特許第6758117号(P6758117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン軽金属株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6758117-多機能スロープ装置 図000002
  • 特許6758117-多機能スロープ装置 図000003
  • 特許6758117-多機能スロープ装置 図000004
  • 特許6758117-多機能スロープ装置 図000005
  • 特許6758117-多機能スロープ装置 図000006
  • 特許6758117-多機能スロープ装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758117
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】多機能スロープ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 3/02 20060101AFI20200910BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20200910BHJP
   B60P 1/43 20060101ALI20200910BHJP
   A61G 3/08 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   B60R3/02
   B60P3/00 A
   B60P1/43 B
   A61G3/08
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-149384(P2016-149384)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2017-47886(P2017-47886A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2019年7月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-170446(P2015-170446)
(32)【優先日】2015年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】根尾 正志
(72)【発明者】
【氏名】川口 聡
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−276134(JP,A)
【文献】 実用新案登録第2582601(JP,Y2)
【文献】 米国特許第06484344(US,B1)
【文献】 特開2001−347889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/02
A61G 3/08
B60P 1/43
B60P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室に装着されるケース体と、当該ケース体から突没自在にスライドするパネル体を備え、
前記パネル体は前記ケース体から突出方向に全出した状態で、先端部が上下方向に回動可能であり、
前記パネル体を前記ケース体にスライド収納する際に、
前記パネル体の先端部側が前記ケース体に対して斜め上方に回動するのを許容する逃げ部を前記ケース体に設けてあることを特徴とする多機能スロープ装置。
【請求項2】
前記ケース体は上面部に荷物の載置部を有することを特徴とする請求項1記載の多機能スロープ装置。
【請求項3】
前記ケース体は内部にスライド自在のスライド部材を有し、
前記スライド部材とパネル体の端部が回動自在に連結されており、
前記スライド部材がパネル体の突出方向に完全に移動しないと、前記パネル体が上下方向に回動できないように当該パネル体が前記ケース体に支持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の多機能スロープ装置。
【請求項4】
前記パネル体が略水平状態に突出している状態では上面が平面デッキとして機能し、前記パネル体が全出し、先端部が地面に向けて回動した状態ではスロープとして機能することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多機能スロープ装置。
【請求項5】
前記パネル体は複数のパネル部材が相互にスライド自在に連結されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多機能スロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の荷室の有効利用を可能にしたスロープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子等を乗降させない時にスロープを車室内側に倒伏させることで荷室として使用可能にしたものが従来から公知である(特許文献1,2)。
しかし、スロープを車室内側に倒伏させる構造にあっては、スロープを車室内側に倒した裏面に荷物等を載せるものであり、そのままの状態ではスロープを使うことができず、やはり荷物を一旦降ろす必要がある。
なお、特許文献3にはバスの床面下部から昇降口ステップ外側に引き出すことができるスロープ部材を開示するが、スロープとしか使用できないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−141856号公報
【特許文献2】特開2013−060064号公報
【特許文献3】実用新案登録第2582601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、車両の荷室の有効利用が可能な多機能スロープ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る多機能スロープ装置は、車両の荷室に装着されるケース体と、当該ケース体から突没自在にスライドするパネル体を備え、前記パネル体は前記ケース体から突出方向に全出した状態で、先端部が上下方向に回動可能になっていることを特徴とする。
ここで、前記ケース体は上面部に荷物の載置部を有するのが好ましい。
ケース体は、例えば車両の後部に設けられている荷室のフロアーに装着できる。
このようにすると、車両の荷室を荷室として有効利用しながらスロープ装置を使用することができる。
【0006】
本発明においてパネル体の突出機構に制限はないが、例えば、前記ケース体は内部にスライド自在のスライド部材を有し、前記スライド部材とパネル体の端部が回動自在に連結されており、前記スライド部材がパネル体の突出方向に完全に移動しないと、前記パネル体が上下方向に回動できないように当該パネル体が前記ケース体に支持されている形態が例として挙げられる。
これにより、前記パネル体が略水平状態に突出している状態では上面が平面デッキとして機能し、前記パネル体が全出し、先端部が地面に向けて回動した状態ではスロープとして機能する。
ここで、前記パネル体は複数のパネル部材が相互にスライド自在に連結されていると、突出量を長くでき、スロープ面が緩やかになる。
本発明で、パネル体は概ね平面形状であればレール部等を有している形態も含まれる。
また、パネル体を前記ケース体にスライド収納する際に、前記パネル体の先端部側が前記ケース体に対して斜め上方に回動するのを許容する逃げ部を前記ケース体に設けてあってもよい。
このようにすると、パネル体をケース体に収納する際にパネル体の先端側を斜め上方まで持ち上げて、そのまま押し込むことで収納できる。
なお、ケース体にこの逃げ部を形成する方法としては、例えばケース体の上面部の先端部を切り欠く例が挙げられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る多機能スロープ装置は、車両の荷室をそのまま荷室として利用可能な状態でパネル体をケース体から出し入れでき、水平状態ではテーブル状の平面デッキとなり、パネル体を完全に引き出して、スロープ面を形成することで車椅子等の昇降が可能になることから多機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両の荷室のフロアー部にスロープ装置を設けた状態を示し、(a)はパネル体をケース体に収納した状態、(b)はパネル体を完全に引き出してスロープ状にした状態を示す。
図2】ケース体の内部構造を模式的に示し、(a)はスライド部材がケース体の奥部側に後退した状態、(b)はスライド部材がケース体の開口端部まで移動し、パネル体がスロープ面を形成した状態を示す。(c)パネル体の先端部を斜め上方に向けて回動し、ケース体に収納する状態を示す。
図3】パネル体が水平状態に維持されている例を示す。
図4】ケース体の上面部先端部に逃げ部を形成した例を示し、(c)にパネル体を収納する状態を示す。
図5】実施例2において(a)はデッキ状態、(b)は収納状態を示す。
図6】実施例2におけるスロープ状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る多機能スロープ装置の構造例を以下、図面に基づいて説明するが本発明はこれに限定されない。
【0010】
図1は、自動車(車両)の後部の荷室を模式的に示す。
本発明に係るスロープ装置10はケース体11と、このケース体に突没自在に収納されたパネル体14とを備える。
ケース体11は、上面部11aが荷物等を載置できるように概ね平面状の荷室として利用できれば限らずしも上面全体が平面状である必要はなく、また、フレーム状の枠体であってもよい。
ケース体11は、自動車の後部荷室に後付けで装置固定してもよく、また、荷室のフロアー部に埋設固定してもよい。
ケース体を荷室フロアー部に埋設すると、上面がフロアーの床面と概ね面一になり、広く活用できる荷室となる。
【0011】
ケース体11の内部構造例を図2に示す。
ケース体11は上面部11aと下面部11cとの左右サイド部を側面部11d,11eでつないだケース状になっており、内部には上面部11aの内側と下面部11cとの内側に沿って、前後方向にスライド移動するスライド部材12を有する。
ケース体11の内部の収納部11bにはパネル体14が収納される。
パネル体14はケース体11の開口端部11fから外側に突出可能になっており、突出先端部とは反対側になる後端部がスライド部材12と上下方向回動自在に軸着部13にて軸着されている。
【0012】
スライド部材には図示を省略したが、パネル体14を収納部11bに完全に収納した状態、パネル体14の先端部側を途中まで突出させた状態、及びパネル体14を完全に突出させた状態をロックするためのロック機構をケース体11との間に設けてある。
パネル体14が完全にケース体の開口部から突出していない状態では、図2(a)に示すようにパネル体14の下面部がケース体11の下面部11cに支持され、水平状態が維持され、図2(b)に示すようにスライド部材12がケース体11の開口端部11fまで完全に移動すると、パネル体14の先端部が軸着部13を支点にして、上下方向に回動する。
この際に本実施例では、パネル体14が2〜3枚の複数パネル14a,14b,14cが相互にスライド自在に連結されており、先端部がスライド伸長し地面(GL)に接地し、スロープ面を形成する。
本実施例ではパネル14a,14b,14cの左右サイド部にレール部114a,114b,114cを形成し、このレール部を介して相互に摺動嵌合させた例になっている。
本発明は、複数のパネルがスライド連結されていれば、このようなレール構造に限定されるものではない。
また、ベースパネルとなる第1パネル14aの上面から順次、第2パネル,第3パネルがスライドするように連結された場合には、ケース体の上面部11aの端部と、第1パネル14aの上面との間に段差を解消するフラッパーを設けてもよい。
ケース体11の開口端部11fと第1パネル14aとの間の段差を小さくする手段としては、第1パネル14aの下面側に順次第2パネル14b、第3パネル14cをスライド連結してもよい。
この場合に左右のレール部114aを設けないことで更に上記段差が小さくなる。
図3にパネル体14を構成する第1パネル14aをケース体11から途中まで引き出した状態を示す。
この状態では第1パネル14aの下面がケース体11の下面部11cに支持されているので水平状態が維持され、テーブル上のデッキ状態にある。
これにより、例えばアウトドアにおけるテーブルとして利用できる。
また、水平状態を安定させるために図示を省略したが、パネル14b,14c等の裏面から地面上に立設する支柱を起立可能に設けてもよく、また、パネル14b,14cの裏面と地面との間に台座を挿入してもよい。
パネル体14の第1パネル後端部が上下方向に回動自在になっているので、図2(c)に示すようにパネルの先端部を持ち上げて、やや斜め上方に回動させると、スライドパネルを縮小収納しやすい。
これにより、スロープ状態からパネル体を収納する際に腰をかがめた低い姿勢をとる必要がなく、立った姿勢で収納操作ができる。
【0013】
図4図6は、実施例2を示す。
なお、図4図6のうち、実施例1との相違点を説明する。
上記に記載したように、パネルの先端部をやや斜め上方に回動させて押し込むことができると、立ったままの姿勢で収納しやすいことから、図4に示すようにケース体11の上面部11aの開口先端部側を下面部より寸法dだけ切り欠いて、逃げ部11gを形成した例である。
このようにすると、図4(c)に示すようにパネルの先端部をfの方向、斜め上方に傾けたままfの方向にスライド及びケース体11の収納方向に押し込むのをこの逃げ部11gがパネル体との干渉を防ぐ。
なお、この逃げ部11gの先端部は、内側がR形状部111gにしてあり、パネル体を収納する際に摺動しやすくなっている。
また、逃げ部は、パネル体が斜め上方に回動するのを許容するものであれば、この切り欠き形状に限定されるものではなく、例えば弾性片やフラッパーにしてもよい。
【符号の説明】
【0014】
1 車両
2 荷室
10 スロープ装置
11 ケース体
11a 上面部
11b 収納部
11g 逃げ部
12 スライド部材
13 回動連結部
14 パネル体
図1
図2
図3
図4
図5
図6