(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る複合型の不織布を、図を参照して説明する。
図1は複合型の不織布CWebの一部を示した模式図である。
図1では、下側に位置している合成繊維ウエブSWによる合成繊維層(以下、合成繊維層SWと記載する場合もある)と、その上に配置されるパルプ繊維FPによるパルプ繊維層(以下、パルプ繊維層FPと記載する場合もある)との関係が理解し易いように模式的に示している。
本発明に係る不織布CWebは、上記合成繊維層SWと上記パルプ繊維層FPとが一体化してある複合型不織布である。そして、
図1では、上側に位置するパルプ繊維層FPの表面には複数の凹凸部が同様の形態で繰り返し形成されている形態を例示している。
【0018】
上記凹凸部は凹部DEと凸部PRとによるが、パルプ繊維層FPの表面に間隔をもって繰返し凹部(又は凸部)を形成すれば、その間には凸部(又は凹部)が相対的に形成されることになる。
図1では、凹凸部DE、PRを筋状に複数形成した場合の不織布CWebを例示している。この不織布CWebの製造方法については、後述の説明で明らかとする。
また、図示は省略するが、上記凹凸部DE、PRは縦横格子状(網目状、或いはメッシュ状)に複数形成されている形態としてもよい。この不織布CWebの製造方法についても後述の説明で明らかとする。
【0019】
上述した、本発明に係る不織布CWebは、表面にパルプ繊維が配置され、その表面は凹凸部を有するので表面積が増大することにより吸液性能が向上している。また、凸部ですくった汚れを凹部内に保持するという機能も備えるので拭取り性能も向上する。
よって、吸液性および拭取り性が向上したワイパーに好適な不織布となる。本不織布CWebは、新規な製造法によって得られ、ウエブ原反の形態的な特質として表面のパルプ繊維層に複数の凹凸部を備えている。よって、柔軟性、風合い、嵩高感においても優れた不織布となる。
なお、不織布CWebが吸液性能および拭取り性能を確保するという観点から、上記凹凸部DE、PRについて、前記凹部DEの底部と前記凸部PRの頂部との高低差寸法は例えば200〜800μmとするのが好ましい。これにより確実な拭取り性能を期待できる。
更に、凸部PRの幅は例えば0.5〜3.0mmであり、所定間隔(凹部DEの幅)を例えば0.3〜1.0mmとするのが好ましい。
【0020】
以下、上記不織布CWebの製造方法について説明する。製造方法には3つの好適な形態がある。先ず、不織布CWebの製造装置の主要構成について説明をした後に、各製造方法の特徴的構成について個別に説明する。
図2に示す複合型不織布の製造装置1は、上流側にパルプエアレイド部としてのエアレイド装置2、合成繊維層供給部としての合成繊維ウエブ供給装置3、そして積層形成部としてのサクション装置4が配設されている。サクション装置4はエアレイド装置2の下側に対向するように配置されている。
搬送方向TDで、これらの装置2、3、4より下流には、上流側から順に、水流交絡部としての水流噴射(ウオータジェット)装置5、脱水・乾燥部として乾燥装置6が配置されている。上記乾燥装置6の下流には連続して製造される複合型の不織布CWebを巻き取るための巻取装置7が更に設けてある。
【0021】
上記エアレイド装置2は、繊維同士が密集しシート状となっている原料パルプRPをパルプ繊維に解繊(開繊、とも称される)する解繊機21や、図示しない送風機を備えて解繊されたパルプ繊維FPをエアレイドホッパ23へと搬送するダクト22などを有している。エアレイドホッパ23は、その内部において、解繊されたパルプ繊維FPが分散しながら降下し、下面に設定した積層位置24に徐々に積み上がるように設計してある。
上記積層位置24の下側にはサクション装置4が対向配備してある。より詳細には、サクション装置4は装置本体41の上面にサクション部42を有しており、サクション部42が上記パルプ繊維FPに吸引力(負圧)を作用させるべく積層位置24に対して設定してある。
【0022】
また、サクション装置4の周囲にはウエブ搬送用の搬送ワイヤ43が配設してある。搬送ワイヤ43は、積層位置24においてパルプ繊維FPが載置可能で、これを下流側に搬送するように配置されている。ただし、パルプ繊維FPは直接、搬送ワイヤ43上に載置されない。これについては、後述の説明で明らかとなる。
搬送ワイヤ43はサクション部42の吸引力が、反対側(上側)に及ぶような目開き形態(メッシュ)で形成されている。
【0023】
なお、上記原料パルプRPとしては従来の公知のパルプを採用することができる。例えば、木材パルプを採用する場合には、材種としてラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、スプルース、ダグラスファー等のNBKPが好ましく、解繊性や歩留まり等を考慮して適宜に選定すればよい。
さらに、原料パルプRPは、例示のようにロールパルプの形態で供給される場合が多いので、上記解繊装置21としてハンマーミルやディスクミル型等を採用するのが好ましい。ここでの解繊処理は、必要に応じて一段或いは複数段としてもよい。
また、上記原料パルプRPと共に、コットン等の天然繊維や、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成繊維を追加配合するようにしてもよい。このような配合を採用する際には、別途エアレイドヘッドを追加してウエブ層を重ねるか、開繊したパルプを風送するダクトに別の繊維を混合する風送ラインを追加すればよい。
【0024】
上記エアレイド装置2の下側で、サクション装置4よりも上流側に、合成繊維ウエブ供給装置3が配置してある。この合成繊維ウエブ供給装置3には、予め準備された合成繊維ウエブSWがロール状とされてセットされている。合成繊維ウエブ供給装置3から合成繊維ウエブSWが引出され、上述した搬送ワイヤ43に乗って上記積層位置24へと搬送されるようになっている。
上記合成繊維ウエブSWとしては、スパンボンド法により形成された連続フィラメントのウエブを用いるのが好ましい。そして、ここでの合成繊維としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等から選択するのが好ましい。
【0025】
積層位置24に位置した、合成繊維ウエブSWの上に、前述したパルプ繊維FPが載置される(積み重ねられる)こととなり、合成繊維ウエブSWは搬送ワイヤ43上を下流側へ搬送される。
その際に、積層位置24ではサクション装置4のサクション部42による吸引力が搬送ワイヤ43を通過し、その上の合成繊維ウエブSWおよびパルプ繊維FPに作用する。よって、上記積層位置24を経て下流側に移動した積層状態のウエブは下側の合成繊維層(合成繊維ウエブSW)と、その上に載置されたパルプ繊維層(パルプウエブ)とが積層された状態の予備的積層体PWebとなる。
【0026】
上記した予備的積層体PWebは、サクション装置4の吸引力によって、吸引圧縮されたことにより積層状態が維持されている。このとき上側のパルプ繊維層はパルプ繊維FPが密にされた状態ではある。しかし、このまま予備的積層体PWebを下流側の水流噴射装置5内に搬送投入すると、水流(ウオータジェット)によってパルプ繊維FPの一部が舞い上がるおそれがある。
そこで、本製造装置1では、予備的積層体PWebを上下から挟んで合成繊維ウエブSW上でのパルプ繊維FPの載置状態を安定化させる為の挟持ローラ28、そして水流噴射装置5の上流側にパルプ繊維FPに飛散防止用に水分を付与するプレウエット装置30が配備してある。プレウエット装置30は、好適には、予備的積層体PWebの上方からウオータミストを吹き付ける噴霧ノズル31と予備的積層体PWebの下側(すなわち、合成繊維ウエブSWの下面)から吸引力を印加するサクション装置32とを含んで構成されている。
【0027】
上記挟持ローラ28とプレウエット装置30とは、水流噴射装置5内における水流交絡処理の円滑な実行のための前処理部と理解することができる。
図2に示した前処理部は、好適構成例であり、挟持ローラ28を省略した構成とすることも可能である。
【0028】
水流噴射装置5は、前処理部28、30の処理を受けた予備的積層体PWebに高圧のウオータジェットを吹き付けることによりパルプ繊維同士の交絡を促進する。これにより上側に位置するパルプ繊維層と下側に位置する合成繊維層との一体化が促進される。
図2で例示的に示している水流噴射装置5は、搬送方向TDに沿って多段(
図2では例示しているのは4段)に水流噴射ノズル51が配置されている。第1段目の水流噴射ノズルを低圧で吹き付ける事により、上述したプレウエット装置30の代用としてもよい。
図2では、搬送方向TDに対して直角な方向(装置1の幅方向)におけるノズルの様子は図示していないが、幅方向においても複数の水流噴射ノズルが配置してある。
【0029】
上記水流交絡処理をする際の水圧は、パルプ繊維層(ウエブ)と合成繊維層(ウエブ)の坪量を勘案して設定するのが望ましい。例えば、1〜30MPaの範囲において選択するのが好ましい。
【0030】
そして、上記水流噴射ノズル51と対向するように、サクション装置52が配設してある。水流噴射ノズル51から出る高圧のウオータジェットを上側に位置しているパルプウエブに吹き付けつつ、下側に位置している合成繊維層の下側にサクション装置52の吸引力を作用させる。水流噴射ノズル51とサクション装置52との協働作用によって、パルプウエブのパルプ繊維が下側の合成繊維ウエブの繊維に入り込んだ状態や、合成繊維ウエブを貫通して反対側にまで至った状態などが形成されると推定される。その作用により2つの層の一体化が促進される。
【0031】
水流噴射装置5にも、搬送ワイヤ55が配設してある。搬送ワイヤ55は前処理部28、30の下流で予備的積層体PWebを受けて、水流噴射装置5内へと搬送する。搬送ワイヤ55は水流噴射装置5の水流噴射ノズル51とサクション装置52との間を、上流側から下流に向かって通過するように配設されている。
よって、搬送ワイヤ55上を搬送される予備的積層体PWebは、搬送方向TDで下流に向かう程に、より多くの水流交絡処理を受けることになり、水流噴射装置5を出るときには上側のパルプ繊維層と下側の合成繊維ウエブとの十分な交絡処理が実現される。
水流噴射装置5を出た直後にあっては、ウエブはウエット状態であり、乾燥前にあってはパルプ繊維同士の結合は十分に確立されてはいない。
【0032】
そこで、水流噴射装置5の下流側にウエット状態のウエブから水を除くための乾燥装置6が配備してある。ここで例示する乾燥装置6は好適にはエアスルードライヤである。回転可能なドライヤ本体61は筒状体であり、その周表面には多数の貫通孔が設けてあり、図示しない熱源で加熱された熱風がドライヤ本体61の中心部側から外周に向かって放射状に吹き出す構成である。よって、ウエット状態のウエブが乾燥装置6から出るときには十分に乾燥されて繊維同士の結合も完了し、製品として完成した複合型の不織布CWebとなる。このように連続的に製造される複合型の不織布CWebは巻取装置7のローラ71に巻き取られて一連の工程が完了する。
【0033】
以上、本発明に係る複合型の不織布を製造するための、製造装置の基本構成について説明した。以下では、パルプ繊維層に凹凸部を形成するための具体的な構成について説明する。
前述したように、不織布CWebを製造するための製造装置1は、水流交絡処理を行う水流噴射装置5を含んでおり、水流噴射ノズル51と、これに対向するように配置したサクション装置52との間に、予備的積層体PWebを投入して搬送することにより交絡処理が実現される。
本発明の製造方法は、水流噴射装置5から出たウエット状態のウエブ(原反)がその特質として、表面のパルプ繊維層に凹凸部が形成されている不織布CWebを、簡易な構成で製造することを可能としている発明である。以下、3つの発明を順に説明する。
【0034】
図3は、パルプ繊維層FPに凹凸部DE、PRが形成されている複合型不織布を製造するための、第1の方法を説明するために示した模式図である。
図3は水流噴射装置5の一部構成と、これに関連している周部を拡大して示している。具体的には、搬送方向TDに直角方向に配置した複数の水流噴射ノズル510、搬送ワイヤ55、そして搬送ワイヤ55の下側に配置したサクション装置52および搬送ワイヤ55上に載置されている前記予備的積層体PWebの様子を、
図3は模式的に示している。
図3で示す構成では、水流噴射ノズル510はそのノズル直径が例えば0.15〜0.25mmに設定されている。一般的な従来型の水流噴射ノズルは、前記水流噴射ノズル510よりは小径で例えばノズル直径が0.05〜0.15mmである。噴射水量はノズル径の2乗に比例するので、上記水流噴射ノズル510は従来よりも多くの水を吐出することができる。
後述するように、従来よりも大きい直径(大径)の水流噴射ノズル510と従来型の水流噴射ノズルとを併用して水流交絡を実施するときには、水流噴射ノズル510は従来型の水流噴射ノズルと比較して1.2〜2.0倍の直径に設定しておくのが好ましい。これは、水流噴射ノズル510の直径を基準に見たときには、小径となる従来型の水流噴射ノズルの直径は0.5〜0.83倍のものを採用するのが好ましいことになる。
そして、上記水流噴射ノズルの水圧は上述したように1〜30MPaとするのが望ましく、直径が相対的に大きな水流噴射ノズル510を採用したときには、従来よりも配置のピッチを広げて、幅当りの配置本数を減らして設定すればよい。
【0035】
一般的に、合成繊維SWの下側にサクション装置52が配置されているので余剰の水を除去しながら、水流噴射ノズルからの水流を予備的積層体PWebに貫通することで、この水流に合わせて繊維同士を交絡させることができる。その際に、本発明では水流噴射ノズル510を従来よりも直径が大きい(太い)ノズルを採用しているので、水流の中心部のパルプ繊維層FPを周辺に弾く(はじく)或いは排除する状態が生じる。より詳細には、水流噴射ノズル510の下側にはサクション装置52が配置されているが、従来よりも太い水流の場合、部分的に下からの吸引力で対応できない。これにより、予備的積層体PWebの上側にある相対的に剛性の低いパルプ繊維層FPには、水流噴射ノズル510の対応する位置に凹状が形成される。そして、予備的積層体PWebは搬送ワイヤ55上を搬送方向TDへ搬送されているので、
図3で示すように下流に向かって複数の筋状の凹凸部(凹部DE、凸部PR)が形成されることになる。
【0036】
図3による水流噴射ノズル510は、従来型の水流噴射ノズルよりも大型であり、従来型の水流噴射ノズルよりも減数され、間隔を広く取って配置されることになる。この間隔が凹部DEの間隔に対応し、その間に凸部PRが形成されることになる。なお、
図3は発明を理解し易いように、パルプ繊維層FPの様子を模式的に示している。
【0037】
先の
図2で示しているように水流噴射装置5における、水流噴射ノズル51とサクション装置52とは搬送方向TDに沿って多段(
図2での例示は4段)に形成してある。
図3による発明を実施する場合にも、水流噴射ノズル510を
図2で示すように多段に配置して、予備的積層体PWebの同じ位置に向けて水流噴射ノズル510によるウオータジェットを繰り返し吹き付けることで凹部DEを確実に形成できる。凹部DEの形成をより確実とするため水流噴射ノズル510の段数を必要により任意に設定してよいことは勿論である。この場合、ノズルの位置が微調整できる設備であることが好ましい。
【0038】
ところで、
図2で示した形態例のように水流噴射ノズルを4段とした場合、次のように処理するのが好ましい。
最初の1段目の水流噴射ノズル51については、従来型のもの(
図3の水流噴射ノズル510より小径のもの)を用いて、パルプ繊維層FPの全面に向けてウオータジェットを吹付ける水流交絡処理(第1の水流交絡)を行い、全体のパルプ繊維の交絡を行う。
次に、第2、3段目の水流噴射ノズル51については、
図3で説明したノズル直径を0.15〜0.25mmとした大きな直径の上記水流噴射ノズル510を用いて、凹凸部を形成するための水流交絡処理(第2の水流交絡処理)を実行する。
そして、最後の第4段目の水流噴射ノズル51については、最初の第1段目と同様に、従来型の小径の水流噴射ノズルを用いて、パルプ繊維層FPの全面に向けてウオータジェットを吹き付ける水流交絡処理を実行するようにするのが、より好ましい。
【0039】
上記のように従来型の水流交絡処理である第1の水流交絡処理を最初と最後とに実行すると、初期の未固定の繊維が飛散することを防止できるため、より明瞭なパターンを形成することができる。そして、パルプ繊維層FPと合成繊維SWとの交絡を最後に全体的に行うことができるので、より強固な複合型不織布CWebが得られる。
なお、上記第2の水流交絡処理(ノズル径の大きい水流交絡処理)を先に行うと大径のノズルにより未交絡パルプ繊維が飛散する可能性があり、これにより外観が悪化して凹凸パターンを乱してしまうことが懸念される。また、上記第2の水流交絡処理を最後とするのも好ましくない。凸部に移動したパルプ繊維の交絡が不十分な状態で残り、ウエブ全体として交絡が完了していない状態となるためである。
【0040】
図4は、第2の方法を説明するために示した図である。
図4も水流噴射装置5の一部構成とこれに関連した周部を拡大して示している。搬送方向TDに直角方向に配置した複数の水流噴射ノズル51、搬送ワイヤ55、そして搬送ワイヤ55の下側に配置したサクション装置52および搬送ワイヤ55上に載置されている前記予備的積層体PWebの様子を模式的に示している点は、
図4も
図3と同様である。
【0041】
ここでは、第1の方法と異なる点を中心に説明する。
図4で示したサクション装置52には、吸引力を作用させるために設けてある開口部520に不透水部521が設けてある。この不透水部521は、吸引力が作用しないように配置された邪魔板として機能する。不透水部521は搬送方向TDと直角な方向にて間隔もって複数配置されている。不透水部521が存在する部分は、予備的積層体PWebに吸引力が作用しない。その一方、不透水部521が存在しない部分には吸引力が作用する。これにより吸引力が作用している不透水部521の両側にパルプ繊維が逃げるような(回り込むような)状態が形成される。その結果、不透水部521に対応する位置にあるパルプ繊維層は凹部DEとなり、不透水部521の間で吸引力が作用する位置にあるパルプ繊維層は凸部PRとなる。
上記凹部DEを形成するのに好ましい不透水部521は例えば幅1mm以上であり、間隔3〜5mmとして設定するのが好ましい。
なお、上記サクション装置52による吸引力(負圧)は例えば0.01〜0.05(Mpa)とするのが望ましい。ここで、0.01MPaは、100mbar或いは75mmHgに等しい。
【0042】
図4の場合も、
図3の場合と同様に、同じ位置に不透水部521が形成してあるサクション装置52を搬送方向TDにおいて多段に配置して、確実に凹凸部を形成するようにするのが好ましい。
そして、最初と最後とに位置するサクション装置52については、不透水部521を設けず、予備的積層体PWebの全体に吸引力を作用させてパルプ繊維層FPと合成繊維SWとの交絡を全体的に実現するようにするのが好ましい。この点は、
図3で示した第1の製造法で最後にパルプ繊維層FP上の全面にウオータジェットを吹き付けているのと同じ趣旨である。
なお、
図4で例示している水流噴射ノズル51は従来型であり、そのノズル直径が0.05〜0.15mmで、パルプ繊維層FP上の全面にウオータジェットを吹き付けるものでよい。
以上のように、
図4に示したサクション装置52を用いた製造方法によっても、パルプ繊維層の表面に凹凸部が形成されている複合型不織布を製造できる。
【0043】
更に、第3の製造法について説明する。従来において、搬送ワイヤは複数の縦糸と横糸とを網目状(メッシュ状)に配置し、同じ太さの糸により構成するのが一般的であった。第3の製造法は、一般的な概念の搬送ワイヤとは異なる新規の搬送ワイヤを用いた水流交絡処理を行って複合型不織布を製造する。
図5は、第3の製造法で採用できる、一例である搬送ワイヤ550の一部を拡大した図を示している。この搬送ワイヤ550は複数の縦糸551の内で所定本数毎(例示では5本毎)に直径が他の縦糸よりも太い縦糸551Bが配置してある。なお、縦糸551は搬送方向TDと平行である。
【0044】
同様に、この搬送ワイヤ550は複数の横糸552の内で所定本数毎(例示では5本毎)に直径が他の横糸よりも太い横糸552Bが配置してある。
ここで、搬送ワイヤ550の縦糸551、横糸552は一般的な直径0.2〜0.6mmであるが、上記太い縦糸551B、太い縦糸551Bは例えば直径1mm以上とするのが好ましい。或いは、他の糸の直径と比較して太い糸の直径を例えば3〜5倍に設定するのが好ましい。これにより、パルプ繊維層の表面に凹凸部を確実に形成することができる。この場合、縦糸と横糸のそれぞれの開口率は10%以上とすることが好ましく、20〜30%とすることがより好ましい。ここでの開口率(%)は1cm内に存在する糸の本数と、その糸の直径に基づいて定義される。具体的には、開口率(%)は式[(1−糸本数×糸径)/1]×100(%)により算出できる。
【0045】
上記のような搬送ワイヤ550を用いた水流噴射装置5により水流交絡処理を行うと、太い糸が存在する位置(領域)に対応する位置にあるパルプ繊維層には凹部が形成される。太い糸の上に存在するパルプ繊維層への吸引力の作用が制限されるので、吸引力が作用している両側へパルプ繊維が逃げるような(回り込むような)状態が形成される。その結果として、太い糸の両側でパルプ繊維層に凸部が形成され、太い糸が存在する位置に対応して凹部が形成されることになる。
以上で説明したように、水流噴射装置5に用いる搬送ワイヤを工夫することによっても、パルプ繊維層に凹凸部が形成されている、複合型不織布を製造することができる。
【0046】
図5で示した搬送ワイヤ550は、縦および横の両方に太い糸を配置してある場合を例示しており、この搬送ワイヤ550を用いた場合には縦横格子状となった凹凸部がパルプ繊維層の表面に形成される。
搬送ワイヤ550で縦糸側にのみ太い糸を配置した場合には、前述した第1、第2の製造方法と同様に搬送方向TDに沿った筋状の凹凸部をパルプ繊維層の表面に形成できる。
上記とは逆に、搬送ワイヤ550で横糸側にのみ太い糸を配置した場合には、前述した第1、第2の製造方法では作製できない、搬送方向TDと直角な方向に沿った(直角な方向に平行である)筋状の凹凸部をパルプ繊維層の表面に形成することもできる。
なお、
図5の糸の配置は単なる例示である。搬送ワイヤ550を編機で作製する場合に、横糸を所定本数毎に変更すると製造工程が極めて煩瑣になる。よって、全ての横糸を前述した太糸としてもよい。この場合、太糸は所定間隔をもって配置されるので、その太糸の間に相当する位置に対応してパルプ繊維層の表面に凸部が形成されることになる。
【0047】
上述した第1〜第3の製造法によると、基本とした不織布製造装置に簡易な変更を加えるだけで、パルプ繊維層の表面に凹凸部が形成された複合型不織布を製造できる。
なお、第1〜第3の製造法の説明では、凹凸部が同じパターンで繰り返される場合を図示しているが、これは単なる例示である。不織布の製品要求により、凹部と凸部とを同じ幅としたり、互いに異なる幅とする場合、また凹部および凸部とを不規則に変更してある点をデザインとした不織布を製造したいという場合もある。このような場合には、前述した水流噴射ノズル(510)、不透水部(521)および搬送ワイヤ(550)における太い糸(551B、552B)の位置や配列の設定を適宜に変更して対応すればよい。
さらに、上記では、第1、第2、第3の製造方法を個別に説明したが、必要によりこれらを適宜に組合せてパルプ繊維層の表面に凹凸部のある複合型不織布を製造してもよい。方法を組合せて製造することで、より顕著な凹凸部をパルプ繊維層に形成できる。
【0048】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができることは言うまでもない。