特許第6758176号(P6758176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758176
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】アシスト器具
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20200910BHJP
   B66F 19/00 20060101ALI20200910BHJP
   B66D 3/18 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   B25J11/00 Z
   B66F19/00 Z
   B66D3/18 E
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-249941(P2016-249941)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-103281(P2018-103281A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】坂野 倫祥
(72)【発明者】
【氏名】末原 篤史
(72)【発明者】
【氏名】井ノ上 雄大
【審査官】 稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/093038(WO,A1)
【文献】 特開2014−034305(JP,A)
【文献】 実開昭61−171099(JP,U)
【文献】 特開2016−130159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 11/00
B66D 3/18
B66F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の背中部に取り付けられる本体部と、
作業者の脚の動作を補助するアシスト部であり、作業者の腰部の外側に位置するように前記本体部に支持された脚作用部とが備えられ、
前記脚作用部に取り付けられ、作業者が操作する操作部が設けられたスイッチケースと、
前記スイッチケースの内部に収容され、前記操作部が操作されることに伴って報知音を出すブザーとが備えられ、
前記スイッチケースの下部に開口部が形成され、
前記スイッチケースの内部において、前記ブザーの報知音を案内する案内部材が、前記ブザーから前記開口部に向けて延出されているアシスト器具。
【請求項2】
前記スイッチケースの内部を前記ブザー側の部分と前記開口部側の部分とに仕切る仕切り部と、前記開口部に対向するように前記仕切り部に設けられた内部開口部とが備えられて、
前記案内部材が、前記ブザーから前記内部開口部に亘って延出されている請求項1に記載のアシスト器具。
【請求項3】
前記内部開口部が前記開口部よりも大きなものに設定されている請求項2に記載のアシスト器具。
【請求項4】
前記スイッチケースの内部における前記仕切り部と前記開口部との間に、前記内部開口部の幅よりも大きな幅を有する空間が形成されている請求項2又は3に記載のアシスト器具。
【請求項5】
前記案内部材がパイプ部材である請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のアシスト器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が装着して使用するもので、作業者の腕や脚の動作を補助するアシスト器具に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を持ち上げて運んだりするアシスト器具として、特許文献1に開示されているものがある。
特許文献1では、作業者に取り付けられる本体部、作業者が手で持つことにより荷物を保持するものでワイヤに接続されたハンド部が備えられており、ワイヤの巻き取り及び繰り出しを行う昇降装置が本体部に備えられている。作業者の足に作用する脚作用部が、本体部に備えられており、脚作用部は下方に揺動駆動される。
【0003】
これにより、ハンド部に荷物を保持した状態で、昇降装置によりワイヤの巻き取り及び繰り出しを行うことによって、荷物を楽に持ち上げたり下げたりすることができるのであり、作業者の腕による荷物の上げ下げ動作が補助される。
例えば、作業者がしゃがんだ状態から荷物を持って立ち上がる場合、脚作用部が作業者の太腿部を押し下げるように作動するのであり、作業者の立ち上がり動作が補助される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−130159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のようなアシスト器具では、作業者に各種の報知(例えばバッテリーの残量が少なくなった等)を行う為に、ブザーを備えることがある。アシスト器具は野外で使用されることが多いので、ブザーの破損防止という面から、ブザーをケースの内部に収容することが多い。
【0006】
前述のように、ブザーをケースの内部に収容すると、ブザーの破損防止という面では好ましいのであるが、ブザーがケースによって囲まれることにより、ブザーの報知音が作業者に聞き取り難くなることがある。
本発明は、アシスト器具においてブザーを備える場合に、ブザーの破損防止を図りながら、ブザーの報知音が作業者に聞き取り易くなるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、アシスト器具において以下のように構成することにある。
作業者の背中部に取り付けられる本体部と、
作業者の脚の動作を補助するアシスト部であり、作業者の腰部の外側に位置するように前記本体部に支持された脚作用部とが備えられ、
前記脚作用部に取り付けられ、作業者が操作する操作部が設けられたスイッチケースと、
前記スイッチケースの内部に収容され、前記操作部が操作されることに伴って報知音を出すブザーとが備えられ、
前記スイッチケースの下部に開口部が形成され、
前記スイッチケースの内部において、前記ブザーの報知音を案内する案内部材が、前記ブザーから前記開口部に向けて延出されている。
【0008】
ブザーをスイッチケースの内部に収容した場合、本発明によると、ブザーの報知音がスイッチケースの内部で拡散するのではなく、案内部材が伝声管やメガホンのような機能を発揮して、ブザーの報知音が、あまり拡散せずに案内部材によりスイッチケースの開口部に向けて案内されて、スイッチケースの開口部から外部に出る。
これにより、スイッチケースで覆われていないブザーが報知音を発する状態に近い状態を得ることができるので、ブザーの報知音が作業者に聞き取り易くなって、アシスト器具の作業性を向上させることができる。
【0009】
本発明によると、前述の開口部をスイッチケースの下部に備えているので、雨水等がスイッチケースの開口部を通ってスイッチケースの内部に侵入することは少ない。仮に、スイッチケースの内部に水が侵入したり、スイッチケースの内部に結露等が発生しても、スイッチケースの内部の水がスイッチケースの開口部から外部に出て行き易い。
【0010】
本発明において、
前記スイッチケースの内部を前記ブザー側の部分と前記開口部側の部分とに仕切る仕切り部と、前記開口部に対向するように前記仕切り部に設けられた内部開口部とが備えられて、
前記案内部材が、前記ブザーから前記内部開口部に亘って延出されていると好適である。
【0011】
本発明によると、仮にスイッチケースの開口部からスイッチケースの内部に水が侵入しても、侵入した水が直ぐにブザーに到達するのではなく、スイッチケースの開口部とブザーとの間に存在する仕切り部によって、侵入した水が止められ易い。
【0012】
この場合、本発明によると、スイッチケースの開口部に対向するように、内部開口部が仕切り部に設けられ、案内部材がブザーから仕切り部の内部開口部に亘って延出されている。
これにより、ブザーの報知音が案内部材により仕切り部の内部開口部に案内され、仕切り部の内部開口部からスイッチケースの開口部に達して、スイッチケースの開口部から外部に出るので、仕切り部によってブザーの報知音が減ぜられることは少ない。
【0013】
本発明において、
前記内部開口部が前記開口部よりも大きなものに設定されていると好適である。
【0014】
本発明によると、仕切り部の内部開口部をスイッチケースの開口部よりも大きなものに設定することにより、仕切り部によってブザーの報知音が減ぜられる状態をさらに少なくすることができる。
本発明において、
前記スイッチケースの内部における前記仕切り部と前記開口部との間に、前記内部開口部の幅よりも大きな幅を有する空間が形成されていると好適である。
【0015】
本発明において、
前記案内部材がパイプ部材であると好適である。
【0016】
本発明によると、ブザーの報知音が案内部材により案内される際に、案内部材の途中部分からブザーの報知音が漏れ出るという状態が少なくなるのであり、ブザーの報知音を案内部材により無駄なく案内することができる。
これにより、スイッチケースで覆われていないブザーが報知音を発する状態にさらに近い状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】作業者がアシスト器具を装着した状態での右側面図である。
図2】作業者がアシスト器具を装着した状態での背面図である。
図3】アシスト器具の全体斜視図である。
図4】右のスイッチケースの平面図である。
図5】右のスイッチケースの内部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、以下のように記載している。作業者がアシスト器具を装着した状態において、作業者から視て前側が「前」であり、後側が「後」であり、右側が「右」であり、左側が「左」である。
【0019】
(アシスト器具の全体構成及び本体部)
図1,2,3に示すように、アシスト器具には、作業者の背中部に取り付けられる本体部1、本体部1の上部から上方に延出された右及び左のアーム部2、本体部1の下部に備えられた右及び左の脚作用部3が備えられており、作業者への装着用の取付ベルト4、右及び左の肩ベルト5が備えられている。
【0020】
図1,2,3に示すように、本体部1は、右及び左の縦フレーム6、右及び左の縦フレーム6に亘って連結された支持板7等を備えて、枠状となっている。脚作用部3に取付ベルト4が取り付けられて、支持板7の前面の上部に肩ベルト5が取り付けられている。支持板7の後面の上下中間部に制御装置8が連結されており、支持板7の後面の下部にバッテリー9が取り付けられている。
【0021】
図1及び図2に示すように、肩ベルト5に作業者の腕部(肩部)を入れ、取付ベルト4を作業者の腰部に巻き付けて固定することにより、作業者の背中部に本体部1が取り付けられる。
【0022】
図1及び図2に示すように、アシスト器具及び荷物の重量が取付ベルト4を介して主に作業者の腰部に掛かることになるのであり、アシスト器具及び荷物の重量が作業者の腰部により安定して支持される。右及び左の肩ベルト5は、主に本体部1が作業者の背中部から後方に離れようとする状態を止める機能を発揮する。
【0023】
(右及び左の脚作用部)
図1,2,3に示すように、脚作用部3は、基部10、伝動ケース11、操作アーム12及び脚ベルト13等を備えている。支持板7の下部に左右方向にスライド自在に基部10が支持されており、基部10の外端部に伝動ケース11が前向きに連結されている。
【0024】
図1,2,3に示すように、伝動ケース11の前部の左右方向の横軸芯P1周りに、操作アーム12が揺動自在に支持されており、幅広のベルト状の脚ベルト13が操作アーム12の端部に連結されている。複数の平ギヤにより構成された伝動機構(図示せず)が伝動ケース11の内部に備えられ、電動モータ(図示せず)が基部10に左右方向に内装されており、電動モータにより伝動機構を介して操作アーム12が横軸芯P1周りに揺動駆動される。
【0025】
前述のように、作業者の背中部に本体部1を取り付ける場合において、作業者が取付ベルト4を腰部に巻き付けて固定する際、取付ベルト4と一緒に、右及び左の脚作用部3(基部10)が支持板7に沿って左右方向に移動可能である。
これにより、取付ベルト4の腰部への巻き付け具合により、作業者の体格に合わせるように右及び左の脚作用部3の間隔が決まるのであり、取付ベルト4により右及び左の脚作用部3の位置が決められた状態となる。
【0026】
この後、図1及び図2に示すように、作業者は脚ベルト13を太腿部に巻き付けて、面ファスナ(図示せず)(登録商標:マジックテープ)により、脚ベルト13を太腿部に取り付ける。
作業者がアシスト器具を装着した状態において、作業者の腰部の右側に右の脚作用部3(伝動ケース11)が位置し、作業者の腰部の左側に左の脚作用部3(伝動ケース11)が位置する。
【0027】
(右及び左のアーム部)
図1,2,3に示すように、右及び左の縦フレーム6の上部が、作業者の右及び左の肩部を越えて斜め前方の斜め上方に延出されて、右及び左のアーム部2となっており、アーム部2の上端部にプーリー(図示せず)が回転自在に支持されている。
【0028】
図1,2,3に示すように、支持板7の後面の上部に昇降装置17が連結されており、昇降装置17から、右の2本のワイヤ18,19及び左の2本のワイヤ18,19が延出されている。支持板7の上部にアウター受け部21が連結され、アーム部2の上部にアウター受け部22が連結されており、ワイヤ18,19のアウター18b,19bの端部がアウター受け部21,22に接続されて、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが昇降装置17に接続されている。
【0029】
図1,2,3に示すように、右の2本のワイヤ18,19のインナー18a,19aがアーム部2の上端部のプーリーに掛けられて下側に延出されており、右の2本のワイヤ18,19のインナー18a,19aに、右のハンド部20が接続されている。左の2本のワイヤ18,19のインナー18a,19aがアーム部2の上端部のプーリーに掛けられて下側に延出されており、左の2本のワイヤ18,19のインナー18a,19aに、左のハンド部20が接続されている。
【0030】
(昇降装置)
図1及び図2に示すように、昇降装置17は支持板7に連結されている。伝動機構(図示せず)を内装する上下向きの伝動ケース25、伝動ケース25の上部に横向きに連結された支持ケース26、伝動ケース25の下部に横向きに連結された電動モータ27、支持ケース26の内部で横向きの軸芯周りに回転自在な4個の回転体(図示せず)が、昇降装置17に備えられている。
【0031】
図1及び図2に示すように、ワイヤ18,19のアウター18b,19bの端部がアウター受け部21に接続され、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが、支持ケース26の内部の4個の回転体の各々に接続されている。
【0032】
以上の構造により、図1及び図2に示すように、制御装置8により電動モータ27が作動する。電動モータ27の動力が伝動ケース25の内部の伝動機構を介して、支持ケース26の内部の回転体に伝達されるのであり、回転体が巻き取り側及び繰り出し側に回転駆動される。
【0033】
図1及び図2に示すように、昇降装置17において、電動モータ27により回転体が巻き取り側に回転駆動されると、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが回転体に巻き取られて、ハンド部20が上昇する。電動モータ27により回転体が繰り出し側に回転駆動されると、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが回転体から繰り出されて、ハンド部20が下降する。
【0034】
電動モータ27に電磁ブレーキ(図示せず)が備えられている。電動モータ27の作動時に電磁ブレーキは自動的に解除状態となり、電動モータ27の停止時及び非通電時に電磁ブレーキは自動的に制動状態となる。
【0035】
(右及び左のハンド部)
図1及び図2に示すように、右及び左のハンド部20は、板材が折り曲げられてフック状に成形されており、左右対称の形状となっている。右のハンド部20に上昇操作スイッチ23が備えられ、左のハンド部20に下降操作スイッチ24が備えられており、上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24は、ハーネス(図示せず)を介して制御装置8に接続されている。
【0036】
図1及び図2に示すように、作業者がアシスト器具を装着した状態において、作業者が右手で右のハンド部20を握るようにして持ち、左手で左のハンド部20を握るようにして持つ。この状態で、作業者は右手及び左手の親指により上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24を押し操作する。
【0037】
図1及び図2に示すように、上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24は復帰型に構成されている。作業者が上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24を押し操作していると、上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24から操作信号が出力され、作業者が上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24の押し操作を止めると、上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24の操作信号が停止する。
【0038】
(アシスト器具の作業形態)
例えば、床に置かれた荷物を高い棚やトラックの荷台に置くような場合、作業者がしゃがんで床の荷物を手で持ち、次に手を下に延ばした状態で荷物を持ちながら立ち上がり、次に手で荷物を持ち上げて、荷物を高い棚やトラックの荷台に置くような状態が想定される。
【0039】
前述の状態において上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24の押し操作に基づいて、制御装置8により右及び左の脚作用部3、昇降装置17が作動する状態について説明する。
【0040】
図1及び図2に示すように、作業者がアシスト器具を装着した状態において、作業者が上昇操作スイッチ23及び下降操作スイッチ24の両方を押し操作していないと、昇降装置17の電動モータ27は停止して、右及び左の脚作用部3の電動モータは停止状態(自由回転状態)となる。
作業者が歩行する場合や、作業者が膝部を曲げて腰部を落とす場合(しゃがむ場合)、作業者の太腿部に追従するように操作アーム12が揺動するのであり、作業者の動作が妨げられることはない。
【0041】
次に作業者がしゃがんで床の荷物を手で持つ場合、作業者が下降操作スイッチ24を押し操作すると、昇降装置17において、電動モータ27が繰り出し側に作動し、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが繰り出されて、ハンド部20が下降する。下降操作スイッチ24の押し操作を止めると、電動モータ27が停止して、ハンド部20が停止する。これにより作業者は、ハンド部20により荷物を保持する。
【0042】
前述のように、電動モータ27に電磁ブレーキ(図示せず)が備えられており、電動モータ27の停止時及び非通電時に、電磁ブレーキは自動的に制動状態となる。
これにより、電動モータ27が停止した状態において、昇降装置17からワイヤ18,19のインナー18a,19aが繰り出されることはなく、後述するようにハンド部20に荷物の重量が掛かっても、ハンド部20が下降することはない。
【0043】
次に作業者は、ハンド部20により荷物を保持した状態で、立ち上がることにより荷物を床から持ち上げる。この状態において、作業者が上昇操作スイッチ23を押し操作すると、脚作用部3において、操作アーム12が下側に駆動され、作業者の太腿部が下側に操作されて、作業者の立ち上がりが補助される。このように、作業者が立ち上がる際において、前述の電動モータ27のブレーキ機能により、ハンド部20が下降することはない。
【0044】
前述のように、作業者が上昇操作スイッチ23を押し操作した状態で立ち上がった後、脚作用部3において、操作アーム12が略真下に向く位置に達したことが検出されると、作業者が完全に立ち上がったと判断されて、脚作用部3の電動モータは停止状態(自由回転状態)となる。
【0045】
次に昇降装置17において、電動モータ27が巻き取り側に作動し、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが巻き取られて、ハンド部20が上昇する。所望の位置までハンド部20が上昇すると、上昇操作スイッチ23の押し操作を止めることにより、電動モータ27が停止してハンド部20が停止する。
【0046】
次に作業者は荷物を置くべき高い棚やトラックの荷台等へ歩いて移動する。作業者が高い棚やトラックの荷台等に到着して、作業者が下降操作スイッチ24を押し操作すると、昇降装置17において、電動モータ27が繰り出し側に作動し、ワイヤ18,19のインナー18a,19aが繰り出されて、ハンド部20が下降する。これにより作業者は、荷物を高い棚やトラックの荷台等に置いて、ハンド部20を荷物から取り外す。
このようにして、荷物を高い棚やトラックの荷台等に置くと、最初の状態に戻るのであり、次の荷物に対して同様な操作を行う。
【0047】
以上のように、昇降装置17、ワイヤ18,19、右及び左のハンド部20が、作業者の腕用のアシスト部となるのであり、右及び左の脚作用部3が、作業者の脚用のアシスト部となる。
【0048】
(右及び左のスイッチケースの概要)
図1,2,3に示すように、右の脚作用部3において、伝動ケース11に右のスイッチケース15が取り付けられ、左の脚作用部3において、伝動ケース11に左のスイッチケース16が取り付けられている。
【0049】
図4に示すように、右のスイッチケース15に、電源操作部35、電源ランプ36、モード操作部37、3個の速度ランプ38、バッテリー9の残量表示部42が備えられている。電源操作部35を押し操作することにより、アシスト器具を作動状態及び停止状態に設定することができるのであり、作動状態で電源ランプ36が点燈する。
【0050】
前項の(アシスト器具の作業形態)において説明した昇降装置17の電動モータ27の作動速度、及び脚作用部3の電動モータの作動速度を、高中低の3段階に設定することができる。モード操作部37を押し操作することにより、前述の作動速度を選択するのであり、選択された作動速度が速度ランプ38によって表示される。
【0051】
前項の(アシスト器具の作業形態)において説明した昇降装置17の作動及び脚作用部3の作動において、昇降装置17及び脚作用部3の両方が作動する状態、昇降装置17が作動し脚作用部3が停止する状態、昇降装置17が停止し脚作用部3が作動する状態等の各種の作業状態を設定することができる。左のスイッチケース16に、前述の各種の作業状態を選択する選択操作部(図示せず)が備えられている。
【0052】
(右のスイッチケースの詳細構造)
図4及び図5に示すように、右のスイッチケース15において、上部28、前部29、後部30、下部31及び右の横面部32が備えられており、左の横面部は備えられておらず、右のスイッチケース15の左側は開放されている。
【0053】
図5に示すように、前部29及び後部30にボス部33が備えられており、右のスイッチケース15の左側を伝動ケース11の外面に当て付け、ネジ(図示せず)をボス部33に通して締め付けることにより、右のスイッチケース15が伝動ケース11の外面に取り付けられる。
【0054】
図4及び図5に示すように、右のスイッチケース15の内部において、上部28に近接してスイッチ基板34が取り付けられており、上部28に、電源操作部35、電源ランプ36、モード操作部37、3個の速度ランプ38、残量表示部42が備えられている。電源操作部35及びモード操作部37の押し操作がスイッチ基板34から制御装置8に入力され、制御装置8の操作信号に基づいてスイッチ基板34により、電源ランプ36、速度ランプ38及び残量表示部42の表示が行われる。
【0055】
図5に示すように、スイッチ基板34の下面にブザー39が下向きに備えられている。
電源操作部35及びモード操作部37、選択操作部の押し操作時や、バッテリー9の残量が少なくなった場合等に、ブザー39から報知音が出される。
【0056】
図5に示すように、下部31の前後方向に沿って、水抜き用の切り欠き状の多数の開口部31aが形成されている。右のスイッチケース15の内部を、ブザー39側の部分(上側の部分)と、下部31の開口部31a側の部分(下側の部分)とに仕切る仕切り部40が、前部29と後部30とに亘って備えられている。下部31の開口部31aに対向するように、切り欠き状の内部開口部40aが仕切り部40に形成されており、仕切り部40の内部開口部40aが、下部31の開口部31aよりも大きなものに設定されている。
【0057】
図5に示すように、右のスイッチケース15の内部において、仕切り部40の内部開口部40aの上方にブザー39が位置しており、パイプ部材41(案内部材に相当)が、ブザー39から仕切り部40の内部開口部40aに亘って延出されている(ブザーの報知音を案内する案内部材が、ブザーから開口部に向けて延出された状態に相当)。
【0058】
これにより、図5に示すように、ブザー39の報知音が、あまり拡散せずにパイプ部材41により仕切り部40の内部開口部40aに案内され、仕切り部40の内部開口部40aから下部31の開口部31aに達して、下部31の開口部31aから外部に出る。
【0059】
(発明の実施の別形態)
図5に示す右のスイッチケース15において、パイプ部材41に代えて、壁状の案内部材を、ブザー39の前側及び後側に位置するように、横面部32に一体的に形成してもよい。
【0060】
ブザー39から仕切り部40の内部開口部40aに向けて延出される案内部材に加え、仕切り部40の内部開口部40aから下部の開口部31aに延出される案内部材を備えてもよい。
仕切り部40を備えない場合、案内部材をブザー39から下部31の開口部31aに向けて延出すればよい。
【0061】
ブザー39及び案内部材、下部31の開口部31a等の構造を、左のスイッチケース16に備えてもよく、右及び左のスイッチケース15,16の両方に備えてもよい。
【0062】
右及び左のアーム部2を廃止して、1本のアーム部2を備えてもよい。このように構成した場合、1本のアーム部2から2本のワイヤ18を延出して、2本のワイヤ18の一方に右のハンド部20を備え、2本のワイヤ18の他方に左のハンド部20を備える。
又は、1本のアーム部2から1本のワイヤ18を延出し、1本のワイヤ18の端部を二股状に分岐させて、分岐部分の一方に右のハンド部20を備え、分岐部分の他方に左のハンド部20を備える。
【0063】
アシスト器具において、昇降装置17、ワイヤ18,19及びハンド部20の腕用のアシスト部を備え、右及び左の脚作用部3の脚用のアシスト部を備えないように構成してもよい。
昇降装置17、ワイヤ18,19及びハンド部20の腕用のアシスト部を備えずに、右及び左の脚作用部3の脚用のアシスト部を備えるように構成してもよい。
昇降装置17、ワイヤ18,19及びハンド部20の腕用のアシスト部において、昇降装置17を廃止して、ワイヤ18,19を本体部1やアーム部2に連結し、ハンド部20の位置を固定して、ハンド部20の昇降を行わないように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、作業者が装着して使用するもので、作業者の作業(動作)を補助するアシスト器具に適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 本体部
3 脚作用部、アシスト部
15 スイッチケース
31 スイッチケースの下部
31a 開口部
35,37 操作部
39 ブザー
40 仕切り部
40a 内部開口部
41 案内部材、パイプ部材
図1
図2
図3
図4
図5