、流路の幅が一定である部分において流路を画成する線と、流路の幅が漸増する部分において流路を画成する線とのなす角度θ1としては、20〜70°であることが好ましく、さらに好ましくは25〜65°である。
なお、角度θ1とは、流路の幅が一定である部分において流路を画成する線と、流路の幅が漸増する部分において流路を画成する線とのなす角度のうち小さい方の角度をいう。
上記角度θ1を20°以上とすれば、ダイプレート部24に設けるオリフィスの数を増やす(生産量が上げる)ことが可能となり、上記角度θ1が70°を超えると、ダイ部2の幅方向の両端において、溶融状態の樹脂組成物の流動性が低下して、ダイプレート部24の中心部のストランドと両端のストランドとの間で流速に差が生じ、両端のストランドの調製が不安定になりやすい。
なお、角度θ1は、流路の中心を通る断面において定めてよい。また、流路を画成する線の全部又は一部が曲線状である場合には、その線を平均的な直線状の線として捉えたうえで、角度θ1を定めてもよい。
【0029】
ダイプレート部24は、前述の通り、溶融状態の樹脂組成物を樹脂組成物ストランドにするためのものであり、円柱形状の貫通孔であるオリフィス24oを複数個有している。
オリフィスの数としては、10個以上であることが好ましく、さらに好ましくは12個以上であり、より好ましくは15個以上である。
オリフィスの内径Dとしては、3.7〜8.0mmであり、好ましくは4.0〜8.0mmであり、さらに好ましくは4.0〜7.0mmである。内径Dが3.7mmより小さいとダイ圧が上がりやすく、樹脂組成物の温度が高くなり、また、8.0mmより大きいとダイ圧が下がり過ぎて、ストランドの安定性が低下する。
オリフィスの長さLとしては、オリフィスの内径Dの、0.3〜2.0倍であり、好ましくは0.4〜1.5倍であり、さらに好ましくは0.5〜1.0倍である。オリフィスの長さLのオリフィスの内径Dに対する割合(L/D)が0.3より小さいとダイ圧が下がり過ぎて、ストランドが不安定になるおそれがある。L/Dが2.0より大きいとダイ圧が上がり過ぎて、樹脂組成物の温度が上がりメヤニが増えるとともに、溶融状態の樹脂組成物とオリフィス24oの内壁との摩擦が大きくなりメヤニがさらに増えるおそれがある。
【0030】
特に、スケールの小さい押出機で押出量を上げて運転する場合、オリフィスの数を増やして、ダイ圧を下げる必要がある。そして、オリフィスの数を増やすと、マニホールド部23の流路の幅を広げる必要がある。さらに、マニホールド部23の流路の幅を広げると、マニホールド部23の両端を流れる樹脂の流速が極端に遅くなり、両端のストランドの安定性が悪くなる傾向がある。
【0031】
本実施形態の製造方法では、溶融混練された熱可塑性樹脂組成物のオリフィスでの平均滞留時間Tを、1〜20ミリ秒とすることを肝要とする。平均滞留時間Tは、好ましくは2〜15ミリ秒であり、さらに好ましくは3〜15ミリ秒である。
なお、平均滞留時間Tは、下記式により算出することができる。
平均滞留時間T=全オリフィスの内容積V/容積流量Q
上記Tが1ミリ秒より短いと、ダイ圧が下がり、ストランドが不安定になり、また、上記Tが20ミリ秒を超えると、ダイ圧が上がり、樹脂温度が上がり、メヤニが増える。
【0032】
本実施形態の製造方法では、1つのオリフィス24o当たりの樹脂組成物の流量としては、20〜120kg/hrであることが好ましく、さらに好ましくは25〜100kg/hrであり、より好ましくは30〜100kg/hrである。上記流量が20kg/hr未満では滞留時間が長過ぎるおそれがあり、120kg/hr超では滞留時間が短過ぎるおそれがある。
【0033】
本実施形態では、複数個のオリフィスのうちダイプレートの幅方向の最外端に位置するオリフィスの長さLoが、複数個のオリフィスのうちダイプレートの幅方向の中心に最近接して位置するオリフィスの長さLcの0.5〜0.8倍であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜0.7倍である。
熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が高い場合、又は、オリフィスの数が10個を超える場合には、マニホールドの幅方向の両端部に位置する樹脂組成物の流速が遅くなる傾向がある。ここで、Lo/Lcが0.5倍より小さいと、両端のダイ圧が下がり過ぎてストランドが不安定になるおそれがあり、Lo/Lcが0.8倍より大きいと、両端の流速が遅くなる。
このとき、幅方向の最外端に位置する2つのオリフィスの長さのみを、幅方向の中心に最近接して位置するオリフィスの長さよりも短くしてもよく、また、オリフィスの長さを、幅方向の中心に最近接する位置から幅方向の最外端の位置に向かって、テーパー状に漸減させたり、段階的に短くしたりしてもよい。
【0034】
複数個のオリフィスのうちダイプレートの幅方向の最外端に位置するオリフィスの内径Doが、複数個のオリフィスのうちダイプレートの幅方向の中心に最近接して位置するオリフィスの内径Dcの1.05〜1.3倍であることが好ましく、さらに好ましくは1.1〜1.3倍である。
Do/Dcを1.05〜1.3倍の範囲としても、Lo/Lcの範囲を定めた場合と同様の作用効果により、両端の流速を早くする効果がある。
【0035】
ここで、ダイプレートのオリフィスが開口する面及びオリフィスの内面の少なくとも一部の表面硬度が800〜5000であることが好ましく、さらに好ましくは800〜4000である。
なお、表面硬度とはHV硬度をいい、HV硬度は、JIS Z 2244に準拠して測定することができる。
ダイプレートの材料としては、通常、SUSやSKDが使用され、これらに焼き入れを行った場合でも、ダイプレートの表面の表面硬度は、50程度に留まることが多い。この程度の硬度では、ダイプレートのオリフィスが開口する面及びオリフィスの内面に傷がつきやすく、例えば、ストランドを金属製の刃を用いて切断する際に、真鍮や銅等の柔らかい材料でできた刃を用いた場合であっても、オリフィスの開口部等に傷がつきやすく、メヤニ発生の原因となる。また、上記硬度では、長時間の使用により、オリフィスの内面に摩耗が生じやすくなり、かかる摩耗がメヤニ発生の原因となる。
【0036】
上記事情に鑑みて、ダイプレートの表面の硬度を高めるため、ダイプレートのオリフィスが開口する面及びオリフィスの内面を含むダイプレートの表面の全部又は一部には、表面処理を行うことが好ましく、表面処理としては、窒化処理、金属蒸着処理等が挙げられる。
窒化処理としては、公知の窒化処理や、カナック社(日本国)のニューカナック処理が好ましく、特に好ましくはニューカナック処理である。ニューカナック処理を行った場合、ダイプレートの表面の表面硬度が1000程度になり、メヤニの発生を抑制することができる。
金属蒸着処理としては、Chemical Vapor Deposition成膜方式、Pysical Vapor Deposition成膜方式が挙げられる。ここで、コーティング材料としては、チタンカーバイド、炭窒化チタン、炭化クロム、窒化チタン、窒化チタンアルミ等が挙げられ、窒化チタンアルミが好ましい。
Pysical Vapor Deposition成膜方式で、窒化チタンアルミを蒸着させた場合、ダイプレートの表面の表面硬度が3500程度にまで高まり、表面に傷が付きにくくなる。但し、この場合、蒸着をオリフィスの内面に亘って行うため、オリフィスの内径Dを5mm以上とし、オリフィスの長さLのオリフィスの内径Dに対する割合(L/D)を1未満とすることが好ましい。
【0037】
本実施形態の製造方法の一例では、続いて、得られた熱可塑性樹脂組成物ストランドを、冷却装置3を用いて冷却する。
【0038】
冷却装置3としては、冷却水が貯められた槽(図では、ストランド冷却槽3a)、その延在方向と水平面とのなす傾斜角度θ2を30〜85°とし、その一端から他端に向かって冷却水が流された流路(図では、ストランドガイド3b)等が挙げられる。
なお、傾斜角度θ2とは、流路の延在方向と水平面とのなす角度のうち小さい方の角度をいう。
図1(A)及び図1(B)に示す通り、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法の一例では、冷却装置3としてストランド冷却槽3aを用いており、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法の別の例では、冷却装置3としてストランドガイド3bを用いている。
【0039】
冷却装置3に用いられる冷却水には、純水、イオン交換水、工業用水、冷却塔で循環している冷却水等が使用されてよい。
【0040】
ストランド冷却槽3aは、冷却水を所定時間滞留させられるものであれば特に限定されることなく、断続的に又は連続的に冷却水を交換してよい。
通常、冷却水は、ストランド冷却槽3aの下流側で供給し上流側で排出して、排出されるストランドに対して向流で冷却する。
ストランド冷却槽3aには、ストランドを安定させるために、ストランドガイドローラーを複数個使用することが好ましい(図1(C)参照)。ストランドガイドローラーはストランドが内側に寄るときは回転を固定して運転する。
また、ストランド冷却槽3aには、ストランドの表面に付着した水を除去するため、空気を吹き付ける機能を備えるエアワイパーや、プラスチック繊維のブラシを用いてもよい。
【0041】
ストランドガイド3bは、熱可塑性樹脂組成物ストランド及び冷却水を流すことが可能な流路を備えている。流路の数は、ダイプレート部24に設けられたオリフィス24oの個数に応じて定めてよく、特に限定されないが、例えば、8〜20としてよく、複数の流路の間には、ストランドが隣接する流路に侵入しないように、所定の高さ(例えば、8〜20mm)の壁を設けてよい。流路は、オリフィス24oから排出されたストランドが、それぞれの流路の幅方向中央に落ちるように、設計することが好ましい。例えば、隣接する壁どうしの間の距離(流路の幅)は、オリフィスどうしの間の距離に応じて定めてよい。
ストランドガイド3bでは、前述の通り、その延在方向と水平面とのなす傾斜角度θ2が、30〜85°であることが好ましく、さらに好ましくは35〜85°であり、より好ましくは40〜80°である。
ストランドガイド3bには、上流から下流に向かって、冷却水を流す。この冷却水は、ストランドの冷却及び搬送の役割を果たしている。
ストランドガイド3bには、ストランドが着水した位置からペレタイザー4(後述)に入る位置までの間の少なくとも1箇所に、冷却水を噴霧し、ストランドをさらに冷却することが可能な噴霧装置3bvを用いてもよい。特に、ストランドの軟化温度が低いほど、冷却水を多段階で噴霧することが望まれる。
また、オリフィス24oの延在方向と流路の延在方向とのなす傾斜角度θ3(図1(B)参照)としては、ストランドと水との抵抗を減らすため、5〜60°とすることが好ましく、5〜55°とすることがさらに好ましい。
なお、傾斜角度θ3とは、オリフィス24oの延在方向と流路の延在方向とのなす角度のうち小さい方の角度をいう。
なお、冷却装置3として、ストランドガイド3bを用いる場合、図1(B)に示すように、後続のペレット冷却器5の前に、脱水装置16を用いることが好ましい。
【0042】
ストランド冷却槽3a及びストランドガイド3bのいずれを用いた場合であっても、オリフィスの開口部から冷却装置までの距離L1、すなわち、ストランドがダイプレート外部に排出された位置からストランドが冷却装置の水に着水する位置までの間隔としては、小さいほどストランドが安定するが、通常50〜200mmとしてよい。
【0043】
本実施形態の製造方法の一例では、続いて、冷却された熱可塑性樹脂組成物ストランドを、ペレタイザー4を用いたペレタイズ(カッティング)により、熱可塑性樹脂組成物ペレットを得る(図1(A)参照)。
ペレタイザー4は、回転刃幅が200〜500mm、引取速度60〜300m/分のものを使うことが出来る。ペレタイザーは乾式のペレタイザー4と湿式ペレタイザー4‘がある。ストランド冷却槽の場合、乾式のペレタイザー4を使用し、回転刃や固定刃に空気を吹き付けて、切粉の発生を防止しても構わない。湿式のペレタイザー4’はストランドガイドを通って、ストランドと冷却水を同時にペレタイジングする。
ペレタイザー4により得られるペレットは、好ましくは少なくとも95%が、さらに好ましくは少なくとも96%が、より好ましくは少なくとも97%が、好ましくは、外径2〜4mm、長さ2〜4mmとなるものであり、さらに好ましくは、外径2.2〜3.8mm、長さ2.2〜3.8mmとなるものであり、より好ましくは、外径2.5〜3.5mm、長さ2.5〜3.5mmとなるものである。
湿式ペレタイザーの場合、ペレット表面に水が付着しているので、着水を取るために脱水装置を用いてもよい。脱水装置は、遠心分離方式でも良いし、乾燥方式でも構わない。
【0044】
本実施形態では、次いで、熱可塑性樹脂組成物ペレットをペレット冷却機5を用いて冷却する(図1(A)参照)。
ペレット冷却機5は、ペレタイザー4では切粉発生防止、ペレットの吸湿防止のためにストランドを120〜150℃でカッティングし、ペレットにする。ペレットの内部はさらに高温のために、ペレットを冷やさないと、熱劣化のためにペレットが変色したりする。また吸湿性樹脂の場合、ポリエチレン樹脂を内部コーティングしたアルミニウム袋を使用するが、温度が高いまま包装すると、アルミニウム袋が収縮し、袋が硬くなり、ペレット袋をパレットに積んだ場合、輸送中に落ちるトラブルが発生したり、ペレットが高温であるとペレットがニューマー配管内壁に衝突する際、フロスと呼ばれる薄い皮が出来たりする。ペレット冷却機ではペレットの温度を40〜70℃くらいにするように冷却することが好ましい。ペレット冷却機は流動床タイプとかパンチングプレートにペレットを移動させて、底側から冷却ガスで冷却するものがある。好ましいのは株式会社タナカ(日本国)の空冷式ペレットクーラーASCシリーズが好ましい。
【0045】
その後、本実施形態では、冷却された熱可塑性樹脂組成物ペレットをペレット選別機6に通す(図1(A)参照)。
ペレット選別機6は、前記ペレタイザー5でペレタイジングしたペレットのうち、4mmを超える長いペレット、ストランド同士が融着して出来た双子ペレットやペレットの切カスの切粉を除去する。
【0046】
本実施形態では、さらに、選別された熱可塑性樹脂組成物ペレットに、外潤剤添加装置7を用いて、外潤剤を与える(図1(A)参照)。
外潤剤添加装置7は、ペレット表面に外潤剤を付ける装置である。外潤添加供給装置、と/または、外潤剤とペレットを均一に混合するミキサーからなる。外潤剤は粉系の添加剤のために添加量が0.05質量部を超えるとペレットと分離しやすいので、オイル添加装置を使って、先ず、オイルとペレットを混合し、その後、添加剤を混ぜることもある。
【0047】
本実施形態では、さらに、外潤剤を与えられた熱可塑性樹脂組成物ペレットを、ペレット搬送装置8を用いて、搬送する(図1(A)参照)。
ペレット搬送装置8は、ペレットを搬送する配管とペレットを送るガスブロアーからなる。ガスブロアーは上流側から送風する加圧式ブロアーまたは下流側から吸い込む吸引式ブロアーのどちらを使っても良い。配管、特に曲り部はペレットが衝突し、摩耗するので、配管の内部をセラミック処理や窒化処理(カナック社のニューカナック処理)の耐摩耗処理をするのが好ましい。
【0048】
次いで、本実施形態では、搬送された熱可塑性樹脂組成物ペレットを、金属選別機9に通す(図1(A)参照)。
金属選別機9は、ペレット中に入っている径又は長さが0.1mm以上の金属破片を除去するのに使用する。ペレットには原料に含まれる小さな金属片等が入っている場合があるので、電子部品の用途には使用する場合がある。
【0049】
また、本実施形態では、熱可塑性樹脂組成物ペレットを、異物選別機10に通す(図1(A)参照)。
異物選別機10は押出機内で発生し、スクリーンチェンジャー22のブレカープレートに付ける金属メシュでろ過出来ない異物が混入しているペレットやメヤニ破片が付いたペレットを除去する場合に使用する。異物選別機10には異物を感知するセンサーがペレットの流れに対して表面と裏面に付いているが、これだと除去率が低くなるので、前記異物選別機にセンサーが前後2個と左右2個の計4個付くものか、前記異物選別機にセンサーが2個の場合には2台使用すると異物の除去率が向上する。
【0050】
そして、本実施形態では、熱可塑性樹脂組成物ペレットを、切粉分離機11に通す(図1(A)参照)。
切粉分離機11はペレタイザー4から製品タンク12の間に設ける。切粉とは1mm以下のペレットの破片やペレット搬送する配管で発生するフロスである。サイクロン式の粒径の小さいものを分離する方式でも良いし、切粉をイオン化する装置でも構わない。好ましい取り付け位置は製品タンク12の上でサイクロン式である。
【0051】
ここで、得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットは、任意選択的に設けられる中間タンク12(図示せず)に一端貯めておいてもよいが、本実施形態では、ペレットを製品タンク13(後述)に貯める。
中間タンク12はスタート初期のペレットをサイズ確認や物性確認してから製品にするときに使うことがある(図示せず)。
製品タンク13はペレットを貯めて置く装置である。製品タンクは1〜72時間程度貯蔵できる容積が必要である。また、ペレットの均一化させるために機械的なミキサーやガス循環式ミキサーを使っても良い。
中間タンク12及び/又は製品タンク13には、熱可塑性樹脂組成物ペレットを均質に混合するためのペレット混合装置を用いてもよい。
【0052】
そして、本実施形態では、熱可塑性樹脂組成物ペレットに、金属探知機14を当てる。
金属探知機14は5000〜15000ガウスのマグネット棒を一列に数本並べ、3〜5列で構成される。製品タンクの出口に取り付けることで、金属片が入ったペレットを検出できる。
【0053】
また、本実施形態では、後処理として、熱可塑性樹脂組成物ペレットに、乾燥空気発生装置15を用いて、乾燥空気を与えてもよい。
乾燥空気発生装置15は、ポリアミド系の吸湿性ペレット樹脂の雰囲気が40℃以下になると雰囲気中の水分を扱う場合に使用する。前記乾燥空気発生器14は露点−40℃、絶対湿度0.119g/m3の乾燥空気を発生させる装置である。
【0054】
<熱可塑性樹脂組成物>
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法において用いられる熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含み、任意選択的に、無機フィラー、難燃剤、その他添加剤をさらに含んでよい。
【0055】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂(ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、芳香族ナイロン、芳香族と炭化水素系ポリアミド等)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテルと(後述の)ポリスチレン系樹脂とのブレンド物等)、ポリスチレン系樹脂(ゼネラルパーパスポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体等)、ポリカーボネート、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等)、ポリオキシメチレン(ホモポリオキシメチレン、コポリマーポリオキシメチレン等)、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトンが挙げられる。
本実施形態では、特に、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドが好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0056】
無機フィラーとしては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、硫酸マグネシウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、炭酸カルシウムウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー、ケイ酸カルシウム(ワラストナイト)、マイカ、タルク、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられ、特に、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム(ワラストナイト)、マイカ、タルク、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、カオリン、シリカが好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0057】
難燃剤としては、リン系難燃剤等が挙げられ、リン系難燃剤としては、具体的には、リン酸エステル化合物、リン酸縮合エステル等が挙げられる。
リン酸エステル化合物及びリン酸縮合エステルとしては、例えば、トリフェニルホスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニルビス(3,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、2,2−ビス{4−[ビス(フェノキシ)ホスホリルオキシ]フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−[ビス(メチルフェノキシ)ホスホリルオキシ]フェニル}プロパン、リン酸−(3−ヒドロキシフェニル)ジフェニル、レゾルシノール・ビス(ジフェニルホスフェート)、2−ナフチルジフェニルホスフェート、1−ナフチルジフェニルホスフェート、ジ(2−ナフチル)フェニルホスフェート等が挙げられる。
【0058】
その他添加剤としては、液体添加剤(オイル、水等)、粉体フィラー分散剤(エチレンビスアマイド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸等)、エラストマー、官能基付与剤(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸等)、着色剤、着色補剤(酸化チタン等)、紫外線吸収剤、耐電防止剤、安定剤(酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン系化合物、イオウ系化合物、ヒンダードフェノール系化合物等)等が挙げられる。
【0059】
本実施形態において好ましい熱可性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂20〜98質量部と、ポリスチレン系樹脂2〜80質量部とを含む熱可塑性樹脂と、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂との合計100質量部に対して0〜50質量部の難燃剤とを含むものである。
本実施形態において特に好ましい熱可性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂30〜90質量部と、ポリスチレン系樹脂10〜70質量部とを含む熱可塑性樹脂と、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂との合計100質量部に対して0〜50質量部の難燃剤とを含むものである。
【0060】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法により製造される熱可塑性樹脂組成物ペレットは、電気・電子部品、OA部品、自動車部品等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法について以下に記載する。
【0063】
(実施例1)
押出機として、同方向回転二軸押出機(東芝機械社製のTEM58SS(12バレル))を使用した。
バレル構成は、下記の通りとした。
No.1バレル :第一供給口(トップフィードバレル、重量式フィーダーA、重量式フィーダーB)
No.2バレル :クロ−ズドバレル
No.3バレル :クロ−ズドバレル
No.4バレル :クロ−ズドバレル
No.5バレル :第二供給口(液添バレル)
No.6バレル :クロ−ズドバレル
No,7バレル :クローズドバレル
No.8バレル :クロ−ズドバレル
No.9バレル :クローズドバレル
No.10バレル:真空ベント
No.11バレル:クローズドバレル
No.12バレル:クローズドバレル
バレルの設定温度:280℃、ダイ部の設定温度:280℃。
【0064】
スクリーンチェンジャー:(上流側)#20/#40/#80/#20(下流側)
(#20:20番金属メッシュ)
マニホールド:マニホールド角度θ1:60°
ダイプレート:図1(A)に示す構成のダイプレートを用いた。オリフィスの内径D(Φ)=4.0mm、オリフィスの長さL=6.0mm、オリフィス列の数:1、オリフィス1列当たりのオリフィスの数:25
【0065】
ストランド冷却槽として、幅:600mm×長さ:6000mmの槽を用いた。冷却水の水温:40℃±3℃、水深:100mmとした。ストランドガイドローラーを4つ設置した。
ストランドガイドローラーは、少なくともストランドが入水した地点に設置し、両端のストランドが中心に寄ってくることのないように、軸周りの回転しない固定型のものとした(図1(C)参照)。
【0066】
ペレタイザー:幅300mmの回転刃を用いた。長さ3mm×径3mmの円柱状ペレットを目標とした。ペレタイザー入口におけるストランド温度を140℃とした。
ペレット冷却機:出口温度50℃
ペレット選別機:振動篩いを用いた。長いペレット、連粒(双子)ペレット、切り粉(小粒径ペレット)を排除した。
外潤剤添加装置:エチレンビスアマイドを0.03質量部添加
ペレット搬送装置:送風量:30m3/hr
金属選別機:ダイカ株式会社製の高感度選別機 ダイアレスター
異物選別機:株式会社クボタ製の異物選別機 PLATON II
切粉分離機:株式会社カワタ製のゼノフィルター
中間タンク:使用せず
製品タンク:容量:3m3
金属探知器:13000ガウスのマグネットを1列3個の3列とした。
【0067】
(測定方法)
(1)樹脂組成物の温度測定
熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造において、ダイプレートからNo.1バレルに向かう方向に見て、右から10番目のオリフィスの開口部から排出されたストランドに、温度計(安立計器株式会社製のハンディタイプ温度計HD−1100)のセンサーの先端を差して、樹脂組成物の温度(℃)を測定した。
【0068】
(2)ダイ部における圧力測定)
熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造において、マニホールド部の上部に設置したダイ圧計(理化工業株式会社製のCZ−200P)を用いて、ダイ部における圧力(MPa)を測定した。
【0069】
(3)ストランドの安定性の評価
熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造において、ストランドが排出され始めてから20分後のストランドの状態を観察して、下記判定基準に従って評価した。
<判定基準(判定点:ストランドの安定性の様子)>
1:ストランド全数がストランドカールとストランド切れとも無。
2:ストランドの両端だけか一方のストランドがカールするが切れない状態。
3:ストランドの両端方向のストランドの数本がカールするが切れない状態。
4:ストランドの両端方向のストランドの1〜数本がカールし、切れる状態。
5:ストランドが頻繁に切れる状態。
なお、ストランドカールとは、ストランド捻じれることである。ストランド切れとは、ストランドが切れてストランドが引けなくなくなることである。
【0070】
(4)メヤニの発生量の評価
熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造において、ストランドが排出され始めてから10分間にダイプレートのオリフィスの開口部(ストランドの排出口)で発生したメヤニのサイズを、ノギスを用いて測定した。判定は下記判定基準に従って行った。
1:メヤニ長さ1mm以下。
2:メヤニ長さ3mm以下。
3:メヤニ長さ5mm以下。
4:メヤニ長さ7mm以下。
5:メヤニ長さ10mm以下。
6:メヤニ長さ15mm以下。
7:メヤニ長さ15mm超。
【0071】
(5)ペレットの良品率の算出
熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造において、ペレットの良品の良品率は、ストランドが排出され始めてから1時間後に、ペレタイザー出口シュートを切り替えることにより5kgのペレットをサンプリングした。
そして、サンプリングしたペレットについて、ペレット選別機を用いて、長いペレット、双子ペレット、小粒径ペレットを選別した。ここで、長いペレット、双子ペレット、小粒径ペレットの合計量の1時間平均量W(kg/hr)を計算し、下記式に従ってWと押出量Q(kg/hr)とから良品率(%)を求めた。
A(%)=(Q−W)/Q×100
【0072】
ポリフェニレンエーテル系樹脂(旭化成プラスチックスシンガポール社製、S201A)(以下、「PPE」ともいう。)75質量部を、重量式フィーダーAに投入し、バレル1のトップフィードに供給した。
ポリスチレン系樹脂として、ハイインパクトポリスチレンCT60(ペトロケミカル社(マレーシア連邦共和国)製)を4質量部、及びゼネラルパーパスポリスチレン685(PSジャパン製)3質量部と、ポリエチレンM1804(旭化成ケミカルズ社製)1質量部と、水素添加スチレンエチレンブロック共重合体G1651(シェル社製)4質量部と、安定剤(イルガノックス1010/アデカスタブPEP36=1:2)0.6質量部と、をタンブラーで混合した混合物12.6質量部を、重量式フィーダーBに投入し、バレル1のトップフィードに供給した。
難燃剤(第八化学社製、CR731)12質量部を、バレル5に取り付けた液添注入ノズルを介して、液添重量式フィーダーで供給した。
押出量1000kg/hr、スクリュー回転数500rpmに設定した。
【0073】
バレル1と2には粉体原料を高搬送する一条スクリューを使い、バレル3〜5は2条スクリューを使い、バレル6に第一混練ゾーンを設置し、第一供給口から供給した原材料と難燃剤を軽く混ぜた後、バレル9に設けた第二混練ゾーンで完全溶融させ、バレル10に真空ベントを設け、−0.09MPaで脱気をした。
第一混練ゾーンのスクリュー構成は、右回りニーディングブロック、中立ニーディングブロック、右回り切欠き2条スクリューの圧縮効果の少ないスクリューを適宜組み合わせた。
第二混練ゾーンのスクリュー構成は、第一混練ゾーンのスクリューに、左回りニーディングブロック、左回りスクリュー、左回り一条切欠きスクリュー等の圧縮効果の高いスクリューを少なくとも1個使用し、適宜組み合わせた。
【0074】
ストランド冷却槽を用いて、液面の高さを150mmとし、オリフィスの開口部から冷却装置までの距離(オリフィス出口と液面との鉛直距離)を120mmとした。
ストランドガイドローラーは、ストランドが入水した地点に設置し、軸周りの回転しない固定型のものとした。
ストランドの冷却水に浸漬している部分の長さを2000mmとし、浸漬後のストランドの表面に付着した水をエアワイパーを用いて除いた。ペレタイザーの引取速度を120m/分、ストランドの表面温度を140℃とし、長さ3mm×径3mm目標のペレットにした。
【0075】
ペレタイザーの出口シュートに下流側にペレットクーラーを付けて、ペレットクーラー出口温度が60℃になるように冷却空気量を調整し、振動篩で、切粉と長ペレット、双子ペレットを除去した。篩の下流側に外潤添加装置を設置し、エチレンビスアマイドを0.03質量部ペレット表面に付着するように混ぜて、押し込み式のニューマーを使い、金属選別機と異物選別を通り、製品タンクに供給し、製品タンク入口には切粉除去装置を付け、製品タンク出口には12000ガウスの3列、3段のマグネット(金属探知装置)を付けて、25kg袋に袋詰めした。
【0076】
実施例1の詳細な条件及び評価結果を表1に示す。
実施例1では、ダイ圧、樹脂温度、メヤニ、ストランド切れと良品率は良好であった。
【0077】
(比較例1〜4)
ダイプレートを表1に示すものに変更した以外は実施例1と同様にペレットの製造を実施した。
比較例1では、オリフィスの長さLを10mm(L/D=2.5)にしたところ、メヤニ量が増え、ストランド切れも多くなった。
比較例2では、オリフィスの内径Dを3.0mm、オリフィスの長さLを4.5mmにしたところ、ダイ圧が上昇し、樹脂温度も上がるので、押出量を400kg/hrに落としたが、それでも、樹脂圧が上がり、樹脂温度も高く、メヤニ量も多く発生し、ストランド切れも多かった。
比較例3では、オリフィスの長さLを1.0mm(L/D=0.25)にしたところ、オリフィスでの整流効果がなくなり、ストランド切れが至るところで発生した。
比較例4では、オリフィスを比較例1と同じものにして、押出量を375kg/hrとし、回転数を250rpmにしたところ、滞留時間が長くなり、メヤニ発生量が増えて、ストランド切れが多くなった。
【0078】
(実施例2〜4)
組成と製法とダイプレートとを表1に示すものに変更した以外は実施例1と同様にペレットの製造を実施した。
実施例2では、特に、GPPS685及びCT60をG1651に置き換えた。実施例3及び実施例4では、バレル8に更なるサイドフィーダーを取り付けて、CT60の一部をサイドフィーダーから供給した。
実施例2〜4では、ダイ圧、樹脂温度、メヤニ、ストランド切れと良品率は良好であった。
【0079】
(実施例5)
組成と製法とダイプレートとを表1に示すものに変更した以外は実施例1と同様にペレットの製造を実施した。
実施例5では、グラスファイバー30質量部をバレル8に取り付けた更なるサイドフィーダーから供給した。
実施例5はダイ圧、樹脂温度、メヤニ、ストランド切れと良品率は良好であった。
【0080】
(実施例6、7)
組成と製法とダイプレートとを表1に示すものに変更した以外は実施例1と同様にペレットの製造を実施した。
実施例6では、ダイプレートの表面(ダイプレートのオリフィスが開口する面及びオリフィスの内面)にニューカナック処理したダイプレートを使った。表面硬度(HV硬度)は1000であった。
実施例6では、メヤニの量は大幅に減り、ダイ圧、樹脂温度、メヤニ、ストランド切れと良品率は良好であった。
実施例7では、ダイプレートの表面(ダイプレートのオリフィスが開口する面及びオリフィスの内面)に窒化チタンアルミ(TiALN)で蒸着処理したダイプレートを使った。表面硬度は3500であった。
実施例7では、メヤニの量は大幅に減り、ダイ圧、樹脂温度、メヤニ、ストランド切れと良品率は良好であった。
【0081】
(実施例8、9)
組成と製法とダイプレートとを表1に示すものに変更した以外は実施例1と同様にペレットの製造を実施した。
実施例8では、ダイプレートの25個のオリフィスのうち、中心部の15個のオリフィスの長さLを5.0mmとし、この15個よりもダイプレートの幅方向について外側に位置する、両外側5個ずつのオリフィスの長さLを段階的に0.3mmずつ小さくしていき、最外端のオリフィスの長さLを3.5mmにした。Lo/Lcは、3.5/5.0であった。
実施例8では、実施例5と比較して、ストランド安定性は向上した。
実施例9では、ダイプレートの25個のオリフィスのうち、中心部の15個のオリフィスの内径Dを5.0mmとし、この15個よりもダイプレートの幅方向について外側に位置する、両外側5個ずつのオリフィスの内径Dを段階的に0.1mmずつ大きくしていき、最外端のオリフィスの内径Dを5.5mmにした。Do/Dcは、5.5/5.0であった。
実施例9では、実施例5と比較して、ストランド安定性は向上した。
【0082】
(実施例11)
組成と製法とダイプレートとを表1に示すものに変更した以外は実施例1と同様にペレットの製造を実施した。
実施例11では、GFの代わりにマイカを使った。
実施例11では、ダイ圧、樹脂温度、メヤニ、ストランド切れと良品率は良好であった。
【0083】
【表1】
【0084】
(実施例12〜15)
バレル構成を、No.1バレル:第1供給口、No.3バレル〜No.4バレル:第一混練ゾーン、No.5バレル:真空ベント、No.6バレル:第二供給口(難燃剤)、No.8バレル:第3供給口(CT60)、No.10バレル:真空ベント、No.11バレル:第三供給口(難燃剤)に変更し、組成と製法とダイプレートとを表2に示すものに変更した以外は実施例1と同様にペレットの製造を実施した。
実施例12、13では、難燃剤を供給しなかった。
実施例13では、分子量が低いので、樹脂温度が低くなる分メヤニは減った。ダイ圧、樹脂温度、メヤニ、ストランド切れと良品率は良好であった。
実施例14、15では、難燃剤の量が多いことから、第二供給口及び第三供給口から分割して供給をした。
実施例14、15では、ダイ圧、樹脂温度、メヤニ、ストランド切れと良品率は良好であった。
【0085】
(実施例16)
図1(B)に示す構成のダイプレートを用いた。ストランド冷却槽の代わりにストランドガイドを用いた。ストランドガイドとして、幅:600mm×長さ:1500mmであり、幅10.7mmの流路を20個備える部材を用いた。流路の幅及び流路の数は、ダイプレートに設けられたオリフィスの間隔及び数に合わせたものである。流路の延在方向と水平面とのなす傾斜角度θ2は75°とした。オリフィスの延在方向と流路の延在方向とのなす傾斜角度θ3は15°であった。ストランドガイドには、湿式ペレタイザーや脱水装置を取り付けて、ペレット選別機(振動篩)以降につなげた。これらの点以外は実施例1と同様にペレットの製造を実施した。
実施例16では、オリフィス出口とストランドガイドの鉛直距離は200mmであった。
実施例16では、ダイ圧、樹脂温度、メヤニ、ストランド切れと良品率は良好であった。
【0086】
(比較例5)
組成と製法とダイプレートとを表2に示すものに変更した以外は実施例16と同様にペレットの製造を実施した。
比較例5では、オリフィスの長さLを15mmにした。
比較例5では、オリフィスの長さが長い分、メヤニは増え、ストランドは不安定さが増し、良品率が低下した。
【0087】
【表2】
【0088】
(実施例17)
組成と製法とダイプレートとを表3に示すものに変更した以外は実施例1と同様にペレットの製造を実施した。
熱可塑性樹脂としてポリアミド系樹脂(ナイロン66)(1300S、旭化成株式会社製)を、安定剤としてマスターバッチ(銅/1300S=10:90)を用い、また、バレル構成を、No.1バレル:第一供給口、No.3バレル〜No.4バレル:第一混練ゾーンを設け、No.5バレル:真空ベント、No.6バレル:第二供給口、No.9バレル:第二混練ゾーン、No.10バレル:真空ベントに変更し、組成と製法とダイプレートとを表3に示すものに変更した以外は実施例1と同様にペレットの製造を実施した。
実施例17、18では、製品タンクにおいて、ポリアミドの吸湿防止のため、露点:−40℃、絶対湿度:0.119g/m3の乾燥空気を供給した。
実施例17では、ダイ圧、樹脂温度、メヤニ、ストランド切れと良品率は良好であった。
【0089】
(比較例6)
組成と製法とダイプレートとを表3に示すものに変更した以外は実施例17と同様にペレットの製造を実施した。
比較例6では、オリフィスの長さLを10mmにした。
比較例6では、樹脂温度が高くなり、メヤニが増え、ストランドも不安定になり、良品率も低下した。
【0090】
(実施例18)
組成と製法とダイプレートとを表3に示すものに変更した以外は実施例17と同様にペレットの製造を実施した。
実施例18では、グラスファイバーを第二供給口から供給した。
実施例18では、ダイ圧、樹脂温度、メヤニ、ストランド切れと良品率は良好であった。
【0091】
(比較例7)
組成と製法とダイプレートとを表3に示すものに変更した以外は実施例18と同様にペレットの製造を実施した。
比較例7では、オリフィスの長さLを10mmにした。
比較例7では、樹脂温度が高くなり、メヤニが増え、ストランドも不安定になり、良品率も低下した。
【0092】
実施例1〜18で製品タンクから出てきたペレットについては、金属選別装置、異物除去装置を付けているので、製品タンク出口に付けた金属探知装置(マグネット)に金属の入ったペレットは実質的に存在しておらず、また、メヤニに付いたペレットも実質的に存在しておらず、ペレット中の切粉も100ppm未満であった。
【0093】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、ダイプレートのオリフィスの開口部における樹脂組成物の温度を低減することで、オリフィスの開口部でのメヤニの発生を抑制して、良質な熱可塑性樹脂組成物ペレットを製造することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 押出機
2 ダイ部
21 ダイ接続部
22 スクリーンチェンジャー部
23 マニホールド部
24 ダイプレート部
24o オリフィス
3 冷却装置
3a ストランド冷却槽
3b ストランドガイド
3bv 噴霧装置
4 ペレタイザー
5 ペレット冷却機
6 ペレット選別機
7 外潤剤添加装置
8 ペレット搬送装置
9 金属選別機
10 異物選別機
11 切粉分離機
12 中間タンク
13 製品タンク
14 金属探知機
15 乾燥空気発生装置
16 脱水装置
D オリフィスの内径
Do オリフィスの内径
Dc オリフィスの内径
L オリフィスの長さ
Lo オリフィスの長さ
Lc オリフィスの長さ
θ1 角度
θ2 角度
θ3 角度
L1 オリフィスの開口部から冷却装置までの距離
図1
図2
図3