特許第6758174号(P6758174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エバタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6758174-ごみ除去具 図000002
  • 特許6758174-ごみ除去具 図000003
  • 特許6758174-ごみ除去具 図000004
  • 特許6758174-ごみ除去具 図000005
  • 特許6758174-ごみ除去具 図000006
  • 特許6758174-ごみ除去具 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758174
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】ごみ除去具
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/14 20060101AFI20200910BHJP
   B01D 29/27 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   E03F5/14
   B01D23/04
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-247368(P2016-247368)
(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公開番号】特開2018-100540(P2018-100540A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】591084654
【氏名又は名称】エバタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】北原 智子
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5816207(JP,B2)
【文献】 特許第4079957(JP,B2)
【文献】 登録実用新案第3203003(JP,U)
【文献】 実開平07−037307(JP,U)
【文献】 特開2001−311215(JP,A)
【文献】 米国特許第06334953(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/14
B01D 29/02 − 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に形成される流入口又は流出口から流入又は流出する流体に含まれるごみを除去するためのごみ除去具であって、
一端に開口部を有する袋状の網体と、
前記開口部に設けられ、該開口部の開口径を調整するための紐と、
前記網体の外周面上において、前記開口部から所定距離離れた円周上に、全周にわたって、連続的又は断続的に設けられる取付部と、
前記開口部と前記取付部が重なり合うように前記網体が折り畳まれた状態で、前記壁面に前記開口部、前記紐及び前記取付部を固定するための固定用部材とを備えることを特徴とするごみ除去具。
【請求項2】
前記取付部は、前記網体の一部を重畳させて形成されることを特徴とする請求項1に記載のごみ除去具。
【請求項3】
前記網体の他端は、切妻屋根状に拡がるように形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のごみ除去具。
【請求項4】
前記固定用部材は、一端に雄ねじ部を有し、他端が前記壁面に打ち込まれるアンカーボルトと、
該雄ねじ部材の前記雄ねじ部と螺合するナットとを備えることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のごみ除去具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ除去具に関し、特に、雨水貯留槽の入口や排水溝等、浮遊するごみの多い流路に取り付けられるごみ除去具に関する。
【背景技術】
【0002】
雨水貯留槽に流入する雨水に含まれるごみを除去するためのフィルターとして、特許文献1には、雨水貯留槽の内壁から突出する流入管に設けられたフレームに上下方向に取り外し可能なものが提案されている。しかし、このごみ除去フィルターは、着脱が容易であるが、ごみ除去フィルターの購入・設置コストが掛かる。また、このフィルターは、ごみ捕集容量が比較的小さく、捕集したごみによって雨水の流入が阻害されるおそれがあり、フィルターを頻繁に取り外してごみを取り除く必要があった。
【0003】
一方、特許文献2には、厨房等の排水から塵芥を除去するため、排水路の途中に設けられる貯留槽に、貯留槽の内壁から突出する流入管に対して袋状の網体からなる水切りネットを取り付けることが記載されている。しかし、この水切りネットは、排水の流れが速い場合や、ネットに溜まったごみの量が多い場合には、面ファスナーのみで取り付けられるため、ネットが流入管の外周面から外れるおそれがあった。
【0004】
そこで、上記問題点に鑑み、本出願人は、購入・設置コストを低く抑えると共に、流入管からの脱落のおそれのないごみ除去具として、一端に開口径を調整可能な開口部を有する袋状の網体と、開口部に設けられ、網体の一端を壁面に取り付けるための紐と、壁面に設けられ、壁面に紐を固定するための紐固定用部材とを備えるごみ除去具を考案した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5816207号公報
【特許文献2】特許第4079957号公報
【特許文献3】実用新案登録第3203003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載のごみ除去具は、袋状の網体、紐及び紐固定用部材だけで構成されるため、購入・設置コストを低く抑えることができ、流入管からの脱落を考慮する必要がないなど有効に機能する。
【0007】
また、このごみ除去具は、雨水貯留槽等の流入口を覆うように貯留槽等の内部に取り付けた場合には、流入する雨水により、流入口から下流側に拡がりながら垂れ下がった網体の下端部にごみが捕集されるため、流路が閉塞され難く有効である。
【0008】
しかし、このごみ除去具を用いて雨水貯留槽等の流出口から流出する雨水のごみを捕集するには、網体の開口端を雨水貯留槽等の内壁に固定し、網体全体を流出口に接続されている配管の内部に挿入して袋状に広げることが考えられるが、このようにすると、流路上の網体にごみが捕集されるため、流路が閉塞し易いという問題があった。
【0009】
また、このごみ除去具は、壁面から突出した管を利用して取り付けているため、管が存在しない既存の枡等には取り付けられない場合があった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、流入口から流入する、又は流出口から流出する雨水等の流路を確保しながら、雨水等に含まれるごみを除去することで流路が閉塞され難く、壁面から突出した管がなくとも取り付けることができるごみ除去具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、壁面に形成される流入口又は流出口から流入又は流出する流体に含まれるごみを除去するためのごみ除去具であって、一端に開口部を有する袋状の網体と、前記開口部に設けられ、該開口部の開口径を調整するための紐と、前記網体の外周面上において、前記開口部から所定距離離れた円周上に、全周にわたって連続的又は断続的に設けられる取付部と、前記開口部と前記取付部が重なり合うように前記網体が折り畳まれた状態で、前記壁面に前記開口部、前記紐及び前記取付部を固定するための固定用部材とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るごみ除去具を雨水貯留槽等の流出口から流出する雨水のごみを捕集するため、網体の開口端を雨水貯留槽等の内壁に固定すると、網体が流出口を立体的に覆うため、流体が通過してごみが捕集される表面積が増加し、その分だけ流路が閉塞され難くなる。また、このごみ除去具を雨水貯留槽等の流入口を覆うように貯留槽等の内部に取り付ける場合には、網体を折り畳まずに取り付けることで、上記従来技術と同様に、流入口から下流側に拡がりながら垂れ下がった網体の一端にごみが捕集されるため、流路が閉塞され難い。すなわち、本発明に係るごみ除去具によれば、流入口及び流出口の両方に対応することができる。
【0013】
さらに、壁面に開口部及び紐、あるいは開口部、紐及び取付部を固定するため、壁面とごみ除去具の間に隙間ができ難く、壁面から突出した管がなくとも取り付けることができる。
【0014】
上記ごみ除去具において、前記取付部を前記網体の一部を重畳させて形成することができる。これにより、簡単な構成で網体の固定用部材との当接部を補強することができる。
【0015】
前記網体の他端を切妻屋根状に拡がるように形成することができる。これにより、本発明に係るごみ除去具を、流出口から流出する雨水のごみを捕集するために網体の開口端を雨水貯留槽等の内壁に固定した場合に、流体が通過してごみが捕集される表面積をさらに増加させることができ、さらに流路が閉塞され難くなる。
【0016】
前記固定用部材を、一端に雄ねじ部を有し、他端が前記壁面に打ち込まれるアンカーボルトと、該雄ねじ部材の前記雄ねじ部と螺合するナットとで構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、流入口から流入する、又は流出口から流出する雨水等の流路を確保しながら、雨水等に含まれるごみを除去することで流路が閉塞され難く、雨水貯留槽等の設置場所やこれに付設される設備の設計に影響を及ぼすことになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るごみ除去具の網体及び紐を示し、(a)は正面図、(b)側面図、(c)は底面図、(d)は斜視図であって、これらは網体を拡げた状態を示す。
図2】本発明に係るごみ除去具の取付方法を説明するための図であって、壁面、流出口及び固定用部材を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図3】本発明に係るごみ除去具の取付方法を説明するための図であって、ごみ除去具を流出口を覆うように壁面に取り付けた状態を示す部分断面図である。
図4図3に示すごみ除去具の取付部分(A部)を拡大した図である。
図5図3に示すごみ除去具の取付部分(A部)を示す断面図である。
図6】本発明に係るごみ除去具を流入口を覆うように壁面に取り付けた状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係るごみ除去具に用いられる網体を示し、この網体1は、例えば、メッシュ径9mm程度のポリエチレン樹脂等からなり、上端部に形成される開口部1aと、中央部に形成される重畳部1bとを有し、開口部1aの開口径を調整するために開口部1aに2つの紐通し口1cが設けられ、これらの紐通し口1cの間に紐2が挿入されている。
【0021】
図1(d)に示すように、網体1は、下端部が切妻屋根状に拡がるように形成される。これにより、網体1の下端部を通常の袋よりもより立体的に拡げることが可能になり、強度を高めることができる。
【0022】
重畳部1bは、開口部1aに平行となるように網体1の一部を重ねて縫い合わせることで形成され、後述するように、網体1を折り畳むときの目印になると共に、網体1の網目を補強している。
【0023】
紐通し口1cに挿入される紐2は、例えばポリロープを用いることができる。この紐2を引っ張ったり緩めたりすることで網体1の開口部1aの開口径を調整することができ、網体1は巾着袋状に形成される。
【0024】
次に、上記構成を有する網体1及び紐2を雨水貯留槽に取り付けてごみ除去具を構成する要領について、図1図5を参照しながら説明する。
【0025】
網体1の取付を行う前に、図2に示すように、壁面3に対し、径6.4mm程度、深さ36mm程度の下孔5を流出口4の軸を中心に略々60°間隔で流出口4の周囲にコンクリートドリルで削孔し、これらの下孔5にアンカーボルト6を打ち込み、アンカーボルト6の雄ねじ部6aに丸座金7を取り付けておく。また、網体1の開口部1aが重畳部1bよりも内側に位置する状態で開口部1a及び重畳部1bが互いに重なるように網体1を折り畳んでおく。
【0026】
次に、上述のように折り畳んだ網体1及び紐2を壁面3に実際に取り付ける。図3図5に示すように、まず、各アンカーボルト6に丸座金7を挿入し、網体1の開口部1a及び重畳部1bの網目を各アンカーボルト6の雄ねじ部6aに掛け、網体1と紐2を押さえるように各雄ねじ部6aに丸座金7を取り付ける。尚、図5において、開口部1a及び重畳部1bは2枚の網が重畳しているため、開口部1a及び重畳部1bを2層ずつ描いている。
【0027】
各雄ねじ部6aの間で網体1の開口部1a及び重畳部1bが均等に絞られるように紐2を引っ張った状態で紐2の両端を2つの雄ねじ部6aに結び付け、ナット8を各雄ねじ部6aに螺合させ、網体1及び紐2を流出口4を覆うように壁面3に固定し、ごみ除去具10を構成する。このように、本発明に係るごみ除去具10は、網体1の開口部1aと紐2をアンカーボルト6とナット8等で壁面3に押さえるようにして取り付けられるため、壁面3と網体1との間に隙間ができ難く、突出した管が存在しない流出口4に取り付けてもごみが漏れることもない。
【0028】
次に、上記ごみ除去具10の動作について図3を参照しながら説明する。流出口4に対し、紙面手前側から紙面奥側に向かって雨水が流れると、雨水はごみ除去具10の網体1を通過して流出口4から外部へ流出し、雨水に含まれるごみが網体1の表面に捕集されることになる。
【0029】
ここで、上記特許文献3に記載のごみ除去具を流出口4を覆うように取り付け、網体全体を流出口4に接続されている配管(不図示)の内部に挿入して袋状に広げると、流路上の網体にごみが捕集されるため、流路が閉塞し易くなる。しかし、本発明では、網体1を折り畳んで取り付けると共に、網体1の下端部を切妻屋根状に拡がるように形成して網体1が流出口4を立体的に覆うため、雨水が通過してごみが捕集される表面積が増加し、雨水の流路を確保しながらごみを捕集することができる。
【0030】
尚、網体1の表面に捕集されたごみは、雨水が流出し終わると、網体1にそのまま付着していたり網体1から落下するが、網体1を壁面3から取り外した後に裏返すことで、網体1に付着しているごみと共に網体1を簡単に処分することができる。
【0031】
次に、上記網体1を流入口4を覆うように壁面3に取り付けた場合について図6を参照しながら説明する。この場合には、網体1の開口部1aと紐2のみを壁面3に固定し、網体1を折り畳まない。このようなごみ除去具10によれば、紙面奥側から紙面手前側に向かって雨水が流れると、従来技術と同様に、流入口4から下流側に拡がりながら垂れ下がった網体1の一端にごみが捕集されるため、流路が閉塞され難い。
【0032】
上記実施の形態においては、網体1を雨水貯留浸透槽の内壁面3に取り付ける場合について説明したが、マンホール等の内壁面等に取り付けてもよく、ごみを含む流体としては雨水に限らない。
【0033】
また、網体1を流出口4に取り付けた際の流路の確保を考慮し、網体1の下端部が切妻屋根状に拡がるように形成した場合について説明したが、網体1を重畳部1bを介して壁面3に折り畳んで取り付けるだけで、網体1の下端部を通常の袋と同様に拡がるように形成してもよい。
【0034】
さらに、取付部として重畳部1bを採用した場合について説明したが、この重畳部1bのように、全周にわたって連続的に形成する必要はなく、断続的に形成してもよいし、網体1の一部を用いずに別部材を取り付けて取付部を構成してもよい。
【0035】
尚、流入出口4の開口径に応じて大きさの異なる数種類の網体1を用意してもよく、網体1を大きくするに従って、メッシュ径を変更したり、紐2を太くしてもよい。また、アンカーボルト6等を流入出口4の軸を中心に略々60°間隔で流出口4の周囲に配置すると説明したが、この間隔は取り付ける網体1の大きさによって適宜調節される。
【符号の説明】
【0036】
1 網体
1a 開口部
1b 重畳部
1c 紐通し口
2 紐
3 壁面
4 流入出口
5 下孔
6 アンカーボルト
6a 雄ねじ部
7 丸座金
8 ナット
10 ごみ除去具
図1
図2
図3
図4
図5
図6