(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758147
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】コージェライト含有アルミナ−シリカれんがの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/18 20060101AFI20200910BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
C04B35/18
F27D1/00 N
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-200167(P2016-200167)
(22)【出願日】2016年10月11日
(65)【公開番号】特開2018-62435(P2018-62435A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 博文
(72)【発明者】
【氏名】小出石 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 倫
(72)【発明者】
【氏名】田村 佳洋
【審査官】
小川 武
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−227768(JP,A)
【文献】
特開平07−267726(JP,A)
【文献】
特開昭57−124604(JP,A)
【文献】
特開昭63−156061(JP,A)
【文献】
特開2015−189641(JP,A)
【文献】
特開平05−262557(JP,A)
【文献】
特開昭58−064256(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0203013(US,A1)
【文献】
特開平03−068411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
B22D 41/02
F23D 11/00
F27D 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度が3mm未満のアンダリュサイト及び/又はシリマナイトを60質量%以上88質量%以下、粒度が0.074mm以上3mm未満のコージェライトを10質量%以上30質量%以下、及び粘土を2質量%以上12質量%以下含有し、粒度が0.074mm未満のコージェライトの含有量が5質量%以下(0を含む。)である耐火原料配合物に、バインダーを添加して混練し、成形後、1100℃以上1400℃以下で焼成するコージェライト含有アルミナ−シリカれんがの製造方法。
【請求項2】
コージェライトが焼結コージェライトである請求項1に記載のコージェライト含有アルミナ−シリカれんがの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風炉の内張り耐火物やセラミックバーナーを構成する耐火物として好適に使用されるコージェライト含有アルミナ−シリカれんがの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱風炉の内張り耐火物には耐熱衝撃性と耐クリープ性が要求されるため、一般的にアルミナ−シリカれんがが使用されている。また、熱風炉のセラミックバーナーにおいては温度変動が苛酷なため耐熱衝撃性を最重要特性と考え、コージェライト含有アルミナ−シリカれんがが使用される場合もある。例えば、熱風炉のセラミックバーナーに使用されるコージェライト含有アルミナ−シリカれんがとしては、特許文献1に、シリマナイト、アンダリュサイト又はその双方に10重量%以上のコージェライトを添加混合し焼成した耐火物が開示されている。
【0003】
しかしながら近年は、熱風炉で高温熱風を発生する操業へ移りつつあり、熱風炉に使用される耐火物としてはより高い耐クリープ性と耐熱衝撃性が要求されるようになってきているところ、特許文献1のような従来のコージェライト含有アルミナ−シリカれんがでは、特に耐クリープ性に問題があり、前述のような高温での熱風炉の操業等では寿命のネックとなると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−124604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、耐クリープ性を向上ししかも十分な耐熱衝撃性を有するコージェライト含有アルミナ−シリカれんがの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、コージェライト含有アルミナ−シリカれんがにおいて耐クリープ性を向上するために耐火原料配合物中のコージェライトの粒度及び使用量について種々検討した結果、コージェライトの粒度が0.074mm未満の微粉を使用しないかあるいは5質量%以下とすることで大幅に耐クリープ性が向上することを知見した。さらに、粘土を結合組織とする場合には粒度が0.074mm以上のコージェライトは、30質量%を超えると耐熱衝撃性が低下傾向となりしかも歩留りが低下することが分かった。
【0007】
すなわち、本発明のコージェライト含有アルミナ−シリカれんがの製造方法は、粒度が3mm未満のアンダリュサイト及び/又はシリマナイトを60質量%以上88質量%以下、粒度が0.074mm以上3mm未満のコージェライトを10質量%以上30質量%以下、及び粘土を2質量%以上12質量%以下含有し、粒度が0.074mm未満のコージェライトの含有量が5質量%以下(0を含む。)である耐火原料配合物に、バインダーを添加して混練し、成形後、1100℃以上1400℃以下で焼成することを特徴とするものである。
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0009】
本発明において、粒度が3mm未満のアンダリュサイト及び/又はシリマナイトは十分な耐クリープ性を確保するために使用し、60質量%未満では耐クリープ性が不足し、88質量%を超えると耐熱衝撃性が低下する。
【0010】
粒度が0.074mm以上3mm未満のコージェライトは耐熱衝撃性を向上するために使用し、10質量%未満では耐熱衝撃性が不十分となり、30質量%を超えると耐熱衝撃性が逆に低下ししかも焼成後の歩留りの低下も問題となる。すなわち、コージェライトは熱膨張率が小さいため耐火原料配合物に使用することでれんがの熱膨張率が小さくなるため耐熱衝撃性は向上するが、使用量が多すぎると1100℃程度の焼成でも粘土などと反応して組織が緻密化しガラスが生成するために耐熱衝撃性が低下する。焼成温度を下げると耐熱衝撃性の低下を抑制できるが、今度は粘土などの結合組織の発達が不十分となり耐クリープ性の低下が問題となる。
【0011】
粒度が0.074mm未満のコージェライトは耐クリープ性を低下させるために使用しないことが好ましいが、5質量%以下であれば大きな影響はないため使用することもできる。
【0012】
粘土は、焼成によって結合組織を形成するために2質量%以上12質量%以下で使用し、2質量%未満では十分な結合組織が得られないため強度及び耐クリープ性が不十分となり、12質量%を超えると組織が緻密になりすぎ耐熱衝撃性が低下する。
【0013】
コージェライトとしては、電融コージェライトでも焼結コージェライトでも使用することができるが、焼結コージェライトを使用した方がより耐クリープ性が高くなる点で好ましい。
【0014】
本発明のコージェライト含有アルミナ−シリカれんがは、前述の耐火原料配合物にバインダーを添加して混練し、成形後、焼成する通常の方法によって得られる。このとき焼成温度は1100℃以上1400℃以下の範囲とする。焼成温度が1100℃未満では強度が不足し、1400℃を超えると組織が緻密になりすぎ耐熱衝撃性が低下する。
【0015】
なお、本発明でいう粒度とは、JIS標準篩におけるフルイ目開き(mm)で示している。例えば、粒度が0.074mm未満の原料粒子とは、フルイ目開きが0.074mmの篩で篩ったときに篩い目を通過した原料粒子のことであり、粒度が0.074mm以上の原料粒子とは、同篩上に残った原料粒子のことである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐クリープ性及び耐熱衝撃性に優れるコージェライト含有アルミナ−シリカれんが得られるため、これを使用した熱風炉の寿命が向上する。また、熱風炉において高温熱風を発生する操業が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で使用するアンダリュサイト及びシリマナイトは、耐火物の原料として一般的に使用されているものを使用することができる。これらの原料は、天然から採掘される鉱物であり、それらを精製して使用することができる。より耐クリープ性を確保したい場合には、不純物としての酸化鉄含有量が約2質量%以下、好ましくは1質量%以下のものを使用することもできる。
【0018】
前述のとおり、アンダリュサイト及び/又はシリマナイトは耐火原料配合物中に60質量%以上含有することで十分な耐クリープ性を確保することができる。このときアンダリュサイト及び/又はシリマナイトは、粒度が3mm未満のものを適切な粒度構成に調整して使用する。例えば粒度が0.074mm以上3mm未満のアンダリュサイト及び/又はシリマナイトを30質量%以上70質量%以下、粒度が0.074mm未満のアンダリュサイト及び/又はシリマナイトを10質量%以上40質量%以下とすることができる。このように粒度を適切に調整することで成形時の充填性に優れより組織が緻密で強度の高いれんがとすることができる。
【0019】
本発明で使用するコージェライトは、耐火物の原料として一般的に使用されているものを使用することができ、例えば電融コージェライトや焼結コージェライトなどを使用することができるが、前述のとおり耐クリープ性をより向上する点からは焼結コージェライトを使用することが好ましい。
【0020】
本発明で使用する粘土は、通常の耐火物の原料として市販されているものを使用することができ、例えばSiO
2含有量が40〜70質量%、Al
2O
3含有量が20〜30質量%のものなどを使用することができる。
【0021】
本発明では前述の原料以外に、アルミナ系原料やアルミナ−シリカ系原料を10質量%以下であれば耐火原料配合物中に含有することができる。例えば、ボーキサイト、バンケツ、シャモット、ろう石、アルミナ、あるいはムライトなどである。
【実施例】
【0022】
表1に示す耐火原料配合物に水系のバインダーを添加して混練し、プレス機で並形れんがを成形し、乾燥後、1200℃で焼成した。
【0023】
【表1】
【0024】
原料として使用したコージェライトはコージェライト含有量が90質量%の焼結コージェライトを使用し、粘土はAl
2O
3含有量が25質量%、SiO
2含有量が55質量%のものを、アンダリュサイトはAl
2O
3含有量が60質量%、SiO
2含有量が37質量%のものを、シリマナイトはAl
2O
3含有量が75質量%、SiO
2含有量が20質量%のものを使用した。
【0025】
そして焼成後のれんがから、サンプルを切り出し、圧縮強さ、耐熱衝撃性試験及び耐クリープ性の評価として荷重軟化試験を行った。圧縮強さはJIS−R2206に従い測定した。耐熱衝撃性試験はJIS−R2657に従い800℃加熱後の水冷法により、20回行い剥落の状態を観察した。荷重軟化試験はJIS−R2209に従い0.2MPaの荷重を加えて2%軟化点であるT2(℃)を測定した。
【0026】
実施例1から実施例3は0.074mm以上3mm未満のコージェライトの使用量が異なる場合であるがいずれも良好であった。これに対して比較例1は0.074mm以上3mm未満のコージェライトの使用量が5質量%と本発明の下限値を下回っており、耐熱衝撃性試験では17回で剥落が発生し耐熱衝撃性に問題があることがわかった。また、比較例2は0.074mm以上3mm未満のコージェライトの使用量が40質量%と本発明の上限値を超えており、耐熱衝撃性試験では15回で剥落が発生し耐熱衝撃性に問題があることがわかった。この比較例2では、2%軟化点T2も1385℃と低下し、さらに焼成後のれんがには、表面にガラスによる発泡とれんがの変形が生じたものがあった。
【0027】
実施例4と実施例5は0.074mm未満のコージェライトの使用量が異なる場合であるがいずれも良好であった。これに対して、比較例3は0.074mm未満コージェライトの使用量が8質量%と本発明の上限値を上回っており、2%軟化点T2が1380℃と低くなり耐クリープ性に問題があることがわかった。
【0028】
実施例6と実施例7は0.074mm未満のアンダリュサイトと粘土の使用量が異なる場合であるがいずれも良好な結果となった。
【0029】
実施例8と実施例9はアンダリュサイトの代わりにシリマナイトを使用した場合、実施例10はアンダリュサイトとシリマナイトを併用した場合であるがいずれも良好な結果となった。