(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758173
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】自動走行作業車
(51)【国際特許分類】
B60W 50/04 20060101AFI20200910BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20200910BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20200910BHJP
G08G 1/097 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
B60W50/04
A01B69/00 B
A01B69/00 303Z
B60R16/02 630L
G08G1/097 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-244522(P2016-244522)
(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公開番号】特開2018-95203(P2018-95203A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2018年12月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松崎 優之
【審査官】
増子 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−138570(JP,A)
【文献】
特開2016−034238(JP,A)
【文献】
特開平03−286340(JP,A)
【文献】
特開2013−095379(JP,A)
【文献】
特開平09−091039(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0126256(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 10/30
B60W 30/00 − 60/00
A01B 69/00 − 69/08
B60R 16/00 − 17/02
G08G 1/00 − 99/00
G01C 21/00 − 21/36
G01C 23/00 − 25/00
G05D 1/00 − 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路に沿って作業走行する自動走行作業車であって、
衛星測位モジュールからの測位データに基づいて自車位置を算出する自車位置算出部と、
前記走行経路を生成する走行経路生成部と、
作業走行時に実行される作業事象を規定する作業事象計画を生成する作業事象計画部と、
前記走行経路に沿った自動走行を制御する走行制御部と、
前記走行経路と前記作業事象計画と前記自車位置とに基づいて実作業事象指令を生成する実作業事象指令生成部と、
前記走行経路と前記作業事象計画と前記自車位置とに基づいて仮想作業事象指令を生成する仮想作業事象指令生成部と、
前記実作業事象指令に基づいて前記作業事象の実行を制御する作業制御部と、を備え、
前記仮想作業事象指令生成部を含む第1制御ユニットと、前記実作業事象指令生成部を含む第2制御ユニットとは、それぞれ独立した制御系として構築されており、
前記実作業事象指令に基づいて、前記走行制御部及び前記作業制御部により、前記走行経路に沿った作業走行が行われるように構成されており、
前記実作業事象指令と前記仮想作業事象指令とは、互いに同一の結果が出力されるように夫々生成されるものであり、
前記実作業事象指令と前記仮想作業事象指令とは、実作業事象指令部及び仮想作業事象指令部が正常である場合には、互いに一致する情報であり、且つ、実作業事象指令部及び仮想作業事象指令部の何れかが異常である場合には異なる情報であり、
前記走行経路に沿った作業走行中に前記実作業事象指令と前記仮想作業事象指令とを比較する作業走行監視部と、
前記実作業事象指令と前記仮想作業事象指令とが一致しない場合に、車体の停止、警告報知、自動運転から手動運転への変更、のうちの少なくとも何れか一つを実行する異常処理部と、を備えた自動走行作業車。
【請求項2】
前記第1制御ユニットは、前記走行経路生成部と前記作業事象計画部とを含んでおり、
前記第1制御ユニットと、前記第2制御ユニットと、前記作業走行監視部を含む第3制御ユニットとは、それぞれ独立した制御系として構築されている請求項1に記載の自動走行作業車。
【請求項3】
前記第1制御ユニットは、タッチパネルを備えた入出力機能付きデータ処理端末として構成されている請求項2に記載の自動走行作業車。
【請求項4】
前記作業走行監視部は、前記作業事象が割り当てられている前記走行経路上を走行する際に、前記作業事象に関する前記実作業事象指令と前記仮想作業事象指令とを比較する請求項1から3のいずれか一項に記載の自動走行作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行経路に沿って作業走行する自動走行作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、種々の作業モードで作業可能な農作業機が開示されている。この農作業機は、目標農作業区画のための農作業情報をダウンロードするとともに、設定されている設定作業モードと、ダウンロードされた農作業情報に含まれている登録作業モードとを比較して、その比較結果をディスプレイに表示する。作業者は、ディスプレイに表示される比較結果を通じて、現状の農作業機に設定されている作業モードと予め管理センタに登録されている作業モードが一致しているかどうかを簡単かつ確実に把握することができる。作業モードには、種々の作業を行うために規定されている作業用機器の設定パラメータ、例えば、作業装置の姿勢や走行速度などが含まれており、正しい作業モードを用いることで、計画通りの作業を実施することができる。
【0003】
特許文献2には、作業走行における運転者の負担を軽減するため、作業走行中に手動操作で行われた一連の操作内容を記録しておき、その後は記録された操作内容を再生し、一連の操作内容を自動的に実行する運転支援システムが開示されている。このような運転支援システムは、走行車体を走行させるための走行動作機器及び対地作業装置を動作させるための作業動作機器に動作制御信号を出力する機器制御ユニットと、動作制御信号に対応する制御データを実行処理順に作業走行シーケンスとして記録する記録部と、記録部に記録された制御データを読み出して機器制御ユニットに与える再生部と、実行処理単位毎の前記制御データから変換されたアイコンを実行処理順に表示する作業走行シーケンス画面をディスプレイに表示する画面処理部と、複数の前記作業走行シーケンスを同一の作業走行シーケンス画面上で管理する複数作業走行管理部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−138570号公報
【特許文献2】特開2016−034238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1による農作業機では、作業走行の開始前に作業モードをチェックすることで、各作業用機器の設定パラメータが適切に設定される。しかしながら、作業走行が開始した後は、設定パラメータが適切であるがどうかのチェックが行われないので、故障等で設定パラメータが変更されても、そのような変更に気づかないで作業走行を続行するという問題がある。
特許文献2による運転支援システムでは、一度記録された、特定の作業走行のシーケンスデータを再生することで、同じ作業走行が正確に繰り返される。しかしながら、このような記録再生システムでは、再生タイミングを管理する制御機能部の不具合や作業機器の不具合で作業走行のシーケンスにズレが生じても、気づかないまま作業走行を続行するという問題がある。
このような実情に鑑み、本発明の目的は、走行経路に沿って作業走行が適切に実施されているかどうかを監視することができる自動走行作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による、走行経路に沿って作業走行する自動走行作業車は、衛星測位モジュールからの測位データに基づいて自車位置を算出する自車位置算出部と、前記走行経路を生成する走行経路生成部と、作業走行時に実行される作業事象を規定する作業事象計画を生成する作業事象計画部と、前記走行経路に沿った自動走行を制御する走行制御部と、前記走行経路と前記作業事象計画と前記自車位置とに基づいて実作業事象指令を生成する実作業事象指令生成部と、前記走行経路と前記作業事象計画と前記自車位置とに基づいて仮想作業事象指令を生成する仮想作業事象指令生成部と、前記実作業事象指令に基づいて前記作業事象の実行を制御する作業制御部と、を備え、前記仮想作業事象指令生成部を含む第1制御ユニットと、前記実作業事象指令生成部を含む第2制御ユニットとは、それぞれ独立した制御系として構築されており、前記実作業事象指令に基づいて、前記走行制御部及び前記作業制御部により、前記走行経路に沿った作業走行が行われるように構成されており、
前記実作業事象指令と前記仮想作業事象指令とは、互いに同一の結果が出力されるように夫々生成されるものであり、前記実作業事象指令と前記仮想作業事象指令とは、実作業事象指令部及び仮想作業事象指令部が正常である場合には、互いに一致する情報であり、且つ、実作業事象指令部及び仮想作業事象指令部の何れかが異常である場合には異なる情報であり、前記走行経路に沿った作業走行中に前記実作業事象指令と前記仮想作業事象指令とを比較する作業走行監視部と、前記実作業事象指令と前記仮想作業事象指令とが一致しない場合に、車体の停止、警告報知、自動運転から手動運転への変更、のうちの少なくとも何れか一つを実行する異常処理部と、を備えている。
なお、この出願で用いられている「作業走行」という語句には、走行しながら作業を行うこと、走行のみを行うこと、作業のみを行うこと、これらのうち少なくとも1つが行われている状態、さらにはそのような走行作業の一時的な停止状態が含まれている。
【0007】
この構成によれば、実際に機器を駆動して、作業事象計画に規定されている作業事象(車速の変更、車体の向き変更、作業装置の姿勢変更など)を現出させるために生成される実作業事象指令と、この実作業事象指令の生成とは別系統で、ダミーとしての仮想作業事象指令が生成される。したがって、予め決められた走行経路に沿って自動走行している間に、作業車が、所定の作業事象の実行が計画されている作業事象計画点に到達すると、当該作業事象のための実作業事象指令と仮想作業事象指令とが作業走行監視部によってチェックされる。取り出された実作業事象指令と仮想作業事象指令とが、実質的に同じタイミングで出力され、同じ作業事象内容であれば、作業走行は正常であると判断され、そうでなければ、作業走行に異常が生じていると判断することができる。あるいは、実作業事象指令が出力されるタイミングで、仮想作業事象指令が出力されない場合は、当該作業事象を実行するために用いられるセンサや動作機器、あるいは信号線やデータ線に異常が発生していると判断することができる。走行経路に沿った作業走行の間には、実行されるべき多数の作業事象があり、各作業事象の実行タイミングで、実作業事象指令が適正なものであるかどうかがチェックされるので、作業走行上の何らかの異常が迅速に検知され、異常発生に対するリカバリーを早期に実施することができる。
【0008】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記第1制御ユニットは、前記走行経路生成部と前記作業事象計画部とを含んでおり、前記第1制御ユニットと、前記第2制御ユニットと、前記作業走行監視部を含む第3制御ユニットとは、それぞれ独立した制御系として構築されている。これにより、信号やデータの通信不良といったトラブルが生じても、そのトラブルは通信不良等が生じた制御ユニットのみに限定されるので、作業走行監視部による作業事象の監視の信頼度が高まる。
【0009】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記第1制御ユニットは、タッチパネルを備えた入出力機能付きデータ処理端末として構成されている。第1制御ユニットには、走行経路生成部と前記作業事象計画部といったユーザ操作を必要とする機能部が構築されているだけでなく、大規模な作業走行では走行経路や作業事象に関するデータ容量が大きくなるので、走行経路生成部及び前記作業事象計画部の機能実行には大きな演算能力が必要となる。このため、他の制御ユニットとは異なって、高度なユーザインターフェースや高い演算能力を有する入出力機能付きデータ処理端末が、第1制御ユニットとして利用されることは、有益である。
【0010】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記作業走行監視部は、前記作業事象が割り当てられている前記走行経路上を走行する際に、前記作業事象に関する前記実作業事象指令と前記仮想作業事象指令とを比較するように構成されている。実作業事象指令と仮想作業事象指令とが、内容的あるいはタイミング的に一致しない場合、制御系が不調で、作業走行が計画通りに行われていないことになるので、作業走行に異常が発生していると判断される。このような異常は、データや信号の通信不良、センサの不良、各種作業走行機器の不良が考えられるので、作業走行の停止を含む、異常処理が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】自動走行作業車の実施形態の1つであるトラクタの側面図である。
【
図2】走行経路と走行経路に割り当てられた作業事象を説明する説明図である。
【
図3】トラクタの制御機能を示す機能ブロック図である。
【
図4】作業走行監視の制御の流れを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による自動走行作業車の実施形態として、農作業用のトラクタが取り上げられる。
図1にトラクタの側面図が示されている。このトラクタは、前輪2aと後輪2bとによって支持されているトラクタの車体1の前部にエンジン20が搭載され、エンジン20の後方にトランスミッション3が搭載されている。車体1の後方には耕耘装置22が昇降機構23を介して昇降自在に装備されている。このトラクタは四輪駆動型であり、エンジン20の動力は、トランスミッション3に内装された変速機構を介して駆動輪として機能可能な前輪2a及び後輪2bに伝達される。さらに、エンジン20の動力は、トランスミッション3から後方に突き出しているPTO軸24を介して耕耘装置22にも伝達される。
エンジン20はボンネット21によって覆われている。ボンネット21の後方かつトランスミッション3の上方でキャビン10が車体1に支持されている。
【0013】
キャビン10の内部は運転空間として機能し、その前部には、前輪2aの操向操作を操舵機構(不図示)を介して行うステアリングハンドル11が配置され、その後部で、左右一対の後輪フェンダ15の間には、運転座席12が配置されている。運転座席12の側方から前方にかけて、各種操作具を有するアームレスト操作装置13が設けられている。アームレスト操作装置13の前方には、第1制御ユニット4として機能する入出力機能付きデータ処理端末が配置されている。このデータ処理端末(第1制御ユニット4)は、タブレット型コンピュータであり、タッチパネル41が備えられており、運転者による各種操作入力の受け入れ、及び運転者への種々の情報を報知することができる。
【0014】
アームレスト操作装置13には、図示は省略されているが、耕耘装置22を昇降機構23の動作を通じて昇降させるための操作レバーやトランスミッション3における変速段の切り替える変速レバー、4WDと2WDとを切り替える駆動モード切替レバー、エンジン回転数を調整するエンジン回転数調整レバーなどが配置されている。
【0015】
図2には、このトラクタで実施される作業走行の一例が模式的に示されている。この例では、トラクタが自動走行する走行経路は、複数の直線経路と、この直線経路同士を接続するUターン経路とからなる往復直線走行経路である。このような走行経路では、直線経路の走行時には、耕耘装置22を降下させることで耕耘作業が行われる(作業事象の1例)。Uターン経路の走行時には、耕耘装置22を上昇させることで耕耘作業が停止され非作業走行となる(作業事象の1例)。さらに、操舵制御を用いて、Uターン旋回走行、あるいは後進を用いたスイッチバック走行を取り入れて、車体1の向きが変更される(作業事象の1例)。
【0016】
図2の例では、計画された走行経路に沿って、作業事象計画点(
図2では、S1、S2、・・・で示されている)が設定される。各作業事象計画点には、そこで実行される作業事象(
図2では、E1、E2、・・・で示されている)と、地図上の位置(
図2では、P1、P2、・・・で示されている)が割り当てられる。作業事象には、車体1の動作状態(車速、変速段、操舵角など)や耕耘装置22の動作状態(耕耘深さ、上昇位置など)を決定するパラメータ(
図2ではe11、e12、・・・で示されている)が含まれており、このパラメータに基づいて特定の作業事象が実行される。地図上の位置は、座標位置(
図2では(x1,y1)、(x2,y2)、・・・で示されている)で表されている。
【0017】
図3に、トラクタの制御機能を示す機能ブロック図が示されている。
図3に示されているように、このトラクタの制御系では、本発明による作業走行監視の制御に特に関係する、第1制御ユニット(データ処理端末)4と第2制御ユニット5と第3制御ユニット6とが備えられている。第1制御ユニット4と第2制御ユニット5と第3制御ユニット6は、互いに車載LANによって接続しているが、互いに独立して動作可能であり、1つの制御ユニットに生じたトラブルが他の制御ユニットに影響しないように構成されている。
【0018】
まず、通常のトラクタの制御系にも備わっている制御機器及び制御機能部を説明する。
図3の制御系では、実線で示されたデータ・信号ライン(車載LANや制御信号線など)によって各機能部がデータ交換可能に接続されているが、その際入出力インタフェースとして機能する、出力処理部、入力処理部、通信部の図示は省略されている。データ・信号ラインは、エンジン20やトランスミッション3や操舵機構などに対する動作機器を含む車両走行機器群91、耕耘装置22や昇降機構23などに対する動作機器を含む作業装置機器群92、ブザーやスピーカやランプなどを含む報知デバイス93などと接続している。また、データ・信号ラインは、自車位置算出部70、走行状態検出センサ群81、作業状態検出センサ群82などと接続している。自車位置算出部70は、GPS等を採用した衛星測位モジュール7からの測位データに基づいて、車体1の地図上の座標位置を算出する。
【0019】
さらに、データ・信号ラインは、走行制御部71や作業制御部72と接続している。走行制御部71は、自動走行制御機能と手動走行制御機能を有する。自動走行制御機能が選択されると、自車位置算出部70からの自車位置と設定された走行経路とに基づいて生成された制御信号が操舵機構に出力され、走行経路に沿った自動走行を実現する。手動走行制御機能が選択されると、運転者によるステアリングハンドル11の操作に基づく手動走行が行われる。同様に、作業制御部72も、上述した作業事象に基づいて耕耘装置22や昇降機構23など自動的に動作させる自動作業制御機能と、各種操作具を用いて手動作業制御機能とを有する。
【0020】
第1制御ユニット4は、タブレット型コンピュータを用いてデータ処理端末として構成されている。第1制御ユニット4は、本発明に特に関係するものとして、タッチパネル41、作業計画作成部42、仮想作業事象指令生成部45を備えており、作業計画作成部42には、走行経路生成部43と作業事象計画部44が含まれている。
【0021】
作業計画作成部42は、トラクタが圃場を走行経路に沿って作業走行するための計画を、タッチパネル41を用いて作成する機能を有するが、予め作業計画書が作成されている場合には、その作業計画書を、通信または記憶メディアを通じて、受け取ることも可能である。走行経路生成部43は、作業対象となる圃場の地形などを含む圃場情報を参照し、予めインストールされている走行経路生成プログラムを用いて走行経路を生成する。作業事象計画部44は、走行経路に沿った作業走行時に実行される作業事象を規定する作業事象計画を生成する。この作業事象計画の内容は、
図2に模式的に示されている。仮想作業事象指令生成部45は、走行経路と作業事象計画と自車位置とに基づいて、自車位置が所定の作業事象計画点である座標位置に到達すると(実際上は、到達する前のタイミングで)、当該作業事象を実行するための仮想作業事象指令を生成する。
【0022】
第2制御ユニット5は、走行経路設定部51、作業事象設定部52、実作業事象指令生成部53を備えている。走行経路設定部51は、走行経路生成部43によって生成された走行経路を走行目標経路として設定し、読み出し可能にメモリに展開し、走行制御部71に与える。作業事象設定部52は、作業事象計画部44によって生成された作業事象計画に記述されている作業事象とその作業事象を実行する座標位置とを、読み出し可能な形態でメモリに展開する。実作業事象指令生成部53は、メモリに展開された作業事象計画と、走行経路設定部51によって設定された走行経路と、自車位置算出部70からの自車位置とに基づいて、所定の作業事象を実行するための実作業事象指令を生成する。生成された実作業事象指令は、作業制御部72に転送される。
【0023】
第3制御ユニット6は、作業走行監視部61と異常処理部62とを備えている。作業走行監視部61は、任意のタイミングで、あるいは自車位置が作業事象計画点に到達したタイミングで、あるいは実作業事象指令と仮想作業事象指令とのどちらか一方が出力されたタイミングで、実作業事象指令生成部53によって生成された実作業事象指令と、仮想作業事象指令生成部45によって生成された仮想作業事象指令とを比較し、実作業事象指令と仮想作業事象指令とが不一致、あるいは比較できない場合、作業走行に異常が発生していると判断する。実作業事象指令と仮想作業事象指令との不一致は、その作業事象に含まれているパラメータ(
図2でe11、e12、・・・で示されている)が一致しないこと、その実施のタイミングがずれていることなどが含まれる。異常処理部62は、作業走行監視部61が異常を判断した時に、その異常の内容に応じた異常処理を行う。この異常処理には、車体1の緊急停止や、報知デバイス93を通じての報知などが含まれる。
【0024】
次に、
図4を用いて、このトラクタの制御系における作業走行監視の制御の流れの一例を説明する。
まず、ユーザが、第1制御ユニット4のグラフィックユーザインタフェースを用いて入力される操作に基づいて、作業計画作成部42が、作業対象となる圃場の作業計画書を作成する。作成される作業計画書には、走行経路生成部43によって生成される作業走行のための走行経路、作業事象計画部44によって生成される作業事象計画が含まれている。
作成された作業計画書は、仮想作業事象指令生成部45及び実作業事象指令生成部53に送られる。さらに、
図4には示されていないが、作業計画書に含まれている走行経路は走行経路設定部51に送られる。
【0025】
作業走行が開始されると、仮想作業事象指令生成部45及び実作業事象指令生成部53は、逐次、自車位置算出部70から自車位置を受け取る。実作業事象指令生成部53は、受け取った自車位置に実質的に一致する座標位置を有する作業事象を抽出し、その作業事象内容を実行するための実作業事象指令を生成する。生成された実作業事象指令は、作業走行監視部61、走行制御部71、作業制御部72に与えられる。同様に、仮想作業事象指令生成部45は、受け取った自車位置に実質的に一致する座標位置を有する作業事象を抽出し、当該作業事象の内容に基づく仮想作業事象指令を生成する。生成された仮想作業事象指令は作業走行監視部61に与えられる。作業走行監視部61は、受け取った実作業事象指令と仮想作業事象指令とを比較し、その内容が一致しない場合、作業走行に異常が発生したと判断して、異常情報を出力する。また、いずれか一方だけの作業事象指令しか受け取っていない場合にも、作業走行に異常が発生したと判断して、異常情報を出力する。異常処理部62は、異常情報の内容に応じて、この異常をリカバリーするための異常処理を実行する。異常処理には、車体1の停止、耕耘装置22の停止、自動運転から手動運転の強制変更、報知部73からの制御信号によって動作する報知デバイス93を通じての警告報知などが含まれる。
【0026】
また、自車位置算出部70から自車位置を受け取っていないタイミングにおいて、仮想作業事象指令または実作業事象指令のどちらか一方が出力された場合には、実作業事象指令と仮想作業事象指令との両方が出力されているかどうか、さらにはその内容を比較し、異常の判断を行うことも可能である。
【0027】
〔別実施の形態〕(1)上述した実施形態では、耕耘装置22を装備したトラクタが作業車として取り上げられたが、耕耘装置22以外の作業装置を装備したトラクタ、さらには、コンバインや田植機などの農作業機や建機などにも本発明は適用可能である。
(2)上述した実施形態では、第1制御ユニット4、第2制御ユニット5、第3制御ユニット6は、車載LANで接続されており、トラクタに備えられていたが、データ処理端末である第1制御ユニット4は、管理者によって携帯され、トラクタの制御系と無線でデータ交換されるような構成を採用することも可能である。さらに、第1制御ユニット4は、遠隔地の管理コンピュータに構築され、トラクタの制御系とインタネット回線などで接続されるような構成を採用することも可能である。
(3)
図3で示された機能ブロック図における各機能部の区分けは、説明を分かりやすくするための一例であり、種々の機能部を統合したり、単一の機能部を複数に分割したりすることは自由である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、走行経路に沿って作業走行する自動走行作業車に適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 :車体
22 :耕耘装置
23 :昇降機構
4 :第1制御ユニット(データ処理端末)
41 :タッチパネル
42 :作業計画作成部
43 :走行経路生成部
44 :作業事象計画部
45 :仮想作業事象指令生成部
5 :第2制御ユニット
51 :走行経路設定部
52 :作業事象設定部
53 :実作業事象指令生成部
6 :第3制御ユニット
61 :作業走行監視部
62 :異常処理部
7 :衛星測位モジュール
70 :自車位置算出部
71 :走行制御部
72 :作業制御部
73 :報知部
93 :報知デバイス