特許第6758180号(P6758180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6758180注射デバイスの使用に関する情報を収集する補助デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758180
(24)【登録日】2020年9月3日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】注射デバイスの使用に関する情報を収集する補助デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/172 20060101AFI20200910BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   A61M5/172
   A61M5/315 550P
   A61M5/315 550X
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-508154(P2016-508154)
(86)(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公表番号】特表2016-515450(P2016-515450A)
(43)【公表日】2016年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2014057777
(87)【国際公開番号】WO2014173768
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年4月3日
【審判番号】不服2019-3114(P2019-3114/J1)
【審判請求日】2019年3月6日
(31)【優先権主張番号】13164748.9
(32)【優先日】2013年4月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ローマン・プラガー
【合議体】
【審判長】 高木 彰
【審判官】 栗山 卓也
【審判官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/117212(WO,A1)
【文献】 特開平8−307735(JP,A)
【文献】 特開2002−230541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M3/00-9/00
A61M31/00
A61M39/00-39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイスの使用に関する情報を収集する補助デバイスであって:
第1のカメラセンサ部分の視野内のシーンを示す第1のカメラ出力を生成する該第1のカメラセンサ部分であって、第1のカメラセンサ部分の視野は、注射デバイスの投与量窓中の、物体上に設けられた目盛を含む該第1のカメラセンサ部分と;
第2のカメラセンサ部分の視野内のシーンを示す第2のカメラ出力を生成する該第2のカメラセンサ部分であって、第2のカメラセンサ部分の視野は、注射デバイスの投与量窓中の、物体上に設けられた数字を含む該第2のカメラセンサ部分と;
第1のカメラ出力を使用して視野内における物体の回転速度が速度閾値を超えているかどうかを判定し;
物体の回転速度が速度閾値を超えていないと判定された場合、物体上に設けられた特徴を識別するために第2のカメラ出力を処理し;
物体の回転速度が速度閾値を超えていると判定された場合、特徴を識別しようと試みるのをやめるように
構成される、少なくとも1つのプロセッサと
を含み、
視野内における物体の回転速度が速度閾値を超えているかどうかを判定することは、第1のカメラ出力における目盛のコントラストの度合いが、所定の値よりも小さいかどうかを判定することを含む前記補助デバイス。
【請求項2】
第1のカメラセンサ部分は、第1の速度で第1のカメラ出力を生成し、第2のカメラセンサ部分は、第1の速度より遅い、第2の速度で第2のカメラ出力を生成する、請求項1に記載の補助デバイス。
【請求項3】
第1のカメラセンサ部分の視野は、第2のカメラセンサ部分の視野よりも小さい、請求項1または2に記載の補助デバイス。
【請求項4】
第1のカメラセンサ部分は、第1の数量の画素を含み、第2のカメラセンサ部分は、第
1の数量の画素より多い、第2の数量の画素を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の補助デバイス。
【請求項5】
第1および第2のカメラセンサ部分は、共通の光検出デバイスの異なる領域をそれぞれ含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の補助デバイス。
【請求項6】
第1のカメラセンサ部分は、光検出デバイスの第1の数量の画素を含み、第2のカメラセンサ部分は、同じ光検出デバイスの第2の数量の画素を含む、請求項5に記載の補助デバイス。
【請求項7】
第1のカメラセンサ部分は、カメラの第1の数量の画素を含み、第2のカメラセンサ部分は、同じカメラの第2の数量の画素を含む、請求項6に記載の補助デバイス。
【請求項8】
第1のカメラセンサ部分は、第1のカメラを含み、第2のカメラセンサ部分は、第2のカメラを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の補助デバイス。
【請求項9】
第1のカメラセンサ部分の視野および第2のカメラセンサ部分の視野は、重なり合わない、請求項1〜8のいずれか1項に記載の補助デバイス。
【請求項10】
使用時、物体が回転すると、第1のカメラセンサ部分の視野を通って第1の複数の特徴が連続的に少なくとも部分的に動かされ、第2のカメラセンサ部分の視野を通って第2の複数の特徴が連続的に少なくとも部分的に動かされるように構成される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の補助デバイス。
【請求項11】
体は、注射デバイスのスリーブを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の補助デバイス。
【請求項12】
補助デバイスを注射デバイスに連結する連結装置をさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の補助デバイス。
【請求項13】
補助デバイスによって注射デバイスの使用に関する情報を収集する方法であって:
第1のカメラセンサ部分が、該第1のカメラセンサ部分の視野内のシーンを示す第1のカメラ出力であって、該第1のカメラセンサ部分の視野は、注射デバイスの投与量窓中の、物体上に設けられた目盛を含む該第1のカメラ出力を生成すること;
第2のカメラセンサ部分が、該第2のカメラセンサ部分の視野内のシーンを示す第2のカメラ出力であって、該第2のカメラセンサ部分の視野は、注射デバイスの投与量窓中の、物体上に設けられた数字を含む該第2のカメラ出力を生成すること;および
少なくとも1つのプロセッサが:
第1のカメラ出力を使用して視野内における物体の回転速度が速度閾値を超えているかどうかを判定し;
物体の回転速度が速度閾値を超えていないと判定された場合、物体上に設けられた特徴を識別するために第2のカメラ出力を処理し;
物体の回転速度が速度閾値を超えていると判定された場合、特徴を識別しようと試みるのをやめること
を含み、
視野内における物体の回転速度が速度閾値を超えているかどうかを判定することは、第1のカメラ出力における目盛のコントラストの度合いが、所定の値よりも小さいかどうかを判定することを含む前記方法。
【請求項14】
第1のカメラセンサ部分と、第2のカメラセンサ部分と、少なくとも1つのプロセッサ
とを含む補助デバイスによって実行されたとき、請求項13の方法を実行するように補助デバイスを制御する機械可読命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射デバイスの使用に関する情報を収集するデバイスに関し、それだけに限らないが特に、インスリンなどの薬剤の注射に使用される注射デバイスの使用に関する情報を収集する補助デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の注射による定期的な治療を必要とする様々な疾病がある。そのような注射は、医療従事者または患者自身によって実行することができる。一例として、1型および2型の糖尿病は、1日に1回または数回のインスリン用量の注射により、患者自身によって治療することができる。補助デバイスをインスリン注射デバイスに連結し、投与される用量についての情報を記録することが知られている。補助デバイスは、インスリン用量の投与回数、およびそうした各用量の期間中に投与されたインスリンの数量についての情報を記録するのに使用することができる。
【0003】
以前より提案されているインスリン注射デバイスの1つは、具体的にはSanofiから販売されているSolostar(商標)注射ペンであり、その外面に窓を備える。Solostar(商標)注射ペンの内部にある(数字スリーブとして知られる)スリーブは、インスリン量がダイヤル設定されるまたは投薬されるときに回転する。スリーブが回転すると、数字スリーブ上の数字が窓と連続的に整列(align)する。インスリン量がダイヤル設定されると、ダイヤル設定された(国際単位での)インスリン量に対応する数字が窓に表示される。インスリンが投薬されると、数字スリーブが回転し、それによって窓に表示される数字がペン内に残っているまだ投薬されていないダイヤル設定されたインスリン量に関する数字になる。
【0004】
上述の窓に表示される情報を分析することによってSolostar(商標)注射ペンからどれだけのインスリンが送達されたかについての情報を補助デバイスが収集することが提案されている。具体的には、特許文献1には、ダイヤル設定された、または送達されたインスリンの数量を判定するために注射デバイスの窓と整列した数字を読み取る光学式文字認識(OCR)機能を備える補助デバイスが記載されている。
【0005】
しかし、数字スリーブが特定の速度を上回る速度で回転すると、問題が起こる。これが起こると、窓に表示される数字が補助デバイスにとってぼやけ、それによって補助デバイスは、ダイヤル設定されたまたは投薬されたインスリンの数量に関する情報を収集できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2011/117212
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、注射デバイスの使用に関する情報を収集する補助デバイスであって:
第1のカメラセンサ部分の視野内のシーン(scene)を示す第1のカメラ出力を生成する第1のカメラセンサ部分と;
第2のカメラセンサ部分の視野内のシーンを示す第2のカメラ出力を生成する第2のカメラセンサ部分と;
第1のカメラ出力を使用して視野内における例えば注射デバイスのスリーブである物体の回転速度が速度閾値を超えているかどうかを判定し;
例えばスリーブである物体の回転速度が速度閾値を超えていないと判定された場合、そのスリーブ上または他のスリーブ上に設けられた特徴を識別するために第2のカメラ出力を処理し;
例えばスリーブである物体の回転速度が速度閾値を超えていると判定された場合、特徴を判定しようと試みるのをやめるように
構成される、少なくとも1つのプロセッサと
を含む補助デバイスが提供される。
【0008】
こうして、プロセッサは、速度閾値を超えたとき、特徴を判定しようと試みるのをやめる。有利には、それによって、補助デバイスの全体的な電力消費が低減される。
【0009】
補助デバイスは、注射デバイスに対する付属装置、例えば解放可能な付属装置として構成される。
【0010】
第1のカメラセンサ部分は、第1の速度で第1のカメラ出力を生成することができ、第2のカメラセンサ部分は、第2のより遅い速度で第2のカメラ出力を生成することができる。
【0011】
したがって、有利には、第1のカメラ出力は、第2のカメラ出力がスリーブまたは前記他のスリーブの動きに影響されるよりも、スリーブの動きにあまり影響されないことになる。換言すると、それを上回ると第1のカメラセンサ部分がもはやその表面の鮮明な画像を実質的に生成することができなくなるスリーブの回転速度は、それを上回ると第2のカメラセンサ部分がもはやその表面の鮮明な画像を実質的に生成することができなくなる回転速度よりも速い。
【0012】
第1のカメラセンサ部分の視野は、第2のカメラセンサ部分の視野よりも小さくてよい。第1のカメラセンサ部分は、第1の数量の画素を含むことができ、第2のカメラセンサ部分は、第2のより多い数量の画素を含むことができる。
【0013】
したがって、第1のカメラセンサ部分によって見ることが可能なシーンは、第2のカメラセンサ部分によって見ることが可能なシーンよりも小さくなる。したがって、有利には、第1のカメラセンサ部分によって見ることが可能なシーンを示すデータは、第2のカメラセンサ部分によって見ることが可能なシーンを示すデータよりも速く処理されるようになる。
【0014】
第1および第2のカメラセンサ部分は、共通の光検出デバイスの異なる領域をそれぞれ含むことができる。第1のカメラセンサ部分は、光検出デバイスの第1の数量の画素を含むことができ、第2のカメラセンサ部分は、同じ光検出デバイスの第2の数量の画素を含むことができる。
【0015】
第1のカメラセンサ部分は、カメラの第1の数量の画素を含むことができ、第2のカメラセンサ部分は、同じカメラの第2の数量の画素を含むことができる。
【0016】
第1のカメラセンサ部分は、第1のカメラを含むことができ、第2のカメラセンサ部分は、第2のカメラを含むことができる。
【0017】
第1のカメラセンサ部分の視野および第2のカメラセンサ部分の視野は、重なり合わない。
【0018】
特徴は、注射用量に対応することができ、複数のマーカのうちの1つの形態でスリーブまたは前記他のスリーブ上に印付けられ、各マーカは、ダイヤル設定された用量の量またはまだ送達されていないダイヤル設定された用量の量を示す。マーカのうちの少なくともいくつかは、ダイヤル設定された用量の量またはまだ送達されていないダイヤル設定された用量の量の数値表現を含むことができる。
【0019】
したがって、有利には、プロセッサは、ダイヤル設定された用量の量またはまだ送達されていないダイヤル設定された用量の量を判定することができるようになる。
【0020】
補助デバイスは、使用時、スリーブが回転すると、第1のカメラセンサ部分の視野を通って第1の複数の特徴が連続的に少なくとも部分的に動かされ、第2のカメラセンサ部分の視野を通って第2の複数の特徴が連続的に少なくとも部分的に動かされるように構成される。使用時、注射デバイスの異なる部材が第1のカメラセンサ部分および第2のカメラセンサ部分のそれぞれの視野と整列することもできる。例えば、使用時、第1のスリーブ上に設けられた第1の複数の特徴が第1のカメラセンサ部分の視野を通って連続的に少なくとも部分的に動かされ、第2のスリーブ上に設けられた第2の複数の特徴が第2のカメラセンサ部分の視野を通って連続的に少なくとも部分的に動かされてもよい。
【0021】
補助デバイスはそれを注射デバイスに連結する連結装置(arrangement)を含むことができる。
【0022】
本発明の他の態様によれば、補助デバイスによって注射デバイスの使用に関する情報を収集する方法であって:
第1のカメラセンサ部分が、第1のカメラセンサ部分の視野内のシーンを示す第1のカメラ出力を生成すること;
第2のカメラセンサ部分が、第2のカメラセンサ部分の視野内のシーンを示す第2のカメラ出力を生成すること;
少なくとも1つのプロセッサが:
第1のカメラ出力を使用して視野内における注射デバイスのスリーブの回転速度が速度閾値を超えているかどうかを判定し;
スリーブの回転速度が速度閾値を超えていないと判定された場合、そのスリーブ上または他のスリーブ上に印付けられた特徴を識別するために第2のカメラ出力を処理し;
スリーブの回転速度が速度閾値を超えていると判定された場合、特徴を判定しようと試みるのをやめること
を含む方法が提供される。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、第1のカメラセンサ部分と、第2のカメラセンサ部分と、少なくとも1つのプロセッサとを含む補助デバイスによって実行されたとき、上述の方法を実行するように補助デバイスを制御する機械可読命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】例示的な注射デバイスの概略斜視図である。
図2図1の注射デバイスの端部の拡大図である。
図3】本発明の一実施形態による補助デバイスの概略斜視図である。
図4図3の補助デバイスの内部の概略図である。
図5図3および図4の補助デバイスのそれぞれのカメラによって分析される情報を示す線図である。
図5a図3および図4の補助デバイスのカメラによって分析される情報を示す線図である。
図6】第1のカメラ露出時間の始めにおける第1のカメラの視野内への目盛の現れ方を示す線図である。
図7】第1のカメラ露出時間の終わりにおける第1のカメラの視野内への目盛の現れ方を示す線図である。
図8】補助デバイスの他の実施形態における、カメラによって分析される情報を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
インスリン注射デバイスに関して、以下に本発明の実施形態を述べる。しかしながら、本発明は、そうした適用分野に限定されるものではなく、他の薬剤を排出する注射デバイス、または他のタイプの医療デバイスにも同様に良好に導入することができる。
【0026】
図1は、注射デバイス10の分解図であり、例えばSanofiから販売されているSolostar(商標)注射ペンを示すことができる。
【0027】
図1の注射デバイス10は、充填済みの使い捨て注射ペンであり、ハウジング12を含み、針16が取り付けられるインスリン容器14を収容する(contain)。針16は、内側ニードルキャップ18および外側ニードルキャップ20によって保護され、さらにキャップ22によって覆われる。注射デバイス10から排出予定のインスリン用量は、投薬量(dosage)ノブ24を回すことによって選択することができる(この動作は、インスリン用量をダイヤル設定すると称される)。選択用量(ダイヤル設定用量)を示す数字26を含むマーカのような特徴は、例えば国際単位(IU)の倍数で、投薬量窓28を介して表示される。投薬量窓28に表示されるダイヤル設定用量の例は、図1に示されるように30IUである。
【0028】
投薬量窓28に表示される数字26は、ハウジング12に収容されインスリン容器14内のピストンと機械的に相互作用する(数字スリーブ17として知られる)スリーブ上に印刷されている。針16が患者の皮膚に挿入され、注射ボタン30が押されると、表示窓28に表示されているダイヤル設定数量に相当するインスリン量が注射デバイス10から排出される。注射の過程で、インスリンが注射デバイス10から出るとき、数字スリーブ17が回転する。それによって、まだ投薬されていないダイヤル設定されたインスリン量に従って、投薬量窓28に表示される数字26が変わる。換言すると、注射の過程で、投薬量窓28と連続的に整列される数字26は、カウントダウンされる。
【0029】
図2は、前の段落で述べた注射の過程において、注射デバイス10から17IUのインスリンが送達された後の投薬量窓28を示している。数字スリーブ17上の数字26の近くには複数の他の特徴が設けられていることが図面から分かるであろう。この実施形態では、これらの特徴は、いわゆる目盛32を含むマーカである。目盛32は、実質的に矩形であり、それぞれが、図2の実施形態では、幅と、注射デバイス10の主軸に平行な方向に沿って延びる長さとを有する。隣り合う目盛32は、互いに対して等間隔に配置されるが、これは必須ではない。どの目盛32がインジケータ33と一直線になっているかを判定することによって、使用者は、ダイヤル設定されたインスリン量、および、注射の場合では、まだ送達されていないダイヤル設定されたインスリン量を判定することができる。
【0030】
図示の例では、(IUで測定された)整数のインスリン量は、各それぞれの目盛32に関連付けられ、数字スリーブ17上に印刷された数字26は、偶数のインスリン量に相当する。しかし、別法として、目盛32と数字26の他の組合せを数字スリーブ17上に印刷することもできる。例えば、全ての整数のインスリン量についての数字26を数字スリーブ17上に印刷し、偶数のインスリン量だけを目盛32と関連付けることもできる。
【0031】
使用される目盛32と数字26の特定の組合せに関わらず、当業者には、数字スリーブ17が用量ダイヤル設定の間または注射の間に回転するとき、それぞれの目盛32と数字26が投薬量窓28の中へと動きそしてそこから見えなくなることが明らかであろう。換言すると、目盛32と数字26は、投薬量窓28と整列し、そしてずれていく。
【0032】
図3は、図1に示されるもののような注射デバイスに着脱可能に取り付けることができる補助デバイス34の概略図である。補助デバイス34は、注射デバイス10のハウジング12を取り囲む嵌合ユニット、連結ユニットまたはコネクタ37を備えるハウジング36を含む。具体的には、その後のデバイス34の取り外しが可能になるように、コネクタ37は、注射デバイス10のハウジング12にスナップ嵌めされるように構成される。しかし、コネクタ37は、スナップ嵌めのものである必要はなく、別法として、様々な他の装置が注射デバイス10への補助デバイス34の連結に適切である。
【0033】
補助デバイス34は、注射デバイス10に連結されると、(図4に示されるように)投薬量窓28を遮る。補助デバイス34は、注射デバイス10から情報を収集する少なくとも1つの光センサを含む。具体的には、光センサは、投薬量窓28に表示されたものを示す情報を収集する。収集された情報は、次いで、用量履歴データベースの作成のために処理される。そのような用量履歴データベースは、インスリン用量が投与された各種時刻および各用量の期間中に投与されたインスリンの数量についての情報を含む記録を含むことができる。収集された情報は、さらに、例えば数字スリーブ17上に設けられたものよりも大きく表示ユニット上に数字を表示することで、投薬量窓28と整列した数字26をより大きな形態で表示するために処理される。それによって、ダイヤル設定された用量の量、または注射の場合ではまだ送達されていないダイヤル設定された用量の量の可読性が向上する。
【0034】
図4は、注射デバイス10に連結された状態の補助デバイス34の内部の概略図である。
【0035】
補助デバイス34のハウジング36内には、様々な構成要素が配置され、システムバス35によって互いに接続(couple)されている。1つのそうした構成要素としては、プロセッサ40が挙げられる。プログラムメモリ42および主メモリ44もやはりまたシステムバス35に接続される。プロセッサ40は、プログラムメモリ42内に記憶(store)されたプログラムコード(例えば、ソフトウェアまたはファームウェア)を実行し、主メモリ44を使用して、中間結果を記憶する。補助デバイス34は、上述した用量履歴データベースを記憶する補助メモリ43をさらに含む。プログラムメモリ42は、例えば、読み取り専用メモリなどの不揮発性メモリであってよい。主メモリ44は、例えば、ランダムアクセスメモリ、DRAMまたはSDRAMなどの揮発性メモリであってよく、補助メモリ43は、例えば、フラッシュメモリもしくはEEPROMであってよく、またはUSBタイプ接続のようなインターフェースを介してシステムバス35に接続されるメモリカードを含むこともできる。
【0036】
光センサユニット46もやはりまたシステムバス35に接続され、投薬量窓28に表示されるものを示す情報を含む信号を生成するのに使用される。プロセッサ40は、これらの信号を使用して、送達された用量を判定し、用量履歴データベースを作成することができる。プロセッサ40は、光センサユニット46によって送られる信号からどの数字26が投薬量窓28と整列しているかを判定するのに光学式文字認識アプリケーションを実行することでそれを成し遂げることができる。こうした情報に基づいて、プロセッサ40は、次に、ダイヤル設定されたインスリン量、または注射の場合ではまだ送達されていない(もしくは注射の過程ですでに送達された)ダイヤル設定されたインスリン量を判定する。
【0037】
システムバス35に接続される他の構成要素としては、照明ユニット47、表示ユニット38および入力デバイス48が挙げられる。そうした照明ユニット47は、1つまたはそれ以上のLEDを含むことができ、投薬量窓28に表示される情報を照明するようにプロセッサ40によって制御される。入力デバイス48(例えば、キーパッド)は、補助デバイス34と相互作用するように使用者によって利用される。そうした入力デバイス48は、例えば、表示ユニット38に表示される1つまたはそれ以上の選択肢を選択するのに使用される。いくつかの実施形態では、表示ユニット38は、出力デバイスおよび入力デバイス48の両方の機能を果たすことができるようにする(enable)タッチスクリーン機能を備えることができる。
【0038】
電力供給源50(例えば、電池)は、補助デバイス34の様々な構成要素に電力を供給するためのものである。
【0039】
次に、光センサユニット46の詳細をさらに詳しく述べる。
【0040】
光センサユニット46は、第1と第2のカメラ46a、46bを含む。第1のカメラ46aは、第1の複数の画素52を含み、使用において投薬量窓28の第1の視野を有する。第2のカメラ46bは、第2の複数の画素54を含み、使用において投薬量窓28の第2の視野を有する。図5を参照すると、第1の複数の画素52は、第2の複数の画素54よりも数が少ない。したがって、第1のカメラ46aが線形センサを含むことができ、第2のカメラ46bがマトリックスセンサを含むことができることになる。線形センサは、用量がダイヤル設定されるまたは投薬されるときに数字スリーブ17上のマーカがそれに沿って動かされる軸に実質的に平行に向けられる。図5の例では、数字スリーブ17上の数字26は、用量がダイヤル設定されるまたは投薬されるとき、軸55に沿って動かされる。したがって、線形センサは、図5aに示されるように、この動きの軸に平行に延びるまたはそれに対して部分的に斜めであってよい。
【0041】
使用において、補助デバイス34は、第1のカメラ46aを使用して、その視野内に表示されるものを示す第1のカメラ出力を生成する。そうしたカメラ出力は、(速度が規則的であるか不規則であるかに関わらず)例えば1秒あたり少なくとも10回であってよい第1の速度で生成される。図5に示される実施形態では、補助デバイス34は、使用時、用量ダイヤル設定中または用量送達中に注射デバイスの数字スリーブ17が回転するときに第1のカメラ46aの視野を通って目盛32が連続的に動かされるように構成される。結果的に、第1のカメラ出力は、第1のカメラ46aの視野内で投薬量窓28と整列した特定の目盛32を示す。
【0042】
使用において、補助デバイス34は、第2のカメラ46bを使用して、その視野内にあるものを示す第2のカメラ出力を生成することができる。そうしたカメラ出力は、例えば、(速度が規則的であるか不規則であるかに関わらず)1秒あたり少なくとも3回であってよい第2の速度で生成される。図5に示される実施形態では、補助デバイス34は、使用時、用量ダイヤル設定中または用量送達中に注射デバイス10の数字スリーブ17が回転するときに第2のカメラ46bの視野を通って数字26が連続的に動かされるように構成される。結果的に、第2のカメラ出力は、第2のカメラ46bの視野内で投薬量窓28と整列した特定の数字26を示す。
【0043】
図2図5を比較してみると、この例における第1および第2のカメラ46a、46bの視野によって包含される投薬量窓28のそれぞれの領域が明らかになろう。次に、第1および第2のカメラ出力がその後どのように使用されるかを説明する。
【0044】
第1のカメラ出力に関して、プロセッサ40は、この情報を使用して数字スリーブ17の回転速度を監視する。それを行う様々な方法があるが、これは、プロセッサ40によって第1のカメラ46aにより生成される画像のコントラストの分析を実行することにより行われる。コントラストの度合が所定の値よりも小さいと判定された場合、スリーブ17は速度閾値を上回る速度で回転していると考えられる。これについては以下により詳細に説明する。
【0045】
図2に示される実施形態では、スリーブは白色であり、目盛32は黒色である。第1のカメラ46aが第1のカメラ出力を生成するために情報を収集するのにかかる時間は、以下、第1のカメラ露出時間t露出と称される。注射デバイス10が使用されていない場合、第1のカメラ露出時間t露出の間、スリーブ17は回転しない。この露出時間t露出中の視野内におけるスリーブ17の現れ方を示す第1のカメラ出力を分析するとき、プロセッサ40は、スリーブ17の一部の領域が黒く現れ(すなわち、そこに目盛32が配置されており)、またスリーブの一部の領域が白く現れる(すなわち、そこに目盛32が配置されていない)ことを判定する。そうした黒色領域と白色領域とのコントラストは、高い値を有し、つまり所与の照明についてのプロセッサ40により検出可能な最大コントラストである。したがって、特定の第1のカメラ露出時間t露出の間、プロセッサ40が第1のカメラ46aからの画像のコントラストの度合が高いと判定した場合、プロセッサは、そのような露出時間中にスリーブ17が回転しなかったことを判定する。
【0046】
例えば用量がダイヤル設定されるまたは投薬される、注射デバイス10の使用時、特定の第1のカメラ露出時間t露出の間、スリーブ17は回転する。注射デバイス10の使用時におけるそのような第1のカメラ露出時間t露出の間、目盛32の部分(part)および目盛32が配置されていないスリーブ17の部分は、視野内の一領域を通って動く。換言すると、スリーブ17上の黒色領域と白色領域の両方が視野内の一領域を通って動く。視野のこの部分内に現れたものを示すカメラ出力を生成するのに使用される画素は、第1のカメラ露出時間t露出の間にスリーブ17が灰色で現れたことを示すカメラ出力信号を出力する。
【0047】
前述のことを考慮に入れると、スリーブ17は、第1のカメラ露出時間t露出の間にいくつかの画素だけしか黒色領域と白色領域の両方に露出されないような速度で回転されると理解されよう。その露出時間t露出の過程で、他の画素は、スリーブ17上の同じ色を含む領域に露出される。図6および図7は、第1のカメラ露出時間t露出の間、いかにして目盛32が第1のカメラ46aの視野を通って動かされるかを示している。
【0048】
図6は、第1のカメラ露出時間t露出の始めにおける目盛32の視野内への現れ方を示し、図7は、第1のカメラ露出時間t露出の終わりにおける目盛32の視野内への現れ方を示している。目盛は、図面に示される方向に下方に動き、図6の最も高いところに示されているマークは、図7の最も低いところに示されているマークである。この例では、第1のカメラ露出時間t露出の間、A、C、D、E、G、H、IおよびKで示される画素は、スリーブ17上の黒色領域と白色領域の両方に露出される。B、FおよびJで示される画素は、同じ色(BおよびJの場合は白色、Fの場合は黒色)に露出される。したがって、この露出時間t露出に関連する第1のカメラ出力を分析するとき、プロセッサ40は、画素A、C、D、E、G、H、IおよびKについて、スリーブ17が、平均すると灰色であるが、目盛が第1のカメラ露出時間の間に関連する画素に対して入射した露出時間の割合が異なるため、様々な濃淡の灰色で現れたことを判定する。しかし、画素B、FおよびJに関する出力から、プロセッサ40は、露出時間t露出の間、隣り合わない画素Bと画素Fとの間および隣り合わない画素Fと画素Jとの間だけに高いコントラストがあり、他の画素の対の間により低いコントラストがあることを判定する。
【0049】
スリーブ17がさらに速く回転するとき、第1のカメラ46aの(図6および図7の例ではAからKで示される)各画素52は、第1のカメラ露出時間t露出の間、スリーブ17の黒色領域と白色領域の両方に露出される。したがって、そうした露出時間t露出に関連する第1のカメラ出力を分析するとき、プロセッサ40は、第1のカメラ露出時間t露出の間、全ての画素52について、スリーブ17が平均して灰色で現れたことを判定する。したがって、プロセッサ40は、画像におけるコントラストの度合が低い、つまり最大検出可能コントラスト(すなわち黒色と白色の差)よりも著しく低いことを判定する。
【0050】
数字スリーブ17の回転速度の度合は、任意の適切な方法でプロセッサ40により得ることができる。例えば、それは、第1のカメラ出力画像における黒色部分と白色部分との間の移行部を分析することによる境目の鮮明さの検出を含む。あるいは、それは、例えば黒色でも白色でもないが灰色である画素の数または割合を判定する、画素の総数の分析を含むことができる。灰色画素は、最大輝度(白色)によって定義される閾値と最小輝度(黒色)によって定義される閾値との間にある輝度値を有するとして識別される。例えば、閾値は、最大値と最小値の20%から80%の間の輝度値を有する画素を灰色画素にするようにすることができる。あるいは、最大値および最小値は、予め定義され、個々の第1のカメラ出力に基づかなくてもよい。
【0051】
プロセッサ40は、数字スリーブ17が速度閾値を上回る速度で回転していないと判定すると、プロセッサ40は、第2のカメラ46bから受けた第2のカメラ出力を使用する。そのような出力は、第2のカメラ46bの視野内で注射デバイス10の投薬量窓28と整列した数字を示す。上述したように、プロセッサ40は、この出力を使用して、投薬量窓28内に表示された用量を判定する。これは、ダイヤル設定されたインスリン量、または注射の過程でまだ投薬されていないインスリン量に関する。図5に示される実施形態では、これは、プロセッサ40により光学式文字識別機能を実行して第2のカメラ46bの視野内にある特定の数字26を判定することにより行われる。そのような情報に基づいて、プロセッサ40は、次に、ダイヤル設定されたインスリン量、または注射の過程でまだ送達されていない(もしくは注射の過程ですでに送達された)ダイヤル設定されたインスリン量を判定する。
【0052】
さらに、プロセッサ40は、第1のカメラ出力を使用して、数字スリーブ17の回転速度を監視し続ける。数字スリーブ17が速度閾値を超えて回転していると判定が下されると、プロセッサ40は、スリーブ17上に印付けられた用量を判定するための第2のカメラ出力の分析をやめる。しかし、プロセッサ40は、第1のカメラ出力を使用して数字スリーブ17が速度閾値未満の速度で回転していると判定すると、プロセッサ40は、第2のカメラ出力を使用し始める。換言すると、プロセッサ40は、第2のカメラ出力を使用して、ダイヤル設定されたインスリン量、または注射の過程でまだ投薬されていないインスリン量(もしくは注射中にすでに投薬されたインスリン量)の判定を再開する。
【0053】
数字スリーブ17の動きが速すぎるときに第2のカメラセンサ出力の処理をやめることによって、補助デバイス34の電力消費が低減される。さらに、これは、速度閾値が適切に選択される場合、プロセッサ40による第2のカメラセンサの視野内の数字の確実な識別ができなくなってから、性能のいかなる低減なしに達成される。
【0054】
上述した第1および第2のカメラ46a、46bの動作、ならびにそれぞれのカメラ出力の処理は、プログラムメモリ42に記憶されている動作アプリケーションに含まれる命令に従って動作するプロセッサ40により実施される。
【0055】
第1のカメラ46aは、第2のカメラ46bよりも光に対する感受性が高いので、第1のカメラ46aは、より速い速度でカメラ出力を生成することができる。より具体的には、第1のカメラ46aは、高速センサを含み、第2のカメラ46bは低速センサを含む。したがって、所与の照明光量について、数字スリーブ17の信頼性の高い画像を生成することができるカメラ出力を生成するのに第1のカメラ46a(高速センサ)がかかる時間は、第2のカメラ46b(低速センサ)よりも短い。それを上回ると数字26が第2のカメラ46bに対してぼやけることになる速度閾値を増加させる1つの方法は、例えば照明ユニット47を使用して投薬量窓28の照明レベルを増加させることである。したがって、所与の露出時間の間により多くの光が第2のカメラ46bに入射するようになれば、第2のカメラ46bが、より短い時間で、数字スリーブ17の信頼性の高い画像を生成することができるカメラ出力を生成することが可能になる。しかし、不利なことには、照明レベルを増加させると電力消費も増加してしまう。具現化された装置は、用量の信頼性の高い度合が、投薬量窓28の照明レベルを増加させなくてもプロセッサ40で判定可能になることを提供する。
【0056】
第1および第2のカメラ46a、46bは別個のデバイスを含むことができるが、代替実施形態では、それらは、そうではなく、共通の光検出デバイスの異なる領域を含むことができることに留意されたい。例えば、第1および第2のカメラ46a、46bは、同じ基板上に設けられたそれぞれのカメラを含むことができる。あるいは、第1のカメラ46aは、CCDデバイスの第1の複数の画素を含むことができ、第2のカメラ46bは、同じCCDデバイスの第2の複数の画素を含むこともできる。より具体的には、第1のカメラ46aは、カメラの第1のカメラセンサ部分を含むことができ、第2のカメラ46bは、同じカメラの第2のカメラセンサ部分を含むことができる。
【0057】
本明細書に記載の例では、図2および図5を参照すると、数字スリーブ17上に設けられる特徴は、マーカであり、数字26と目盛32とを含む。しかし、本発明は、そうした数字スリーブ17と一緒の使用に限定されるわけではない。例えば、数字スリーブ17上にある特徴は、数字26ではなく、複数の文字、シンボルまたはそれぞれのコードセクションを含むマーカであってもよい。そうしたマーカは、数字スリーブ17上に印刷、彫刻またはそれから突出することができる。そうした文字、シンボルまたはコードセクションに対応する第2のカメラ出力から、ダイヤル設定された用量の量、または注射の過程でまだ送達されていない(もしくは注射の過程ですでに送達された)ダイヤル設定された用量の量を判定するように、プロセッサ40を構成してもよい。やはりまた、数字スリーブ17上に設けられる本明細書に記載された類の目盛32の代わりに、数字スリーブ17は、同様の目的のために設けられる、例えば数字スリーブ17上における一連のドット、波形部および/もしくは突出部、バーコードまたはその任意の組合せである他のマーカのような他の特徴を備えることもできる。
【0058】
数字スリーブ17がダイヤル設定されるまたは送達される用量の量を示す1つまたはそれ以上のシンボルを備える実施形態では、補助デバイス34は、OCR機能を実行する代わりに、そうしたシンボルからダイヤル設定されたまたは送達された対応する用量の量を判定するパターン認識機能を実行することができる。
【0059】
さらに、上述にも関わらず、1組のマーカだけを含む数字スリーブ17を有する注射デバイス10と共に機能するように、補助デバイス34を構成してもよい。そうした注射デバイスの数字スリーブ17は、例えば、別々に、目盛32も数字26(または、例えば文字、シンボルもしくはコードのような任意の他のマーカ)も備えないこともできる。そうではなく、そうした注射デバイスの数字スリーブ17は、1組のシンボルを備えることもできる。そのような各シンボルの一部は、数字スリーブ17が回転するときの第1のカメラ46aの視野内に存在することができ、それと同時に、そうした各シンボルの他の部分は、第2のカメラ46bの視野内に存在することができる。第2のカメラ46bの視野内に存在するものからダイヤル設定されたまたは送達された用量の量を判定するのに、パターン認識機能を上述の方法で使用することができる。第1のカメラ46aの視野内に存在するものは、上述した目盛32と同じ目的で使用される。より具体的には、数字スリーブ17が回転するときに第1のカメラ46aの視野を通り抜ける各シンボルの一部は、スリーブの回転速度を監視するのに使用される。
【0060】
注射デバイス10の数字スリーブ17は、白色である必要はなく、またマーカ(例えば数字26)は黒色である必要はないと理解されよう。そうではなく、それらは、補助デバイス34がそうした色を互いに区別することができるのであれば、あらゆる色であってよい。
【0061】
上述では、第1のカメラセンサおよび第2のカメラセンサからの出力が調査される速度は異なるが、そうではなく、同じであってもよい。
【0062】
さらに、上述では、第2のカメラセンサは、絶えず起動され、第2のカメラ出力は、数字スリーブ17の回転速度が閾値を上回ると処理されないが、そうではなく、その状態になったら第2のカメラ出力を提供しないように、第2のカメラセンサを制御してもよい。これによって、電力消費がさらに低減される。
【0063】
さらに、光センサユニット46(図4参照)は、複数の画素53を含む単一のカメラを含むこともできる。使用時、数字スリーブ17上のマーカ(例えば、数字、シンボルなど)は、画素53の視野を通って動かされる。カメラは、画素53の視野内のシーンを示すカメラ出力を生成する。ある動作モードでは、プロセッサ40は、画素53aのサブセットに関するカメラ出力しか分析しない。他の動作モードでは、プロセッサ40は、全ての画素53に関するカメラ出力を分析する。
【0064】
画素53のサブセットは、用量がダイヤル設定されるまたは投薬されるときに数字スリーブ17上のマーカがそれに沿って動かされる軸に実質的に平行な画素53aの列を含むことができる。図8の例では、数字26は、用量がダイヤル設定されるまたは投薬されるとき、軸55に沿って動かされる。
【0065】
ある動作モードでは、プロセッサ40は画素53aのサブセットに関するカメラ出力しか使用しない。そうしたカメラ出力は、数字スリーブ17が速度閾値を上回る速度で回転しているかどうかを判定するのに使用される。プロセッサ40は、画素53aのサブセットに関するカメラ出力だけを使用して生成された画像のコントラストの分析を実行することによってそうした判定を下すことができる。この分析は、上述した方法に従うことができる。
【0066】
数字スリーブ17が速度閾値を上回る速度で回転していると判定されると、プロセッサ40は、画素53aのサブセットからの出力だけを使用して回転速度を監視し続ける。回転速度が、その後、速度閾値をもはや超えていないと判定されると、他の動作モードに入る。この動作モードでは、プロセッサ40は全てのカメラ出力を使用するか、換言すると、各画素53に関するカメラ出力を使用する。
【0067】
このモードでは、全てのカメラ出力が、数字スリーブ17の回転速度の継続的な監視、および、ダイヤル設定された用量の量または注射の場合におけるまだ送達されていない用量の量(もしくは注射の過程ですでに送達された量)の判定に使用される。これは、プロセッサ40によって2つの別個の分析を行うことによって達成される。一方のそうした分析は、プロセッサ40が画素53の総量の視野内に存在する特定のマーカ(例えば、数字)を判定することを含む。これは、すでに討論したように、パターン認識または文字認識の機能の実行によって達成される。他方のそうした分析は、画素53aのサブセットに関するカメラ出力だけを使用して数字スリーブ17の回転速度が閾値を超えているかどうかを監視し続けることを含む。
【0068】
数字スリーブ17の回転速度が閾値を超えていないと判定された場合、プロセッサ40は2つの別個の分析を実行し続ける。しかし、数字スリーブ17の回転速度が閾値を上回ると判定されると、プロセッサ40は、2つの別個の分析の実行をやめ、数字スリーブの回転速度を監視するために、画素53aのサブセットに関するカメラ出力だけを使用することに戻る。換言すると、プロセッサは、全てのカメラ出力を使用することをやめ、画素53aのサブセットに関するカメラ出力だけの使用に戻る。
【0069】
本明細書の全体を通して、図1におけるようなSolostar(商標)注射ペンに関連した補助デバイス34の使用例が挙げられている。図2を参照すると、投薬量ノブ24は、用量がダイヤル設定されるまたは投薬されるとき、投薬量窓28に対して動くと理解されよう。しかし、すでに述べたように、本発明の補助デバイス34は、Solostar(商標)注射ペンとの使用に限定されるのではなく、他のタイプの注射デバイスと一緒に使用することもできる。そのような注射デバイスの1つは、Solostar(商標)注射ペンと類似しているが、その投薬量ノブは、投薬量窓に対して並進運動することができない。そのような注射デバイスでは、投薬量ノブは、ダイヤル設定されるおよび/または投薬される用量の量に従ってのみ回転的に動く外側スリーブを含む。換言すると、用量がダイヤル設定されるまたは投薬されるとき、投薬量ノブは、薬剤がダイヤル設定されるまたは注射デバイスから送達されるそれぞれの速度に対応する速度で回転する。補助デバイス34は、図2に示される目盛32と同様の目的でそうした注射デバイスの投薬量ノブ上に設けられる特徴を使用することができる。これらの特徴は、例えば、使用者による投薬量ノブの把持を促進するための波形部を含むことができる。投薬量ノブ上の特徴は、用量がダイヤル設定されるおよび/または投薬されるとき、第1のカメラ46aの視野を通って動かされると理解されよう。さらに、図2にある類の数字のような数字スリーブ17上に設けられる特徴は、用量がダイヤル設定されるおよび/または投薬されるとき、第2のカメラ46bの視野を通って動かされる。第1および第2のカメラ46a、46bの出力は、上述と同様の方法で、注射デバイスの数字スリーブの回転速度の監視、および、ダイヤル設定された用量の量、または注射の場合における送達された(もしくは注射の過程でまだ送達されていない)用量の量の判定に使用される。
【0070】
図5および図8を参照して、いくつかの実施形態では、分析される数字スリーブ17の領域は、2つの組の数字を含まなくてもよいと理解されよう。換言すると、図5および図8の例では、センサは、所与の時間で2つの数字(例えば、「88」と「88」)が視野を占めるのに十分な広さの視野を有する。しかし、本発明の教示は、視野が単一の数字(例えば、「88」)だけしか視野内に存在することができないような場合にも、等しく適用される。
【0071】
最後に、上述の実施形態は、単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を制限するものではないと理解されよう。他の変形形態および修正形態は、本出願を読めば当業者なら理解できるであろう。さらに、本出願の開示は、本明細書に明示的もしくは暗示的に開示されるあらゆる新規な特徴もしくはあらゆる新規な特徴の組合せ、またはそれらのあらゆる一般論を含むと理解されるべきであり、本出願または本出願から導出される応用例の実行中、あらゆるそのような特徴および/またはそのような特徴の組合せを包含するように、新しい特許請求の範囲を策定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図5a
図6
図7
図8