(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例1)  
図1ないし
図10に、本発明をシリンダー形状のかみそりヘッドを有するスティック型の電気かみそりに適用した実施例1を示す。本実施例における前後、左右、上下とは、
図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2に示すように、本実施例に係る電気かみそりは、グリップを兼ねる長軸状の本体ケース1と、本体ケース1の一端に突出して設けられる長軸状のかみそりヘッド2を備えている。本体ケース1は基部ケース3と、基部ケース3に対して回動軸(屈曲軸)4で揺動可能に連結されるヘッド側ケース5で構成されており、基部ケース3の内部に電池6と制御基板7が収容され、ヘッド側ケース5の内部にモーター8と減速ユニット9が配置されている。基部ケース3の前面には、モーター8を起動ないし停止させるスイッチボタン10が設けられている。基部ケース3およびヘッド側ケース5の左右側面には、本体ケース1の軸線Pに沿うリブ状の指掛け突起11が形成されている。図示していないが、減速ユニット9は遊星歯車型の減速ユニットからなり、モーター8の回転動力を4分の1まで減速して出力する。
 
【0018】
  図3および
図6に示すように、かみそりヘッド2には長軸状の可動刃14と、可動刃14の周囲を囲む長軸状の固定刃15と、可動刃14を軸支する可動刃支軸(支軸)16と、可動刃支軸16に装着されて可動刃14および固定刃15を抜止め保持するヘッドキャップ17などが設けられている。可動刃14は先のモーター8の動力で回転駆動される円筒状の可動刃軸18と、可動刃軸18の周囲の一端寄りから他端寄りにわたって装着固定される4個の小刃19と、可動刃軸18の下端に固定される従動ギヤ20と、可動刃軸18の上端に固定されるスラストリング21を備えている。小刃19は、円筒状の固定刃15の周面全体に形成される切刃44と協同してひげを切断する。可動刃軸18および小刃19は、それぞれステンレス材で形成されており、各小刃19の装着基端19aの複数個所が可動刃軸18に溶接固定されている。この溶接個所(固定構造)を符号22で示している。以上のように、この実施例における電気かみそりにおいては、円筒状(シリンダー状)に形成した固定刃15の内部に可動刃14を設けて、その小刃19の先端が固定刃15の内面に対して摺動することでひげ切断を行う。各小刃19の装着基端19aの固定構造としては、溶接以外にねじ締結構造や、かしめ固定構造であってもよい。上記の従動ギヤ20は可動刃軸18と別体である必要はなく、可動刃軸18と一体に形成してあってもよい。可動刃支軸(支軸)16は、可動刃14を軸支している構成に限定されるものではなく、後述するように固定刃15を両持ち支持するためだけに設けられる構成であってもよい。この場合、支軸16は断面円形の棒状形態に限らず、断面長方形状の棒状形態や断面扇状の棒状形態であってもよい。
 
【0019】
  図4および
図5に示すように、小刃19の先端には連続波形の切刃25が形成されており、切刃25の凹み縁に連続する小刃壁に湾曲状の開口26が断続的に形成され、開口26の毛屑集積部27側の開口縁に別の切刃28が形成されている。湾曲する切刃28の殆どの部分は、可動刃軸18の軸線(長軸)Pに対して傾斜している。連続波形の切刃25突縁端(先端)を結ぶ線は、可動刃軸18の軸線と平行に設けられている。小刃19の先端に連続波形の切刃25を形成すると、小刃19の先端を固定刃15に対して密着でき、さらに、切刃25の傾斜する刃部分で引切りを行えるので、ひげ切断を効果的に行うことができる。同様に、湾曲する切刃28においてひげを引切りできるので、ひげを切れ味良くシャープに切断できる。また、切刃25の凹み縁に沿って湾曲状の開口26を形成すると、固定刃15の内面に付着している毛屑を開口26から導入して毛屑集積部27に保持できる。従って、毛屑が切刃25の外へ放出されて、固定刃15の刃穴45から飛散するのをよく防止できる。さらに、小刃19の刃先に設けた切刃25と開口26に設けた切刃28によるひげの捕捉機会が増えるので、ひげ切断をさらに効果的に行うことができる。
 
【0020】
  上記のように、小刃19の先端と、開口26の毛屑集積部27側の開口縁のそれぞれに切刃25・28を形成すると、小刃19の先端に限って切刃25が設ける場合に比べて、ひげの切断機会を増やして、その分だけひげ切断を効果的に行うことができる。
図1に示すように、小刃19の先端に設けた切刃25の刃先角度θ1は、開口26側の切刃28の刃先角度θ2より大きく設定されている(
図1参照)。これは、切断されにくいひげを小刃19の先端の切刃25で捕捉して固定刃15の内部に引摺り込み、この状態のひげをより鋭利な開口26側の切刃28で切断して、深剃りを可能にするためである。
 
【0021】
  上記の電気かみそりにおいて、可動刃14で切断された毛屑が固定刃15の外へ飛散するのを防止するために、固定刃15の内面に摺接する小刃19の先端と、可動刃軸18に固定される小刃19の装着基端19aの間に、小刃19で切断された毛屑を貯留する毛屑集積部27を凹み形成している。
図1に示すように、可動刃軸18の前周面の接線Tと直交し、前記接線の接点を通る仮想基準線Qを想定するとき、毛屑集積部27は仮想基準線Qより可動刃14の回転方向上手側へ凹む湾曲面で形成し、これに対し、切刃25を含む小刃19の先端を、仮想基準線Qより可動刃14の回転方向下手側へ寸法aの分だけ突出させている。さらに、
図5、
図6に示すように毛屑集積部27は、可動刃軸18の下端寄りから上端寄りへ向かって傾斜させており、可動刃軸18の上端に近づくほど毛屑集積部27の凹み深さが大きくしている。また、可動刃軸18に固定した小刃19の装着基端19aは、可動刃軸18の周面の接線Tに沿う平面で形成している。
 
【0022】
  可動刃支軸16はステンレス製の丸軸からなり、その下端に設けたフランジ壁16aがヘッド側ケース5の上壁にインサート固定されている。可動刃支軸16の上下2個所には、ベアリング(軸受)31が上下動不能に装着されており、このベアリング31で可動刃支軸16に同支軸16に沿って挿入装着した可動刃軸18を回転自在に軸支している。このように、可動刃14の可動刃軸18を、ヘッド側ケース5に固定した可動刃支軸16でベアリング31を介して軸支すると、縦長の可動刃14を軽快にしかも安定した状態で回転可能に支持できるので、モーター8の駆動負荷を軽減して電力消費を削減できる。回転時に可動刃14の回転中心軸が傾動することもない。また、可動刃14を安定した状態で回転駆動できるので、ひげ切断を均一に行うことができる。可動刃14は可動刃支軸16で必ずしも回転可能に支持される必要はない。つまり可動刃支軸16は固定刃15のみを支持するための支軸として利用した構成とすることができる。この場合、可動刃14は本体ケース1側に回転可能に軸支される構成とする。
 
【0023】
  図3において、ヘッドキャップ17は、プラスチック成型品からなるキャップ本体32と、キャップ本体32の上面に配置したステンレス板材製のシャッター33で構成されている。キャップ本体32の上壁の複数個所には、洗浄水を排出するための洗浄開口34が形成されており、シャッター33をシャッター軸35の回りに回転操作することにより、洗浄開口34を開閉できる。キャップ本体32の内面中央には、ねじ軸36が一体に設けられており、その周囲にスラストリング21を押え保持する筒壁37が形成されている。また、キャップ本体32の内面には、固定刃15を保持するための装着座38が凹み形成されている。ヘッドキャップ17は、ねじ軸36を可動刃支軸16に設けたねじ穴39にねじ込むことにより可動刃支軸16と一体化されて、ヘッド側ケース5に組付けた可動刃14および固定刃15を抜止め固定する。このとき、筒壁37がスラストリング21を押え保持して、可動刃14が上移動するのを規制している。ヘッドキャップ17を可動刃支軸16から取外すと、固定刃15および可動刃14をヘッド側ケース5および可動刃支軸16から分離できる。このように、固定刃15および可動刃14は、可動刃支軸16に沿って挿脱することにより、ヘッド側ケース5および可動刃支軸16に対して着脱できる。ヘッドキャップ17は、ねじ軸36を可動刃支軸16に設けたねじ穴39にねじ込んで結合する構成に限らず、凹凸嵌合結合、バヨネット結合等の結合方式であってもよい。ねじ軸36は、ヘッドキャップ17に別体で設けられるものであってもよい。
 
【0024】
  固定刃15は、上下に長い無端円筒状の刃本体42と、刃本体42の上下両端に固定した補強リング43で長軸状に構成されている。刃本体42の周面の周方向には、切刃44および刃穴45の形成パターンが異なる複数の切断領域が設けられている。この実施例では、
図7の展開図に示すように、主に短毛を切断する短毛切断領域Z1と、主に短毛より短い切株毛を切断する切株毛切断領域(短毛切断領域)Z2と、主にくせ毛および長毛を切断する長毛切断領域Z3の、3種の切断領域を刃本体42の周面全体に互いの領域が隣接するように形成した。短毛切断領域Z1における刃穴45は横長六角形状に形成され、切株毛切断領域Z2における刃穴45は正六角形状に形成されており、切株毛切断領域Z2における刃穴45の個々の開口面積は、短毛切断領域Z1における刃穴45の個々の開口面積より小さい。なお、切株毛切断領域Z2は、より短い毛を切断できる領域ということで「短毛切断領域」として解釈することができる。つまり、本発明では短毛切断領域Z1と切株毛切断領域Z2を合わせて「短毛切断領域」とする。長毛切断領域Z3の刃穴45は周方向に長い長溝状(スリット状)に形成されており、くせ毛や長毛を効果的に導入できる。つまり、個々の長溝状の刃穴45は、刃穴45の長手方向が、円筒状の固定刃15の周方向に沿って設けられている。長毛切断領域Z3における長溝状(スリット状)の刃穴45の定義としては、刃穴の短手方向の寸法に対して刃穴の長手方向の寸法が2倍以上の構成であるものをいう。従って、短毛切断領域Z1・切株毛切断領域Z2にあるような刃穴45の形状は、刃穴の短手方向の寸法に対して刃穴の長手方向の寸法が2倍に満たないため、長溝状(スリット状)の刃穴45ではないものとする。各切断領域Z1〜Z3の周方向の長さに関して、(Z2>=Z1>Z3)を満足できるようにした。こうした固定刃15によれば、使用頻度が高い短毛切断領域Z1と切株毛切断領域Z2の領域面積を大きくして、短毛および切株毛の切断機会を増加できるので、ひげ切断をより短い時間で効果的に行うことができる。また、各切断領域Z1〜Z3の厚みに関して、(Z3>Z1>Z2)を満足できるようにした。各領域Z1〜Z3の外面は異なる色でコーティングすることができ、その場合には、肌面にどの切断領域が当たっているかを明確にできるので、ユーザーの使い勝手を向上できる。本実施例においては、長毛切断領域Z3の刃穴45は、その長手方向が周方向に沿って設けられているが、変形例としては、長溝状の刃穴45を、その長手方向が固定刃15の長軸方向に沿って設けられる構成とすることができる。これにより、ユーザーが本体ケース1を握り、同ケース1をその軸線方向に繰り返し往復動すれば、固定刃15も同方向に往復動し、この往復動方向と長毛切断領域Z3の長溝状の刃穴45の長手方向が同じ向きであるので、長毛を導入しやすく、好適に長毛を切断できる。ある程度長毛を切断できれば、次に固定刃15を軸まわり(周方向)に回転させて短毛切断領域Z1を肌面に接触させ、そのまま上記同様に軸線方向に往復動させれば短毛切断領域Z1の刃穴45によるひげ剃り作業を行うことができる。さらに、固定刃15を軸まわり(周方向)に回転させて切株毛切断領域Z2を肌面に接触させて、そのまま上記同様に軸線方向に往復動させれば切株毛切断領域Z2の刃穴45によるひげ剃り作業を行うことができる。この変形例においても、円筒状の固定刃15の周面内において長毛と短毛を区別したひげ剃り作業を行うことができる。
 
【0025】
  上側の補強リング43の内面には、刃本体42の内面に連続するベルマウス状のガイド部81が形成され、下側の補強リング43の内面には、刃本体42の内面に連続するベルマウス状のガイド部82が形成してある。こうした固定刃15によれば、刃本体42が径方向内側へ弾性変形しようとするのを補強リング43で規制して、刃本体42の構造強度を向上できる。また、固定刃15の下側に形成した先拡がりテーパー状のガイド部82をガイドにして、固定刃15を可動刃14に組むことができるので、固定刃15の可動刃14に対する組付けを簡便に行える。同様に、固定刃15の上側に形成したガイド部81をガイドにして、可動刃14を固定刃15に組むことができるので、可動刃14の固定刃15に対する組付けを簡便に行うことができる。従って、可動刃14および固定刃15のメンテナンスを容易化できる。
 
【0026】
  刃本体42は、
図8(a)〜(d)に示す電鋳処理を経て、上下に長い無端円筒状に形成する。まず、ガラス製の円筒状の母材46を用意し、その周面に銅メッキ層を形成しておく。次に、母材46の表面にフォトレジスト層を形成し、その上面にフォトマスクを密着した状態で露光し、現像および乾燥を行い、未露光部を溶解除去して、レジスト開口47を備えたレジストパターン48を母材46の表面に形成する。レジストパターン48の形状は、各切断領域Z1〜Z3における切刃44および刃穴45のパターンに一致させている。次に、母材46を電鋳液に浸漬して、レジスト開口47に露出しているメッキ層に電着金属(銅)を成長させて、1次電鋳層49を形成する。このとき、1次電鋳層49はレジストパターン48の厚みを僅かに超えるまで成長させる。
 
【0027】
  次に、母材46を別の電鋳液に浸漬して、1次電鋳層49の外面に電着金属(ニッケル―コバルト合金)を成長させて、2次電鋳層50を形成する。最後に、母材46を破砕して円筒状のブランクを母材46から分離し、さらに、フォトレジスト層および1次電鋳層49を溶解除去して、刃本体42の前段ブランクを得たのち、前段ブランクに研削処理を施して刃本体42を完成する。
 
【0028】
  補強リング43はプラスチック成形品からなり、その成形時に上記の刃本体42をインサートすることにより、補強リング43を刃本体42と一体化できる。このように、刃本体42を補強リング43の成形時にインサート固定すると、刃本体42と補強リング43を一体化するための構造を別途設ける必要がないので、固定刃15の構造を簡素化できる。
図3、
図4に示すように、上側の補強リング43の上部周縁には、ヘッドキャップ17の装着座38に嵌合する段部53が形成され、下側の補強リング43の下部周縁には、ヘッド側ケース5の装着座54に嵌合する段部55が形成されている。また、下側の補強リング43の段部55と、ヘッド側ケース5の装着座54には、互いに係合して固定刃15を回動不能に固定保持する突起56と凹部57が形成されている。上記のように、刃本体42の上下に補強リング43を設けると、肌面にあてがった刃本体42が、内凹み状に変形しようとするのを上下の補強リング43で規制できる。従って、刃本体42が肌面に強く押し付けられるような場合でも、刃本体42の外形を円筒状に保形してひげ切断を適確に行える。また、肌面と刃本体42の密着面積が不必要に大きくなるのを防いで、肌面が受ける負担を軽減できる。固定刃15をヘッド側ケース5(本体ケース1)に固定する場合は、固定刃15を可動刃支軸16に沿って移動させて、固定刃15の下側の補強リング43の段部55をヘッド側ケース5の装着座54に嵌合させる。そのうえでヘッドキャップ17を可動刃支軸16に設けたねじ穴39にねじ込む。これによりヘッド側ケース5に組付けた固定刃15を抜止め固定できる。このときヘッドキャップ17の装着座38によって、上側の補強リング43の段部53を介して固定刃15が可動刃支軸16の長軸方向及び長軸方向と直交する方向にガタつくのを可及的に防止できる。固定刃15および可動刃14の組み付け時においては、可動刃軸18と刃本体42は、可動刃支軸16を中心にして同心円状に配置される。さらに本体ケース1、固定刃15および可動刃14の関係については、本体ケース1の軸線方向と円筒状の固定刃15の長軸方向と可動刃軸18の長軸方向が一致するように設けられている。
 
【0029】
  図2に示すように、ヘッド側ケース5は基部ケース3に対して、前後揺動可能に回動軸(屈曲軸)4で連結されており、本体ケース1の軸線(長軸)Pに沿ってヘッド側ケース5の軸線が基部ケース3の軸線と一致する第1姿勢(
図2に実線で示す状態)と、ヘッド側ケース5の軸線が第1姿勢から90度前側へ屈曲変位する第2姿勢(
図2に想像線で示す状態)、つまりヘッド側ケース5の軸線が基部ケース3の軸線に対して直交する状態との間で揺動できる。なお、「一致する第1姿勢」とは、ヘッド側ケース5の軸線と基部ケース3の軸線とが同一方向に向いていれば厳密に一致した一直線線状のものに限定されず平行関係にある軸線同士であってもそれを含むものとする。さらに、第1姿勢においては、挟み持ち姿勢或いはペン持ち姿勢によるひげ剃りに不具合がなければ、厳密に同一方向に向いている必要はない。例えば略一致する第1姿勢とする構成であれば、基部ケース3の軸線に対してヘッド側ケース5の軸線は0度±10度の範囲内にあればよい。第2姿勢においても、厳密に90度前側へ屈曲変位する態様に限らず、掴み持ちにおけるひげ剃りに不具合がなければ、多少幅を持たせて屈曲変位させることができる。例えば第1姿勢から略90度前側へ屈曲変位する第2姿勢との間で揺動できる構成であれば、両軸線の交差角度は90度±10度の範囲内にあればよい。ユーザーは、かみそりヘッド2を第1姿勢に保持した状態でひげ剃りを行うことができ、必要時には、かみそりヘッド2を第2姿勢に保持した状態でひげ剃りを行うこともできる。このとき第1姿勢においては、各指の先で本体ケース1を持つ挟み持ち姿勢或いはペン持ち姿勢でひげ剃りを行い、第2姿勢においては、各指と手のひらを含めて持つ掴み持ち姿勢(縦持ち姿勢)でひげ剃りを行う。ヘッド側ケース5を第1姿勢と第2姿勢において姿勢保持するために、回動軸4と、同軸4を軸支する軸受部12の間に弾性節度構造を設ける。ヘッド側ケース5の軸線が基部ケース3の軸線と略一致する第1姿勢においては、基部ケース3(本体ケース1)の軸線(長軸)に対してかみそりヘッド2、固定刃15、可動刃14、可動刃支軸16の軸線(長軸)も略一致する。ヘッド側ケース5の軸線が第1姿勢から略90度前側へ屈曲変位する第2姿勢においては、基部ケース3(本体ケース1)の軸線(長軸)に対してかみそりヘッド2、固定刃15、可動刃14、可動刃支軸16の軸線(長軸)は略直交状となる。
図2に示すように、円筒状の固定刃15の長軸方向と本体ケース1の長軸方向が一致する第1姿勢においては、固定刃15における切刃44および刃穴45が形成されている切断領域の全周面が自由空間に露出している。円筒状の固定刃15の長軸方向と本体ケース1の長軸方向が直交状となる第2姿勢においても、固定刃15における切刃44および刃穴45が形成されている切断領域の全周面が自由空間に露出している。なお、自由空間とは、かみそりヘッド2や本体ケース1を構成する筐体で覆われていない空間であり、かつ使用者が視認可能な空間のことである。
 
【0030】
  図9において、ヘッド側ケース5の下面には連結腕58が突設されており、基部ケース3には連結腕58を収容する連結溝59が、ケース上面からケース前面にわたって形成されている。回動軸4は、ヘッド側ケース5と一体に形成されている。
図9、および
図10において弾性節度構造は、回動軸4に固定したプラスチック製のリング状の節度ばね60と、節度ばね60の周囲対向位置に設けた2個の節度突起(第1節度体)61と、軸受部12の内面の3個所に設けられる節度凹部(第2節度体)62・63を備えている。節度凹部62・63は、隣接して形成した2個の円弧突起の間に形成されており、軸受部12の内面の前後対向位置に2個の節度凹部62を設け、軸受部12の内面の下面中央に3個目の節度凹部63が形成されている。節度ばね60の内面には、一対の連結片65が突設されており、各連結片65を回動軸4に形成した連結溝66に係合固定して、節度ばね60が回動軸4と一体化されている。
 
【0031】
  ヘッド側ケース5を第1姿勢に変位操作した状態では、
図9に示すように、2個の節度突起61が軸受部12の内面前後に設けた2個の節度凹部62と係合している。また、ヘッド側ケース5を第1姿勢から第2姿勢に変位操作した状態では、1個の節度突起61のみが軸受部12の下面中央に設けた1個の節度凹部63と係合している。このように、弾性節度構造を設けると、ヘッド側ケース5を第1姿勢と第2姿勢において姿勢保持できるので、各姿勢においてひげ切断を安定した状態で行うことができる。
 
【0032】
  また、ヘッド側ケース5を第2姿勢に切換えた状態において、かみそりヘッド2を肌面に押当てると、かみそりヘッド2は、肌反力を受けて
図10において反時計回転方向へ回転(揺動)しようとする。しかし、節度突起61が節度凹部63の
図10に向かって右側の円弧突起を乗越えようとする動作に伴って節度ばね60が弾性変形し、その変形応力でかみそりヘッド2が反時計回転方向へ回転するのを規制するので、肌反力が小さくなるのに伴って、かみそりヘッド2は水平の第2姿勢に復帰する。なお、かみそりヘッド2が節度ばね60の変形応力に逆らって反時計回転方向へ回転した場合には、連結腕58の下面が連結溝59の前端で受止められるので、それ以上かみそりヘッド2が傾動することはなく、節度突起61が節度凹部63の円弧突起の頂部(デッドポイント)を乗越えることもない。このように、第2姿勢においてヘッド側ケース5およびかみそりヘッド2は基部ケース3に対して揺動可能に弾性支持されている。つまり、基部ケース3とヘッド側ケース5のいずれか一方に設けた回動軸4が、他方に設けた軸受部12で相対揺動可能に支持されており、回動軸4と軸受部12の間に、ヘッド側ケース5を第1姿勢と第2姿勢において姿勢保持する弾性節度構造が設けられており、弾性節度構造が、回動軸4と軸受部12のいずれか一方に固定されるリング状の節度ばね60と、節度ばね60に設けた第1節度体61と、回動軸4と軸受部12の残る他方に設けられて、節度ばね60を弾性変形させながら第1節度体61と係脱する第2節度体6
3を備えている。そして、第1節度体61と第2節度体6
3が係合する第2姿勢において第1節度体61と第2節度体6
3の係合が第1姿勢に向かう側とは反対側に解除されるデッドポイントの間で、ヘッド側ケース5が節度ばね60のばね力によって揺動可能に弾性支持されている。また、第2姿勢におけるヘッド側ケース5が、第2姿勢と、第1姿勢から離れる向きに第2姿勢を超える位置となる姿勢との間で揺動可能に基部ケース3に連結されている。このように、第2姿勢において、ヘッド側ケース5が基部ケース3に対して揺動可能に弾性支持されていることにより、第1姿勢によるひげ剃り時において、かみそりヘッド2が所定角度揺動可能にフロート支持されているので、固定刃15が肌面に過剰に押し付けられるのを防止でき、肌面に大きな負担が掛かるのを防止できる。弾性節度構造は本実施例の構造に限定されず、節度ばね60が、ヘッド側ケース5を基部ケース3に対して揺動可能に弾性付勢させるばねを兼ねるものであれば、その構造は種々考えられる。例えば、周囲に凹みを複数設けた回動軸4と、回動軸4の周囲の軸受け部12に固定される上記凹みに係合する突起を有する板状ばねとからなる弾性節度構造であってもよい。
 
【0033】
  同様に、ヘッド側ケース5を第1姿勢に切換えた状態においては、かみそりヘッド2を肌面に押当てると、かみそりヘッド2は、肌反力を受けて
図9において時計回転方向へ回転しようとする。この場合には、節度突起61が、
図9に向かって右側の円弧突起のうち下側の円弧突起と、
図9に向かって左側の円弧突起のうち上側の円弧突起を乗越えようとする動作に伴って節度ばね60が弾性変形し、その変形応力でかみそりヘッド2が時計回転方向へ回転するのを規制するので、肌反力が小さくなるのに伴って、かみそりヘッド2は垂直の第1姿勢に復帰する。かみそりヘッド2が節度ばね60の変形応力に逆らって時計回転方向へ回転した場合には、連結腕58の傾斜下面が連結溝59の上端で受止められるので、それ以上かみそりヘッド2が後向きに揺動することはなく、節度突起61が節度凹部63の円弧突起の頂部(デッドポイント)を乗越えることもない。以上のように、かみそりヘッド2は基部ケース3で前後揺動可能にフロート支持されているので、固定刃15が肌面に過剰に押し付けられるのを防止して、肌面に大きな負担が掛かるのを防止できる。第1姿勢においては2個の節度突起61が節度凹部63と係合し、第2姿勢においては1個の節度突起61が節度凹部63と係合するので、第1姿勢における節度ばね60の変形応力は、第2姿勢における節度ばね60の変形応力より充分に大きい。つまり、本実施例においては、第1姿勢においてもヘッド側ケース5が基部ケース3に対して揺動可能に弾性支持されているが、肌反力に対する節度ばね60のばね力は、第2姿勢のばね力よりも第1姿勢のばね力の方が大きい。従って、第1姿勢によるひげ剃り時において、かみそりヘッド2が所定角度揺動可能にフロート支持されているので、固定刃15が肌面に過剰に押し付けられるのを防止でき、肌面に大きな負担が掛かるのを防止できる。また、第2姿勢のばね力よりも第1姿勢のばね力の方が大きいので、第1姿勢の状態において、ひげ剃り部位をポイントで狙いやすい。
 
【0034】
  また、第1姿勢において係合する節度突起61と節度凹部62の数を、第2姿勢において係合する節度突起61と節度凹部63の数より大きく設定するので、ヘッド側ケース5をより小さな力で第2姿勢から第1姿勢に戻すことができる。逆に、ヘッド側ケース5を第1姿勢から第2姿勢に切換える場合には、より大きな力が必要になるので、ひげ剃り途中にユーザーの意図に反して、ヘッド側ケース5の姿勢が第2姿勢に切換わるのを防止できる。従って、ヘッド側ケース5を第1姿勢にしてひげ剃りを行う場合に、安定した状態でひげ切断を行うことができる。なお、本実施例においては、弾性節度構造の節度ばね60を利用することでヘッド側ケース5が基部ケース3に対して揺動可能に弾性支持されている構成であるが、これに限定されず、ヘッド側ケース5を上下二分割ケース構造とし、両ケース間に弾性体(コイルばね、チューブ状ゴムなど)を介設することで、上側のヘッド側ケース5およびかみそりヘッド2を基部ケース3に対して揺動可能に弾性支持する構成であってもよい。この場合、本実施例のようなヘッド側ケース5と基部ケース3の回動軸4が水平に設けられている揺動構造に限定されず、ヘッド側ケース5と基部ケース3との対向壁が斜めに設けられて、その斜めに設けられた対向壁を接続する回動軸(屈曲軸)4が対向壁面に直交する向きに配設される、つまり斜めに傾斜させて配設される構成を含む揺動構造とすることができる。
 
【0035】
  図3に示すように、ヘッド側ケース5の内部に設けたモーター8と、かみそりヘッド2の内部に設けた可動刃軸18の間には、モーター8の回転動力を可動刃14に伝動する動力伝動構造が設けられている。動力伝動構造は、減速ユニット9の出力軸に固定したフレキシブル軸69と、フレキシブル軸69の出力端に固定した駆動ギヤ70と、可動刃軸18に固定されて駆動ギヤ70と噛合う従動ギヤ20で構成されている。駆動ギヤ70のギヤ軸71は、ヘッド側ケース5に固定したベアリング72で回転自在に支持されており、ベアリング72で支持された部分より上側が、ヘッド側ケース5の上方に突出している。モーター8および減速ユニット9は、ヘッド側ケース5が大形化し持ち重りするのを避けるため、その出力軸が傾斜上端に位置する状態で、本体ケース1の軸線Pに対して傾斜されている。さらに、モーター8および減速ユニット9を傾斜配置することにより、フレキシブル軸69の屈曲角度を小さくして、モーター8の回転動力の伝動ロスを小さくできるようにしている。因みに、モーター8の中心軸と駆動ギヤ70の中心軸が平行であると、フレキシブル軸69が緩やかなS字状に湾曲して凸湾曲部と凹湾曲部が形成され、両湾曲部の間に変曲点が形成されるのを避けられない。しかし、モーター8を傾斜配置すると、フレキシブル軸69の屈曲角度を小さくして、先の変曲点が形成されるのを回避できるので、モーター8から駆動ギヤ70に至る間の回転動力の伝動ロスを小さくすることができる。
 
【0036】
  図3において、ヘッド側ケース5の前部上端に、ひげ剃り時に肌面を照らすための照明体75が配置されている。この実施例では砲弾型のLEDで照明体75を構成し、その光軸が、かみそりヘッド2の周面外方に臨んで指向するようにした。符号76は、照明体75から放射された光の一部を拡散させる透明の拡散ブロックである。使用時には、照明体75から照射された照明光で肌面およびひげを照らしながらひげ切断を行うことにより、ひげの状態やひげの切断状況などを適確に把握しながら、的確にひげ切断を行うことができる。
 
【0037】
  電気かみそりを使用する場合には、例えばヘッド側ケース5を第1姿勢にした状態で、固定刃15の短毛切断領域Z1を肌面にあてがってひげを切断する。また、短毛切断領域Z1で粗剃りしたのちに、本体ケース1の握り位置を周方向へ変更して、切株毛切断領域Z2を肌面にあてがうことにより、短毛より短い切株毛を切断することができる。さらに、本体ケース1の握り位置を周方向へ再び変更して、長毛切断領域Z3を肌面にあてがうことにより、くせ毛や長毛を切断することができる。このように、本体ケース1の握り位置を周方向へ変更する場合には、指掛け突起11を利用して本体ケース1の姿勢を変更することにより、姿勢変更を適確に行える。
 
【0038】
  以上のように構成した電気かみそりによれば、可動刃14で切断された毛屑を毛屑集積部27に保持できるので、毛屑が小刃19で弾き飛ばされて固定刃15の外へ飛散するのを防止できる。従って、常に衛生的な状態でひげ剃りを行える。また、固定刃15の内部に溜まった毛屑の清掃間隔を拡大して、清掃に要する手間を軽減できる。
  可動刃軸18の装着基端19aを、可動刃軸18の周面の接線Tに沿う平面で形成するので、ひげ切断時の切断抵抗に伴うモーメントが装着基端19aに作用するとき、装着基端19aが可動刃軸18の周面側へ弾性変形して、先のモーメントを吸収し逃がすことができる。従って、先のモーメントが作用して、装着基端19aの固定構造、つまり溶接個所22が疲労破壊に至るのをよく防止できる。
 
【0039】
  毛屑集積部27を仮想基準線Qより可動刃14の回転方向上手側へ凹む湾曲面で形成するので、毛屑集積部27を容易に形成できる。また、毛屑集積部27の容積を大きくして、より大量の毛屑を毛屑集積部27の内部に保持できるうえ、切断された毛屑が小刃19の遠心力を受けて毛屑集積部27の外へ飛び出るのをよく防止できる。さらに、毛屑集積部27の変形応力で小刃19の切刃25側の周面を固定刃15の内面に密着付勢することができる。
  小刃19の先端が仮想基準線Qより可動刃14の回転方向下手側へ寸法aの分だけ突出しているので、ひげ切断時の切断抵抗によって、小刃19の先端が可動刃14の回転方向上手側へずれ動いたとしても、小刃19の先端の切刃25が、仮想基準線Qを越えて可動刃14の回転方向上手側へ移動するのを確実に防止できる。従って、切刃25が固定刃15の内面に突っかかって切刃25と固定刃15のいずれかが破損するのを防止できる。また、固定刃15と摺接する小刃19の長さを大きくして、その分だけ小刃19の弾性力としなやかさを向上できる。
 
【0040】
  毛屑集積部27に溜まった毛屑は、水洗い洗浄することで洗い流すことができる。その場合には、
図4に示すようにヘッドキャップ17に設けたシャッター33を回転操作して洗浄開口34を開放する。この状態で、ヘッドキャップ17が傾斜下端に位置するように電気かみそりを斜めに支持し、可動刃14を回転駆動した状態で、固定刃15の周面から水道水を流すことにより、毛屑を洗浄水と共にヘッドキャップ17の洗浄開口34から排出することができる。このときに、毛屑集積部27が可動刃軸18の下端寄りから上端寄りへ向かって傾斜されていると、水洗い洗浄時に、螺旋状の毛屑集積部27に沿って毛屑を洗浄水と共に流動させて、ヘッドキャップ17へ向かって毛屑を確実にしかも簡単に洗い流すことができる。
 
【0041】
  使用状態における固定刃15は、その上下端が可動刃支軸16に固定したヘッドキャップ17の装着座38と、ヘッド側ケース5の装着座54で両持ち支持されるので、円筒状の固定刃15をヘッドキャップ17と本体ケース1で確りと固定保持できる。従って、肌面に押付けられた固定刃15が肌反力を受けて変形する、あるいは中心軸方向へずれ動くのを防止して、ひげ切断を適確に行える。また、可動刃14と固定刃15の軸心方向の摺接抵抗を一定にして、固定刃15の軸心方向におけるひげ切断作用を均一化できる。
  また、固定刃15の周面に短毛切断領域Z1と、切株毛切断領域Z2と、長毛切断領域Z3の3種の切断領域を形成するので、ひげの長さやひげの密生度合の違いなどに応じて、各切断領域Z1〜Z3を使い分けることにより、ひげ切断を素早くしかも効果的に行うことができる。本実施例では、固定刃15は本体ケース1(ヘッド側ケース5)に直接取り付けられているが、これに限定されず、本体ケース1(ヘッド側ケース5)の端部に連続して設けられ、固定刃15を着脱可能に装着することが可能な中間ケース(外刃ホルダー)を設けた構造であってもよい。固定刃15の長軸方向の両端が、支軸16に装着したヘッドキャップ17と本体ケース1(ヘッド側ケース5)で両持ち支持されている構成は、このような中間ケースが介在している構成も含むものとする。また、ヘッドキャップ17は、ねじ軸36を可動刃支軸16に設けたねじ穴39に直接ねじ込んで結合しているが、これに限定されず。可動刃支軸16に固定した軸ピースを介して結合することができる。従って、可動刃支軸(支軸)16に対して着脱可能なヘッドキャップ17が設けられる構成は、このような軸ピースが介在している構成も含むものとする。
 
【0042】
  ヘッドキャップ17を可動刃支軸16から取外すと、可動刃14および固定刃15をヘッド側ケース5から容易に取外すことができるので、可動刃14および固定刃15の交換を簡便に行うことができる。また、可動刃14をヘッド側ケース5から取外したのち、毛屑集積部27の内面や、可動刃軸18の内面、あるいは従動ギヤ20の刃面などに付着した毛屑を清掃ないし洗浄して、可動刃14を衛生的な状態に保持することができる。ヘッド側ケース5から取外した固定刃15も、同様にして衛生的な状態に保持できる。
 
【0043】
  固定刃15の周面全体に切刃44および刃穴45を備えた切断領域が設けられていると、固定刃15の全周面の任意の周面においてひげ切断を行える。従って、切断領域を固定刃15の周面に部分的に設ける形態に比べて、固定刃15の任意の周面を単に肌面にあてがうだけでひげを切断できるうえ、肌面に当たる固定刃15の周面位置が変化する場合でも、連続してひげ切断を行うことができる。
 
【0044】
  実施例1においては、毛屑集積部27をひとつの湾曲面で形成したが、毛屑集積部27はU字状、V字状、あるいはW字状の凹みで形成してもよく、凹みは少なくとも1個設けてあればよい。また、切刃25は連続波形の刃である必要はなく、鋸刃状や、鋸刃と波形の刃が混在する刃形状であってもよい。固定刃15は、切刃44と刃穴45を備えた切断領域が全周面に設けてある必要はなく、例えば、固定刃15の周面の4分の1から3分の2に限って切断領域を設けるなど、部分的に切断領域が形成してもよい。また、固定刃15の全周面に切断領域を設けたうえで、その周面の一部をヘッドキャップ17や、ヘッド側ケース5と一体に設けたカバー壁で覆って、固定刃15の周面の一部において切断領域を露出させるようにしてもよい。弾性節度構造に関して、回動軸4を基部ケース3側に設け、軸受部12をヘッド側ケース5に設けることができる。さらに、実施例1においては、短毛切断領域Z1と、切株毛切断領域Z2と、長毛切断領域Z3の3種類の切断領域を形成したが、その必要はなく、ひげの長さや生え方に対応して4種類以上の切断領域を形成し、あるいは短毛切断領域Z1と長毛切断領域Z3の2種類の切断領域を形成することができる。上述した内容は以下の実施例に適用できる。小刃19における毛屑集積部27は、網目状、パンチングメタル状、あるいはエキスパンドメタル状の多孔板材で形成することができる。このように、毛屑集積部27を多孔板材で形成すると、可動刃14が回転駆動されるとき、多孔板材の孔開口から空気が抜けるので、毛屑集積部27に保持された毛屑が飛散するのをよく防止できる。
 
【0045】
(実施例2)  
図11に固定刃15の構造の一部を変更した実施例2を示す。そこでは、刃本体42の上端の内面に、径方向へ折曲がる補強部80をフランジ状に張出し形成して、刃本体42の上端および補強部80を上側の補強リング43で補強するようにした。こうした固定刃15によれば、実施例1の刃本体42に比べて、刃本体42が径方向内側へ弾性変形するのを補強部80で規制して、固定刃15の構造強度をさらに増強できる。必要があれば、刃本体42の下端の内面にも補強部80を設けることができる。上記のように構造強度が向上された固定刃15によれば、固定刃15の構造強度を一定とした場合には、固定刃15の厚みをより薄くできるので、深剃りできる。他は実施例1の固定刃15と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
 
【0046】
(実施例3)  
図12に固定刃15の構造の一部を変更した実施例3を示す。そこでは、刃本体42の上端と下端に、それぞれ先拡がりテーパー状のガイド部81・82を設けて、刃本体42の上端およびガイド部81・82を上下の補強リング43で補強するようにした。こうした固定刃15によれば、実施例2の固定刃15と同様に、刃本体42が径方向内側へ弾性変形しようとするのをガイド部81・82で規制して、刃本体42の構造強度を向上できる。また、固定刃15の下側に形成した先拡がりテーパー状のガイド部82をガイドにして、固定刃15を可動刃14に組むことができるので、固定刃15の可動刃14に対する組付けを簡便に行える。同様に、固定刃15の上側に形成したガイド部81をガイドにして、可動刃14を固定刃15に組むことができるので、可動刃14の固定刃15に対する組付けを簡便に行うことができる。従って、可動刃14および固定刃15のメンテナンスを容易化できる。
 
【0047】
(実施例4)  
図13に固定刃15の構造の一部を変更した実施例4を示す。そこでは、刃本体42をテーパークラウン状に形成して、刃本体42の上下中途部の構造強度を増強できるようにした。また、使用時には、テーパークラウン状に形成した刃本体42の上下中途部の外突湾曲面で肌面を凹ませながら押圧できるので、肌面を片手で引寄せて起毛しながらひげ切断を行う場合と同様に、肌面に沿って倒込んでいる短毛、あるいはくせ毛や長毛を効果的に起こしてひげ切断を好適に行うことができる。
 
【0048】
(実施例5)  
図14に固定刃15の構造の一部を変更した実施例5を示す。そこでは、刃本体42に、主に短毛を切断する短毛切断領域Z1と、主にくせ毛および長毛を切断する長毛切断領域Z3を設けた。詳しくは、固定刃15の長軸方向の上端に長毛切断領域Z3を周回状に形成し、残る固定刃15の周面に短毛切断領域Z1を周回状に互いの領域が長軸方向に隣接するように形成した。各切断領域Z1・Z3の長軸方向の長さに関して、(Z1>Z3)を満足できるようにした。こうした固定刃15によれば、肌面に当たる固定刃15の位置を本体ケース1の軸線Pに沿ってずらすだけで、肌面に当たる切断領域を短毛切断領域Z1と長毛切断領域Z3の間で迅速に変更することができる。因みに、実施例1の電気かみそりにおいては、本体ケース1の握り位置を周方向へ変更して、肌面に当たる切断領域を変更する必要がある分だけ手間が掛かる。また、長毛切断領域Z3を固定刃15の上端側(自由端側)、換言すれば、本体ケース1から遠ざかる側の一端に設けられるので、長毛切断領域Z3を長毛の生えている部分にあてがうときの、長毛切断領域Z3の姿勢や角度を自由に選定できる。従って、肌面に倒込んでいる長毛を刃穴45に適確に誘い込んで、長毛の切断をより確実に行うことができる。なお、長毛切断領域Z3が固定刃15の下端側に設けてある場合には、短毛切断領域Z1が肌面に先当りして邪魔になることがある。さらに、各切断領域Z1・Z3の軸心方向の長さに関して、(Z1>Z3)とするので、使用頻度が高い短毛切断領域Z1の領域面積を大きくして短毛の切断機会を増加でき、その分だけひげ切断をより短い時間で効果的に行うことができる。ヘッド側ケース5の軸線が基部ケース3の軸線と略一致する第1姿勢においては、基部ケース3(本体ケース1)の軸線(長軸)に対してかみそりヘッド2、固定刃15、可動刃14、可動刃支軸16の軸線(長軸)も略一致する。ヘッド側ケース5の軸線が第1姿勢から略90度前側へ屈曲変位する第2姿勢においては、基部ケース3(本体ケース1)の軸線(長軸)に対してかみそりヘッド2、固定刃15、可動刃14、可動刃支軸16の軸線(長軸)は略直交状となる。円筒状の固定刃15の長軸方向と本体ケース1の長軸方向が略一致する第1姿勢においては、固定刃15における切刃44および刃穴45が形成されている切断領域の全周面が自由空間に露出している。円筒状の固定刃15の長軸方向と本体ケース1の長軸方向が略直交状となる第2姿勢においても、固定刃15における切刃44および刃穴45が形成されている切断領域の全周面が自由空間に露出している。なお、本実施例において、長毛切断領域Z3とは反対側の短毛切断領域Z1に隣接する部位に切株毛切断領域Z2を設けることができる。
 
【0049】
  本実施例においては、
図14に示すように、長毛切断領域Z3の長溝状(スリット状)の刃穴45は、その長手方向が周方向に沿って設けられているが、変形例としては、
図22に示すように長溝状(スリット状)の刃穴45を、その長手方向が固定刃15の長軸方向に沿って設けられる構成とすることができる。これにより、ユーザーが本体ケース1を握り、同ケース1をその軸線方向に繰り返し往復動すれば、固定刃15も同方向に往復動し、この往復動方向と長毛切断領域Z3の長溝状の刃穴45の長手方向が同じ向きであるので、長毛を導入しやすく、好適に長毛を切断できる。しかも往復動しているので、長毛切断後に直ちに短毛切断領域Z1の刃穴45による切断が行え、しかもそれを繰り返し行えるので効率的かつ容易にひげ剃り作業を行うことができる。また、
図22に示すように、長毛切断領域Z3が、短毛切断領域Z1と短毛切断領域Z1に挟まれて設けられている。これにより、上記同様本体ケース1を軸線方向に往復動し、固定刃15を同方向に往復動させれば、長毛切断領域Z3を基準に両サイドに短毛切断領域Z1があるため、より効率的にひげ剃り作業を行うことができる。なお、本実施例における長毛切断領域Z3と短毛切断領域Z1の位置関係においても長毛切断領域Z3は、本体ケース1から遠ざかる側の一端に設けられる構成である。要するに、固定刃15の刃本体42の長軸方向における中心線よりも上端側に長毛切断領域Z3が設けられる構成であれば、本体ケース1から遠ざかる側の一端に設けられる構成とすることができる。
 
【0050】
(実施例6)  
図15、
図16に、モーター8の回転動力を可動刃14に伝動する動力伝動構造を変更した実施例6を示す。そこでは、モーター8を基部ケース3の内部に配置し、モーター8の回転動力を回動軸4の中心軸線上に配置したフェースギヤ84を介してヘッド側ケース5へ伝動するようにした。詳しくは
図16に示すように、減速ユニット9の出力軸に固定した駆動ギヤ85をフェースギヤ84に噛合させ、フレキシブル軸69の入力端側に設けた受動ギヤ86をフェースギヤ84に噛合させて、可動刃14を回転駆動できるようにした。受動ギヤ86の回転動力はフレキシブル軸69と駆動ギヤ70を介して、可動刃軸18の従動ギヤ20に伝動される。実施例6に係る電気かみそりでは、モーター8をグリップを兼ねる基部ケース3の内部に配置したので、ヘッド側ケース5を第2姿勢に屈曲させた状態において持ち重りすることがない。また、ヘッド側ケース5が第1姿勢と第2姿勢の間で揺動変位するとき、モーター8に駆動電流を供給するモーターリードが折曲げられることがないので、モーターリードが断線するのを防止できる。実施例6に係る電気かみそりにおいても、実施例1に係る電気かみそりと同様に、回動軸4と軸受部12の間に、ヘッド側ケース5を第1姿勢と第2姿勢において姿勢保持する弾性節度構造が設けられており、弾性節度構造の節度ばね60によって、第1姿勢においても第2姿勢においても、かみそりヘッド2が基部ケース3に対して所定角度揺動可能に弾性的に支持されている。回動軸4を中心に、フェースギヤ84およびリング状の節度ばね60が同心円状に設けられている。
 
【0051】
  実施例6においては、モーター8を基部ケース3の内部に配置したが、その必要はなく、モーター8と、モーター8の回転動力を可動刃14に伝動する動力伝動構造は、本体ケース1のヘッド側ケース5に設けることができる。その場合には、例えばモーター8と可動刃軸18を直結し、あるいはモーター8あるいは減速ユニット9の出力軸に固定した駆動ギヤ70で、可動刃軸18の従動ギヤ20を駆動して可動刃14を回転駆動できるので、可動刃14用の動力伝動構造を著しく簡素化してそのコストを削減できる。
 
【0052】
(実施例7)  
図17ないし
図19に、実施例7に係る電気かみそりを示す。この実施例では、可動刃14の構造を変更する点と、可動刃14に組付けたスリーブ89に毛屑集積部27を形成する点が実施例1の電気かみそりと大きく異なる。可動刃14は、3個の小刃19を支持する可動刃軸18と、可動刃軸18の下端に固定される従動ギヤ20と、可動刃軸18の上端に固定されるスラストリング21を備えている。可動刃軸18は、円筒状の軸本体90と、軸本体90の周囲3個所に突設される小刃装着腕91を一体に備えたプラスチック成形品からなり、小刃装着腕91の突端の上下4個所に設けた小刃軸92に、小刃19がU字状の付勢ばね93と共にカシメ固定してある。小刃装着腕91は、可動刃14の回転中心軸線に対して傾斜されており、その上端が下端より回転方向上手側に位置している。小刃19は縦に長い平行四辺形状に形成された平板状の刃体からなり、その回転方向下手側に直線状の切刃25が形成されている。
 
【0053】
  図19に示すようにスリーブ89は、ドーナツ形の基端壁94と、基端壁94の下面に設けた3個の毛屑ポケット95と、毛屑ポケット95の下端に連続する底壁96を一体に備えたプラスチック成形品からなる。毛屑ポケット95は、部分円弧状の周囲壁95aと、周囲壁95aの回転方向下手側に連続する径方向壁95bを一体に備えており、周囲壁95aと径方向壁95bの対面の間が断面V字状の毛屑集積部27になっている。スリーブ89の毛屑ポケット95を、可動刃14の上方から隣接する小刃装着腕91の間に差し込み、基端壁94を小刃装着腕91および小刃19の上端で受止め、径方向壁95bを小刃装着腕91で受止めることにより、スリーブ89を可動刃14と一体化できる。この状態の小刃19の切刃25は、周囲壁95aの自由端と小さな隙間Eを介して対向しており、小刃19で切断された毛屑は先の隙間Eから毛屑集積部27内へ入り込む。
 
【0054】
  上記のように、可動刃軸18と平板状の小刃19で構成した可動刃14によれば、切刃25の先端のみが固定刃15に内面に摺接してひげ切断を行うので、実施例1の可動刃に比べて、小刃19の摩擦抵抗を小さくしてモーター8に作用する切断負荷を軽減できる。小刃19の切刃25が斜めに傾斜しているので、ひげを引切りすることができ、従って、ひげを切れ味良くシャープに切断できる。また、別途設けたスリーブ89に毛屑集積部27を形成するので、ヘッドキャップ17を可動刃支軸16から分離し、さらにスリーブ89を可動刃214から取外すことにより、毛屑集積部27に保持された毛屑の殆どを簡単に洗い流すことができる。さらに、切刃25と周囲壁95aの自由端の間の隙間Eが小さいので、毛屑集積部27に保持された毛屑が隙間Eから外へ飛び出るのをよく防止できる。
 
【0055】
  上記の各実施例においては、可動刃14が回転刃である場合について説明したが、本発明の電気かみそりは、可動刃101を往復駆動してひげ切断を行う形態で実施することができる。詳しくは、
図20および
図21に示すように、可動刃101を上下に長い中空筒状の可動刃軸102と、可動刃軸102に沿って一定間隔おきに固定した6個の小刃103で構成する。可動刃軸102は、可動刃支軸16に挿通されており、同支軸16によって長軸方向に往復動可能にガイドされながら支持されている。可動刃支軸16はステンレス製の丸軸からなり、その下端に設けたフランジ壁16aがヘッド側ケース5の上壁にインサート固定されている。このように、可動刃101の可動刃軸102を、ヘッド側ケース5に固定した可動刃支軸16でガイドしつつ支持すると、長軸状の可動刃14を軽快にしかも安定した状態で往復動させることができる。可動刃軸102は、その上下がヘッドキャップ17の内面中央に設けたボス104と、ヘッド側ケース5の上壁に設けたボス105でも上下スライド可能にガイドされている。小刃103は円板状に形成されており、その周面の上縁および下縁に切刃106が形成され、切刃106以外の周面は径方向内側へ凹ませてあって、固定刃15に摺接しない構造になっている。固定刃15は、刃本体42と、刃本体42の上端および下端に固定した補強リング43で構成されており、下端側の補強リング43に設けたねじ部111を、ヘッド側ケース5の装着座54の内周面に設けたねじ穴112にねじ込むことにより、ヘッド側ケース5と一体化している。さらに、可動刃支軸16の先端に形成されるねじ軸120にヘッドキャップ17に形成したねじ穴121をねじ込むことにより固定刃15の抜け止め固定を行うことができる。このとき、ヘッドキャップ17の下面周囲に形成されるテーパー状の支持面122が、ガイド部81と押圧した状態で接触しているので、固定刃15が両持ち支持される状態となり、従って、肌面に押付けられた固定刃15が肌反力を受けて変形する、あるいは中心軸方向へずれ動くのを防止して、ひげ切断を適確に行える。固定刃15の全周面には切刃44と刃穴45の一群が形成してあるので、円板状の小刃103と切刃44が協同して、固定刃15の全周面においてひげを切断できる。
 
【0056】
  実施例6の電気かみそりと同様に、モーター8は基部ケース3の内部に配置されており、モーター8の回転動力を回動軸4の中心軸線上に配置したフェースギヤ84を介してヘッド側ケース5へ伝動する。詳しくは
図21に示すように、減速ユニット9の出力軸に固定した駆動ギヤ85をフェースギヤ84に噛合させ、フェースギヤ84の回転動作をクランク軸107で往復動作に変換して、可動刃101を往復駆動できるようにした。クランク軸107の上端は、可動刃軸102と着脱可能に連結されている伝達軸123の下端にピン108で相対傾動可能に連結されており、クランク軸107の下端はフェースギヤ84のギヤ端面に偏心ピン109で相対傾動可能に連結されている。ヘッド側ケース5の前後傾動を許すために、連結腕58の側には駆動ギヤ85のギヤ軸と相対傾動する逃げ溝110が形成されている。ヘッドキャップ17を可動刃支軸16から取外すと、固定刃15および可動刃101をヘッド側ケース5および可動刃支軸16から分離できる。固定刃15および可動刃101は、可動刃支軸16に沿って挿脱することにより、ヘッド側ケース5および可動刃支軸16に対して着脱できる。また、本実施例においても、回動軸4と軸受部12の間に、ヘッド側ケース5を第1姿勢と第2姿勢において姿勢保持する弾性節度構造が設けられており、弾性節度構造の節度ばね60によって、第1姿勢においても第2姿勢においても、かみそりヘッド2が基部ケース3に対して所定角度揺動可能に弾性的に支持されている。回動軸4を中心に、フェースギヤ84およびリング状の節度ばね60が同心円状に設けられている。また、固定刃15における短毛切断領域Z1、切株毛切断領域Z2、長毛切断領域Z3の配置パターンについても上記各実施例のいずれの形態も適用できる。なお、
図20および
図21においては、上記の各実施例と同じ部材には、同じ符号を付してその説明を省略する。以上のように構成した電気かみそりは、上記の各実施例で説明した電気かみそりと同様にしてひげ切断を行うことができるが、多数個の小刃103を往復駆動してひげ切断を行うので、小刃103とひげの接触機会を増加して、ひげを効果的に切断できる。
 
【0057】
  上記実施例の電気かみそりは以下の態様で実施することができる。
  本体ケース1と、本体ケース1で支持されるかみそりヘッド2を備えており、
  かみそりヘッド2に可動刃14・101と、可動刃14・101の周囲を囲む固定刃15が設けられており、
  本体ケース1の一端に、同ケース1の長軸方向に突出する支軸16が設けられており、
  支軸16に対して着脱可能なヘッドキャップ17が設けられており、
  固定刃15の長軸方向の両端が、支軸16に装着したヘッドキャップ17と本体ケース1で両持ち支持されていることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成のように、固定刃15の長軸方向の両端を、支軸16に装着したヘッドキャップ17と本体ケース1で両持ち支持すると、固定刃15をヘッドキャップ17と本体ケース1で確りと固定保持できる。従って、肌面に押付けられた固定刃15が肌反力を受けて変形する、あるいは長軸方向と直交する向きにずれ動くのを防止して、ひげ切断を適確に行える。
 
【0058】
  上記電気かみそりであって、  
  固定刃15の両端が補強リング43で補強されていることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成のように、固定刃15の両端が補強リング43で補強されていると、肌面にあてがった固定刃15が、内凹み状に変形しようとするのを補強リング43で規制できる。従って、固定刃15が肌面に強く押し付けられるような場合でも、固定刃15の形状を維持してひげ切断を適確に行える。
 
【0059】
  上記電気かみそりであって、
  可動刃14・101は、可動刃軸18・102と、可動刃軸18・102の周囲に設けられる小刃19・103を備えており、
  可動刃14・101の可動刃軸18・102は中空筒状に形成されて、支軸16で移動可能に支持されていることを特徴とする電気かみそり。移動可能とは、可動刃14・101が回転駆動可能若しくは往復駆動可能ということである。
  上記構成のように、中空筒状に形成した可動刃軸18・102を支軸16で移動可能に支持すると、可動刃14・101を安定した状態で駆動できる。
 
【0060】
  上記電気かみそりであって、
  支軸16に装着した可動刃14・101と本体ケース1に装着した固定刃15が、支軸16に装着したヘッドキャップ17で抜止め固定されており、
  ヘッドキャップ17を支軸16から取外した状態において、固定刃15および可動刃14・101を、本体ケース1および支軸16から分離できるように構成したことを特徴とする電気かみそり。
  上記構成のように、可動刃14・101と固定刃15が、支軸16に装着したヘッドキャップ17で抜止め固定してあると、ヘッドキャップ17を支軸16から取外すだけで、固定刃15を本体ケース1から分離でき、さらに、可動刃14・101を支軸16から分離できる。従って、可動刃14・101および固定刃15の組付けやメンテナンスを容易化できる。
 
【0061】
  上記電気かみそりであって、
  本体ケース1と、本体ケース1で支持されるかみそりヘッド2を備えており、
  かみそりヘッド2に可動刃14と、可動刃14の周囲を囲む固定刃15が設けられており、
  可動刃14は、回転駆動される可動刃軸18と、可動刃軸18の周囲に設けられる小刃19を備えており、
  本体ケース1の一端に、同ケース1の長軸方向に突出する支軸16が設けられており、
  可動刃14の可動刃軸18は中空筒状に形成されて、支軸16で回転可能に支持されていることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成により、中空筒状に形成した可動刃軸18を支軸16で回転可能に支持すると、可動刃14を安定した状態で回転駆動できる。
 
【0062】
  また、上記実施例の電気かみそりは、以下の態様で実施することができる。
  本体ケース1と、本体ケース1で支持されるかみそりヘッド2を備えており、
  かみそりヘッド2に可動刃14・101と、可動刃14・101の周囲を囲む円筒状の固定刃15が設けられており、
  固定刃15の周面全体に切刃44および刃穴45を備えた切断領域が設けられており、
  可動刃14・101は、固定刃15の周面全体に形成される切刃44と協同してひげを切断する小刃19・103を備えており、
  固定刃15がグリップを兼ねる長軸状の本体ケース1の一端に突出して設けられており、
  円筒状の固定刃15の長軸方向と本体ケース1の長軸方向が略一致するように設けられて、固定刃15の切断領域の全周面が自由空間に露出しており、
  固定刃15の周面の周方向に、刃穴45の形成パターンが異なる複数の切断領域が隣接して設けられていることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成のように、固定刃15の周面の周方向に、刃穴45の形成パターンが異なる複数の切断領域が隣接して設けられていると、ひげの長さやひげの密生度合の違いなどに応じて、各切断領域を使い分けることにより、ひげ切断を素早くしかも効果的に行うことができる。
 
【0063】
  上記電気かみそりであって、
  切断領域が、少なくとも、主に短毛を切断する短毛切断領域Z1・Z2と、主に長毛を切断する長毛切断領域Z3とを備えていることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成によれば、長毛切断領域Z3にて長毛を切断したあとに、短毛切断領域Z1・Z2にて仕上げ剃りを行うことができる。また、短毛切断領域Z1・Z2と長毛切断領域Z3が周方向に隣接して設けられているので、固定刃15を肌面に接触したまま軸まわりに回転させることで、長毛、短毛を連続して切断できる。
 
【0064】
  上記電気かみそりであって、
  長毛切断領域Z3がスリット状の刃穴45を含み、
  長毛切断領域Z3の刃穴45の長手方向が、固定刃15の周方向に沿って設けられることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成によれば、長毛切断領域Z3のスリット状の刃穴45の長手方向が、固定刃15の周方向に沿って設けられるので、固定刃15を肌面に接触したまま軸まわりに回転させるとき、長毛を導入しやすく、好適に長毛を切断できる。なお、刃穴45の長手方向が、固定刃15の周方向に沿って設けられるとは、刃穴の長手方向が周方向と厳密に一致するものに限らず±10度の角度で僅かに傾斜していてもよい。
 
【0065】
  また、上記実施例の電気かみそりは以下の態様で実施することができる。
  本体ケース1と、本体ケース1で支持されるかみそりヘッド2を備えており、
  かみそりヘッド2に可動刃14・101と、可動刃14・101の周囲を囲む円筒状の固定刃15が設けられており、
  固定刃15の周面全体に切刃44および刃穴45を備えた切断領域が設けられており、
  可動刃14・101は、固定刃15の周面全体に形成される切刃44と協同してひげを切断する小刃19・103を備えており、
  固定刃15がグリップを兼ねる長軸状の本体ケース1の一端に突出して設けられており、
  円筒状の固定刃15の長軸方向と本体ケース1の長軸方向が略一致するように設けられて、固定刃15の切断領域の全周面が自由空間に露出しており、
  固定刃15の長軸方向に、刃穴45の形成パターンが異なる複数の切断領域が隣接して設けられていることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成のように、固定刃15の長軸方向に、刃穴45の形成パターンが異なる複数の切断領域が隣接して設けられていると、ひげの長さやひげの密生度合の違いなどに応じて、各切断領域を使い分けることにより、ひげ切断を素早くしかも効果的に行うことができる。
 
【0066】
  上記電気かみそりであって、
  切断領域が、少なくとも、主に短毛を切断する短毛切断領域Z1・Z2と、主に長毛を切断する長毛切断領域Z3とを備えていることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成によれば、長毛切断領域Z3にて長毛を切断したあとに、短毛切断領域Z1・Z2にて仕上げ剃りを行うことができる。また、短毛切断領域Z1・Z2と長毛切断領域Z3が固定刃15の長軸方向に隣接して設けられているので、固定刃15を肌面に接触したまま固定刃15の長軸方向に往復動させることで、長毛、短毛を連続して切断できる。
 
【0067】
  上記電気かみそりであって、
  長毛切断領域Z3が、スリット状の刃穴45を含み、
  長毛切断領域Z3の刃穴45の長手方向が、固定刃15の長軸方向に沿って設けられることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成によれば、長毛切断領域Z3のスリット状の刃穴45の長手方向が、固定刃15の長軸方向に沿って設けられるので、固定刃15を肌面に接触したまま固定刃15の長軸方向に往復動させるとき、長毛を導入しやすく、好適に長毛を切断できる。なお、刃穴45の長手方向が、固定刃15の長軸方向に沿って設けられるとは、刃穴の長手方向が長軸方向と厳密に一致するものに限らず±10度の角度で僅かに傾斜していてもよい。
 
【0068】
  上記電気かみそりであって、  
  長毛切断領域Z3が、本体ケース1から遠ざかる側の一端に設けられることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成によれば、長毛切断領域Z3を長毛の生えている部分にあてがうときの、長毛切断領域Z3の姿勢や角度を自由に選定できる。従って、肌面に倒込んでいる  長毛を刃穴45に適確に誘い込んで、長毛の切断をより確実に行うことができる。なお、長毛切断領域Z3が本体ケース1に近い側に設けてある場合には、短毛切断領域Z1が肌面に先当りして邪魔になることがある。また、固定刃15の径を小さくすれば鼻毛剃りにも適用でき、その場合、鼻の穴に固定刃15の端部を差し込めば鼻毛を容易に切断できる。
 
【0069】
  上記電気かみそりであって、
  長毛切断領域Z3が、短毛切断領域Z1・Z2と短毛切断領域Z1・Z2に挟まれて設けられることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成により、本体ケース1を軸線方向に往復動し、固定刃15を同方向に往復動させれば、長毛切断領域Z3を基準に両サイドに短毛切断領域Z1があるため、より効率的にひげ剃り作業を行うことができる。
 
【0070】
  上記電気かみそりであって、
  長毛切断領域Z3が、本体ケース1から遠ざかる側の一端に設けられており、
  長毛切断領域Z3が、スリット状の刃穴45を含み、
  長毛切断領域Z3の刃穴45の長手方向が、固定刃15の周方向に沿って設けられることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成により、本体ケース1を手に持ち、その部分を軸に揺動すれば、少ない手の動きによって長毛切断領域Z3が大きく振幅するので、効果的に長毛を切断できる。このとき、刃穴45の長手方向が、固定刃15の周方向に沿って設けられるので、長毛を刃穴45に適確に誘い込んで、長毛の切断をより確実に行うことができる。また、固定刃15の径を小さくすれば鼻毛剃りにも適用でき、その場合、鼻の穴に固定刃15の端部を差し込み長軸まわりに回転すれば鼻毛を容易に切断できる。なお、刃穴45の長手方向が、固定刃15の周方向に沿って設けられるとは、刃穴の長手方向が周方向と厳密に一致するものに限らず±10度の角度で僅かに傾斜していてもよい。
 
【0071】
  また、上記実施例の電気かみそりは以下の態様で実施することができる。
  本体ケース1と、本体ケース1で支持されるかみそりヘッド2を備えており、
  かみそりヘッド2に可動刃14・101と、可動刃14・101の周囲を囲む固定刃15が設けられており、
  本体ケース1が、基部ケース3と、基部ケース3に対して屈曲軸4で揺動可能に連結されるヘッド側ケース5で構成されており、
  かみそりヘッド2が、ヘッド側ケース5の一端に突出して設けられており、
  ヘッド側ケース5の軸線が基部ケース3の軸線と略一致する第1姿勢と、ヘッド側ケース5が第1姿勢から略90度の角度で屈曲した第2姿勢との間で揺動可能に構成されており、
  第2姿勢においてヘッド側ケース5が基部ケース3に対して揺動可能に弾性支持されていることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成によれば、かみそりヘッド2と本体ケース1が略一直線状となる形態、若しくはかみそりヘッド2と本体ケース1が略90度の角度で交差する形態に姿勢変更できるので、ユーザーはどちらか使用しやすい形態を選択でき、使い勝手を向上することができる。さらに、かみそりヘッド2と本体ケース1が略90度の角度で交差する形態の第2姿勢のときに、かみそりヘッド2が揺動可能に弾性支持されているので、固定刃15が肌面に過剰に押し付けられるのを防止して、肌面に大きな負担が掛かるのを防止できる。
 
【0072】
  上記電気かみそりであって、
  基部ケース3とヘッド側ケース5のいずれか一方に設けた屈曲軸4が、他方に設けた軸受部12で相対揺動可能に支持されており、
  屈曲軸4と軸受部12の間に、ヘッド側ケース5を第1姿勢と第2姿勢において姿勢保持する弾性節度構造が設けられており、
  弾性節度構造が、屈曲軸4と軸受部12のいずれか一方に固定される節度ばね60を含み、
  節度ばね60が、ヘッド側ケース5を揺動可能に弾性付勢するためのばねを兼ねていることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成によれば、ヘッド側ケース5、つまりかみそりヘッド2を弾性付勢するためのばねを別途設ける必要がないため、部品点数を削減することができる。
 
【0073】
  上記電気かみそりであって、
  基部ケース3とヘッド側ケース5のいずれか一方に設けた屈曲軸4が、他方に設けた軸受部12で相対揺動可能に支持されており、
  屈曲軸4と軸受部12の間に、ヘッド側ケース5を第1姿勢と第2姿勢において姿勢保持する弾性節度構造が設けられており、
  弾性節度構造が、屈曲軸4と軸受部12のいずれか一方に固定されるリング状の節度ばね60と、節度ばね60に設けた第1節度体61と、屈曲軸4と軸受部12の残る他方に設けられて、節度ばね60を弾性変形させながら第1節度体61と係脱する第2節度体62を備えており、
  第1節度体61と第2節度体62が係合する第2姿勢において第1節度体61と第2節度体62の係合が第1姿勢に向かう側とは反対側に解除されるデッドポイントの間で、ヘッド側ケース5が節度ばね60のばね力によって揺動可能に弾性支持されていることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成によれば、ヘッド側ケース5、つまりかみそりヘッド2を弾性付勢するためのばねを別途設ける必要がないため、部品点数を削減することができる。
 
【0074】
  上記電気かみそりであって、
  第2姿勢におけるヘッド側ケース5が、第2姿勢と第1姿勢から90度を超え、かつ第2姿勢を超える姿勢との間で揺動可能に基部ケース3に連結されていることを特徴とする電気かみそり。
  上記構成によれば、第2姿勢からの揺動時にヘッド側ケース5、つまりかみそりヘッド2と、基部ケース3、つまり本体ケース1とが鋭角となる姿勢になるので、固定刃15を肌面に強い力で押し当てた場合、固定刃15が逃げやすくなり、揺動構造の破損を可及的に防止することができる。
 
【0075】
  上記電気かみそりであって、
  基部ケース3の内部に設けたモーター8と、可動刃14・101との間に、モーター8の回転動力を可動刃14に伝動する動力伝動構造が設けられており、
  動力伝動構造が、モーター8の回転動力を伝動する駆動ギヤ85と、駆動ギヤ85の動力を可動刃14・101に伝動するための屈曲軸4を中心に回転するフェースギヤ84を含むことを特徴とする電気かみそり。
  上記構成によれば、モーター8をグリップを兼ねる基部ケース3の内部に配置したので、ヘッド側ケース5を第2姿勢に屈曲させた状態において持ち重りすることがない。また、ヘッド側ケース5が第1姿勢と第2姿勢の間で揺動変位するとき、モーター8に駆動電流を供給するモーターリードが折曲げられることがないので、モーターリードが断線するのを防止できる。
 
【0076】
  上記実施例の円筒状の固定刃15の円筒状とは、長軸方向に漸次径が異なる截頭円錐状を含むものとする。上記実施例の可動刃14・101はいずれも板状の小刃19・103を含むものであるが、例えば、ステンレス等の金属板をエッチング処理して多数の開口(開口周辺が切断刃)を形成し、この金属板をロール加工して円筒状としたドラム形状の可動刃14・101とすることができる。本発明においては、円筒状の固定刃15に限らず、部分円弧状の固定刃15であってもよい。この場合、固定刃15や可動刃14・101を支持する支軸16は、かみそりヘッド2の中心に設ける必要はなく、偏位する位置に設けて、固定刃15や可動刃14・101を両持ち支持する構成とすることができる。