(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(a)中、前記細胞培養槽(1)内で前記生体高分子を発現する前記細胞、前記細胞又は前記微生物を適切な条件下に適切な培地中で、前記生体高分子を発現する前記細胞が特定の細胞密度に達し、もしくは前記生体高分子が特定の濃度に達し、前記細胞が特定の細胞密度に達し、又は前記微生物が前記微生物の特定の密度に達するまでの十分な時間、前記不純物フィルタユニット(3)を介して不純物を除去することなく発酵させる、請求項1に記載の方法。
工程(a)に先行して、前記細胞培養槽(1)内で前記生体高分子を発現する前記細胞、前記細胞又は前記微生物を適切な条件下に適切な培地中で、前記生体高分子を発現する前記細胞が特定の細胞密度に達し、もしくは前記生体高分子が特定の濃度に達し、前記細胞が特定の細胞密度に達し、又は前記微生物が前記微生物の特定の密度に達するまでの十分な時間、前記不純物フィルタユニット(3)を介して不純物を除去することなく発酵させる、請求項1または2に記載の方法。
工程(a)において、少なくとも50L、例えば、少なくとも75L、例えば、少なくとも100L、例えば、少なくとも200L、例えば、少なくとも300L、例えば、少なくとも500Lの適切な培地中、前記細胞培養槽(1)において前記生体高分子を発現する前記細胞、前記細胞又は前記微生物を発酵させる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
工程(a)において、前記細胞が少なくとも三千万細胞/mlの細胞密度に達するまで、前記細胞培養槽(1)において前記生体高分子を発現する細胞、前記細胞又は前記微生物を発酵させる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
工程(b)において、前記生成物及び不純物を含む前記培地の少なくとも30%を生成物採取モジュール(4)を介して前記細胞培養槽(1)から除去する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
前記不純物フィルタは、前記生体高分子の分子量の少なくとも10%の最大公称分子量カットオフ(NMWC)を有する孔径を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
本発明の詳細な実施態様の説明に先立って、本発明の主要な側面及び実施態様に関連する特定の用語の定義を行う。全ての用語は、これらの用語についての当業者の通常の理解に従って定義する。
【0017】
本明細書に用いている「生体高分子」という用語は、ポリペプチド、タンパク質又はウイルス粒子のことを指し、これらは天然のもの又は生物学的もしくは合成的に修飾されたものとすることができ、断片、多量体、凝集体、複合体、融合産物などを含む。
【0018】
本明細書に用いている「細胞」という用語は、原核細胞及び真核細胞のいずれをも包含する。
【0019】
本明細書に用いている「微生物」という用語は、原核生物、即ち、細菌及び古細菌の全て、並びに原生動物、菌類、藻類、微小植物(緑藻類)及び輪虫、プラナリア(rotifers planarians)などの動物、それにウイルスを含む種々の形態の真核生物を包含することを意味する。
【0020】
本明細書に用いている「バイオリアクター」という用語は、生物学的に活性な環境を支持する任意の装置又はシステムのことを指す。1つの事例では、バイオリアクターは、有機体又はそのような有機体由来の生化学的に活性な物質にかかわる化学的プロセスを実施する容器であるが、これに限定されるものではない。このプロセスは好気性又は嫌気性とすることができる。バイオリアクターは、一般的に円筒形で、大きさが数リットル〜数立方メートルの範囲にあり、ステンレス鋼でできている場合が多いが、使い捨て材料などの他の材料でできていることもあり得よう。
【0021】
また、バイオリアクターは、細胞培養との関連で細胞又は組織を増殖させるように作られている装置又はシステムのことを指すこともできる。運転方式に基づいて、バイオリアクターは、回分式、流加式又は連続式(例えば、連続撹拌槽リアクターモデル)と分類できる。バイオリアクターの一例は灌流システムである。このバイオリアクターは、細胞に新しい新鮮又は濃縮培地を供給するための1つ以上の注入口及び生成物を採取又はバイオリアクターを空にするための1つ以上の出口を備えることができる。さらに、上記バイオリアクターは、このバイオリアクターに分離装置を取り付けることができるような具合に構成された少なくとも1つの出口を備えることができる。一般に、ガス(即ち、空気、酸素、窒素、二酸化炭素)流量、温度、pH及び溶存酸素レベル並びに撹拌速度/循環速度のようなバイオリアクターの環境条件は厳密に監視し、制御することができる。
【0022】
本明細書に用いている「不純物」という用語は、バイオリアクターに存在する細胞もしくは微生物により産生される、又は発酵過程で死滅もしくは崩壊した細胞もしくは微生物から生じる好ましくない化学もしくは生体化合物のことを指す。不純物としては、例えば、エチルアルコール、ブチルアルコール、乳酸、アセトン−エタノール、気体化合物、ペプチド、脂質、アンモニア、芳香族化合物及びDNA・RNA断片並びに培地成分又は生体高分子の分解産物を挙げることができる。
【0023】
本明細書に用いている「注入口」という用語は、培地、緩衝液又は水などの流体の細胞培養槽、容器、タンク又はユニットへの導入を可能にすると共に、通常、例えば、管又は弁を接続することができる継ぎ手を備えた開口部である任意の手段を包含するものである。
【0024】
本明細書に用いている「出口」という用語は、培地、緩衝液又は水などの流体が細胞培養槽、容器、タンク又はユニットから出るのを可能にすると共に、通常、例えば、管又は弁を接続することができる継ぎ手を備えた開口部である任意の手段を包含するものである。
【0025】
本明細書に用いている「流体」という用語は、流動する任意の物質を定義するものであり、従って、流動することができる液体及び気体を含む。本明細書に用いている「流体が接続されている」という用語は、液体、例えば、培地又は緩衝液、などの流体が容器、タンク又はユニット(例えば、不純物フィルタユニット)と別の容器、タンク、槽又はユニット(例えば、細胞培養槽)との間を流動することができることを意味する。この流体接続は、流体接続による流体の流動を決められた通りにいつでも開始又は停止することができるような1つ以上の弁及び/又は保持容器によって遮断することができる。
【0026】
本明細書に用いている「培地」という用語は、細胞培養培地のことを指す。数多くの細胞培養培地が知られ、市販されている。そのような培地は、一般に、特定種類の細胞の培養に適した組成を有し、塩類、アミノ酸類、ビタミン類、脂質、界面活性剤、緩衝剤、成長因子、ホルモン、サイトカイン、微量元素類及び炭水化物を含むことができる。
【0027】
本明細書に用いている「発酵」、「細胞を発酵させる」及び「培養する」という用語は、広く、増殖培地中又は上における細胞又は微生物の大量増殖のことを指す。本明細書に用いている発酵、細胞を発酵させる及び培養する、は同じ意味で用いることができ、細胞が通常その自然の環境以外で、制御された条件下において増殖するプロセスのことである。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明者は、生成物の大きさを下回る大きさの不純物及び培地を細胞培養槽から除去しながら細胞培養槽に新しい培地を添加してフィル・アンド・ドロー発酵プロセス中に不純物フィルタユニットを介して除去した培地と交換することを可能にする不純物フィルタユニットを装備したバイオリアクターシステムを用いることにより、採取された培地における有意により高濃度の対象生成物及び消費培地1リットル当たりの生産性の増大を得ることができることを見出した。このプロセスは、本明細書では、高密度フィル・アンド・ドロー発酵プロセスと呼ぶこともある。
【0029】
生成物
本明細書に用いている生成物とは、細胞によって発現される生体高分子、細胞及び微生物のことを指す。
【0030】
生体高分子とは、ポリペプチド、タンパク質又はウイルス粒子のことを指し、これらは天然のもの又は生物学的もしくは合成的に修飾されたものとすることができ、断片、多量体、凝集体、複合体、融合産物などを含む。一実施態様において、上記生体高分子は組換えタンパク質などのポリペプチドである。本明細書に用いているタンパク質又はポリペプチドは同じ意味で用いることができ、約30個のアミノ酸残基よりも長いアミノ酸の鎖のことを指す。タンパク質は、2つ以上の組立ポリペプチド鎖、タンパク質断片、ポリペプチド、オリゴペプチド又はペプチドを含む単量体又は多量体として存在することができる。
【0031】
本発明の方法を用いて産生させることができる対象ポリペプチドの例としては、例えば、抗体又はその断片、血液凝固因子、サイトカイン、酵素、ペプチドホルモンなどの治療用組換えタンパク質が挙げられる。そのようなタンパク質の具体例としては、ヒト成長ホルモン、卵胞刺激ホルモン、第VIII因子、第VII因子、第IX因子、エリスロポエチン(EPO:erythropoietin)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF:granulocyte colony−stimulating factor)、アルファ−ガラクトシダーゼA、α−L−イズロニダーゼ(rhIDU;ラロニダーゼ)、N−アセチルガラクトサミン−4−サルフェート(rhASB;ガルスルファーゼ)、DNアーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子(TPA:tissue plasminogen activator)、グルコセレブロシダーゼ、インターフェロンα、インターフェロンβ及びインターフェロンγなどのインターフェロン(IF:interferon)、インスリン、インスリン誘導体、インスリン様成長因子1(IGF−1:insulin−like growth factor 1)、テネクテプラーゼ、抗血友病因子、ヒト凝固因子及びエタネルセプト、並びにトラスツズマブ、インフリキシマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ダクリズマブ、アダリムマブ、アブシキシマブ、アフツズマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ、ダクリズマブ、デノスマブ、エクリズマブ、エドレコロマブ、ゴリムマブ、イブリツモマブチウキセタン、メポリズマブ、モタビズマブ、ナタリズマブ、オファツムマブ、オマリズマブ、オレゴボマブ、パリビズマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、テフィバズマブ及びザノリムマブなどの抗体が挙げられる。
【0032】
本発明の別の実施態様では、上記生体高分子は、成長ヒト成長ホルモン、卵胞刺激ホルモン、第VIII因子、第VII因子、第IX因子、エリスロポエチン(Factor IX Erythropoietin)(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロン(IF)、インスリン、インスリン誘導体、インスリン様成長因子1などの組換えタンパク質である。
【0033】
本発明のさらに別の実施態様では、上記生体高分子は、抗体又はその断片(この場合、断片は、例えば、Fab断片、Fv断片もしくは一本鎖Fv(scFv)断片とすることができる)、血液凝固因子、サイトカイン、酵素又はペプチドホルモンである。
【0034】
本発明の好ましい実施態様では、上記生成物は、第VIIa血液凝固因子などの血液凝固因子である。
【0035】
ポリペプチドは、一般に、プロモータ配列と呼ばれる調節配列の制御下に哺乳動物細胞
において発現される。ポリペプチドを発現している細胞は、構成的プロモータ(即ち、非調節配列;これは関連遺伝子の連続的な転写を可能にする)の制御下又は誘導プロモータ(生物的又は非生物的要因の存在又は非存在によって誘導される調節配列)の制御下におくことができる。構成的プロモータの一例はチャイニーズハムスターEF−1αプロモータである。一実施態様では、上記生体高分子は、チャイニーズハムスターEF−1α調節配列の制御下に発現される。
【0036】
本発明のバイオリアクター装置及び方法を用いることによって、高生産性でポリペプチドを発現させることが可能である。従って、一実施態様では、細胞は、ポリペプチド、例えば、抗体を発現し、少なくとも1グラム/L/日、好ましくは2又は3グラム/L/日以上といった高値の生産性を有する。
【0037】
本発明のシステム及び方法を用いて製造した対象単離生成物(例えば、ポリペプチド)は、この所与の生成物に関して当該分野で既知の方法により精製し、商業上適切な対象最終組成物(例えば、医薬組成物)に製剤化して適切な容器に包装することができる。
【0038】
本明細書に用いている生成物とは、細胞とすることもできる。この細胞は、全ての既知の生命体の基本的な構造及び機能単位である。細胞には2種類、即ち、真核及び原核細胞が存在する。原核細胞は、通常、自立しており、一方、真核細胞は、単細胞有機体として存在するか、多細胞有機体として存在する。原核細胞は、真核細胞よりも単純であり、従ってより小さく、真核細胞の核及び他の小器官の多くを欠いている。原核細胞には2種類、即ち、細菌及び古細菌が存在し、これらは類似の構造を共有している。植物、動物、菌類、粘菌、原生動物及び藻類は全て真核性である。原核細胞と真核細胞との主な違いは、真核細胞が、特定の代謝活動が行われる、膜結合区画を含むことにある。これらの中で最も重要なものは、真核細胞のDNAを収容している、膜で仕切られた区画である細胞核である。
【0039】
一実施態様では、上記生成物は哺乳動物細胞などの細胞から選ばれる。
【0040】
別の実施態様では、上記生体高分子を発現する細胞は、大腸菌(E.coli)、桿菌(Bacillus)、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピチア(Pichia)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、フザリウム(Fusarium)属又はクルイベロミセス(Kluyveromyces)属の酵母、CHO(Chinese hamster ovary)(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、ハイブリドーマ、BHK(baby hamster kidney)(仔ハムスター腎)細胞、骨髄細胞、HEK−293細胞、PER.C6(登録商標)細胞、CAP(登録商標)及びCAP−T(登録商標)細胞株などのヒト羊水鏡を含む羊水鏡、ヒトリンパ芽球様細胞並びにNSO細胞などのマウス細胞からなる群から選ばれる少なくとも1種の細胞である。
【0041】
さらに別の実施態様では、上記生体高分子を発現する細胞は、CHO、NSO、PER.C6(登録商標)、BHK又はHEKなどの哺乳動物細胞から選ばれる。
【0042】
本明細書に用いている微生物は、原核生物、即ち、細菌及び古細菌の全て、並びに原生動物、菌類、藻類、微小植物(緑藻類)及び輪虫、プラナリア(rotifers planarians)などの動物、それにウイルスを含む種々の形態の真核生物を含む。本発明の一実施態様では、上記微生物は、真菌、酵母、フミコーラ(humicola)、サッカロミセス、アスペルギルス、桿菌、乳酸菌(lactobacillus)から選ばれる。
【0043】
本明細書に用いている生成物はウイルスとすることができる。ウイルスは、有機体の生細胞の内部でのみ複製する小さな感染体である。ウイルスは、動物及び植物から細菌及び古細菌まで全ての種類の有機体に感染することができる。ウイルス集団は、無細胞であるので、細胞分裂によって増殖しない。その代わりに、これらは、宿主細胞の機構及び代謝を利用して自身の多重コピーを作り、細胞内で組み立てられる。ワクチン接種はウイルス感染の有効な予防法となり得る。ワクチンは、弱毒化もしくは死滅ウイルス又はウイルスタンパク質(抗原)で構成することができる。生ワクチンは、疾患を引き起こさないが、それでも免疫を付与する弱体化形態のウイルスを含む。そのようなウイルスは弱毒型と呼ばれる。サブユニットワクチンを製造するのにバイオテクノロジー及び遺伝子操作技術が用いられる。こうしたワクチンはウイルスの外被タンパク質のみを用いる。B型肝炎ワクチンはこのタイプのワクチンの例である。本発明の一実施態様では、上記生成物はウイルス又はウイルスの一部である。
【0044】
バイオリアクター
本明細書に用いているバイオリアクターとは、例えば、生物学的製剤製造用の細胞の培養のための生物学的に活性な環境を支持する任意の装置又はシステムのことを指す。バイオリアクターは、大きさを2、3リットルから数立方メートル(即ち、数千リットル)の範囲とすることができ、例えば、ステンレス鋼もしくはガラス製の培養槽をベースとした通常のバイオリアクター又は使い捨てバッグなどの使い捨て材料をベースとした「単回使用の」バイオリアクターとすることができる。
【0045】
バイオリアクターは、これまで一般に、ステンレス鋼製タンクをベースとすることが多い従来型であったが、通常多層構造のプラスチック材料でできた使い捨てバッグをベースとした使い捨てバイオリアクターがより一般化しつつある。かき混ぜのために、一部の単回使用のバイオリアクターは、従来のバイオリアクターの撹拌器と類似の撹拌器を使用するが撹拌器はプラスチックバッグに組み込まれているのに対して、他の単回使用のバイオリアクターはロッキング運動によってかき混ぜる。撹拌器を用いた単回使用のバイオリアクターは最大数千リットル、例えば、2000〜5000リットルの容量を有することができるが、ロッキングによる単回使用のバイオリアクターは、通常最大約1000リットルの容量を有する。
【0046】
単回使用のバイオリアクターは、洗浄及び滅菌の必要性の低減と共に付随費用の有意な削減を含む、従来のバイオリアクターに対するいくつかの利点を有する。さらに、医薬品製造のための複雑な品質証明及び検証手順を簡略化することができ、交差汚染のリスクが低下する。さらに、単回使用のバイオリアクターは従来のバイオリアクターに比して含む部品が少ないため、初期及び維持費用が低下する。
【0047】
運転方式に基づいて、バイオリアクターは、回分式、流加式又は連続式と分類することができる。連続式バイオリアクターの例にはケモスタット及び灌流バイオリアクターがある。このバイオリアクターは、一般に、細胞に培養培地を供給するための1箇所以上の注入口及び生成物を採取し、又はバイオリアクターを空にするための1箇所以上の出口を備えている。さらに、上記バイオリアクターは、このバイオリアクターに不純物フィルタユニットを取り付けることができるような具合に構成された少なくとも1つの出口を備えることができる。一般に、ガス(即ち、空気、酸素、窒素、二酸化炭素)流量、温度、pH及び溶存酸素レベル並びに撹拌速度/循環速度などのバイオリアクターの環境条件は厳密に監視し、制御することができる。
【0048】
上記バイオリアクターは、任意選択で、ビタミン又は成長因子などの成分を添加するための別の注入口を備えることもできる。この場合、そのような成分は、培地に加えて、細胞培養槽に添加することができ、濃縮又は希釈形態とすることができる。
【0049】
細胞培養槽
本明細書に用いている「細胞培養槽」とは、適切な培地中、適切な条件下で細胞を増殖させるバイオリアクターシステムの不可欠な部分のことを指す。この細胞培養槽は、上記で説明したように、単回使用の槽、例えば、使い捨てバッグ、又は従来の再使用可能な槽、通常はステンレス鋼もしくはガラス製の槽とすることができる。ステンレス鋼製槽は、通常、所定のポートアセンブリを用いて構成されるのに対して、単回使用のバッグは、使用後に捨てられる、前もって滅菌したプラスチック培養チャンバーを使用する。この場合には、場所をとる高価な定置洗浄(CIP:clean−in−place)及び定置蒸気滅菌(SIP:steam−in−place)装置は不要になると同時に、製造所要時間が短縮する。
【0050】
本発明の細胞培養槽は、一般に、少なくとも50L、好ましくは少なくとも100L、より好ましくは少なくとも250L、さらにより好ましくは少なくとも500Lの容量を有する。多くの場合、その容量は、例えば、少なくとも1000L又は少なくとも2000Lと、さらに大きくなるであろう。
【0051】
本発明の一実施態様では、上記方法は、少なくとも50L、例えば、少なくとも75L、例えば、少なくとも100L、例えば、少なくとも200L、例えば、少なくとも300L、例えば、少なくとも500Lの適切な培地中、細胞培養槽(1)において上記生体高分子を発現する細胞、上記細胞又は上記微生物を発酵させることを含む。
【0052】
不純物フィルタユニット
数多くの特殊化フィルタ及びろ過方法が、それらの化学的及び物理的性質に従って材料を分離するために開発されてきた。既知のフィルタとしては、平面フィルタ、プリーツフィルタ、マルチユニットカセット、及び中空糸などの管形態が挙げられる。本明細書に記載した発明の場合、無菌性が確保可能な限り、限外ろ過技術の任意のシステムを適用することができる。
【0053】
本明細書に述べたポリペプチドの製造及び不純物の除去用に適用可能なろ過システムの例には、カートリッジシステム、プレート及びフレームシステム並びに中空糸システムなどのシステムがある。これらのシステムは、ポンプで液体を膜を横切って送り込むことで、又は(例えば、PallSep(商標)によって供給されるような)振動によって、又は交互接線流(ATF:alternating tangential flow)によって操作することができ、高分子及びセラミック膜は共に上記ろ過プロセスに十分適している。当業者であれば、適切な性質を有する膜を選ぶことができよう。
【0054】
中空糸膜は、多種多様な産業において問題なく使われてきており、膜充填密度が高く、透過液背圧に耐えることができること、従ってシステムの設計及び運用に柔軟性を持たせることができることなどのいくつかの利点を有する。中空糸カートリッジは、ろ過中、内部から外部へ働き、プロセス流体(未透過物)が中空糸の中心を流れ、膜糸の外部へ糸壁を通過するように浸透することを可能にする。接線流は膜汚染を抑えるのに役立たせることができる。中空糸膜システムと共に用いることができる他の操作技術としては透過液及び未透過液逆流によるバックフラッシングが挙げられる。
【0055】
そこで、上記不純物フィルタユニットは、バイオリアクターに取り付けた外部フィルタモジュール内に設置することができる。或いは、上記不純物フィルタは、バイオリアクターの内部に設置することができる。このフィルタユニットは、制御された横揺れが供給流体を介して膜要素を移動させるATFシステム又はPallSep(商標)システムなどの、フィルタの汚染を防止するポンプ又はシステムを含むこともできる。この揺れは膜表面において振動エネルギーを生じさせ、膜表面上方の小さな境界層に限定され、流体の大部分にはかからない(従来の接線流ろ過システムにおいて通常生じる剪断力よりも高い)剪断力を生じる。これにより、高固体供給流中でさえ、膜が保持種と共に固まらないようにする。
【0056】
一実施態様では、上記不純物フィルタユニットは、膜フィルタ、重力分離ユニット及び遠心分離ユニットから選ばれる。
【0057】
当業者であれば、上記不純物フィルタから不純物を灌流させることに関して不純物除去のための適切なフィルタのタイプ及び適切な膜公称分子量カットオフ(NMWC:membrane nominal molecular weight cutoff)孔径を選び、上記生成物採取出口を介して対象ポリペプチドを採取することができよう。
【0058】
NMWCが1000〜30,000(1〜30kDa)の範囲内、例えば、2000〜20,000(2〜20kDa)の範囲又は2000〜15,000(2〜15kDa)の範囲の不純物フィルタが選ばれることが多い。しかしながら、生成物が細胞である場合、NMWCが1000〜500,000(1〜500kDa)の範囲の不純物フィルタを選ぶことができるが、通常は、上記不純物フィルタは20,000(20kDa)未満のカットオフを有することが好ましい。従って、一実施態様では、上記不純物フィルタユニットは、NMWC孔径が少なくとも1000、例えば、2000〜15,000の範囲内の膜フィルタである。
【0059】
本発明の一実施態様では、上記不純物フィルタは、上記生体高分子の分子量の最大少なくとも10%、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%の公称分子量カットオフ(NMWC)を有する孔径を有する。
【0060】
別の実施態様では、上記不純物フィルタユニットは、分子量カットオフ(NMWC)孔径が対象生成物(例えば、ポリペプチド)の分子量(MW)の最大80%の膜フィルタである。例えば、対象ポリペプチドのMWが100,000(100kDa)である場合、上記不純物フィルタの好ましい最大カットオフは、この場合80,000(80kDa)であることになる。さらに好ましくは、上記不純物フィルタは、NMWC孔径が対象ポリペプチドのMWの最大50%である。従って、一実施態様では、上記不純物フィルタは、分子量カットオフ(NMWC)孔径が上記生体高分子のMWの最大80%であり、例えば最大50%である。
【0061】
長時間にわたる運転中に、発酵を停止させることなくフィルタを変え、システムを再滅菌することは可能である。
【0062】
採取物出口
一実施態様では、上記採取物出口は、その最も単純な形態では、単に、貯蔵又は更なる下流処理のために不純物及び培地に沿って生成物を収集するのに適した容器又はバッグに導く出口である。また、この採取物出口は、例えば、細胞、細胞デブリ及び上記生体高分子よりも大きい不純物を分離することができる分離装置と流体接続されていてもよい。
【0063】
上記バイオリアクター中に存在する細胞が十分な細胞密度に達している場合、又は上記採取物出口からの流出物中に十分な生成物が存在する場合、その生成物の採取を開始することができる。これは、例えば、分光光度計を用いて細胞密度を測定することにより、又は既知の手段、例えばポリペプチド生成物の場合には適切なタンパク質アッセイ方法を用いることによって対象生成物の量を測定することにより、判断することができる。
【0064】
細胞培養培地
本明細書に用いている培地とは、通常、細胞培養培地のことを指す。数多くの細胞培養培地が知られており、市販されている。そのような培地は、一般に、特定種類の細胞の培養に適した組成を有しており、塩類、アミノ酸類、ビタミン類、脂質、界面活性剤、緩衝剤、成長因子、ホルモン、サイトカイン、微量元素類及び炭水化物を含むことができる。塩類の例としては、マグネシウム塩、例えば、MgCl
2×6H
2O、鉄塩、例えば、FeSO
4×7H
2O、カリウム塩、例えば、KH
2PO
4、KCI、ナトリウム塩、例えば、NaH
2PO
4又はNa
2HPO
4及びカルシウム塩、例えば、CaCl
2×2H
2Oが挙げられる。アミノ酸類の例には、20種の天然アミノ酸、例えば、ヒスチジン、グルタミン、スレオニン、セリン、メチオニンがある。ビタミン類の例としては、アスコルビン酸塩、ビオチン、コリン、ミオ−イノシトール、D−パントテン酸塩(D−panthothenate)及びリボフラビンが挙げられる。脂質の例としては、脂肪酸、例えば、リノール酸及びオレイン酸が挙げられる。界面活性剤の例としては、Tween(登録商標)80及びPluronic(登録商標)F68が挙げられる。緩衝剤の一例はHEPESである。成長因子/ホルモン/サイトカインの例としては、IGF、ヒドロコルチゾン及び(組換え)インスリンが挙げられる。微量元素類の例としては、Zn、Mg及びSeが挙げられる。炭水化物の例としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース及びピルビン酸塩が挙げられる。上記培地に含めることができる他の成分の例には大豆ペプトン及びエタノールアミンがある。当業者であれば、適切な培地及び培地サプリメント並びに特定の発現細胞及び対象ポリペプチドに関する適切な条件に精通していよう。
【0065】
シリコン系泡止め剤及び消泡剤又はエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド単量体のコブロックポリマーなどの非イオン性界面活性剤を発酵中の培地に添加することができる。
【0066】
上記細胞培養培地のpH、温度、溶存酸素濃度及びオスモル濃度は、細胞の特定の種類によって決まり、これらが当該細胞の増殖及び生産性にとって最適であるように選ばれることになる。当業者であれば、所与の培養物に関してpH、温度、溶存酸素濃度及びオスモル濃度などの最適条件をどのように決定するかがわかるであろう。通常、哺乳動物細胞の最適pHは6.6〜7.6であり、最適温度は30〜39℃であり、最適オスモル濃度は260〜400mOsm/kgである。微生物系の場合、pHは3〜8、温度は20〜45℃とすることができる。
【0067】
上記各種培地成分の溶解度はかなり異なる。というのは、これらの成分の多くは溶解度が高く、従って水に容易に溶解するのに対して、特定のビタミン、アミノ酸、脂質及び成長因子などの他の成分は水に対する溶解度が低いからである。このため、細胞培養培地は、通常、すぐに使える組成物として全ての成分を混ぜ合わせることにより調製する。
【0068】
本発明の一実施態様では、上記第一、第二及び任意選択で第三の新鮮培地は、種々の濃度を有する種々の成分から作られる。
【0069】
別の実施態様では、上記第一、第二及び任意選択で第三の新鮮培地は、同じ組成の培地から選ばれる。
【0070】
上記第一、第二及び任意選択で第三の新鮮培地は、通常、上記不純物フィルタ(3)又は上記生成物採取出口(4)を介して細胞培養槽から除去した培地と同じ温度に予め加熱し、通常、その除去後直ちに上記細胞培養槽に添加する。
【0071】
説明した本発明は、好ましくは高細胞密度を用いて機能することから、1回の発酵からの高細胞密度の細胞培養培地を用いて新規の発酵を有利に再開(即ち、播種)することができる。このような状況における高生細胞密度は、一般に、少なくとも一千万細胞/ml、好ましくは少なくとも二千万細胞/ml、より好ましくは少なくとも三千万細胞/ml、例えば、少なくとも五千万細胞/mlなどの少なくとも四千万細胞/mlの密度である。
【0072】
発酵プロセス
発酵プロセスの開始は、通常、細胞培養槽中の培地に高細胞密度の細胞培養物を添加(即ち、播種)することにより行われる。生成物及び不純物のレベルが低い場合の発酵開始時では、上記不純物フィルタユニットは、液体がこの不純物フィルタユニットを通過しないように閉じることができる。細胞密度が増加し、それによって不純物のレベルも増加する場合、上記不純物フィルタユニットから外への液体の灌流を開始することができ、この上記不純物フィルタユニットを通る培地の速度と同じ速度で新しい新鮮培地を細胞培養槽に供給して、消費された栄養物及び排出された培地を補充することができる。次いで、生成物、細胞及び不純物を含む培地が除去されることになる前の特定の細胞密度に細胞が達するまで十分な時間細胞を増殖させる。
【0073】
一実施態様では、上記生成物は細胞によって発現される生体高分子から選ばれる。別の実施態様では、この生成物は細胞から選ばれる。さらに別の実施態様では、この生成物は微生物から選ばれる。
【0074】
本明細書に用いている、工程(a)で細胞を発酵させるための十分な時間は、細胞の増殖速度、細胞培養槽の大きさ及び発酵物を播種するための細胞培養物の量によって決まることになる。
【0075】
本発明の一実施態様では、工程(a)で細胞を発酵させるための十分な時間は、1〜3日間など、4〜5日間など、6〜7日間など、8〜9日間など又はさらにそれ以上の間とすることができる。
【0076】
上記バイオリアクター中に存在する細胞が十分な細胞密度に達している場合、又は上記採取出口からの流出物中に十分な生成物が存在する場合、生成物の採取を開始することができる。これは、例えば、分光光度計を用いて細胞密度を測定することにより、又は既知の手段、例えばポリペプチド生成物の場合には適切なタンパク質アッセイ方法を用いることによって対象生成物の量を測定することにより、判断することができる。
【0077】
本発明の一実施態様では、工程(a)における特定の細胞密度は、少なくとも三千万細胞/ml、好ましくは少なくとも四千万細胞/ml、より好ましくは少なくとも五千万細胞/ml、例えば、少なくとも七千万細胞/mlなど、少なくとも八千万細胞/mlなどの少なくとも六千万細胞/mlの細胞密度である。
【0078】
別の実施態様では、工程(a)における特定の生体高分子レベルは、少なくとも0.010g/L、例えば、少なくとも0.050g/L、例えば、少なくとも0.10g/L、例えば、少なくとも0.50g/L、例えば、少なくとも1.0g/L、例えば、少なくとも5.0g/Lのレベルである。
【0079】
本発明の一実施態様では、本方法は、工程(a)において、細胞培養槽(1)内で上記生体高分子を発現する上記細胞、上記細胞又は上記微生物を適切な条件下に適切な培地中で、上記生体高分子を発現する上記細胞が特定の細胞密度に達し、もしくは上記生体高分子が特定の濃度に達し、上記細胞が特定の細胞密度に達し、又は上記微生物が上記微生物の特定の密度に達するまでの十分な時間、上記不純物フィルタユニット(3)を介して不純物を除去することなく発酵させる工程を含む。
【0080】
工程(a)における細胞の発酵中、不純物を含む通常1日当たり約0.5〜1リアクター容量の培地を、上記不純物フィルタユニット(3)を介して外へ灌流させ、これを、第一の新鮮培地を上記細胞培養槽注入口(2)から添加することにより交換又は一部交換する。これに関連した「リアクター容量」という用語は、上記特定システムの使用細胞培養槽容量に相当するものとする。
【0081】
本明細書に用いている、交換又は一部交換する、とは、採取物出口(4)を通って出る同容量の培地を不純物フィルタユニット(3)を介して添加する第一の新鮮培地と交換するか、場合によっては、不純物フィルタユニット(3)を通って出る容量の培地を細胞培養槽注入口(2)から添加する第二の新鮮培地と一部のみ交換することが利点になり得ることを指す。というのは、これが細胞培養槽中の生成物の量、例えば、生体高分子の量、又は上記細胞の細胞密度もしくは上記微生物の細胞密度を制御する方法であるからである。
【0082】
本発明の一実施態様では、工程(a)において、上記第一の新鮮培地の少なくとも60%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、を細胞培養槽注入口(2)から添加して不純物フィルタユニット(3)を介して除去した培地と一部交換する。
【0083】
別の実施態様では、上記第一の新鮮培地を細胞培養槽注入口(2)から添加して工程(a)で不純物フィルタユニット(3)を介して除去した培地と交換する。
【0084】
別の実施態様では、上記方法は、工程(a)において、上記生体高分子を発現する細胞が、同一条件下で不純物フィルタユニット(3)を用いることなく上記バイオリアクターシステムで得ることができる細胞密度よりも高い細胞密度に達することを含む。
【0085】
さらに別の実施態様では、上記方法は、工程(a)において、上記細胞が、同一条件下で不純物フィルタユニット(3)を用いることなく上記バイオリアクターシステムで得ることができる細胞密度よりも高い細胞密度に達することを含む。
【0086】
別の実施態様では、上記方法は、工程(a)において、上記微生物が、同一条件下で不純物フィルタユニット(3)を用いることなく上記バイオリアクターシステムで得ることができる細胞密度よりも高い細胞密度に達することを含む。
【0087】
工程(a)において、上記生体高分子を発現する細胞が特定の細胞密度に達し、もしくは上記生体高分子が特定の濃度に達し、上記細胞が特定の細胞密度に達し、又は上記微生物がこの微生物の特定の細胞密度に達すると、上記生成物及び不純物を含む特定容量の培地が上記採取物出口(4)を介して細胞培養槽(1)から除去される。
【0088】
上記細胞培養槽から除去される生成物及び不純物を含む培地の特定の容量については、個々のバイオリアクターシステム及び細胞株の特徴を考慮して当業者が決定することができる。一般に、それは、上記細胞培養槽中の培地の約30%〜約80%、例えば、約0.3〜約0.8リアクター容量の範囲となる。
【0089】
本発明の一実施態様では、上記方法は、工程(b)において、上記生成物及び不純物を含む培地の少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%を生成物採取モジュール(4)を介して細胞培養槽(1)から除去する工程を含む。
【0090】
上記生成物及び不純物を含む上記特定容量の培地を工程(b)において上記細胞培養槽から除去した後、工程(c)において第二の新鮮培地を細胞培養槽注入口(2)を介して細胞培養槽(1)に添加して工程(b)で上記採取物出口(4)から除去した培地と交換又は一部交換する。
【0091】
本明細書に用いている、交換又は一部交換する、とは、採取物出口(4)を介して外へ灌流する同容量の培地を細胞培養槽注入口(2)から添加する第二の新鮮培地と交換するか、場合によっては、採取物出口(4)を通って出る容量の培地を細胞培養槽注入口(2)から添加する第二の新鮮培地と一部のみ交換ことが利点になり得ることを指す。というのは、これが細胞培養槽中の生成物の量、例えば、生体高分子の量、又は上記細胞の細胞密度もしくは上記微生物の密度を制御する方法であるからである。
【0092】
本発明の一実施態様では、工程(c)において、上記第二の新鮮培地の少なくとも60%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、を細胞培養槽注入口(2)から添加して工程(b)で採取物出口(3)から除去した培地と一部交換する。
【0093】
別の実施態様では、上記第二の新鮮培地を細胞培養槽注入口(2)から添加して工程(b)で採取物出口(3)から除去した培地と交換する。
【0094】
本発明において、工程(b)及び(c)は、不純物フィルタユニット(3)を介して不純物を除去することなく少なくとも2〜20回反復することができる。
【0095】
別の実施態様では、上記方法は、工程(b)及び(c)を少なくとも2〜30回反復する工程(e)をさらに含む。
【0096】
さらに別の実施態様では、上記方法は、工程(a)に先行して、細胞培養槽(1)内で上記生体高分子を発現する上記細胞、上記細胞又は上記微生物を適切な条件下に適切な培地中で、上記生体高分子を発現する上記細胞が特定の細胞密度に達し、もしくは上記生体高分子が特定の濃度に達し、上記細胞が特定の細胞密度に達し、又は上記微生物がこの微生物の特定の密度に達するまでの十分な時間、上記不純物フィルタユニット(3)を介して不純物を除去することなく発酵させる工程を含む。
【0097】
採取物出口(4)を介した上記細胞培養槽からの上記生成物及び不純物を含む培地の除去並びに細胞培養槽注入口(2)からの新しい培地の添加の数サイクルの後、不純物のレベルは次第に速い速度で上記細胞培養槽に蓄積し始める可能性がある。そのような場面では、上記不純物フィルタユニットを介して不純物を含む培地を除去し、細胞培養槽注入口(2)から第三の新鮮培地を添加して、工程(b)の間、工程(c)の間又は工程(b)及び(c)両方において不純物フィルタユニット(3)を介して除去した培地と交換又は一部交換することは利点とすることができる。
【0098】
本発明の一実施態様では、上記方法は工程(d)をさらに含む。
【0099】
本発明の別の実施態様では、上記方法は、工程(d)において、上記第三の新鮮培地を細胞培養槽注入口(2)から添加して不純物フィルタユニット(3)を介して除去した培地と交換することを含む。
【0100】
本発明の別の実施態様では、工程(d)において、上記第三の新鮮培地の少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、を細胞培養槽注入口(2)から添加して工程(b)の間、工程(c)の間又は工程(b)及び(c)両方の間で採取物出口(3)から除去した培地と一部交換する。
【0101】
別の実施態様では、上記方法は、工程(d)が少なくとも2〜30回反復される工程(f)を含む。
【0102】
細胞の種類及び増殖条件にもよるが、細胞は、1時間未満、最長数日以内に倍増することができる。哺乳動物細胞株は約14〜48時間ごとに倍増することができるが、バイオリアクターにおけるポリペプチドの高収率発現に適応した細胞株は、一般に、約15〜約36時間ごとに倍増する。上記細胞が24時間ごとに倍増する場合、生成物及び不純物を含むリアクター容量培地の半分(即ち、0.5)を上記採取物出口(4)から毎日除去することができ、リアクター容量の0.5を新しい新鮮培地と交換して消費された栄養物及び排出された培地を補充し、それによって上記バイオリアクターシステムにおいて一定の生産性を維持することができる。
【0103】
上記倍増時間が24時間よりも速い場合には、生成物及び不純物を含むより多くのリアクター容量培地を毎日除去し、新しい新鮮培地と交換することができる。上記倍増時間が24時間よりも遅い場合には、上記バイオリアクターシステムにおいて一定の生産性を維持しながらより少ないリアクター容量を毎日除去することができる。当業者であれば、対象生成物の最適な製造のために適切な細胞株を選び、細胞増殖を制御する方法を知っている。
【0104】
当業者であれば、細胞培養槽における培地の温度は細胞の生産性のための重要な因子であり、多くの場合、約30〜38℃の範囲の温度が最適であること、及び発酵中に温度を下げることが有利な場合があることを知っている。そのような手順は、特にCHO細胞などの哺乳動物細胞の場合によく知られており、一般に、所望の細胞密度を得るための、例えば、約37℃の最初の温度における初期発酵段階と、その後の、ポリペプチド生成物の発現を増加させ、細胞分裂を低下させるための発酵の残り期間における、例えば、約32〜35℃への温度低下とを含む。
【0105】
本発明の一実施態様では、上記方法は、工程(a)において、約30〜38℃の範囲の温度を有する適切な培地中、細胞培養槽(1)において細胞を発酵させる工程を含む。
【0106】
上記プロセスは、当該分野で周知されているようにして、そうでない場合は本明細書で説明したようにして、増殖状態、培地濃度、細胞密度、pHなどが所望の基準内に維持されるように、連続的にモニターする。
【0107】
本発明によって得られた生成物は、上記培地及び不純物から単離することができる。
【0108】
生成物が細胞又は微生物である場合は、これらは標準的な技術によるろ過遠心分離又は沈降によって単離することができる。生成物が生体高分子である場合は、これは、清澄化プロセスによって細胞及び不純物から精製し、その後さらに、クロマトグラフィー系を用いて精製することができる。当業者であれば、本発明の生成物を精製する適切な技術を知っている。
【0109】
一実施態様では、上記方法は、上記細胞により発現される生体高分子、上記細胞又は上記微生物から選ばれる生成物及び不純物を含む特定容量の培地から生成物を精製する工程(g)をさらに含む。
【0110】
本発明の方法は、上記生成物を精製するための精製設備を含む一般的なユニットにおいて、いくつかの細胞培養槽、例えば、2つ、例えば、3つ又はより好ましくは4つの細胞培養槽を順次運転するのに特に有用とすることができる。そのようなケースでは、例えば、4つの細胞培養槽は、培養槽4が他の培養槽への種培養物を調製するために機能するように運転される、例えば、拡大モードで運転される。
【0111】
次いで、細胞培養槽1、2及び3は、上記細胞が約3日の倍増時間を有し、生成物及び不純物を含む培地が1日目に細胞培養槽1から除去されて精製設備に供給され、精製のために除去された培地が新しい新鮮培地と交換されるモードで運転することができる。生成物及び不純物を含む培地は、2日目に細胞培養槽2から除去されて精製設備に供給され、精製のために除去された培地が新しい新鮮培地と交換される。生成物及び不純物を含む培地は、3日目に細胞培養槽3から除去されて精製設備に供給され、精製のために除去された培地が新しい新鮮培地と交換され、このプロセスは、上記細胞培養槽の1つの生産性が許容できないレベルまで減少するまで複数サイクル反復され、その後、細胞培養槽中の細胞は新しい発酵物を播種するために使用され、このプロセスは継続する。
【0112】
本願において引用した全ての特許及び非特許文献は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。
【0113】
本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、考えられるすべての変更における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。
【0114】
本明細書に用いている用語「a」、「an」及び「the」は、特に指示しないか、文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を含むと解釈すべきである。