(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758132
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】芝刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/64 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
A01D34/64 A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-172108(P2016-172108)
(22)【出願日】2016年9月2日
(65)【公開番号】特開2018-33431(P2018-33431A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】白神 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】吉田 征矢
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−302022(JP,A)
【文献】
特開平11−022464(JP,A)
【文献】
特開2011−188823(JP,A)
【文献】
米国特許第06167976(US,B1)
【文献】
実開平02−052923(JP,U)
【文献】
中国特許出願公開第102619605(CN,A)
【文献】
特開平09−086306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00−34/90
F01P 5/06
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の主フレームと、
左右一対の前記主フレームに搭載されるエンジンと、
前記エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、
前記ラジエータに冷却風を供給する冷却ファンと、
前記エンジン、前記ラジエータ及び前記冷却ファンを収容するボンネットと、を備えており、
左右一対の前記主フレームの間に、地面に向かって流れる冷却排風の風向きを変更する風向変更部材が設けられ、
前記風向変更部材は、左右一対の前記主フレームのうち一方の主フレームから他方の主フレームに向かって平面的に延びる板状部材であり、
前記風向変更部材は、前記風向変更部材の後端部が前記冷却ファンの後端部よりも後側に配置され、かつ、前記他方の主フレームに近付くほど下方に位置するように傾斜し、上下方向において、前記エンジンの下端よりも下側に位置している芝刈機。
【請求項2】
前記風向変更部材のうち前記他方の主フレーム側の端部には、下方に折れ曲がる折れ曲り部が形成されている請求項1に記載の芝刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の主フレームと、左右一対の主フレームに搭載されるエンジンと、エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、ラジエータに冷却風を供給する冷却ファンと、エンジン、ラジエータ及び冷却ファンを収容するボンネットと、を備えている芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような芝刈機として、例えば、特許文献1に記載の芝刈機が既に知られている。
特許文献1に記載の芝刈機は、左右一対の主フレーム(文献では「後フレーム」)と、左右一対の主フレームに搭載されるエンジンと、エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、ラジエータに冷却風を供給する冷却ファンと、エンジン、ラジエータ及び冷却ファンを収容するボンネットと、を備えている。特許文献1に記載の芝刈機では、ボンネット内のラジエータやエンジン等が、冷却ファンによる冷却風によって冷却される。ラジエータやエンジン等を冷却した後の冷却風(冷却排風)は、ボンネットの外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−47023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の芝刈機では、冷却排風が左右一対の主フレームの間から地面に向かって流れると、冷却排風が地面の芝に直接当たることにより、芝が立ち枯れしてしまう虞がある。
【0005】
上記状況に鑑み、冷却排風による芝の立ち枯れを防止可能な芝刈機が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、
左右一対の主フレームと、
左右一対の前記主フレームに搭載されるエンジンと、
前記エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、
前記ラジエータに冷却風を供給する冷却ファンと、
前記エンジン、前記ラジエータ及び前記冷却ファンを収容するボンネットと、を備えており、
左右一対の前記主フレームの間に、地面に向かって流れる冷却排風の風向きを変更する風向変更部材が設けられ、
前記風向変更部材は、左右一対の前記主フレームのうち一方の主フレームから他方の主フレームに向かって平面的に延びる板状部材であり、
前記風向変更部材は、
前記風向変更部材の後端部が前記冷却ファン
の後端部よりも後側に配置され、かつ、前記他方の主フレームに近付くほど下方に位置するように傾斜し
、上下方向において、前記エンジンの下端よりも下側に位置していることにある。
【0007】
本特徴構成によれば、冷却排風が左右一対の主フレームの間から地面に向かって流れても、冷却排風の風向きが風向変更部材によって変更されるため、冷却排風が地面の芝に直接当たることがない。これにより、冷却排風による芝の立ち枯れを防止することができる。
【0008】
【0009】
また、本特徴構成によれば、刈草等が風向変更部材の上面に落下しても、風向変更部材の傾斜に沿って地面に落下することになるため、刈草等が風向変更部材の上面に溜まり難くなる。
【0010】
さらに、本発明において、
前記風向変更部材のうち前記他方の主フレーム側の端部には、下方に折れ曲がる折れ曲り部が形成されていると好適である。
【0011】
本特徴構成によれば、風向変更部材のうち他方の主フレーム側の端部における角部が、丸みを帯びることになる。これにより、風向変更部材の周囲の部材(例えば、ハーネス等)が、風向変更部材のうち他方の主フレーム側の端部(角部)に接触しても、当該周囲の部材が損傷し難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】ボンネットの内部構造を示す左側面図である。
【
図8】シートベースの揺動構造を示す斜視図である。
【
図9】シートベースの揺動構造を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。なお、以下の説明では、
図1及び
図2に示す矢印Fの方向を「機体前側」、矢印Bの方向を「機体後側」、
図2に示す矢印Lの方向を「機体左側」、矢印Rの方向を「機体右側」とする。
【0014】
〔芝刈機の全体構成〕
図1及び
図2には、ミッドマウント式の芝刈機(乗用型芝刈機)を示している。本芝刈機には、機体フレーム1が備えられている。従動輪(キャスタ式)である左右一対の前輪2F及び駆動輪である左右一対の後輪2Bが設けられている。前輪2Fと後輪2Bとの間には、モア3が設けられている。機体フレーム1の後端部には、モア3からの刈草を回収する集草容器4が着脱可能に設けられている。
【0015】
機体フレーム1の前後中央部には、運転部5が設けられている。運転部5には、運転者が着座する運転座席6や左右一対の操縦レバー7が設けられている。運転部5の後部には、略門型形状のロプス8が設けられている。運転部5の後方には、ボンネット9が設けられている。ボンネット9には、エンジンEやラジエータ10、冷却ファン11が収容されている。運転部5の下方には、エンジンEからの動力を変速する変速装置12が設けられている。
【0016】
〔ボンネットの内部構造〕
図3及び
図4に示すように、エンジンEの前方には、エンジンEの冷却水を冷却するラジエータ10が設けられている。エンジンEの前部には、ラジエータ10に冷却風を供給する冷却ファン11が設けられている。エンジンEの後部には、エンジンEの排気を浄化する排気浄化装置(例えば、DPF)13が設けられている。エンジンEの左側部には、オルタネータ14が設けられている。エンジンEの後部を覆うように、後フレーム15が設けられている。ボンネット9の前壁部には、通気性を有するネット16が取り付けられている。ボンネット9の後壁部には、通気可能なように、複数のスリット9aが形成されている。
【0017】
〔フレーム構造〕
図3から
図7に示すように、機体フレーム1は、機体前後方向に延びる左右一対の主フレーム17を有している。エンジンEは、マウントゴム18を介して左右一対の主フレーム17に搭載されている。左側の主フレーム17の後端部と右側の主フレーム17の後端部とに亘って、後プレート19が設けられている。主フレーム17には、前マウントブラケット20及び後マウントブラケット21が設けられている。前マウントブラケット20及び後マウントブラケット21には、マウントゴム18が載置固定されている。左側の後マウントブラケット21と右側の後マウントブラケット21とに亘って、プレート22が設けられている。
【0018】
左側の前マウントブラケット20は、左側の主フレーム17の左側面(機体外面)に固定(例えば、溶接固定)されている。左側の後マウントブラケット21は、左側の主フレーム17の後端面に固定(例えば、溶接固定)されている。右側の前マウントブラケット20は、右側の主フレーム17の左側面(機体内面)に固定(例えば、溶接固定)されている。右側の後マウントブラケット21は、右側の主フレーム17の後端面に固定(例えば、溶接固定)されている。
【0019】
ロプス8を支持する左右一対のロプス支持フレーム23が設けられている。ロプス支持フレーム23は、上下一対のブラケット24と、プレート25と、を有している。プレート25の上端部と主フレーム17とに亘って、補強ブラケット26が設けられている。
【0020】
ブラケット24は、プレート25の前面に固定(例えば、溶接固定)されている。左側のプレート25は、左側の主フレーム17の右側面(機体内面)に固定(例えば、溶接固定)されている。右側のプレート25は、右側の主フレーム17の左側面(機体内面)に固定(例えば、溶接固定)されている。左側のプレート25の下端部と右側のプレート25の下端部とに亘って、下プレート27が設けられている。下プレート27の左右両端部は、それぞれ、左側のプレート25及び右側のプレート25にボルト28によって固定されている。
【0021】
エンジンEにおける左側壁WL及び右側壁WRには、それぞれ、左エンジン支持フレーム29L及び右エンジン支持フレーム29Rがボルト30によって固定されている。右エンジン支持フレーム29Rの前端部には、マウントゴム18が取り付けられる取付ステー31が設けられている。左エンジン支持フレーム29Lの前端部には、マウントゴム18が取り付けられる取付ステー32が設けられている。左エンジン支持フレーム29Lの左側面(機体外面)には、プレート33が固定(例えば、溶接固定)されている。プレート33は、機体前後方向に平面的に延びている。
【0022】
〔風向変更板〕
図3から
図7に示すように、左右一対の主フレーム17の間に、地面に向かって流れる冷却排風(ラジエータ10やエンジンE等を冷却した後の冷却風)の風向きを変更する風向変更板34(本発明に係る「風向変更部材」に相当)が設けられている。風向変更板34は、左右一対の主フレーム17の間において、右側の主フレーム17側に設けられている。つまり、風向変更板34は、左右一対の主フレーム17の間の左右中心よりも右側に設けられている。風向変更板34は、エンジンEにおける右側壁WRよりも右側に位置する状態で、右側の主フレーム17に片持ち状に支持されている。風向変更板34は、右側の主フレーム17の左側面(機体内面)にボルト35によって固定(前後二箇所)されている。
【0023】
風向変更板34は、上下方向において、エンジンE(オイルパンOP)の下端よりも下側に位置している。風向変更板34は、機体前後方向において、プレート25と後プレート19との間の略全領域に亘るように延びている。風向変更板34の前端部は、エンジンEにおける前壁FWよりも前側に延びている。風向変更板34の前端部は、平面視において、右側の前マウントブラケット20及び右側の補強ブラケット26と重複している。風向変更板34の後端部は、エンジンEの後部に対応する位置まで後側に延びている。
【0024】
風向変更板34は、平面部34aと、鉛直面部34bと、を有している。平面部34aは、右側の主フレーム17から左側の主フレーム17に向かって平面的に延びている。鉛直面部34bは、平面部34aの右端部から下方に延びている。鉛直面部34bの下端部は、右側の主フレーム17の下端よりも下側に食み出していない。鉛直面部34bには、ボルト35に対応する溶接ナット36が設けられている。平面部34aは、左側の主フレーム17に近付くほど下方に位置するように傾斜(つまり、左下がりに傾斜)している。
平面部34aの左端部には、下方に折れ曲がる折れ曲り部34cが形成(折り曲げ加工)されている。平面部34aと折れ曲り部34cとの角部は、丸みを帯びている。
【0025】
このような構成によれば、
図3に示すように、冷却ファン11が回転することにより、外気がネット16を介してボンネット9内に導入されると、ボンネット9内のラジエータ10やエンジンE等が、冷却ファン11による冷却風によって冷却される。ラジエータ10やエンジンE等を冷却した後の冷却風(冷却排風)は、スリット9aからボンネット9の外部に排出される(
図3における冷却排風A1参照)。
【0026】
ここで、冷却排風(
図3及び
図4における冷却排風A2参照)が右側の主フレーム17とエンジンEにおける右側壁WRとの間から地面に向かって流れても、冷却排風の風向きが風向変更板34によって変更されるため、冷却排風が地面の芝に直接当たることがない。これにより、冷却排風による芝の立ち枯れを防止することができる。すなわち、冷却排風が風向変更板34に当たることにより、冷却排風が拡散されることになるため、冷却排風の風速や温度の低減を図ることができる。なお、
図3及び
図4における冷却排風A1、A2は、例示であり、実際の冷却排風の流れとは多少異なる場合がある。
【0027】
〔シートベースの揺動構造〕
図8及び
図9に示すように、運転座席6は、シートベース37に支持されている。シートベース37は、シートベース37の内部を覆う閉位置とシートベース37の内部を開放する開位置とに亘って前支点X1周りで上下揺動可能である。
【0028】
シートベース37を閉位置に固定可能なロック機構38が設けられている。ロック機構38は、左右一対のロックフック39と、ロックスプリング40と、左右一対の操作レバー41と、を有している。
【0029】
ロックフック39は、シートベース37に係合する係合位置とシートベース37と係合しない非係合位置とに亘って機体左右方向に延びる軸心X2周りで揺動可能である。ロックフック39がシートベース37に係合することにより、シートベース37が閉位置に固定される。左側のロックフック39と右側のロックフック39とは、一体的に揺動可能なように、ロックロッド42によって連結されている。ロックスプリング40は、ロックフック39を軸心X2周りで係合位置側に揺動するように付勢している。
【0030】
左側の操作レバー41及び右側の操作レバー41は、それぞれ、ロックロッド42の左右両端部に固定されている。操作レバー41によってロックロッド42を介してロックフック39を軸心X2周りで非係合位置側に揺動するように操作可能である。
【0031】
シートベース37と主フレーム17とに亘って、シートベース37を前支点X1周りで開位置側に上方揺動するように付勢するダンパ(例えば、ガスダンパ)43が設けられている。ダンパ43のうちシートベース37側の端部は、ステー44に取り付けられている。ステー44には、ダンパ43のうちシートベース37側の端部を取り付けるための取り付け孔44aが複数設けられている。ダンパ43のうちシートベース37側の端部を取り付ける取り付け孔44aを変更することにより、ダンパ43の付勢力(補助力)を調整することができる。例えば、ロック機構38によるシートベース37の閉位置への固定を解除した状態で、シートベース37が自動的に上方揺動しないように、ダンパ43の付勢力(補助力)を設定することができる。
【0032】
このような構成によれば、例えば、シートベース37の内部のメンテナンスを行う際に、ロック機構38によるシートベース37の閉位置への固定を解除すれば、ダンパ43の補助力によって、シートベース37を開位置まで容易に揺動させることができる。本実施形態では、ダンパ43の伸び限界によって、シートベース37が開位置に固定されるようになっているが、シートベース37を開位置に固定可能なロック機構を別に設けてもよい。
【0033】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、風向変更板34は、左右一対の主フレーム17の間において、右側の主フレーム17側に設けられている。しかし、これに代えて或いはこれと共に、風向変更板34は、左右一対の主フレーム17の間において、左側の主フレーム17側に設けられていてもよい。また、左右一対の主フレーム17に亘る風向変更板が設けられていてもよい。
【0034】
(2)上記実施形態では、風向変更板34(平面部34a)は、左側の主フレーム17に近付くほど下方に位置するように傾斜しているが、このように傾斜していなくてもよい。
【0035】
(3)上記実施形態では、風向変更板34(平面部34a)の左端部に、折れ曲り部34cが形成されているが、折れ曲り部34cが形成されていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ミッドマウント式の芝刈機の他、フロントマウント式の芝刈機にも利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
9 ボンネット
10 ラジエータ
11 冷却ファン
17 主フレーム
34 風向変更板(風向変更部材)
34c 折れ曲り部
E エンジン